in side

「で、君達は何者なのかな?」
「え? ああ、相川 翔太と言いまして……一応、サマナーやってます」
 ハヤトさんに聞かれたんで、とりあえず後頭部を掻きつつ答えてみる。
「サマナー? サマナーとは?」
「ええと……これを使って悪魔を召喚したりして、一緒に戦ってもらってたりとかしてる人です」
 もっとも、わからなかったようでハヤトさんは首を傾げていたので、GUMPを見せつつ教えてみたりしたが……
ハヤトさんはともかく、周りの人達は訝しげな様子を見せていた。まぁ、知らなきゃ、普通はそんな反応だよなぁ。
「実演した方がいいかな?」
「その方が早そうだ」
「だよなぁ……じゃあ、ルカ……いいかな?」
「ええ、構いませんわ」
 そう思ったんで聞いてみると、スカアハがうなずいてくれる。
なので、ルカに一声掛けてからGUMPを操作し、一旦戻してから再度召喚してみた。
そのことに周りの人達はどよめくが――
「私達と同じ?」
 なんてハヤトさんの声が聞こえたけど……同じって、何が同じなんだろうか?
「む……うむ、わかった……すまないが、詳しい話を聞きたい。レッドスプライト号に来てもらえないか?」
「あ、ええと……いいのかな?」
「その方がいいだろうな……まったく、あやつは……」
 なにやら通信を受け取ったらしいハヤトさんに言われて戸惑うが、スカアハが呆れた様子でうなずいていました。
けど、最後のひと言がすっごく気になるんですけど? まぁ、そんなわけで俺達はでっかい乗り物……レッドスプライト号だっけ?
その中に入ってみたんだが……広かった。その上、すっごいSFチックなんですけど。
そんな中の様子を見ながら、ハヤトさんに案内されながら進み……なんか、アニメの戦艦とかで良くありそうな場所に来ていた。
なんというか、ブリッジ? そんな感じの場所である。
「初めまして。シュバルツバース調査隊、指揮官のフィオナ・アーサー・タカハシです。フィオと呼んでください」
「あ、どうも……」
 と、黒髪の長い女性の出迎えに思わず頭を下げてしまう。
日本人顔で……うん、大和撫子って、こういう人を言うのだろうか? なんか、そう思ってしまう人である。
でも、名前がアメリカ風なのは、なんでだろうか? って、あれ? タカハシ?
「あれ? タカハシって……」
「はい、私とハヤトは夫婦ですから」
「なんと、そうだったのか」
 何かに気付いた理華であったが、フィオさんが微笑みながら答えると、美希が軽く驚いていた。
なるほど、夫婦だから名字が一緒だったわけね。
「では、聞かせてもらえないかな? この世界のことや君達がなんでここにいたのかを」
「ああと……どこまで話した方がいいんだろうか?」
 ハヤトさんに聞かれたんで、思わずスカアハに聞いてしまう。
いや、だって……前々から下手に話すなって言われてたんで……
「全てを話せ。全てをな」
 と、スカアハは呆れた様子で答えてくれたが……なんか、投げやりに見えるのは気のせい?
しかし、いいのかなぁ……なんか気になるんだけど……
「何かあったのかな?」
「ああ……まぁ、色々とありまして……どこから話したらいいものか……」
 ハヤトさんに聞かれて悩んでしまうが……結局は話すことにした。
まずはボルテクス界がどんな所なのか……流石に俺達の世界の未来かもしれない世界とは言えなかったけど。
で、俺達も別の世界から来たというのを話すと驚かれて、どうして? と聞かれたので、その経緯も話すことになった。
ボルテクス界と繋がった世界が一緒に崩壊することを話したら、驚かれたのは当然として――
「メムアレフ……だって?」
 その原因がメムアレフにあるってことを話したら、ハヤトさんが呆然と立ち尽くしてた……って、なぜ?
「あ、あの……どうかしたんですか?」
「無理もないさ。なにしろ、こやつはそのメムアレフと戦い、倒した本人なのだからな」
「なぜ……そのことを……」
 思わず聞いてしまうとスカアハが腕を組みつつ答えていました。って、この人が?
いや、聞いてはいたけど……まさか、こんな所で会えるとは思わなかったしな。
その一方で、フィオさんが警戒したかのように睨んでいたけど――
「なに、知り合いが調べてくれてな。ついでに言えば、その知り合いによって、お前達は会うべくして会ったのだよ」
 と、腕を組みつつ呆れた様子で答えるスカアハだが……あの野郎、そういうことなら、最初から言っておけよ。
「だが、あいつが生きてるはずが――」
「あれと対峙したお前ならわかるはずだ。あれが簡単に消滅するような者ではないと」
 言い返そうとしていたハヤトさんだが、スカアハの言葉に手を握りしめていた。
確かに倒したと思ったら、生きてました〜……というのは、ある意味ショックかもしれないよな。
「あ、あの……良くはわからないんですけど……結局はどういうこと?」
「そう……だな……君も関わっているようだから、話した方がいいだろう」
 メムアレフを倒したって以外は状況が良くわからなかったので、後頭部を掻きつつ聞いてみる。
すると呆然としたハヤトさんが立ち直ったらしく、そのことを話してくれた。
 ハヤトさんの世界の南極に、あらゆる物を分子崩壊させる亜空間が現れた。
しかも、その亜空間が巨大化していき、このままでは世界全てが呑み込まれるのでは? という危機感があったらしい。
更に厄介なことに、外部から調べても大した事はまったくと言っていいほどわからなかったそうな。
そこで国連は亜空間を『シュバルツバース』と名付け、様々な分野から優秀な人達を集めて調査隊を結成。
特殊大型車両(次世代揚陸艦というらしいけど)で内部に突入し、調査しようとしたらしいのだが――
突入の時にトラブル(予想外の事故らしいけど)によって4台はバラバラになり……
しかも、その時のごたごたで調査隊の隊長も命を落としてしまったそうだ。
なんでも、シュバルツアースの中はボルテクス界と同様に悪魔がいて、それによって事故とかが引き起こされたらしいけど。
 そんな中でもタカハシさん達は悪魔と戦いながら調査を続行した。
ちなみに悪魔と戦えたのは悪魔召喚プログラムのおかげらしいけど……このことに関してはタカハシさん達も良くはわからないそうな。
気が付いたら何者かによって渡されたらしく、解析出来た中でわかってるのは途方もないプログラムであるということぐらいらしい。
 話が反れたが……様々な困難の中で調査を続けた結果、シュバルツバースがメムアレフによって生み出されたこと。
シュバルツバースは地球そのものを呑み込んで、まったく別な物へと創り変えようとしていることが判明。
タカハシさん達はそれを止めることを決意。多くの犠牲を出したものの、メムアレフを倒すことに成功。
全てが終わった……かに、見えた。
「だが、私とアーサー……フィオは再びシュバルツバースのようなことが起こるのでは? という危惧を抱いていたんだ」
「その為、私達は国連に働きかけ、その時が再び着てもいいように準備を進めていました。
もっとも、その規模は調査隊の時よりもかなり縮小されてしまいましたが……」
 どことなく沈んだ様子でタカハシさんとフィオさんは話していたが……その危惧は現実のものとなってしまった。
突然、異界が現れた。当初、それが何なのかわからなかった国連軍は調査のために軍を向かわせるが……
中に入った途端に連絡が取ることが出来ず、まったく何もわからなかったそうな。
まぁ、後で異界に悪魔がいたことがわかって、対抗策を持たなかった軍はあえなく壊滅させられたらしいけど。
それでタカハシさん達におはちが回ってきて、異界の中に入り……
そこに悪魔がいたことに驚きながらも、シュバルツバースでの経験を活かして調査を開始。
デモニカスーツ……タカハシさん達が着ている物で、あらゆる環境に耐えるだけでなく、身体能力の強化も可能らしい。
そのスーツをシュバルツバースで得た技術を元にバージョンアップさせたおかげで順調に調査が出来……それと出会ってしまった。
メムアレフの配下の1人、オーカス……そいつが生きていたことに驚きながらも、タカハシさん達は戦い……倒すことが出来た。
 だが、それで終わりではなかった。ボルテクス界へと続く穴を発見。
しかし、それがなんなのかわからなかったタカハシさん達は慎重に調査をし……ボルテクス界の存在を知った。
その報告を受けて、国連はボルテクス界を新たなシュバルツバースとして調査することを決定。
調査隊が新たに組織され、タカハシさん達はその総隊長と指揮官に任命され、ここへと着たそうな。
「なんてぇか、そっちも大変だったんですね」
「ええ……悪魔の再度の襲来は様々な混乱を呼びましたから……
アオイ シンジという方の助力がなければ、ここへ来るのはもう少し遅れていた可能性が……どうかしましたか?」
 思わずそんな感想を漏らすと、フィオさんからそんな話を聞いてしまい、思わず頭を抱えてしまう。
あの野郎……来ないと思ったら、そんなことしてやがったのか……
「そやつは私達の知り合いでな……私達もそやつに言われて、ここに来たのだが……まったく、連絡しても来ないと思ったら……」
「そう……だったのかい?」
 呆れているスカアハの話にタカハシさんは少し驚いたような顔をしてたけど……
今更ながら、あの野郎は本気で何やってんだろうか? 一度、話し合う必要あるよな?
『ちょいといいか?』
「アーヴィン、どうしたんだ?」
 と、モニターにがたいのいい男がいきなり映ったかと思うと、そんなことを言い出した。
そのことにタカハシさんは問い掛けて――
『いやな、その小僧から、オーカスを倒した時に手に入れたフォルマと同じ反応が出ててな。
それが気になっての。報告しとこうと思ったんじゃ』
 ええと、アーヴィンさんだっけ? なんか、話し方がどっかの方言っぽく聞こえるのは気のせい?
ていうか、なんで日本語? あの人、どう見ても外国人だよね?
うん、色々とツッコミたいが……それはあえて無視するとして……オーカスを倒した時に出たフォルマ?
あれ? 確かタカハシさんはオーカスはメムアレフの配下だって言ってたような……もしかして――
「これのこと?」
「お前、もう少し考えてからそれを出せ」
 リュックを降ろして世界の羅針盤と宇宙の卵を出したら、スカアハに睨まれてしまいました。
いや、思わずやっちゃんたんですけど……ちなみに見ていたタカハシさんとフィオさんは驚いてました。
「君がなぜそれを?」
「ああ、なんていうか……ミトラスとかアスラとか……そういう奴らを倒したら出てきまして……」
「な、その者達を倒したというのですか!?」
 タカハシさんに聞かれたんで、後頭部を掻きながら答えるとフィオさんに驚かれた。
まぁ、あいつらはとんでもなく強かったしな。今考えると、良く倒せたもんだと思ってる。
「まぁ、一緒に戦ってくれた人とかもいましたからね」
「それでだ……お前達が宇宙の卵を持っているのなら、渡してもらえないだろうか?」
「そうは言われましても……立場上、簡単に渡すわけには……」
 とりあえず、そう答えておくと、スカアハがそんなことを言い出した。
フィオさんは困ってるけど……まぁ、普通そうだよな。多分だけど、フィオさん達にとっても大事な物だろうし。
「条件がある。我々と一緒に行動してもらいたい。それで良いのなら、渡してもいい」
「ハヤト、それは……」
 タカハシさんの言葉にフィオさんは戸惑ってるけど……それはどうなんだろうか?
俺達も一応、目的みたいなものはあるし――
「私達の目的はこのボルテクス界と呼ばれる世界の調査だ。その調査も彼らがいれば、円滑に進だろう。
それに世界の崩壊が事実かどうかも確認する為にも、彼らと共に行動した方がいいだろう?」
「そういうことか……それならば文句は無い。こちらとしても助かることがあるからな」
 タカハシさんの話にスカアハは納得といった顔をしてるけど……本当にいいのか?
なんか、迷惑とかにならない? ていうか、目的から考えて大丈夫なのかよ?
「彼らも少なからずメムアレフとの因縁があるからな。だから、一緒に行動してもらった方が都合がいい。
ま、これがあれば移動が楽になるというのもあるがな」
 なんていうスカアハの話になんとなく納得する。特に移動に関しては。
メムアレフとの因縁ってのには考えさせられる部分はあるが……いや、巻き込んでいいのかと思ったりもしたしな。
ただ、移動に関しては賛成。だって、基本的に歩きだもん。だから、遠くに行く時は本当に大変なんだよな。
実際、歩きで1日2日掛かる場所に穴があってもおかしくはないだろうし。
「ええと……そういうことなんですけど……いいですかね?」
 とりあえず聞いてみると、タカハシさんとフィオさんは互いを見てから……しばらくして、こちらに向けてうなずいてくれたのでした。


 そんなわけで1台をハヤトさん達の世界の穴の近くに待機させて、残った3台でノーディスに向かってる最中――
その間に俺達はアーヴィンさんがいる所にいた。ちなみに1台が残ったのは、ハヤトさんの世界との通信の為なそうな。
で、この部屋、未知の物質の解析を行うだけでなく、物質を合成させて新しい物を創ったり出来るらしい。
なんか、村正さんやイゴールの所に似てるな〜と思ったのは俺だけだろうか?
「おお、来たな。先程も顔を見せたが、ワシはアーヴィン。この部屋の主じゃ」
「助手のチェンです。よろしくね」
「ああ、どうも……」
 で、アーヴィンさんとチェンさんの挨拶に戸惑いがちに頭を下げるけど……なんで日本語?
チェンさんも明らかに日本人じゃないんだけど……気にしちゃダメかね?
「じゃ、早速じゃが、さっきのを見せてもらえんか?」
「ああ、はい……これです」
「ふむむ、これがそうか……」
 言われて石版を出すと、アーヴィンさんは手に取って眺めて――
「こうかの?」
「あ、ちょっと――」
 なぜか、持っていた宇宙の卵を石版にはめていた。チェンさんが止めようとするが――
「あ、ああ……」
「なんだ?」
 途端にミュウが苦しみだしたんで、ハヤトさんが驚くけど……
苦しむと共に体が輝き……その輝きが消えると、またミュウの姿が変わっていた。
顔付きが少し大人っぽくなったような感じになり、着ている物もドレスっぽくなっている。
「彼女は……どうしてしまったのですか?」
「訳あって、ミュウは世界の羅針盤と繋がってしまってな……今のは宇宙の卵の力を受けて、進化したのだよ」
 戸惑ってるフィオさんにスカアハは腕を組みながら答えていたけど……
なんか、スカアハの様子がおかしいのは気のせいだろうか? なんか、顔をしかめてたように見えたんだけど。
「翔太……」
「ええと……大丈夫?」
 なぜか、ミュウにしがみつかれてしまい、顔が引きつるのを感じながら問い掛けていた。
いやね、ミュウの瞳が潤んでてね……なんか艶っぽいのよ……
しかも、大人っぽくなってるから、その……色気というかなんというか……
うう、なんか理華達から視線を感じるのは……気にしない方がいいかな?
「ふむ、興味深いの……どうじゃろ? コイツを少し調べさせてもらえんかの?」
「ええと……いいのかな?」
「変なことをしないというのなら……別に構わないがね」
 アーヴィンさんに頼まれてしまい困ってしまうが、スカアハはため息混じりに了解していたけど……
やはり、何か様子がおかしい感じがする。でも、何がおかしいのかまではわからないんだけど――
「おお! 感謝するぜよ!」
「いいの? 本当に?」
「ま、しばらくは一緒に行動することになるだろうしな……それにお前もあれを背負ったままでは戦いにくいだろうに?」
 喜んでるアーヴィンさんを思わず指差してしまうが……スカアハは呆れた様子で答えていた。
でもって、やはり何かがおかしい気がする。本当にどうしたんだ?
ちなみにアーヴィンさんが世界の羅針盤を調べたことで、とんでもないことが判明するんだけど……それはまだ、先の話だったりする。



 あとがき
かつて、メムアレフと戦い勝利した者と出会った翔太達。この出会いがもたらすものは――
というわけで、私が書いた短編より登場してもらいましたタカハシさんとフィオさん。
2人の出演は連載当初から決まってましたが……まさか、登場まで1年近く掛かるとは思いませんでした……
そんなわけでこの2人が翔太達とどう関わっていくかは見てのお楽しみということで。

次回はノーディスに戻ってきた翔太達はタカハシ達を案内することに。
そこでタカハシ達が見る物とは? そして、様子がおかしいスカアハは――
というようなお話です。次回をお楽しみに〜



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