out side
さて、場面を戻そう。
翔太達が見ている渦巻く黒い靄が少しずつ消えていくと共に十数人程の人影が見え始めた。
「ま、まさか……あれは……」
「嫌な予感しかしないんだけど、あれ知ってるの?」
青ざめるキャナルに翔太はまたなのかという顔で問い掛ける。翔太としては慣れてしまった展開である。本人は慣れたくも無かったが。
こういうのは本当に漫画やラノベ、アニメとかでやって欲しいと思いつつも心構えは忘れない。
何かはわからないがろくでもないのが来るのは翔太としても嫌でも確信してしまうのだから。
「ダクマス……様……どうして、この世界に……」
「様付けってことはキャナルの上司のことか?」
未だに青ざめるキャナルの言葉に翔太はそう考える。まぁ、それはいい……わけではないが、その辺りはひとまず置いておく。
問題なのはなんでそんなのがここへ来たかだ。翔太としては嫌な予感しかしないので、出来ればその予感が外れて欲しいと思っていたりする。
『む……なぜ、ここに咎人たる、お前がいる?』
「え、あ……あぁ……」
現れ、宙に浮かび者達から前に出ている1人。風になびく白い挑発に長く蓄えられた白髭。
その顔は深いシワが刻み込まれながらも威厳ある風貌を見せており、純白のローブ風の服の上に細かい装飾が施された白銀の鎧を纏っていた。
そんないかにも私は神様ですといった者の荘厳な声にキャナルは怯えるが、逆に翔太は違和感を感じた。
なんとなく焦っているように感じたのだが、ダクマスと呼ばれた者に今はその感じは受けない為に首を傾げてしまう。
『答えよ……なぜ、お前がここにいる?』
「そ、それは――」
「あ〜……そういうあんたらはなんでいるの?」
荘厳な声のダクマスの問いに青ざめるキャナルは戸惑いも見せていた。
キャナルとしては流されるままになっていたというのもあるが、どう話せばいいのかわからなかったのが大きい。
そんな中で翔太は右手を軽く挙げつつ問い掛ける。キャナルとは違い、その表情に怯えの色は無い。
むしろ、呆れてるといった様子を見せていたのである。というのもダクマスからの威圧感がそれほど大きくないのだ。
といってもアシェラトと比べたらという話で、実際は普通の悪魔よりも遙かに大きな威圧感はあったりする。
その証拠に翔太が気付いてないだけでネギや明日菜らは少しばかり怯えていた。
『答えよ……なぜ、咎人たる、お前がいる?』
「え? 無視? 無視なの?」
「翔太君……」
始めから聞こえていなかったかのように問い掛けるダクマスに翔太は半眼でツッコミを入れるが、その一方でタカハシはそんな彼に呆れていた。
気持ちとしてはわからなくもないが状況がわからない。なぜ、ダクマス達がここにいるかがだ。それ次第でこちらの動きが違ってくる。
そういった意味ではタカハシとしては同意したいものの、翔太の態度には呆れてしまうのである。
まぁ、タカハシとしても翔太と似たような心境ではあったのだが。
『答えよ……我に成り代わろうとした愚かな考えを持った咎人たるお前がなぜここにいる?』
「え? 成り、代わる? え?」
が、意外な問い掛けにキャナルの表情は先程とは打って変わって目を丸くしていた。
いや、意味がわからないといった方がいい。いったい、誰が誰に成り代わろうというのだろうか?
キャナルにとってダクマスは絶対たる存在と言ってもいい。だからこそ、彼に尽くそうとした。
村人達にダクマスの素晴らしさを説いたのも、その為だ。全てはダクマスの為に――それ故に村の助けとなる事もしてきた。
だからこそ、今のダクマスの言葉の意味がわからない。自分はダクマスの意志に反するようなことをしていないのだから。
『我が知らぬと思ったか? 貴様が我に成り代わろうと、その村人達を手駒にしようとしていたのは知っておるのだぞ』
「そんな!? していません!? そんなことは決して! ダクマス様に成り代わろうなんて、そんなこと考えた事も無い!?」
ダクマスの言葉にキャナルは思わず叫んでいた。叫んでしまった。実際、その通りなのだ。
ダクマスに成り代わってどうしようというのか? こんな時に言うのもなんだが、キャナルにそのような願望は無い。
ただ、ダクマスのやることが正しいと信じ、彼のために色々と手を尽くしただけなのだから。
「あれか? 会社の為に一生懸命働いてきた社員を見た上司がもしかして自分の地位狙ってるんじゃね? とか思ってるのと一緒か?」
「その言い方は……でもまぁ、あながち間違いではなさそうだがね」
半眼な翔太の言葉に呆れつつもタカハシもため息混じりに同意していた。
確かに翔太の言い方はあれだが、ニュアンスとしては間違っていない。ダクマスを含めた神々は存在方法が特殊だ。
その存在方法故にキャナルの行為を疑ったのもある意味しょうがないことでもある。
では、その存在方法はどんなものかは……後ほど話そう。というのも――
『おい、貴様――』
ダクマスが連れている神々の内の1人が翔太を睨む。その神はダクマスを含む神々の中で唯一翔太の反応に気付いた者だった。
その神以外がそのことに気付かなかったのはたかが人間と考えているので、たいして意識を向けなかっただけである。
それはそれとして、翔太の反応がその神にとっては気にくわなかった。人間にとって自分らは敬う存在であったはずだ。
それなのに翔太はそんなそぶりを見せないばかりか、侮蔑の眼差しを向けている。
実際は呆れてるだけなのだが、その神にはそう見えたのだ。だから、許せなかった。
『我らに対し、その態度はなんだ?』
「いや、なんかおかしなことしたっけ?」
そんな神の睨みと共に怒りがにじんだ声に翔太は首を傾げた。
実際、態度としては不適切ではあったが、翔太としてはさっきの話を聞かれたかなと考えていたりする。
しかし、その翔太の仕草が声を掛ける神の怒りを増してしまう。明らかに敬う態度ではないのは確かだ。
ただ、その神としては人間が自分達に向ける態度では無いと考えているのもあったのだが。
『たかが人間風情の分際で我らにそのような振る舞い……万死に値するぞ!』
ともかく、その神にとって翔太の態度は許せるものではなかった。だから、斬り捨てる為に翔太へと向かい飛んでいく。
愚かな人間に罰を。死を伴った罰を――それがその神を含めたダクマスらの考えの1つであった。
故にその神もその考えで翔太を罰として斬り捨てようとしたのだ。
そして、普通の人間では捉えられぬような速さで翔太の目の前に立ち、持っていた豪華な造りの剣を振り上げ――
「ふんぬ!」
『がっ!?』
翔太に殴り飛ばされる。殴られた顔が頭ごと粉々になりながら……その一瞬、誰もが起きたことに息を呑み、理解出来なかった。
ネギなど何が起きたのかさえわからなかった者もいる。だが、殴られた神が塵となって消えていったことで誰もが理解し始める。
翔太が神を殺したことに――
「あれ? 意外と脆い?」
一方、殴った翔太はといえば意外そうな顔でキョトンとしている。翔太としては襲われそうになったから殴った。理由としてはそんなものだ。
ただ、翔太として意外だったのが殴った神の脆さだ。空も飛んでいたのでいつも戦っている悪魔くらいには強いのだろうと思っていた。
その考えは間違ってはいない。塵となった神も翔太と戦っていた悪魔と同等――いや、それ以上の戦いが出来る程の強さを持っている。
そんな神がなぜ翔太に殴られたぐらいで塵となってしまったのか?
油断もあったのは事実だが、実際はダクマスを含む神々の存在方法に理由があった。
どういうことかは存在方法も含め、やはり後で話す事になるのだが。
もう1つが翔太が持つ『神魔殺し』の概念だろう。
塵となった神の存在方法よりも翔太の一撃の方が上回り、それが死にも等しい一撃となり――
それによって『神魔殺し』の概念が働き、神は殺されたのだった。
『……なんだ?』
一方でダクマスは起きた事に戸惑いを浮かべている。
人間が自分達を殺す。それはあってはいけないこと。なぜならば、人間が自分達を傷付けることは不可能なはずだからだ。
いや、それ以前に人間が自分達に手を挙げるなどもってのほかのはずだ。なのに、あの人間はそれをやってしまった。
許せるはずがない。そのはずなのに……起きた事が信じられず、ダクマスは戸惑いを浮かべたのである。
『人間が……我らにはむかうというのか?』
「やってきたのはてめぇらだろうが。まぁ、なんだ。お前らが気に入らないとかキャナルのこととかで色々と文句とかはあるんだが――
やろうっていうんならこっちもそれなりにやり返すぞ、この野郎」
未だ戸惑いを浮かべるダクマスに翔太は半眼で睨みつつ返すのだが、そのことにキャナルは息を飲んだ。
いや、キャナルだけではない。理華や美希にミュウ、エヴァンジェリンに真名や刹那など、翔太に想いを寄せる者達も気付いていた。
今の言葉だけを聞けば、普段の翔太と変わりない感じはある。でも、彼女達には何かが違って感じられたのだ。
それは些細な違いかもしれない。でも、それが彼女達を不安に駆らせた。その中でもキャナルの同様はひどかったと言ってもいい。
なぜなら――
それはヴォルフィードが消える前の話。彼女はこんな話をキャナルに聞かせていた。
「翔太はいずれ変わっていく。意識も考え方も、そのあり方もな」
「なぜ、ですか?」
「シンジ曰く、時の流れは残酷だそうだ。人は時の流れの中で様々なことを経験していく。
その経験はその者に影響を与え、そして変えていく。翔太もそういった1人になるだろうな」
キャナルの問い掛けに答えるヴォルフィードはため息を吐く。
ちなみに時の流れにはもう1つの意味があるのだが、それは今は語るべきでは無いと考え、あえて話さずにいたのだが。
ともかく、それ自体はおかしなことではなかった。誰にでも起こりうること。だから、それが翔太に起きたとしてもおかしくはない。
そう、”本来ならば”――
「それでも今の翔太が昔のままでいられるのは周りの者達のおかげもあるだろうが、自分のしていることの無自覚さがある。
無自覚だからこそ、自分のしていることの大きさを把握しきれておらず……
そのおかげで昔のままでいられるのは、ある意味皮肉かもしれないが」
ため息混じりにヴォルフィードは答えた。徐々にではあるが翔太は自分のしていることがなんなのかを理解してきてはいる。
なぜ徐々にかといえば、やってることが大きすぎる為だ。下手すれば本当の意味で頭がパンクしかねない位に。
まぁ、元々人の手にあまるどころではない物なのだから、当然と言えば当然である。
「それでも翔太はいずれ変わっていくだろう。変わるより、変わらないでいる方が遙かに難しいからとシンジは言っていたが――
まぁ、翔太のやっていることを考えれば、そうなってもおかしくないのは確かだろうな」
どこか遠くを見つめるように話すヴォルフィードであったが、この時のキャナルはそうなのかな?という感想であった。
この時の翔太が変わってしまうとはキャナルには思えなかったのである。なにしろ、翔太はどんな時でも自分を貫いたのだから。
そして、それは翔太に想いを寄せる者達にとっても共通の考えでもあったのだが。
「そう、翔太がやってることを考えれば……実際、あやつが世界を恨んだとしてもおかしくないのだよ。
理不尽なんだ。翔太がやっていることは人間には手が余りすぎる。
シンジのサポートがなければ立ち往生どころかさまよい歩き……そのままのたれ死んでもおかしくないほどに」
ふと、どこか悔しそうな表情でヴォルフィードは語った。
事実、今回の事件に関わり始めた当初、翔太にはサポートしてくれる存在はいないに等しかった。
黒いゴスロリ少女は翔太を弄ぶつもりだったし、ヴィクトルも当初は何が起きてるかわかっていないので拠点以外のサポートは難しかっただろう。
そんな中で幻想郷への穴を見つけたことは僥倖とも言えることだった。
打算や目論見などがあったとはいえ、シンジのサポートがなければ翔太はこうしているのも難しかったかもしれない。
「それを考えれば、翔太は変わっていく可能性が高いだろう。怖いのは……もし変わるとしたら、翔太がどのように変わっていくかが……
先程も言ったが、翔太は世界を恨んだとしてもおかしくないような状況にあっている。
だから……もし、そうなってしまったら、止めなければならない。もっとも、その時には私はいないだろうが……」
悔しさをにじませながらヴォルフィードは語る。翔太が変わってしまうこと自体が怖いのでは無い。
翔太があってはならない方向へと変わってしまうのが怖かった。もし、そうなるようなら、全てを賭けてでも止めなければならない。
だが、その時にはヴォルフィードはその場にはいないだろう。自分が消えようとする時間は今も迫っていたのだから――
「もし、そうなったら、お前に止めて欲しい」
「え、そんな……私では……」
無理だ……ヴォルフィードの言葉にキャナルはそう答えそうになる。
そう、無理なのだ。自分では翔太は止められない。なぜなら、自分は咎人なのだから……
そんな自分の声が翔太に届くはずがない。キャナルにはそうとしか思えなかったのである。
「お前のは罪では無いさ。いや、例え罪を犯したとしても、余程でもない限り翔太はお前を無視したりはしない。
そして、その時が来たら、翔太を止められるのはお前だけだろう。だから、頼む……翔太を……私達が愛したあいつを……頼む……」
決意を秘めた言葉にキャナルは何も言えなかった。自分の想いに気付かれていたことに対しても。
実の所、キャナルはヴォルフィードがスカアハとして出会った当初から翔太のことを見ていた。
その時の感想はなぜ彼はそんな目にあってまでも戦えるのか? そういうものだった。
だが、見続けている内にいつの頃からか想いを抱くようになった。最初は憧れとかそういうものだったと思う。
翔太には自分には無いものを持っていて……だからこそ、困難に立ち向かうことが出来て……それが羨ましかった。
そうして見続けてる内に憧れは想いとなり、出来れば自分も翔太を支えたいと考えるようになったのである。
でも、それは出来ない。咎人の自分にそんな権利は無いのだから……そう思っていた。
今のヴォルフィードの言葉を聞いた時、キャナルは初めて自分が頼られていると感じて、戸惑いを感じるのだった。
そんなヴォルフィードの決意の言葉が思い出される。しかし、キャナルはどうすればいいかわからなかった。
どうすれば、今の翔太を止められるのか……それ以前にダクマスに逆らうことなど自分には――
(あ、あれ?)
そこでキャナルは気付く。ダクマスに逆らうという禁忌感が無いことに。
以前ならば、そのことを考えるだけでも恐怖を感じていたというのに。今は無いどころか憤りさえ感じている。
キャナルはそんな自分に戸惑いながらもダクマスがしようとしていたことを思い出し、当然かもしれないと考えた。
ダクマスが言い渡したキャナルの罪は言い掛かりだ。
罪を償おうとした時は思いもしなかったが、理由を知った今となってはどんな理由があろうと憤りしか感じられない。
いや、それどころか怒りさえ感じられる。もっとも、以前の自分ならばそう言われてもなお自分のせいだと思っていたかもしれない。
そうならなかったのは翔太のおかげ……いや、翔太を見ていたことで自分もまた何かが変わったのだ。
何かはわからない。わからないが翔太が変わり始めたことでそれが起きたのかもしれない。
(翔太さんが変わってしまうならば、私も変わろう)
キャナルはふとそんなことを考えてしまう。けど、不思議と怖くは無かった。逆に受け入れられた。
そう、あの人と……翔太とならどこにでも行ける。キャナルの中でそんな感情が芽生えていた。
ヴォルフィードが翔太と初めて出会った時からずっと見ていたからだけではない。
そうしていたことで翔太が羨ましくて、恋い焦がれ、愛したからこそ受け入れるようになったのだろう。
そして、ヴォルフィードが翔太にキスをした時にはもう戻れぬ程に深みに嵌まってしまった。
その2人キスがあまりにも羨ましかったから――
だから、受け入れられる。怖くは無い。翔太と同じように自分も変わるだけなのだから。
(まったく、そのような考え方をするとはな)
「え?」
キャナルがそんな決意をした時だった。自分の中で聞き覚えのある声が心に響いてくる。
この声は……そう、忘れようが無い。だって、この声は――
(ヴォルフィード? え? どうして? だってあなたは――)
(シンジの仕業だろうよ。自分のことを策士と言い切っていたしな。あやつにしてみれば、このことは想定していたのかもしれん)
嬉しさと戸惑いが混じったキャナルの声にヴォルフィードは苦笑混じりに答えた。
そう、このことはヴォルフィードにとっても予想外だったのだ。自分は消えたのではなく――
(どうやら,眠らされていただけらしい。シンジの奴、初めからこのつもりだったようだな。
まぁ、感謝はするさ。おかげで翔太に再会出来たし――)
嬉しさが混じる声で答えつつ、ヴォルフィードはキャナルの変化に複雑な思いを抱いていた。
キャナルの決意が良いことなのかはわからない。翔太の変化すらどうなるかわからないのだ。
だが、キャナルは決意し、自分で歩き出そうとしている。その先に待っているのはなんなのかはわからない。
もしかしたら、後悔が待っているかもしれない。でも、人はいつしか後悔もしなければならないだろう。
もし、その時が来るのであれば――
(今、この体もこれから行う行動もお前の物だ。私が出来るのは私が持っていた力と経験を貸すだけ。戦うのはお前自身となる。いいな?)
(かまいません。翔太さんと……翔太と一緒にいられるなら――)
(やれやれ、困ったものだ。だが、それは私も一緒だ。だから受け取れ! 私の全てを)
キャナルの決意に問い掛けたヴォルフィードは苦笑してしまう。
たぶん、自分ではキャナルのような決意は出来ないだろう。それがいいことなのかは別としても羨ましくはある。
だから、自分も同じ道を歩もう。2人が……いや、みんなが歩む先で迷ってもいいように。
自分も変わろう。自分もそれを望んでいるのだから。
「はい?」
キャナルとヴォルフィード。2人がそんな決意を誓った瞬間、瞳を閉じたキャナルの体が輝き出す。
そのことに翔太は思わず顔を向けてしまう。もっとも、それは他の者達も一緒であったが。
それと共にキャナルが着ていた物が蒸発するかのように消えたかと思うと体に変化が起きた。
手足は力強くしなやかに伸び、胴体も伸び、腰もほっそりとくびれ、胸は豊かすぎるほどに張り出し――
顔付きも少女から女性へと凛々しくなり、エメラルドグリーンに輝く髪も長く伸びる。
そして、その身にかつてヴォルフィードがスカアハとして纏った衣装と武器が纏われていく。一部は違った形でだが――
やがて変化が終わったのか、キャナルは閉じていた瞳を開いた。
そこにいたのはかつてスカアハと名乗っていたヴォルフィードの姿を持つキャナルだった。
しかし、瞳は少女のような儚げな物から戦士としての鋭さを持つ凛とした物になっている。
ただ、それだけなら翔太は混乱はすれど、ここまで呆然としなかっただろう。
「ええと……キャナル……で、いいんだよな?」
「ええ、そうですよ、翔太」
「あ〜……うん、色々と聞きたいけど、それは後にしよう」
翔太の問い掛けに顔を赤らめながらも笑顔で答えるキャナル。その笑顔は少女らしさを残していた。
それはいい。翔太としては本当に色々と聞きたかったが、それがキャナルだとわかるものなので安心出来る。
その一方で――
「いやね、その服は……何?」
「え? 何かおかしいですか?」
両手、両膝を地面に付けつつうなだれる翔太の問い掛けにキャナルは首を傾げながら自分の体を見回した。
先程、スカアハの衣装が一部違うと言ったが、その一部が翔太にとってはツッコミどころが満載だったのである。
まず、胸の下腹部を隠す水着にも見える衣装。それがかなり小さくなっていた。それ、どこのヒモ水着? と言わんばかりに。
しかも、下腹部の方には小さいながらも金属板が貼り付けられており、それがなんというか淫らにも感じられる。
いや、ヒモ水着風衣装自体が淫らではあるのだが――
後、コートだった物がジャケット風になっていたりするが、ヒモ水着風衣装のせいで印象が小さくなっていた。
更に胸の方もヴォルフィードよりも大きくなってたりするのだが、ヒモ水着風衣装のせいで翔太は気付いていない。
《お前が悦びそうな物にチョイスしたのだがね》
「いや、だからってそれは――って、ヴォルフィード!?」
で、翔太の疑問に答えるようにキャナルからヴォルフィードの声が響いてくる。
そのことに突っ込もうとした翔太であったが、聞こえてきた声に驚くはめとなった。
「ちょっと色々と待てぇぇぇぇぇ!!? 何、この急展開!?
キャナルがヴォルフィードみたくなったり、エロコスプレみたくなってたり!? その上、なんでヴォルフィードの声まで聞こえてくんの!?」
《まぁ、なんだ。シンジの仕業ということにしておけ》
「あいつかあぁぁぁぁぁぁ!!?」
で、やっぱりというか混乱する翔太にヴォルフィードがあっさりと答えると今度は絶叫してたりするが。
ともかく、先程の雰囲気はどこへやら。一転してコントのようなやりとりに誰もが顔を引きつらせるのであった。
ある者達を除いて――
あとがき
というわけで、今回はキャナル立つでした。え? 話が唐突すぎる? うん、気にしないで(おい)
実の所、今回の話は2パターン考えてました。一方の方はキャナルが葛藤しながらも戦いを決意するというもの。
じゃあ、なんでそっちを没ったかというと……話がグドグドになりそうだったから(おいおい)
まぁ、流石に掲載長引かせるのもあれでしたし、描いてもらったイラストも早く掲載したかったので。
そういうのもあって、今回のような形になった次第です。
さて、次回はキャナル立つ……だけではなかったり、
キャナルが立ったことでそれに触発される者達が――でも、それは翔太を悩ませることに。
というようなお話です。ちなみにこの話は書き始めたばっかなので、掲載は……いつになるんだろ?
ともかく、次回またお会いしましょう。
押して頂けると作者の励みになりますm(__)m