in side

 というわけでノーディスに起きた事態を調べる為に俺達はレッドスプライト号で急遽向かうこととなった。
のは、しょうがないとしてだ――
「なんでお前達までいる?」
 そのノーディスに向かう最中、思わずそんなことを漏らしたけど。
いや、だってね。ネギ達も付いてきてるんだよ。むろん、ココネと春日も一緒に。
確かにタカハシさんに呼ばれた時に一緒に中には入ったけどさ。
「え、え〜と……なんと言いますか……」
「ま、その場のノリという奴だな」
 困った顔をするネギ君の代わりにドヤ顔で語るエヴァ。うん、怒ってもいいかな?
しかし、今更戻るのもあれなので、そのまま向かう事となったけど。さて、何が起きてるのやら。


 そんなわけで1時間も掛からずに到着したわけなんだが――
「すっごい警戒されてますね」
「しかたがないさ。いきなり見ず知らずの土地に投げ出されたんだ。警戒するのも当然だろう」
 俺の漏らした一言にタカハシさんはしょうがないって顔で答えてくれた。
まぁ、そうかもしれない。俺も初めてボルテクス界に来た時は……うん、死にそうだったね。
ともかく、この村の人達はこっちを凄く警戒している。
それでもタカハシさんの仲間の人達とノーディスのサマナー協会の説得のおかげで少しは話を聞けたそうだ。
もっとも、訳もわからないままにここに着たというだけらしいけど。
「ん? あ! キャナル様!?」
「本当だ! キャナル様だ!」
「みなさん……」
 と、キャナルに気付いた村人達が集まってくる。その姿にキャナルは安堵の表情を浮かべたけどね。
しっかし、キャナルって人気なんだねぇ。村人達が嬉しそうにしてるよ。
「でも、どうしてここにみなさんが?」
「それなのですが――」
 キャナルの問い掛けに村人の1人である老人が話してくれたんだが――
話の内容は先程よりも詳細に聞くことが出来た。なんでもキャナルが連れて行かれた後に村人達は心配していたそうだ。
神々はキャナルが罪を犯したと言っていたがとても信じられなかったそうだ。なにしろ、この村に多大な貢献をしてくれた。
決して、自分達を害するようなことはしていない。何かの間違いではないか? そう考えていたらしい。
そんなある日、村の上空に神の1人が現れた。なんだろうと見ていたら――
「我らが主に背きし者達よ。その罪を自らの命を持って思い知るがいい」
 なんてこと言い出したかと思ったら目の前に巨大な光を生み出し、明らかに攻撃してこようとしたらしいのだ。
村人達としては訳がわからず混乱していたらしい。というのも、神に背いた覚えが無い。そんなことも考えたことも無かった。
なのに、あの神は明らかに攻撃してようとしていて、もうダメだと思ったら――
「がっ!? ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」
 いきなり何かに胸を貫かれたと思ったら燃えてしまったそうな。
うん、何それ? 村人も俺と同じ事を思ってたものの、神が燃え尽きた後には何も残っていない。
何がどうなってるのか? 誰もが不安に思った時――
「気付かれるのは想定してましたが、まさかこんな八つ当たりをするとは……ふむ、そうですね。
あの人達をあのままにしておくつもりはありませんが、また同じことをしないとも限りませんし。移動させちゃいましょう」
 なんて、穏やかな声が聞こえたかと思うと村が光に包まれて――気付いたらここに来ていたそうな。
うん、しゃべり方からしてシンジだろうな。でな、あいつ何やってんの? いや、村を助けたのは良いとしよう。
でも、村が襲われそうになった原因作ったのもあいつなような気がするのは俺だけか?
後な、なんでここに移動させた? 聞く限りだとどうにもろくなことになりそうにもないんだけど?
「よし、殴ろう。シンジが来たら絶対に」
「あ、いや……いきなり何を?」
 俺の決意にタカハシさんが戸惑ってたが、そっちは置いとくとして――あの野郎、俺達に丸投げする気かよ。
うん、次に会ったら絶対に殴る。とまぁ、俺の決意はいいとしてだ。今の問題は――
「で、この人達どうしようか?」
「このままにしておくわけにも……いきませんよね?」
「ノーディスの人達にお願いするしかないだろうね。元の世界に戻してあげようにも、どこにあるかもわからないし」
 キャナルの元に集まる村人達を見てそんな疑問を感じるが、ネギも同じように考えていたようだ。
でもまぁ、結局はタカハシさんの言うとおりなんだけど。どのみち、俺達がどうにかするのも難しいしな。
そうするしかないんだけど……問題はキャナルか。明らかに落ち込んだような表情見せてるし。
さっきの村人の話で自分とこの神様がしたことに関してなんだろうけど……
「このままで終わらないよな?」
「ありえるな。もしかしたら、その神とやらがここに来るかもしれん」
 思わず出た疑問に腕を組むエヴァが答えてくれたが、やっぱそうだよなぁ。
何事も無くこのまま終わって欲しいんだけど……何か起こりそうで怖い。うん、本当に何も起きないでね。


「というわけなんですけど、出来ますかね?」
「君の頼みを断りたくはないのだが、現状では難しいとしか言えないな。
ノーディスの管理者達と話し合って、どのように受け入れるかを決めなければならないからね」
 で、しばらくしてウルスラさんとクノーさんと一緒にいたサマナーギルドのマスターであるジョージさんと話し合ったんだが――
まぁ、はいそうですかってわけにはいかないか。あ、ちなみにだがノーディスには市長とかそういうのはいないそうな。
代わりにノーディスを運営する所があって、そこの一番偉い人がノーディスの管理責任者となっているわけだ。
ジョージさんはその人達と話し合わなければならないと言ってるわけだが――
「一番の問題は食糧だろうな。ノーディスは決して貧しくはないが、大きく余裕があるわけじゃない。
一応、村の方でも畑と一緒にこちらに来たようだから、しばらくは大丈夫かもしれないが――」
 なんてことを言っているクノーさん。あ、そっか。そういう問題もあったよね。
なお、余談だがノーディスは海の幸と山の幸が高価だったりする。理由としては採取に危険が伴うからだ。
畑で作れる野菜などの作物に牛や豚なんかの肉を作ってる所は街の外れにあるが安全はそれなりに確保されている。
でも、海や山の幸は現地に行かなければ採取は出来ない。そこまでの場所がそれなりに離れてる上に悪魔が出るのを覚悟しなきゃならない。
なので、出回る数が少ないってのもあるけど、その分が値段に出てしまうわけだ。
 話がそれたけど、なんとかしないと食糧問題が発生しかねないってことでいいんだろうか?
それってやっぱ問題だよな? でも、どうしたもんか……とりあえず、シンジに会えたら殴るのは確定したが。
いや、なんかしょうがなかったかもしれんけど、出来ればこういう問題もどうにかして欲しいんだけど?
うん、しなかったら殴る。絶対に殴ってやる。
「もう1つの問題は村を守る必要があることね。ノーディスのそばにあるといっても、悪魔が襲ってこないとも限らないもの」
「それに関しては私達の方で請け負います。幸いにも部隊の1つがここに駐在する必要がありますので。
それを兼ねてという形になりますが、それでしばらくは大丈夫かと思います」
 困った顔をしているウルスラさんの意見にタカハシさんが答える。
そっか、ここだと悪魔に襲われる可能性があるのね。そのことはまったく考えてなかったよ。
でもまぁ、タカハシさんの仲間の人達がいるし、その辺りは大丈夫みたいだけど。
「そうか。私達の方でも交代で何人かを警護に回しておこう。しかし、いつまでもこのままという訳にはいかないが――」
 ジョージさんが村の方を向きながら、ため息混じりにそんなことを漏らしている。
確かにこのままってのはな。一番の原因であろうシンジはどこ行ったかわからんし。
なので、現状で出来ることはここで話し合ったことぐらいだろう。まったく、本当になんでこうなった?
それにキャナルが落ち込んでる。ものすっごく落ち込んでる。
もしかしたら、村がこうなったのは自分のせいと思ってるのだろうか? だとしたら、俺としては違うと思うぞ。
村がここに来たのはシンジが何かやらかしたせいだし、襲われたのはたぶんだがキャナルのせいじゃないだろうし。
ホント、どうしたもんだか――


 で、キャナルを通じて村人達にこれからのことを伝えたんだが――村人達はみんな不安そうな顔をしている。
まぁ、いきなりどこなのかわからない場所に無理矢理連れてこられた挙句に状況も(かんば)しくないとなれば当然かもしれない。
幸いなのはキャナルのおかげで騒ぎになってないって所だな。不審な目で見られてるのは相変わらずだが。
それでもキャナルが言うからしょうがないって感じでこっちの話を聞いてくれるのは助かってはいるけど。
うん、本当にキャナルがいなかったらどうなってたか……問題はまったく解決してないけどな。
「あ、あの……」
「ん、何かあった?」
「いえ、その……村がこちらに来る前に現れた神というのは……本当に村を攻撃しようとしていたのでしょうか?」
 キャナルが恐る恐るといった様子で声を掛け、問い掛けてくる。俺はそれに対してなんと言えばいいのかわからんかった。
いや、状況とかその神ってのが言ってたのを考えると村を攻撃しようとしてたのは間違いないだろうな。
問題なのは理由なんだが……俺の考え通りなら、すっごくくだらない理由な気がしてならない。
あくまでそんな気がするってだけだけど……ありえそうなんだよねぇ。
「ここの人達がそう見えた……っていう風に言うにはそいつが言っていたことがな〜……」
 かといってハッキリ言っていいものかわからず、こんな曖昧な返事になったけど。
が、キャナルも俺の言いたいことがわかったんだろう。悲しそうな顔でうつむいている。
ええと、この状況をどうしろと? たぶんだが、慰めはダメな気がする。知り合いが悪いことしてるってなると……な。
いや、なんか違う気もするけど、ニュアンスとしてはそんな感じかもしれない。だとすると、何かの間違いとか下手なこと言うわけにもいかんし。
そんな気まずい沈黙が続く……かと思ったんだけど――
「なんだ、あれ――」
 タカハシさんの仲間の人が空を指差している。表情はヘルメットのせいでわからんけど、声からして驚いてるって感じだった。
なんだろうと思って俺も空を見上げてみると、なんか曇りだしてて――ちょっと待て?
なんか、曇ってるって感じじゃないぞ。なんか、黒い(もや)か煙みたいなのが空の一カ所で渦巻いてるんだよ。
うん、嫌な予感しかしないな。あそこから変なの感じるし。まさか、変なのは……出ないよね?


 out side

 翔太が空の異変に気付く少し前、キャナルと話してる時に理華達はそんな翔太達を見つめていた。
理華、美希、ミュウは心配そうに……それでいて、羨ましそうに見ている。
ただ、羨ましいと思っているのはキャナルのことでは無く翔太の方であった。
スカアハ――ヴォルフィードがいなくなってしまったのに、ああして変わらずにいられる。
実際は翔太なりに悩んではいるのだが、理華達にしてみれば今の翔太はそのように見えたのだ。
だからこそ羨ましく思え……自分達も翔太のようになりたいと思うようになっていた。
何事も無ければ理華達は嫉妬に駆られていたかもしれない。でも、彼女達は見ているのだ。
本当の意味で命懸けで戦う翔太の姿を。だからこそ、どうにかしなければと思うようになる。
その反面、どうすればいいのかわからない。彼女達にはその術がわからないのだから。
 クー・フーリンは改めて翔太を初めて会った時から相変わらずな奴だと再認識していた。
それと共に今となってわかったこともある。翔太は弱者だった。力がではなく、そのあり方が。
その考えはある意味当たりでもある。翔太は元々一般人だ。それが本来一般人には対処出来ないような出来事に巻き込まれている。
これがゲームや物語ならそれによって自覚が芽生え、なんとかしようと考えるようになる――といったものだが、翔太にはそれが無い。
なぜか? 一言で言うならうんざりしてるのだ。すぐにでも投げ出して知らん顔をしたくなる位に。
それをしないのは逃げ出せないからだが、それでも泣き言を言ったことはあまりない。
言えないというのもあるが、言った所でどうしようも無いというのが大きいだけである。
それ以前にたまに漏らすとスカアハ――ヴォルフィードに怒られていたというのもあるかもしれないが。
それはそれとして、それを見てきたクー・フーリンは気付いたのだ。翔太は元の普通の生活に戻りたいのだと。
先程も話したが、翔太は巻き込まれた人間だ。故に本来はこのようなことをしている者ではない。
そのせいで翔太は普通の生活のありがたさがわかり、それに戻りたいと深く願っている。
クー・フーリンもそうさせたいと思っていた。いたのだが――
(でも、戻れるのかな、あいつ……)
 ふと、そんな考えがよぎるが、あながち的外れとも言えないのが実情だ。というのも翔太は様々なことに深く関わっている。
あらゆる世界の命運を賭けた戦いはもちろんのこと、ボルテクス界では優秀なサマナーにしてサマナーギルド設立の立役者。
また、ネギま!と幻想郷の重鎮には一目置かれた存在となりつつある。本人はそのことにまったく気付いてないが。
そんな彼が全てを終えたら元の生活に戻れるかはどうかだが……難しいかもしれない。
ネギま!や幻想郷にボルテクス界は彼を放っておくのは考えにくい。なまじ、翔太はそうさせるだけのことをしている。
場合によっては何かしらのことに彼を取込もうとするかもしれない。もし、そうなったら――
それを考えると翔太のことが不憫に思える。なら、自分は何をすべきか? その答えはクー・フーリンの中で固まりつつあった。
 フロストとランタン、アリスは戸惑いの色を浮かべながら翔太をみつめていた。
といっても3人――正確には2人と1人だが、考えていることはそれぞれ違う。
2人となるフロストとランタンは実の所、翔太がなぜあのような顔をするのかわかっていない。
何かがあったというのはわかるのだ。だが、その何かがわからない。その為にどうすればいいのかもわからなかった。
これは2人の精神が元の種族も相まって幼すぎるというのが原因である。知識と経験はあっても、それへの理解が追い付かないのだ。
でも、どうにかしたかった。翔太のおかげで自分達がいたのだから――
 アリスは改めてどうしていくかを考えていた。アリスとしては自分を助けてくれた翔太を助けたかった。
だが、種族こそ魔人ではあるものの、その力は悪魔よりも多少強い程度でしかない。
魔人融合という手段で翔太を強化は出来るが、同時に負担も強いるので多様は出来ない。
現状、自分は大したことが出来ていないのは自覚はしている。それでもなんとかしたかったのだ。
でなければ、翔太に申し訳無い。アリスとしてはそう考えていたのである。


このままでは彼女達は答えを見出せなかったのかもしれない。しかし、彼女達には存在するのだ。
自分達を照らす太陽となる者が――



 あとがき
またまた間が開いてしまって申し訳無いです。まぁ、また色々とありましたよ。
アルバイト増やしたり、その結果1つをやめることになったり(本末転倒とも言う)
nexus7を買ったけど、実は外でのネットが現状では出来ないのでどうしようかと悩んだり(ダメじゃん)
とまぁ、復帰に向けて少しずつ進めております。復帰に関係無くね?というツッコミは無しの方向で(おい)

あ、後前回言ってましたエロの方ですが、意外と反響が大きかったので掲載することにしました。
ただ、赤松先生の新作漫画の影響で修正しないとダメなんで、掲載にはもうしばらく掛かりますけど。
なお、内容は翔太×エヴァですが……濃い……というかヤバイですよ?(え?)

さてさて、本編の方は今まで通りに見えた翔太でしたが、その兆しは少しずつ忍び寄っていたり。
それに気付いたキャナルはあることを思い出し――というお話です。
次回の話はある程度書けてるので出るのは早い……はずです……たぶん――



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