「さぁ、話してもらいますわよ。あなた方が何者なのかを」
 戦いの後、詳しい話を聞かせろと言い出す黒子。
士達は別に隠す気は無かったので、場所を変えて話す事にした。
といっても、フォトショップに戻ってきただけなのだが。
「そうだな。俺達が異世界から来たと聞いたら、お前達は信じるか?」
「「「はぁ?」」」
 で、士が答えるのだが、問い掛けた黒子だけでなく美琴と当麻も何言ってんだ?というような顔をする。
実際、当麻達にしてみれば、そのような心境なのだが。
「あんたね……なに、ふざけたこと言ってるのよ?」
「あいにくだが、こうとしか言いようがないんだがな」
 睨んでくる美琴に士は気にした風も無く答える。
そのことに美琴はいらだちを募らせるが、黒子は何かを考えてから携帯端末で何かを調べ始め――
「お姉様。ちょっとおかしなことがありますの」
「なによ?」
「実はこのお店のことを簡単にですが調べてみたのですが、地図はもちろんのこと、書類上でも存在しないことになってますの」
「はぁ!?」
 その話に訝しげになる美琴だが、話した黒子が携帯の画面を見せながら出た話に驚いてしまう。
携帯の画面にはナビと思われる物が映されていたが、その画面では黒子達がいる所は空き地ということになっていた。
次にフォトショップがある住所の情報が掲載されている画面に切り替えるが、そこにも空き地ということになっている。
「能力とかじゃないの? それで幻を見せてるとか――」
「それをする理由はなんですの? 少なくともこの方々が私達にそんなことをする理由がわかりませんわ」
 携帯の画面を見ても反論しようとする美琴だが、黒子はため息を吐きながら問い掛ける。
というのも、士達の目的がわからないからだ。この学園都市に何かをするつもりだとしても、あまりにも目立ちすぎている。
士達は囮でというのも考えられないわけではないが、何を目的にしてるかによっては微妙な所だ。
「それで、あなた方はどのような目的で来られたのですの?」
「そうだな。俺達は――」
 黒子の問い掛けに士はこれまでの経緯と目的を話す。
しかし、話を聞いていた美琴と黒子は怪訝な顔付きになっていたが。
「あんた、それ本気で言ってるの?」
「俺達としては勘弁して欲しいが、あちらは本気でな。それで、あいつらを止める為にここに来たわけだが」
 睨む美琴に士はため息混じりで答えた。
士達とて戦いがしたくて異世界に来てるわけではなく、自分達の日常を守るために戦っているにすぎない。
だから、出来れば怪人達が諦めてくれればと思っている。ただ、それは無理そうだと半ば考えていたりもするのだが。
「まぁ、あなた方の話はともかくとしましても、モンスターが現れたのは間違いありませんものね」
「そういや、ビリビリはどうして攻撃しなかったんだ? お前なら、電撃ぶっ放して倒そうとしそうなもんだけど」
「そ、それは……」
 呆れた様子でため息を吐く黒子。というのも、士の話を信じるには証拠が無さ過ぎる。
フォトショップにしても、なんらかの方法で1日で用意したとも考えられるのだ。
しかし、そうなると怪人達のことがわからなくなる。
あまり考えたくないのだが、学園都市の技術ならあのような怪人を創り出すことも可能なのかもしれない。
だが、そうなるとあの時は人気が無かったとはいえ、堂々と美琴を襲う理由がわからない。
そのせいで怪人達を倒した士達をどうしても疑ってしまうのだ。
なぜなら、まるで怪人達の出現を予期していたような動きを見せていたのだから――
 一方で、その話で当麻はそのことに気付く。美琴の性格を考えるなら、怪人達を倒そうとするはずだから。
そのことに美琴はなぜか顔を背けてしまう。そのことに訝しげになる当麻と黒子。
「……使えなかったの」
「使えなかったって……何がだよ?」
「能力……使おうと思っても、頭痛がして……使えなかったのよ」
「「ええぇ!?」」
 渋々と答える美琴の言葉に首を傾げていた当麻が黒子と共に驚きを露わにした。
この学園都市の能力者は『無能力者(レベル0)』かコントロールをミスったりしない限り、能力が使えないということはありえない。
ましてや、美琴は『レベル5』の『超能力者』。そのコントロール能力は高く、とてもミスるとは思えなかった。
「どういうことですの? お姉様が能力を使えないとは?」
「わからない……どうしてだか、私にも……」
「ま、どうしてかは、なんとなくわかる気がするな」
「え?」
 黒子の問い掛けに美琴は怯えた様子で首を横に振る中、士の言葉に当麻が反応して顔を向ける。
で、士はというとため息を吐き――
「ようするに怖くなったのさ。自分の力に」
「そんな! そんなこと……無い……」
「まぁ、お前は素直すぎるんだよ。自分のしたことに気付いて、自分の力が怖くなったんだろうな。
頭痛はどうしてかはわからんが、それで無意識に能力を使うことを拒んだんじゃないのか?」
 士の言葉に大声で反論する美琴だったが、次に出た言葉は弱々しい物だった。
言われてみるとそうなのかもしれないと思ってしまったのだ。怖いと感じたのは事実だったし。
だから、次に出た士の言葉に何も言えなくなる。
 当麻と黒子も何も言えないまま美琴を見つめる。
心配してるのだが、なんと声を掛ければいいのかわからないのだ。
それは望や麗華、雄介も同じであったが――
「よし、お前。今日は当麻の家に泊まれ」
「「「「「「はぁ!!?」」」」」」
 士のいきなりの発言に麗葉と叶を除く全員が驚いてしまう。むろん、士の突拍子もない発言によるものだが。
「ちょ、ちょっと!? なんで、いきなりこいつの家に泊まらなきゃダメなのよ!?」
「そうですわよ!? こんな類人猿の家に泊まらせるなんて、危険すぎますわ!?」
 が、すぐさま正気に戻った美琴と黒子が怒りの形相で士に怒鳴ってきた。
まぁ、当然だろう。なぜいきなりそんな話になっているのか、理解出来ない。
それに対し、士は気にした様子も無く顔を向け――
「お前と当麻は一度ちゃんと話し合った方がいい。お互いの為にもな。
ああ、貞操とかそういうのは大丈夫だろ。当麻にそんな甲斐性は無さそうだし。
それでも心配なら、お前も泊まっていけばいい」
「そ、それはともかくとしても、寮監がお許しになるわけが――」
「誤魔化せ」
「なに、無茶苦茶言ってるんですのぉぉぉぉぉぉぉ!!?」
 なんとか反論しようとする黒子であったが、話していた士の言葉に絶叫する。
なお、黒子が絶叫する理由としては、当麻の家に泊まることよりも寮監が怖い為なのだが。
どんな人物かは……まぁ、機会があったら、皆様の目で確かめて欲しい。
ちなみに甲斐性が無いと言われた当麻はうなだれていたが。
 その後、なんとか考え直させようと美琴と黒子はあれこれ反論するのだが――
士に「能力をちゃんと使えるようになりたくないのか?」と言われ、結局は言いくるめられてしまう。
当麻はというと自分なりに断ろうとした。しようとしたのだ。
だが、誰にも話を聞いてもらえずに「不幸だ……」と床に両手と両膝を付いて落ち込むはめになり、雄介に慰められていたが。
 そんなわけで一同は当麻の家へと向かう。みんなで行ったのは、怪人達にまた襲われてもいいようにである。
その間も美琴と黒子は反論するものの士は右へ左へと聞き流すだけであり、その様子を当麻を覗く全員が苦笑しながら眺めていた。
話を聞いてもらえない当麻はうなだれっぱなしであったりするが……
そうして、2人の反論以外は何事も無く当麻の家にたどり着き、そこに美琴と黒子を残すと士達はフォトショップへと引き上げていく。
「あのさ……2人を当麻君の家に泊めて、本当に美琴ちゃんは能力を取り戻せるの?」
「無理だろうな」
「おいおい」
 ふと出た疑問に望が問い掛けると、士はあっさりと答える。しかし、その答えに雄介は思わずツッコミを入れてしまった。
というのも、能力を取り戻せるからと2人を当麻の家に泊まらせたのに、手のひらを返すかのような事を言われれば当然の反応だろう。
「美琴に必要なのは切っ掛けだ。しかし、普通にすごしてる分には、その切っ掛けと出会うのは難しいだろ」
「それで当麻の家に?」
「当麻と美琴は一度きっちり話し合った方がいいってのもあるけどな。
まぁ、難点があるとすれば、ああしたからといって必ずしも切っ掛けがつかめる訳じゃないってことだが」
「結局ダメじゃないか……」
 麗華の問い掛けに答えていた士だが、後の話を聞いてやはり突っ込んでしまう雄介。
しかしながら、士は美琴が能力を使えないのは心理的な物が大きいと睨んでいる。
そうなれば、何かをしたからといって能力が使えるとは限らないと考えたのだ。
結局の所、美琴次第。それで士はその切っ掛けをつかませるために、当麻と話し合わせようとしたのである。
むろん、士も言っていたが、話し合ったからといって切っ掛けがつかめる訳でもないのが問題だが。
「それも問題だが、3人だけで大丈夫なのか? 前回の事もあるのだぞ?」
「ああ……しかし、幸いと言えばいいのか、フォトショップと当麻の家が近い。
時々、様子を見ることはしないとな。そういうわけで、後で見張りの順番を決めるぞ」
 麗華の疑問に士はため息混じりに答える。場所的に当麻の家の周辺をうろつくことは、自分が不審者と言ってるような物だ。
そうなれば、当然警察のお世話になりかねない。学園都市では『風紀委員(ジャッジメント)』などになるかもしれないが。
それを避けるために、たまに当麻の家の様子を確かめるしかないと士は考えている。
幸いなのはフォトショップと当麻の家が近いので、様子を見に行くのが容易であることだろう。
本当は士達も泊まるか、フォトショップに泊まらせるべきなのかもしれないが――
士は当事者達だけで話し合わせた方がいいと考えていたのだ。
 そんなことを考えながら望達とフォトショップへ戻る士。その時、ある青年とすれ違い――士は思わず振り返る。
しかし、青年は路地で曲がったのか、すでにその姿は無かったが。
「どうかしたの?」
「いや、何か気になる物を見かけたような気がしてな」
 訝しげな顔をする望の問い掛けに、士はどこか真剣な眼差しで答える。
気になったのだ。どこか、自分に似た気配を感じた為に――


「片付いているのはいいのですが、狭い所ですわねぇ〜」
「しょうがないだろ。『無能力者(レベル0)』の上条さんが、いい所に住めるわけが無いじゃないか」
 さて、その頃当麻の家では、不満げな黒子に当麻がため息を漏らしながらも文句で返していた。
美琴はというと男の家に泊まるのを自覚し、恥ずかしさで赤くなっていたのだが――
「ちょ、ちょっと待って!? 『無能力者(レベル0)』って、本当に!? 私の電撃を防げるあんたが!?」
 気になる発言に驚きを露わにする。
当麻の右手は美琴の電撃はもちろんのこと、異能であれば触れることで無力化出来る。
となればかなり特殊な能力であるのは間違い無く、それなりに高いレベルだと思っていたのだ。
どうやら、黒子も同じ考えだったようで、同じく驚いていたりするが。
「しょうがないだろ。計測器とかには何の反応も出ないんだよ。だから、上条さんは『無能力者(レベル0)』ってわけ」
 どこか諦めの境地で話す当麻を美琴は呆然と見つめている。なんの冗談かと思った。
でも、当麻の表情を見ていると嘘とも思えない。その一方で黒子は腕を組みつつ、あごに手を当てて考え込んでいた。
当麻の右手の『幻想殺し(イマジンブレイカー)』は、異能であるならば触れれば無力化するという物。
むろん、全てを無力化出来るわけでも無いのだろうが、それでも破格の能力と言える。
しかし、それ故に『無能力者(レベル0)』なのだろうとも考える。
計測器の計測を右手が無力化してるのか、あるいは異能にしか反応しない為に計測器で計測出来ないのか――
そのどちらかのせいで計測が出来なかったのでは? と、考えたのである。
実際は別の要因もあるのだが、今の黒子ではそれを知ることは無かった。
 その後、3人で夕食の準備をし、そのまま夕食となり――
「そういえば、あんたってどうしてここ(学園都市)に来たのよ? やっぱ、その右手のせい?」
「いや、親父に送られた。右手はここに来てからだな、知ったのは」
「送られた、というのは?」
 その食事中、気になったことを美琴が問い掛けるが、当麻の返事に黒子が首を傾げる。
学園都市に来る子供は大抵自主的かスカウトか、なんらかの目的があってかのいずれかになる。
美琴と黒子は当麻の右手の能力でスカウトされたと思っていたのだが――
「いや、俺って昔っから不幸体質でさ。良く不幸な目にあってるんだよ。
それで気味悪がれたり、いじめにあったりして……本当に刺されそうになったこともあったな」
「「はぁ!?」」
「それでマズイと思った親父が俺をここに送ったらしいんだ」
 どこか遠くを見るように学園都市に来た経緯を話す当麻だが、美琴と黒子は驚きを隠せなかった。
まぁ、気味悪がれたりいじめにあったりとかはまだしも、刺されそうになったと聞けば美琴と黒子のような反応もおかしくない。
「さ、刺されそうになったって……刃物か何かで?」
「ああ、そうだけど?」
「それで……なんで、平気そうに言えますの?」
 美琴の問い掛けにきょとんとした顔で答える当麻だが、黒子は顔を引きつらせながら問い掛ける。
このことに2人は呆然とするしかない。刺されそうになったというのは異常だし、とんでもないことだ。
でも、当麻の様子を見てるとそれを自覚しているようにはとても見えなかった。
「あ、あんた、そんなことされて、なんとも思わないの!?」
「あ、いや……別に何も思わないわけじゃないけどさ。慣れたっていうか、ここまで不幸が続くと諦めたっていうか――」
 思わず怒鳴ってしまった美琴に、当麻は後頭部を掻きながら苦笑していた。
確かに不幸続きではあるが、ここまで続くと当麻としてはまたか……と、一種の諦めの境地に達しようとしていたのである。
まぁ、その不幸も場合によっては困ったことになるので、完全に諦めてるわけでもないが。
 一方で美琴と黒子は呆然としてしまっている。当麻を見ていると、不幸を不幸だと思っていないように見える。
実際はそうではないのだが、少なくとも2人にはそうとしか見えない。
なぜ、そうでいられるのか、美琴と黒子にはわからなかった。
「あんたは……それでいいの?」
「まぁ、いいわけじゃないんだろうけど……でもまぁ、これのおかげで困ってる人を助けられたり出来るからさ。
それでもいいかなって思ってるけどな」
 戸惑いを浮かべる美琴に当麻はやはり苦笑しながら答える。当麻は不幸体質故か、良く厄介ごとに巻き込まれたりする。
その時、困っている人がいれば、当麻は助けたりしていた。といっても、かっこいいとかそういう物では無かったりするのだが……
一方で呆然としたまま当麻の話を聞く2人。しかし、美琴だけはそんな当麻が眩しく見え、なぜか羨ましく感じていた。
だからだろうか、美琴と黒子はそれ以上聞けないままで夕食を終え、シャワーを済ませて寝ることになり――
その際、当麻が寝ているベッドに美琴と黒子が寝ることで当麻は床に寝るはめになり、「不幸だ……」と呟きつつ就寝――
「ねぇ……」
「なんですの、お姉様?」
 当麻の寝息が聞こえる中、寝付けられなかった美琴が声を掛け、同じく起きていた黒子が返事をし――
「あのね……私、誰かの為に能力を使ってるんだって思ってた……でも――」
 静かに、でも確かな声でそんなことを呟く美琴。正義感が強い為か、美琴はチンピラなどに絡まれた人を助けをしたりする。
自分がただそうしたかっただけで、深い意味があったわけではない。だからだろうか? 当麻を見ていると、自分がちっぽけに思えてくる。
当麻は例え自分が不幸な目にあい続けても、決して落ち込むことなく生きている。
その上で困ったことになっている人を助けようともしてるのだ。
あの時だって、怪人達に追い詰められそうな時に私を助けてくれて――
その時の当麻の姿を思い出して思わずかっこいいと思ってしまい、顔を赤くしていたりするが。
それでも、気分は落ち込みそうになる。当麻と自分を比べてしまったら。
「確かに士さんの言う通り、お姉様の能力は人には危険すぎる物ですわ。
現にお姉様があの時類人猿……上条さんに放った電撃の威力を考えれば、上条さんは死んでもおかしくはなかったでしょう。
あの時のお姉様はそのことを考えずに使っているようでしたから、そういう意味では自覚が足りなかったと言うしかありませんわね」
 そんな美琴の呟きに、黒子は静かに答える。
美琴が『低能力者(レベル1)』から『超能力者(レベル5)』に努力をしてなったのは有名な話だ。
それが凄いことだということは黒子だってわかっている。かといって、不良退治をしてもいいという理由にはならない。
電撃は人をただ傷付けるだけでなく、時にはたやすく命を奪うことさえある。
現に乾燥した時期に良く起こる静電気で心臓停止が起こったという話もあるくらいだ。
今までの不良退治でそのことが起こらなかったのは、たまたま起こらなかったからとも言える。
ましてや、当麻に放っていた電撃の威力は雷に匹敵するか、それ以上だ。
まともに受けていたら、当麻はどうなっていたか……今まで防がれていたせいで意地になっていた美琴はそのことに気付いていなかったが。
 そんな黒子の返事を聞いて、美琴は考えてしまう。自分の能力は本当はどう使えば良かったのかを。
もしかしたら、このまま使えないままの方がいいんじゃないかとも思えてしまった。
しかし、答えは見つからずに、そのまま眠りにつこうとするが――当麻の不幸体質がここでも発動する。
 いきなりだが、白井 黒子は美琴に心酔している。
まぁ、この表現はある意味正確では無いのだが……あまりの心酔ぶりに百合を疑われてるくらいだ。
実際、そうだろうというツッコミも聞こえそうだが……それはひとまず置いておこう。
ともかく、そんな彼女が美琴と一緒のベッドに寝ることになってじっとしていられるか?
答えはNOである。
(んっふっふっふ……お姉様〜♪)
現に美琴が寝静まったのを見計らって何かをしようとしていた。
本人は美琴を励まそうと考えてるのだが、よだれを垂らす顔を見ていると明らかにいかがわしい事をしようとしているようにしか見えない。
そろそろと右手を伸ばし、美琴に抱きつこうとしていた。
が、その様子に気付いた美琴は蹴り倒すことで迎撃したのだが――それがある意味まずかった。
言い忘れていたが、実は当麻は2人と一緒の部屋で寝ている。
普段の当麻なら、2人に遠慮して別の部屋で寝そうなものだが――
怪人に襲われるというある種のショッキングな場面に出くわした為か、あるいはその時の疲れのせいか……
そこまで思考が回らずに一緒の部屋で寝てしまったのである。
「きゃ!?」「ぐえ!?」
で、当然当麻が寝ていたのはベッドの下の床であり――そこに黒子が落ちてきたのである。
寝ていた当麻に襲いかかる重量感と痛み。それに悶絶しながらも何事かと目を覚ませば感じる柔らかな感触。
特に右手からは柔らかい感触を感じた。なんだろう? と思って見てみると、そこにはあられもない姿の黒子がいた。
士の言われて泊まることになった美琴と黒子だが、当然ながら寝間着などは持ってきていない。
なので、下着に制服のシャツを羽織っただけという姿で寝ていたのだが……
そのせいで落ちた際にはだけてしまい、当麻に肌の大部分をさらす結果になってしまったのだ。
しかも、何をどうすればそうなったのか、当麻の右手は見事に黒子の胸をわしづかみにしていた。
ご丁寧にブラの中に手を入れた状態で――
突然のことに理解出来ず、それでも恥ずかしさで赤くなり、泣きそうになる黒子。
「ご、ご、ご、ごめん!?」「きゃあ!?」
そのことに当麻は謝りながら後退り……直後に背後で柔らかな感触とぶつかり、左手がとても柔らかい物をつかむ。
「な、なん、え!?」
 このことに当麻は何だろうと振り向き、直後に青くなる。背後にいたのは美琴だった。
どうやら、後退りして彼女にぶつかってしまい……なぜか、左手が彼女の胸をつかんでしまう。
やはり、ブラの中に手を入れた状態で――
このことに美琴も恥ずかしさで赤くなり、それでも怒りを浮かべる。
「ご、ごめんなさい!? 上条さんはそんなつもりはまったくもって無かったので、って、おわぁ!?」「「きゃあ!?」」
 当麻は慌てて弁解しようと離れようとしたのだが、それがまずかった。
慌てたせいでバランスを崩し、美琴と一緒にベッドから落ちてしまったのだ。
まぁ、別にそれ程高いわけでも無かったので、ちょっと痛い程度で済んだが。
で、その痛みに耐えながら起き上がろうとする当麻。その時、両手に柔らかい感触が――
「う、うう……え?」
 なんだろうと顔を向け、再び青くなる。
というのも、彼の下には美琴と黒子がおり、どういうわけか当麻の両手は彼女達の胸をわしづかみにしていた。
やはり、ブラの(以下略)このことに顔を引きつらせる当麻。真っ赤になって当麻を睨む美琴と黒子。
「ご、ごめんな、ぶべら!?」
 直後、当麻は言い訳をするものの2人から平手打ちされ、部屋を追い出される羽目となった。
このことに当麻は「不幸だ……」と呟くが――
このことを彼のクラスメートである男子達が聞いていたら、ぶん殴られるだけでは済まなかったかもしれない。




 あとがき
そんなわけでラッキースケベ発動している当麻さんでした(おい)
いや、こういうのもたまには必要だよね?
それはともかく、自分の能力を考えるようになった美琴は今後どうなっていくのか?
そして、士がすれ違った者は何者なのか? それは次回のお話となります。
というわけで、次回またお会いしましょう。


押して頂けると作者の励みになりますm(__)m


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