本日、IS学園ではタッグトーナメント戦の真っ最中である。さて、タッグトーナメント戦の説明をしておこう。
本来はツーマンセルトーナメントと言うのだが、タッグを組むという点では変わりない。
このトーナメント戦、本来はタッグでは無く1対1で行われるものであった。
が、先日一夏と鈴の対戦中に起こった乱入事件を考慮し、不測の事態が起きても対応出来るように今回の形となったのだ。
また、このトーナメント戦は前回もそうなのだが、学年別に行われる。そして、各学年の優勝チームは総当り戦となる。
ただ、総当り戦はエキシビジョン的な意味合いが強いのだが。で、現在は1学年の決勝の真っ最中であった。
「お兄様とはいえど、今回は手加減いたしません!」
「それは構わないんだけど、ってうわぁ!?」
 地上にいるラウラの砲撃を空中でかろうじて躱す一夏。
「あいにくだけど、攻めさせないよ!」
「く! これでは!」
 一方では飛びかかりながらマシンガンを乱射するシャルロットから、飛んで逃れようとする箒の姿があった。
さて、他の者達はどうしたかといえば、こちらはダイジェストで紹介しよう。
まず、簪は本音とタッグを組み、2回戦でセシリアと鈴と対戦。
簪がセシリアのビット攻撃で足止めされている間に戦いに不慣れな本音は鈴の猛攻を受けて落とされ――
その簪もビット攻撃を捌ききれず、そのまま落とされてしまう。
 で、セシリアと鈴は準々決勝でラウラとシャルロットと対戦。こちらの対戦はなんというか、相性の悪さが如実に出た対戦であった。
セシリアのビット攻撃はシャルロットの特技とISの特性を生かした手数の多さで迎撃され、鈴の砲撃もラウラのISの停止結界により無力化。
これによりセシリアと鈴は先にラウラを落とそうと考えたが、それを察知したシャルロットの妨害を受けた。
更にビットを全機破壊されたこととライフルの取り回しの悪さが災いしてセシリアが先に落とされ――
鈴もなんとか戦ったものの、やはり数の差は抗いきれずに落とされてしまった。
 一方、一夏と箒はこれといった対戦相手がいなかったこともあって、順調に勝ち進んでいた。
まぁ、これはある意味運が良かったとも言える。というのも、箒のISは受け取ったばかりでまだ慣れていなかったのだ。
なので相手には悪いが慣熟訓練としてはちょうど良かったのである。
 さて、みなさんはなぜ一夏が箒と組むことになったのか? それが気掛かりだと思う。
といっても単純な話で箒が一夏に組んでくれとお願いしたからだ。ただし、それは一夏からしたらの話。
実は裏では女生徒達による熾烈な争いが起きていた。くじ引きと言う名の――なんだそれはと言うなかれ、女生徒達にとっては切実なのだ。
それに一夏は気付いてないが、今までのフォーゼの活躍もあって今や一夏は女生徒達の憧れの的だ。
故にタッグトーナメント戦とはいえ、一緒になりたいと考える女生徒は少なくないのである。
で、このままでは血で血を洗う争いになるかと思われた矢先、楯無の提案でくじ引きが決行され――
見事、箒が一夏とタッグを組む権利を得たのであった。なお、そのくじ引きの際、楯無は羨ましそうに見ていたのだが。
 それはそれとして勝ち進んできた一夏と箒だが決勝、なおかつラウラとシャルロットが相手となるとそうはいかなくなる。
なにしろ、お互いの手の内は今までの訓練や試合でほぼ知れ渡っているのだ。
で、それで不利になるのは一夏と箒だ。というのも一夏は武装が雪片二型のみで、ほぼ近接攻撃しか出来ない。
箒は一応射撃戦は出来る。ただし、箒の不慣れとラウラとシャルロットによって援護をさせてもらえずにいた。
「く、他の武装が使えれば」
 飛び回りながらシャルロットの攻撃を躱しつつ、悔しそうな顔をする箒。
というのも、箒のISは千冬の指示で今持っている2本の刀、雨月(あまづき)空裂(からわれ)以外の武装はプロテクトを掛けられているからである。
理由としては箒のISが束の手によって造られた第4世代型ISということに起因する。
早い話、現段階の第3世代ではまず見られない武装があるのだ。見る者が見ればおかしいと気付く程に。
そんなことになれば、フォーゼやゾディアーツとはまた違った騒ぎになる。それを避ける為にも武装を制限したのだ。
ただ、それも長くは保たない。明らかに専用機にしか見えないし、調べれば正規のルートで入手した物で無いのもすぐにわかるからだ。
その為、千冬らは箒のISが気付かれた場合、どのように言い訳するかで悩んでいたりする。
「なんというか、凄いですねぇ」
「ああまで戦えるのは、ゾディアーツとの戦いが経験となっているからだろうな」
 その千冬は真耶と共に管制室で試合の様子を見ていた。モニターには苦戦しながらも必死に戦う一夏と箒の姿が映されている。
しかし、武装の差と手の内を知られてるだけに、中々攻撃に転じられないのが見て取れる。
「しっかし、篠ノ之さんはまだしも織斑君は別の意味で大変よねぇ」
 その様子を見つつ、どこか呆れた様子を見せる衛理華。ちなみに彼女がここにいるのは真耶に誘われたからである。
確かに衛理華の言うとおり、一夏のISの武装は雪片二型のみ。
攻撃力は絶大なのだが、燃費が悪かったり近接しか出来なかったりと欠点が多い武器であった。なので、一夏としても対策をしたかった。
しかし、雪片二型は一夏のISの武装可能容量の大半を占めているので、別の武装を搭載することが出来なかったのである。
なお、他の武装は使おうと思えば使えた。実際、訓練時にシャルロットのISのマシンガンを使うことは出来たのだし。
なので、なんとか搭載出来ないかと思ったのだが……ここで困ったことが判明する。
対策の一環として雪片二型を一時的に外し、代わりに他の武装を搭載しようとしたのだが――
雪片二型を外すことが出来なかったのだ。なぜか、一夏のISである白式が拒否する形で。
理由は不明。開発した倉持技研でもそのような設定はしていないとのこと。
おかげで武装に関しては何も出来ず、結局雪片二型1本で戦うはめになったのだった。
それでも一夏は負けじと戦っている。フォーゼとしての戦いが生きてるのか、致命的な一撃を未だに受けていないのだ。
「あれ? そういえば結城さんは?」
「ああ、急な仕事が入ったみたいで、今はそっちに行ってるわよ」
 と、先程までいたはずの結城の姿が無いことに気付いた真耶が問い掛けると、衛理華は気にした様子も無く答えていた。
実際、電話が来て通話し、そのまま外に出て行ったのを見ているだけに。
ちなみにだが結城も真耶に誘われ、その電話が来るまで観戦の為に先程まで管制室にいたのだった。
 さて、その後の試合はこれと行った進展も無く――
結局、一夏と箒はエネルギー切れとなり、しまらない形でラウラとシャルロットの優勝が決まったのだった。
この際、白式の中である変化が起きたのだが……この時の一夏はまだ気付いていなかった。


 さて、その結城はというと、楯無と共に生徒会室にいたりする。
理由は総一郎らと通信越しの会議を行う為であった。
『さて、まずは……結城君から見て、ゾディアーツとはどのような感じだったかな?』
「そうだな。今まで戦ってきた相手とは明らかに何かが違うと思った。
何が違うかと聞かれたら困るが……印象的なのは憎悪そのものをぶつけているような感じがしたことだな」
 宙に浮かぶ形で投影されるモニターに映る総一郎の問い掛けに、結城は考える仕草を見せながら答える。
実際の所、結城としてもゾディアーツは特異な存在過ぎて判断が付きにくかったのだ。
『というと?』
「今まで私達が戦ってきた相手は、何かを目的にしていた。
それはサソリのゾディアーツも変わらないようだが……もう一方の方はただ憎悪をぶつける為に暴れている……そんな感じがする。
だからこそ、サソリのゾディアーツの目的がわからないのだが――」
 総一郎の更なる問い掛けに結城は浮かない様子で答えた。
今でこそ結城は戦いから離れているが、以前は本郷らと共に過酷な戦いを経験してきている。
それこそ、一夏もまだ体験していないような戦いを。だからだろうか?
その経験をしている結城にとって、ゾディアーツは特異な存在に見えたのだ。
というのも、結城が今まで戦ってきた相手は何かしらの目的があって行動する者ばかりだったのである。
むろん、中には違った理由の者もいたが、それでもゾディアーツは明らかに違った。
憎悪をぶつける為に暴れている。ただ、それが目的のようにしか見えない。
それだけならば別におかしなことでは無い。実際、普通の人も憎悪を発散させる為に突発的に事件を起こしたりする。
問題なのはサソリのゾディアーツの反応だ。もし、憎悪を発散させる為だけなら、倒されても別段問題は無いのだろう。
しかし、倒されたことに悔しそうにしていた所を見ると、そうでは無く何かしらの目的があってとも見える。
ここで問題なのはサソリのゾディアーツの目的だ。ゾディアーツとなった者の憎悪を発散させる為だけのようには見えない。
それを囮というのも無いだろう。でなければ助けるようなマネはせずに別途に行動するか、他の仲間にやらせてるハズなのだから。
『ゾディアーツになった者に何かをさせようとしてるのか?』
「わからない……が、関係は無いとも言えないな」
 本郷の問い掛けに結城はやはり浮かない様子で答えた。先程の理由により、結城としても判断が付かずにいる。
ゾディアーツとなった者に何かしらの目的があるのであれば、サソリのゾディアーツの行動や反応もある程度理解は出来た。
ただ、その目的がわからない。暴れさせることに意味があるのか、あるいはそれとは違う何かがあるのか――
『ふむ、これまでのゾディアーツのことは楯無君から報告を受けているが――その楯無君から見てどう思う?』
「すでに報告はしていますが、サソリのゾディアーツは私達が自分達を勘違いしてるようなことを言っていました。
それがどうしても気になっていまして……」
『なるほどな……』
 考えるような仕草をしながら答える楯無の言葉に、問い掛けた総一郎は静かにうなずいていた。
余談であるが、楯無はゾディアーツとのこれまでの戦いを映像付きで総一郎に報告している。
協力してもらう為には相手のことを知ってもらう必要があるからだが、それによって楯無の話を総一郎も知っていた。
そして、その話は今回の話し合いで無視出来ない物だと総一郎は考えたのである。
『今は判断するには情報が少なすぎる。だからといって、黙って見ているわけにもいかない。
そちらは早急な情報収集が必要として……篠ノ之 束博士だが、そちらはどうなのかな?』
「そちらは難しい所だが、早急に問題を起こす可能性は低いと思う。
むろん、油断は出来ないが、妹である箒さんとの関係が良好のようだからな」
 そう判断してから新たに問い掛ける総一郎に、結城は笑みを浮かべながら答えていた。
束が去った後も頻繁にと言うわけではないが箒はメールで束と連絡を取り合っている。
箒としても思う所があったらしく、束と話し合おうと考えているのだ。ただ、下手をすれば束を探す者達に気取られる可能性がある。
なので、今はメールでのやりとりで抑え、時を見て電話で話し合ったりしてはいるが。
 ちなみに総一郎らがなんでこの話をするかと言えば、束の動向が気になるからだ。
先の白騎士事件を見ると、束には世界規模での事件を起こすだけの力があると推測出来る。
それ故に警戒するのは当然だろう。姿をくらましてるだけに動向も気になるのだ。
なので、今回の束に関する情報を得られたのは、ある意味僥倖とも言えた。
『そうか……そちらの方は経過を見てみるとして……次の話なのだが、君達に伝えなければならないことが2つある』
「2つ……ですか?」
『うむ、1つ目は亡国機業(ファントム・タスク)のメンバーが日本に集まっているらしいと言う情報があった』
「なんだって?」
 話を聞いて訝しげな顔をする楯無に話し出した総一郎はうなずきながら答え、その話に結城が眼を見開く。
『亡国機業』――第二次世界大戦時に結成されたとする秘密結社であるが、その規模や目的等は不明な点が多い。
総一郎らの組織もそれを解明しようとしているのだが、未だにつかみ切れていない組織なのである。
『奴らは以前、織斑君の誘拐事件にも関わっている。その時に動いた組織は壊滅させたが……彼と無関係と見るのは早計だろうな』
 ため息を吐くような顔で漏らす総一郎。そう、昔一夏が誘拐された事件があったが、それを実行したのが亡国機業だった。
といっても正確にはその下部組織が行ったのだが、なぜ一夏を誘拐したかの理由は未だに不明である。
確かにその誘拐でドイツが動いたのは事実だが、誰かが何かをしたという証拠が見つかっていないのだ。
『こちらに関しては風見君と神君、城君に向かってもらうことになっているが、そちらの方でも注意して欲しい』
「わかった。それでもう1つは?」
『それなのだが……実はここ数日、IS学園付近で奇妙な反応を検知しているんだ』
「奇妙な反応……か?」
 話していた総一郎の返事に問い掛けた結城は首を傾げる。それに対し、総一郎は静かにうなずき――
『君達が気付かないのも無理はない。君達は基本的に織斑君達の護衛だからね。
まぁ、私達も気付けたのは偶然のような物なのだが……一瞬ではあるが、空間の歪みのような物が観測された。
それが数度……そうなると勘違いでないのはほぼ間違いないだろう』
 瞳を閉じつつ、静かに答えた。総一郎が言うように、結城が一夏達の元にいるのは一夏達の護衛の為だ。
知っての通り一夏は初の男性IS操縦者であり、またフォーゼとしてゾディアーツと戦っている。
それ故に色んな所から注目されており、時には良からぬ連中に眼を付けられたりもする。
その良からぬ連中が良からぬことをしても対処出来るように、監視という意味で結城がいるのだ。
本来は戦える者をそばに置いておきたかったのだが、総一郎らの組織は戦える者の人数が少ないという問題を抱えていた。
少数精鋭と言えば聞こえはいいが、一夏の存在によって引き起こされた問題を解決するには足りなすぎる。
なので、年齢から戦いから離れているとはいえ、多少なりとも戦える結城が一夏達の護衛に付いた。
結城ならば多少なりとも持ちこたえ、助けを呼ぶなりすることも出来ると判断されたからだ。
 それはそれとして反応の話に戻るのだが、総一郎らの組織でその反応を感知したのは偶然だった。
最初は何が起きたのかわからなかった。反応が一瞬で、それがIS学園付近で起きていることぐらいしか。
なので、最初は勘違いかなにかだと思っていたのだが……その一瞬が何度もIS学園付近で起きているとそうも言えなくなる。
だが、何が起きているのかは原因を含め不明。なにしろ、反応は一瞬だしIS学園付近とはいえ起きる場所もバラバラ。
唯一、空間の歪みのような物が起きてるぐらいしかわからないのだ。
『個人的には嫌な予感を感じている。なので、観測機器と共に本郷君と沖君に行ってもらうことにした。
観測機器が届き次第、結城君の所でも調べておいて欲しい』
「わかった。しかし、本郷はまだしも沖君が、か……」
『本人たっての希望だよ。どうも、織斑君と話がしたいようでね』
 意味ありげな視線を向ける結城に総一郎は苦笑混じりに答えていた。話題に出た一也はといえば、どこかすまなそうな顔を覗かせている。
というのも、気になっていたのだ。自分と出会ったことで仮面ライダーになろうとしたのではないかと。
その通りなのだが、一也としてはその辺りに罪悪感を感じてしまっている。
というのも、仮面ライダーとは時には悲しい出来事に出会う時もあるから――
その考え故に一也としては一夏と一度ちゃんと話をしておきたかったのだ。
「わかった。こちらでも調べを進めておこう」
『うむ、頼んだよ』
 結城の言葉に総一郎がうなずくと、モニターは消えてしまった。
その後に結城はため息を吐く。戦いこそなんとか勝てたものの、未だに問題が山積している。
特に一夏を取り巻く問題がだ。だが、結局の所はそれらを解決していくしかない。
「まったく、織斑君も大変だな」
「そう……ですわね」
 結城のぼやきに楯無がうなずくが、この時の結城は考え事をしていた為か気付かなかった。
答えた楯無はどこか遠くを見るような眼で考え事をしていたことを。


 その頃、我望はあの卵のようなイスに座りながら嬉しそうな顔をしていた。
「そうか、上手く行ったか」
「はい、国際IS委員会はしばらくは織斑君の方に注目するでしょう」
 嬉しそうな我望の問い掛けにこちらも笑みを交えてうなずく速見。
しかし、その光景に園田は首を傾げるばかりであった。というのも、詳しいことを聞かされてないからだ。
指示があったのは速見が用意したゾディアーツの援護をしろということのみ。なので、何が行われていたのかわからない。
今回のゾディアーツには不満も感じていただけに、園田としては気になってしょうがないのだ。
「失礼ですが、どういうことでしょうか? あのゾディアーツは資質があるようには見えませんでしたし――」
「ん? そうか、園田君にはちゃんと話をしていなかったね。
まぁ、我々の目的の為には国際IS委員会の目をそらす必要があったのだが、ちょうど良くドイツが動いてくれてね。
それを利用させてもらったのさ。おかげで我々の目的がやりやすくなった」
「そう、ですか……」
 嬉しそうな顔をする我望の言葉に問い掛けた園田は首を傾げながらも、どことなく納得といった顔をしていた。
園田も我望の目的のことは一通り知っている。目的の為にはホロスコープスを集めるだけでなく、場所も必要であると。
我望が言っているのはその場所のことで、その場所に目を向けさせない為に今回の事を起こしたと考えたのだ。
ただ、腑に落ちないのはその場所のこと。園田にはその場所がどこなのかがわからない。
しかし、それ程気になることでも無かったので、今は聞く気は無かったが。
「だが、油断は出来ない。亡霊共も嗅ぎ付けてきたようだからね」
「そのことなのですが、亡霊の件……私に一任してもらえないでしょうか?」
 が、急に顔を引き締めた我望の言葉に速見が一歩前に出て、そんなことを言い出す。
そのことに園田は視線を向けるが、我望は意味ありげな顔を向け――
「考えがある……ということかな?」
「ええ、まだなんとも言えませんが、上手く行けばこちらの都合通りに動いてもらえるやもしれません」
 鋭い瞳を見せながら笑みを浮かべる速見の言葉に、問い掛けた我望はあごに手をやりながら考える。
我望達が言う亡霊とは亡国機業のことだ。我望達も亡国機業の全容をつかめてはいない。
故に警戒するのだ。下手をすれば、自分達の目的も取込まれかねない為に――
「わかった。ただし、慎重にな」
「わかっております」
 我望の言葉に満足そうにうなずく速見。速見も亡国機業のメンバーが日本に集まっているのは知っている。
今はそいつらに接触を図ってから――と、考えていたのだ。
「さて、これからどうなるのか……楽しみだね」
 ゾディアーツのスイッチを握りながら笑みを浮かべる我望。その瞳は紅く怪しく輝いていたのだった。


 さて、戻ってIS学園の建物内。そこで楯無は1人歩いていた。楯無が参加する3年のタッグトーナメント戦は明後日の予定だ。
なので、今日明日はタッグを組む虚とフォーメーションを合わせるつもりだった。
なのだが、なぜか気乗りしない。というのも、あることを考えてしまうのである。
そのあることとは――
「あ、姉さん」
「ん? 簪ちゃんか。今日は残念だったわね」
「ええ……でも、しょうがないかも。セシリアや鈴も代表候補生だったしね」
 その時、簪と出会って思わず談笑してしまう。そして、話し合いながらふと思ってしまった。
もし、一夏がいなかったら、今のように簪と話し合うことが出来ただろうかと。
楯無がそのことを考えると、先程まで考えていたことを思い出してしまう。
よくよく考えれば、自分はことあるごとに一夏に助けられている。
簪との仲を取り戻してくれたり、前回のクララに襲われた時も一夏が来てくれなければ危うかった。
そう、あの時も私を抱きかかえてくれて……それを考えると胸が熱くなる。ついでにこれは千冬のこともからかえなくなったと考えていたが。
だが、同時に悩んでしまうのだ。簪も一夏のことを想っているのだろう。
そうであるならば、自分のこの想いを明かしたらどうなってしまうのか、それが怖かった。
もう、誤魔化せない。自分は……一夏に想いを抱いている。妹との仲を取り戻し、自分を助けてくれた一夏に――
だからこそ、悩んでしまうのだ。このままでは、同じ想いを持つ簪と再び衝突するかもしれない。
でも、一夏への想いを諦めたくはない。どうしたら……と、考えた所で楯無はあることを思い出す。
そういえば、一夏を想っているのは自分達だけじゃない。仮面ライダー部にいるほぼ全員も同じように一夏に想いを抱いている。
虚も一夏のことを気になりだしたようだし……たぶん、衛理華だけだろう。一夏を普通の男子と見てるのは。
それはそれとして、その彼女達の中で自分はどうだろうかと考えてしまう。
スタイルは負けていないつもりだが、彼女達の中では目立ってという程でもない。
美貌という点でもそうだろう。というか、一夏の周りにはオールマイティにそろいすぎている。
どうすれば、と考えていた所で簪に視線を向けていた。
「姉さん?」
 楯無の様子に気付いて首を傾げる簪。しかし、楯無は応える様子も無く、ただじっと簪を見つめ――
「ねぇ、簪ちゃん。一夏君って、姉妹丼に興味はあるかしら?」
「はい?」
 楯無の言葉の意味がわからず首を更に傾げることになった簪。
だからだろうか、この時の簪と楯無本人は気付いてなかった。楯無が一夏を名前で呼ぶようになっていたことに。


 どこかの家のリビング。そこに2人の青年と幼い女の子、少女に女性がいた。
その者達は何かに注目していたのだが、その時に壁際にある梁から何かが降りてくる。
それは写真撮影に使われる垂れ幕であったが、その垂れ幕には都市らしき光景が描かれていた。
しかし、その光景は見る者が見たらすぐにわかっただろう。それがIS学園を描いた物だと。
「今度はどこかの都市、みたいだね」
「今度こそ、魔法とかが無い所だといいんだがな」
 その垂れ幕を見た少女がそんなことを漏らすと、青年の1人が呆れた様子でぼやいていた。
「あ、いらっしゃ〜、ってあらら?」
 と、リビングの外でそんな声が聞こえてくる。何事だろうとリビングにいた者達は顔を向け――
「やぁ、士」
「海東……なんでいる?」
 士と呼ばれた先程ぼやいていた青年が呆れた様子で海東と呼ぶリビングにやってきた青年を見ていた。
そのことに他の者達も呆れた顔をする。というのも、この海東という青年。色々と困ったことをする者だからだ。
「実は手伝ってもらいたいことがあるんだけど……そのことも含めて、君に会って欲しい人がいてね」
「会って欲しいだと?」
「ええ、そうですよ。門矢 士君」
 海東の言葉に訝しげな顔をする士だったが、突然聞こえてきた声に誰もがそちらへと顔を向ける。
するとそこには上等なスーツを着て黒い髪をオールバックにした初老の男性が、杖に両手を添えながら立っていた。
「初めまして、わたくしデンライナーのオーナーです。以後、お見知りおきを」
「デンライナー? あの電王のか?」
「知ってるのか、士?」
 オーナーと名乗る初老の男性の言葉に訝しげな顔する士。そのことにもう1人の青年が問い掛けてきた。
「カードの情報は俺にも流れてくるからな。で、そのオーナーがなんの用だ?」
「ああ、なるほど」
「海東君の件は私共にも無関係では無いのですよ。なにしろ、この世界に危機をもたらしてしまいましたからね」
 士の返事に青年が納得すると、オーナーは士の疑問に答えていた。その返事に士は額に手を当てて呆れた様子を見せていたが。
「まったく……何があったのか、詳しく聞かせてもらおうか?」
 それでも話を聞こうと顔を上げる士。この時は一夏も士も総一郎らの組織もまだ気付いていなかった。
過去と現在と未来を結ぶ戦いが始まろうとしていたことに――




 あとがき
というわけでタッグトーナメントは簡単ながらに終了。
そして、新たなる展開……と思いきや、次回は特別編だったりします。
実はまだ先のつもりでしたが、これからの予定も考えて実行するにいたりました。
別名思い付き。というか、この話自体思い付きですが。詳しい設定やプロット作ってないし。

ご感想ありがとうございます。ちゃんと読ませて頂いてますよw
なお、要望とかもありますが、話の流れ上実行出来ないのもありますのでご了承ください。

さて、次回は一夏達の元に謎の男が現れる。
その一夏はどのような仮面ライダーになるのかを悩んでいる所で、ゾディアーツとは違う怪人に襲われる。
窮地に陥るものの、箒と憧れの者達の助けを受けるが――その光景を謎の男が見ていた。
いったい何が起きているのか? というお話です。というわけで、次回またお会いしましょう。



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