あいつがガンダムを造り直したら、こうなりました/前編


栄光のRX−78 ガンダム

その日、黒江達の前には1機のMSが立っており、黒江達はそのMSを見つめていた。
そして、誰もがそのMSから目を離せずにいた。なぜなら、それはただのMSでは無いのだ。
「なぁ……これって、どう見たって……」
「ああ……ガンダム……のはずだ……」
 思わず疑問となった声を漏らす黒江に、箒もまた疑問が残る声で答えた。
そう、彼女らの前にはあのRX−78ガンダム――全てのガンダムの原点となったファーストガンダムが立っていたのである。
しかし、そのファーストガンダムがここにあるはずが無い。なぜなら、あの1年戦争で機体は失われたはずなのだから――
「まぁ、見た目がそうだってだけで、中身はまるっきり別物ですがね。外見もスラスターやバーニヤ類とかは形が違ってますし」
 という声が聞こえ、黒江達は改めてファーストガンダムを見てみた。
確かに良く見てみると両肩と両足のスラスター類はどことなくガンダムMk−Uを思わせるし、背中のバックパックの形状も変わっている。
そう言われてから改めて見てみると、似て非なる物だというのが良くわかった。ちなみに現在なにやら作業中らしく、ガンダムの周りでクレーンやパーツがせわしなく動いていた。
「で、あんたか? これ造ったのは?」
「まぁ、当初は趣味で造った物ですがね。ちと依頼を受けて、検証用に使うことになりまして」
 と、ガンダムを指さしつつ、顔を向けてジト目で問い掛ける黒江にその人物は気にした様子も無く、穏やかな表情で答えていた。
アオイ シンジ――え、あんたなんでこんなとこにいるの? と言われてもしょうがない人物なのだが、その辺りの話は別の機会に話そう。
現在、シンジは表向きはゴップと偶然に出会った友人であり、その関係で連邦に協力しているということになっている。じゃあ、本当はどうなのかといえば、それは機械があったらにしよう。
ただ、その協力の内容がとんでもなかったりする。その辺りの話も別の機会とさせてもらうが、1つだけ言うとレーバテインの生みの親がシンジだったりする。
 なお、余談となるが黒江はシンジのことを色んな意味で疑問視していた。理由としては実は何度かシンジと勝負(色んな形で)しているのだが、どれも勝った試しが無いからだ。
こう聞くと黒江が負けてるように思われるが、実は黒江が負けたというわけでも無い。じゃあ、どういうことなの?と思われるが――
実際の所、いつの間にやらうやむやにされて、勝負が無かったことになってしまうのだ。おかげで消化不良の黒江はシンジを色々と疑っているのである。
一方でシンジが弱いとは思ってもいない。人伝(ひとづて)ではあるが、シンジが小規模とはいえバダンの前線基地を跡形も無く爆破したことを聞いているし、黄金闘士である自分やフェイトの全力からも逃れているのだ。
まぁ、逃れているというか、欺かれているというか……その辺りは黒江やフェイトのちょっとしたトラウマになっていたりする。主に恥ずかしさの方で――
ちなみになのははシンジに教えを請おうとしてたりする。なのは曰く『あれほど凄い正拳突きは見たことが無い』とのことだが、シンジは乗り気では無いようである。
「検証用というのは?」
「あれですよ」
 そんな中、箒の疑問にシンジはある方を指さす。箒と黒江が釣られて顔を向けると、そこにはMS用と思われるパーツや武装がいくつも並んでいた。
しかし、それだけではどんな意味があるのかわからない黒江と箒は首を傾げていたが。
「昔、FSWS計画というのがあったんですがね。ビーム兵器が主流になってからは廃棄されたも同然の計画だったんですが、昨今の情勢から見直しを含めて再検討されることになったんですよ」
 と、話しながらシンジは説明を続けた。FSWS計画――1年戦争時に発案された物で、端的に説明するとガンダムの強化案の1つである。
ガンダムに装甲と武装を新たに装着させ、火力・防御共に強化するという考えを元に計画された物であった。
考えとしては単純ではあるが、ガンダム自体にそれほど手を加える必要が無いのと手っ取り早く強化が出来る為、実際に造られていた記録もある。
しかし、後年はほぼ廃案同然の扱いとなる。重量の増加で地上運用が難しいこと。ビーム兵器が主流となったことで単純な装甲の追加では防ぎきれないことなど、様々な理由でだ。
もっとも、後年にフルアーマーZZなどの登場を見るに完全に無駄であったわけでは無いのだが――
「では、なぜそれをまた再開させようと?」
「理由は2つ。1つは先程も言った通り、機体その物はほぼ無改造で強化が可能だということ。流石に制限は付きますが、同様のことが量産機にも出来ますからね。
もう1つは私が開発したミノフスキーユニットがあること。これのおかげで運用の幅が広がったのもあります」
 箒の問い掛けにシンジは人差し指を立てつつ答えた。先程も説明したがFSWS計画でも装着する装甲・武装に装着機構を搭載する為、ガンダム自体はOS以外は大きく手を加える必要が無い。
それはすなわち他のMSにも使用することが可能だということだ。もちろん、出力や形状などで制限を受けるが、単純に強化も出来る利点もあるだけに見過ごせないのである。
 さて、もう1つの理由であるミノフスキーユニットとはなんなのか?だが、これは一言で言うと『ミノフスキー粒子版アークリアクター』と言える物だ。
アークリアクターってあのアイアンマンの?と思われる方もいると思うが、流石に形状こそ違う(全長2m程の円柱形)ものの構造としては近い物がある。
というのもサイコフレーム技術によって精製された触媒を密閉式の機器に入れ、その周囲でミノフスキー粒子を高速回転させることで更なるミノフスキー粒子を精製、その精製の際に電力も生まれるという代物なのだ。
電力の方は1基の出力こそ最新型の核融合炉には劣るが大きさと形状的に複数の搭載が可能であり、それによる総合的な出力は最新型の核融合炉と遜色ない出力を出せるどころか、数によっては凌駕する出力を出すことが出来る。
それに大きさ故に武装に直接搭載も可能となっている。また、このミノフスキーユニットは推進器にもなり、その性能は廉価版ミノフスキードライブといった所であった。
そのためミノフスキードライブには劣るのだが、ミノフスキーユニット自体は小型な上に推進剤の必要が無いので、スラスターやバーニヤの小型化・高性能化も可能となっている。
これによりミノフスキーユニット搭載MSの検討もされており、その検討用としてシンジが造ったガンダムがその内の1機となっていた。
「ま、暗黒星団とミケーネ相手に量産型MSじゃ対応が難しい相手もいますからね。現状、新型配備も難しいですし、バルキリーにお株を奪われてる所もありますから。
今ある機体をどうにかして使えるようにと考えた結果の1つがこれというわけです」
「それはわかるんだが、これって使えるのか?」
「武装と装甲自体には簡易的ながら変形するようにしてますから、サイズさえ合えば基本的にどの機体にも装着は可能です。
ただ、先程も言いましたが制限はあるのでなんでもOKというわけには行きませんがね」
 指を差しつつ問い掛ける黒江に説明していたシンジが答えた。シンジも言っていたが、現状の連邦は厳しい状況に立たされている。
なにしろ、暗黒星団から受けたダメージが大きく、戦線維持すら難しい状況にあった。そこはパルチザンやスーパーロボットらの活躍でどうにかなっているものの、だからといって現状に甘えるわけにもいかない。
そのための強化策としてシンジが半ば趣味で進めていた開発に目を付けたのである。
「しっかし、良くもまぁこんなの考えるよな」
「浪漫と実用性の両立が私のモットーですから」
「あ、シンジさん。用意出来ました」
 ジト目を向ける黒江にシンジが穏やかな顔で答える中、整備員の1人がやってきてそのことを伝える。
それを聞いたシンジ達が顔を向けると、そこにはスッカリと姿を変えたガンダムが立っていた。
両肩、胸、スカート、両ひざに新たに装甲が装着され、その両肩と両足のサイドにはスマートなデザインのスラスターも追加されている。
右肩の上には砲塔が伸びており、右腕にも2連装型のビームライフルが装着されていて、左腕にはどこかで見たようなシールドが装着されていた。
「あ、あのシールドってもしかして――」
「ええ、V2アサルトの物を流用してます。まぁ、そのまんまってわけでは無く、裏側にはミサイルを搭載してたりしますが。
後、本当ならウェズバーも搭載したかったのですが、まだ出来て無いので今回は見送りになりましたけどね」
 ガンダムを指さしながら問い掛ける箒にシンジは相変わらず穏やかな顔で答えた。
見た目的には追加された装甲が少ないパーフェクトガンダムのように見える。ただ、箒の指摘通りシールドの見た目はV2アサルトの物とほぼ同じ物だった。
これはただのシールドを使うよりは、より防御性能が高い方が良いという考えによるシンジのチョイスである。
「これ、大丈夫なのか? 出力とかさ」
「さっきも言いましたが、ミノフスキーユニットのおかげで出来る芸当ですよ。装着してる武装やスラスターにバーニヤ、シールドにも搭載してますからね。
その気になれば、ジムにも同じ装備が出来ますよ」
 思わず出てきた疑問を投げかける黒江にシンジはガンダムを見つめたまま答えた。もっとも、黒江としては本当か?と疑問に思ったのだが。
「それでこいつにはもう乗れるのか?」
「ええ、というかこれから試運転なんですけどね」
「じゃあ、それに私も乗せてもらってもいいか?」
「はいぃ?」
 問い掛けてきた黒江が瞳を輝かせながら更にそんなことを聞いてきたことに、答えていたシンジはどこぞの細かいことが気になってしまう刑事のような疑問の声を漏らしてしまうのだった。




 あとがき

というわけで、初めましての方には初めまして、お久方ぶりな方にはお久しぶりです、DRTです。
あんた、自分のSSやらずに何やってんだ? というツッコミを受けそうですが、思わずやりたくなってやってみました、909さんのSSのスピンオフ作品。
前々から909さんのSSは読んでいたのですが、こういうのをやってみたいな〜と考えてまして、今回は思わずやってみてしまいした。
一応、909さんのOKはいただいてるのですがね。みなさんにはいかがでしたでしょうか?
さて、後半の方ですが現在3分の2を書き終えてる状態です。後はモチベが維持出来れば……最近、モチベの意地が本当に難しくなったよ(遠い目)
後編はアーマードガンダム(名称仮)というか、シンジ君無双?なお話になるかと――
ではでは、後半でまたお会いしましょう……後半、いつになるんだろうか――



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