とってもとっても大きな手 優しく抱き上げてくれる

私たちとおなじひとみの色 優しく見つめてくれる

私たちの頭をなでてくれる きれいな手

私たちの頬に手をあてて 優しく囁く声

私たちに名前をくれたパパ 私たちに優しく微笑んでくれるママ

私たちは今ここにいる これが家族だといまならわかる

それがとってもうれしくて しあわせと感じる

この二人がとっても大好き



僕たちの独立戦争  第五話 
著 EFF



使い込まれ手に馴染む銃を手にクロノは突き進む。

かつて救えなっかた少女を救う為に。

既に研究所はダッシュとアクアに電子掌握されていた。

ガードマンはクロノの手によって次々と処理されていく。

研究員達はおのれの欲望を満たす為の実験を続けている。

………自らが犯した罪の重さを知らずに。

『クロノ、聞こえますか。

 ラピスちゃんは現在は第一ラボにいます。

 それ以外は資料保管庫と呼ばれている場所にカプセルがあり二人の子供がいます』

「資料保管庫か、ふざけているな命をなんだと思っているんだ」

コミュニケからの通信にクロノは怒りを現していた。

『そうですね、マスター。

 命を弄んだ報いを味わってもらいましょう』

「何をする気だ、ダッシュ。」

『保管庫に三名の研究員が向かってます。

 おそらく子供達に実験をするつもりでしょう。

 部屋に入ると同時に扉をロック、消火システムを使い二酸化炭素を充満させ窒息させます』

「まかせる。ただ子供達に被害はないな」

『はい、カプセル内の為安全は確保できます。お任せ下さい』

『クロノ、このやり方で第一ラボ以外の研究員を……処理しますか』

「…………アクア無理せず休んでいいぞ。

 俺の記憶を見るのと実際見るのはキツイからな」

『いえ最後まで見ます。

 貴方の側にいると決めた時から覚悟は出来ています。

 だからそれ以上は言わないで……』

気遣うクロノにアクアははっきりと告げる。

「…………そうか出来ればアクアにはこんな汚い世界よりも綺麗な世界にいて欲しかったよ」

『クロノ、私は温室の花になる気はもうありません。

 それ以上は聞きたくありません』

「すまない、アクア。

 愚痴はもう言わないよ。

 約束するよ、君は俺が命に代えても守るよ」

『それは嫌です。

 命に代えてもなんて言わないで下さい。

 一緒に生きるんですよ、私達はこれからラピスちゃん達と共に』

一緒に幸せになろうとアクアは告げる。

「……強いな、アクアは」

『ええ、これからママになるんです。

 もっともっと強くなりますから頑張ってください、パパ♪』

冗談のように話すアクアに気遣ってくれてるなとクロノは思う。

「……ああ、俺も強くなるよアクア」

『でも泣きたくなったら、泣いてもいいですよ、クロノ』

(いい雰囲気ですね。邪魔はしたくないんですが困りましたね)

「状況はどうだ、ダッシュ。」

『……はい、保管庫は処理済です。アクア様準備はよろしいですか』

『は、はい……これでいいですか、ダッシュ』

『はい、大変よく出来ました。

 アクア様いい腕してますね』

『そうですか、訓練次第ではもっと上手になれますかダッシュ』

『ええ訓練プログラムと機材を後でお渡しします。

 どうやら私経由でマスターとのリンクシステムが構築されていますので、

 私に連絡して下さればいつでもマスターと会話が出来ますし、

 ジャンプのバックアップも万全です』

「ちょっと待て、ダッシュ! 

 リンクなんて聞いてないぞ。どういう事だ」

『はい、先ほどの検査で分かりました。詳しい事は後ほどで』

「…………わかった、第一ラボに着いた他はどうだダッシュ」

『全て処理が完了しました。

 後はマスターがラピスを救出するだけです』

「ロックを解除してくれ、ダッシュ行くぞ」

『はい、マスター』


「ん、誰 <ドン!ドン!>

扉が開かれ振り向いた研究員の額を撃ち貫き、

周囲に血の雨を降らせながらクロノは跳躍してラピスを研究員達から守るようにその前に降り立った。

続けて発砲、銃声が轟く度にまた一人血の海に沈んで逝く。

その顔には、何故という疑問を残して、

やがて研究主任を残し全てをクロノは処理した。


「けっ警備員は何故来ない、きっ貴様は誰だ!

 私達の研究の邪魔をするな、野蛮人が!」

研究を邪魔されて怒鳴り散らす男にクロノは冷めた声で告げる。

「警備員は全て処理した。

 この研究所で生きているのは貴様と俺だけだ。

 覚悟は出来たか人殺しよ」

「何だと私の崇高な研究を馬鹿にするのか、ふざけるな!」

「……小さな子供を犠牲にする研究の何処が崇高なんだか」

馬鹿にするように話すクロノに研究主任はラピスと道具のように言う。

「モルモットをどう使おうが、私の勝手だ!

 もう一度言う、私の…ヒッヒィ――――――――」

<ダン! ダダダン!>

その言葉にクロノの体から殺気が研究主任に放たれ、

研究主任は腰を抜かし無様に這いずりながら逃げようとしたが、

銃弾がその手足を撃ち抜き、地面に這い蹲らせた。

クロノは机にある無針注射をとり近づいた。

「グァ、いっ痛い、たっ助けてくれ!

 頼む私にはまだするべき研究があるんだ」

「安心しろ、喜べお前はこれから崇高な研究の実験体になるんだ」

「そっそれはまだ未調整なんだ。

 人体にどんな影響があるかわからないんだ、やめろ!」

クロノが手にする無針注射器を見て研究主任は叫んだ。

「だからお前の体で試すんだ。いつもと同じ事だろ、喜べよ」

そう言うと首に当てるとトリガーを引いた。

「ちっちが <プシュ――> ガァ―――――っ」

体を震わせ死んでい男をクロノは鋭く睨み続けて、弱々しく呟いた。

「アクア覚えておいてくれ。

 命を弄ぶ事の怖さを……悲しみを」

『……はい、私は絶対に忘れません。

 そちらにジャンプしても良いですか、クロノ』

「………ああいいよ。ラピスに会いたいかい、アクア」

『それもありますが今の貴方を支えたいんです。

 ……クロノ、泣きたい時は泣いてもいいんですよ』


ボソンの輝きが優しく部屋に光り、アクアがクロノを抱きしめた

「大丈夫だよ、アクア。

 俺も父親になるんだ、もう弱音は言わないよ」

アクアに微笑みながら囁き、ラピスの元に近づき膝をつき手を伸ばした時、

ラピスがその手に噛み付いた。

「ウ、ウゥゥゥ」

その瞳に涙を浮かべその身を震わせて。

(間に合った、今度は大丈夫だ。俺は救えたんだ、ラピスを)

クロノはラピスの頭を優しく撫でるとラピスは驚き見つめていた。

アクアが横からラピスを抱きしめて優しく尋ねた。

「私はアクア。あなたのお名前は」

「シリアル220」

何も知らず話すラピスにアクアは事態の深刻さを知り研究員に怒りを覚えたが、

クロノが優しくラピスに話しだすとそれを見る事にした。

「それは違うよ。それは名前じゃないよ」

「ジャアワタシニハ、ナマエガナイ」

「それでは私が付けてあげましょうか」

「ソウシテホシイ、ナマエホシイ」

「……ではラピス、ラピス・ラズリはどうかしら」

「ラピス・ラズリ?」

「そうこれが君の名前だよ。ラピス・ラズリ」

何故だか胸が熱くなり、ラピスはアクアにしがみつき泣き出した。

どうしていいのか分からない。

何か話さないといけない様な気がするがどうすればいいのか分からない。

もどかしくて泣く事しかできないラピスをアクアは優しく抱きしめていた。

「アクア、俺は保管庫にいる二人の子供を助けに行く。

 ラピスは任せる」

立ち上がるクロノのマントをラピスが握りしめた。

「ドコイクノ、ワタシモイク」

「貴方のお友達を助けに行くの、歩けるラピス」

アクアの問いにラピスは頷くとアクアのさし出された手を握った。

アクアはその手を優しく握り返し微笑んだ。

(アタタカイ)

繋いだ手から伝わる温かさにラピスは嬉しくて微笑んだ。

クロノはそれを確認すると保管庫へ周囲を警戒しつつ歩き出した。

保管庫の前に着くとクロノが先に入った。

アクアがラピスを見ると顔を青ざめ震えだしていた。

アクアが優しく抱きしめると、

「マタカプセルニハイルノ」

怯えるように呟くラピスにアクアは微笑み言う。

「違うわラピス。ここにいる二人の子供を連れて、外の世界に行くの」

「ソトノセカイ?」

「そう、青い空が広がるとっても明るい世界よ」

「いいぞ、大丈夫だ」

クロノの声を聞き、アクアはラピスを抱きかかえて部屋に入った。

保管庫の中の研究員の死体をかたずけ、カプセルの溶液を抜き始めた。

クロノはアクアに抱きかかえられたラピスを見て、

「ラピスはアクアを気に入ったようだな」

「少し怯えさせましたから抱えてきたんですよ、クロノ」

「……そうか、すまんな。ラピス」

クロノに頭を撫でられラピスは嬉しそうにした。

「ン…………」

『マスター、カプセルを開きます。よろしいですか』

コミュニケから聞こえる声にラピスが怯えたがアクアが優しく答えた。

「大丈夫よ、アレはダッシュ。

 私のお友達で、ラピスのお友達ですよ」

「ダッシュ、オトモダチ」

ダッシュはカラフルなウィンドウを見せてラピスに答えた。

『はい、ダッシュと言います。ラピス仲良くしましょうね♪』

突然現れたウィンドウに驚きながらラピスは返事をした。

「…………ウン」

ラピスを降ろすとアクアは検査服とタオルを持ち、

クロノがカプセルから抱き上げた、青い髪の少女の体を優しく拭き始めた。

少女はアクアを見つめながら、

「マタジッケンスルノ」

と聞いたが、アクアは首を振り、

「違うわ、これから外に出るの。もう実験はしなくていいのよ」

と優しく答えた。

「ソト、モウイタクシナイノ」

服を着せながらアクアは少女を見つめて微笑み話した。

「もう痛い事はしないの大丈夫よ。これからは私とクロノが守りますから」

「ああ、大丈夫だよ。君の名前は何かな」

「シリアル209」

「それは違うよ……よし、セレス・タイン。

 今日から君の名前はセレス・タインだよ」

「……セレス・タイン?」

「そうだよ、嫌かな」

クロノの声に首を振り抱きついた少女は疲れたのか目を閉じ眠りついた。

「あらあら懐かれましたね、クロノ♪」

「そうだな、……ん、どうしたラピス」

「ワタシモシテホシイ」

クロノに抱きかかえられているセレスを見てラピスはクロノに抱きついた。

「ん、おっとと」

セレスとラピスを抱きかかえるクロノを見ながらアクアは、

「ちょっと妬けますね。ダッシュ次を始めて下さい」

『わかりました、アクア様』

「クロノ、私がやりますので二人をお願いします」

「ああ、わかったアクア」

最後のカプセルが開かれアクアが少年を抱きかかえてクロノの側に来た。

「マタジッケン」

「違うよ、これから広い外の世界に行くんだ。実験なんてしないし、痛い事もしないよ」

「ソト、ボクソラトウミガミタイ」

「ええ、これからはたくさん見れますよ。

 私はアクア、彼はクロノ、貴方の名前は」

「シリアル215」

「それは名前じゃないですよ。……そうですね、クオーツ・アンバーでいいですか」

薄翠の髪の少年が頷くとクロノが、

「なかなかいい名前だな。よかったなクオーツ」

「………ウン」

『マスターこれからどうしますか。こちらに戻られますか』

「いや、この子達を島に連れて行くよ。

 お疲れ様、ダッシュ」

ここにはいなくて声だけの人物にクオーツは聞いてきた。

「…………ダッシュ?ダレ」

「俺の友達のダッシュだよ、クオーツ。」

『初めまして、クオーツ。ダッシュといいます、よろしく』

「…………………………………………」

どう答えていいのか分からないクオーツにアクアが優しく話す。

「こういう時はよろしくでいいんですよ、クオーツ」

「…………ヨロシク、ダッシュ」

『はい、こちらこそクオーツ。

 ではマスター、例の資料とアカツキさんへのメールは私が送っておきます

 安全の為マスターがジャンプしてください。

 明日でいいのでアクア様の訓練用の端末機を取りに来てください』

「わかった、ついでに計画の事も教えてくれ」

『はい、端末を置く事で衛星による監視システムが使えますので、

 テニシアン島の防衛に役に立つと思われるので予備のコミュニケをお渡しします。

 アクア様、お体の事で問題があればすぐにご連絡してください』

「体がどうかしたのか、アクア」

「クロノの経験が入った為に体が反射的にクロノの動きを真似するから危ないの。

 だから木連式武術とジャンプを教えてね♪」

「ああそういう事か、わかったゆっくりでいいかな」

「はい、経験があるから型を見て組み手の練習をメインでいいと思う。

 ダッシュは、半年から1年で大丈夫になるって教えてくれたわ。

 クオーツ、私とクロノの間に入って、……そう念の為フィールドは二重にしましょう」

「よし、ダッシュ。あとは任せるぞ、ジャンプ」

『はい、お任せ下さいマスター、アクア様』

ボソンの光を見ながらダッシュは思う。

(ラピスが助かって良かった。

 昔のラピスではないのが残念ですが、セレスとクオーツのお二人もいますし楽しくなりそうですね♪)

研究所のデーターを改竄しアカツキへのメールを送りながら、

これからの事に期待して楽しんでいた。



―――ネルガル会長室―――


ネルガル会長アカツキ・ナガレは退屈な書類整理に追われていた。

「どうしてこう書類はあるんだろうねぇ、そろそろサボろうかなぁ

 ……ん、誰だろうこの回線を知る者は限られているんだけど」

目を鋭くし秘匿回線へのメールを確認したアカツキは直ちにエリナとプロスに連絡をとった。

「…………エリナ君、すまないがプロス君と直に来てくれ大至急だ」

エリナを呼び出しながらアカツキはこのメールの人物に思いを馳せていた。

「紅の魔女か……美人だといいねぇ」

…………どうでもいい事に思いをめぐらせているみたいだ。

しばらくしてエリナとプロス入室して来た。

「失礼します、会長。何かありましたか」

「ちゃんと仕事してるの、困るんだけど……書類はまだあるから」

「……まずはこれを見てくれ」

アカツキはメールを二人に見せた。

「なっこれはどういう事ですか会長! 

 私はこんな所に実験施設なんて知らないわよ。どういう事!!」

メールを読んだエリナは慌ててアカツキに詰め寄った。

「ふむ。前会長が残して社長派が隠していたマシンチャイルドの人体実験施設ですか…………」

「ちょっとこんなの公表されたらネルガルが消し飛ぶわよ!

 早く何とかしないと」

一刻も早く事態を収拾しようとエリナは慌てるがアカツキは落ち着いて話した。

「……いや、もう壊滅しているんだよ。この施設」

「……どういう事ですか、会長」

プロスが訊ねるとアカツキがメールの残りの部分を見せて話した。

「このメールの送り主の友人が壊しちゃって、友人の事を不問にしてくれと言ってるんだよ」

「ふざけないでよ!! 施設壊して不問にしてくれ!! なめてるの!!!」

怒鳴るエリナにアカツキは困った顔で話す。
 
「しかしねぇエリナ君、これ公表されたらネルガル潰れかねないよ。

 人体実験それも非合法のマシンチャイルドだよ」

「確かに公表されるとヤバイですな、しかも正体不明の人物」

「……ええとNSSでも分からないのその紅の魔女」

プロスの言葉を聞いたエリナは不安げに聞いた。

「聞き覚えはありませんし、なによりその友人の方はかなりの人物ですね。

 メールから推測するにうちのメンバーでも太刀打ちできるかどうかわかりません」

「…………ちょっとそんなにヤバイわけその人物」

「はい、施設に侵入し集中制御室を占拠し消火システムを使い研究員を殺害し

 あとはゆっくりと警備員を殺害していった所ですか。

 無駄なく殺して施設は無傷、経費が浮いて助かります」

「そうだねぇプロス君。

 施設が壊れていると施設を建て直すのに金が掛かるけどこれなら再利用できるね。

 どのみちいう事聞かないとダメみたいだし、その点はラッキーかな」

「出来ればウチのSSに欲しいですなこの二人。

 ……エリナさんには会わせられませんが」

プロスがスカウトしたいと匂わせる言い方をしたがエリナは怒り出す。

「どうしてよ!!

 何で私が会ったらいけないわけ、答えなさい!!」

「エリナ君も人体実験してるじゃないか、ボソンジャンプの」

「あれは志願制で本人の許可を取ってるわよ。私はキチンとしてるわよ」

「相手がそれを良しとするかは別だよ、エリナ君。

 一応プレゼントも貰ってるから、その友人は不問。

 脅迫されない限りは手出し無用いいね、プロス君」

「そうですな、これを貰った以上敵対する理由もないですし」

「なによ、プレゼントって」

「……エリナ君最後まで見てないのかい」

「えっと、どれよ…………これって」

メールの内容を見ていく内にエリナは驚きを隠せなかった。

「そう社長派不正のデーターの一覧だよ。

 これだけあるとかなり力を取れるねぇ、プロス君」

「そうですな。

 彼らは社長派を嫌い会長に連絡したんですね。

 メールを見れば分かりますよ」

「そうだね、兄さんには感謝しないとね。正直助かるよ」

「でも誰かしら『かつて貴方のお兄さんに救われたお礼にこれを送ります。

 この程度しか出来ない私を許してください。』って十分すぎるわね、わかる会長」

「皆目検討がつかないし見つける気はないよ。

 多分、姿を見せられないんじゃないかな」

「そうですな、では施設の隠蔽と不正データーの裏を取り社長派を拘束します」

「エリナ君もそのつもりで、勝手に調べて殺されても責任は取らないからそのつもりで」

「そんな事しないわよ!

 それより仕事するのよ、では失礼します会長」


二人が退出し仕事を再開したアカツキは考えていた。

(これで父上の残した物がほぼでたかな。

 後はボソンジャンプをどうするかだな。

 出来れば捨てたいけどネルガルが独占出来ればトップに立てること間違いないし、

 とりあえず現状維持で行くしかないかな)

アカツキもまたネルガルの妄執に引きずられている事に気が付いてなかった。

それが悲劇の引き金になることに気付くのはまだ先の事であった。



―――テニシアン島―――


クロノとアクアは眠りについた三人を見届けソファーに座り一息ついた。

その傍らにはマリーが控えアクア達に軽食の用意をしていた。

「アクア様、ラピスちゃん以外のお子様のお名前を教えてもらえますか」

「翠の髪の男の子が、クオーツ・アンバー、

 水晶と瞳が琥珀に見えたからそう名付けたんだけど良いかしら。

 青い髪の女の子が、セレス・タイン、

 これは天青の宝石セレスティンから名付けたのかしら、クロノ」

「ああいい名前だと思うんだが変かな、アクア、マリーさん」

「私はお似合いだと思いますよ、クロノ。

 みんな可愛いいい子ですもの」

仲良く眠る子供達を見ていたアクアは楽しそうに話す。

「はい、とってもいい名前だと思います。

 クロノさん、アクア様、さあ軽いものですがお食事になさって下さい」

マリーは二人の前にサンドイッチを差し出しお茶の用意をした。

二人は静かに食事をしてマリーの用意したお茶を飲み終えるとクロノが二人に語り始めた。

「以前の事だから参考になるか判らないが聞いてくれマリーさん、

 アクアも知ってはいるが確認の為に聞いて欲しい。

 おそらく三人は水にトラウマが在るかもしれない。

 以前のラピスがそうで、一人ではお風呂に入る事ができなかった。

 もしかしたら海が見たいと言ったクオーツは大丈夫かもしれないが気をつけて欲しい。

 それから夜は俺かアクアが付き添うようにしたい。

 魘される事があるだろう。

 後はドクターには悪いが白衣を医務室以外では着ないようにしてもらう必要がある。

 医師や白衣にトラウマがあるかも知れないからだ。

 当面は俺かアクアかマリーさんが側にいる事も絶対に必要だろう。

 グエンたちSSメンバーは慣れるまで時間が掛かるし一人だと泣き出すかもしれないしな。

 そうなるとメンバーもどうすればいいか困るだろう。

 荒事には対応できても育児には対応できないだろうし、オロオロするんじゃないかな。

 後、眠っているあの子達の体をIFS経由で調べたが異常はなかった。

 ……本当によかったよ。

 食事については一緒に食べてやらないと、

 家族で食べる意味を知らないために単なる栄養補給と思い、

 適当に食べて後はサプリメントでいいと判断するかもしれない。

 扱いが酷いので全くの無垢なる状態だから一般常識がずれているか何も知らないかも知れない。

 その事を十分に気を付けてくれ。

 特にアクアは変なイタズラを教えないようにしないとな。

 イタズラの意味が判らず子供では許されるが大人では許されない事も沢山あるしな」

「……クロノ、そんないい加減なことしませんわ。失礼しますわね」

「判りましたクロノさん、アクア様のイタズラには十分に注意しますのでご心配なく」

「マリー酷いですわ。

 私だってそのくらいの事は判りますし、あの子達は立派な紳士、淑女にしてみせますわ」

「……そうですね。

 もしあの頃のイタズラを教えたらクロノさんに全てを暴露しましょう」

「マッマリー!!

 それだけは止めてお願いだから。変なイタズラは教えませんから!!」

慌てるアクアを見ながらクロノは幼い頃のアクアを知りたがった。

「……俺は聞きたいけどな、アクアの小さい頃の話」

「ダメです!!

 絶対ダメですよ、クロノ」

「…………残念だな。

 さぞかしお転婆でイタズラ好きだけど優しくて可愛い少女だったんだろうな、アクアは」

小さい頃のアクアを思い浮かべて楽しそうに話すクロノにアクアは顔を真っ赤にしていた。

「あぅ(どうしてさりげなくそんなセリフがでるの、クロノのバカ)」

(恐ろしい位にピンポイントで、歯が浮くようなセリフを真顔で言えますね、クロノさん。

 でもある意味アクア様にはいいかもしれませんね。

 実際大人しくなられましたし私達の苦労が減りました)

「どうかしましたか、マリーさん。何か問題でもありますか」

「いえ特に気になる事はありませんが、

 あの年頃の子供は好奇心旺盛ですから疑問には出来る限り答えないとマズイと思われます。
 
 特に夜おやすみになられる前に今日は何があったかを聞いてあげる事が大事ですね。

 自分から話す事によって人見知りが多少は緩和されますので情操教育にはいいと思います」

「……そうですね、マリー。私のときもマリーがそうしてくれましたね」

「良かったな、アクア。

 側に家族がいてくれて、そういえばラピス達の事はSSメンバーには告げたのか」

「一応グエンには連絡するように言ってはありますが問題でもありますか?」

「……問題というか、アクアは大事な事を忘れているんじゃないかな。

 SSメンバーに負担をかける以上、全員に礼を言っておかないとダメだよ。

 何も言わないで従ってくれるのが当たり前になってしまうのはいけないよ、アクア。

 働いてくれるものに対して、たった一言ありがとうご苦労様でしたも言えない者に人はついて行かないよ」

「……そうですね、クロノ。

 いつの間にか忘れかけていましたね。

 クリムゾングループではなく、

 アクア・クリムゾン個人に付いてくれる者に礼を言うのを忘れていましたわ。

 ありがとうクロノ。これからは気を付けます」

クロノはアクアの隣に座りその手をアクアの髪を撫でながら、

「大丈夫、アクアは俺が言わなくても気が付くさ。優しく思いやる人だから」

(やはりアクア様にはクロノさんが必要ですね。誰よりも痛みを知る人だから優しくなれるんですね)

「マリーさん、すいませんが毛布を貸して下さい。

 俺は今夜はここで寝ますからこの子達の側にいますよ」

眠る子供達を見ながらクロノは話した。

「ではアクア様の分も含めて二つでいいですね」

「ええそうしてくれますか、マリー。私もこの子達の側にいますから」

「ではご用意しますので、暫くお待ち下さい」

マリーが退出するのを見てクロノがアクアに告げた。

「アクア、人が死ぬのを見たのは初めてだろ。もし悪夢を見て怖くなったら、俺を起こせよ。

 そしたらまた眠るまで側にいるからな」

「……貴方の記憶以上の悪夢はありませんから大丈夫です。

 ごめんなさい……思い出させて」

「いや気にしなくてもいいよ。俺自身、最悪の悪夢だと思うからね。

 でもね意外と人はタフなんで慣れるけど……でも忘れないでくれ、

 命の尊さを……それを忘れたら俺のような復讐鬼になるから、

 平気で人を殺せる大馬鹿野郎になるから」

「嘘です。貴方はいつも苦しんでいましたね。

 痛みを知る優しい人だから……全部知っているんですよ、私は」

「……そうだな、アクア」

「そうですよ、クロノ。だから私と二人の時は強がりをやめて、弱音を吐いてもいいんですよ。

 私は貴方の妻になるつもりですからね、……誰よりも愛してますわ、クロノ」

「そうか、ここに俺も誓うよアクア。お前を守り最期まで側にいるよ、愛してるよアクア」

「とりあえずここにいる三人のパパとママになりましょうね、クロノ」

「なんか親馬鹿になりそうだけどなよろしく頼むよ、アクア」


安らかな眠りにつく、三人の寝顔を見ながら、

こうしてゆっくりと夜が更けていった。


翌日、部屋に入ったマリーはアクアに抱きつくように眠るラピスとセレスを見て微笑んでいた。

クオーツは起きだして窓から空と海をクロノと楽しそうに見ていた。






―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
EFFです
本当は火星まで書きたかったのに力不足でした
キャラクターを増やして大丈夫なのか、不安ですが書き続けていこうと思います
次は火星にアキトが行ければいいと思うのですが
先にアクアさんの暗躍を書くのか、迷っています

シリアスが書けるか、それともラブコメで終わるのか
力を問われるEFFですね・・・不安です

では第六話を待っていて下さい

追記事項

ここまでは変化がありませんでしたが火星編から変えていきます。
絶対に変えていきますので安心して下さい。




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