葛城ミサトの昇進話を聞いて、アスカは疑問符を付けていた。

『何で、あんなザルな作戦指揮でなんて昇進すんのよ?』
『一応はオバサンの作戦指揮で使徒を倒した事になっているから』
『なによ、それは?』
『確かにおかしいわ』
『レイもそう思うでしょ』
『ええ、リツコさんのフォローがあってこそだから』
『第四使徒戦なんて喚き散らしていただけ』

シンクロテスト用の擬似プラグで三人は話し続けている。聞いている技術部のスタッフは何度も頷いている。

『リツコお姉ちゃんの方が昇進しても良いと思うけど……対外的に不味いのよね。
 作戦部長より技術部長の方が作戦立案が優秀なんてバレたら、"じゃあ、なんでそんな人物を作戦部長にしたんだ"よ』
『そりゃあ……なるほど、上の責任になるから偽造しているわけね』
『そういう事。ヒゲの責任回避って奴よ』
『サイテ〜〜』
『組織の長としては間違っているわ』

三人のプラグ内は当然、モニターされているから聞いているミサトは苛立っている。
何故なら、自分の能力がダメなものだと批判しているからであり、そんな事ある訳ないでしょと反論したいのだが、

「おしゃべりは止めて、訓練に専念しなさい」
『はいはい』
『そうね』
『……了解』

冷静に落ち着いて注意する。怒鳴っても他のスタッフの反感を買う可能性が高い……特に技術部のスタッフの視線は痛い。
先日のテロ事件がA−17に対する日本政府の意趣返しという話は信憑性があるから、日本政府の怨みを買うような真似をした作戦を決行したミサトに対する不 信感があるのだ。

『そう言えば、ヒゲと背後霊の二人って南極行ったんだよね』
「ええ、それがどうかしたの、リン?」
『何でわざわざ司令自身が行くんだろうかと思ってね。
 誰も信用していないって事なんだろうけど……対人恐怖症も限度があると思わない?』
「……そうね。不器用な方だと思ってたけど、ただ人が怖いだけの臆病者だとは誰も思わないわね」
『対人恐怖症って何、それ?』

アスカがリンとリツコの会話に入ってくる。

『司令ってサングラスがないと人と目を合わす事になるから怖くて人前に出られないの』
『はあ〜〜?』
『だからね、人が怖くて自分の意に従う者以外はダメなのよ』
『だから私に"考えるな、お前は命令に従えばいい"と言ってたの?』
『そうよ。人が怖いから人形みたいに命令を聞く存在しか安心できない臆病者なの』
『サイテ〜ね。レイもとんでもない男が保護者になったわけだ』
『……そう、これが不愉快って感情なのね』

レイが眉を寄せて、顔を顰めている。

『優しい言葉をかけているけど、全部レイを見て話してる訳じゃないしね』
『そうね。私越しに別の誰かを見ているわ』
『レイを代わりにしてるわけ……ムカつく』
『お父さんが怖くて育てられずに捨てて置いて、必要だから呼び寄せる自分本位の愚か者よ』

シンジの事が話題になるとスタッフも気まずい気持ちになる。シンジはまだコアの中で生きていると思うと救い出したいという気持ちもあるが、使徒戦が終わる までは現状維持とゲンドウが決断した以上逆らえないのだ。

『自分の都合だけを優先して頭ごなしに命令して"問題ない"って言えばそれで解決すると考えているダメ人間ね。
 人は踏み躙る方は簡単に忘れるけど、踏み躙られた方は忘れない。
 ネルフが踏み躙ってきた連中は、ネルフの権威が失速した瞬間……牙を剥いて襲い掛かってくる。
 人を踏み躙る以上は、自分も踏み躙られることを覚悟しなきゃいけないけど……ネルフはその覚悟が出来ているかしら?』
『あ〜〜多分、無理よ。ミサトなんて特務権限の乱用しても、仕方ないで終わりだもん』
『この前のテロは使徒戦の途中だから停電で済ませたけど……終わったら手加減しないでしょうね』
『お先、真っ暗ってわけだ。やってらんないわね』
『エヴァなんて汎用兵器って言うけど、ケーブルなければ五分も動かないから』
『拠点防御用の防衛兵器じゃない。どこが汎用兵器なんだか』
「……二人とも、もう少し押さえて話しなさい。
 一応、テスト中よ」

リツコの声にアスカとリンは目を閉じてシンクロテストに集中する。
スタッフ一同はリンの言葉に不安を隠せずにいる。ネルフが嫌われている事は前回の停電事件ではっきりと気付いた。
日本政府はネルフが行ったA−17の一件を快く思っていないのだ。戦自が日本政府の意向でテロを敢行した可能性は捨て切れずに全員の脳裏に暗い影を落と す。
何故ならファントムというエヴァに対抗出来る機体が侵攻する恐怖を拭い去る事は出来なかったのだ。

「ったく……しゃべり過ぎだっていうのよ。
 真面目に仕事しなさいっつ〜の」
「遅刻ばかりしている誰かさんには言われたくないでしょうね」
「リ、リツコ!」
「ホント、迷惑なのよね。時間にルーズな人って」
「あ、あはは……ゴミン」
「いいわよ。これからは技術部だけでテストするから無理に立ち会わなくても。
 あの子達だって時間通りに来て、待たされるから嫌味言いたいんでしょ。
 技術部としても全部時間がずれ込むから……いい迷惑なのよね」

リツコの言葉には棘があると思うが、スタッフは気にしていないし、もっと言ってくれというのが本音だった。
本日のシンクロテストにミサトは……一時間の遅刻をした。
急いでいる訳でもないし、無理に立ち会う必要はないとリツコはミサトに話していたが、

「出るわよ。出てとキッチリ監督してやるわ。
 今は私が責任者だから、はっきりと私の威厳ってものを示して見せるわ」

などと一歩も譲らぬ決意で話したので遅刻はしないだろうと思っていたが……甘かったみたいだ。

「今日は定時上がりだったんだけど……残業か」
「残念です」
「作戦部はいいわよね。定時で上がっても小間使いの部下が全部してくれるから」
「羨ましい限りです」

リツコとマヤが棘だらけの会話をミサトに聞こえるようにしている。

「責任者って人に迷惑かけるのが仕事だとは思わなかったわ」
『今日はリツコお姉ちゃんのリクエストで献立の用意してたけど誰かさんのせいでおじゃんね』
『あ〜あ、せっかくリンが下拵えして用意したのに』
『……リツコさん、かわいそう』

リン、アスカ、レイも非難の声を出す。

『昔から食い物の恨みって忘れる人はいないから……大変よね〜〜』
「分かったわよ! 始末書、書けばいいんでしょ!」

耐えられずにミサトが叫ぶ。

『あれが逆ギレっていうのよ。自分の所為なのにキレるという人の醜い姿ね』
『……無様ね』
「う……うう……」

アスカの言葉にキレたミサトの様子をレイに説明するリン。レイの言葉がリツコの声に聞こえてミサトは困った様子だった。

「ホント、無様ね」
「リ、リツコ〜〜」

本家本元のリツコの声にミサトはタジタジになっていた。


RETURN to ANGEL
EPISODE:16 自身の価値は?
著 EFF


赤い海にオーロラが輝き、海が青いという常識を持つ者は不気味さを感じる。
南極――セカンドインパクトの中心でその場に居た者を全てLCLに還元し、人類を滅ぼしかけた忌まわしき場所である。

「如何なる生命の存在を許さない世界……地獄と言った所だな」

数隻の艦隊に守られ、冬月はこの光景に複雑な顔をしている。
絶対の死とも呼べる静寂の世界に変えた事件は人の業が巻き起こしたから、どうしようもなく人類が罪深い存在に感じる。

「それでも我々、人類はこうして此処に来る事が出来る……生きたままな」

腕を組んで冬月に話すゲンドウ。サングラスの所為で表情は判らない。

「科学の力で守られているからな」
「科学は人の力だ」
「その傲慢こそが、15年前の悲劇を生み出したと言う事を忘れたのか?
 その結果がこれだ。与えられた罰にしては余りにも大き過ぎるとは思わんのか?」
「ここは世界で最も浄化された世界だよ。唯一人間の原罪から解放された世界なのだ」
「俺は罪に塗れていたとしても、人が生きている世界を望むよ」

そうして初めて後ろを振り返る。
ただし、後ろにいるゲンドウではなく、その遙か後方に位置する空母の甲板上にあるロンギヌスの槍と呼ばれたものを透かし見るかのように……。

静寂がブリッジの二人に再び訪れる。
言外の思いが、積み上げてきた過去が、みっしりとつめられた沈黙が二人から声を奪ったかのように。

『報告します。ネルフ本部より入電。インド洋上空衛星軌道上に使徒、発見』
「やはり来たな。葛城君で大丈夫だと思うか?」
「問題ない」
「そうか(赤木君に期待するしかないか……あの子がいれば大丈夫だと考える方がマシか)」

目の前にいるゲンドウの問題ないは信じていない。今までは安心できたが、使徒戦が始まってからは安心できないのだ。

「帰ってみれば、初号機が大破してない事を祈るよ」

皮肉をゲンドウの背にぶつけて、憂さ晴らしをする冬月だったが、

「しかし、これをどう説明する気だ?」
「…………」
「まさかとは思うが……勝手にする気ではないな?」
「……冬月先生、任せます」

仕返しとばかりにゲンドウがリンへの説明を告げると、冬月は唸っていた。



南極に生命はいないと二人が話していたが、実際は違う。

「ゼーレの発掘現場は制圧したよ」
「ご苦労さま……しかし、これはこれで見慣れると風情があるし……懐かしいわね」

赤い海を見つめながらエリィはシンジに話す。この光景を見て暮らしてきたから懐かしい気持ちも少しあった。

「そうだね……こうして見ると思い出すよ。
 まさか、押し倒されて「ちょっと止めてよ! 恥ずかしいじゃない!」……そうかい、あの時の君は綺麗だと思ったけど」

頬を真っ赤に染めてシンジの声を遮るエリィ……どうやら彼女にとって非常に恥ずかしい思い出を暴露しかけたようだ。

「聞きました……あれってもしかして、リンちゃん誕生秘話だったりして」
「それは興味ある」
「状況からして……押し倒したと見るべきだね」
「シン様を押し倒したですか……だ、大胆です〜〜」

ラファを筆頭にラミ、シエル、金髪をまとめ結い上げた赤い瞳の女性トリィ――第九使徒マトリエル――がコソコソと顔をつき合わせて話す。ロンギヌスの槍は 既にダミーと交換し、シンジ達はこの南極を光体の作製地へと変えるべく拠点の設営に来たのだ。
ゼーレの関係者は全員シンジ達の存在を気にしないように第二支部のように傀儡へと変えた。ロンギヌスの槍の発掘後、彼らはこの場を放棄する事を決定してい たので、ゼーレ内部に潜り込ませて妨害工作をさせる事になっている。
南極の海底には新生使徒の新たな光体がある事をゲンドウ達は気付かずにいた。
もっともシンジ達は光体を使う気はない。備えとして用意するだけで、これを使用する時は人類を絶滅させる時だと考えているが、人類が彼らを攻撃しない限り は張子の虎扱いと変わらなかった。

選択権は人類にある事を人類は知らない……未来は人類の考えに委ねられているのだ。

「それでA−17の結果は?」

話題を変えるべく、エリィは咳払いをしてシンジに尋ねる。

「ゼーレに同調して空売りしてかなり儲けたよ。日本政府も極秘に外から空売りさせてファントムの建造費を捻出させた」

ネルフのA−17の発動をシンジは事前に日本政府にリークして、逆手に取らす手段を計画させた。
日本政府もシンジの情報の正確さを知っていたから、分の悪い賭けではないと判断して極秘で国庫の一部を流用して各国の大使館に人員を送り込んでの大規模な 金融作戦を決行した。
二班に分かれ、ゼーレ側の動きに同調した投機家に見せた班とゼーレ側の金融機関を調査する班が動いた。
結果は大成功に終わり、ファントム増産用の資金の確保と世界に散らばるゼーレ側の金融機関の詳細を手に入れた。この資料は戦自経由でUN軍に送られ、世界 各国の諜報機関にも渡る。
それは全て、来るべきX−dayのために……。

シンジ達も便乗して儲けていたが電子マネーの為に完全な擬装が出来ている事をゼーレも日本政府も知らない。
そして、ゼーレはNo.3の死によって、その調査などしている余裕もなかった。

「アメリカに予定通り企業進出できるだけの予算は確保したよ」
「……ゴメン、私の我侭を聞いてくれて」
「僕は日本に未練はないから、気にしてないけど」
「そうかもしれないけど……」

スピリッツの企業化は戻った時から計画していた。
本拠地を何処にするか、決める時にシンジは迷わずアメリカにしたのだ。
セカンドインパクト後の世界はゼーレの影響でアメリカは衰退し、ドイツを中心にヨーロッパが主流になっていた。
再建を急いでいるアメリカだが、エヴァの建造で経済の再生は思うように進まない。今のアメリカで潤っているのはネルフ関係機関くらいで、それもゼーレの懐 に入るだけで社会には還元されないのだ。
最初にNo.4を始末したのもその為だった。ゼーレの影響を排除するにはアメリカのトップを排除するのが効率的なのだ。
権力集中型のゼーレは頭を潰されると動きが鈍り、回復に時間が掛かる。その隙を突くようにしてアメリカ国内のゼーレの関係各所をUN軍とアメリカの諜報機 関の組織が壊滅させるように仕組んだ。
アメリカに寄生する悪意ある存在をアメリカは自身の手で排除し、国内の活性化を急がせている。ネルフの支部には手を出していないが、ゼーレの権威は着実に アメリカ国内では失墜している。
エリィはシンジが自分の想いを汲み取ってくれたのは嬉しいが、負担を掛けたのではないかと考えていた。
帰還する前にシンジには自分の願いを話して、怒りと憤りをぶつけたから気にしているのではないかと思うのだ。

「言っておくけど……僕は君の願いを聞いた訳じゃないよ」
「え?」
「僕以外はみんな目立つから海外にしただけだから」

シンジはみんなが日本に溶け込めるとは考えていないと言う。
日本人とは容姿が掛け離れているから、どうしても目立つ可能性が高いと思っている点を考慮しただけだと告げる。

「……バカ」

それも事実だけど、私の願いを聞いてくれた事をエリィは理解しているので憎まれ口を叩く。

「そうやって不器用な事するんだから」
「そ、そうかな」
「そうよ。そんなところも好きだけど」
「……ありがとう」

シンジに抱きついて囁く。

「あ〜〜ゴメン。イチャつくのはそこまでにしてね」

二人の顔があと一歩という所まできた瞬間に背後から声を掛けられる。二人は慌てて離れて気まずそうに振り返る。
其処には四人が困った顔で佇んでいた。

「一応、仕事中なので」
「……ずるい」
「そうそう、僕としてはリンちゃん誕生秘話を聞かせてくれるんなら良いけどさ〜〜」
「私も聞きたいね〜〜」
「絶対、言わないし、言っちゃダメよ!」

隣にいるシンジに懇願するように話す。

「僕個人としては別に構わないと思うけど……情熱的で綺麗で愛しく感じたんだけど」
「う、嬉しいけど、恥ずかしいのよ」

頬を真っ赤に染めて話すエリィをシンジが可愛いな〜と思っていた事は誰も気付いていない。

「それじゃあ、交代制で待機して光体作製だね」
「了解したよ〜」
「差し入れ……希望」
「それならクラシックのCDを何枚かお願いしますね」
「もう〜仕事なんですから、まじめにして下さいね」

トリィがもう少し真面目にして欲しいと思っているのか、困った顔で話す。

「仕事はきちんとするよ……でも、此処って退屈なんだよね」
「シン様いないから」
「音楽がないと、どうも調子が出ませんから」
「そ、それは……」
「トリィはもう少し力を抜いて仕事すれば良いから」
「エ、エリィ様〜〜」
「……様はいらないって」

いつまで経っても様付けするトリィに苦笑している。彼女は生真面目すぎるとエリィは常々思うのだ。

「そういう訳にはいきません! シンジ様の奥方ですから」
「トリィは委員長体質だからね〜」
「管理者としては優秀」
「テンポ良い作業なら負けません」

何かを全員でする時は彼女が仕切る事が殆んどだった。
ある意味、使徒達の中で最も苦労している人物かもしれない……。
苦労掛けてるかなとシンジとエリィは思うが本人は特に気にしていないようで全員からの信頼は篤かった。



宇宙空間に浮かぶ第十使徒――サハクィエル――をミサトは見ていた。
巨大なアメーバとも言える姿も異様だが、出現場所もとんでもない場所だった。

「これまた、とんでもない所に出たわね」
「そうかしら……空から出現するパターンもありだと思うけど」

リツコが呟いた瞬間、監視衛星からの映像が途切れ、画面がノイズに変わるとリツコが落ち着いて告げる。

「ATフィールドを飛ばしたみたいね」
「そ、そうなの?」
「他に何かしたのを見たの?」
「……そうね」

加粒子砲のような発光もなく、瞬時に壊れた為にミサトには判断がつかないが、否定できる根拠もないので納得する。

「身体の一部を切り離し、ATフィールドでコーティングして摩擦熱を遮って落とす……とんでもないわね」
「照準も段々と誤差を修正してます」

マヤがキーボードを操作して状況を中央の画面に映し出す。
一度目、二度目の落下の状況が現れて、発令所のスタッフは次の目標が何処か理解する。

「次は此処みたいね」
「で、どうするの? 貴方が責任者だけど」
「日向君、日本政府、各庁に通達。ネルフ権限における特別宣言D−17。
 半径五十キロ内の全市民は直ちに避難を開始させて。松代にはマギのバックアップを頼んで」
「ここを放棄するんですか?」
「いいえ。ただ、みんなで危ない橋を渡る事は無いわ」
「言っておくけど、エヴァで受け止めるというのなら却下よ。万に一つくらいしか成功率がないから」
「そ、そう?」
「ええ、私としてはF装備の初号機を上空で配置して、落下する使徒に取り付かせてフィールドを中和。
 そして、第三都市の対空迎撃システムで攻撃して削り落として、直下に待機させた零号機と弐号機でとどめね。
 別の手段としては初号機のフィールドを極限まで集束させたソニックグレイブを投擲かしら」
「受け止めるのは不味いってどういう意味?」

自分の考えを先読みされた気になり、ミサトはリツコに聞く。

「落下地点の予測が絞り込めないからエヴァを一点に配置できないの。
 落下後にマギで位置を決めてから、エヴァを急行させるのは最悪一機で支える事になるからエヴァが耐えられないわ」
「そ、そう……でも、間に合うかもしれないわよ」
「その可能性が万分の一くらいよ。マヤ、計算させて」
「は、はい」

リツコの指示でマヤがマギに成功率の計算をさせる。

「……成功率0.00001%です」

発令所に沈黙の帳が落ちた。

「私の作戦なら成功率は?」
「……52%と36%です」
「責任者はあなただから任せるわ。受け止めたいのなら……落下速度を落とす方法を思いつけば成功率は上がるけど」
「……考えさせてもらうわ」
「二時間が限度よ。改善策が見つからなければ、私の作戦で良いわね?」
「…………」

リツコの意見にミサトは……答えなかった。
どうでも良いという気持ちでリツコはミサトを一瞥するとケージへと足を向かわせる。この分では間違いなく、万に一つの可能性になるので、他の手段を三人と 協議する為に。

「……ダメダメね。復讐心に囚われて」

リツコから話を聞いてアスカはミサトの歪みをはっきりと知り、侮蔑するように話す。
復讐が悪いとは言わないが、もう少し考えて欲しいとアスカは思う。

「素直に話せば、協力しても良いけど……あの人、私の事を使徒モドキだと思って警戒するから」
「自分が使徒だって知ったらどうすんだろ?」
「変わらないと思う」
「都合の良い部分しか見ない人だからね」
「で、前回みたいに受け止める?」
「位置が同じなら前回よりも早く辿り着けるわ」

アスカの質問にレイが答える。

「問題はどっちをターゲットにしてるか、なんだよね。
 アダムを目指すならネルフなんだけど……脅威を排除する気なら戦自のファントムを狙わないかな?」
「それは盲点だったけど、現時点で使徒を倒した数はエヴァが多いわよ」

リンの考えにリツコが着眼点の違いに感心しながら話す。

「そうだね。みんなは帰巣本能みたいにアダムに帰りたがっているから大丈夫かな」
「帰巣本能ねぇ……」
「一つになりたいのね」
「多分ね、半身を求めているんじゃないかな。みんな、アダムから生まれた分身だから。
 人類は分化したせいで、帰ろうとする本能が薄れているって」
「それでも人は人を求めるわ」
「厄介よね、その所為で心が欠けている思った連中には福音になるわけね」
「欠けたと思われる心を他者の心で補完する……人類補完計画か、私は好きでもない人間と同化したくはないわね」

シンジにユイとの同化に耐えられるかと聞かれてからリツコはこの計画に疑問符を付けてしまった。
よくよく考えると全く知らない人とも一つになるのは流石に引いてしまう。今更ながら、とんでもない事に荷担していたと考えてしまい、苦笑するしかなかっ た。

「アスカは盗撮魔の相田と一つになりたい?」
「絶対、嫌よ! なんであんなのと!」
「ま、それが普通の反応よね。好きでもない相手と一つになりたいなんて考える人はいないわよ。
 連中が黙って強行的にするのは当然の帰結か」
「反対するのが殆んどじゃないの。少なくともアタシは嫌よ」
「そうね。私も嫌いな人と一つになりたくない」
「私も勘弁して欲しいわね。まだ人生の半分も生きていないのに死ぬのと同じような状態にはなりたくないわ」
「とりあえず補完計画は阻止するという事でオッケーね?」

リンが三人に聞くと三人とも頷いた。

「リツコお姉ちゃん、エヴァで投擲可能なN2爆弾用意できる?」
「出来るけど、ミサトがうんと言うかしら?」
「嫌なら作戦拒否するわよ。志願の強制なんて真似する人に従う義理はないから」

はっきりとリンが告げるとアスカもレイも頷く。

「そう言えば、前回は志願の強制なんて考えなかったけど、今思えばミサトが責任取らないように逃げたのね」
「失敗しても志願した三人が悪いと心のどっかで考えたんじゃないの」
「サイテ〜ね。ヒゲと一緒で責任回避ってやつじゃない」
「責任を取らない上官に従う気はないわ」
「ミサトがどういう結論に出るか待ちましょうか……準備は進めておくけどね」
「任せるよ。私個人はオバサンに期待なんて抱いていないから」
「あら偶然ね、私もこの頃は好きになれなくなってきたわ」

リツコは結論が出たので待機室から出て準備を始める。
全てはミサトに委ねたのだ……その結果次第ではミサトを切り捨てようとリンとリツコは考えていた。


ミサトは作戦部のメンバーを集めて告げる。

「技術部に頼りきりじゃ作戦部の面子がないから、落下速度を落とす方法があれば遠慮なく出して」
「つまり受け止める事を前提に確率を上げろなんですね」
「そうよ」

日向マコトが全員を代表して尋ねるとミサトがはっきりと告げる。
リツコの作戦の補正かと考えていた者は不思議そうに問う。

「何故でしょうか?
 聞けば0.00001%の成功率の作戦よりも成功率の高い作戦をより高める方法が効率が良くありませんか?」
「作戦部が作戦を考えないでどうすんのよ!
 他の部署から作戦部は能無し揃いって言われたいわけ!?」

と逆に叱責する始末で、部下達も流石にミサトの言い方に辟易していた。

「では具体的に部長は受け止めると考えた理由をお聞かせ下さい。
 確かに作戦部の立案した作戦ではありません。
 ですが、二回、三回に一度は成功する作戦以上に拘るのはそれなりの理由があるはずです」

部下の一人が問い掛けるとマコトを除いた全員がミサトの意見を聞きたがっていた。

「作戦部は其処にいる日向二尉のおかげで葛城部長の小間使いなどと陰口を叩かれる事もあります。
 いい加減、自分の仕事は日向二尉に押し付けずに御自身でして頂きたい」
「どういう意味よ?」
「いい加減、御自身の真価を見せてみろと言っているんです」
「なんですって―――!!」
「いつもいつも自分の仕事を人に押し付けて定時で上がるなと言ってんだよ!!」

憤慨するミサトに叫び返す部下。

「あ、あんた、上官に逆らうわけ!」
「結果も満足に出していない上官を尊敬できると思ってんのか!?」
「お、落ち着けって」

マコトが両者の間に入って仲裁しようとするが、

「黙ってろよ、腰巾着! テメエがいい様に仕事を引き受けるから陰口が出るんだぞ」
「全くだ。日向の所為で俺達が他の部署から陰口叩かれて肩身が狭いんだぞ!」

更に悪化させただけだった。
作戦部はA−17の後のテロ事件から各部署から非難の視線を浴びている。作戦部長のミサトの強引で無責任なやり方に、上司の暴走を抑えるのがお前達の仕事 じゃないのかと言われているのだ。
各部署は戦自に恐れを抱き始めている。エヴァという戦力に対抗出来るファントムの存在が怖いのだ。
リツコがはっきりと発令所で戦自の仕業と告げた事が徐々に本部内で広まると当然のように不安になる職員が増える。
そんな状況をミサトは気付かずに仕事をマコトに押し付けて定時上がりという行為をしている。職員はそんなミサトの能力に疑問視し、作戦部全体のイメージを 良く思っておらず……結果、能無し揃いの作戦部と陰口を叩く者もいる。
人は不愉快な陰口には耐えられない者が殆んどだ。日々の不満は蓄積して遂に……破裂した。

「本部内の殆んどがあんたの能力を疑問視してんだよ。
 そして、その下にいる俺達は更に能無しなんじゃないかって思われてんだ」
「普段のあんたの勤務態度で部下の尊敬を得られると思ってんのかよ」
「他の部署の部長はな、自分の仕事は自分できちんとするんだぞ」

などと全員がミサトに対して積もり積もった不満をぶつけてくる。
流石にマコト以外の全員が反旗を翻したと知ってミサトは不味いと判断するが、どう対処するべきか困惑する。
……部下の反乱など初めての経験だったから。

「一応、あんたが上官だから今回は従うが、司令が戻り次第、解任要求をさせてもらう。
 もう、あんたの尻拭いはゴメンなんだよ」

それだけ告げるとミサトとマコトを除いた全員で意見交換をする。
ミサトは部下を睨みつけているが、部下は気にも止めていないで会議を続ける。
マコトは自分がいい様に仕事を引き受けた所為でミサトの立場を悪い方向にしてしまったと思い……後悔していた。
部下の造反劇という展開が作戦部で起きた事を上司二人はまだ知らない。


作戦部から送られてきた作戦案にリツコは感心していた。
内容的にはリンの提示したN2爆弾での落下速度の減少だが上手くまとめられて成功率も55%まで引き上げられている。

「やれば出来るじゃない。普段からこうしてくれると助かるんだけど」
「残念だけど、オバサンの立場は最悪になったわ。
 作戦部のスタッフは日向さんを除いて全員が造反したみたいよ」

リンが告げた事にリツコは驚く事もなく話す。

「そう、来るべき時が来たって事かしら」
「はぁ〜、ミサトもお終いかもね」
「葛城三佐に非がある以上は仕方ないわ」
「レイお姉ちゃんの言う通りね。あんな勤務態度で人が従う事はないわ」

アスカ、レイも仕方ないって気持ちになる。
アスカとしては話の合う知人がいなくなるのは残念に思うが……自分の命運をミサトに委ねるのは正直……嫌だった。
レイは身近でリツコの勤務態度を見ていたので、人の尊敬を勝ち取る為にはどうするべきかを理解していた。そのリツコとミサトを比較すれば、今回の造反も当 然の結果だと考えている。

「中間管理職のヒゲと背後霊も大変だね。オバサンを切りたくても切れないから……どうやって説得するんだろ」
「こればかりは二人にしてもらわないとね。他の部署の事に私が口出しは出来ないから」

リツコは立ち上がると技術部に指示を出すために部屋を出て行く。


加持は通路で俯いて座っているミサトを見て声を掛けた。

「よ〜葛城」
「……加持」
「どうした?」

落ち込んだ様子のミサトに加持が聞いてくる。

「あたし、もしかしたら作戦部長を降ろされるかもしれない」
「そりゃ、またなんで?」

ミサトの横に座り込む加持に先程の一件を話した。
最初は造反した部下に怒りの感情を見せていたが、時間を置いて一人になると怒りも少し収まり……周囲が少し見えた。人の好い日向君に甘えていたとほんの少 し反省し、リツコが何度も注意してくれたのを無視した結果だと感じてしまった。

「あたし……リツコが何度も注意してくれたのに気にしてなかった。
 リツコは多分こうなる可能性を考えていたから……忠告してくれたのに」
「まだ降格と決まったわけじゃないだろ」
「でも……」

加持はミサトが降格される事はないと考えている。
ミサト以上に能力のある者をゲンドウは作戦部長にしなかったのは理由があるはずだと思っている。
まだ全てを知った訳ではないが、ミサトを作戦部長に据えたのは意味があるはずなのだ。

「まずは謝って、今後は態度を改めると言うべきじゃないか。
 その上で司令に一任すれば、司令が判断するさ」
「司令に任せたら、お終いじゃないかと思うんだけど」
「オイオイ、司令が葛城の力を評価して作戦部長にしたんだぞ。
 司令の眼力も疑うのかよ」
「そんな事、ないけど」
「まずは部下と話し合うべきだな。謝罪して反省していると分かれば、態度も軟化してくれるさ」
「……うん」

慰めるように話すとミサトも神妙な顔で頷いて発令所に向かう。
加持はそれを見届けた後でケージへと向かった。

「あれ? 加持さん、まだ避難してなかったの?」
「ああ、最終便で避難するぞ」
「そうなんだ」
「アスカ達も危険だけど頑張れよ」
「な〜に言ってんだか、このアスカ様が高が爆弾使徒に負けると思ってんの?」
「そいつは頼もしいな……ところでリッちゃんは?」

周囲を見渡してアスカに聞く。

「奥で最後の打ち合わせ」
「アスカは打ち合わせに出なくて良いのか?」
「私の仕事は止めを刺すことだから……イメージトレーニング中」

アスカは加持に告げると目を閉じて静かに自身の裡に閉じ篭る。
加持は真剣な様子のアスカに邪魔しないように離れて、奥の部屋に入る。

「よ〜陣中見舞いに来た……なるほど、アスカが外にいる訳だ」

中に入った瞬間、加持はまるで緊張感のない部屋に言葉を失う。
プラグスーツの上にエプロンを着たリンとレイの二人が包丁を持って野菜を切っていた。

「リン、次はどれにする?」
「えっと、人参を切って」
「問題ないわ」
「しっかし……玉葱の微塵切りは目にしみるわね」

涙目でリンが切り終わった玉葱をパックに詰めて、クーラーボックスに入れている。
既に幾つかの食材が切られて入っているようだ。

「加持君、丁度良いところに来たわね。
 このクーラーボックス食堂まで運んで頂戴」
「お、俺がかい?」
「暇なんでしょ?」
「暇って言えば、暇なんだが……これは一体?」
「終わったら、技術部は食堂で打ち上げする予定なのよ。これはその下準備」
「あっそ……随分と余裕なんだな」
「だって勝つ為の算段は準備しているもの」

負ける筈がないとリツコは自信を持って話す。
自信家のリツコが断言した以上は口を挟む必要はないかと思い、さっきの一件を話す事にした。

「葛城の件だが」
「大丈夫よ。司令はミサトを降格出来ないわ」
「随分、自信があるんだな」
「だって昇進したばかりで降格させると思うの?
 それよりも造反するなんて思わなかったわ……司令の威光も地に堕ちたものね」

クスクスと笑みを浮かべて話すリツコを加持は呆れた様子で見ていた。

「司令も大変だな。懐刀のリッちゃんがそんな事を言うなんてな」
「両方に告げ口しても良いわよ。ここらで点数稼ぎしないと大変じゃないかしら?」
「そ、そんな事はしないさ」

はっきりとは言わないが加持の本当の所属先を匂わせるリツコに否定する言葉を出す。

「そう。じゃあ、これ食堂に届けてね」

リツコが指差す先にあるクーラーボックスは一つあたり五キロはある物が全部で四つあった。

「こ、これをかい?」
「技術部のみんなの分だからね。
 あっ、台車使って良いわよ」
「あ、ありがと、リッちゃん」

部屋の隅に置いてある台車を指差して告げるリツコに引き攣る笑みで話す加持であった。


不協和音を残しながら、作戦は始まろうとしていた。

「そろそろかしら?」
「ええ、三人とも来るわよ。
 予定通り、上空に配置した無人機のN2爆弾で落下速度を落とすのが第一段階。
 次にリンが初号機のATフィールドを集束して、弾丸状に変えたので攻撃して削り取る。
 そしてレイとリンが受け止めて、中和後、アスカがとどめね」
『いいわよ』
『了解』
『任せなさいって』

ミサトが細かい指示を出すと三機のエヴァが配置に就く。

「使徒、接近してきました。距離二万!」
「位置は初号機に直上です」
「無人機、自爆!」

連鎖的にN2爆弾に点火して画面を真っ白に染める。
初号機は両手を大きく広げると胸の前で拍手を打つ直前で止めて、その中心の赤い輝きが回転しながら球体へと変化する。
両手を腰溜めにして内部の回転を更に加速して行くと突き出すように両手を上に出す。
放たれた球体は真っ直ぐに使徒に向かい、使徒のATフィールドに接触した瞬間……圧縮が解凍された。
解き放たれたフィールドが衝撃波のようにサハクィエルの身体を削り取っていく。

「し、使徒、その構成の六割を消失!」
「レイ! リンと合流して受け止めて、アスカも!」
『了解』
『任せて!』

零号機が一直線に初号機の元へ駆け出すと弐号機もその後に続く。青と赤の機体がラインのように残像を残しながら進む。

『アスカ、イメージが全てだからね』
『ダンケ』

初号機と零号機が両手を上へ伸ばして全体の半分を失い、落下速度も落とされたサハクィエルを受け止める。
弐号機はサハクィエルの真下に来て、ソニックグレイブを掲げるように突き出そうとする。
そしてATフィールドが集まって、先端が赤く染まると一気にコアを貫いた。
初号機と零号機はコアを失ったサハクィエルの身体を上空へ弾き飛ばすと十字の閃光が第三新東京市の上空に瞬く。

「パターン青、消失」
「エヴァ各機、損傷軽微です」
「第三新東京市の損害もエヴァのフィールドの傘で守られて最少の損害です」

青葉シゲル、伊吹マヤ、日向マコトの報告が発令所内に響く。

「戦闘配置を解除。各部署は被害状況を正確に出して」
「ミサト、エヴァを撤収させるわよ」
「ええ、ご苦労さま」
「マヤ、私はケージでエヴァの損傷状況を調べるから任せるわ。
 おかしな点があれば、ケージに回しなさい」
「わかりました、先輩」

マヤに指示を出すとリツコはケージへと足を向けようとする。

「それから技術部に通達して、"交代要員以外は二時間後、食堂に集まるように"」
「楽しみですね〜リンちゃんの手料理なんて」
「手のあいてる女性スタッフも手伝うから、どれがリンが作ったものか知りたいなら早く来るのよ」

軽くマヤに手を振って、リツコは発令所から出て行く。

「マヤちゃん……手料理ってなんだい?」
「一般職員が避難したから、食堂閉鎖なんで技術部のみんなに夜食を作るってリンちゃんが言ってくれたの♪」

D−17が発令されたので一般職員も避難するが義務付けられている。
そのため、食堂も職員が戻るまで閉鎖が決まっていたので、この後の作業は食事抜きの状態が半日は続くと考えたリンが用意するとリツコに言い、リツコが食堂 の責任者と交渉の末に借りられるように手配したのだ。

「う、羨ましいな」
「えへへ、技術部のみんなも喜んでるよ」

嬉しそうにマヤは話す。リツコが食べるリンちゃんの手作りお弁当をマヤは羨ましいなと思っていただけに今回の件は非常に嬉しく、何が何でも食べたいと思っ ている。

「さて、さっさと仕事を終わらせて手伝いに行かなくっちゃ!
 そう……リンちゃんのご飯が私を呼んでいるのよ!」

腕まくりするように気合を入れて仕事をするマヤに"そりゃ、ないって"などと言えないシゲルであった。
ミサトは二人の会話を聞きながら、疎外感を感じている。
リツコは責任者としての務めを果たし、技術部部員の尊敬を集めている。
自分はと言えば、責務を果たさずに部下に仕事を押し付けて……私怨に囚われている。
落ち着いて考えれば、間違っていると思うがどうしても譲れない。
復讐だけはどうしても捨てきれずに、ここまで来た以上は引き返す事など出来ない。
だが、部下の造反はいずれ司令の耳にも届くだろう。
どうするべきか……ミサトには暗い道を明かり無しで進むような気持ちにさせられていた。

「通信が回復しました」
「日向君、繋いで」
『話しは聞いた。よくやってくれた、葛城三佐』
「申し訳ありません。独断でエヴァ三機を危険に晒しました」
『使徒殲滅は我々の使命だ……問題ない』

部下の事を話すべきか、ミサトは逡巡する。

『赤木博士と初号機パイロットはいるか?』
「いえ、ここにはおりませんが』
『そうか。では後の処置は葛城三佐に任せる』
「わかりました」

ミサトが返事をすると通信は切れた。
どうも自分の知らない処で何かが行われている気がすると感じる。
自分はネルフのナンバー3なんだが、もしかしたらリツコや使徒モドキの方が重要な何かに係わっているのではないかと思えて仕方がない。

(私より、リツコの方が本当は立場が上なんじゃ……そして、あの子は自分の知らない何かを知っているの?)

赤木リンと名乗り、初号機より生み出された少女。
……ミサトはようやく隠された秘密に辿りつつあった。











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どうもEFFです。

無能とまでは行きませんが、葛城ミサトの価値とは客寄せパンダかもしれませんね。
中学生を戦場に放り出して"死なないでよ"とか、今回のように危険と分かっているのに志願の強制まがいの言い方をするのは大人としてどうかと思いますね。
このSSでは志願の強制のシーンはありませんが、よくよく考えると無責任な人だな〜と思います。
まあ、失敗したら全員死亡ですから、後の事なんか知ったこっちゃねえかもしれませんが。
戦闘を続行するには本部施設が必要かもしれませんけど、それでも0.00001%に賭けるのはダメでしょう。
子供だから作戦に文句は言わなかったのだと思いますが、軍ならそんな上官を信頼し、尊敬は絶対にしないはずです。
常識外の相手ですから、後手に回るのは仕方がないもかもしれませんけどね。

それでは次回もサービス、サービス♪



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