「へー、そんなのあるんだ」

佐々木 まき絵を含む小旅行の参加者全員が早乙女 ハルナがホテルの従業員から聞いた話に耳を傾ける。

「そうなのよ。この島のどこかに隠された秘密の聖堂があって、そこで誓いの口付けをすると結ばれるんだってさ」
「ほぉ、確かに地下に空洞らしい物がありそうな気配がするな」
「マジ!? ソーマさん!」

ボソっと呟いたソーマ・赤の一言に眉唾物だと感じていた朝倉 和美が俄然興味を感じて叫んでいる。

「お、おう……あくまで俺の勘だがな。
 さっき素潜りで見つけたんだが、海の底に洞窟の入り口があったんだよ」
「海底洞窟?」
「そうだ。俺の勘だが、もしかしたら下から島の中央辺りに出られるような場所があるんじゃねえかと思ったんだ」
「なるほど……潜ったその先に秘密の聖堂があると?」
「そういうこった。もしあったとしたら島の中央辺りに隠された出入口があるかもな」
「「明日は島の探検です――!!」」

双子の鳴滝姉妹が手を上げて明日のプランを出すと、

「そんなのないってば」

どこか呆れた感じでナイナイと手を振るアスナと、

「探しましょう! そして、その秘密の聖堂とやらでネギ先生と私が永遠の愛を誓うんです!」

何かスイッチが入ったのか、もの凄い勢いでネギとの関係を一歩前進させようとするあやかの姿があった。

「のどか、これはチャンスじゃない。
 ここでネギ先生争奪戦に終止符を打ってみるのはどうかな?」
「え、ええ――っ!?」

状況を面白おかしくしようとするハルナがあやかの耳に入るようにのどかに告げる。

「のどかさん! あなたと私のどちらがネギ先生への愛が深いかを見せる時が来たようですわね!!」
「おお! 因縁の対決に終止符を打つのか!?」
「当然、私が勝ってみせます! そしてネギ先生との愛の日々が始まるのです!!」
「ちょっと待った――っ!! ネギ君への愛ならば、私も負けないんだから!!」

まき絵が参加表明すると修学旅行の戦い再び!のイメージが浮き上がり、盛り上がってくる。

「……余計なこと言っちまったな」

そんな姦しい会話に辟易するソーマ・赤の姿があり、

「……まあええんとちゃうか。探検というのは悪うないで」

若干落ち込み掛けるソーマ・赤をフォローしつつ楽しもうとする犬上 小太郎の姿があった。
兎にも角にも明日は島の中央にあるかもしれない謎の聖堂を探す破目になるなとソーマ・赤は判断した。

「うふふ、夏美ちゃんは小太郎くんとね」
「ち、ちづ姉! な、なに言ってんの!?」
「大丈夫よ。倍率は低いから」
「だから違うってば!」

村上 夏美が必死に否定するも那波 千鶴は楽しげに笑うだけで抗議の意味もなく。

「……あの子も苦労してんな」
「夏美姉ちゃんじゃ……勝てんわ」
「そうだな。俺が思うに面の皮は厚そうだし」
「あかんて! もし聞かれた大変やで!!」

「何か言いま して?」

「いや、小太郎が明日の探検が楽しみだってさ」
「お、おう! ホンマ、楽しみやで!」

地獄耳かと思いながら二人は千鶴を誤魔化す事に成功する。
二人は明日の探検は何かと苦労しそうな気配が漂ってきて……やめた方が良いかなと少し考え込んでいた。




麻帆良に降り立った夜天の騎士 四十五時間目
By EFF




徐々に日が傾き夕暮れへと差し掛かる頃、遊び疲れた者達はのんびりとビーチチェアに座って会話を楽しんでいる。

「確かにねー。最近の男子って、今ひとつとゆーか、カッコよくないんだよね」
「まあねー」

最初は他愛ない話だったが、いつしか身近な男子の物足りなさに話題が移っていた。

「やっぱ、男は目標に向かって戦っていないとー」

早乙女 ハルナが笑いながら、男とはこうあるべきと話している。

「夢……目標か…」

大河内 アキラが反芻するように呟き、自分の周囲にそんな男子がいるかなと考えている。

「ってことは付き合うなら年上かにゃー?」
「う〜ん、兄貴も先輩も将来何をしたいんかよーわからんって言ーてたわ」

明石 裕奈が一つの可能性を話すも和泉 亜子が家族と身近な男子の事を言う。

「……まぁ、その点、ネギ君は元気があってええと思うよ」
「お♪ 亜子もやっとネギくんの良さをわかったかなー」

佐々木 まき絵がネギの評価が上がった事を嬉しそうに喜んでいる。

「でもなー、ネギくん……十歳やし」
「まあねー。年下って言ーのがネックかも」
「そっかなー。今は子供だけど、いちおう社会人だよー」

年下というだけで敬遠するのをまき絵は不服そうに言う。

「姉さん女房って言葉あるし、年下ってだけで敬遠するのもダメなんだけどね、のどか♪」
「パ、パル〜〜」

援護射撃とからかいを兼ねてハルナがニヤニヤと笑いながら話す。
からかわれていると思いながらものどかは真っ赤な顔で小声で抗議していた。

「今は10と14だけどさー、10年経ったら同じ社会人じゃん」
「あ、そっかー。今じゃなくて、先を考えればオッケーかも」
「意外な盲点やな。ところでさ、ゆえはなんで来ーひんかったん?」

亜子は納得しつつ、のどかのフォロー役が居ない事を不思議そうに聞く。

「ゆ、ゆえは稽古があるって」
「へー稽古って、探検部とは別に兼部?」
「う、うん」

裕奈がこの場に居ない綾瀬 夕映が新しい部活動を始めたと聞いて興味津々な表情で聞き始める。

「で、なに始めたの?」
「……囲碁部かな」

仕方なしにのどかは夕映が擬装用に用意していた部の名前を話す。
囲碁部――エヴァンジェリンが所属する部であり、麻帆良学園都市に住む魔導師の隠れ蓑みたいな部活。
意外な事にこの部にはリィンフォースを筆頭に超 鈴音も相坂 さよも幽霊部員?として名前があった。
ちなみに茶々丸も所属しているが、やっている事はエヴァンジェリンの世話係だった。

「ま、またえらい年寄りくさそーな部活動だなー」
「……そんなこと言ったらダメだよ」

アキラが裕奈の言い方を嗜めるように注意する。

「そうだよー。エヴァちゃんが聞いたら怒るよ」
「そー言えば、エヴァンジェリンさんが囲碁部やったな」
「……マジ?」

まき絵と亜子が3−Aでただ一人囲碁部に在籍していたはずの人物の名を告げ、裕奈が驚いた様子で聞き返していた。

「マジだよ。エヴァちゃんが確かそーだった」
「……間違いないと思う」
「地味っぽいけど、アレはアレで奥が深いって前に聞いた」

話題が徐々にズレていく事にのどかはホッとしている。

(実際にはリィンさんから魔法を習っているとは言えない)

リィンフォースから魔法を習う事を決めた夕映は黙々と修行に励んでいる。

(でもーババ○ンガってなんだろ? しかも……オ、オナラが臭いって?)

一度夢で魘されていた夕映の寝言を聞いたのどかは首を捻って謎の生物ババ○ンガの事を考える。
詳しくは教えられないと話していたが、のどかは夕映が既に魔法が使えるレベルまでに到達したと聞き及んでいる。
自分はまだ魔法の初級を必死に学んでいるのに親友の夕映は先に進んでいるのは嬉しさと羨ましい気持ちが混ざって複雑な気分だった。

(ちなみにデッドオアライブコースでお勧め出来ませんですって言われたけど……)

夕映が言うには、リスクが多い非常に過酷な練習だったらしい。
据わった目で、のどかは絶対にしないほうがイイですなどと言われて、のどかは腰が引けていた。

(いっそ死なせてって……ハイリスクハイリターンなんですか!?)

ネギが普段エヴァンジェリンとしている訓練内容が甘いものだと夕映から聞かされた時は驚きで目を大きく見開いた。

(あ、アレが甘いって……ゆ、ゆえ〜死なないでね!)

一度エヴァンジェリンの許可をもらって見学したが、はっきり言ってスパルタだと感じた訓練が甘いと断言されて、夕映の上達スピードが半端じゃない訳は理解 しただけにのどかの心配は深まるばかりだった。





親友ののどかが夕映の身を案じている時、本人はと言うと、

「今日こそは憎きババ○ンガへリベンジするです!!」
「……マァ頑張るネ」

元気に生い茂る植物が溢れる密林の中で姉弟子の超 鈴音を相手に息巻いていた。

「ぜ、前回はこの私にオナラをかましたババ○ンガ!!」
「…………師父、これも酷くないカ?」

お目付け役に超を付けての実戦練習ではあるが、付き合わされる超のテンションは非常に低かった。

「超さん! 今日は私一人で倒してみせますので手出し無用です!!」
「アー、マー……好きにするとイイネ。
 私は鉱石集めに頑張るカラ」

一応の目的をきちんと果たすべく超はやる気なさげにピッケルを担いで歩いて行く。
ここで採掘できる鉱石類は加工に難しい点を除けば、非常に使い勝手のいい材質が多いので一つでも多く採掘したい。
本当は可能な限り人員を集めて機械で採掘したいが、流石に一般人に異世界で、しかも野生のドラゴンを含む猛獣がいる場所で働けと言えないので細々とリィン フォースを含む三人で作業していた。

「任せるです!!」

夕映は気合を入れて、超に背を向けてダッシュしていく。

「……危ない人に核ボタンを渡した気分ダヨ。
 さて、私もコソコソと動き回って……ナンデカナ?」

―――ブホホホホォォォォ――ッ!!!!

元気一杯の夕映を若干呆れた様子で見送った超が振り返った先には……ババ○ンガが現れた。
超は世界に呪いの言葉を吐きながら夕映にババ○ンガ発見の通信を入れて……逃げ出した。

「ラックの数値が落ちたカナ?」

逃げ出した先にも何度も現れるババ○ンガに超は本気で厄払いしようかと思う。
こんな調子で本番の一大イベントを迎えたら、ヤバイと真剣に考えたみたいだった。



この日、超 鈴音は鉱石採掘が満足に出来ず……、

「超さん! 酷いです!! 私が倒すって言ったじゃないですか!!」
「……ワ、私のせいなのカ?」

夕映の代わりにババ○ンガを倒した事で拗ねられていた。

「……ちなみに鉱石は私がちゃんと採掘しましたです」
「……スマナイ、夕映さん。今度はきちんと役割分担を守るネ」

失敗だと思って落ち込みかけた超を見て、夕映がフォローの言葉を掛ける。
夕映はババ○ンガを追跡しては逃げられ続け、仕方なしに鉱石採掘を行っていた。

「ええ、今度こそ私が倒すです!!」

今日の狩りの役割分担が逆になっただけに夕映と超の二人は後で苦笑いするしかなかった。

「ところで超さん……ラオ○ャオロンって本当に巨大ドラゴンですか?」
「間違いないネ。あのサイズの生物は私も初めて見たヨ」
「オオ♪ 全く以って素晴らしいです! 私もぜひこの目で見たいものです♪」
「マー、おいおい見られるはずダヨ」

遊び半分で聞いているわけじゃないが、夕映の好奇心の凄さは半端じゃないと超は冷や汗を浮かべていた。
のどかが心配する以上にハンター生活に馴染んでいた夕映だった。




夕映の心配をしていたのどかは、

「お〜い、宮崎ー」
「あ、朝倉さん?」

少し離れた席でアスナ、木乃香、刹那と一緒に休憩していた朝倉 和美に手招きされて行ってみる。

「どうかしたんですか、朝倉「和美でいいよ、私ものどかって呼ぶから」……じゃ、じゃあ和美さん?」
「ま、ちょっと座って座って」
「は、はあ?」

空いている席に座るように言われてのどかは腰を落ち着ける。

「ところでさ、綾瀬の修行って……どんな感じなの?」
「あ、それなーうちも興味あるんよ」
「あ、私もある」
「実は私も聞きたいと思っていたんです」

和美が夕映の魔導師としての修行が気になって一番側に居るのどかなら知っているかもと考えて質問する。
その質問には陰陽師として修行を始めた木乃香も興味があり、アスナ、刹那も同じ気持ちなのか、のどかに視線を向ける。

「そ、それが私も詳しく知らないんです」

一斉に見つめられて少し焦りながらのどかは現状を話す。

「……秘密主義か。魔法使いと違って魔導師って魔法を隠すことに注意してるのね」
「私は二度見ましたが……魔法使いの使う魔法とは別物でした」
「そやなー。ネギ君が使う魔法よりも……破壊力は上や。
 やっぱり危険な代物やから……簡単に見せたないんかな?」
「それはあるかも。ネギが使う魔法はあんなにハデじゃなかったし」

和美が腕を組んでリィンフォースが魔法をあまり見せない事に自分なりの考えを巡らす。
刹那は一度対戦した時の事と修学旅行の時を思い出して攻撃力の違いを指摘する。
木乃香とアスナは刹那の指摘から危険だから隠しているのではないかと想像している。

「……刹那さんって、ババ○ンガって知ってます?」
「は? それは一体?」

突然のどかに謎の言葉を聞かされて刹那は途惑い、他の三人も不思議そうに聞いている。

「ゆ、ゆえが寝言でそんな事を呟いていたんです」
「ほ、他には?」

興味を俄然惹き付けられて和美が身を乗り出して聞いてくる。

「……オ、オナラが臭いそうです」
「…………いや、それじゃ全然わかんないって」

のどかが首を傾げながら聞き取れた夕映の寝言を口にしたが、和美達にはさっぱり分からなかった。

「スカンクの一種?」
「確かに臭いらしいえ」
「ですが、スカンクならスカンクと言いませんか?」

アスナが自分の思いつく範囲での動物の名を話し、木乃香、刹那が思ったことを口にする。

「後は……息が臭いし、フンを投げるなって」
「……ダメだわ。私にはさっぱり分からん」

和美が匙を投げるような感じでお手上げと口にすると、

『私、知ってますよ。確か牙獣種の一つでピンクのゴリラでした』
「ええっ!? さよちゃん、知っているの?」

和美の肩に乗っていた相坂 さよが四人に説明する。

『はい。何処に生息しているかまでは聞いていませんが、キノコや肉を食べるって雑食だと教えてもらいました。
 なんでも、場所によっては繁殖されると困るから依頼を受けて退治したりするそうです』
「そ、そうなんですか?」

意外な人物から説明されて五人は驚いていたが、

「……どう思う?」

和美がマジメな顔で四人に聞いてくる。

「さよちゃんが嘘を言わないのは承知しているけど……ピンクのゴリラってところが気になるんだけど?」
「そうですね……ピンクのゴリラって部分が非常に違和感が」
「ピンクのゴリラかー、意外と可愛いかもしれんえ」
「いや、それはないと思う」

ピンク色のゴリラなど絶対いないのに……さよが嘘を吐くとは思えないだけに疑問ばかりが増してくる。

「キ、キングコング?」
「もしかしてビッグフットの別名でUMA?」
「ええっ!? そんな怪しげな生物をリィンちゃんが発見したの?」
『いえ、そんな大きくないですよ。でも、それでも和美さんの倍以上の大きさですけど』

次元世界を移動する等という事実を知らない五人はこの世界にピンクのゴリラが存在するのかと途惑っている。
そして、さよが更に混乱に拍車を掛ける様に自分の知っているババ○ンガの大きさを話す。

「ゆ、ゆえ〜〜本当に大丈夫なの〜?」
『あ、それは大丈夫です。夕映さんは私よりも強いですから』
「そ、そうなんですか?」
『はい、のどかさん。夕映さんはきちんとリィンさんから攻撃魔法を学んでいますから』

心配するあまり混乱するのどかをフォローするさよ。
性格からして、争いごとを好まないさよは専ら結界、治癒系を中心にサポート役の魔導師の勉強をしていた。

『夕映さんのコンセプトは砲撃魔導師だそうです』
「そ、それは……火力がありそうね」
「バンバン撃ってきそうやな」
「ホントに大丈夫なの……ゆえ〜〜」

そんなさよとのどかを見ながら、アスナ達は顔を付き合わしてる。

「夕映ちゃんの修行って……なんだと思う?」
「秘境探検みたいなものじゃないかな?」
「あ、そやからピンクのゴリラを発見したんやな」
「そ、そうなんでしょうか?」
「う〜ん……夕映ちゃんの好奇心を刺激するような修行かもしんないわね」
「お、アスナ! イイ勘してるかも♪」
「その可能性は高いかもしれません」
「そやなー。夕映だけにその可能性は十分あるえ」

状況が分からないだけに夕映の性格からありえそうな可能性を和美が示し、アスナ達が納得し始める。

「リィンちゃんは秘密主義というか、ベラベラ話さないしね」
「そうなのよ。ネギ君とは違う魔法を使うから、カモっちも知らないみたいだし」
「あんなエロオコジョに聞くだけムダよ、ムダ!」

和美が情報源のカモでさえ分からないと言うが、アスナは最初からアテにしていない。
ただこれで判ったのが……夕映の修行は自分達の想像の斜め上を行くような摩訶不思議な物かもしれないことだった。




長瀬 楓、古 菲、、犬上 小太郎、ソーマ・赤もまた別のテーブルに腰掛けて話している。

「しかしソーマ殿、良いのでござるか……海の上を歩くなどして」
「良いんじゃねえか……あの程度ならお前さんにだって出来るだろう?」
「それは確かに出来るでござるが……」

一応秘密というか、見せる真似をするのはどうかと楓が注意するも、

「忍んでねえ忍者に説教されても屁でもねえぞ」
「む、むむむ……」

逆に文句を言う筋じゃないと言われて、ぐうの音も出ない。

「で、そっちの古 菲は何で睨むんだよ?」
「そうアル! ソーマさん、私と手合わせ願いたいアル!!」

楓の隣で楽しげで且つ挑むような視線でソーマ・赤を見つめる古を胡散臭そうに見返す。

「まさかと思うが、弟子のリベンジか?」
「それもアルが、私はソーマさんと一勝負したいだけヨ」
「あんのかよ!
 ま、まあ、どの程度使えるようになったかを知るために偶になら相手しても……週一だぞ」
「ブー……もっと増やして欲しいアル」

週に一回という手合わせが大いに不満な古がブーたれるも、

「俺も仕事があるし、お前さんだけを相手にするとコイツが拗ねる」

ソーマ・赤は親指を立てて隣に座っている小太郎を示して事情を話す。

「俺は拗ねへんで!」
「ふぅん、じゃあ新技の特訓はなしってこ「い、いやや!!」……まあそういう訳だ」

拗ねると言われて文句を言おうとした小太郎はあっさりと前言撤回した。

「どのみち、朝の稽古には顔を合わすんだから問題ないだろ?」
「ム、ムムム……仕方ないアル」
「俺も参加するで! ネギもおるし、ソーマの兄ちゃんともやってみたいしな!」

小太郎と古 菲の目が合ってバチバチと火花が散ったように見える。
どちらもソーマとの手合わせを望んでいる点からライバルのような感情が湧きあがったのかもしれない。

「ふふふ、ソーマ殿、面白い事になりそうでござるな」
「ま、切磋琢磨して強くなりゃいいさ」

楓がこの状況を面白そうに見ながら話し、ソーマ・赤も楽しんでいる。
強くなれるかどうかは本人次第だが、やる気だけは十分以上なので楽しみなところでもあった。





エヴァンジェリンは別荘を見渡し、全景を見つめて呟く。

「後々の事を考えると増築も考えておくべきだな」
「増築できるもんなんか?」
「いえ、増築と言うよりは増設ではありませんか?」

茶々丸が以前エヴァンジェリンから聞いた事を思い出して補足する。

「そうだな。中央にこの塔ではなく、城に変更して……四方を囲むように新しいフィールドを設置するからな」
「暗黒大陸から持ち込んだって聞いた城だよね」

聞き捨てならない単語が出たおかげで千草が驚いた様子で茶々丸に聞く。

「あ、暗黒大陸って……確か昔のアフリカ大陸?」
「その通りです。マスターが昔その地で建設させた城をそっくりそのまま詰めました」
「ほ、ほうか(魔法つーのは派手というか……資質の違いなんやろか?)」

普通の魔法使いに出来るものなのか、それとも桁外れの魔力を持っている真祖の吸血鬼だから可能なのかと千草は考える。

「現地の住民を脅して、扱き使って作ったの?」
「失礼な、そこまであこぎな事はせんぞ。物々交換だが報酬は支払った」
「そうなのですか?」
「茶々丸! お前も私をなんだと思っているんだ?」
「ケケケ♪ 決マッテンジャネェカ、稀代ノ大悪人ダロ。
 ソウ言エバ、見セシメニ何人カ……俺ガバラシタナ♪」

挿絵一番の古株のチャチャゼロの証言に全員の視線が胡乱気なものに変化する。

「う、ウソを吐くな―――ッ!!」
「ケケケ、冗談ダカラ、本気ニスンジャネェゾ♪」


「「「……信じてたわ(ました)(え)」」」

「そ、その間はなんだ―――ッ!!?」


「……いや、だって………エヴァだし?」
「……マスターですから」
「……悪名があるさかいな」

若干の間を置いて出た言葉に怒り出すエヴァンジェリンにリィンフォースが仕方なく告げると他の二人も頷いて答える。
過去の事を口に出されると流石にぐうの音も出ないエヴァンジェリンだった。
女、子供は殺していないが……もしかしたら見せしめに殺したのが成人男性の可能性を三人は否定できなかった。

「ケケケ。良カッタナ、ゴ主人……マダ悪の魔法使イトシテノ面目ハ守ラレテイルゾ♪
 コノ頃、ウッカリガ多イモンダカラ、ドジッ子魔法使イカト思ワレテナクテナ」
「チャチャゼロ―――ッ!!!!」

エヴァンジェリンは自分の信用度を下げる原因は……この口の悪い従者ではないかと真剣に考え込んでいた。





雪広 あやかは胸の鼓動が高まり、顔が真っ赤になるのを必死で抑えながら話す。

「ネ、ネギ先生……これを私と一緒に飲みませんか?」
「え? いいんちょさん、そんな……悪いです」
「うふふ、ネギ先生。南の島では仲良く二人で飲むのがお約束です」

断ろうとしているネギに対して那波 千鶴がそれはもう不自然さを見せずにキレイに微笑んで告げる。

「そ、そうなんですか?」
「ええ、だからお昼に夏美ちゃんと小太郎くんも一緒に飲みましたわ」
「え? あれはゲームなんじゃ?」
「ええ、ゲームではありましたが……お約束事を守ったんです。
 ですから、この場合……せっかくのお誘いを断るのは間違いなんです」

ねえと言いながら周囲にプレッシャーを掛けて、同席していた釘宮 円、椎名 桜子、柿崎 美砂に村上 夏美を頷かせる。
その手際のよさにあやかは感謝感激で言葉も出ない。

「さ、さ、女性を待たせるのは紳士としてはいけませんよ」
「は、はあ……分かりました。すみません、いいんちょさん」
「い、いえ、私のほうこそ説明が足りずに申し訳ありません(千鶴さん! 貴女の友情に感謝します♪)」

百万の味方を得たとあやかは感動し、ネギとカップル定番のイベントを行う。

(ネ、ネギ先生と一緒に飲む……ああ、たまりませんわ!!)

すぐ側で耳を澄ませば、ネギの息遣いが耳に入ってくるし、ネギの愛らしい唇が目の前にある。


……あやかは満たされた至福の時を感じ、この幸運を得られた事に感謝していた。


そんな様子を見ながら円、桜子、美砂、夏美の四人はアイコンタクトで会話している。

(那波さん……楽しそうね)
(にゃはは、ネギ君って純真無垢だね〜)
(それがネギ君のイイとこじゃない)
(ちづ姉、ノリ過ぎだよ〜。そりゃさ、いいんちょに味方するのは良いけど……私をダシにしないで)

昼間の殿様ゲームを思い出させられて夏美の頭の中は恥ずかしさでグルグルと回っている。

(村上も大変だ……那波は確信犯だし)
(そうだよね〜。でも、まどかはいいの?)
(そうそう桜子の言うように、ソーマさんと飲まないの?)
(な、なに言ってんのよ!?)

ニヤ〜と笑って美砂と桜子もからかう気満々で円に目で会話する。
話を振られた円は勢いよく否定しながらも視界の端のほうにソーマ・赤を姿を入れると、

「……またとんでもない事してる」
「お、海の上に小太郎くんと立ってる!」
「にゃ、にゃんと!?」
「……古 菲さん、バッタみたいだね」

古 菲が二人に対抗しようとして、水の上に立とうとしては失敗して沈み、おそらく海底からジャンプしているのだと判るくらい……勢いよく飛び出している。

「やっぱり……忍者なのかも」
「忍法水走りの術?」
「しっかし、まあまどかもとんでもない人にフォーリンラブしちゃったわね」
「してないって!!」

まどかが必死に否定しても真っ赤になった顔では意味もなくスルーされる。

「そのうち、空も飛んだりして?」
「……いや、それはないっしょ?」
「でも、ソーマさんだよ」
「「否定できないかも」」

夏美のソーマさん発言に美砂と桜子も否定できる要素が少なくて苦笑していた。
ちなみに常識人のはずのあやかはネギとのツーショットを優先して見ないフリの真っ最中で、千鶴のほうもネギとあやかの様子を微笑ましく見守る保護者みたい な感じで居た。





綾瀬 夕映は手に持っているキノコを食すべきか……悩んでいた。

「夕映さん……やめたほうがイイネ」
「いえ、やはり食べる事にするです!」

生でも食す事が出来るド○ドキノコを夕映は一気に口の中に入れて咬んでみる。
隣で見ていた超は酷く疲れた様子でその光景を見つめている。

「こ、これは!?」
「ム……毒に疲労ダナ。これを飲むとイイネ」

超が元気ド○ンコと漢○薬を差し出して夕映に飲ませる。

「プハッ……助かりました。しかし、当たり外れを想像するこのドキドキ感……クセになるです」

スタミナを回復させて、毒を中和しながら夕映はド○ドキノコを口に含んだ時の何とも言えない味を感慨深げに思う。

「イヤ、そんなドキドキ感を味わうのはどうかと思うネ」

超は余計な事を教えてしまったと深く後悔している。

「……ド○ドキノコ、図書館島にある自動販売機の謎のジュースに勝るとも劣らない一品です!」
「そーカナ?」
「やはり世界は広いものです! 私の知らない未知なる味がたくさんあるです!!」

ド○ドキノコ――20%の確立でバッドステータス異常を起こすアイテム。

「この舌にくるピリピリ感! まさにドキドキを誘発させる一品です!!」
「普通はモ○リ玉に調合するのがベターネ」
「なんともったいない使い方ですか!?」
「マ、個人の趣味嗜好に口を挟む気はないヨ。
 夕映さんは夕映さんの思うように使うネ」
「次はド○ドキノコを大量に確保して帰るです!
 全く以って、超さんも人が悪い。こんな素晴らしい一品を私に内緒にするなです」
「アー、マー仕事はきちんとしないとネ」

黄昏てくたびれた感のある超と新たな謎食品を知って元気爆発の夕映の姿が対照的だった。





後日、ド○ドキノコを手に持つ夕映の姿を見て、のどかの不安は増すばかりだった。
ちなみに夕映の勧めで食べたハルナは見事にバッドステータスを引き当てて隣で伏していた。






―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
EFFです。

綾瀬 夕映……何気にモ○ハンの世界に馴染んでます。
超 鈴音……リィンフォースの代わりに気疲れ中です。

もう少し続いて……ヘルマン編になると思います。

それでは次回でお会いしましょう。




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