正義の幻想は終わり 現実が重く圧し掛かる

彼らはその事に気付き 耐えられるだろうか

だが知らない事は罪なのだろう

未来は変わっていく

これは正しかったのか

答えはまだ分からない



僕たちの独立戦争  第二十二話
著 EFF



『お久しぶりですな、草壁中将。相変わらず偉そうにしてますな、

 何故そこまで強気なのか知りたいですな、……そうですかこれが厚顔無恥なんですね。

 火星に敗北したのですから、負け犬らしくもっと卑屈にして貰いたいものですな』

ボソン通信機に映るタキザワに苛立つように草壁は、

「用件は何かな、嫌味を言うなら通信を切るぞ」

『別に構いませんが、木連の未来を放棄しますか。……それも良いですな、

 では殲滅戦を始めていいですか、木連の住民を皆殺ししますよ』

タキザワが嘲笑うように草壁に告げると、

「随分卑劣な事を言うな、命を君は何だと思っているんだ。無礼ではないか」

『それはそっくりお返ししますよ、火星でお前達は何をしたか知らないとは言わせんぞ。

 同じ事をされて文句を言うなよ、正義の木連軍人さん。

 悪の地球人は悪らしく殲滅戦をしても問題はないだろう、どうする市民を死なせるか』

タキザワの台詞に誰も反論出来なかった。

『降伏しますか、但し軍部の士官は戦争犯罪人として、それなりの刑罰を受けて貰いますよ。

 当然でしょう、殲滅戦などと言う愚かな事をしたんですから無罪などはないですよ。

 戦争を指揮した草壁さんは極刑は免れませんよ、そのかわり軍の士官達の罪の軽減はしましょう。

 どうです正義の味方なら得意の自己犠牲で住民と部下を守りませんか』

静かに語るタキザワに、

「ふざけるな!何故貴様にそんな事を言われなければならない。

 まだ木連は負けていない!勝つのは私の木連だ!私は負けない、新たな時代の指導者になるからだ!」

怒りだす草壁は自分の発言に気付かなかった。

『…………そうですか、ではこれより第二次木星報復戦の開始を宣言します。

 自らの愚かさを知りなさい、家族の犠牲を見て後悔するといい』

タキザワは宣言して通信を切り、黒い画面に草壁は、

「負けはしない!優人部隊がいるのだよ。ジンシリーズの恐ろしさを知るがいい!!」

と大きな声で宣言する草壁に士官達は動揺していた。

「閣下!では防宙をどうしますか、このままでは犠牲者が確実に出ますがお考えをお聞かせ下さい」

秋山が草壁に尋ねると、

「ふん、それは簡単だよ。全艦艇を港湾施設に集中するのだ、

 港湾施設を守れれば我々が勝つのだよ。問題があるかね、秋山中佐」

「では市民船やコロニーはどうしますか、守れませんので見捨てると言うのですか」

「…………勝つ為に犠牲は付きものだよ、これで火星に一泡吹かせるぞ」

「そうですか、ではその様に手配しますので閣下は港湾施設で高みの見物をして下さい。

 完全な防御をして見せましょう、お任せ下さい」

秋山の意見に草壁は、

「……君が責任者として現場で対処したまえ、吉報を待っているぞ。秋山中佐」

そう言い残し席を立ち作戦会議室を後にした。

士官達は次々と席を立ち作戦会議室は数人の士官だけが残った。

「では会議を始めるか、港湾施設を守らないとな」

暢気に話す秋山に月臣が、

「源八郎!暢気にしている場合か、市民船はコロニーをどうするつもりだ!

 市民を守らずして何が木連軍人だ!早く防御を固めないとまずいぞ!」

「……耳元で騒ぐな、市民船は無事だろう。俺は火星の攻撃が港湾施設だと睨んでる。

 火星は市民の安全をまだ考慮してくれてるんだ、それを信じるよ」

月臣の声に顔をしかめながら秋山は自分の考えを話した。

「とりあえず港湾施設の作業者達は避難させる、

 俺は陣頭で指揮するが九十九達はここに残り、状況を把握してくれ。

 各市民船に艦艇を回すから指揮を任せるよ。安心しろ、俺はまだ死ぬ気はないからな」

「しかし閣下はどうしたんですか、あれではまるで………………」

士官の一人が怯えるように途中で口を噤んだが全員がその先の言葉を理解していた。

「そうだ、閣下は……変わられたんだよ。このままじゃ木連は破滅するな、

 まあ俺達はそれを見る前に全滅するだろうから、気にしても仕方がないな」

淡々と話す秋山に残った士官は何も言えなかった。

「秋山さん、自分も付き合いますよ。自分が責任者ですからね」

「南雲か…………仕方ないな、よっと」

南雲に当身をあて気絶させると、

「ベッドに縛り付けてくれ、死ぬ気はないがもしもの為にな」

そう言って作戦会議室を退出した。

九十九は残った全員に、

「手を貸してくれ、市民の安全を守らないとな。その為にここにいるんだろう」

その声に士官達は作業を開始した市民を守る為に。



―――ユーチャリスT ブリッジ―――


『…………という訳だ。一部の軍人は草壁の本性に気付いたみたいだな、

 後は時間を稼げれば良いかも知れんな。……まだ予断を許さないが』

タキザワからの報告を話すグレッグにクロノは、

「そうですか、では我々は草壁を追い詰めましょうか。自滅させる為に」

『そうだな、奴には苦しんでもらわんとな。………俺達にはその位しか出来んな』

火星の殺された住民を思うグレッグは沈痛な顔で応えた。

「それでも何も出来ないよりはいいですよ、生き残った事が幸せとはまだ言えませんから」

『まだ始まったばかりか、悔やむ暇もないか』

「ええ、でも動いていれば何とかなりますよ。何もせず流されるのは危険ですから」

『俺達は立ち止まる事は出来ないか……そうだな。クロノ、作戦を開始してくれ。

 未来を変える為に、火星に住む住民と子供達を守ろうか』

「ええ、守りましょう。明るい未来の為に火星を守りましょう」

火星にいるグレッグからの通信が切れるとクロノは艦隊に作戦準備の開始を宣言した。


―――サセボシティー 地下ドック―――


「………という訳でクルーの皆さんは各自で再契約を決めてもらいます。

 今度はキチンと契約書を読んでからサインをして下さいね、いい加減な事はしない様にして下さい。

 質問は私まで聞いて下さい、なお期間は一週間とします」

プロスが格納庫に集めたクルーの前で説明をしていた。

クルーも真剣な顔で聞いていたがユリカがプロスに質問した。

「プロスさ〜ん、私はそのまま艦長ですか〜」

「いいえ、艦長は別の方になります。

 貴女とは契約は致しません、クルーが信頼できない人を艦長として使う事はしません」

プロスは毅然とした態度で話しクルーも納得したが、

「私はキチンと仕事してますよ〜。ひどいですよ〜、みんなもそう思うでしょう」

クルーに向かってユリカが話したがクルーは何も言わなかった。

「えっとどうしたんですか、何か問題がありましたか」

クルーの反応に焦るユリカにウリバタケが、

「悪いが整備班はアンタを艦長として認める事ができねえな、

 アクアちゃんや、副長なら文句はないがアンタはダメだな、いい加減すぎるよ。

 このまま艦長を続けるなら俺は降りるよ、死ぬ気は無いからな」

ハッキリと答えるウリバタケに他のクルーも同意していた。

「そっそんな事はありません!真面目に仕事してますよ、どこが悪いんですか」

「発進から今まで問題を起こしている事に気がつかねえのか、

 アクアちゃんはいつもアンタに注意していたが直す事もしねえわ、

 むしろ排除しようとしたアンタの何を信じろと言うんだ、答えてくれ」

呆れるように話すウリバタケにクルーが賛成していた、それを見ていたプロスが、

「本当はアクアさんに艦長として残って欲しかったのですが、

 契約上無理ですし火星の重要人物ですから残念ですよ。

 今頃は木星攻略戦を始めている事でしょうな、多分作戦参謀か、艦長として木星におられますか」

上を見上げて話すプロスにクルーも考えていたが、

「そういう事で艦長はアオイさんに任せる事になると思います。

 軍からもオブザーバーとしてフクベ提督が来られる事になっています。

 当面は地球のチューリップを撃破しながら、月の攻略戦に参加する事になります。

 激戦区に行きますのでその事も踏まえて契約する事を考えて下さい。

 ウリバタケさん達整備班は申し訳ありませんが発進までは整備班にいてもらいますが、

 契約をしない方はその時に退職金を支払い、艦を降りてもらいます」

「分かったよ、それは仕方がないな。ついでに新型の相転移エンジンの整備マニュアルを作っておくし、

 アクアちゃんが残してくれたフィールドランサーも作っておくよ、

 それとアクアちゃんと協同で考えたフレームの設計図も出すぜ、それでいいか」

「いいですが、どんなフレームですか」

「ああ、ブレードのシミュレーターを万全に扱えるようになった時に出そうとした、

 対艦フレームだよ、エステバリスが初心者用と言われたんで、

 熟練者用に改造しようとして整備班全員とアクアちゃんの意見を出し合って、設計してたんだよ。

 こいつはブレードと互角に戦えるが、今の所は使えるのはここのパイロットだけだな。

 性能は段違いだが扱いは難しいぜ、エース機として使うかい」

「そうですか、パイロットの皆さんが残られるなら作る意味はありますね。

 他にもありますか、あるのなら出して下さい。採用されたらボーナスを出しますよ」

「まあ、いくつかあるがなじ「ちょっと待って下さい!私の事はどうなりました!!」」

二人の会話に割り込むユリカにプロスは、

「なんでしょう、退職金は出しますから問題はありませんが質問でもありますか」

「私が艦長じゃないんですか!どうしてですか!!」

「問題ばかり起こす人物に艦を任す事は出来ないと会長は判断しましたので、

 貴女はクビという事になります、一応退職金は出ますので安心して下さい。

 あとは私物の整理はキチンとして下さい、引継ぎはいいですから。

 各部署からの意見は私のほうでまとめておきますので問題はありません。

 貴女に任しても出来ないでしょう、書類整理をしない人には無理ですからいいですよ。

 軍に戻ってもいいですし、家に戻られてもいいですよ」

プロスの言葉にユリカは泣きながら格納庫を出て行った。

「これを機に反省されて、直されるといいのですが」

「無理だな、悪いがあの程度で直るとは思えんな。かなり甘やかされて育ったみたいだから、

 これで潰れるかもな、今のままだと軍には向いてねえよ」

「………そうですな、成績が優秀でも覚悟の無い彼女には無理ですな。

 先程の続きですが他にもあるのですか」

「ああ、カスタム機の準備が出来てるぜ。出力は1.25倍だがすぐに作れるよ。

 通常のフレームに改造するだけだからな、予備を改造したから本社に持って行きな。

 向こうでテストして使えるか確認してくれ、他はそれぐらいだな」

「分かりました、では本社に持ち帰り検討する事にしますが、

 ウリバタケさんは開発室に来られませんか、待遇は相談に乗りますが」

「ありがてえが会社勤めは無理だな、俺は作りたい物しか作らねえしな。

 それは会社としてはマズイだろうしな、そうだろうプロスの旦那」

苦笑するウリバタケにプロスも苦笑で応えた。


―――火星軍 木連監視衛星基地 会議室―――


『現在無人機のブレードによる港湾施設への第三次攻撃を終わりました、マスター。

 いよいよ本番の攻撃の準備を行いますか』

「そうだな、木連も必死だな。被害の方はどうなった、ジンシリーズは出たか」

『まだ出ていませんね、おそらく秘密兵器のつもりで出し惜しみしてるのでしょうか。

 木連の被害は甚大ですね、港湾施設は無事ですが戦艦の消耗は限界に来てます。

 後二回が限度でしょう、市民船からの問い合わせも出ていますから、軍も慌てていますよ』

「そうか、ではみんなの意見を聞こうか」

クロノはスタッフの顔を見て各自の意見を聞いていた。

現在火星宇宙軍は木連に報復戦を行っていた。

キャンサー、ライブラの空母を中心にレオ、アリエスの護衛によるジャンプによるゲリラ戦を始めた。

無人機のブレードストライカーで港湾施設の防衛艦隊に攻撃を敢行し、

木連の無人艦隊の被害を拡大させ、市民船に近づいて市民の不安を煽っていた。

既に市民船の護衛艦は全て撃沈され市民船は無防備にされていたが、

軍は港湾施設の防衛で市民船への防御が出来ないでいた。

市民達はここに至って自分達の命の危険を理解し始めた、それが更なる混乱を起こしていた。

「そろそろ本命の攻撃を行おうと思うが問題があるか聞きたいな」

「そうですね、ダッシュ。山崎はそこにいるか、分かりますか」

『はい、無人機より所在は確認しています。しかも暗部の人間も何名か確認しています』

「チャンスですね、では始めましょうか。作戦の確認をしましょう、クロノ」

「そうですね、レイさん。まず陽動として空母を中心に港湾施設への攻撃を行い、

 その混乱に乗じてユーチャリスTとスコーピオの二隻で兵器開発施設を消滅させる。

 手順はスクリーンを見てくれ、問題があれば変更するので言ってくれ」

スクリーンに映るタイムスケジュールに問題は無く作戦は行われる事になった。

この作戦が火星の転機になると誰もが思い、慎重に行動していた。


―――木連 作戦会議室―――


『現在の状況では後二回が限界です、閣下!ジンシリーズの投入をお願いします』

「ダメだ、アレは木連の切り札だ。ここで出す事は許さん、何とか火星の攻撃を押さえるのだ」

『無理です!このままですと艦隊が持ちません、勝つ為には兵力が足りないのです。

 閣下!ご再考をお願いします!』

秋山の発言に草壁は非情な宣告をした。

「ダメなものはダメだ。現状で対応しろ、これは命令だ」

「閣下!無理です、秋山中佐に死ねと言うのですか!」

「…………そうだ、木連が勝つ為には仕方が無い事だ。いいな秋山中佐」

『分かりました、………では通信を切ります』

通信が切れた画面を見ながら草壁は、

「我々の正義が勝つ為にはいかなる犠牲も覚悟しよう、だが最後に勝つのは木連だ!!」

と叫んだがその声に全ての士官が疑惑を感じていた。


「という訳だ、悪いが全員退艦してくれ。死ぬのは俺ひとりでいいだろう」

戦艦かんなづきのブリッジにいる乗員に秋山は笑って告げた。

「何を言うんです!自分は最後まで残りますよ、秋山中佐」

南雲の声に乗員達が続いたが、

「馬鹿を言うな!俺は死ぬ気はないぞ、それより草壁閣下の変わり様を見ただろう。

 このままでは木連が危険だ、残りの艦艇の一部を市民船に回すから防御を任せるぞ」

「それでは港湾施設の秋山さんはどうなります。それこそ死ぬ気ですか」

「大丈夫だ、多分火星は本格的に攻撃するぞ。今までは陽動の布石と俺は見ている、

 これから市民船に攻撃が来るかも知れないぞ。そっちは南雲に任せるから頼むぞ」

秋山の発言に南雲は最悪の事態を想像した。

「まあ自業自得と言う奴だ。火星の住民を正義の名の下に殺したツケを払っているんだよ。

 もう少し早く気付けば………いやよそう無意味だな。

 だが市民はそれを知らない、だから守らないとな。……そうだろう」

苦笑する秋山に南雲達は何も言えなくなった。

木連のした行為の恐ろしさに気付いたが既に引き返せない事も分かっていたからだ。

「艦長!来ました!!

 火星の機動兵器がその数は六十機、こちらに来ます後方に戦艦二隻空母二隻います」

「よし進路を確認しろ何処だ、市民船なら全艦を防御に回すぞ!」

「いえこちらに向かってます、まもなく敵の主砲の攻撃が始まります。来ました!!」

報告と共にかんなづきが揺れ、秋山が指示を出した。

「迎撃するぞ!こちらも無人機を全部出せ!出し惜しみはなしだ、全力で守るぞ!!」

射出させる無人機が火星の機動兵器に向かうが一方的に撃破されていく光景に南雲は、

「ここまで負けるとは、戦艦の攻撃はまだか!急げよ、港湾より市民を守るぞ」

「敵が乱戦に持ち込んで撃てません!どうしますか」

「構わん!無人機ごと攻撃しろ、このまま突破されるよりマシだ。敵の主砲でもう数が維持できん!

 機動兵器が無ければ何とか出来る!俺が責任を取る撃つんだ」

秋山の指示に従って無人機ごと迎撃を始めたが、その時別の敵影が現れた。

「艦長!敵の戦艦二隻が別方向から来ます、進路は不明です。ですがこれは………何だ」

「どうした!何処に向かった!」

「そっそれがここには何も無い筈の廃棄予定のコロニーを攻撃しています」

「………分かった。これが目的だな、そこに木連の兵器開発施設かそれに類するものが在るんだ。

 やられたな、もう木連には当面は新兵器とかは無いだろう。

 ……現状で戦うしか無いな、やはり火星は木連を調べ尽しているみたいだな、南雲」

攻撃を受け壊滅していくコロニーを見ながら秋山は南雲に話した。

「どうやって知ったんですか、………我々も知らない施設を何故火星は知っているのですか」

「それは分からんがこれで火星の攻撃は終わるだろう。無駄な攻撃は火星はしないからな。

 それに俺達への命令は港湾施設の防衛だ、これは知らされていないから全員言うなよ。

 ………全員ご苦労だった予定通り港湾施設は守れた、警戒はするがひと安心だな」

「そうですか、………………ですが次は無いですね。

 艦艇はほぼ使えません、地球の戦線を縮小しないと無理ですね」

「それは火星もだろうな。新型の機動兵器がなかった、火星も疲弊してるのさ。

 だが木連は火星以上に疲弊しているな、艦艇と人材を失ったよ」

「艦艇は半年あれば回復出来ますが、兵器関連はダメですね」

「火星が回復する頃にはどこまで持ち堪えられるか、地球の事も考えないとな。

 いよいよ火星のように戦艦と機動兵器が出て来たからな、作戦の見直しもしないとな」

「閣下がどうされるか、怖いですね。このままでは木連は………………」

「市民からの不安をどう解消するかもあるぞ、軍が力づくで押さえる事になるかもしれん」

南雲と秋山の話に乗員達は動揺を隠せなかった。

正義が砂の城のように崩れるような感覚を彼らは感じていた。



―――ユーチャリスT ブリッジ―――

『マスター、無事全艦帰還しました。作戦は成功です♪』

「そうだな、プラス。被害は何機あった」

『ブレードが24機未帰還だよ、木連も無茶をするね。無人機ごと攻撃するなんて』

「だがあれなら被害は最小になるな、向こうも馬鹿ではないか。各艦に通信を繋いでくれ」

『ようクロノ、何とか成功したな。これで暫くは木連も静かになるな』

「そうですね、サワムラさんもお疲れ様です。

 当面は監視になりますが油断はしない様に注意が必要ですね」

『艦長、お疲れ様です。作戦は無事終わりましたね、火星の安全が一段階良くなりましたか』

「そうだな、エリックも良くやった。スコーピオは良い艦か」

『今回の作戦でこの艦の戦い方が分かりました。機動性は落ちますが火力と射程は優れています。

 長距離からの砲撃で戦う、これですね。後は重力波レールガンを有効に使うかが鍵ですね』

「そうだな、その艦は敵が来る前に撃破する艦だ。待ち伏せて攻撃する狙撃戦艦とも言えるな。

 どうやらエリックも成長したかな」

『そっそんな自分はまだまだ未熟な艦長です。これからも指導してください』

『そんな事無いですよ、十分やってますよ。エリックさんは名艦長になれますよ』

「アクアもご苦労様、ルリちゃんもお疲れ様」

『クロノも無事で良かったです、皆さんもお疲れ様です』

『お疲れ様です、クロノさん。オモイカネも新しい体はどうですか』

『いいよ〜、軽いし力強いよ〜気に入ったよ。どこまでも飛んで行けそうだよ♪』

「よし、では火星に帰ろうな。みんなが待っている火星に」

こうして火星宇宙軍は木連攻撃を終えて火星へと帰還した。

またひとつ火星に未来を守る為に勝利を重ねて。



―――ネルガル会長室―――


『本社に送ったカスタム機と対艦フレームは使えそうですか』

「ええ助かったわ、エステはカスタムが主力に出来るわ。対艦は訓練がいるけど軍も期待してるし、

 そっちに送って使ってもらう事になりそうね。パイロットは残ってくれそうかしら」

『皆さんナデシコに残るそうです、

 アクアさんが航海中にそれとなくこの戦争の事を考えさせるようにしてたみたいです。

 自分の意思でこの戦争にどう参加するか、考えて決めたそうです』

「そう……助かるわね、でもどうしてそんな事をするのかしら」

『この戦争がかなり危険なものになるからじゃないですか、

 ネルガルがボソンジャンプを独占しようとしたせいで、火星はその危険性に対処してるのでしょう。

 木星もボソンジャンプを戦争に利用してますから火星は激戦区になりますよ』

「プロス君の言う通りかもね、ウチの不始末で迷惑かけてるね」

『ですが火星で仕事をするのは無理でしょう。恨まれていますから火星からは弾き出されますよ。

 キチンと会長が火星の住民に謝罪しても難しいですな』

「そうね、これじゃ演算ユニットを回収するのも無理ね。

 兵器関連のシェアもそんなに伸びてないし、損も無ければ得も無いわ。

 今はクリムゾンと互角だけどこの先はどうなるか」

「まあ親子二代で馬鹿な事をしたからしょうがないね〜、ツケを払うのは当然か。

 クルーは何割残ってくれそうだい、補充を考えないといけないんでね」

『クルーは8割が残って貰えそうです、リストを後ほど送ります。

 オペレーターはどうしますか、二人の代わりは何名でフォローしますか』

「とりあえず二名はいるわね。AIの再教育はもうすぐ終わるからシートの増設も出来たし、

 交代制で四人をナデシコに向かわせるわ。

 テストで担当を分けてシミュレートして負担が掛かるなら三人でするように変更するわ」

『ではお待ちしております。対艦フレームは出来上がり次第こちらに送って下さい。

 実戦前に問題の洗い出しをウリバタケさんが行いたいそうです』

「分かったわ、来週にも完成するから送るわね。期待するからいい結果を出してね」

『ではパイロットの皆さんに伝えて、搬入次第テストを開始します。

 データーが揃い次第、本社に送ります、では失礼します』

通信が終了し、アカツキはエリナに現在の地球の戦況の確認を聞き始めた。

「欧州戦線にエステバリスを回す事になったわ。

 アジアで活躍したからIFSの問題も気にならなくなったみたいね。

 アフリカ戦線はクリムゾンのおかげで状況は反転したわ、

 この分じゃ月の攻略戦が二ヶ月ほど早くなるかも知れないわね。

 ………いい戦艦よ、今のナデシコなら大丈夫だけど改修前なら比較するのは問題ね」

「そうか〜彼女が試験艦と言ったのはクリムゾンの戦艦の製作に係わったからだね」

「おそらくね、火星は連装式が標準化してるからクリムゾンもそれが当たり前と判断したのね。

 ナデシコはエステを使用するから空母と戦艦の間みたいな部分があるけど、

 クリムゾンはブレードを使用するから空母がいるけど、ウチはいらないから便利かな」

「そうでもないさ、エステは内部動力が無いから独立の作戦が出来ないから、

 艦が落とされたらそこで終わりだよ。その点を改善しないと木星攻略戦は難しいよ」

「確かにエステは艦隊の防衛は出来ても攻略戦は不向きかしら、何とかしないとね。

 火星はどうしたのかしら、ブレードは欠点を解消出来たのかしら」

「多分、相転移エンジンの小型化に成功したんじゃないかな、アレなら宇宙では半永久的に使えるよ。

 ……ライトニングだっけ冗談だと思ったんだけど、意味は合ったんだよ。

 合体する事で戦闘時以外の行動を一人に任せる事も出来るし、パイロットの負担も軽くなるよ。

 長期の作戦行動には良いかもね、小型の機体じゃ宇宙はダメなのかもね」

「ウチも相転移エンジンの小型化をしないとダメね。

 今の大きさじゃ戦艦にはいいけど機動兵器には対応出来ないし、開発を優先させるわ」

「エクスストライカーは相転移エンジンで稼動してるみたいだね、あの機体に勝てるかい」

「……無理よ、ボソン砲には対処法はないし火力が違いすぎるわ。改修前のナデシコに匹敵するわ」

「やっぱりそうなんだ、火星とは仲良くしないとね。政府がケンカしたら勝てないね」

「当然よ、私達が知っているのは火星の一部よ、全部は見てないからまだ他にもあると思うわ。

 私達に見られても大丈夫な物だけ見せたんじゃないかしら」

「そうだろうね、火星はかなり技術を隠蔽してるね。木星も驚いてるだろうな〜。

 最初の勝利は何だったのか、奇襲が成功しただけなのか、わざと負けたのか混乱してるかな」

「それはないわね、火星は独立する為に技術を隠してたから、

 多分奇襲じゃなければ最初から勝ってたわ。運が良かったのよ、木星はその後はダメだけど」

「調子に乗りすぎたのかな、ネルガルみたいにさ。大変だよ、木星はどうなるかな」

「火星次第ね、交渉は下手みたいだしこのままじゃ自滅するかも」

「悲惨な状況だね、火星は地球の行動を待っているだろうね。

 報復戦はしてもそれ以外はできないね、余裕が無いと思うよ。人口は160万人程だから無理だね」

「そうかもね、これ以上の行動は出来ないわ。火星の弱点かしら」

「違うよ、平和になれば火星の人口は地球からの移民で解消できるし問題じゃないよ。

 一時的なものだよ、むしろ地球の対応次第で危険な状態になるね」

「大丈夫でしょう、そこまで馬鹿じゃないわよ。………………多分ね」

エリナの意見にアカツキは答えられなかった。

連合政府がした行為を考えると危険だろうと判断したからだ。

二人は最悪の事態は避けたいと考えていた。

地球は火星をどうするのか、これはまだ誰も気づいていなかった問題だった。










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EFFです。

後書きを書くのが辛くなってきました。
迂闊な事を書くと先の展開が分かりますからね。
予告を入れるとまずい気もしますね、書き手が未熟ですから展開がばれるかも(汗)
それだけは避けたいのでない時があっても気にしないで下さい。

まあ後書きを期待はしてないと思うんですが………



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