未来が変わっていく

異なる歴史を進み戦いが始まる

新しい家族と仲間を守る為に

俺はこの戦いに全力を使おう

帰る場所を守る為に



僕たちの独立戦争  第二十九話
著 EFF



「それでは皆さんも知ってはいますが改めて紹介しましょう、ホシノ・ルリさんです」

「ども、正確にはルリ・ホシノ・ピースランドになりましたが、ホシノ・ルリと思っていて下さい。

 まだ馴染めなくて困っていますから」

苦笑するルリに以前のルリを知る者は驚きを隠せなかった。

以前のルリは表情も乏しく何処か危うい感じがあったが、今のルリにはそんな雰囲気はまるでなかった。

「見事ね〜アクアちゃんは立派に育てわね、ルリちゃんも元気そうね」

「はい、ミナトさんも変わらずお元気ですね。ブリッジが懐かしい気がしますね」

「アクアちゃんの事だから例のものを後で見せてね〜。楽しみにしてたのよ、見るのを」

「任せてください、新作がタップリありますよ。見応えは十分にありますよ」

ミナトとアクアが少し近寄りがたい雰囲気で話す光景にクルーは退いたが、

やはりナデシコには空気の読めない者が存在していた。

「まあ、どうでもいいですが出発の準備を始めますか」

その声に二人は笑顔でジュンに話しかけた。

「艦長―――何か言いましたか、まさか私達の趣味に文句があるのですか」

「いい度胸ですね、売られた喧嘩は高く買いますよ。覚悟は決めましたか、艦長」

その様子にジュンは退きながら、

(どうして言ってしまったんだ、自分から苦行に入る事はないだろう。みんなは助けてくれないだろうな)

何処か諦めた様子で思考の海に逃避していた、クルーも呆れた様子で考え、

(馬鹿ですか、艦長も空気が読めませんね。見ない事にしましょう、地雷を踏むのは艦長で十分です)

とジュンに目を合わさずに作業を始めていた。

ルリはその光景にナデシコは変わりませねと、何故か嬉しく思っていた。

「アッアクアさん!久しぶりに対戦して頂けませんか、前回よりは腕をあげました。

 今度は無様な負け方はしません、お願いします」

「ミズハさんは変わりませんね、それに無様ではありませんよ。弱さを知って強くなれるのです。

 また腕を見せて貰いましょうか、楽しみですね」

苦笑しながらアクアはミズハに話したがミズハは、

「そんな事はありません!アクアさんやクロノさんには遠く及ばないですから」

「大丈夫ですよ、これから強くなりますよ。火星のパイロットもそうでしたよ、

 クロノが一から鍛えましたから腕をあげた人ばかりです。

 先は長いですよ、しっかり前を見て慌てずに行かないと途中で潰れますよ」

「そうだぞ、ミズハは真面目すぎるぞ。他の連中みたいに気楽にしないとバテるぞ」

「誰が気楽なんだ、ガイ。詳しく教えてもらおうじゃねえか」

「わかんねえか、ナデシコのクルーは俺を含めて問題児だらけだぞ。

 まともなのは艦長とプロスの旦那くらいだぞ、そうは思わんかスバル」

リョーコの問いにガイは真面目に答えたがクルーは、

(自覚があったんだ、少し……いやかなり驚いたよ。成長したね、ダイゴウジさんも)

と思っていたがリョーコは、

「俺は問題児じゃねえよ、それにホウメイさんを忘れるなよ。飯抜きされても知らねえぞ」

「いやバトルマニアのおめえは十分問題児だよ、それにホウメイさんはそんなセコイ事はしねえよ。

 そうだろ、みんなもそうは思わねえか」

「まあリョーコがバトルマニアなのは事実だし」 ヒカル

「そうね、それは否定できないわ」 イズミ

「ホウメイさんは大人の女性ですよ、そんな事はしませんよ」 リーラ

「まあ最初のクルーの選考条件が問題があるからね、軍艦とは言えないし」 エリノア

「そうですね、補充された人員はともかく初期のクルーは問題児がいますね」

「アクアさん、条件って何ですか。私は教えてもらってないですよ」

「確か能力は一流、人格は問わないでしたか。私は自分から売り込みに行きましたが、

 皆さんはその条件で集められたはずですよ、違いましたか……プロスさん」

メグミの質問にアクアがプロスに確認するとプロスが、

「その通りです、あの時は戦艦一隻で火星まで行くという行為の成功させる目的でクルーを集めました。

 アクアさんとテンカワさん以外はその条件を満たした方ですな、今考えると無茶をしたものです。

 もっとアクアさんに早く会えて相談出来れば火星で恥を晒さずに済みましたよ。

 前艦長は会長も失敗したと言われました、アクアさんが言われた事を考慮すれば苦労も減りましたよ」

「だから最初に言ったんです、危険な航海になるから艦長は経験豊富な方にするべきだったんです。

 クルーと艦長は条件を同じにしてはいけませんよ、クルーが経験のない人達で構成すれば、

 艦長は経験者を……または逆にするかしないといけないのに素人で構成すれば問題がありますよ。

 性能に囚われて一番大事なことを見失っていましたね、プロスさん」

プロスとアクアが告げるクルー選考秘話に全員が納得した。

「その通りでした、しかし前艦長は成績優秀な方でしたから大丈夫と思ったんですが、

 こんな事になるとは思いませんでしたよ、アクアさんは知っていたんですか」

「聞かされた事実では自分の行動で火星の住民達を殺してから自覚が出来たみたいです。

 火星に向かうまでに注意を続けましたが、効果は無かったですね……残念ですよ。

 悪い方ではないのですが、精神的にまだ子供なんです。辛い現実を見てないから脳天気になれるのです。

 プロスさん、カタログスペックじゃダメなんですよ……人間は自分の目で確かめて決断しないと」

「成績表だけではマズイと感じましたよ、普段の素行も重要だと実感しました。

 あの方は今のままだとどうなりますか」

「自分の都合のいい事しか考えない人は誰からも相手にされませんよ、一人で生きていく事になりますね。

 でも子供ですから大人になれれば大丈夫ですね、無理だと思いますが」

「どうして無理なんですか、ユリカなら大丈夫ですよ」

「ジュンさんには辛いですが未来ではテンカワさんと結婚されましたが失敗だと言われました。

 アイツは俺を見てなかった、自分の理想の王子様に俺を重ねていただけだと苦笑されてました。

 信じられなかったのですが事実みたいです」

「そうなんだ、やっぱり当たってたんだ。アキトくんも不憫ね、奥さんに愛されてなかったなんて」

「ミナトさん、テンカワさんはそれでも許されたみたいです。

 ただこの時代の自分はそうしない様に変えて欲しいと言われました。

 自分はパイロットにはなりたくなかった、コックになりたかったと言い残されました」

「じゃあ今は火星でコックの修行を始めているのかな」

「ええ、そのうちホウメイさんの元で再修業をして自分の味を見つけたいと笑っていましたよ。

 肩の荷がおりましたよ、約束を果たせましたから」

「そっか〜ご苦労さんね、アクアちゃん」

ミナトの労いにアクアは微笑みで返した、ルリはそれを見ながら、

(成る程、嘘と真実を混ぜる事で隠す事が出来るのですか。

 でもクロノさんの事を考えるとこれがいいのかも知れませんね。

 無理をいって教えてもらった未来を考えるとお姉さんが必死に動かれた意味が分かります。

 今なら私もアクアさんのように動いたでしょう、ラピス達を救い守る為に)

聞いた未来を考えてルリはアクアの苦労を減らしたいと心から思っていた。

「では準備を始めましょうか、C・Cを用意出来ますか」

「一応言われた通り用意しましたが、他は要りませんか」

「はい、ジャンプは私が行いますよ。ではC・Cを艦内に配置しましょうか」

「なあ、どうしてこんな石ころで移動が出来るんだ。変じゃねえのか」

「これは触媒の一つです。まずボース粒子に変換されフィールド内の物体をジャンプさせます」

「アクアちゃんがジャンプさせるのかな〜」

「いえ、火星にある演算ユニットがジャンパーの意思を伝達して移動させます。

 ネルガルが火星の住民を殲滅してでも手に入れようとしたものです。間違いだらけですけどね」

「そうなんですか、でも何が間違いなんですか」

「いい質問です、メグミさん。演算ユニットだけではジャンプは出来ませんよ。

 A級ジャンパーがいなければ、ただの遺物になりますよ。持ち帰っても成果も出ないままになりますね」

「アクアさん、地球にはそのA級ジャンパーはいないのですか」

「分かりません、ですがネルガルの実験結果を見れば想像出来ますね。

 志願者全員死亡と聞いてますが、違いましたか」

「………その通りです、今は凍結していますが中止になるでしょう。

 リスクが大きすぎると会長は判断しましたが、それが事実でしょう」

「一つ言います、チューリップを使うのは危険です。

 木星に実験をしている事を気付かれ攻撃を受けますよ、未来では都市が一つ消滅しかけたそうです。

 この時代では対応できる人材がいませんので、都市の消滅は確定します」

アクアの言葉にプロスは危険に気付いて緊急の連絡を入れる事にした。

『どうかしたの、何かトラブルでも起きたのかしら』

「エリナさん、ボソンジャンプの実験ですが現在は中止していますか。

 ここにおられるアクアさんから重要な意見が出ましたので確認したいのですが」

『本社は中止したわ、ただアトモ社が現在も続けているみたいよ。

 何度も中止を呼びかけたけど聞かないわね、やっぱり木星の攻撃があるのね』

「そうですね、過去では都市が消滅しかけたそうです。このままだと対応できる人材がいないので、

 間違いなく消滅するとアクアさんが仰っています」

「そうね、相転移エンジンを自爆させて周囲の全てを消滅させるわ。

 過去ではテンカワさんがC・Cを使って木星の機体をジャンプさせて回避しましたが、

 今回はそれが出来ませんから、間違いなく消滅します。また犠牲がでますね、覚悟を決めて下さいね」

アクアの意見に状況が切迫している事に気付いたエリナが、

『どの程度の規模の爆発になるのかしら、被害は大きいの』

「周囲の全てを相転移します、半径3キロは完全に消滅、その衝撃で周囲もダメでしょう。

 都市が一つ地図から消える事を約束しますよ、エリナさん」

『そんな大惨事になるの、火星からジャンプ出来る人を呼べないかしら』

「無理です、火星はこの件には対応しないそうです。ネルガルの問題ですので一任するそうです。

 火星も戦時下である以上人員を回すのは難しいのです。ジャンパーの確保は出来ていますが、

 軍人でない非戦闘員に危険な事は強要出来ません。ジャンパーの殆どが20代からの人なので、

 地球に対する反感は大きいのです。その人達は地球の問題に係わる事は嫌がります。

 ましてネルガルの事なら絶対に断られますよ、何をしたか分からないとは言わせませんよ」

『でも大勢の人が死ぬ事になるわ、それでもいいのかしら』

「構いません、地球が火星にした行為に比べれば問題にはなりませんよ。こうやって警告しているだけ、

 感謝して欲しいですね。一度戦争の深刻さを味わうべきですね、火星はこれを幾度も味わいましたよ」

アクアがエリナに告げる言葉にクルーも反論が出来なかった。

火星の状況を見れば誰も地球の被害など甘いと言われても当然だと思っていた。

『そうね、この件はネルガルで対処するわ。会長と相談して解決するから安心して』

そう言って通信が切れてアクアは画面を見つめて、

「覚悟が出来てきましたね、これなら大丈夫ですか」

「そうですな、自覚が出来てきましたな」

「では火星に向かいましょう。早く終わらせて家に帰りたいのですよ、

 子供達を不安にさせる訳にはいきませんからね、まだ側にいないと泣き出す子もいますから」

「そうですね、お姉さんがいないと大変です。ラピスとセレスでは四人の面倒は無理ですし、

 クオーツはクロノさんの手伝いで動けませんから」

「ルリちゃんがいてくれるからマリーも助かっているみたいね、

 ごめんね……私がいなくちゃならないのにルリちゃんに押し付けて」

申し訳ない様にルリに話すアクアに、

「家族ですから、問題はありません。お姉さんに頼りにされて嬉しいですよ」

笑顔で答えるルリに、

「では急ぎましょう、アクアさん。準備が終わったみたいです」

そう告げるプロスに頷いたアクアはジャンプを開始した

ナデシコは火星に向かった、木星との決戦に参加する為に。



―――木連艦隊 旗艦こうづき―――


「被害はどうなった、それから火星の艦隊はどうなった」

「はっ、こちらの被害は約12%の損害になりました。

 火星の方は鹵獲した戦艦ですので被害は殆どありません、どう致しますか」

士官の報告に高木は平然と艦列を整え進軍を続けるように命令した。



再侵攻を開始した艦隊を監視するクロノにダッシュは、

『マスター第一次防衛ラインの戦闘の結果、戦艦の修復に24時間頂きたいのですがよろしいですか』

ユーチャリスUのブリッジでダッシュはクロノに尋ねた。

「二次防衛ラインに間に合うか、ダッシュ」

『問題ありません、無人機による作業ですからクルーの負担はありません。

 木連の艦隊には無人機を潜ませ監視をしていますが、そのまま侵攻するみたいです』

「火星に通信を入れてくれ、ダッシュ」

クロノの声にダッシュは火星に通信を開始した。

『どうですか、状況は』

「敵の損害は12%になった、このまま第二次防衛ラインで再攻撃を開始するよ。

 そっちの状況はどうだ、問題はないか」

『特に問題はありませんね、地球軍の方と市民の間にトラブルもなく順調に進んでいます。

 アクアさんがナデシコで戻られ、最終ラインの準備を明日から始める予定です』

「こっちの損害はどうなった、艦艇の被害はどの程度だ」

『損害は21%です、残りの艦は修復可能です。一部は応急修理で特攻を仕掛けます、

 相転移エンジンを暴走させて周囲を相転移する爆弾のように使います。

 ここで全て使い潰す事になります、後はジャンプによるゲリラ戦とスコーピオによる狙撃になります』

「そうか、次で向こうの損害はどの程度までなるか推定してくれ」

『既に計算以上に効果が出ています、向こうの油断もありましたが30%を目標に変更しました。

 この分ですと火星に到着時には残存艦は50%を切る事になりますね。

 猪を相手にしている気分です、前しか見えず進むだけの部隊ですね。

 やはり草壁はこの艦隊を囮にして北辰を使って演算ユニットの確保を計画したのかも知れません』

ダッシュの推論にスクリーンのレイも頷いてその意見を支持した。

『監視は既に始めていますね、ダッシュ。北辰にはこのまま動かしましょう、

 そしてダミーのユニットを渡して科学者達を始末しましょうか』

『そうですね、都市の監視もしていますが問題はなさそうです。誘拐される危険も低いみたいです』

「そうか、では次の通信は第二次防衛ライン到着後にする。何かあったら連絡してくれ」

『了解しました、無理は禁物ですよ、クロノ』

通信を終えたクロノはダッシュに意見を述べた。

「ライトニングの視覚効果はあると思うか、ダッシュ」

『そうですね、正直判断を決めかねています。ですが最終ライン以外では使用は出来ません』

「それもそうだな、効果があれば逃げ帰る可能性もあるな」

『その逆もありますが、この艦の制御をアクア様がしないとマスターが前線に出る事は難しいです』

「性能が良すぎるのも問題があるな、使える人間を限定させるとは考えなかったよ」

『今のところ、マスター以外ではアクア様だけです。ルリさんなら数年後には使えますし、

 その頃にはラピス達も使用出来るでしょう』

「まあ、あの子達には使わせないさ、戦争は俺達で終わりにするからな。

 ダッシュも火星でノンビリして貰いたいしな、あの子達の友達になってくれないと困るな」

『はい♪、いい子達ですね。あの時代はラピス一人でしたが、

 今はアクア様達もいますので毎日が充実していますよ。このまま続いて欲しいですね、マスター』

「ああ、守ってみせるよ。アクアもみんなもな」

『最後まで手伝いますよ、私はマスターと共にここで生きて行きたいです』

「頼りにしてるよ、相棒。最後まで守ろうな」

『はい、ダッシュにお任せあれ♪』

こうして二人は決意を新たに次の作戦の準備を始めた。

願うは家族の幸せを守る事、純粋な想いを胸にユーチャリスUは進んでいく。


―――火星 ヒューズ邸―――


「ただいま、マリー。子供達は元気にしてましたか」

アクアの問いにマリーは少し考えて、

「はい、カーネリアンさまが少し泣かれましたが、それ以外は問題はありませんでした」

「そう…………あの子が一番ひどい状態だったみたいね、私がいないと不安になるのかしら」

憂いを見せるアクアにマリーが、

「ですが少しづつ変わられていますよ、時間が解決してくれますよ。此処には家族がいますから」

「そうね、あの子達には幸せになって欲しいですね」

子供達の未来を考えてアクアは穏やかに微笑むと、

「ママ―――――! お帰り――――!」

アクアを見つけた赤毛の女の子が抱きついて泣き始めた。

「ダメですよ、カーネリアン。泣いたりしては可愛い顔がもったいないですね」

優しく抱き上げて涙に濡れた顔をハンカチで拭くアクアに、

「ぐすっ、ママがいないと私………」

弱々しく話すカーネリアンにアクアは微笑んで話す。

「大丈夫ですよ、ママは必ずここに帰ってきますから泣かなくてもいいのですよ」

優しく抱きしめてカーネリアンを泣き止ますアクアであった。

「それにお姉ちゃんがいますよ、何かありましたか」

「ううん、でもママがいないと寂しくて…………」

「甘えん坊ね、カーネリアンは。それじゃママとお話しましょうか」

その言葉にカーネリアンは笑顔で、

「うん!今度は家にいられるの、ママ」

「二日程家にいられますよ、もう少しだけ我慢してね。

 一緒にいられる様にママ頑張って仕事を終わらせるからね、そしたらパパとママで遊んであげるわね」

「うん………我慢する、でも今日は一緒に寝てね、ママ」

寂しそうに答えるカーネリアンにアクアは、

「ごめんね、でもあと少しだから終わったらピクニックに行きましょうか」

「…………ピクニックって」

「みんなで何処かに遊びに行く事ですよ。いやですか」

「ううん…………行きたいな。約束だよ、ママ」

アクアに楽しそうに話すカーネリアンに、

「そうですね、パパにお弁当を作ってもらいましょうか。大好きなものをたくさんいれて貰いましょう」

「うん!私はね………………………………」

笑顔で話すカーネリアンに優しく微笑みながらアクアは手を繋いで歩いていった。

それを見ていたマリーは二人の後に続いて、

(本当に変わられましたね、いい顔になられました。

 クロノさんがいて子供達がいてここにはアクア様の望んだ光景がありますね。

 このまま穏やかに続いて欲しいものですね、そのうちお子様も増えますね)

アクアの未来を思い浮かべ穏やかに微笑んでいた。


―――ナデシコ 格納庫―――


搬入された機体にウリバタケはへばりついて頬擦りしていた。

「こっこれがエクスストライカー、お肌もツヤツヤだぞ〜。しかもこの重厚感いいねえ〜〜」

エクスストライカーに魅せられて狂喜乱舞の状態であった。

「博士のってるな、まあ分からんでもないか。

 俺も乗りたかったし、ライトニングがあれば俺もああなったしな」

ウリバタケを見ながら苦笑するガイであった。

「この機体は単座のタイプです、今から複座は無理ですのでこの機体になりました」

子供を抱えてアクアは説明をしていた。

「ママ、あのおじちゃん……怖い」

「大丈夫ですよ、変わっていますが面白い方ですよ」

「そうなの」

「ええ、慣れるまではママが一緒にいますから平気ですね」

「うん、ママがいれば大丈夫だよ」

母に甘える子供の光景に微笑ましく思うパイロット達ではあったが格納庫が雰囲気を台無しにしていた。

「えっとその子はアクアさんのお子さんですか」

ミズハが勇気を出してアクアに尋ねた、パイロット達は、

(ヤバイからよせよ、地雷を踏む気か。危険なんだよ、弾薬庫で火遊びするようなものなんだぞ)

と失礼な事を考えていたが、アクアは子供に優しく微笑んで

「そうですよ、さっ皆さんに挨拶をしましょうね」

「うん…………カーネリアン・ルフィーです。…………よろしく」

アクアにしがみついて弱々しく話した。

「すいません、まだ人見知りが激しいのです。ヒドイ状態だったそうで、大人に怯えるもので」

アクアの話に少女の怯えを見せられて哀しい思いを感じていた。

現在ナデシコは火星の衛星軌道上で訓練を始めていた。

その為参考として単座のエクスストライカーが一機配備されていた。

その機体を見ながらパイロットは各自火星の機体の凄さを感じていた。

「今の状況はどうなってるんだ、最終防衛線はどの辺りに設定してるんだ」

リョーコの問いにアクアはコミュニケを使って映像を見せて答えた。

「現在第二次防衛ラインにクロノが待機しています、鹵獲した戦艦を用いて迎撃をしています。

 次の攻撃は3時間後ですね、そして第三次防衛ラインから火星の戦艦によるジャンプ攻撃に移行します。

 木星の損害は………12%ですか、予定を上回る戦果が出ていますか」

アクアが告げる事実にリョーコ達は疑問をぶつけた。

「12%の損害が出てもまだ侵攻するのか、普通は警戒して撤退とか考えないかな」

「ダイゴウジさんの言う事は分かりますが、木星は必ず来ますよ。正義は勝つと信じていますから、

 それに無人戦艦の損害など気にしませんよ。そんな国だから殲滅戦など考えるのです。

 偽りの正義に踊らされる市民にはこれから大変ですね」

「報復戦を始めるのね、どの位の規模にするのかしら」

「そうですね、イズミさん。市民船を攻撃の対象にしますから20万から30万人は亡くなられますよ。

 軍の施設を優先しますからこの程度で済ましますが、次に侵攻すれば木連を完全に終わらせますね」

「そこまでしちゃうの〜やり過ぎのような気もするけど〜」

「そうでもないですよ、市民の方はこの戦争に疑問を抱かず浮かれていますから。

 自分の命を危機に晒されて自覚して貰いますよ、火星の受けた苦しみを」

「まあしょうがないね、戦争なんて始めた以上覚悟するのが当然さ。

 それが出来ないなら戦争する資格はないね、馬鹿は死ななきゃ直らないさ」

「そうね、何も知りませんでしたなんて言い訳など誰も認めないわ。

 木星の市民が死ぬのは当然の事になるわね」

「軍人の立場から言えば、今回の戦争は地球に非がありますが、

 木星は協定も無視して地球と火星を攻撃しています。これは許せる事ではありません。

 無差別に人を殺した責任は取って貰わないと同じ事を繰り返す事になりかねません」

「イツキさんの言う通りです、火星としては木星の市民に戦争を理解してもらいます。

 自分達が人殺しだと自覚してもらいます、二度と軍に踊らされないようにしてもらわないと」

アクアの声に力が込められ、未来を作る意思が感じられた。

「じゃあ、エクスの操縦方法を教えて頂けませんか、アクアさん」

さり気なく一番にエクスに乗りたかったミズハはアクアに聞いたが、

「待て、ミズハ。俺が先だぜ、コイツは譲れねえな」

「ええ――――!言い出した私からですよ、リョーコさん」

「まあ待てよ、いきなりはダメだぞ。ブレードの事を忘れたか、アレを繰り返す気か」

「そうだよ〜〜シミュレーターからでないとマズイよ〜」

「そうね、死ぬには早いわよ。二人とも」

「ヒカル!イズミ!昔の事を言うんじゃねえ、そりゃ………失敗したがな」

「安心しろ、シミュレーターに既に入ってるぜ。俺が分解するまでそれで遊んでろ。

 お嬢ちゃんにはコレをあげよう、なんと二頭身のアクアちゃん人形だ」

カーネリアンは渡された人形を大事に持って、

「………ありがとう、おじちゃん。大事にするね」

「おう、子供は元気が一番だな。これはお土産に持っていきな、アクアちゃん」

渡された物を見てアクアは、

「何ですか、この服は一体」

「俺の趣味だ、ルリちゃん達に着せてみな。面白いぜ、おっとお礼はこの服を着た映像でいいぜ」

「着グルミですか、意外な物ですね。ですが使えますね、これと服を見せて選ばせるのはいいかも」

「そうだろう、ミナトさんに聞いたぜ。これならルリちゃんもアレを着るだろう、コイツは囮にしな。

 ラピスやセレスは面白がって着るかもな、新しい世界を見られるぜ」

「いい作戦ですね、どちらを着ても面白い結果になりますね。カーネリアンも着たいですか」

「いいよ、ママ。これ………着てみたい」

カーネリアンが指差した服を見てウリバタケが、

「ほう、いい目をしてるな。サイズを直しておこうか、後で持ってくぜ」

「楽しみですね、では皆さんシミュレータールームに行きましょうか」

アクアの声にリョーコ達は従い移動したが、

(ルリちゃんも不憫ね、でも我慢してね。この件は何も言えないから)

ルリの苦難を密かに偲んでいた。

何も知らないカーネリアンはアクアの人形を大事に抱えて喜んでいた。

………アクアもナデシコのクルーなのかも知れない。

そう思える光景であった。



その後の二人は、

「いいわね〜ウリバタケさんもいい仕事するわね〜〜♪」

「見事ですよ、世界が広がりましたね。これをルリちゃんが着たら………いいですね」

カーネリアンが着ている服を見てアクアとミナトが喜んでいた。

「まあ、趣味にどうこういう気はないけどね。カーネリアンだったね、コレ食べるかい」

ホウメイがカーネリアンにパフェを差し出した。

「………ママ、食べていいの」

「ええ構いませんよ、ホウメイさんにお礼を言ってね」

「ありがとう、ホウメイさん。頂きます」

嬉しそうにパフェを頬張るカーネリアンを見ながらアクアは、

「………ウサギの着グルミですか、ルリちゃんにも似合いそうですね」

その呟きにホウメイは、

「ルリも苦労するね、まあ似合うから問題はないかな」

と暢気に話していた。

食堂はカーネリアンの姿に萌えの空気に汚染されていた。

カーネリアンは何も知らず美味しそうにパフェを食べていた。

その隣ではアクアとミナトのルリちゃん着せ替え計画が立案されていた。

ホウメイは厨房で苦笑しながらその光景を見ていた。










―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
EFFです。

今回のお題は
ガイ、成長する。
アクア、泣き虫さんのお母さんになる。
ナデシコ、萌えに汚染されるでした(爆)

次回に続く






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