次の戦場に向かうまでの僅かな休息

それぞれの思いが未来へと向けられる

俺達の未来は何処に向かうのか

それはまだわからないがせめて次の世代に道を示そう

それがこの時代に生きる者の責任だろう



僕たちの独立戦争  第三十五話
著 EFF


「火星の連中とバトルか………腕がなるな、クロノと戦う為の第一歩になりそうだな」

腕を組んで話すリョーコに、

「無理だと思うよ〜アクアちゃんに勝てないのにクロノさんに勝てると思うの〜リョーコ〜〜」

とヒカルが話すがリョーコは既にクロノとの戦いに思いを馳せてヒカルの声は届かなかった。

イズミはヒカルの肩を叩いて首を振って、

「無駄よ、あっちに行ってるわよ。しばらくは帰ってこないわ」

と話すとヒカルも諦めた様子で、

「しょうがないよね〜勝ち残れると思っているのかな、クロノさんの弟子を相手にして」

夢から戻らないリョーコにむかって呟くが、隣ではガイが真剣に考え込んでいるのを見て訊ねた。

「どうしたの真面目な顔をして〜〜似合わないよギャグ担当なんだからね〜」

ヒカルの声に気付かずにガイは叫んだ。

「勝ってやるぞ!これに勝ってクロノに認めさせてやるぞ、ゲキガンガーは俺のマシンだとな。

 ふっふっふっ遂に俺の夢が叶うのだ、レェツッゲキガ・イ――――ンッ!!」

ヒカルがガイを呆然と見ているとエリノアに肩を叩かれ二人を憐れむように見ながら、

「訓練しましょうね………恥をかかないようにするわよ、せめて準決勝くらいには進めるようにしないとね」

「……そうだね、エリノアはどの機体にするのかな、私は対艦フレームにしようと思うんだけど」

「無難な選択ねランサーとフレイムは避けるべきよ、いきなり使うのは不味いから」

「そうですよ、使うなら対艦ですねバランスでは一番良いですよ。パワーならブレードを選ぶべきですね」

「イツキはブレードでしょう、パワーを重視しているみたいだからね」

「その通りですブレードが基本ですね、ブレードを使いこなせればどの機体も使いこなせると思いますよ」

「そうね……ランサー、フレイム、対艦の基礎になっているからね」

「ところでイズミ達は何処に行ったのかな、この部屋にはいないけど」

ふと辺りを見てヒカルが二人に尋ねると、

「格納庫のウリバタケさんに会いに行ったわ、メカニックから見た各機体の弱点を教えてもらうんだって」

「良い考えですね、私達も行きましょうか。ここにいるのは危険な感じがしますので」

イツキがそう呟くと二人も頷いてシミュレータールームから離れて行った。



―――ミストルテイン ブリッジ―――


「副長は誰が勝つと思う、俺は火星の誰かだと思うんだが」

「難しいですね、火星のメンバーの実力を考えるとくじ運に期待するしかないですね」

そう答えた副長にアルベルトは疑問をぶつけるが、

「くじ運か………エクスが使えないから俺達の方が有利だと思うんだが違うのか」

「エクスが無いからですよ、あの機体は扱いが難しいですからね。複座になっているのも今なら理解出来ますよ、

 ボソン砲にグラビティーランチャー……どちらも制御に集中する爆撃手みたいな存在が必要ですよ」

「でもクロノは一人で操作していたぞ、それについてはどう説明するんだ」

「あの人はマシンチャイルドですよ、オペレーターとしては地球圏で五指に入りますよ。

 IFSである以上制御できる情報量が我々とは桁が違いますよ」

「……なるほどな納得したよ、操縦だけに専念できるブレードだから良い訳だな」

「そうですよ、火星には人材が集まっていますからね。特にオペレーター関係では地球は勝てませんな」

「マシンチャイルドか………彼らはそんな事を望んではいないのにな、人体実験なんてするものじゃないな」

「全くですよ、地球も木連も外道な事ばかりしていると大変な事になりますよ。

 彼らが本気で地球に牙を向けたらどれだけの被害が出るか想像も出来ませんよ」

「そこまでの被害が出るのか……ちょっと考え難いんだがな」

アルベルトの疑問に対し副長は、

「木連の事を忘れたんですか、無人機の制御コードを奪われて情報戦では火星の圧勝ですよ。

 地球もどうなるか分かりませんよ、電子戦をすれば彼らに敵う者など存在しませんよ」

「………確かにそうかもな、情報戦においてはマシンチャイルドにはまず勝てんかな、

 ライフラインの制御を奪われたら大変な事になるか………敵じゃなくて良かったな副長」

「ええ、彼らが復讐を考えていないから良かったですよ」

「倫理観の狂った科学者は碌な事をしないな、科学の発展だとか人類の進化とか理由をつけては馬鹿な事をするな」

「大義を掲げてみせれば何をしても良いと思っているのでしょうか、こんな所は木連と似てますね」

「そうだな、草壁だったかな火星が見せてくれた記録からの言動とかを考えると……独裁者だな奴は」

「思想的に危険だと判断しましたよ、自分の正義以外は認めないでしょうな。

 こんな人物がトップになれるなんて木連はおかしな国ですね、地球ならまずトップにはなれませんよ」

「閉鎖的な国だからな、これからが大変だな」

「国交が正常化されれば一気に情報が入りますよ、混乱するかもしれませんね」

「気をつけないとな、その混乱を利用して反乱が起きないようにしないとな」

「そうですな、気をつけないといけませんね」

二人はそう結論を出すと更なる意見交換を行っていた。

…………未来で起こる反乱を未然に防ぐ為に。

それを聞いているクルー達は本来軍人とはこう在るべきなのだと思っていた。

軍事力は最後の手段であってそれを使わない事が重要であるのだと感じていた。



―――火星 シミュレータールーム―――


「さてクロノ、どっちが勝つか読めるか」

試合が始まりスクリーンを見ながらのアルベルトの質問にクロノは少し考えて答えた。

「接近戦に持ち込めるかが焦点だな、今回の火星のメンバーはバランス型が中心だからな。

 ランサーなら大丈夫だがフレイムには苦戦するな、俺が出られたら全員同時に相手をするくらいが丁度だな」

「……残念だったな参加できなくて」

「そうでもないぞ、こうして見るのも悪くは無いさ。オニキスも楽しそうだからな」

クロノの膝に座っている黒髪の男の子は興味深く周囲を見渡していた。

「この子もIFS強化体質なのか、クロノ」

「さあオニキス、お兄さんに挨拶しような」

「……オニキス・ディアントです」

「アルベルト・ヴァイスだ、よろしくな」

アルベルトがオニキスの頭を撫でようと手を伸ばすとオニキスが少し怯えたのでアルベルトは手を戻した。

「すまんな、まだ大人が苦手なんだよ………ひどい状態だったみたいでな」

クロノがオニキスの頭を撫でると目を細めて嬉しそうにした。

「そうか、こうして見せられると人間の愚かさを考えてしまうな」

アルベルトが悲しそうに呟くとクロノも、

「そうだな、痛みを知らない馬鹿野郎が多いからな、傷つくのは弱い立場の者達ばかりだな」

「この戦争で少しは減ってくれるといいな、未来が良くなる事を信じたいよ」

「未来は良くなるさ、その為に俺達が苦労しているのだからな。次の世代に問題を残さないようにしないとな」

二人は未来に希望を残したいと考えていた。


「アクアちゃんは誰が勝ち残ると思うかな、私としてはナデシコのメンバーだと嬉しいかな」

二人から少し離れた場所でアクア達は観戦していた。

「そうですねミナトさん、リョーコはくじ運が無かったですね。それに機体の選択も間違いましたね」

「そうなんですか、リョーコさんならランサーなら問題はないと思うんですが」

「メグミさんの意見は間違いではありませんが間違いでもありますよ、ルリちゃんは分かるわね」

アクアに意見を求められたルリは少し考えて答えた。

「いきなりランサーを使用したからですか、普段使ってない機体をいきなり使ったからですね」

「その通りよ、パイロットはね……感覚で戦うタイプと計算して戦うタイプに分かれるわね。

 リョーコは感覚で戦うタイプよ、新しい機体にすぐに馴染めば良いけど馴染めなかったら負けるわよ」

「ではクロノさんはどっちのタイプなの、アクアちゃんは計算するタイプだと思うけど」

ミナトの質問にアクアは少し考えてから答えた。

「………最初は感覚だったと思うんですけど、今は両方で戦っていますね。

 分類すると特殊なタイプになると思いますね、乱戦になればなるほど強くなるタイプですね。

 ………………たった一人で戦い続けた人ですから、実力差が開きすぎていますね。

 私を含むここにいる全員で相手をすれば勝てるかもしれませんね」

アクアの話す事にミナトもメグミも驚いていたがルリは、

「そうですね、絶望しかない戦場で諦めずに一人孤独に戦い続けた人ですから誰よりも強いですね」

アクアに教えてもらったクロノの過去を思い出してそう呟いた。

メグミはその言葉の意味を考え始めたが分かる訳もなく、アクアに訊ねようとしたがミナトが止めた。

「メグミちゃん、安易に聞くようなものじゃないわよ、多分相当ひどい事があったのよ。

 興味本位で聞くのはダメよ、目を覆いたくような事もあるわよ……それでも聞きたいのならいいけどね」

ミナトの真剣な様子にメグミも聞くのを止める事にした。

…………迂闊に踏み込む事はしてはいけないと感じさせる雰囲気がそこには在った。

「ママ、パパが出たらみんな勝てないの」

アクアの膝に座っていた赤紫の髪の女の子が聞くとアクアは、

「ええ、とっても強いわよ………パパが訓練しているところをガーネットも見たでしょう」

アクアが話しかけるとガーネットは、

「うん、すごかったね。いつものパパじゃなかったよ………少し怖かったよ」

「そうね、でもみんなを守る為に訓練しているのよ、それだけは分かってね」

アクアが頭を撫でながら優しく話すとガーネットは嬉しそうに頷いていた。

アクア達から離れて様子を見ていた整備班のメンバーはそこが理想郷に思えていた。

アクア、ミナトにメグミ、そしてナデシコのパイロット達が集まり仲良く談笑しているだけでなく、

ルリを含む未来に美少女と呼ばれるだろう子供達が集まっていたからである。

「ルリちゃんは相変わらず服に無頓着ね、もう少しオシャレに気を使わないとダメよ」

「そうですか、服など機能性に優れていれば問題はないと思うのですがミナトさん」

ミナトの考え方にルリはいつものように答えるが、

「違うわよ、アクアちゃんも普段は制服だけど仕事のない時はさり気なくオシャレに気を使っているわ。

 ルリちゃんはそれすらもしてないから問題なのよ」

「そうなんですか、ミナトさん」

「そうよ、アクアちゃんを超えたいのなら服にも気を使わないとダメよ。

 ルリちゃんも自分なりのオシャレを見つけて周囲にアピールしないと勿体ないわよ」

ミナトの意見にルリは考えるが、

「このままシンプルな服のほうが良いですよ……ゴスロリでしたか、あれだけは着たくないですね。

 他にはピンクハウスも着たくはないですね、機能性がない服など無駄ですよ」

その言葉にアクアはハンカチを目に当てて悲しそうに話す。

「酷いわ、ルリちゃんに似合うと思って着てもらおうとしたのにお姉さんは悲しいわ。

 お母様が送ってくださったから記念に映して送りたかったのよ、ルリちゃんの晴れ姿を」

「ルリちゃん、お母さんがルリちゃんの為に送ってくれたんだから見せてあげないとダメよ〜」

ミナトもアクアの言葉を聞いてルリに注意するが、

「それはそうですが、流石に十着も着るのは嫌です、せめて二着にして下さい。

 みんなに見られて恥ずかしかったんですよ、着せ替え人形じゃないんですから」

「でもね、ご厚意を無駄にするのも失礼な事なのよ……分かるでしょうルリちゃん」

「それは分かりますが………どうも恥ずかしくて苦手なんですよ、私には似合わないような気がするんです」

「う〜ん、ルリちゃんがそう思ってもね………一度お母様にお会いして目の前でお見せして、

 『似合わないから十着も送るのはやめて下さい』とお願いしましょうか」

「そうですね、アクアお姉さん。送るのを止めるのは難しいですが数を減らす事は出来るかもしれませんね」

「ただ逆効果になる可能性もあるから気をつけないとダメよ〜ルリちゃん」

ミナトの考えにルリは不思議そうに訊ねた。

「逆効果とはどういう事でしょうか、ミナトさん」

「ルリちゃんは似合わないと思ってもお母さんは似合うと思ったら数が増える危険性もあるのよ。

 だからここは我慢して映像を送って確認するのも一つの方法よ」

「確かにそうですね、現状を維持するのも一つの方法ですね。

 ルリちゃんの問題ですからルリちゃんが決断しないといけませんね」

メグミは三人の会話を聞きながら思う。

(搦め手ですか………現状維持か、お母さんの前で着るか、数を減らすようにして確実に着せるか、

 どっちにしてもルリちゃんが着る事になるわね、ルリちゃんはその事に気付いてないけど)

「そういえばセレスちゃん達は今日は一緒じゃないけど、どうかしたの」

ルリが考え込んだのでミナトがアクアに三人の事を聞くとアクアは嬉しそうに話す。

「お友達が出来たんですよ、今日はみんなと遊ぶって言ってくれたんですよ」

「そうなの、それは良かったわね〜やっぱり火星じゃ特別扱いされないみたいね」

「そうですね、ただクオーツが心配なんですよ。女の子ばかりですからケンカにならないといいんですが」

「いきなり修羅場にならないと思うけど心配よね〜」

「その点は大丈夫だと思うんですが打たれ強いですから」

「そうなんだ………そういえばアキトくんは何処に行ったのかしら、さっきまでこの部屋にいたのに」

「そういえば……いないですね、何処行ったんだろう」

ミナトとメグミがアキトがいないことに気付いて回りを見るとアクアが答える。

「ホウメイさんに会いに行かれましたよ、腕が上がったか見て欲しいって言われてましたよ」

「そっか〜コックになるんだね、アキトくんは」

「パイロットにはならないんですね、良かったですねアクアさん」

二人は未来が変わっている事に気付いて嬉しそうに話した。


ナデシコの食堂に入ったアキトはまずホウメイに挨拶をした。

「お久しぶりっす、ホウメイさん」

「おっ元気にしてるみたいじゃないか、テンカワ」

陽気に答えるホウメイにアキトも、

「おっす、元気にやっていますよ、今時間ありますかホウメイさん」

「んっそうだな、火星でどのくらい腕上げたか見てやろうか」

「はいっお願いします、ホウメイさん」

嬉しそうに話すアキトにホウメイは、

(いい顔になってきたね、少しはマシな未来になってきたのかね)

とアキトの未来について考えているとテラサキ・サユリがアキトに訊ねた。

「アキトさんはお墓参りしたんですか、ご両親とその………やっぱりいいです、ごめんなさい」

サユリの言い難そうに話す内容に気付いてアキトが苦笑して答えた。

「それがユートピアコロニーはまだ行けないんだ、だから墓参りは先の話になるよ。

 正直悩んでいるんだ、自分の墓参りなんて不思議な事だからね」

「まあ、未来が変わってきてるからね、テンカワの未来が一番変わってきてるんじゃないかねぇ」

ホウメイの意見にサユリも、

「ひどい未来だったみたいですね、変わって良かったですよ」

「でも俺にはそんな実感はないですよ、何が変わったか分かんないっすよ」

「そうだろうねえ、他人事みたいなもんだろうね」

「でも料理人になれない未来なんてアキトさんには必要ないでしょう、そんな未来でもいいんですか」

「そうだね、サユリちゃんの言う通りだよね。俺はコックになるのが夢だったからね、

 そんな未来になるのは嫌かな、今は毎日が充実してるんだ」

笑顔で話すアキトを見たホウメイは、

「それじゃあテンカワの腕を見せてもらおうか、みんなも食べたいんじゃないかい」

その声にホウメイ・ガールズと呼ばれる五人の少女が賛成した。

………アキトの未来は良い方向へ変わり始めていた。


「くっやるじゃねえか、俺に一撃を喰らわすなんてなっ!」

被弾したリョーコは機体を立て直しながらそう叫んでいた。

『ふっ未熟ですね、その程度でクロノさんに戦いを挑むなど甘すぎますよ。

 見た所ランサーの操縦は初めてですね、動きに無駄が多いですよ。そんな事では勝てませんよ』

対戦相手の言葉にリョーコは、

「なんだと――ぉ、もう一度言ってみろ、今度は確実に迎撃してやるぞ」

『無理ですね、貴女は感覚で戦うタイプでしょう……慣れない機体では満足な動きは出来ませんよ。

 ブレードか対艦フレームなら互角に戦えますがランサーでは十分な機動が出来てませんよ』

そう話しながら相手の機体は確実にリョーコのランサーを追いつめていった。

「だから言ったのに〜ランサーはダメだって………」

スクリーンを見ながらヒカルはリョーコの敗北を見ていた。

シミュレーターから降りたリョーコは相手を見て質問する。

「どういう事だ、感覚ってなんだよ」

「パイロットの分類の事ですよ、主に計算して戦うタイプと自己の感覚で戦うタイプの二つがあるそうです。

 感覚で戦うタイプは新しい機体に慣れるまでに時間が掛かるのです。

 あなたの敗因はいきなりランサーを使った事ですよ、慣れた機体なら五分に戦えたでしょうね」

冷静に真実を告げるエリス・タキザワにリョーコは悔しそうに、

「くっ選択を間違えたか、接近戦ならこの機体が一番だと思ったんだがな」

「それは間違ってはいませんが自分の能力を分かっていませんでしたね、

 もう少し面白い戦いになると思っていたのですが………残念ですよ、ですがいい腕ですね」

笑顔でリョーコの腕を素直に褒めるエリスにリョーコも、

「次は勝って見せるぜ。今回は俺の負けだね」

笑顔で答えていた、それを見ていたヒカルは、

「まっしょうがないよね〜ウリピーの意見を聞かなかったリョーコのミスだもんね〜」

とコメントを出していた、隣にいたイツキは、

「でも対艦フレームでも勝てたかどうか分かりませんよ、火星の人はエースクラスが多いですね。

 IFSに関しては地球より慣れていますね、動きに不自然な部分がありませんよ」

「そうね、クロノさんの相手をしていたら腕が上がるのは当然かもね。

 それに日常でもIFSを使っているから慣れという点では私達との差が大きいわね」

イツキの意見に補足するようにリーラが話した。

「でも面白い意見を聞いたわね、パイロットの分類か………ミズハの場合は計算で戦うから今イチなのかしら。

 考えすぎるから動きが悪くなるのかもね」

「でもリョーコよりは良いわよ………リョーコは雑すぎるから」

エリノアに意見にイズミが話すと全員が納得していたが、それを聞いたリョーコは、

「誰が雑だっていうんだ、イズミ」

「リョーコよ、自覚無かったのね………プロスさんと艦長が苦労するのも当然よね。

 報告書はきちんと書きなさいよ、弾薬とかの補給で数がおかしいって毎回言われているでしょう、

 大雑把に書くのはダメよ、後が大変だからね」

イズミの軽い説教にリョーコは焦りながら話すが、

「まっまあ気にすんなよ、なんとかするからな」

メンバーはジュンとプロスの苦労にため息を吐いていた。

「意外なのはダイゴウジさんですね、最初に負けるかと思ったんですがまだ残っていますよ」

「そうね……でも対戦方式なら強いわよ、近接の一対一ならナデシコならリョーコと五分に戦うからね。

 それに少しは遠距離の戦い方も考えているから性格さえ矯正できれば強いわよ」

イツキの声にエリノアが続いてガイの欠点を話していたが、

「それは難しいわよ、熱血馬鹿だから」

と話すリーラに全員が納得していた。


「なあクロノ、火星は今回の月の攻略戦はどう考えているんだ。木連の様子はどうなんだ」

アルベルトの質問にプロスもクロノに向いてその先を聞きたかったようだ。

「そうだな………木連が勝つと思うぞ。数が多くても一隻の戦闘力は木連が上だからな、

 それにチューリップを撃破できないと状況は更に悪化していくからな」

クロノの意見にアルベルトも納得したが、

「全てはチューリップの撃破ができるかどうかに作戦の成功がかかっているのですね」

「その通りですよ、プロスさん。彼らが機動兵器をどう使うかが勝敗の鍵ですね、

 防衛に使うか攻撃に使うかで彼らの運命は決まりますよ………多分自分の身を守る為に使うでしょうね」

「そうだろうな、保身と欲に溺れた人間だからな、勝つ為の手段を取る事はできないだろうな」

アルベルトの声にプロスとクロノは頷いていた。

「では火星は今回の作戦は不参加ですか、次の時はどうしますか」

プロスの意見にクロノは少し考えて答えた。

「木連次第ですかね、まだ火星を諦めていないみたいですから、また戦場になるかもしれませんね」

「草壁もしぶといな………いい加減にしろと言いたいな、次に侵攻するとなると何時になるか分かるか」

「半年は掛かるだろうな、数は三万隻くらいになると思うよ。月からも戻して戦力を整えるかもな」

「その時がチャンスだな、月を取り戻さないと地球の制宙権はないままだからな。

 チューリップの来襲には機動爆雷での攻撃でなんとか防いでいるが有人艦隊が来るようなら危険だからな」

「そうですな、有人艦隊が相手ではどこまで戦えるか分かりませんからね。

 今まで勝てたのは無人機が相手でしたから、AIの単純さのおかげで勝てた部分もありますな」

「今回は思考が柔軟な人物じゃなかったから木連は敗北したが、次は簡単には勝たせてくれないだろうな。

 草壁が率いてくれると助かるな、ジャンプによるゲリラ戦をできるからな。

 俺もパイロットとして前線に復帰できるからな、火星は優秀な人材はいるが経験がないから大変だよ」

「軍の人員不足が堪えているな、コロニーの防衛は無人のブレードだからな。

 エクスの数も十分じゃないみたいだな、300機程か配備できたのは」

クロノの愚痴にアルベルトが火星の状況を話すとプロスが聞いた。

「大変ですな、クロノさんは今は出撃できないのですか」

「そうですよ、プロスさん。火星は前線で艦隊の指揮ができる人材が少ないですよ。

 ボソンジャンプの戦術を効率良く運用できるような人材が育つまでは俺は前線に出るのは難しいですよ」

「ボソンジャンプの戦術か………今までの戦術ではダメだろうな、まだまだ前線には出る事はできないな、クロノ」

アルベルトの意見にプロスも頷いてクロノのパイロット復帰は難しいと思われた。

クロノは苦笑しながら二人に話す。

「まあ仕方ないな、火星の人材を育てる義務もあるからな。きちんと育てて次の世代にバトンタッチしないとな。

 この子達の未来には戦争なんて起きないようにしないとな」

クロノの膝に座るオニキスの頭を撫でてクロノは未来を見ていた。

アルベルトもプロスもその言葉に次の時代が近づいて来ている事を感じていた。

………ちなみにこのゲームの優勝者はエリス・タキザワであった。

タキザワ父は娘の勝利に複雑な顔をしていた事がスタッフの間で話題になっていた。

クロノはそれを見て娘を持つ親の気持ちを考えていたが、

まだ先の事なので今イチ分からないとアクアに話していた。

アクアはそれを聞いて呆れていたがクロノが親馬鹿な事を考えると、

ラピス達の彼氏が出来た時を考え不安になったとルリに話して愚痴を零していた。


―――木連作戦会議室―――


「月の防衛戦はどうなっているか、地球の動きはどうかな」

草壁の質問に士官の一人が話す。

「現在、この宙域に集結しています。数はこちらの1.5倍になりそうです」

「そうか、短期決戦を行おうと思うが問題があれば話して欲しい」

草壁の意見に文句はなく今回の作戦は決定した。

「では作戦を立案しようか、私は今回の作戦はこれだな」

画面に映しだされた作戦に特に問題はなかったが秋山が、

「閣下、囮に100隻ほど使いませんか。ここに配備して後方に次元跳躍門を使って増援を送るのはどうですか」

その発言に草壁は考えて決断した。

「悪くないな、他には何かあるかな」

「防御の優れた艦を前衛にしてその隙間から射程の長い艦で攻撃するのはどうでしょうか、

 閣下の火星攻撃を早めるには損害は少ない方がよろしいかと思います」

草壁はその意見に頷き、作戦を変更した。

「では今回の作戦は決定した、我々の正義は勝つのだ!勝って火星を攻撃するのだ、最後に勝つのは木連だ!」

草壁は今回の勝利を宣言して、火星への攻撃を正当化しようとしたが士官達はその言葉を信じてはいなかった。

草壁に声に従う者は二割ほどになっていたが、草壁は気付く事はなかった。

木連はようやく現実を見るようになってきた。

草壁の夢の終わりはもうそこまで来ていた。

夢から覚めた者達の時間が始まろうとしていた。










―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
EFFです。

ノリと勢いで書き始めた作品なんですが反響の凄さに吃驚です。
多くのSSがネルガル=善、クリムゾン=悪になっていますが全ての元凶はネルガルにあると思い書いてみました。
企業の営利主義の問題は現代でもありますが、ナデシコではそれが原因で悲劇が起きました。
ネルガルの独占によってクリムゾンは非合法な手段を使うしかなかったと考えたんですが、
皆さんはどう思いますか?

まあへそ曲がりなEFFのいう事など気にしないで下さいね(爆)
偶には見方を変えるのも悪くはないと思います。

では次回でお会いしましょう。





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