長い戦争が終わりを告げようとしていた

未来を変える為に頑張ってきたが

それが良かったのかはまだ分からない

次の時代を生きる者が評価するのだろう

歴史はそうやって伝えられてきたのだ

最善は尽くした事を俺は自信を持って伝えよう

次の時代に生きる子供達に




僕たちの独立戦争  第四十話
著 EFF


「閣下、敵影はありません。

 このまま遺跡へと向かいますか?」

索敵を行っている部下の言葉に草壁は全艦に伝える様に指示を出して宣言をした。

「私は遺跡に降下するが諸君らは上空で待機せよ。

 この遺跡を押さえる事で我々の勝利は確実なものとなるだろう」

草壁のかぐらづきは遺跡の近くに降下すると、

生き残った科学者達を率いて草壁は遺跡内部に突入した。


「草壁が遺跡内部に入りました。

 ……予定通り全艦に作戦準備を始めて下さい。

 二時間後、攻撃を開始します」

遺跡を監視していたスタッフの通信を聞いて、レイは作戦の開始を宣言した。

「内部にいる部隊も草壁が最深部に到達すると同時に行動するように。

 この際、草壁の生死は問いませんができる限り捕縛して下さい。

 草壁を戦争犯罪人として法廷に送り、草壁に従う者達の目を覚まさせる事が重要になります。

 草壁の遺志を継ぐ者を出さないようにする事が、今後の木連との関係の改善になります」

レイの宣言を聞いたスタッフはその事を各戦艦のスタッフにも伝えた。

全員が戦後を睨んだ、この作戦の重要さを理解していた。

最終局面が始まろうとしていた。


遺跡の最深部に突入した草壁は生き残った科学者達に遺跡の調査を始めるように命令すると、

自分が遺跡を手に入れた事に喜びを隠せなかった。

だがそれは束の間の幸せに過ぎない事を教えさせられた。

「閣下、遺跡を調べましたが……大変な事が判明しました」

科学者の説明に草壁は不審を感じて聞く事にした。

「なんだ、問題があるのか?」

「……中枢の演算装置が抜き取られています。

 この状態では遺跡を活用する事は絶対に不可能です」

科学者が告げた事に草壁は一瞬理解できなかったが、内容を思い出して怒りだした。

「なんだと!!

 ではこの遺跡を押さえても意味が無いのか!

 どうなんだっ!!」

草壁の怒鳴り声に怯えるように科学者は答えた。

「無意味ではありませんが……閣下が言われた使い方はできません。

 ……跳躍の研究には使えますが、武器としては使用できません」

「ちっ火星の奴らか!

 我々の意図を外してくれるな。

 こうなれば火星の都市を全て攻撃して奪い取ってみせるぞ!!」

舌打ちして火星の都市への攻撃を決断した草壁は引き上げるように指示を出そうとした時に遺跡が鳴動した。

その様子に草壁は側にいる科学者に訊いた。

「何事だ!

 何が起こったのだ」

「遺跡が動くという事は………誰かが跳躍をしたみたいです」

周囲を見ながら答える科学者に草壁はその意味を知って上空の艦隊に通信をつなげようとしたが、

艦隊の方から慌てた声で通信が入ってきた。

『閣下!

 我々の上空に火星の艦隊が跳躍して来ました。

 時間を稼ぎますので急いでお戻り下さい』

「分かった、すぐに戻る。

 時間を……んっ何事だっ!」

艦隊に指示を出そうとした時に周囲から銃声が鳴り響くと部下達が倒れ始めていた。

草壁達の部隊を取り囲むように展開されていく部隊に草壁は自分が罠に陥った事に気づいた。

「閣下!

 さがってください、火星の陸戦部隊が包囲しています。

 上空の艦隊から部隊が来るまで時間を稼ぎますので今しばらくのご辛抱を」

草壁の部下達が草壁を囲んで守ろうとすると、

「無人機を使うのだ!

 あれなら包囲を破り、脱出ができるだろう。

 何故使わないのだ?」

草壁の命令に部下の一人が悔しそうに話した。

「……制御を奪われました。

 無人機は我々の命令には従ってくれません。

 火星の部隊を守るように起動して展開しています」

「艦隊はどうした!

 こちらの状況を知らないのか?」

上空の艦隊に期待していた草壁に通信士が、

「現在、火星の艦隊と交戦中です。

 火星の機動兵器も跳躍して攻撃を開始しました!」

上空の状況を聞いた草壁は脱出する為の行動を考え始めたが時間はあまり残されてはいなかった。


「くっ全艦に伝えろ。

 我々は閣下が遺跡から戻るまで時間を稼ぐぞ」

士官の指示に通信士が艦隊に命令を伝えると各艦が行動を開始した。

「前方の艦隊を攻撃するぞ。

 こちらの主砲の射程に入り次第、砲撃せよ」

その命令に艦隊が跳躍してきた火星の艦隊に艦首を向けて砲撃しようとした時、

後方から砲撃を受け始めた。

「うっ後ろだと!

 索敵は何をしていたっ!

 何故後方にいることを伝えなかったっ!」

怒り出す士官に索敵を担当していた者は慌てて答える。

「もっ申し訳ありません!

 ですがこちらのレーダーに干渉して索敵できない様にしているみたいです。

 砲撃が始まって気付く事ができました」

「くっ!

 このままでは挟撃を受けるぞ!

 二手に分かれて攻撃を開始するぞ」

士官の指示を受けて艦隊は二手に分かれて攻撃を開始しようとしたが、

事態は更に変化し始めた。

「敵から黒い無人機が放出されました!

 またそれに伴い機動兵器が現れました!」

「なんだと!

 閣下と通信はできないのか?」

状況が最悪の方向へと進み始めた事に気づいた士官は草壁に指示を仰ごうとしたが、

「無理です。

 こちらの通信は全て妨害されています。

 かろうじて艦隊の通信網が通じるだけです」

必死に草壁に通信をしようとしていた通信士の声に士官は、

「分かった全艦に通達せよ。

 火星の艦隊の迎撃を最優先にする。

 撃破後に閣下を救出に向かうぞ。

 こちらも無人機を放出して艦隊の護衛にまわすんだ!

 火星の機動兵器が来るぞ!

 これ以上落とされるのはまずいぞっ!」

士官の指示を聞いて通信士は全艦に伝えた。

艦隊もそれに応えようと行動するが火星の機動兵器の前に次々と撃沈されていった。


「ユーチャリスT、アリエス、ライブラ、カプリコーンは砲撃を始めて下さい。

 またライブラとキャンサーは無人機を放出して牽制を行って下さい。

 敵艦がこちらに進行を開始後、

 後方にレオ、タウラス、スコーピオはジャンプアウトして砲撃を。

 砲撃艦の数は百隻対七隻ですが機動兵器の援護がある火星の方が有利に行動できます。

 ここが正念場です。

 勝って火星の安全を確保しますよ」

次々と指示を出しながらアクアはユーチャリスのオペレートを行っていた。

計算より少し早く開戦したが作戦は順調に進み始めていた。

動揺していた木連の艦隊が落ち着き始めると、

エクスストライカーとブレードストライカーの混成部隊が戦場に現れた。

それを知った木連はジンシリーズを出撃させたが機動性で勝るブレードとエクスの前に次々と撃墜されていった。

防衛用のジンシリーズを撃墜したエクスはその牙を艦隊に向けると、

ボソン砲によって戦艦は次々と破壊されていった。

艦隊も必死で抵抗したが機動性に優れた機体の前には防空兵器は役に立たず、

無人機もディストーションアタックの前に撃破されていった。

そして止めと言う様にユーチャリスUがジャンプアウトしてきた。


「敵艦っ跳躍してきました。

 ……れっ例の大型戦艦ですよ!」

スクリーンに映るユーチャリスUを見た瞬間、自分たちの最後を知って慌てだした。

「艦を近くの機動兵器に向かわせろ!

 盾にすれば攻撃を防げるぞ。

 早くしろっ、急ぐんだっ!!」

艦隊が動き出したと同時にユーチャリスUから砲撃が始まった。

周囲にいた戦艦はその砲撃の前になすすべもなく次々と火星へと落ちていった。

こうして火星に侵攻してきた部隊は降下した草壁の部隊を残して全滅していった。


「くっ上空の艦隊は何をしているのだ。

 早く我々の部隊の救出に来ないかっ!!」

草壁が叫ぶが誰もそれには反応しなかった。

既に周囲にいる者達の数も減り始めていたが、全員が必死で草壁を守ろうとしていた。

しばらくして銃声が途絶えると救出部隊が現れたのかと思ったが最悪の事を火星から聞かされた。

「こちらは火星陸戦部隊だ!

 お前達が当てにしている艦隊は火星宇宙軍によって全艦撃沈した。

 別働隊も既に火星には存在しない。

 木連反乱軍はお前達が最後だ!

 草壁春樹の身柄を引き渡せば安全を保証しよう。

 五分後に返事を聞かせてくれ」

その言葉を聞いた者達は艦隊が撃破された事に不安を感じ始めていた。

「艦隊が簡単に撃破されるわけがないだろう。

 火星のはったりに決まっている。

 私の正義がこんな事で終わるわけがないだろう」

草壁の声を聞いた者達は不安を吹き飛ばすように脱出の準備を始めようとしたが、

「ダメです。

 通信妨害が無くなったので艦隊と通信をとろうとしたんですが通信が途絶しました。

 火星の言ってる事は事実みたいです」

通信士が草壁に現在の艦隊の様子を伝えると自分達の置かれている状況を理解して草壁を見た。

草壁もここに至って自分が敗北した事を理解して立ち上がり陸戦部隊に告げた。

「わかった!

 部下の安全を保障してもらえるなら降伏する!」

「閣下!」

部下の一人が叫ぶと草壁は静かに告げた。

「これ以上の戦闘は無理だろう。

 ……だが私の正義は負けたのではない。

 火星の罠に陥った…………それだけだ」

苦渋に塗れた様に話す草壁に部下達も悔しそうにしていた。

「お前の正義など誰も認めてはいない。

 お前は所詮人類の支配者になろうとして失敗した独裁者だよ」

その声に振り返った草壁はいつの間にか背後に現れた人物に叫んだ。

「何故だ!

 何故、私の正義が認められないのだ」

「簡単な事だ。

 お前は火星の住民を虐殺した。

 自分の都合の為に130万人の命を奪う男など誰も信用しないさ。

 それは歴史が証明しているぞ。

 今まで対話をせずに戦争を始めた者が勝者になった事は無い。

 お前の敗因は武力に頼りすぎて命の重さを忘れた事だ」

青年が告げると草壁はうなだれて地面に膝をついて自分の敗北を認めた。

陸戦隊によって連行されていく草壁を見て、クロノは歴史を変えた事を実感していた。

2198年二月、かつて蜥蜴戦争と呼ばれた戦いは火星独立戦争として終結した。


「そうですか。

 草壁の逮捕に成功しましたか。

 ご苦労さまでした」

作戦司令所に入った通信を聞いたエドワードは笑みをもらして安堵した。

周囲のスタッフも戦争の終結を理解して喜んでいた。

その様子を見ながらコウセイはエドワードに話していた。

「これからが本番だな。

 わしらの頑張りで次の戦争までの期間を延ばす事ができるだろうな」

「………そうですね、

 できれば百年ぐらいは戦争のない社会にしたいです。

 次の世代には苦労させないように頑張りましょう、コウセイさん」

エドワードの言葉にコウセイも楽しそうに話した。

「苦労しそうだな。

 だがそれも悪くはないな」

「ええ、クロノがいなければ死んでいたはずです。

 なら一度死んだつもりで最後までやり遂げるつもりですよ」

真剣な様子のエドワードにコウセイは、

「肩の力は抜いておけよ、エドワード。

 時間をかけて気楽にしていかんともたないぞ。

 それでは本末転倒だろう」

そう言われて自分が緊張している事に気づいたエドワードは苦笑していた。

「まだまだ未熟ですね。

 これからも付き合って下さいよ、コウセイさん」

「前に言っただろう。

 最後まで付き合ってやるさ。

 安心して前を見ていればいいぞ」

穏やかに話すコウセイにエドワードも笑っていた。

歓声が沸きあがっている指令所で二人は和平に向けての意思を固めていた。


―――クリムゾン通信施設―――


「草壁が火星に逮捕されたよ。

 火星は君達との交渉に応じると告げてきたぞ」

ロバートが秋山達に戦争の終結を告げると、

『協力に感謝します。

 なにぶん交渉には不慣れな者達ばかりなのでこれからご迷惑をかけるかもしれませんが』

「気にする事はないぞ。

 これで戦争が終わるんだ。

 悪い事ではないだろう、違うかね」

ロバートは秋山にそう語ると秋山も頷いていた。

「交渉を上手く進めるには絶対の条件があるぞ。

 聞きたいかね、秋山君」

『ぜひ聞きたいですな。

 この先何度も交渉をしなければなりませんから』

「簡単な事だよ。

 立ち上がらない事だよ、交渉のテーブルからな。

 最後まで諦めずに座り続けた者が勝者だよ」

ロバートの言葉を噛み締めるように考える秋山は一言告げた。

『とても簡単ですが難しい事ですよ』

「当たり前だ。

 こんな爺の私でも苦労している事を簡単にされては困るな。

 では交渉の準備が出来次第、連絡をするよ」

『はい、よろしくお願いします』

秋山はロバートに答えると通信は終わった。

「さて地球の準備を始めないとな。

 現在の状況はどうかな」

側に控えていた秘書に尋ねると秘書は答えた。

「厭戦気分が上昇していますよ。

 市民からは戦争の停止を望む声も出てきました。

 後は連合からの連絡を待つだけです」

それを聞いたロバートは考え込んでから呟いた。

「…………五年くらいかな」

「何がですか?」

「うむ、私が会長を次に譲る為の時間だよ。

 平和になれば次の会長も負担は少なくなるだろう。

 相談には応じるができる限り自分の力で切り抜けてもらわんとな」

楽しそうに話すロバートに秘書は考える。

(上手く行けばそうなりますが、上手く行かなければどうなるか)

考え込んでいる秘書の肩を叩いてロバートは告げた。

「という訳で頑張ってもらうぞ、新会長」

その言葉に呆然としていた秘書は慌ててロバートに訊いた。

「どうして私が会長なんですか?

 他にもいるでしょう、候補が!」

「まあ、ダメな時は君に任せるよ。

 それが嫌なら………鍛えてやってくれ」

(こっこの爺は自分だけ楽隠居する気か?

 ……いいでしょう、鍛えて見せますよ。私の為にね)

一人決意する秘書を見ながらロバートは次の会長候補達の苦労を考えて楽しんでいた。

(この程度で潰れるようなら火星からクロノ君を引っ張ってくるしかないな。

 その際は十年の我慢か?

 ………頑張ってもらわんとな)

何だかんだ言ってもアクアの祖父である事には間違いないと二人を知る者は言うだろう。

アクアのお茶目な性格は彼の影響だと後に秘書はクロノに語っていた。

いよいよ和平交渉が始まろうとしていた。


―――ネルガル会長室―――


「やっぱり僕の謝罪が必要なんだね。

 では火星に行く事にしようか、頭を下げる為にね」

「そうですな、会長には申し訳ないですがそれが絶対の条件になりそうです。

 社長派のした事とはいえ、何も出来なかった事は変わりませんな」

アカツキの意見にプロスが状況を考えて答えるとアカツキは苦笑していた。

「あの時点では仕方がないわよ。

 気づいた時にはもう手遅れだったわ」

「少し浮かれていたからね。

 社長派を潰して、経営権を掌握できた頃だったからなぁ」

エリナとアカツキの意見にプロスは、

「それでもオリンポスと北極冠には連絡できたでしょう。

 せめて協力するように言っておけば死なずに済んだはずです」

「そうだねぇ、その点は反省してるよ。

 ボソンジャンプの独占を考えなければ良かったんだけど、

 あの時はまだ父上の妄執を引き継いでいたな」

アカツキは父親の跡を継いだ事を自覚していなかった自分を思い出して後悔している様子だった。

それを見ていたエリナは話題を変えようとしてプロスに訊ねた。

「火星との航路はどうだったの?

 木連との戦闘は無かったけどおかしいと思わなかったの」

「おそらく木連でクーデターが起きた可能性があります。

 クロノさんが言うには停戦を望む和平派と戦争の継続を望む草壁派の対立が始まったみたいです。

 このクーデターの結果次第では木連に総攻撃を始める予定だそうです。

 最悪は木連市民の殲滅戦になる可能性もあるみたいです」

「それって…………火星で起きた殲滅戦を木連で行うの?」

プロスの発言を聞いたエリナが顔を青くして訊くとプロスも真剣な顔で答えた。

「その通りです。

 但し火星での殲滅戦よりスケールは大きくなりますよ。

 一千万人以上の市民が死ぬ事になるでしょうな」

プロスは二人に話すと二人は顔を青くして火星が本気で戦う事の怖ろしさを感じていた。

それを見ていたプロスは考えていた事を話す。

「まあそんな事は無いと思いますよ。

 火星は木連の内部事情に詳しいですから草壁派を集中的に攻撃して和平派を援護するでしょうな。

 地球も気をつけないと危ないです。

 木連にはビッグバリアは通じますが、火星には何の役にも立ちませんな」

「ボソンジャンプの怖さを知っているのは僕たちくらいかな。

 一般の人は知らないから困るな」

アカツキが状況を考えて話すとエリナも考えを述べる。

「戦力的には数では不利だけど個々の戦力では圧倒的に有利ね。

 向こうには未来の技術があるから追いつくのも楽じゃないわよ」

「それだけではないですよ。

 一人一人が自覚を持って行動していますよ。

 半端な我々の軍では火星を相手にする事は死を意味しますよ」

プロスも火星宇宙軍の士気の高さを見て、自分達との違いを感じていた。

「答えは直に出ると思うよ。

 クリムゾンが情報操作をして停戦へと向かわせているからね。

 ネルガルもこの件に関しては賛成だよ。

 復興事業を進める為に僕も一度火星に行かないと」

アカツキも戦後を考えて行動を開始しようとしていた。

少しずつ未来は良い方向へと動き出していた。


―――火星アクエリアコロニー ヒューズ邸―――


「お母さん、お父さんはまだ帰って来れないの?」

クオーツがアクアに訊ねるとアクアも返事に困りながら話した。

「もう少しかかるみたいね。

 クロノは私と違って書類整理は苦手だから忙しいみたいね」

「お父さんも弱点があったんだね。

 僕ね、初めて知ったよ」

「苦手な事は誰でもあるのよ、クロノの場合は事務仕事の経験が少ないからね」

クオーツがアクアに話すとアクアも楽しそうに話していた。

そこにセレスがルリ達と一緒に入ってきた。

「……ママ、引っ越すって聞いたけど本当なの」

「そうなると思うわ。

 この近くにするからみんなとお別れする事はないわよ。

 だから安心してもいいわよ」

不安な様子のセレス達にアクアが微笑んで話すとセレス達は安心していた。

「じゃあ戦争が終わったら学校に行ってもいいの、ママ」

ラピスがアクアに訊ねると、

「みんなと学校に行きたいのかな」

「うん、お友達がみんな行ってるからどんな所か行ってみたいの」

「じゃあ準備をしないといけないわね。

 私は学校に行った事がないから、みんなは行ってお友達をたくさん作らないとね」

アクアが楽しそうに話すと子供達が喜んでいた。

「ルリちゃんも一度地球に行って、お母さんと相談しないといけないわね。

 中学校に入る事になるから制服を着る事になるから見てもらわないと」

「………そうですね。

 服の事も話しておかないと大変な事になりますね」

ルリが真剣な様子でアクアに話すとアクアも真面目に話していく。

「王位継承権の事もあるわよ。

 ルリちゃんは長女になるから跡継ぎの可能性もあるからきちんと相談しないといけないわ」

「私は継承権は放棄してもいいですよ。

 火星でみんなと暮らしていきたいですから」

ルリがみんなを見ながら話すと、

ルリよりやや青みが増した髪の少女がルリに抱きついて泣きそうになりながら話す。

「やだ、ルリお姉ちゃんは一緒にいてくれるよね?」

「ええ、サファイアと一緒にいますよ。

 だから泣かなくてもいいですよ」

頭を撫でて泣きそうなサファイアを慰めているルリにサファイアは、

「………うん。一緒だよ、お姉ちゃん」

二人の様子を見ていたアクアは、

「ルリちゃんもいいお姉さんになってきたわ。

 私がみんなの側にいなかったから、ルリちゃんも立派に成長してきたのね」

「ルリ姉ちゃんはママの分も頑張っていたよ。

 それより……ママ、地球に行くのならお爺ちゃんに会いに行きたいな」

「私もお爺ちゃんに会いたいな。

 一緒に行っちゃダメかな、ママ」

セレスとラピスがアクアにお願いするとアクアは少し考えて話した。

「…………そうね。

 クロノと相談してみましょうか?

 クロノも一度地球に行く事になるからみんなと一緒に行きましょうね」

「じゃあテニシアン島に行こうよ。

 みんなに地球の青い空と海を見て欲しいな。

 ずっと火星にいたからまだ見てないし、ドクターとグエンさん達にも紹介したいな」

クオーツがアクアに話すとまだテニシアン島に行った事がない子供達が興味を示していた。

アクアはそれを見てみんなに話した。

「そうね、みんなに一度地球の海と空を見せてあげたいわね。

 水平線なんて地球でしか見れないから、一度は見せてあげたいわ」

子供達も少しずつその光景を想像して楽しそうにしていた。

「では準備をしましょうか?

 ルリ様とアクア様はピースランドへ行って、王妃様に今後の相談をなさって、

 セレス様達はロバート様にお会いしてからテニシアン島で遊びましょうね」

側に控えていたマリーが予定を確認するとアクアは、

「そうね、クロノが帰ってきてから休暇をもらって行きましょうね。

 クロノは此処しばらく休みなしでしたから丁度いいでしょう。

 戦争が終わればクロノの仕事も減りますから休みも取り易いでしょう」

そう子供達に話すと子供達も喜んでいた。

その光景を見ながらマリーは思う。

(やっとアクア様の望んだ時間が来そうですね。

 クロノさんがいて、子供達の幸せな笑顔が側にある。

 アクア様が欲しがっていたものが揃いました。

 苦労が報われる瞬間に立ち会えて良かったです)

問題はまだ多くあるが今のアクアなら大丈夫だとマリーは確信していた。

「準備をしないといけませんね」

「何の準備ですか?マリー」

マリーが呟きを聞いたアクアが訊ねるとマリーが楽しそうに答える。

「クロノさんとアクア様の結婚式の準備ですよ。

 一応きちんとした形にしておかないと問題がありますよ。

 イネスさんの事は良いとしてもこれ以上増やす気は無いでしょう、アクア様」

「…………そうですね。

 形にしておかないと不味いですね。

 ええ、そうですとも増やす気は無いですよ。

 クロノの……馬鹿」

アクアが静かに告げると子供達も吃驚していたが、そこにクロノが帰ってきた。

「むっ………どうかしたのか?

 そういえば聞きたい事があるんだがいいか、アクア?」

空気に不穏なものを感じていたがクロノはアクアに話した。

アクアは不機嫌な様子を隠さずに話した。

「なんでしょうか、クロノ」

「平和になりそうだからな。

 いい加減きちんとした形にしないと不味いだろう。

 子供達の親権の問題もあるから籍を入れて結婚しないか?」

少し引き気味に話していたクロノであったが、その言葉を聞いたアクアは泣き出していた。

「どっどうしたんだ、泣き出すなんておかしいぞ」

慌てるクロノにアクアは嬉しそうに話していた。

「嬉しいんですよ。

 ずっと不安だったんですよ。

 この戦争が終わればクロノがどこか遠くに行くような気がしていたんです。

 でも私の側に居てくれるのですね」

泣き出したアクアにクロノは優しく話す。

「約束を反故にする気はないぞ。

 まあ後十年くらいは俺達も忙しいけど、その後は火星でのんびり暮らそうな」

その言葉にアクアはクロノに抱きついて何度も頷いていた。

マリーは子供達を連れて部屋を出ると優しく話した。

「では地球に行く準備をしましょうね。

 戦争も終わるみたいですから、みんなも学校に行く準備をしないといけませんね」

マリーが子供達に優しく語ると子供達も楽しそうに話してきた。

二年以上続いた戦争が終わり新しい時代が始まる予感をマリーは感じていた。

(楽しい事だけではないかもしれませんがこの子達とアクア様は大丈夫ですね。

 幸せになれるでしょう、誰よりもなって欲しいです)

その願いは叶うとマリーは信じていた。

………………未来に希望の光が灯っていた。









―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
EFFです。

全四十話のつもりがまた延びました(爆)
まあそれも悪くはないと開き直る事にしました。

では次回でお会いしましょう。



押して頂けると作者の励みになりますm(__)m

<<前話 目次 次話>>

作品を投稿する感想掲示板トップページに戻る

Copyright(c)2004 SILUFENIA All rights reserved.