ありふれた日常を私は生きている
退屈な時もあるが毎日が新鮮だと感じている
こんな日々を大切にしたいと思うのは間違いじゃないと感じている
今日もみんなが元気に暮らせますように
僕たちの独立戦争 第四十一話
著 EFF
放課後の教室で帰宅の準備をしていたルリにクラスメイトの少女が声をかける。
「ルリちゃん、帰ろうか。
それともみんなと遊びに行くの?」
「いえ、今日は早く帰ろうと思います。
明日からしばらく地球に行く事になりますので、アリシアさん」
その言葉にクラスの男子が振り向いた。
「ホ、ホシノさん!
地球に行かれるのですか?」
男子の一人が慌てて訊ねるとルリが答える。
「そうですよ、両親が帰ってくるように言うので一週間の予定で地球に行く事になりました。
………それが何か?」
「えっ!ルリちゃんのお父さんとお母さんって地球にいるの?
私…初めて聞いたけど」
驚いてルリに確認するアリシアにルリも言い難そうに答えた。
「…………実は家庭の事情で別の場所に育てられていたんです。
先の戦争のせいで両親の居場所が不明になったのですが、お姉さんが苦労して捜してくれたんですよ」
「……そうなんだ。
ごめんね、余計な事を聞いたね」
謝るアリシアにルリは微笑んで話していた。
「そんな事はないですよ。
アリシアさんには話しておくべきでしたね。
すいませんでした、アリシアさん」
「ううん、そんな事ないよ。
言い難かったんでしょう、ルリちゃん」
慌ててルリに話すアリシアを見ながら男子が話題を変えようとする。
「でもホシノさんのお父さんってクロノ・ユーリさんじゃなかったんだ。
てっきりそうだと思ったんだけど」
「私も最初はそう思ったんだけど、ルリちゃんのお兄さんなんだよね。
お姉さんも綺麗な人だったわ。
ルリちゃんの家の人って美形ばかりだね」
アリシアが溜息を吐いて感想をみんなに伝えると、
「そうだよね〜。
近所で評判の美少女ばかりだからね〜」
「一度学校に来られた時に見たけど格好良かったよな〜。
渋い黒服でばっちり決めていたから先生達も緊張していたからな」
「火星宇宙軍の提督で最強のパイロットでしょう。
家でも軍隊式で厳しい人なんでしょう」
クラスメイトの話を聞いていたルリは驚いて声が出なかった。
(そんなふうに見られていたのですか?
クロノ兄さんは料理好きの気のいい人なんですけど。
どちらかといえば親馬鹿まっしぐらの人ですよ)
「お姉さんのアクアさんが綺麗な人よね。
物静かで落ち着いた深窓のお嬢様でも通用するわ」
(いえ、確かにお嬢様ですけど。
どちらかといえばトラブルメーカーですよ。
少し………いえ、かなりお茶目な人です)
自分が見る二人と周囲の者から見た二人の違いにルリは驚いていた。
「そういえば、ルリちゃんはスキップして大学に進むの?
それとも軍に仕官するの?
先生が職員室で話していたけどルリちゃんはどうするの」
アリシアが訊ねるとルリは、
「まだ決めかねていますよ。
父と母も軍に入る事は反対していますので相談するために行くんです。
……もしかしたら祖父の下で就職する事になるかもしれません」
「えっとお祖父さんって誰だっけ?
聞いた事ないよ、ルリちゃん」
「義理の方なんですが大変良くして貰っていますから、
困った時は何時でも頼りなさいと言ってくれたんですよ」
嬉しそうに話すルリに男子達は羨ましそうにしてその祖父に嫉妬していた。
「お祖父さんの下って何処に就職するの?」
「クリムゾングループになりますね。
今、跡継がないかって誘われているんですよ。
冗談だと思うのですが、何でも後継者で困っているそうで……兄さんが継げば良かったんですが、
………火星の事で忙しくて無理だったみたいで」
「クリムゾンの後継者って………クロノさんって凄い人なんだね。
あれ……じゃあルリちゃんのお祖父ちゃんってロバート・クリムゾンさんなの?」
アリシアが考え込んで確認の為に訊くと、
「そうですよ、とても立派な方で尊敬してますよ。
今回の事も相談に乗ってくれていますから感謝しています」
「ほえ〜、ルリちゃんってお嬢様なんだ。
全然そんなふうには見えないけど」
「お姉さんが一般常識を教える為にしたんですよ。
それに友人がたくさん出来るように配慮してくれたんですよ」
「ルリちゃんのお姉さんはやっぱり優しくていい人だね。
妹さん達を見て思ったけど今のを聞いて確信したよ」
アリシアが微笑んで話すとルリも嬉しそうに微笑んで、
「ええ、優しくて頼りになる姉さんです。
でも憧れて見ているつもりはないですよ、必ず超えてみせるつもりです」
その笑顔を見たクラスメイトは声が出せないほどの衝撃だった。
綺麗で意志の強さを感じさせながら周囲を癒すような気分にさせていた。
「それでは失礼しますね。
一週間程休みますが心配しないで下さい、アリシアさん」
「う、うん。じゃあまた来週ね、ルリちゃん」
「はい、皆さんも怪我とかしないで下さい。
では来週、会いましょう」
クラスのみんなに話してルリは教室を出て行くとクラスメイトは感想を話し合っていた。
「ルリちゃんって凄かったんだね〜。
ただの美少女じゃなかったんだ」
「本当だよな。
やっぱり周囲にいる大人の人を見てきたから同級生や先輩じゃもの足りないんだよ」
男子の一人が今までの事を振り返って話すと周囲の女子も頷いていた。
「お兄さんがあのクロノ・ユーリさんなんだよ。
二年前の大戦で活躍した英雄だよ。
そんな人の側にいたら男子なんか霞んじゃうよ」
その言葉に男子達が落ち込むとフォローするべくアリシアが話した。
「でもルリちゃんは今フリーだよ。
彼氏作っている暇はないです、なんて言ってたよ」
「そうかも知れないけど男子なんて気にも留めてないでしょう。
その時点でダメなのよ」
情け容赦ない言葉に男子はガックリとするが、それを聞いたアリシアは納得して次の疑問を話した。
「………そうかもね。
でもルリちゃんのお父さんとお母さんってどんな人なんだろうね。
義理とはいえお祖父さんがロバート・クリムゾンだよ。
やっぱりVIPなのかな?」
アリシアが疑問を投げかけるとみんなが考え始めた。
「意外なところでお姫様なんてどうかな?
ルリちゃんなら似合いそうだよ」
女子の一人が冗談のように話すと、
「あっそれいいかも……パーフェクトプリンセス・ルリだね。
ルリちゃんなら似合うわね」
その意見に賛成する声が次々と出ると全員が面白そうにルリの両親について話していた。
「ルリお姉ちゃーん!
待ってよー」
自分を呼ぶ声に振り向いたルリは、
「ダメですよ、走っては。
転んで怪我をしますよ、セレス」
「ごめんね〜お姉ちゃんがいたんでつい……」
苦笑いするセレスを見て、ルリは優しく微笑んで話した。
「お姉ちゃんは逃げませんよ。
それよりクオーツとラピスはどうしたんですか?」
ルリがセレスに訊くとセレスは嫌そうに答えていた。
「いつものアレだよ。
サラちゃんが怒ってクオーツと喧嘩になってね。
ラピスが慌ててフォローしていたの」
「………またですか。
クオーツも困ったものですね」
ルリが呆れるように話すとセレスも諦めたように話し続けた。
「サラちゃんもね〜苦労してるよ。
クオーツはサラちゃん一筋だけど人気者だからね」
「そうですね、兄さんの一番弟子ですから強くなりましたよ。
ただ朴念仁なところはかなり改善されましたね」
「その点はお母さんの教育の賜物だと思うよ。
みんなも驚いていたからね」
仲良く商店街を歩く二人に声をかける青年がいた。
「ルリちゃん、セレスちゃん。
家に帰るんだったら、お土産をアクアさんに渡してくれないかな」
「お久しぶりです、テンカワさん。
何時地球から戻ってこられたんですか?」
アキトから土産を受け取りながら訊ねたルリにアキトは、
「今日帰ってきたんだ。
来週からユートピアコロニーの再建が始まるだろ。
どうしても一度見ておきたくて、ホウメイさんに頼んで休みをもらってきたんだ。
親父達の墓が残っていたら墓参りと報告しようと思ってね」
「テンカワさん、ユートピアコロニーですが殆ど原形を残していませんよ。
………それでもいいんですか?」
以前オモイカネに見せてもらった光景を思い出して、辛そうに話すルリにアキトは話す。
「……それでも見ておきたくてね。
あそこで育ったんだよ。
だから忘れないようにしておきたいんだ」
「どんな姿になってもユートピアコロニーはアキトお兄ちゃんの故郷なんだね。
………私の故郷は此処になるのかな?」
二人の会話は聞きながらセレスはアキトに訊くとアキトは微笑んで答えた。
「少し違うかな。
セレスちゃんの帰りたい場所はパパとママがいる場所だね。
そこがセレスちゃんにとっての故郷かもね」
その言葉にセレスは笑いながら話した。
「うん、パパとママがいるあの家が私の帰る場所だよ♪」
「そうですね、
私にとってもあの家が帰る場所です」
ルリも微笑んで話すとアキトも笑っていた。
そんな三人に女性が申し訳なさそうに声をかけた。
「アキトさん、ホテルのチェックインをしないと不味いですよ。
一応予約はしていますが荷物もありますからね」
その声にアキトは慌てて二人に話した。
「そっそうだった!
ルリちゃん達を見たから先にお土産を渡そうと思ったんだよ」
「サユリお姉ちゃんも来たんだね。
もしかして二人は新婚旅行なのかな〜」
その女性を見て思い出したセレスがからかうように話すと、
「残念だけど違うんだよ。
まだ結婚してはいないんだよ、俺達。
この事を親父達に報告したくて来たんだよ」
アキトが恥ずかしそうに話すとルリがサユリに話しかけた。
「サユリさんが勝ったんですか?
ちょっと意外でしたが、おめでとうございます」
「アクアさんのアドバイスの勝利ね。
でも………不思議よね。
アクアさんのアドバイスは完璧だったのよ。
やっぱりクロノさんとの付き合いが参考になったのかな」
サユリが不思議そうに話しているのを見ながらルリは、
(まあ当然といえばそうかもしれませんね。
朴念仁の扱いはお姉さんが世界で一番かもしれません)
「おめでとう〜サユリさん♪
式は火星でするの、それとも地球でするの?」
楽しそうに話すセレスにサユリも微笑みながら話した。
「そうね、地球になると思うの。
アキトさんの修行が終わるのはもう少し懸かりそうだからね。
終わったら火星で店を開こうって言いながらプロポーズしてくれたのよ」
嬉しそうに話すサユリを見ていたルリは二人に訊ねた。
「では日々平穏の二号店は火星になるんですか?
その時はぜひ招待して下さいね」
「ああ、その時は招待するよ。
今夜時間が取れたら挨拶に行くってアクアさんに伝えといて欲しいな」
それを聞いた二人は頷き、その時を楽しみにしていた。
それからしばらく話すと二人と別れてルリとセレスは帰宅した。
「お帰りなさいませ、ルリちゃん、セレスちゃん」
「ただいま〜マリーお祖母ちゃん。
これアキトさんから貰った地球のお土産ね」
「ただいま、
アクアお姉さんはどこですか?」
楽しそうに話すセレスから土産を受け取るマリーにルリは聞いた。
「お部屋でフェイトさまとフェリシアさまとお昼寝しておられましたよ。
どうかしましたか?」
「アキトさんが時間が取れたら今夜家に来るそうです。
それを伝えておこうと思ったんですが」
「今は無理ですね。
育児はとても大変な労力が要りますから休める時には休まないと倒れますよ」
マリーが話すとルリも仕方なさそうにしていた。
「私達の時以上に大変だよね。
でもママは嬉しそうだったけどね。
それにフェイトとフェリシアは大事な弟と妹だからきちんと面倒みてあげないとね」
楽しそうにセレスが話すとルリも微笑んでいた。
「気をつけないといけないのは朴念仁にしないようにする事ですね。
……兄さんとクオーツのようにしない事が私達の使命ですよ、セレス」
「………そうだね。
クオーツは私とラピスがフォローしてきたけど、フェイトは誰がフォローできるか分からないしね」
「その通りですよ。
フェリシアには苦労を掛けさせる訳にはいきませんよ。
お姉さんのように苦労させるのは避けたいですね」
真剣な表情で話す二人にマリーは苦笑していたが、二人に話す事から対策だけは考えておこうと思っていた。
今日も平和な火星の一日だった。
―――クリムゾン会長室―――
「………会長、もう少し気を引き締めて下さい。
何時までもお孫さん達の映像を見てないで仕事をして下さい」
呆れるように話す秘書にロバートは映像を見ながら嬉しそうに話す。
「……そうだな。
だがフェイトもフェリシアも可愛いだろう。
早くお祖父ちゃんと呼んではくれぬかな、今回は来てくれるのか?心配だな。
いっそ私が迎えに行くかな」
(こっこの孫馬鹿が!
仕事はどうするんですか、また私に押し付けるつもりですか?)
目の前の光景を見ながら秘書は自分の仕事が増えている事を心配していた。
「……仕事ならもう終わったぞ。
それに会長候補に仕事を回しているくせに怒る事はないだろう」
ロバートが楽しそうに秘書に話しかけると、
「そうでもありませんよ。
最終的な確認は私がしているのですよ。
会長には負担がありませんが、私の負担は増えていますよ」
「ふむ、うちも火星のコロニーみたいにオモイカネシリーズを導入するべきかな?
火星の行政も思い切った事をしたと思ったが、稼動してみると反響は大きかったな」
ロバートが火星の事を話すと秘書も真面目に話してきた。
「サービスに関しては地球の行政など火星の足元には及びませんよ。
ただ地球で行う場合は問題がありますが」
「確かにそうかもな。
地球の場合は通信網の整理もしないと大変な事になるからな」
「はい、それに火星の場合はダッシュがいますから成功したんですよ。
一から育てるのは大変な事ですよ」
「あそこまで柔軟に対応できるとは思わなかったぞ。
しかも緊急時の対応が優れているから非常に便利だな。
一番良いと思ったのは自分を当てにしないように常に注意したりする事だな。
あれなら火星が木連のように無人機に依存するような事もないだろう」
「彼が人間だったらクリムゾンに引っ張ってきましたよ。
後継者に出来たんですが残念です」
秘書が悔しそうに話すとロバートも残念がっていた。
それを見て秘書は話題を変える事にした。
「では来週はピースランドでの記念式典に参加していただきます。
予定ではクロノさん達は全員来るそうですよ」
「そうなのか?
ラピスやセレスも大きくなっただろうな。
二人から送られてきたメールによればクオーツの朴念仁が改善されたそうだよ。
他の孫達にも会うのが楽しみだな」
「皆さんも会うのを楽しみにしているみたいですよ。
ルリさんも綺麗になられましたね。
国王夫妻も側に居て欲しいみたいですよ。
継承権こそ放棄されましたが、いまだに国内の人気は衰えていませんね」
秘書が語るルリの人気の高さにロバートも複雑な表情を見せていた。
嬉しいのだが危険な感じがしてこれからの事態の推移を考え込んでいた。
「とりあえずSSに調査をしてもらっていますが特に問題はなさそうです。
次期国王の王子はルリさんを慕っていますし、臣下の皆さんもルリさんに好意的です。
それにオモイカネによる情報戦に勝てるものはアクア様くらいです。
ピースランドとしてもルリさんの持つ力を頼りにしている以上、ルリさんに危害を加えることは無いでしょう」
それを聞いたロバートは悲しそうにしていた。
「あの子には幸せになって欲しいんだが上手く行かないものだな。
クリムゾンの力でも無理な事があるのは辛いな」
「そうかもしれませんが、ルリさんの場合は大丈夫でしょう。
なんせアクア様の一番弟子ですよ。
搦め手からイカサマまでなんでも来いですから、勝つのは苦労しますよ。
先が読める者は絶対に敵には回りませんよ、例え勝ったとしても大変な事になると分かりますからね。
分からない者など相手になりませんよ」
「アクアの一番弟子なら私の孫弟子になるのかな。
あの子に基本を教えたのは私だからな、今度どの程度できるのか試してみようかな?」
楽しそうに話すロバートに秘書は考え込んでいた。
(アクア様のイタズラ好きはこの人譲りでしたか。
ルリさんが真似しなかった事は僥倖でしたよ)
「んっ、どうかしたかな」
「いえ、移動の準備を考えていたのです。
ついでに欧州での視察を考えていたものですから」
何も無かったように話した秘書にロバートも気付かずに話した。
「孫達を連れて遊びに行きたいな。
時間は取れそうかな?」
「その点は安心して下さい。
ロバート様の頑張り次第で二日程取れるかもしれませんよ」
「た、たった二日か?
何とかならんのか、いっそサボるか?」
「何を言っているんですか?
そんな事はさせませんよ、逃げたら仕事を増やして会えない様にしますよ」
「なっなんだと!
自分に孫がいないから私を妬んでいるのか?
そんな事では会長にはなれんぞ」
ロバートの叫びに秘書は呆れたように話していた。
「では仕事を増やして三日にしますから頑張って下さい、会長。
それでよろしいですね」
「くっ嵌められたか。
いいだろう、仕事を持って来い。
孫達との時間の為に働こうじゃないか」
こんな会話が続く会長室に社員達はクリムゾンは安泰だと確信していた。
―――木連 作戦会議室―――
「誰ですか、こんないい加減な計算をしているのは。
経済を甘く見るのもいい加減にして下さい」
「そうよ、これでは地球からも火星からも馬鹿にされるわよ。
もう少し先を読むようにしなさいよ」
シャロンとエリナの二人からの言葉を聞いた者達はガックリと力尽きていた。
木連は和平に向けての準備に経済の勉強をする為に火星に協力を依頼すると、
この二人を中心にしたスタッフを集めて木連に送り込んだ。
来た当初は男尊女卑の傾向にあった木連だったが今では立場が逆転していた。
木連のスタッフが考えた経済政策に対して二人は修正するだけではなく発展させた内容を盛り込んでいた。
粗探しをして主導権を握ろうとした者達は全員返り討ちにあって逆らえなくなっていた。
「まあその辺でやめときなさいよ〜。
皆さんも頑張っているんだからね〜」
フォローするように二人に苦笑しながら話すミナトに二人は、
「ですがあと三年で移民が始まるのですよ。
それまでに木連の見直しをしないと寂れて行く事になりますよ」
「そうよ、いまの内にしておかないと木連そのものが経済によって吸収されるわよ。
それは避けないとまずいわよ」
自分達の置かれている状況を聞かされた者達も最初は理解できなかったが今では理解していた。
生きていくのが厳しい環境の木連から人が離れて行くのは仕方がないことかもしれない。
でも残る者には不自由な思いをさせたくはないから頑張っているのだ。
この二人が厳しくしているのもその為だから文句を言う事はなかったが厳しい事には変わりなかった。
「あと三年じゃなくて、まだ三年はあると考えなさいよ。
それにすぐに消滅する事はないわよ。
離れても此処が故郷なんだから大丈夫よ」
二人に諭すように話すミナトに二人も落ち着きを取り戻していた。
「いいわよね〜ミナトはいい人がいるからね」
「そうですね、エリナさんの言う通りです。
こっちは苦労していたのに自分だけ見つけるんですもの。
……裏切り者ですね」
二人が拗ねるように話すとミナトは余裕を持って返した。
「二人が喧嘩ばかりするからでしょう。
事前に言われたでしょう〜。
木連の傾向と対策をそれを聞いたくせに喧嘩するからいけないんじゃな〜い」
「くっその点は確かに失敗したわよ。
極楽トンボから離れる事が出来るから喜んだけど、前より酷くなったわよ。
プロスさんも引っ張って来るべきだったわ」
「私の場合は新天地の木連で火星で鍛えた腕を試す為に来ましたからいいですが。
木連の男尊女卑には頭にきましたわ」
二人が自分達が来た理由を話すとミナトが、
「ダメよ〜まだまだ修行が足りないわよ。
アクアちゃんなら笑いながら裏から嫌がらせしてるわよ〜。
相手が泣きついてきても笑いながら地獄に落としているわね。
問題はそこで這い上がれない人を挑発して無理やり上がらせてもう一度叩き落すくらいは平気でするわよ」
笑いながら話すミナトに周囲の者達は退いていた。
二人も頷きながら賛成していた。
「そうね、私みたいに鞭ばかり使わないわね。
飴を効率よく使って壊れるまで動かすかしら?
私もやり方を変えようかな、もっと過酷な方法を分からない様にして動かそうかしら?」
「アクアの場合は殺さずに生かし続けるやり方に近いですね。
相手の能力の限界まで引き出して、更に環境を過酷にしてもう一段上の領域に引き上げるやり方ですよ。
潰れない様にしている事が救いですね」
二人の意見を聞いていた者は女性の怖ろしさを感じていた。
「うちの極楽トンボなんて持たないわね。
絶対逃げ出すわ、仕事をサボろうものなら確実に地獄行きね」
「地獄だと幸福かもしれないわよ。
生き地獄になると思うわ、逃げないように周囲を封じて休む暇も与えずに仕事をさせるわよ。
彼女が出来たら絶対に破局させるように情報操作して仕事にだけ意識を向けるようにさせるかも」
「それいいわね、帰って変わらずに遊んでばかりいるようならそうしようかな。
自分だけ幸せになんかさせないわよ」
この時点でアカツキの進退は風前の灯だった。
木連の者はその人物に幸福があることを願っていた。
<パン、パン>
ミナトが手を叩いて全員の意識を自分に向けさせると、
「続きをしましょうね。
シャロンとエリナが失敗したらアクアちゃんが来るかもしれないわよ〜。
その時、苦労するのは皆さんですよ〜」
ミナトが苦笑しながら話すと木連の者達は慌てて動き出した。
それを見た三人は目配せして微笑んでいた。
(上手く行ったわね。しばらくはこれでいけるわ)
などと思いながら三人も作業を始めた。
木連の未来は彼女達が作ったと後に作業に係わった者は答えていた。
木連は大きく変化しているみたいだった。
戦争が終わり移民へと向けた作業が急ピッチで進んでいた。
世界は平和な次の時代へと歩み始めていた
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EFFです。
全四十話にする筈が延びてしまいました。
未熟ですね。
今回は火星の一部と木連の戦争後を書いてみました。
詳しい事は次の四十二話で書くつもりです。
では次回でお会いしましょう。
押して頂けると作者の励みになりますm(__)m
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