先の黄巾党との戦いにより、幽州をねぐらにしていた賊徒の大半を殲滅する事に成功した。
生き残った残党達も幽州から消え、暫くの間は黄巾党の侵略を心配する必要が無くなったのである。
黄巾党討伐で幾度となく出陣し、戦ってきた兵達にとって、それは嬉しい報せである。
嬉しいのは兵達だけではなく、元親達も、そして街の人々も一緒だ。
そしてもう１つ、元親達の周囲に変化が起き始めた。
それは幽州周辺にある他の県の街が次々と、元親達の陣営に庇護を求めてきたのである。
どうやら黄巾党を排除した事で、元親達の所へ頼ろうと言う事らしい。
結果として見れば、幽州の大半の領土が元親達の陣営になったのだ。
また一歩、自分の大望に近づいたと、愛紗達は喜ぶ。
元親も次々に新しい家族が増えていくのを喜んでいた。
これはそんなとある１日の出来事である。
「……よ〜しッ！ これで書類は全部終わりだな」
判を押した書類――店の拡大工事の予算申請書を机の上に置いてある書類の山の上に重ねる。
窓から外を見ると、すでに日は傾き、空は夕焼けに染まっていた。
元親は軽く舌打ちをしながら、座る姿勢をゆっくりと崩していく。
「愛紗と朱里が手伝ってくれているとは言え、こう言う仕事は慣れないぜ……」
口を押さえながら、元親は豪快な欠伸をした。
ここのところ、書類整理でロクに寝ておらず、目が疲れているのだ。
しかし無駄に長い時間休んでしまえば、愛紗と朱里の雷が落ちる。
怒った時の２人の顔を思い浮かべ、元親は小さく溜め息を吐いた。
自分が元々居た世界がとても懐かしいと感じる。
あそこに居た時は海を気ままに渡り、金銀財宝を求めて旅をしていた。
だがこの世界に来てからそんな暇はまったく無い。
この乱世の最中、そんな事をしようとは夢にも思ってはいない。
だがやはり自由気ままな旅が少しだけ恋しかった。
それに残してきた仲間達も、元親にとって気掛かりである。
今まで苦楽を共にしてきた仲間達の顔は、一時たりとも忘れた事はない。
自分が消えたあの後、彼等は一体どうしたのだろうか――
「……茶でも飲むか。俺とした事が、妙な気分になっちまったぜ」
心の中に湧き上がった感傷的な思いを振り払い、元親は崩した姿勢を元に戻した。
そして机の上に置かれた侍女を呼ぶ為の小鐘に手を伸ばそうとした時――
「ご主人様ッ！」
「お兄ちゃんッ！」
「ご主人様ッ！」
何やら慌てた様子で愛妙、鈴々、朱里の３人が部屋に駆け込んできた。
３人の表情は何処か危機迫るものを元親に感じさせた。
「な、何だぁ？ そんな大慌てでどうしたよ」
呆然とする元親に、前に立った愛妙が書状の束を突き出す。
また仕事の追加かと、元親は思った。
「あ、あの……その、ご主人様の仕事が終わり次第、渡そうと思っていた物で……」
頬を薄っすらと赤く染め、愛紗は何処かハッキリしない様子を見せていた。
元親は首を傾げ、ますます疑問が深まる。
「あ〜〜〜もうッ！ ハッキリ言うのだ姉者ッ！ お兄ちゃん！ これね、お兄ちゃんのお嫁さんになりたい人達からのお手紙なんだって！」
愛紗のはっきりしない態度を見かねたのか、鈴々が元親へ向けて叫ぶ。
それに釣られるように、朱里も首を物凄い勢いで縦に振った。
「ああ？ 俺の嫁だぁ？」
鈴々の言葉から察するに、どうやら自分宛ての恋文らしい。
今までそんな物を１通も貰った事が無い元親は何処か釈然としなかった。
「はわわッ！ ち、違いますッ！ 正確に言えば、各街の長や県令さんの娘さんがご主人様とのお見合いを申し込む書状なんですよッ！」
「なんだ。見合いの事かよ」
朱里の分かりやすい答えを聞いて、元親は頷く。
それからとりあえず、愛紗が持ってきてくれた書状の束を受け取った。
１通ずつ、元親は差出人の名前を確認していく。
差出人は全て前回の戦の後、新たに加わった者達からであった。
更に言えば正妻の他に側女や側室を望んでいる手紙も混じっていた。
一通り確認し終った元親は、呆れた様子で溜め息を吐く。
「やれやれ……新たに加わった連中が、早速テメェの娘を俺に差し出すってか？」
「明らかに政略結婚って言うのが見え見えですけどね……」
「だな。だが俺はこう言う汚いやり方は大嫌いなんだ。全部お断りだぜ」
しかし太守が適齢で１人身とすれば、当然の事ではある。
高い地位に居る者の正妻や側室の座を狙う女性は多いのだ。
「それでは断りの書状を出すと言う事でよろしいですか？」
「ああ。でも会わずに断るってのもなぁ。１人ずつ会って、ちゃんと断るか……」
元親が意味無く吹いたこの言葉が、急にこの部屋の空気を冷やした。
原因は言わずもがな、元親の目の前に立つ愛紗、鈴々、朱里である。
元親が恐る恐る、視線を３人に移す。
視線を移した先には、３人が冷たい眼で自分を睨んでいた。
「お、おい。お前等どうしたんだよ。眼がスゲェ怖ぇぞ……」
「いえ。ご主人様のそう思うお気持ちは良いと思います……良いと思うんですよ」
「別に全員に会う必要は無いと思うのだ……お兄ちゃんは気を遣いすぎなのだ」
「私も愛紗さんと鈴々ちゃんに賛成です。会う必要はありません、ご主人様……」
３人の息の合った言葉に、元親は静かに頷くしかなかった。
この空気を戻す為には、大人しく従っておいた方が良いと判断したからであるが。
「そ、そんじゃあ断りの返事を頼むわ。俺はそう言うの書くの苦手だから」
元親はそう言って、書状の束を纏めて愛妙に返した。
「かしこまりました、ご主人様」
愛紗は眩しいくらいの笑顔で、元親が差し出した書状を受け取った。
先程まで冷たい眼をしていた者とは思えないくらいの笑顔である。
加えて鈴々と朱里も、嬉しそうに笑顔の表情を見せている。
女って生き物は時々訳が分からない、元親は頭が痛くなりそうだった。
「あの……ご主人様はこれから先、結婚はしないのですか？」
朱里がおずおずとした様子で訊いてきた。
見ると愛紗と鈴々も、真剣な表情で元親を見ている。
「結婚か？ そりゃあ出来るならしてぇが、俺にも好みがあるからな」
「「「そ、それはどんな！！」」」
３人が同時に、元親に詰め寄る。
この反応にも慣れた元親は、意地の悪い笑顔をしながら言った。
「バカ言え。そんなの人に教える事じゃねえだろ」
「「「えー……」」」
今度は段々と沈み始めてきた３人の様子を見て、元親は少々困惑した。
自分としては少しからかうつもりで言っただけなのに、どうして落ち込むのか。
元親は今日で何回目か分からない溜め息を吐きつつ、３人の顔を見て言った。
「まあ……あえて言うなら、心身共に強い女だな。そうでなくちゃ俺と結婚は出来ねえよ」
「「「ほ、本当ですか！？」」」
「あ、ああ……」
３人に再び戻った笑顔。
愛紗は喜び、鈴々は走り回り、朱里は何故だか燃えている。
その反応は元親をますます困惑させる事となってしまった。
家族の心境の変化を深く読み取れる努力をしようと、元親は密かに決意した。
そんな賑やかな空気が漂う部屋の中へ、１人の男が飛び込んできた。
その男は、他の国の情報を集めるために、朱里が大陸全土に放った間者の１人だ。
突然飛び込んで来た間者に元親達は驚きつつ、間者からの情報を聞く事にした。
その報告は大陸全土を揺るがす大事件だった。
──漢王朝の皇帝である霊帝の死亡。
その支配力は黄巾の乱にて地に落ちたと言われる王朝。
しかしそれでも皇帝の死は驚くべき出来事である。
だが皇帝の死だけでは大事件とは言わない。
ではその大事件とは何なのか。
それは霊帝の死によって起きた後継者争いである。
霊帝は後継者を決める前に亡くなった為、２人居る後継者候補を巡り、朝廷が真っ二つに分かれてしまったのだ。
その２つとは――大将軍何進の一派と、宦官達の一派である。
暴力と謀略が渦巻く朝廷での愚かとも言える権力争い。
その結果として、大将軍何進は謀殺されてしまう。
だが何進派の戦力はまだ健在と言って良かった。
何進派の報復を恐れた宦官達は、自分達の手駒となる者達を加えようと躍起になっていた。
そんな時に目を付けたのが、何進の呼びかけに応じて都に一軍を率いてきていた併州の牧“董卓”だった。
何進亡き後、身の振り方を考えていた董卓は宦官達からの頼みに快く応じ、自身の力を貸した。
しかしこの董卓は宦官達が操れる程の甘い人物ではなかったのである。
宦官達によって朝廷に踏み入る権利を手に入れた董卓は、恐怖と暴力で朝廷を思うがままに支配し始めた。
帝を擁して権力を振るう董卓の一派と、董卓を何としても排除しようと反抗する一派。
今度はその２つに分かれて争い、やがてその騒乱は大陸全土に広がっていった。
そしてついに打倒董卓を掲げた諸侯の大連合が組まれると言う話が持ち上がってきたのである。
大陸北東部を支配下に置く袁家の当主“袁紹”が諸侯に呼び掛け、その下に次々と各地を治める将達が集まっているとの事。
そしてその呼びかけは幽州を治めている元親も例外ではなかった。
間者が言うには、袁紹からの使者が近い日にここへ来るらしい。
報告を聞き、元親は間者を部屋から退室させた。３人へ視線を移す。
元親の視線を受け、３人は無言で頷いた。
◆
その後、謁見の間に移動した元親は、愛紗、鈴々、朱里に意見を求める。
「さてどうする？ お偉いさんからのお呼び出しだぜ」
「聞くまでもありません。黄巾の乱で疲弊した人民が董卓の暴政に苦しんでいるのですよ？ これを放ってはおけません！」
元親の問い掛けに愛紗は真っ先に反応し、返事を返した。
彼女の予想通りの返事に元親は微笑を浮かべる。
「そうなのだ！ 鈴々は連合に参加したいのだ！」
そして鈴々も、愛紗と意見は同じだった。
元親はまだ何も言っていない朱里へと視線を向けた。
「２人は参加を希望だ。朱里はどうだ？」
元親からの問い掛けに、朱里は気まずそうに口を開いた。
「……難しいかもしれません」
その答えに愛紗が鋭い視線を朱里に向けた。
「何を言う！ 私と鈴々に朱里、そしてご主人様の御力も合わせれば、董卓の軍勢などッ！」
愛紗の鋭い視線に怯える事無く、朱里は冷静に言葉を返した。
「あ、違うんです。そう言う事じゃないんです……」
「それではどういう事なのだ？」
「諸侯の連合……仮にそれを反董卓連合とします。その連合に参加を表明している諸侯の名を見てみますと、曹操さん、孫権さん、そして連合の発起人である袁紹さんがいます。この人達の国はみんな軍事力、経済力が飛び抜けて高いんです」
愛紗が顎に手を添え、小さく頷く。
「だけど今の私達にはそのどちらもありません。兵隊さんも少ないですし、税収だって少ない。そんな中、無理して連合に参加するよりも、この乱の後の事を考えた方が良いと思うんです」
「乱の後……だと？」
朱里の言葉の意味が理解出来ないのか、愛紗達は首を傾げる。
しかし元親は朱里の言いたい事がいち早く理解出来た。
「連合軍と董卓軍。どっちかが勝利しようが、漢王朝はもう大陸を支配する力はねえ。つまりこの後はテメェの腕が物を言う群雄割拠の時代に突入すんだろ？」
「その通りです。流石はご主人様」
朱里は大きく頷いてから、更に説明を続ける。
「そうなった場合、恐らく多くの諸侯は領土拡大の為の戦いを始めるでしょう。そうなれば軍備や経済力の弱い国からどんどん併呑されていくのは目に見えています。そしてそれは勿論……」
「私達の幽州も含まれている……か」
愛紗と鈴々は、元親の言葉によって朱里の言いたい事を理解出来たらしい。
先程のような勢いは今はすっかり消えて無くなっている。
「はい。ですからそれを防ぐためにも、今は国力の充実が先決だと思うんです……」
朱里の主張は終わったが、段々と声がしぼんでいった。
確かに自分達の国を守ることは大切だ。最優先すべき事である。
だが目の前で董卓の暴挙に苦しんでいる人達も見捨てる事も出来ない。
だからこそ彼女達はちゃんとした答えが出せないでいるのだ。
自身の国を優先するか、目の前の人々の救出を優先するか――
「…………参加しようぜ」
沈黙が支配する場に元親が静かに吹く。
３人の視線が元親へ一斉に集まった。
「確かに朱里の説明には一理ある。だがよぉ、俺達が救おうとしているのは幽州の奴等だけか？」
元親は愛紗へと視線を向け、「愛紗」と一声掛けた。
「この乱世に巻き込まれた奴等全員を救うんだろ？ だったら迷う事はねえ。目の前で苦しんでる奴等を見過ごしたら、俺達はただの嘘吐き野郎になっちまう」
「ご主人様……」
「それにこの先俺達だけで幽州の奴等を守れる保証は正直ねえ。手を組めそうな有力諸侯が居れば、積極的に話していこうぜ。実際、前の黄巾党との戦じゃあ、公孫賛の協力が無けりゃ勝てなかったんだからな。連合軍に組める奴が居たら今後のために組む。戦の上等手段だろ？」
微笑を浮かべて話す元親に、歓喜の声が広がる。
「成る程……」
「お兄ちゃん頭良いのだ。凄いのだ」
「……そうですね。確かに今回は逆に好機と見るべきかも知れません。連合という形で擬似的な協力関係になれるのですから、それをキッカケに本格的に同盟関係を結べるかもしれません」
元親の説明に、彼女達は感心したように納得した。
「まあ、正直な話をすれば……弱い奴等を痛ぶるのが許せねえだけだ」
「分かっています。ご主人様はお優しい。私は貴方に仕えている事を誇りに思います」
「鈴々も！ お兄ちゃんはやっぱり、みんなに優しいお兄ちゃんなのだ！」
「ご主人様のお考えはとても尊いと思います……ですから私もご主人様に従います」
彼女達は手を挙げ、連合参加に賛同してくれた。
自分の兄貴心が動いた結果なのだが、それでもやっぱり嬉しかった。
「ああ。頼りにしてるぜ、お前等」
元親の表情が自然と笑顔になる。
それに応えるように――頬を薄っすらと赤めながら――彼女達も笑顔で返した。
「それでは早速、軍編成のお話をさせてもらいます」
何処か重かった空気を吹き飛ばすように、朱里が連合へ参加するための話を持ち掛ける。
笑顔だった４人の表情が引き締まった。
「今回の連合参加ですが……やはり愛紗さんと鈴々ちゃん。それに私とご主人様が参戦しなくちゃ駄目だと思うんです」
「無論だな。しかし……ここの守りはどうする？」
愛紗の心配も当然の事である。
４人全員が参加となると、当然参戦中の間、幽州の留守を誰かに任せなくてはならない。
早くも立ち塞がった問題に、全員が腕を組んで考え始める。
すると元親の頭の中で、最近よく働いてくれている２人が思い浮かんだ。
「おい、糜竺と糜芳はどうだ？ あいつ等なら心配無いと思うぞ」
「……そうですね。あの人達なら政にも精通してますし、軍を率いる才能もありますからね。適任だと思います」
糜竺と糜芳の２人は幽州の大半を治めるようになった後、仲間になる事を志願してきた姉妹である。
元親が思う通り、また朱里が言う通り、２人の能力はなかなかの物があった。
「糜芳か……大丈夫なのか？」
元親と朱里は問題ないと思っている。
だが、愛紗の方は何処か納得していない様子だ。
「あいつ等に何か不満があるのか？ 愛紗は」
「いえ……そういう訳ではないのですが……」
元親からして見れば、これ以上の適任は居ないと思っている。
だが愛紗からすると、あの２人はまだ信頼が置けないらしい。
この幽州に来てまだ少ししか経っていないせいかもしれなかった。
「おいおい、あいつ等は家族になって確かにまだ日は浅い。だがそれでも俺の指示にはいつも笑顔で応じてくれるぞ。書類関連の仕事が駄目な俺をいつも気に掛けてくれるし」
「……確かにそうです。ですが、それが露骨過ぎて気に入らない……」
「ああ……？」
「い、いえッ！ 何でもありません！ 私はご主人様の決定に従います！ そ、それより……連合に参加した後の話をしましょう」
愛紗の様子がまたもおかしい事に、元親は首を傾げた。
だが決定には従ってくれるらしいので、元親はそれ以上追及しなかった。
「ふむ。参加して最初にやる事は……」
「戦うのだ！ 戦うだけなのだ！」
今からもう戦いに行くかのように、鈴々は闘気が満ち溢れていた。
それを見た元親は苦笑しつつ、鈴々の頭を軽く撫でる。
「単純に言えばそうだな。だがその前に色々な準備をしなくちゃいけねえのよ」
「うにゃ？ 準備？」
「勿論、戦うための連合ですから。けどその前に他の諸侯との面通しがあって、その流れから軍議となるでしょう。その時に私達の担当部署も決められると思います。最も普通に考えれば、私達のような規模の小さい軍は最前線に回される事はないと思いますけど」
「まあ、そうだろうな。だが別に良いじゃねえか。戦になったらいくらでも前に出りゃ良いんだ」
元親の言葉に、愛紗の鋭い視線が向く。
「また御１人で突撃されるおつもりですか！？ 無茶は止めて下さいとあれ程……」
「……冗談だよ。野郎共の命を考えたら、後方に回された方が良いってもんだ」
「全く……」
愛紗の言葉を否定した元親だったが、内心ではその事を実行しようと考えていた。
無論、もしもの時の為に取る行動ではあるのだが。
こうして元親達は、着々と連合への参加準備を進めていった。
３日後に来た袁紹の使者にもそのように返事して送り返した。
後日、留守を頼む糜竺と糜芳の姉妹にも任を言い渡しておくのも忘れなかった。
「──と言う訳だ。連合に参加する間、ここの留守を頼みてえ。良いか？」
「お任せ下さい！ ご主人様の為ならば、私達は全力でやらせていただきます！」
「そうか、期待してるぜ。ちゃんとここを守っててくれよ」
元親はそう言い、２人の肩に手を掛ける。
「やったぁ！ ご主人様に、肩に手を掛けてもらっちゃったわー！」
「幸せ……私、今後肩は絶対に誰にも触らせないわ！」
ちなみにそこに同席していた愛紗は――
「やはり気に入らん……！ ご主人様も２人の肩に手を掛ける事はないではないか……！ ご主人様の馬鹿……！」
終始不機嫌であった。