「急げ急げ! 急いで先発隊に合流するぞ!」
「……バケモンみたいな体力だな、ったく」

先発隊として討伐に向かった秋蘭と季衣の2人と合流する為、華琳達本隊は出陣した。
昨日徹夜で準備を進めていた筈の春蘭は疲れている様子を見せず、寧ろ高揚している。
そんな彼女を見て、小十郎は呆れ気味に呟いたのだった。

「そんなに兵を急がせては、戦う前に疲れてしまうわよ? 春蘭」
「うっ……しかし華琳様、秋蘭や季衣が戦っていると言うのに、ノンビリとは……」
「だからと言って無茶は駄目よ。これ以上隊が疲弊したら、元も子も無いのだから」

華琳が春蘭を宥めていると、桂花が慌てて彼女に駆け寄ってきた。

「華琳様。秋蘭から報告の早馬が届きました」
「分かったわ。報告なさい」
「はっ。どうやら敵部隊と接触したらしく、その中に張角らしき存在は確認出来ていないようですが、予想通り敵は組織化されており、並の盗賊より手強いとの事……」

桂花の報告を受け、華琳達に緊張が走った。
不安に駆られたのか、春蘭の顔が歪む。

「余力を残して挑まねえと、返り討ちは確実だな。聞いたろ? 春蘭」
「うぅぅ……き、貴様に言われずとも!」

小十郎の忠告を、春蘭はムキになった様子で受け取った。

「だいたいは分かったわ。それで、敵の数は?」
「夜間の為、詳細は不明。ただ先発隊よりも明らかに数は多い為、迂闊に攻撃せず、街の防衛に徹するとの事です」

無茶な戦い方はしない――冷静沈着な秋蘭の的確な判断だ。
華琳も彼女らしい判断に「流石は秋蘭」と褒めている。
季衣も恐らく、秋蘭に頼もしさを感じていると思った。

「張角本人が指揮を執っているかと思ったけど、やはり別の指揮者が居るみたいね」
「恐らくそうでしょう。張角と言う者の才覚、侮り難い物があります」

軍師の桂花が珍しく、敵の才能を心から褒めている。
恐らく張角と言う人物は、人を惹きつける才に恵まれているのだろう。
そうでなければ、一介の旅芸人に集団を纏められる筈がないのである。

「桂花の言う通りだわ。人を惹きつける能力が極端に高い張角……面白いわね」
「また悪い癖が……華琳様、もしや張角達を部下にしようと御考えで……?」
「それは張角の人となり次第。利用価値が無ければ、舞台から消えてもらうだけよ」

華琳がそう冷酷に告げた後――突然1人の兵が駆け寄ってきた。
見ると彼は先発隊として出発した兵であり、戦況報告に来たらしい。
華琳が兵を跪かせ、即座に先発隊の報告を求めた。

「報告しますっ! 許緒先発隊、敵軍と接触! 戦闘に突入しましたっ!!」
「……状況は!」
「数と勢いに押され、御味方は不利! 街に籠って防御に徹していますが、戦況は苦しい状況です! 至急、援軍を求むとの事っ!!」

段々と不味い事態に変化してきた――誰もが悔しくて、唇を噛み締める。
だが冷静な秋蘭の事だ。予めこの事態を予測し、遣いを出したのだろう。
華琳がそう問い掛けると、兵はゆっくりと頷いた。

「仰る通りです。ですが自分が出された段階で、戦力差はあまりに大きく……」
「やはりね。総員、全速前進!! 追い付けない者は容赦無く置いていくわ!」
「総員駆け足!! 駆け足ぃぃ!!!」
「モタモタするな! 出遅れちまう奴は、恥と思えっ!!」

春蘭が激を飛ばし、兵達を秋蘭達の元へ急がせる。
小十郎も彼女と同じく激を飛ばし、合流を急がせた。
春蘭と小十郎を頼もしく思う中、華琳は報告に来た兵に次の指示を出す。

「貴方は殿に付いて、脱落した兵達を回収しながら付いてきなさい。以降は本隊と合流するまで、遊撃部隊として指揮を任せます。良いわね?」

兵は姿勢を正し、彼女からの指示を了承する。
それに頷いた華琳は、春蘭達の後を追うのだった。

 

 

 

 

とある街――秋蘭と季衣の部隊が立て籠もり、必死に敵の猛攻に耐えていた。
だがこの街を敵の攻撃から守っていたのは、彼女達だけではなかった。
秋蘭と季衣は先にこの街を守っていた義勇軍と結託し、協力し合っていた。

「秋蘭様っ! 西側の大通り、3つ目の防柵まで破られました!!」
「……ふむ。防柵は後2つか。どのくらい保ちそうだ? 李典」

秋蘭に李典と呼ばれた少女が、悔しそうに唸りながら言う。
御気付きかもしれないが、彼女は陣留でカゴを売っていた少女だ。

「せやなぁ……応急で作ったもんやし、後一刻保つかどうかって所やないか?」
「……微妙な所だな。防柵が保つまでに、姉者達が間に合えば良いのだが……」
「しかし夏候淵様が居なければ、我々だけでここまで耐える事は出来ませんでした。本当にありがとうございます」

銀髪で、身体中に古傷のある少女が感謝するように言った。
彼女の名は楽進――李典と同じく、義勇軍の1人である。
そして彼女もまた、陣留でカゴを売っていた者の1人でもあった。

「それは我々も同じ事。貴行ら義勇軍が居なければ、我々は討ち取られていたかもしれん」
「いえ、それも夏候淵様の指揮があっての事。いざとなれば、私が敵に討って出て――」
「そんなのダメだよっ!!!」

楽進の捨て身の攻撃を、季衣が怒声を上げて留まらせる。
聞いた事の無かった彼女の声に、楽進は驚いた表情を浮かべた。

「そう言う考えはダメだよ……! 今日は絶対、春蘭様や兄ちゃん達が助けに来てくれるんだから、最後まで頑張って守り切らないと!!」

季衣に諭され、楽進は言葉を紡ぐ事が出来なかった。

「せやせや。突っ込んで犬死にしても、誰も褒めてくれへんよ?」
「今日百人の命を助ける為に死んじゃったら、その先助けられる何万の民の命を見捨てる事になっちゃうんだよ! 分かった?」

季衣、そして李典にも押され、楽進は「肝に銘じておきます」と、渋々頷いた。

「……ふふっ」
「あ、何が可笑しいんですかぁ? 秋蘭様!」

まるで珍しい物を眼にしたかのように、秋蘭が笑みを浮かべて言った。

「いや、昨日あれだけ姉者や片倉に叱られていたお前が一人前に諭しているのが……な」
「うう……! 酷いですよぉ、秋蘭様」

2人のやり取りに、殺伐とした空気が少しだけ和んだ。
しかしそれも一時の事――すぐにそれは破られた。

「夏候淵様ぁぁぁ! 東側の防壁が破られたの! 向こうの防壁は、後1つしかないの!」

慌てて報告してきたのは、眼鏡を掛けた少女――名は于禁。
彼女もカゴを売っていた1人であり、義勇軍の1人である。
彼女からの報告に、李典は舌打ちをして悔しがった。

「……あかん。東側最後の防壁は、材料が足りひんかったから、かなり脆いで!」
「仕方ない。西側は防御部隊に任せ、残る全員で東側からの侵入を押し止めるぞ」
「先陣は私が切ります。私の火力を集中させれば、相手の出鼻は絶対に挫けます!」

楽進の申し出を、秋蘭は苦々しい思いで了承した。
先陣はかなり危険だが、そうも言っていられない。
ここを切り抜けなければ、全員が命を落とすのだから。

「楽進、先陣を宜しく頼む。…………絶対に死ぬな」
「私なぞには、勿体無い御言葉です。夏候淵様」
「皆、ここが正念場だ! 力を尽くし、何としても生き残るぞ!!」

秋蘭の言葉に皆が勇気付けられ、生き残ると誓った時だった。
複数の兵が慌てた様子で秋蘭の元に駆け付け、彼女に跪く。

「報告ッ! 街の外に大きな砂煙! 大部隊の行軍のようです!!」
「敵か! それとも――――」

場が不安な空気に包まれる中、兵が希望を見た表情で報告を続けた。

「御味方ですッ! 旗印は曹と夏候! 曹操様と、夏候惇様です!!」
「間に合ったか……よし、これなら勝てるぞ!」

秋蘭が心の中で深く感謝しつつ、反撃の準備を始めていく。
黄巾党との本当の戦いは――これからだった。

 

 

 

 

「鳴らせ鳴らせッ! 街の中に居る秋蘭達に、我等の到着を報せてやるのだ!!」
「敵数の報告が入った! 数は凡そ三千、俺達本隊の敵じゃねえな……!!」

小十郎が華琳に告げ、彼女はゆっくりと頷いた。

「部隊の展開はどうなっている!!」
「完了しています! 何時でも御命令を!!」

桂花が軍師特有の手際の良さを見せ、華琳がそれを褒めた。
そうそう部隊の展開は早く出来る物ではないのである。

「さて、中の秋蘭はちゃんと気付いてくれたかしら……?」
「街の砦らしき所から、矢の雨が放たれたと報告があった。旗印は夏候、奴は気付いてる」
「ふふ、流石ね。ならこちらが率先して動くわよ! 秋蘭達なら、呼応して動くでしょう」

華琳が微笑を浮かべた。

「後々、敵の本隊と戦わなければなりません。ここは迅速に処理すべきかと!」
「判ったわ。……春蘭!」
「はっ! 苦戦している同胞を助け、寄り集まった烏合の衆を叩き潰すぞ! 総員、全力で突撃せよ!!」

春蘭が部隊を引き連れ、街の中へと突撃していく。
その後ろ姿を見送る中、華琳は小十郎に呼び掛けた。

「小十郎、護衛の任を解くわ。部隊を連れて、春蘭と一緒に暴れてらっしゃい」
「ふんっ……その言葉を待っていた! オメェ等、遅れを取るんじゃねえぞ!」

 

 

 

 

「でええええい!!」

春蘭の得物である大剣――七星餓狼が振るわれ、敵を容赦無く薙ぎ払った。
実力差も分からずに飛び込んできた敵は、抵抗する事も無く絶命していく。
女性と思って侮るなかれ、夏候惇は曹操を支える猛将なのだから。

「命が要らぬ者は掛かって来るが良い! 我が剣で斬り伏せてくれる!!」
「この……調子に乗るなぁぁぁ!!!」

背後から我武者羅に剣を振るう敵が、春蘭を斬り裂こうと襲い掛かる。
しかしそのまま素直に斬られる程、夏候惇と言う武将は出来ていなかった。
即座に振り返り、七星餓狼で敵の剣を根元から折り、戦意を喪失させる。

「はっ……?」

敵の呆けた声が聞こえた瞬間、彼の首は無かった。
鮮血が吹き出し、元々紅い春蘭の服を更に染める。
その光景を見て恐れを成したのか、敵がジリジリと下がっていった。

「腰抜け共めッ! 我が首を討ち取ると豪語する者は居らんのかぁ!!」
「敵をそれ以上挑発してどうする……! 少しは考えて戦え!」

自分に襲い掛かってきた3人を、一斉に斬り伏せた小十郎が呆れ気味に呟いた。
ここには居ない筈の男の姿を見て、春蘭の表情が驚愕の物に変わる。

「片倉ッ! 華琳様の護衛はどうしたのだッ! まさか勝手に――」
「今は解いてやるとよ! お前と一緒に暴れてこいと言われてきた!」

こう会話をする中で、小十郎と春蘭は次々に敵を斬り捨てている。
互いに武に秀でた者だけあって、少しの余裕が生まれ始めていた。

「ふん……! 私1人だけでも、こんな烏合の衆は十分だぞ!」
「減らず口もそこまでにしときな……! 息が上がってるぞ?」
「貴様こそ、寝不足で倒れそうではないのか?」
「テメェ程じゃねえよ。そら、ゾロゾロと来やがったぜ!!」

憎まれ口を叩きながらも、背中を預け、2人は周囲の敵を睨む。
そして同時に駆け出すと、一気に敵を吹き飛ばすのだった。

 

 

「秋蘭! 季衣! 無事か!!」

敵をあらかた片づけた春蘭と小十郎は捜索の中、秋蘭と季衣の姿を見つけた。
大した怪我も殆ど無く、無事な姿を見せた2人に、春蘭と小十郎は安堵する。

「危ない所だったがな……まあ見ての通りだ」
「春蘭様! 兄ちゃん! 助かりました!!」

季衣が小十郎に飛び付き、嬉しさを露わにする。
苦笑しながらも、小十郎は彼女を抱き止めた。

「2人とも、無事で何よりだわ。損害は……大きかったようね」
「はっ。しかし間に合った御陰で助かりました……」

2人の到着から少し遅れて、本隊を連れた華琳と桂花がやって来た。
秋蘭は華琳に頭を軽く下げた後、これまでの経緯を話し始めた。

「それと彼女達の御陰で防壁こそ破られましたが、最小限の被害で済みました」
「街の人達も何とか無事です。ボク達、精一杯頑張りましたっ!」

華琳は小十郎に抱き付く季衣の頭を撫でつつ、秋蘭に訊いた。

「その協力者である彼女達とは……?」
「はっ。お前達、ここに……」
「はっ。我等は大梁義勇軍と言います。黄巾党の暴乱に対抗する為、兵を挙げました」

秋蘭が呼び掛けると楽進、李典、于禁がそれぞれ姿を見せた。
その中で楽進が代表して、華琳に自分達の紹介をしていくが――。

「あああああッ!」
「あーッ! あの時の服のお姉さん!」
「何時ぞやの……絡繰女か」
「おーッ! あん時の渋い兄さんや!」

途中、見覚えのある顔を見つけ、春蘭と小十郎が思わず声を上げた。
李典と于禁も2人と同様らしく、懐かしそうに彼等へ声を掛けた。

「……何なのよ、一体」

話を中断された事が不満なのか、華琳が不機嫌そうにボヤいた。
小十郎が彼女に竹カゴを購入した時の事を説明し、ようやく思い出したらしい。
――秋蘭も姉に于禁の事を訊いてみたが、言葉を濁して誤魔化されてしまった。

「ふう……話を戻すわ。で、その義勇軍が?」

やれやれと言った表情を浮かべつつ、華琳は彼女達に問い掛けた。
楽進も1度咳払いをした後、ゆっくりと話を再開していった。

「この街が襲われているのを見過ごせず、挑みましたが……まさか敵が大規模になるとは思いも寄りませんでした。ですがこうして、夏候淵様に助けて頂いた次第」
「……そう。己の実力を見誤った事はともかくとして……街を守りたいと言う、その心掛けは大したものだわ」

楽進は「面目次第もございません」と呟く。
だが華琳は微笑を浮かべ、言葉を続けた。

「……とは言え、貴方達が居なければ大切な将を失う所だったわ。秋蘭と季衣を助けてくれてありがとう」
「はっ! ありがたき御言葉!!」

楽進が深く頭を下げ、華琳の言葉をありがたく受け取った。
そんな時、小十郎に抱き付いていた季衣が華琳に言った。

「あの、華琳様。それでですね、凪ちゃん達を……華琳様の部下にしてもらえませんか?」

季衣の申し出に、華琳は楽進を見つめながら言う。

「……義勇軍が私の指揮下に入ると言う事?」
「はっ。聞けば曹操様もこの国の未来を憂いておられるとの事。僅かな力ではありますが、その大業に是非、我々の力も御加え下さいますよう……」

楽進の言葉を聞いた華琳が他の2人も彼女と同じ意見かと、そう問い掛けた。
すると2人は明るい笑顔を浮かべて、彼女の質問に調子の良い様子で答える。

「ウチもええよ。陣留の州牧様の話はよう聞いとるし……その御方が大陸を治めてくれるなら、今よりは平和になるっちゅう事やろ?」
「凪ちゃんと真桜ちゃんがそう決めたなら、私もそれで良いのーっ!」

ふむ――華琳は顎に手を添え、秋蘭に訊いた。

「秋蘭。彼女達の能力は……?」
「はっ。一晩共に戦いましたが、皆鍛えれば一角の将になるかと……」
「そう。季衣も真名で呼んでいるようだし……良いわ。3人の名は?」

そう尋ねられ、3人は頷いて答える。

「楽進と申します。真名は凪……曹操様にこの命、御預け致します」
「李典や。真名の真桜で呼んでくれてもええで。以後よろしゅう」
「于禁なのーっ! 真名は沙和って言うの。宜しくお願いしますなのーっ♪」

また国の未来を築いていくであろう将が増えた――華琳の表情が綻ぶ。
3人が教えた真名を1つずつ呟いた後、華琳は小十郎に視線を移した。

「小十郎」
「何だ?」
「貴方にこの3人の指揮を任せるわ。季衣の面倒看役は卒業、しっかりね」
「…………何だと?」

唐突な華琳の言葉に、小十郎が季衣を置き、彼女に詰め寄った。

「どう言うつもりだ? 俺にあの3人の面倒を看ろと?」
「ええ、そうよ。天の国での経験を、しっかり活かしなさいな」
「ぐっ……! 次から次へと……俺は子守役じゃないぞ!」

小十郎が愚痴を零す中、3人の反応はなかなか好意的だった。

「渋い兄さんがウチ等の隊長かぁ。まっ、これからよろしゅう♪」
「宜しくお願いしますなのーっ! たいちょー!」
「曹操様の命とあらば……御指導の程、宜しくお願いしますッ!」

断わろうにも断れず、小十郎は渋々その任を了承した。
伊達軍の者達よりも、一癖も二癖もありそうな連中だ。
気合いを入れていかないと、こちらが潰れてしまいかねない。

そう小十郎が考えている中、聞き慣れたヒステリックな声が響く。
その声を聞いて思わず小十郎は顔を顰めた。

「華琳様ッ! 私は断固反対ですッ! こんな男に部下を付けるなんて……」
「…………ふん。居たのか、クソガキ軍師殿」
「わざわざ頭にクソガキを付けたわねッ! さっきからず〜っと、ここに居たわよ!!」
「ほぉ、背が小さ過ぎて全く気付かなかったぜ。何時ぞやの育ち盛りの話は嘘八百か?」
「2人とも、いい加減にしなさい! 桂花、周辺の警戒等はどうしたの?」

華琳が喧嘩を仲裁し、桂花に頼んでおいた仕事の経過を訊く。

「はい。周囲の警戒と追撃部隊の出撃、完了致しました。住民達への支援物資の配給も、もうすぐ始められるかと」
「上出来よ、御苦労様。それで桂花、小十郎の下に付ける事がどうして不満なの?」
「はいっ! どうせこの男、部下を付ければ善からぬ事を考えるに決まってます!」

桂花の言い分に、小十郎は彼女を睨みながら言った。

「テメェの頭ん中の男ってのは、それだけの奴等ばかりか。馬鹿馬鹿しい……」
「何ですって!! だいたい男なんて口が悪くて、汚らわしい奴等ばかりよ!」
「……ふん。頭の足りねえ奴の言いそうな事だ。軍師が聞いて呆れるぜ……」
「キーッ! 何よぉ!! 客将のくせに、客将のくせにぃぃぃ!!!」

華琳が仲裁したにも関わらず、再び喧嘩が始まってしまった。
この事情を知る者達が深く溜め息を吐く中、凪達は――。

「「「…………」」」

言葉を失い、唖然としていた。

「まあ、あれは我が軍の名物のような物だ……」
「いちいち気にしていると、身体が保たんぞ」

春蘭と秋蘭が3人の肩をそれぞれ叩き、しみじみと言うのだった。

「はっ……クソガキが。悔しかったら春蘭や秋蘭並みにデカくなってみろ」
「言ったわねえ! 見てなさい! 成長したらアンタをギャフンと言わせてやるから!」
「おーおー、言うじゃねえか。期待しないでおくぜ? クソガキ軍師殿」
「キーッ!! 客将のくせに、客将のくせにぃぃぃ!!!」

2人の喧嘩はまだ続く――。

 

 


後書き
第9章をお送りしました。三羽鳥再登場、そして魏軍への加入です。
ようやく片倉隊(仮)が結成されました……長かったぁ。
これからまたお騒がせ姉妹が加入する訳ですが、どうなるやら。
日常編がかなり騒がしくなりそうです。ではまた次回の御話で。


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