「ここまで頑迷な奴とは思わなかったぞ! なにが西洋の祖だ、まともな農地もない田舎国家の癖に!!」

 「現実が見えていませんね……列強が御国を要にバルカン半島を安定化させる。それに真っ向から逆らえば亡国の憂き目にあう事必定なのに。外交としての威嚇にしては限度を超えています。」

 「こんなものを列強に対して行えば宣戦布告扱いです。それでなくてもあの国の国王は他国から迎えられたと言うだけに過ぎません。つまりこれが公表され、国際的な問題となれば外地にある国王の資産が凍結され、政府の統制がとれなくなります。なにしろ橙子嬢の話ではこれといった産業は無く、主に独国や英国の支援で成り立っているらしいですから。橙子さん、このころのギリシャの現状はどうなのでしょう?」

 「国王の決定かどうかは解りませんがギリシャは前々から北部のテッサリア地方の領有権を主張していました。それは1888年の条約で適った訳ですが、本土のアカイアやベロボネソス半島と言った貧しい土地を増やしただけで終わったそうです。更なる領土を求めてエーゲ海帝国を復興させることがギリシャの狙いでしょうか?」


 いつもの顔触れが集まった時には不満と怒鳴り声が部屋に充満していた。



◆◇◆◇◆




 儂の執務室で側近と軍幹部が議論を始めている。これが英国領する広大なインド帝国なら数百人の本国議会を参集せねばならないが、生憎儂等トラキアは総人口20万足らず――御国の一地方都市程度――しかない。議会も無い総督制の為、ここにいるのは十数人だ。これで一国を切り回すのだから配下の官僚たちの苦労もひとしお……儂の机にギリシャ政府の勧告文が乗せられている。内容は、


 マケドニアは西洋始まって以来のギリシャの固有領土である。トルコ人はもとより黄色いサルが神聖なる領土に旗を立てる等、西洋に対する侮辱以外の何物でもない。即刻退去し、トラキアを明け渡すべし。さもなくば我が偉大なる大王の御旗と正当性に賭けて本国政府と断交しその存在を認めることは無いであろう。


 唸り声をあげ白髪頭を掻く。財部や小村を始めとして他の面々にも聞こえるように言ってやる。何、彼らの追い詰められた精神を発散させるだけだ。


 「どうせなら断交ではなく宣戦布告するぞ! と言ってくれば有難かったかも知れんな。即座に列強が介入するだろう。バルカンの不安定の元凶と名札(レッテル)が貼られてしまえば伊太利(イタリア)辺りが食指を伸ばしたかも知れん。」


 確かに……何人かが頷く。列強のルールに抗いたければそれに見合った力が要求される。力もないのに声高に要求を発すれば警戒され、最後には叩きのめされる。橙子の話したかつての御国のように。
 この時代は弱者の吠え声では済まない。無視されるどころか付け入る隙があると看做(みな)され介入を招くのだ。刑部が納得したように付け加えた。


 「だからこその退去要求と考えることができます。退去なら自主的で済みますし勝手に相手が退去したのでその土地を占領しました……と取り繕う事もできます。列強の介入を許さず、自国の利益を要求するぎりぎりの勧告文ともとれますな。」


 この勧告文を総督府が公表しても列強からは勝手に何とかしろ程度で済まされると言う事か。承認するだのしないだのは言葉上の単なる脅しでしかないと捉える事も出来る。小村君が厳しい声で断言する。


 「しかし御国を承認しないとはいかにも乱暴です。実害は無いにせよ国家間でそんな馬鹿げた前例を作れば困るのはギリシャですぞ? 気に入らないから国交を結ばないという考えは外交的孤立の始まり、最後は鎖国と言う名の国家自壊にしかなりません。」


 かつての幕藩時代のような閉鎖された経済は現代では成り立たない。民衆と言うものは意外なところで聡いものだ。より安い費用で、より快適に暮らしたいと願うのは誰もが同じ。国を閉ざして諸外国の物産を政府が独占すれば、民衆の不満は爆発し国が潰れてしまう。中世欧州はもとより幕藩の農民支配にも見受けられる愚民化政策は最後には近代化の名のもとに打倒されたのだ。唯でさえ文明の十字路であるバルカン半島でそんな事をすればどうなるか……


 「彼らは我等の旭日旗を叩きつけ踏み躙りましたからな。木っ端役人がやったので個人の責任に帰すると言われればそれまでですが、西洋最古の文明国とは思えぬ所業でしたよ。」


 一人の官僚『呆れ返る』と言わんばかりの声にギリと歯を噛み締める。御旗を踏み躙るとは……御国をここまで愚弄して唯で済むと思うなよ! ふと見ると橙子があらぬ方向を見ている。執務室の壁に掲げられた我が国の旗【一六条旭日旗】を眺めているようだ。


 「どうした橙子?」     尋ねてみる。


 小首を傾げ旗を見ていた橙子がおずおずと答える。


 「あの……少し変な話なのですがギリシャ政府は日本の国家でなく国旗に難癖をつけているだけに思えるのですけど?」


 皆の眼が橙子に集まる。それほど突拍子もない意見なのだ。橙子は居心地悪そうに身じろぎする。この中で女性は孫だけだから、いきなり注目を集めてしまうと不安になるのかも知れん。助け舟を出してやる。


 「皆、孫に注目してくれるは祖父冥利に尽きるが話をさせてやってもらえるかな? 何、子供の戯言の方が的を得ているかもしれん。橙子、話してみよ。」


 皆も流石に気まずく思ったのだろう。居住まいを正し視線を和らげる。この部屋にいる者には大なり小なり橙子がどんなものであるか話してある。神威の巫女というオカルトじみたものから霧の代弁者という真実まで様々だが、我等の下の官僚達も『橙子嬢は未来の施政官として修業中の身』と納得する者も多い。帝国議員の鞄持ちが間近で議員達をやりとりを学び、後に先達の地盤と票を受け継いで議員になるのと同じだ。『女を政務に携わらせる等とんでもない!』と称する馬鹿はここには置いていない。いずれ起こる事実、それを先取りし準備を整えているだけにすぎぬ。それでも山県候始め御国の重鎮ですら『まだ早すぎる!』と非難轟々だったな。
 画用紙と筆記用具を持ち橙子が儂の前に来る。解り易いよう絵でも描くつもりだろう。流石に霧の本来の力――空間画像展開――を使われてはこの部屋から敵前逃亡者が続出しかねない。


 「少し前にお話ししたことがありますが改めて…………この大日本帝国欧州領トラキアを含めたマケドニア地方はセルビア、ブルガリア、ギリシャにとって係争地であることはご存じのとおりです。」


 鉛筆を取り、画用紙にさらさらとバルカン半島の地図を書き国境線を引いていく。始めて見た者は興味深そうに眺める。なにしろ孫の脳味噌はナノマテリアルで強化され未来に我々が作り出す電子頭脳(コンピューター)が玩具にしかならない程の性能なのだ。細かな海岸線や、正確な国境線まで書くので瞠目(どうもく)する者もいる。浦上中佐が陸軍参謀本部5課(地図製作部署)は皆馘首(クビ)になりかねませんなァ! と冗談を言うと部屋に笑い声が満ちた。
 その紙に橙子はさらに書き加える。それを見た者は一様に唸り声を発し、黙りこむ。先の三国が夢見る大セルビア王国、大ブルガリア帝国、エーゲ海帝国の国境線だ。見事なまでにどの国もマケドニア地方を独り占めに飲み込んでいる。ギリシャのエーゲ海帝国に至ってはオスマントルコの首府イスタンブールまで呑み込んでいるからなんともはや……


 「これを見れば何故この三国がマケドニアの自主独立を認めなかったか自明です。以前、農民反乱でクルシヴォ共和国という政体がマケドニアに勃興しましたが、この三国はこれを見捨ててオスマントルコの反乱鎮圧に任せました。何千人も白人の民が殺され、それに倍する人々が事実上の奴隷としてトルコ本土に連れ去られたのに黙っていたという事は、」


 思い当ったのだろう。刑部が話に割り込んだ。


 「自らの領土拡張の為、邪魔者には消えて貰う……そういうことですか。」


 どよめきが広がる。刑部の言葉で同じ白人を生贄にと驚く者、汚いと義憤に駆られる者、儂は不審に思い尋ねてみた。


「しかしこれが今の話と何の関係がある?」  「大ありです、御爺様。」


 即座に答えた橙子。今度はもう一枚の紙に絵を描き始める。中央に円、その周りに水滴を長く引き伸ばした様な図を16個配していく。書き終えると橙子は一言付け加えた。「これがマケドニアの旗、ヴェルギナの星です。」


 此処にいる大半の者は怪訝な顔をし、何人かが恐ろしい事実を目の当たりにしたようでたじろぐ。良く解らないと言い出した誰かに小村が怒鳴る。


「解らんか!? 御国の旗とあまりに似すぎておる。奴らがマケドニアの独立を認めないのと言い出す前に、我等はマケドニアは独立国で日本はそのマケドニアの全てを引き継ぐ後継国家であると世界に宣言したも同然だぞ! ギリシャが宣戦布告紛いの文書を叩きつけたのも頷ける。列強共に謀られたわ!!」


 儂も呆気にとられた半面、そういうことかと納得する。これが遠く離れた亜細亜の端ならギリシャは何も云わないだろう? しかしマケドニアの地と一六条旭日旗が反応すればこうなるのだ。


 日本人によって古代マケドニアは再興する。アレクサンダー大王の如くその武威は世界に鳴り響くだろう。


 マケドニア領有を悲願とするギリシャ王国にとって “ギリシャの英雄”(アレクサンドロスV)を奪われた上に、西洋文明黎明期にて名高いバルカン最強の軍事国家(トラキア)によってギリシャは二流国から三流国に叩き落とされる。彼の国の憎悪と恐怖は並大抵のものでは無い筈だ。
 小国との言い訳も通用しない。何しろ儂がいる。ロシアを叩き潰し、かつての欧州の残虐な王もかくやと思わせる所業を為したという噂は世界中に広まっている。不明瞭な噂が独り歩きし、事実として認識されているのだ。
 儂とて責任がある。トラキアは弱小国に過ぎぬ、ハッタリでも何でも使い国を守らねばならないのだ。それがこんな形で帰ってくるとは…………


 「どうします?……これは流石に不味いものがあります。何らかの譲歩はする必要がありますが(かさ)にかかってセルビアやブルガリアまでも無理難題を押し付けかねません。我等が小国故、弱みを見せればそのまま国の危機になります。」


 恐る恐る高橋財務官が話を切り出す。彼は横滑りでこの国の財務官僚をまとめる立場になった。一度帰国できたのに今度は島流しといったところだ。ホーフブルグの腹いせによる左遷というやつだろう。浦上中佐が溜息を吐いてそれに答える。


 「おそらく帝都は『善処』だけしか言わないでしょうなぁ。こんな僻地(へきち)での問題等、触れたくないのが本音でしょう。しかし国旗を取り下げろとなれば自称国士達が黙っていません。帝国議会の遡上に上れば大変なことになります。示威行動としても出兵ともなればバルカン中が大騒動……こちらが悪者にされかねませんぞ。」


 こんなことでせっかく以前から仕込んでいた策謀をふいにするのは業腹だが背に腹は代えられぬ。トルコと英国を天秤にかけつつこの国を将来の交通の要所とする予定だったのだが……


 「先日、トルコへの武器供与輸送船が発ったな? そのまま帰路の護衛として戦艦を借り受けろ。なに、動けばいい。あき…失礼、千早艦長。君はモンテネグロの前にアテネだ。英国地中海艦隊と合流しピレウス港に押し掛けるのだ。世界に冠たる大英帝国が御国とギリシャ、どちらを重視しているか思い知らせてやれ。」


 千早真之中佐、40過ぎの知的な海軍士官が頷く。始め【三笠】艦長の出自を訝しんだものだが次男故他家を継いだという仕掛けだったのだ。本来の名字は【秋山】対馬沖で連合艦隊を勝利に導いた海軍の至宝、最近は風貌を変えたいのか顎鬚を生やしている。だが問題があります、と逆に質問を返してきた。そう簡単に英地中海艦隊が動くでしょうか? と……
 彼としてはもっともな意見だ。その答えを儂は答えた。


 「動く。いや、動かさざるを得ないはずだ。ポートサイドかクェートか? 空のシルクロードをどう通すかでエジプト総督とアラビア総督が鍔競り合いをしたのを知っているからな。儂への恩義では無く己の利便の為に相手を出し抜くチャンスを逃すはずはなかろうよ。」


 成程と彼が頷き一言、言葉を添える。ならばピレウス港で英日土の合同閲兵式を行っても良いかもしれません。勿論、陸地の上でなくあくまで艦上ということで。
 驚いた提案だ。いざとなれば三国合同の陸戦隊が港に襲い掛かるぞと恫喝しているに等しい。数少ないギリシャの貿易港、しかも首府アテネの門前でそんな狼藉を起こされればそのままギリシャ政府が倒れる程の打撃になる。勿論そんなことはしないが相手にそう疑わせるのは重要だ。後に海軍最高の作戦参謀と賞されるだけはある。
 これで大枠は決まった。だがもう一つこれに付随した難題を解決せねばならぬ。静まった会議室でもう一度儂は声を張り上げる。


 「儂は一両日中に英地中海艦隊司令部に飛ばねばならないが、その前にやることがある。今回の騒動、圧力こそ決まったが飴は用意していない。ギリシャを国家存亡にまで脅すのだから相応の物は払うべきだ。当然軍需品は論外、与えた武器で攻められるなど道化も良いところだからな。」


 財部中佐が困った顔をして言い出した。移民船の中で金勘定をするだけあり、トラキアに何があり、それがどれだけの金になるのか彼に聞けば全て解ると噂になるほどだ。『橙子の史実』では海軍拡張の為に国家予算に多大な負荷をかけた利権主義者と指弾されたそうだが、ないない尽くしのトラキアで鵜の目鷹の目で金になりそうな事を嗅ぎ出してくる嗅覚は相当なもの、彼の場合、働く場所がそもそも間違っていたのだろう――そう思う。


 「しかし他に払うものと言っても限度があります。トラキアの資産は大してありませんし……」


 助け舟を出したのは橙子となにか話していた刑部だ。挙手して発言する。


 「彼らの本音を叶えてやる、と言うのはどうでしょう? 旗だけ変えて我々にギリシャへの領土的野心は無い。マケドニアを支配しているのは我々だが、かの大王のごとき覇権を求めることはないと譲歩するのです。」

 「しかし旭日旗を本国に無断で変えるなど……」   


 政務官の一人が怖気ずいた様に言い出す。それもそうだと儂も考えると、すかさず彼は反論した。


「だれが国旗を変えると言いました? 新たに旗を作ればいいのですよ。植民地旗、あるいは総督領旗と言ったものをね。国旗は非公式に掲げ、これらの旗を前面に押し出すのです。乃木辺境伯領と言う体裁ですがスペイン王国でいうかつてのメソアメリカ副王領扱いですから県旗として帝都に報告すれば誰も反対しないでしょう。」

 「ならばどんなものがいい?」  


 やや困惑した顔で儂は問うてみた。実はこの中で絵心のある者は皆無だったりする。……と元気よく橙子が手を挙げた。恐らく刑部と話していた時に決めていたようにも思えるが、子供の無邪気な発言で済まし『孫の思いつきをそのまま応用した孫煩悩な爺様』程度で皆を苦笑させる気のようだ。子供であることを最大限利用するのは、もし間違ったとしても子供の思いつきで済ます方便、さらに国の象徴である旗には何かと利権が付きものという点を考えているのだろう。子供の発想なら利権は政府の物、子供にはお小遣いを上げれば良かろう? で済むからだ。
 頷いて発言を許す。こう言った公式の発言では橙子は儂が求めぬ限り雑談以上に話すことは無い。無役の物に発言権などないのだ。だからこそ儂の側近である刑部に鞄持ちのごとくっついている。
 再び橙子が紙を取ると今度は机の毛筆をとり絵を書く。緋の地に黄色の円、その中に稲妻を思わせる黒いS字がひとつ書かれたとき思わず手を止めさせた。


「橙子待て、それは流石に採用できんぞ!」


 皆も不思議な顔をしているが何人かは合点のいった顔をする。【橙子の史実】を知る物ならそのS字が何を現すか解ってしまうのだ。なにしろ儂等の武器や兵器こそ其の物なのだから。


 
【独逸第三帝国総統直属兵団・武装親衛隊】



 今の時点では影も形もないとはいえ流石に気分が悪いものだ。彼らの悪行を知った者なら尚更だろう。


 「違います。私が書くのはこれです。」


 誤解を覆すようにその稲妻めいたS字を斜めに割るよう筆で横線を払う。


 「Sの上が翼、下が蹴爪、左の尖った方が嘴、払った右が尾羽です。」

 「鴉? いや太陽の鴉ならばこれは八咫鴉か!」


 太陽から舞い降りる御国の守護鳥、神武帝を勝利に導いた神使――

紅天黄日八咫鴉旗(こうてんおうじつやたがらすき)


 ――またとんでもないものを。孫が言葉を続ける。


 「本来この八咫鴉は太陽の黒点を意味した物と言う説があります。言うなれば黄陽(たいよう)に付着した異物、その異物こそが私達です。」


 そう。此処にいる者、これから来る者。力を失った薩長藩閥、滅ぼされた不平士族、元朝敵の奥州列藩……日の本から弾かれた者ばかりだ。あの山県候がこう吠えたという。


 「官と賊と呼ばれた者達が今度はその(たなごころ)を握り新たな国を作り出す!」


 そう、もはや御国にとって我等は用無しだ。だが、それでも儂等は日本人だ。気概を見せ世界中を瞠目させてやろう、此処に日本人在りと。ニヤリと笑って儂も筆をとりS字の下に点を2つ添える。


 「橙子、これでは只の鴉ぞ? 八咫鳥は足が三本在るのを知らなかったか。」


 ぷぅ……と橙子が頬を膨らませかけるがそのまま孫の肩を両手で叩きそのまま腰に回して抱き上げる。


 「でかした! 流石我が孫ぞ!!」


 皆笑いだす。移民船の中からこびり付いていた鬱屈した何かが今、拭われた気がした。


 「これは熊野三山に許可証を貰わねばなりませんな。いや熊野をこっちに社ごと引っ張ってきてはどうでしょう?」

 「なんと征京に神宮が出来るとは気分爽快ですな。虎騎亜神宮! 武門の社らしい名前だ。」

 「ついでに政庁も幕府と名を変えてはどうでしょう? 武士など要らぬと吠ざいた帝都官僚共の悔しがる姿が目に浮かぶようだ!」


 皆で笑い夢を語り合う。そうだ、そんな国を作ろう。悲壮さを笑って吹き飛ばしていけるような国を。此処にいる儂等は其処にたどり着けなくとも、夜空を流れる星々の如く人々が連綿と希望を紡いでいく……そんな国を。
 執務室の中いつまでも笑いと夢が響き合っていた。






 あとがきと言う名の作品ツッコミ対談





 「どもっ! とーこですっ。早速だけど作者? 今回の話、強烈なまでに悪意入ってそうだけど??」


 ん? どういうことだ?? 特に登場人物に含むことはないし中立性を維持して書いてるつもりだけど。フェリが現在悪意を持って書きかねない人物は一人と考えているんだがな。


 「そーじゃなくて! ギリシャ王国のことよ。もうまんま隣の国の論法じゃない。ギリシャ王国が隣のような斜めに走ったナショナリズム持つわけないからどうみても作者の政治信条そのままにしかならないわよ。中立どころかアンチ確定じゃん。」


 あーそーゆー意味か。(苦笑)まぁ作者的にあの国には一物あるけどね。それとこれとは話は別だよ。今回の話中にあったヴェルギナ問題はもともとユーゴ分裂によるギリシャのおける旧マケドニア地方の帰属をめぐって争われた一環なのさ。現マケドニア共和国の影響範囲をどこで留めるか。地方自治が極めて強い割に民族ナショナリズムが弱い現ギリシャがマケドニア共和国の「ヴェルギナ旭光旗」を認めてしまったら現イピロスや北部テッサリアが分離独立やマケドニア帰属こそ行わないけどより強力な自治権を要求する可能性は高いだろうからね。
 なにしろヴェルギナは現ギリシャ共和国イマティア県アレクサンドロス市管内にあるから立派な領土問題になる。拙作の中でもちゃんとヴェルギナはギリシャ領であることが確定済み。日本はホーブブルグ講和でいきなりこの国に喧嘩売ったと同じ状況に追い込まれたわけなんよ。


 「チャーチル閣下ならやりかねないわよね。」


 だよね。そう簡単にかの人種差別主義者が日本を欧州の一員にするなど考えられない。落とし穴の一つや二つ掘ってじーちゃまと橙子を困らせる気満々だから。


 「しかも自分は表に出ずにか……ホント性格悪いわ、閣下も作者も。」


 お褒めの言葉ありがとう♪(←ツッコミ砲炸裂!!)イタタ……でも状況は現マケドニアよりは大分良いよ。何しろ列強の承認のもとにという錦の御旗がある。帝国主義真っ盛りの“現状”では中小国は何を言っても文句が言えない。自分の国が自らを守るために他国を喰うことが必要悪として見られた時代だからね。だからこそのバルカン中の敵意と恐怖を大日本帝国欧州領は浴びることになったわけ。その一つを表すためにヴェルギナ問題をこの時代で持ち上げてみたのさ。


 「本気で史実のバルカン戦争が泥沼化しかねないわよ。」


 泥沼化はしないと思うな。むしろバルカン戦争がバルカン大戦になりかねないと思うよ。


 「ソレ今後の裏ネタ……」


 おっと失言失言、だからこそ昨今の旭日旗問題とこのヴェルギナ問題は似ているようで根本が異なっているのさ。方や思想的感情論、それに比べてこちらは領土問題+バルカン勢力関係の激変要因だから欧州の火薬庫の手を突っ込んだ日本という構図を解りやすく解説するならコレじゃないかな? と思って書いたわけ。


 「でも書き方からして毒含んでいるよねー(笑)」


 否定はできないけどねー(苦笑)


 「で……その最後でのオチが熊野の八咫鳥ですかい。外伝でチラッと出ていたネタだけどトンデモを持ってきたわね。」


 本来は鉤十字を崩して何かできないか? から始まっていたけどね。まさかこうなるとは思わなかった。しかも何の偶然かギリシャ神話におけるトラキア守護神である軍神アレスの御使いが鴉だしね。ある意味これほどギリシャをおちょくった選択はないと思うよ。バルカンでリアル車田大先生の作品が作れるというかこっちの世界では本気で設定に取り入れられかねない。(爆笑)


 「脱線凄まじいわね。(呆)では最後今回一節で完全に終わったわね。複数節を組み合わせて一人称で第三者視点から橙子を見ていくという話はどーなった?」


 う……それはその


 そーかそーか♪言質はあるから情状酌量の余地はないけど?(砲口径拡大中)……て逃げるなー!!!


(轟音と悲鳴と殴打音が交錯)



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