小銃から発せられた空砲、怒号を上げてうつ伏せから立ち上がり、砂浜を駆ける若人達。強い日差しの中、白褌(ふんどし)一丁で波打ち際から水面へ突貫する。目指すは少し離れた岩棚――その辺りで浮き袋で水遊びをしている幼子。
 儂は大傘の下、椅子に逆向きに腰かけたままそれを眺め、刑部から報告を聞いていた……全くもってつまらん。

 1909年8月21日――東方(アジア)西方(ユーロピア)の狭間にて思う





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蒼き鋼のアルペジオSS 榛の瞳のリコンストラクト
 

第三章 吾輩は東洋人で在る






 あれから二年、大日本帝国欧州領【虎騎亜】(トラキア)は順調とは言えぬまでも開発が進んでいる。既に移民した日本人は10万人を超え、無人となってしまったアレクサンドロスポリスの街を中心に拡大を続けている。
 不可能という文字は努力を持って覆すべし。英国の海運力、米国の資金、独国の技術、仏国の農産品。自然発生的に移民が行われ国家が形作られるのではなく、大国の意思と計画に則り整然と進められる人工国家の建設が此処にある。もはやアレクサンドロスポリスと言う名すら世界地図から抹消されている。此処は征京、列強の意思と力によって作り出された日本人の都だ。
 いくつもの報告を聞いた後、最後に刑部が外交事案を口にする。


 「先日の各国への領事訪問によって正式に虎騎亜は大日本帝国の領土として各国に承認され、政府の統制下に入ります。しかしながら本土とは離れた遠隔地の為、引き続き閣下が統治権を行使する総督制の方式を取ります。地方とはいえ議会を作り民政に移管できるのは20年は後、次期総督の仕事になりそうです。」

「解っておる、あの世に逝くまで儂がこの国の広告塔になれというのだろう? 全く三笠と同じ立場とは思わんかったわ。」


 思い出し苦い顔をする。各国への虎騎亜承認への根回し……端的な言葉ならば歌舞伎役者の地方巡業と言ってよい。三笠も儂も大日本帝国欧州領という顔を売る為に各国を訪問する羽目になった。
 何処でも驚きと大歓迎、そして好奇の嵐だったのを覚えている。驚きは儂の異相、大歓迎は英雄への憧憬、好奇は御国を勝利へ導いた才といった処だろう。橙子を連れて行かなくてよかったと思う。孫の存在はまだ伏せてある。もし表沙汰になれば列強は愚か、世界中の野心家の注目を集めるだけだ。
 問題だったのは女達、妻帯者というにも関わらず擦り寄ってくる。橙子から美人局(つつもたせ)のやり口を聞いていただけになんとかあしらえたが純粋に憧れて話をしようとする者も多い。『美丈夫で危険な香りのする漢に女は惚れるもの。』こう言って一度釘を刺してきた静子の顔は流石に恐ろしかった。
 また、仏蘭西国(フランス)独逸国(ドイツ)では軍学校での講義を依頼され、困り果てて目の前の刑部に頼ることにもなった。それから彼を軍事だけでなく政治的な秘書官としても扱っている。益々、東照大権現の懐刀・天海御坊に似てきたともっぱらの評判だ。この暑い中でも長髪なまま汗一つ流していないようにも見える。以前、袈裟でも纏ったらどうか? と冗談を言ったら天台宗には嫌われておりますので……と返事が返ってきた。洒落(しゃれ)を良く解すのか只の糞真面目か、未だ迷うことがある。


 「で、どうなのだ周辺各国の動向は?」


 領事訪問で各国が大日本帝国領虎騎亜の情報を探っているのと同時に、我々も周辺各国の動向を探らねばならない。来た当時は何のことか解らなかったが、今なら恐ろしく厄介な事態になったものだと考えている。御国は海で隔てられ、しかも隣国と呼べるのは大韓・大清・露西亜……御国の西にある国家ばかりだった。外交にしても喫緊(きっきん)の事案は西にしかない。国家の位置として御国はいかに恵まれていたかが解る。
 だがここ虎騎亜……いや儂が表面上統治を任されているマケドニア地方に至っては。

 東にオスマントルコ
 西にアルバニアとモンテネグロ
 北にブルガリアとセルビア
 南にギリシャ

 しかも近隣に列強級の実力を持つオーストリア=ハンガリーとイタリアが控えている。文字通り四方八方囲まれているのだ。列強四ヶ国の支援が無ければ儂とてこの地を投げていたかもしれぬ。儂が不機嫌になったのを敏感に察したらしく初めに刑部は良い方の報告から始めた。


「オスマントルコは問題ありません。あの国は衰えたといっても大国です。列強の後ろ盾を得た我々の背後にいる以上、英米仏独露からの直接的な侵略は無いとみて内政改革を進めているようです。一応マケドニアの宗主国の立場ですから我等に無体な要求を突き付けることもないでしょう。」

「キレナイカは?」


 しばらくすると伊土戦争が始まる筈だ。キレナイカ……後のリビアというアフリカの地方を巡って両者が戦う事になる。これがさらに起こるオスマントルコの災厄、【バルカン戦争】の撃発点となるのだから始末に悪い。


 「ブリテン、フランスが目を光らせているようですし、トルコも棄て地としてイタリアに交渉を持ちかけている様です。橙子御嬢様の話では内陸で油田が掘れると言う話でしたのでフランス大使にはその辺りも匂わせておきました。」

 「小村君が話を持ち込んでくれて良かったな。以前、仏蘭西大使が儂に何の用事かと思ったが君も含めて脇腹を固めてくれるとは思わなかった。」


 そう、刑部にも「橙子の史実」を話している。彼は日露戦以来の疑問が氷解したようで早速行動を起こしてくれたのだ。フランス、イタリア、トルコの利害を調整した手腕は敬服に値する。
 ――フランスはイタリアを支持することで石油掘削権をイタリアに要求するだろう。イタリアは列強では最も植民地が少ない。つまり見栄さえ得られれば政府も国民も当面満足する。そしてトルコは統治すら満足に出来ない土地をイタリアとフランスに売り飛ばして国内改革の金を得る。――
 少し顔がほころぶ。小村君の跡を継いで総督領外務卿になるのは時間の問題のようだ。


 「アルバニア、ブルガリア、セルビアについてはいろいろと文句を言っていますが、この国を形の上では承認し、国民には黙認させるとも言える回答を引き出しました。各国ともバルカンの棲み分けが列強によって強制された以上、意向に逆らってまで我が国やオスマントルコと事を構えないのが利口と判断したと思われます……ロシアは云わずもがな。」


 あの三国はオスマントルコから独立を勝ち取って日が浅い、まずは国内問題を片付けるのが先か。御国も維新から日清戦争まで30年もの月日が掛った。――混乱の続くアルバニア、改革が遅々として進まないセルビア、独立した勢いだけで国政が迷走しているブルガリア――虎騎亜にとっては有難い。そしてこれらを後援する筈の露西亜帝国は橙子の御蔭で未曾有の危機だ。


「問題だったのはモンテネグロ王国です。」


 深刻そうな顔をして刑部が言い募る。儂も理由を考え表情を引き締めた。実はモンテネグロ王国は日露戦争に参戦しようとロシア帝国に使節を送り込んだ前科がある。まさか国力強大なはずのロシアが戦場で大敗北し、その大敗北の元凶となった男が目の鼻の先に軍隊を引き連れてやってきたのだから儂からすれば自業自得と(うそぶ)くべきかご愁傷様と慰めるべきか…………考えたことを思わず口にしてしまう。


 「日露戦争で敵国扱いになりかけたからな。小国とはいえ此方も小国だ、貴官が問題と言うのならば相当な事態と言ってよかろう? 言ってみろ。」


 『ハッ』……と言いながら思わず彼は視線を横にずらし、気不味そうな顔をする。妙な事だと考え、再度問いかけた。


 「どうした?」


 儂も横を向くと橙子が立っている。士官候補生の鍛練と名のついた遠泳が終わったようだ。鍵島が候補生たちに向かって『美女に会いたければ死に物狂いで泳げ!!』と発破を飛ばしたのも聞いていた。儂も混じるつもりだったが刑部に外交事案で留め置かれたのだ。――美女と言っても10年以上後の美女だから彼らも拍子抜けだったろう。
 髪を後ろでお団子に纏め、レースやフリルで飾られた橙色のワンピース水着に身を包んだ橙子が戯画化(ディフォルメ)した家鴨(アヒル)の浮き袋を抱えている。後ろで候補生達が【死体】になっているのは浮き袋ごと牽かせてきたのだろう。こちらもこちらで橙子を標点代わりにして鍛錬したのだから後片付けは当然のことだ。


 「どうしました? 刑部様。」     なにかあったのかと橙子も尋ねた。


 短い沈黙の後、意を決したように刑部は口を開いた。


 「モンテネグロ王国、ニコラ国王陛下の親書です。内容は『橙子嬢を我が孫の妃として迎えたい』と……」


 儂等二人は目を点にした後、揃って素っ頓狂な声を上げた。


 「「ハァ!?」」





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 旧名アレクサンドロスポリスの庁舎、ごく普通の邸宅にいくつかの倉庫と軍用建築物を建て増ししただけの総督府とは見えぬほどのあばら家だ。街自体も旧来の市街地を利用しつつ荒れ地を整地し、橙子が持ち込んだ軍用建築材を用いて即席の市街を建設している。日本から弾かれた者では旧11師団や後備1師団の将兵が多数いたため、ブルドーザー、パワーショベル等、土木機械を用いて建設を行う事が出来ている。
 南米パナマで太平洋と大西洋を繋ぐという馬鹿げた大工事を行っているアメリカ訪問団がそれを見て仰天し、100輌以上を購入していった。なんでも向こうは此方の土木機械を自らの物より数十年進んでいると担当官に絶叫したらしい。事実ではあるが“橙子の史実から組み上げた事実”故、自分達の土木機械が酷く貧相な物に見えたのだろう。
 こちらとしても有難い話だ。何しろ金が足りない、彼らが米国で土木機械を宣伝し設計図や部品を買いに来るだけで大助かりだ。タソス島の地下に新たに拠点を築いた『橙子の上役』(コアユニット)を頼らねばならないことは腹立たしいが、儂等の預かり知らぬ処で孫の模造品を用いてあれだけのことをやらかしたのだ。きっちり代価は取り立ててやろう。奴としても本望の筈だ。なにしろ国造りと言う“大戦”(おおいくさ)を橙子の目を通して体験できるのだからな。
 その邸宅に向かいながら。刑部、橙子、何人かの側近と話をする。総督府に就けば他の仕事がある。それだけに構うわけにはいかない。内容は勿論あの話の続きだ。


 「しかしどういうことだ? 列強は兎も角、ニコラ国王が橙子の秘密に感づいたとは思えぬ。合法的に橙子の籍を奪い、自らの利益とするには浅慮だ。列強が黙ってはいまい。」


 険しい顔で儂は刑部に問うてみる。


 「親書という体裁を取ってきたことから私も最初はそれを疑いました。しかしマケドニアとモンテネグロ国境の状況、そしてニコラ国王の政治的スタンスを考えるとモンテネグロにとっても我々にとっても得になる。そう考えて提案してきたのではないのでしょうか?」

「詳しく……」


 途中で合流した浦上栄次郎中佐が答える。山県侯の引きで抜擢されたはいいがそのまま儂と共に島流しになった男だ。秋月の乱で父を殺されたと口を滑らしたとき。『ならば儂が父親代わりにならねばならないな。どしどし面倒を持ってこい。』と答えたのを覚えている。その時彼は怒ったような顔をして『父親に迷惑かけるは子として恥辱! しかも仇に其れを言われるは己への侮蔑!』と言い、完璧な敬礼をして見せた。
 妻子ともどもこの地に渡り苦労しているが前向きに生きている。そういう男だ。


 「スコピエ市(マケドニア北部の中心地)に派遣した武官からの報告ですが国境での小競り合いが増えているようです。スコピエ太守はモンテネグロ民兵の越境が原因を宣っておりますが、今までオスマントルコを蔑ろにしてきた報復とみるべきと感じました。なにしろ閣下の軍を攻撃的に用いるならば真っ先に潰されるのが彼の国でしょうから恐怖もひとしおでしょう。」


 刑部も別の方面から分析する。


 「ニコラ国王の外交方針ですが我が国の戦国時代の小大名に連なる外交政策に似ています。自らの娘や息子を英才教育し、他国に嫁や婿として王室や大貴族に影響力を持つ外交官として送り込む。イタリア、ロシア、ドイツ、セルビア……十分とはいえないまでもあの国に後ろ盾が多く今まで生き残り続けられた種がこれです。
 ロシアが敗北しトルコが勢いずく可能性のある今、その基点である閣下に繋ぎをつけ関係を構築したい。下手をすれば自らの孫息子を婿として差し出す位の覚悟はしていると思われます。」

「婿…………ですか?」


 橙子が遠い話のような言い方をする。なんだかんだ言ってもまだ幼子だ。突然婿取りをしろと言う話が出ても実感が湧かないのだろう。しかし後に続いた言葉は儂の背筋を寒からしめた。


 「もしかしたらニコラ国王は乃木家の家族構成まで調べ上げているのではないのでしょうか? 御爺様の長男である御父様は戦死し、次代の総督は保典叔父様になることが決まっています。何代も総督職が世襲と言う事はないでしょうけれど、叔父様にとって長男の娘である私は政治的に邪魔です。燐子は論外として私を嫁に出せば総督職の継承は一本化できる。モンテネグロはトルコや日本との繋ぎを得ることが出来、御爺様は家族が割れるのを防ぐことができる。ニコラ国王はそこまで考えたのではないでしょうか? 双方が得をすることが外交の理念だと小村の小父様がおっしゃっていましたし。」


 馬鹿にしたような顔を無理矢理作り、橙子の言葉を遮る。確かに橙子の推察は納得できる。しかし正解が常に幸福な結果になるとは限らないのだ。それにいかに力を得るにせよ孫に不幸を呼び込むことなど出来るか!


 「橙子、お前は肝心なことを忘れているな。モンテネグロ如きにお前を嫁に出すと言ってみろ。列強各国、我先に婿を出してくるぞ! 王政も共和制も関係なく欧米に名家などごまんとおる。それにだ、大体お前は自分の価値を過小評価している。婿取り如きで世界大戦なぞ起こされれば乃木一族、総出で腹切っても追いつかんわ!」


くっくっ、と隣で刑部が笑っている。珍しいことだ。


 「いや、失礼しました。上手い比喩だと思いましたので。ホメーロスの叙事詩、イーリアスを思い出してしまいました。」

 「私はヘレネ姫ですか?」    


橙子が顔を輝かせる。儂は内容を知らぬが、憧れの表情からして英雄譚の姫君なのだろうか? 肩口に掛った長髪をつまみながら刑部が発言する。彼が詐術を考え付いた時、()くする癖だ。


 「しかし良策です。閣下が欧州を歴訪した時に合わせ婿取りを内々に打診されたことにしてしまいましょう。モンテネグロが古の城塞都市トロイの如くハインリッヒ氏に掘り返されたくなければ無謀な企ては無しとすべきでしょう……と。」


 何でもギリシャ世界最古の城塞都市がエーゲ海沿岸で発掘されているそうだ。西洋世界で伝説的大戦だったものを考古学者のハインリッヒ・シュリーマンと言う男が掘り当てたらしい。極めて古い詩篇(イーリアス)から探し当てたそうだが軍学書としての価値もあるそうだ。今度取り寄せてみることにしよう。


 「しかし表だって蹴れば心証は悪くなろう。そうだな……モンテネグロの自主独立は【小国】である我々にとっても他人事では無い。双方が助け合いつつバルカンの安定に力を尽くそうではないか。」


 こんなところだなと言ってみる。言質は与えずリップサービスに留める。その上で双方に圧力を掛けて脅し、最後に飴をしゃぶらせる。小村君から外交とは何たるか付け焼刃でも講義してもらった事が早速生きた。刑部も頷き圧力を考える。


 「では私はスコピエ太守にそれとなく圧力をかけてみましょう。『列強はもとよりスルタンもバルカンの安定を欲している。煙に油を注ぐような真似をしているのであればスルタンに代わりマケドニア総督がその裁定を行う事になるだろう。』この程度は脅さないと文字通り蛙の面に小便ですから。」


 先年挨拶に来た太守の顔を思い出し含み笑いをしてしまう。下膨れの平たい顔面に(イボ)多数、大汗を流しながら挨拶する姿に蝦蟇(ガマ)蛙を連想したものだ。しかし儂にとって彼の印象は良くない、いや悪い。彼は何かと基督教徒(キリスト)回教徒(イスラム)を分け不公平な統治を強い、しかも自らの独善的な経験を奉じて新参者の此方の言い分など聞こうとしないのだ。このような輩にはもっと直接的な力を見せつける必要がある。いわゆる砲艦外交というやつだ。
 モンテネグロには三笠を、スコピエには戦車と装甲車一個中隊程度を。双方で小競り合いを起こしている馬鹿共にはいい薬になるだろう。トラキア総督であり、マケドニア全体を纏めるである儂が怒ればお前達の首など何時でも圧し折れるぞ! と脅しをかけるのだ。この地方の新聞社も儂を散々悪魔呼ばわりしていたのだからさぞ効くだろう。
 最後に双方に米国製の旧式武器を供与してやる。後々、世界通貨となるドル札も今は米大陸以外では価値が低い。こちらではドル札で物を買うにも札束を多く用意せねばならないのだ。彼の国は南北戦争の後、武器が有り余っている。土木機械の代金の一部で中古武器を買って米軍需産業の歓心を買い、それを供与してモンテネグロとスコピエ太守に恩を売りつけ適度に双方の肩を持つ。米国は儂を仲介に米国製の武器を欧州に売ったという実績を得ることもできるのだ。

 ――儂も相当に悪どくなったもの。国政を司る物は常に最優か最悪でなければならない。お人好しなど必要ない。いけ好かないが山県候の忠告が耳に入っているからこそ儂はここまで来れた。――

 ならばこれでよし。と総督府の前で皆で頷く。さてと仕事の続きだ、とうとう休息と称して候補生と共に鍛練に精出すつもりが無為となったな。と思うと35年式軍用自動車(キューベルワーゲン)が荒々しくブレーキをかけて我々の前に止まり、小村欧州総督領外務卿――職名は大仰だがトラキア領事と同義だ――が飛び降りてきた。


 「閣下、大変です! ギリシャ王国が…………」


 その内容を聞いたとたん困惑の表情を浮かべ儂等は顔を見合わせた。








 あとがきと言う名の作品ツッコミ対談







 「どもっ! とーこです。ようやく第三章に突入!! 作者? 少し思うけど今回は完全にアルペジオから逸脱してるわよね??」


 ども、作者です。……というか開始早々いきなりツッコミかよ。挨拶くらいさせろって。ついに最難関と考えていた第二章から本来「榛の瞳のリコンストラクト」の原典とされる作者の妄文「大日本帝国欧州領興亡記」の部分にたどり着くことができました。ここまで読了していただいた読者様に厚く御礼申し上げます。


 「バカ丁寧な言葉使っちゃって……どうせリアルじゃお悔やみとかお祝いの言葉でスベッてばっかりの自爆モノ書きの癖に。」


 事実だがそういうネタを開帳するなって。じゃツッコミ返し行こう。確かにこの章はアルペジオとの直接の関係はない。ここがこの作品の中でアルペジオに最も遠く、火葬戦記に最も近いスタンスを取っているのは事実だしね。ただここ無しでは橙子もじーちゃまも何故第4章の選択ができたのか全く分からなくなるようにできているからここが歴史の転換点にして第一部の起承転結における【転】の部分として扱われるよう構成したのさ。だから原作アルペジオの裏面を常に意識して考え、しかもアルペジオの本質を極力出してはいけないように構築した。


「つまり……今までの伏線を軸に新しい国をシュミレートし、第4章の作者独自のアルペジオへの道筋をつけていこうとする腹か。」


 難しいもんだけどね。ただやり甲斐はあったのは事実、世の仮想戦記作家様の醍醐味が良く解るくらいだよ。


 「さーて言質は取れたな! 突っ込みその2、アルペジオでないならわたしのあの水着はどーゆーこと(ニヤ)どう見ても」


 原作5巻のイオナの水着にそっくり……という事だろ? ソックリどころかそのものなんだけどな。浮き袋にデフォルメをルビ振っただろ? そこらで原作ファンなら即座に気付くよう仕組んだだけだけどね。アニメ版で銀白色の予想が外れて橙色となって慌てて書きなおしたのは秘密だ。(笑)でもぶったまげたよ。アルペジオSSである拙作のパーソナルカラーそのものだったからね。


 「う……つまり遊んだだけ? 伏線にもならない只のネタ??」


 それだけじゃない。このころから市販の浮き袋に使われる合成ゴムの開発がおこなわれているし。女性用水着の黎明期がこのころ。そして水泳という概念が軍事教練から離れてスポーツとして動き始めたのもこのころ、そして西洋はこういった先進的文化の鏑矢だった時代だからね。だからじーちゃま褌一丁という旧態依然の格好と橙子の先進的なワンピース水着という格好を同じ描写に写し、このトラキアが過去と未来、そして東洋と西洋の挟間の地であることを読者にアピールしているのさ。


 「でもさー士官学校生20人くらいで牽いて帰って全員死体になってるってあたしと浮き袋どこまで重いのよ?」


 あはは……そっちは完全に作者の遊び。浮き袋の中にウォータージェット組ん込んで全力逆進中。そこらのプレジャーボート並に苦労するはず。もちろん橙子の発案ね。そして橙子は死力振り絞って綱引きする候補生共の黄色い声で応援すると、」


 「そこまで考えていたのか(呆)つーか私ヒドッ(笑) でもさ婿ネタは知ってるよ。どう見ても作者の作業部屋にある茅田砂胡大先生の金銀黒天使のアレじゃないの。ほとんど丸パクリじゃん。」


 でもないというかあれは妄想の起爆点であってもパクリにはならないよ。作者が参考にしたのは欧州王室史の政略結婚の在り方をかなり読んだ結果だね。王室同士の婚姻が如何に闇があるか思い知らされた著書だったから自分なりに実例を作ろうと考えたわけ。でも難しすぎれば読者としては理解不能になる恐れがあったから大先生のネタをなぞる感じで外交という向きだけで簡略化したのがこの文章なのさ。実際はもっとエゲつない事考えていたからね。


 「あんまり小難しいこと書いて読者をあぼーんさせないでよ(悩)。もうひとつ、作者としては珍しいネタ持ち込んだわね。イーリアスとトロイなんて良く知っていたと思ったわよ。」


 ちょうどこのころなのさ。シュリーマンのトロイ発掘はこの時代が現在進行形。偶然とは言え作者的に大喜びだったね。伝説とはいえ世界初の攻城戦記録だから。


 「でもさなんで橙子はあのヘレネ姫に憧れるのよ? どう見ても日本的感覚からすれば夫裏切って間男に走った挙句、世界大戦(笑)起こしたアホじゃないの??」


 こらこら少し考えなよ? まだトロイは発掘途中でイーリアスは昔話レベルの記述だよ? 橙子はイーリアスの知識を何から知識を得たか考えてみて。」


 「んー??? ここで伝えられてる口伝として残った某国昔話シリーズみたいなものからかな?」


 それが発端だけど。橙子は未来情報かへのアクセス権限もあるんだよ。コアユニットでイーリアスを探せば出てくるものは多いはず。


 「??ますます解んないよ??」


 某国少女コミック単行本。ちゃんと作者も読破したよ。


 「おーい!! 創作物から勝手に妄想したわけなの橙子は!!!」


 【女の子】の歴史知識なんて結構美化されるからね。恋愛モノなら言うまでもない。


 「大丈夫かしら……違う方向に目覚めなきゃいいケド」


 その辺りは作者も無理だから。特にボーイズラブ ちょ……ちょっとマテ、今の無し! ナシだって!!!」


 「作者がこの作品18禁に回しかねない問題発言したので制裁しますっ!(大喜)」


(轟音と悲鳴が交錯)



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