(BGM  英雄集結 戦女神VERITAより)


 「シャンティ・テルカですっ! 宜しくお願いします。」


 明るい緑髪に水色の瞳――人間族では珍しいが魔族や精霊系の血筋が混じると元いた世界ではありえないようなカラフルな色調になるらしい――じゃなくてなんでコイツなんだよ! ゲーム中最弱のレベル1騎士じゃないかよ!! ん? テルカ?? どうにも聞き覚えが…………恐る恐る尋ねてみる。


 「もしかして御先祖様に水竜騎士とかいた? 具体的にはマーズデリア神殿の。」

 「曾御爺様を知っているんですか! とっても嬉しいです!!!」

 「ぶヴヴうぅぅぅぅつっっっっ!!!」


 思わず吹いた。





―――――――――――――――――――――――――――――――――――


――魔導巧殻SS――

緋ノ転生者ハ晦冥ニ吼エル






 郊外での短期間ながら激しい野戦は終わり、センタクス城内部では既にジルタニア陛下と北領元帥ガルムス閣下、そしてヴァイス先輩が丁々発止やってる頃か。となれば、東方元帥府センタクス領奪還作戦と銘打った先輩の元帥認定試験が始まる。ただ、北部にあった領土は既にガルムス元帥が取り戻してしまっている為、ゲーム通り南部を奪回するということになる。南部にあるのはレイムレス要塞と折玄の森、どちらも厄介な場所だ。
 レイムレス要塞は現在絶賛戦争中のユン=ガソルに占領されているし、折玄の森も魔物やユン=ガソルの分遣隊に割拠されている。折玄の森は後々重要になるエルフ領と面しているのでどちらも優先しなければならないことは同じだ。そして、全て奪回したとしても、

帝国東領の地位は低下する。

何しろ北部の街二つが北領軍に『奪われている』。確実にこの街々はガルムス閣下への褒美として下賜されるだろう。つまり帝国東領は以前の半分しか領土を持てないことになるんだ。この後に起こるであろう帝国内での内部対立にヴァイス先輩が確固たる意見を言いだせないのは帝国内における帝国東領の地位低下があるとオレは見ている。そのころには各国から奪った倍量の領土を得ているから問題ないって? ダメダメ、あくまで占領地はメルキア帝国領であって四元帥が勝手に自分の者にはできないんだぜ。あくまでメルキア帝国は法治国家なわけだからな。


 「シュヴァルツ閣下は大勝したのになんであんなに難しい顔してるんですか?」

 「ルツならいつもの事だよ。勝つ手段考えているときは不気味なほど機嫌が良いのに勝った後たちまち不機嫌になる。戦争は始める前に勝負が決まっている。ルツの口癖だね。剣1本でメルキアでのし上がれるなんて考えない方がいいよ。」


 なんか後ろで二人が雑談に興じているが気にしないでおく。まぁシャンティも現状新米騎士だとしてもゲーム通りなら成長は期待できるんで先行投資と考えれば問題ないか。なぜ彼女がラギールの店で【売られていた】かは簡単だ。

 
ラギールの店


 表向き兵士や冒険者といった荒事の得意な連中の装備品や日用品を扱うこの大陸規模の商業匠合――セーナル商会――の一分派なんだが、本家よりも遥かに闇商人としての顔が強い。オレに相対したのはバミアンという闇商人。同世界間のゲームでもたびたび登場しているが本来のラギールの店の売り子である奴隷店長と異なり己すら商売道具と自認するエージェント、相当な厄介者と見て交渉に臨んだ。結果はオレがリスルナへの鹵獲武器横流しをボラれたとはいえ愛想よく応じ、表立って手に入れられない禁制品への棚卸も引き受けてくれた……と言う訳だ。
 とりあえずは当分手に入りそうもない魔法石の類は何とかなる。ゲームでは最後までコレの不足に悩まされたしな。――ディナスティで手に入れようとして禁制品だとは気付かず、お縄を掛けられたのは泡食ったが。――そのオマケとしてこのレベル1騎士を買わないか? と持ちかけられたわけなのさ。
 勿論メルキアでも奴隷制度は厳禁されているし法治国家である以上は奴隷を売買する、または所有するだけでも厳罰ものだ。メルキア帝国を含めたこのアヴァタール地方五大国で奴隷制を認めているのはエディカーヌ帝国のみ、それも身分変遷が緩い新しい国故――実力主義という理由だ――での例外。でも、ちゃんとそういった法制を潜り抜ける手妻も存在する。彼女の場合、年季奉公騎士制度というヤツだ。
 破産した騎士階級や冒険者の身柄を買い取り、魔術で精神的な自由を制限した上で彼らの力が必要とされる地方に送りこんで働かせる。口さが無い者は奴隷騎士と蔑むが腕が立たない者はそもそもこの制度に引っかからない。この世界の女性比率問題とも相まって亡国の女騎士や家が失墜した貴族の令嬢の受け皿になっている。特に彼女達【女】は必死だ。エゲツない言い方だが売られた以上、股を開いて客を取るか血塗れの剣を更に血に浸して戦うか選ばねばならない。選良としての意地を捨てたくなければ剣を取るしかない。年季奉公が終われば其の国に正規の騎士として所属できるか、相応の報酬を得て自立できるのだから。でも腑に落ちないんだがなんでこの娘がそうなったんだ? たしかこの世界の他作品において史実の状況だと彼女の故国、イソラ王国は滅亡していない筈なんだが……妙な鈍痛がするが無視して耳を欹てる。


 「でもシャンティは新米なのによくラギールで奉公出来たよねぇ?」

 「わたし14でしょ? 本当はまだ見習いなんだけどちょっと剣技が特殊で実戦で磨くしかないって言われてましたから。」


 ちゅ……中坊だったんかい! 話を横耳して思わず突っ込みたくなった。


 「へーっ、今時剣技で珍しいなんて言うものも少ないし、そもそもそっち系ならメルキアで無くてもいいんじゃないかな? どんな流派?」

 「大分古い流派らしいんですけど飛燕剣……って知ってます?」

 「ぶヴヴうぅぅぅぅつっっっっ!!!」


 本日二度目にして一度目以上に吹いた。
そんなのアリですか?






◆◇◆◇◆


(BGM  疾風怒濤! 戦女神VERITAより)


 この世界ではマトモな人間ならひれ伏すしかないというような超常種は相応にいる。神は降臨しないこそすれ実在するし、ファンタジー世界幻想種筆頭の竜族もしかり。勿論、神がいれば悪魔も天使もいる。その中で人間に近い位置にやってくる超常種に魔神と言う連中がいる。
 神ほどの力を持つわけではないが悪魔や天使より数段強力で自分の欲望を隠そうとはしない。事実上の不老不死だから思想は思考は卓越したものだが、彼らの上位にいる者が介入することは無いと踏んでこの世界で好き勝手するものが多い。その中でも彼女の先祖、イソラ王国第一王女シュミネリアに関わった――調教したと言うべきか?――のは魔神の中でもとびきりの難物、

 
地の女魔神 ハイシェラ


 本来この世界の厨二設定者にしてチートの(かみごろし セリカ)のお伴をしているんだが彼女には空白期間が多い。かつて世界征服を気取って併呑したイソラ王国が再独立した後に再びちょっかいを出していても不思議はないだろう? 彼女は飛燕剣を使わなかったが、主の身体を乗っ取っていたときに覚えたという可能性は高い。即ちこのレベル1騎士の言葉は限りなく真実に近い事になる。
 たかが剣技と侮るなかれ。飛燕剣、またの名を神殺しの剣技。神々に仕える神官にとって悪夢の代名詞だ。実際其の剣技が複数の神や其の使徒を殺し、同数以上の神殿勢力を単騎殲滅しているとなれば只一人を戦略兵器にしてしまう程の代物だ。恐る恐る聞いてみる。


 「具体的に言うと身妖舞とか使える? 紅燐が付くとか??」

 「えーと……基本の動きしかできないんですけど。なんか実力疑われています?」

 「そりゃそーでしょ! 伝説の剣技があんたのようなへっぽこ騎士につかえるかっての!!」

 「ムッ」


 あらら……今度はカロリーネと睨みあってる。まぁカロリーネはオレと同じ軍学校出とはいえ現場叩き上げのタイプだしな。一子相伝のエリート剣士(ただし卵)と鬼軍曹じゃ気が合わないか。そうこう考えるうちに売り言葉に買い言葉、模擬戦を始めるらしい。両方ともセンタクスにまだ残っている戦争の傷痕――瓦礫の中から適当な棒を探し出して構えている。


 「双方手加減しろよ〜。」


 え? ここなら危なくなったら割って入るべきだって?? 無理無理! オレ武器振り回すの下手だから。最悪両方の武器まともに食らって冥界逝きになりかねん。ここは死者の世界【冥界】が実在するから文字通りの意味でってことだ。
 双方獲物を構えて……カロリーネの本来の得物は魔導槍だ。しかし、彼女は低い背を更に落とし木棒の先端を抑えて突きにも斬りにも対応できる構えを取る。対してシャンティはぶらりと片手に木棒をぶら下げただけだ。ゲーム描写ではカロリーネの姿勢の方が余程飛燕剣の構えに近い。一体あの体勢からどうやって飛燕剣を……?
 シャンティがぶれた? いや違う! 高速と低速の緩急が余りにも急でそう見えただけだ!! 三つにずれた彼女が木棒を揺らぎを纏って跳ねあげる。それと同時に巻き上がる円錐状の霞? じゃない!! 衝撃波だ!!!
 激しい炸裂音と共に周囲全体に土煙が上がる。まさか……まさか飛燕剣! いや飛燕剣だけど全く別作品の剣技じゃないか!!! こちとら唖然とするしかない。もしこれが本物なら神殺しの剣技で十分だ。本気で人間が使う技じゃない! 土煙が立ち込めるのも厭わずオレはその中に突っ込む。冗談じゃない! あんなものを喰らったら魔導鎧なしでも頑丈さでは同期一のカロリーネすらひとたまりもないぞ!!


 「カロリーネ! カロリーネ!! どこだ!!!」

 「いるよ〜〜」


 暢気な声とともに瓦礫に半ば埋もれるようにカロリーネが倒れているのが見える。シャンティを抱きかかえたまま。


 「すまん!カロリーネ。飛燕剣がまさかアレだとは。」


 やばいと思ったが口が滑った。そりゃ別作品の東方10国束ねた惑星統一国家のマシンチャイルド様とか其の世界最高の剣聖にして厨二設定な賞金首騎士とかと同類の剣技じゃこっちが慌てるわ。


 「流石にあの衝撃波は堪えたけど、コイツが半人前で助かった。」


 ポンポンと目を回して気絶しているシャンティの頭を叩いてカロリーネが笑ってる。でも両腕の袖がズタズタになって血だらけだ。いくら金属糸編み込んでいても良くそれで済んだな。


 「あの衝撃波と共に突撃して斬り下ろしを掛けるつもりだったろうね? でも、それに身体が付いてこない。技そのものが強力すぎて身体が振り回されている感じかな。こりゃ鍛え甲斐がありそうだねぇ。」

 「つまり衝撃波と同時に突撃したら、体のバランス崩して転がりながらカロリーネにぶつかっただけ?」


 某人造生命体が自らの騎士を救おうとあの作品有数の騎士に打ち掛かった剣技、まさかそれを失敗とはいえこの目に焼き付けることができるとは……深刻な顔をしてるらしいオレにニッとカロリーネが笑いかける。


 「そうそう、私も百騎長になるならルツの護衛はこいつにしようっかなー? どんな自爆技をかますか楽しみだよ。」


 オレで遊ばんでくれ。彼女の肩を抱きかかえもう片方の手で目を回しているシャンティの肩を抱き返る。さっきの爆発音で兵士達が集まってきたようだ。すぐ治療院に運ばせてイーリュン神殿のサジャさんに診てもらわないと。


「両手に花〜、ルツは三角関係で両手に花〜。」

「落とすぞカロリーネ。」

「やだねー。」


 ガタガタの筈の彼女の肩から延びる腕が弱弱しくもギュッと強くオレの背中にまわされた。




―――――――――――――――――――――――――――――――――――


(BGM  旅立ちの時 戦女神ZEROより)



 とりあえずシャンティをオレ直属として所属させるよう軍内部に話を通しておく。ラギールでの部下雇用というのはどんな国にでもある。名が通っていたり実力を認められれば雇用中にいきなり正規軍人に成り上がれる場合もあるんだ。実際メルキアには法制でその昇格事項すらある。先ずは十騎長代理として仮採用して経験を積ませ後に戦時昇進という方式で正規雇用、メルキア軍編入が筋だろう。
 軍の採用窓口、絶望状態の帝国東領(センタクス)を奪回し守りきったヴァイス先輩の人気は止まる事を知らず募兵の列は随分と長い。東領が再興した時の予備兵力は確保できそうだな。後はヴァイス先輩が皇帝陛下から課された元帥抜擢試験と言うべきもの次第だが? と考えていると噂をすればなんとやら……歓声や黄色い声が上がる。東領解放の英雄がここに来れば――まぁこうなるわな。先輩の狙いは帝国東領軍復活の期待を確信に変える出汁廻りと言うところか? それにしては……シャンティの事務処理が終わり、ヴァイス先輩の営業活動が終息仕掛けた事を確認してオレはヴァイス【閣下】に近づいた。


 「閣下。」

 「ルツ、君までも募兵活動か? 苦労を掛けるな。」

 「いえ、有望そうな人材を見つけましたので引き抜きを掛けた……と言う事です。」

 「有望に見えるヒヨコどころか卵に過ぎませんがねー。」


 カロリーネが渋々といった顔を作って茶々を入れる。さっきの素質を認める態度からすれば正反対の仕草だが防衛線と言ったところだ。『鍛えれば伸びる』、『まだ半人前』というヴァイス先輩への無理はさせられないという評価、 シャンティに対しては『浮かれるなバカ』という窘めになる。実際外面は真面目だったけどシャンティがヴァイス先輩を見ている熱い視線に気づいてこっそりカロリーネが「舞い上がってるよ。凹ましとく?」と小声で伝えてきた。それにオレは軽く先輩を指さした訳、


 「シャンティ・テルカか、シュヴァルツ千騎長が推薦するというのはなかなかに厳しいぞ。彼はここぞと言う人材を発掘するが、其の人間が半人前から10人前以上にならなければ一人前と認めない位だからな。今以上に精進すると良い。」

 「ハ、はいっ! 鍛錬を怠らず騎士として自分に誇りを持てるよう精進します!!」


 カチコチのまま敬礼するシャンティをカロリーネに任せ、ヴァイス先輩と連れ立って歩く。予定では明後日にレイムレス要塞奪回に向け軍を出撃させる筈なんだ。しかしヴァイス先輩がもう常在戦場――軍装のまま姿を現す――のは異常。切り取り勝手次第が始まればヴァイス先輩が動かねばならないのはユン=ガソル連合国にに占拠された帝国東領の最前線、レイムレス要塞だけじゃない。南の折玄の森、ここにゲームでのキーキャラクターが逃れている。『彼女』を救出し折玄の森に僅かに駐留するユン=ガソル軍を掃討するのも重要な任務だ。うーん、正直オレ難度としては楽なそっちに行きたいけど……


 「先に折玄の森から片付けますか?」  「ルツは地獄耳だな。もう聞きつけたか。」


 双方ニヤリと笑う。ヴァイス先輩は小声で状況を話しオレに続きを促した。オレとしては本来敬称をつけるべき人間に容赦ない言葉を使い断罪する。勿論先輩の事じゃない、先輩が蹴落とすべきにだ。


 「アル閣下を救出するのは当然ですが、同時に『前』元帥ノイアスを捜索、出来るならば誅殺ないし捕縛すべきです。でなければ先輩が『今回』元帥杖を授けられる必然性が薄れます。彼には敗将としての立場に甘んじて頂かねばなりません。」


 実のところ前東領元帥が死亡せず暗躍したことで今後起こるであろうメルキア帝国内乱がおかしな方向に暴走するのだ。その結果が重要人物の相次ぐ死亡というメルキア帝国にとって痛すぎる結末になる。逃げた先は似たようなものとオレは考えたから力の弱いうちに介入、エイフェリア公爵とオルファン宰相、両者に警戒させれば内乱そのものを茶番劇にして両者がノイアス誅殺という方に傾くだろう。
 ただ此方も手駒が足りない。ゲームでは順繰りに攻略しても問題ないがここでは政治すらリアルタイムストラテジーの世界だ。安全な片方のみか、それとも無理をして同時か……と考えていると雰囲気を察して先輩も答える。貴族ともなればこう言った権力闘争に敏感でなければならない。椅子(ポスト)はひとつ、希望者は多数。ならば競争者を手なずけ、あるいは蹴り落とす等当然の事だからだ。


 「ルツらしい冷徹さだな。じゃこちらも無慈悲な提案で返そう。シュヴァルツ千騎長、レイムレス要塞奪回部隊の総指揮を執れ。折玄の森の占拠を待たずして奪回してもよし、俺達が横撃するまで奴等を疲れさせるのも良しだ。」


 やはり同時か。先ほどの昇進の暗喩からして先輩はオレの伯父貴たるオルファン元帥への配慮も考えているんだろう。成功すれば南領元帥の甥を新東領元帥の重臣に栄転させるという双方にとっての政治的勝利、失敗すれば南領への貸しにできる。そしてヴァイス先輩がレイムレス要塞を横撃できる策は既にオレが提言し、準備が着々と進んでいる。ゲームではヴァイス先輩の配下の兵しか使えないが、国家軍という組織が的確に動かせればどれほどの事が出来るかオレは知っている。恍けた様に先ほどの単語の感想を返す。


 「千騎長ですか。随分と大盤振る舞いですね。」


 メルキアで一般に将軍の銘を使えるのは千騎長以上、皇族か上級貴族でもない限り20代でこの位に上るのは例外はあれども数少ない。ちなみにオレは25、ヴァイス先輩が28、リセル先輩が26だ。本来リセル先輩は千騎長に推挙された事もある――貴族政治での箔って奴だ――がヴァイス先輩の近くにいる事を使命として辞退したことがある。子飼いの部下や近しい者は敬意をこめてリセル先輩を将軍と言う事もあるんだ。ゲームシステム上は兎も角、リセル先輩を切り離せられないならば必然的に別働隊のトップはオレが務めろということになる。


 「ルツは俺の代理でもあるからな。リセルは俺から離れたがらないだろうし、俺もリセルを離すつもりは無い。だから俺とリセル……それに400程度の兵で折玄の森は陥とす。残りの兵全て動員して構わない。」


 本人は至極真面目に話してるんだろうがどうにもねぇ……惚気にしか聞こえん。


 「もう覚悟決めて押し倒したらどうです? リセル先輩絶対に嫌がりませんし傍から見て恋人同士以外に見えませんよ。」


 「いつも言うがそれは却下だ。リセルとは家族でいい、それ以上を望まない。」


 鼻を鳴らして先輩が一刀両断してくる。やっぱりダメか。人を口説くのまるきりダメだしなぁ、オレ。


 「……で残りの兵と言いましたが彼等も連れていけるんですかね?」


 具体的な話を交わしつつセンタクス城に戻る。人の生死を分ける戦術や戦略を楽しげに語り合う。思えばオレの意識も随分と壊れたもんだ。敵とはいえ女子供を殺して吐きまくった軟弱者が人を殺すことを平気で考えられる位だものな。諦観するにはまだまだ早すぎるか?




―――――――――――――――――――――――――――――――――――


(BGM  街の裏側 戦女神VERITAより)


 半壊した塔を回り込み天幕ばかりの臨時施設を縫うように歩く。ゲームではセンタクスは滅茶苦茶に壊され、本城と住居ユニット以外はまともな建築物も無かったが、ちゃんとラギールの店はあったしこのゲーム御用達商人のシーラさんもいる。現在其のシーラさんの牙城――商売道具とも言う――たるセーナル商会を再建している。
 娼館もだ……ヴァイス先輩もほっと一息ついているだろうな。え? 女性比率が多いこの世界で何故娼館があるのかって?? そりゃ元の世界よりも娯楽は少ないからね。男と女の社交場と考えるなら一定規模の街にはあってしかるべきものだ。それに女が多いからって男が恋愛相手や結婚相手を選び放題ってわけじゃない。そういう点、女って強かだよ。それに軍隊で女が多いと言う事は居ない訳は無いんだな。いい意味ではホスト、もっとあざとく言うなら女性の為の男娼という類が。この世界の業なのか救いなのか知らないが魔術等使わない限り女性の危険日は解りやすい。薄暗くなってきてそろそろ天幕やあばら家での臨時施設とはいえ繁華街も目覚めるころになってくると否応なく元の世界との違いを際立たせる存在が星空にふたつ目に映る。

 
天頂に青の月【リューシオン】

 
其の少し離れた場所に赤の月【ベルーラ】


 今日は青い方が上弦の月、赤い方が満月まであと少しと言ったところだ。この二つの月こそこの世界の夜街を司ると言っていい。リューシオンが満月に近づくほど妊娠する可能性は極端に下がり、ベルーラが満月に近づく程、生物学的な性的衝動が強まる。この双方が新月ならば繁華街は開店休業状態、反対に満月だと……まぁ、乱痴気騒ぎというわけだ。流石に娼婦を孕ませただの大事だから避妊手段はこの世界でちゃんと確立している。エロゲーならではの魔術――性魔術――という奴だ。
 ゲームでは相手を性行為によって心身的に追い詰め屈服させ支配下に置くという使われ方が目立ったが、これ自体性魔術の中では邪法に近い。本来の使われ方は肉体関係を媒介にして双方の魔力を集約、人や物に術を付与する。こっちが正道だ。
 相手が抵抗しかねないような悪意ある術は余程周到かつ注意深く作らないと失敗どころか術が術者に跳ね返り自滅することになる。ゲームでヴァイス先輩も使った事があるけどゲームでは見えないだけで相応の苦労が在ったんだろうなぁと思う。
 見えてきた。ゲームお馴染の施設、赤い屋根、外側から見ればちょっとした中庭を持つ典型的な御屋敷だ。閉塞感までいかない閉鎖性、退廃的までいかない淫靡さが奇妙に混じり合った女の城塞。

 
リリエッタの娼館


 勿論カロリーネ始め女性陣はいない。というか二重の意味で連れてくる事が出来ない。ひとつはこれが国家として絶対に表沙汰にしない類、『諜報』の分野に当たるから。もう一つは言わずと知れた事だ。




◆◇◆◇◆





 示し合わせた偽名で実在しない娼婦を求め、先客がいる事で待合に酒場を紹介される。そこで迷惑料という名の金を払い、化粧で顔や風体を替えて娼館の使用人として裏口で人物を照会。一度その場から離れて別の一般兵士向け娼館の隠し通路から入場……何処のスパイ小説だよ! だが、向こうとしてもオレが予定外の客で在ることは事実だ。なにしろここは情報収集拠点(みみ)であって工作拠点()じゃない。そこに元締めの推薦とはいえ積極的な依頼を持って来るなど露見や二重スパイを考えねばならないはずだ。慎重に慎重を期す、それだけに本物という緊迫感が伝わってくる。
 小さな隠し部屋……短剣程度しか振り回せない小さな部屋にオレが入ってきた扉ともう一つ扉がある。そう、折衝相手と依頼者は別々の扉と言う訳だ。交渉という表舞台ならもっとド派手な部屋と娼婦の一個分隊は付きかねないがあくまで個人的なビジネスと言う話、相手は素朴な椅子から優雅に立ち上がり一礼してきた。


 「ようこそ我が館へ、主人を務めますリリエッタと申します。以後お見知りおきを。」

 「シュヴァルツバルド・ザイルードだ。早速折衝に入りたい。」

 「あら、女性を前に御世辞の一つも出さないとは御堅い方ですのね?」


 相手――リリエッタ嬢――が艶然と笑う。そりゃ緋紫の髪を巻毛にして前に垂らし――ツーサイドの印象しかないから一瞬誰? と思ったが――ぱっつんぱっつんの上に躯の中央線でところどころに菱形の切れ込みを入れ胸の谷間やお臍を露出させるロングドレスはゲームでお馴染だ。普通の男なら欲情の一つもするだろうな。


 「どうも針のムシロに座らされている気がしてね。前の美女も実は針鼠ではないかと勘繰ってしまう。」


 オレの頭の中でチリチリとした気配と共にこの部屋の薄い壁の外から何本もの長い金属反応――厚さと長さからすれば長剣か短槍だろう――がある。単なる金属ならこんな感触は無い。近くに人間かそれに類する者がいて初めてこの感触になる。
そう持ち物検査で彼女の配下がオレの軍用に偽装された額冠までは見破れなかった。そりゃそうだ殺気感応型金属探知機能なんてこの世界の技術的発想だけじゃできないものな。エイフェリア閣下が「お主? 気は確かか??」と本気で聞き返してきた位だ。少し彼女の目が細められる。


 「随分と勘の鋭い方ですこと……あまり折衝の席では口に出すべきとは思いませんわ。」

 「それだけ君のことは信頼していると言わせて頂こう。宰相閣下が信の置く人物は数少ないし、オレ如きに推薦状を渡す程だ。双方信頼には十分ということだろう? それと宰相閣下から言伝を預かっている『任務御苦労』と。」


 何のことか解らぬ振りをして淡々と最後の言葉を紡ぐ。彼女の顔が歪み軽く俯いた後、再び顔があげられる。一瞬彼女が想い人から告白を告げられた少女の顔をした映像は強引に頭から追い出した。憐憫など不要、駒に対する侮辱でしかない。


 「本物のようですわね。『宰相と公爵の懐刀』、御用件を伺いましょう。」


 うわぁ……この人にまで悪名は知れ渡っているのかよ。悪事千里を突っ走るだな。そんな事はおくびにも出さず仏頂面に顔を作り変え要件を繰り出す。


 「では表向きからの要件から行こう。最後が至極詰まらん個人的な依頼になる。」

 「まぁ、私としては最後の方に興味がありますわ。」


 え、こう言った腹芸に良く慣れているなって? 地方のペーペー貴族とはいえ舐めちゃいけない。常識の範疇で叩き込まれましたよ……伯父貴に。





―――――――――――――――――――――――――――――――――――


(推奨BGM  策謀は平穏の裏側で〜研究は爆発だ! 神採りアルケミーマイスターより)
  


 現況のセンタクス、特に経済状態と大陸公路の状況。ユン=ガソル連合国の動き。手短にオレが集めた政治的な情報とリリエッタが得た生の情報をすり合わせていく。これがヴァイスハイト閣下の百騎長とは違うオレのもう一つの顔だ。
 ヴァイス先輩の養父という立場である伯父貴だが、身内に甘い訳じゃない。ヴァイス先輩が万が一にでも帝国南領に無視しえぬ悪影響を与えるのであればオレが諫言、最悪の場合は処分という強行手段を取ることも含めて配属した訳なんだな。ただ、オレも相応にヴァイス先輩に取り込まれていると考えているだろうからオレは『耳』の役目、それを相対しているリリエッタ嬢が判断し伯父貴に連絡、派遣部隊の中にいるであろう『手』が始末をつけるという筋書きなんだろう? 伯父貴にとってヴァイス先輩の組織内でのオレの役割はスパイでもあるわけだ。
 勿論ヴァイス先輩もそれ位は気づいている筈。それでも排除するどころか中枢で重用すると言う事は使い方次第で双方の有益な橋渡し役とできると考えるタイプだ。排除など何時でもできる。オレを利用して帝国南領から援助を引き出す方がが余程有益だ。


 「それでは表向きの話はここまでといたしまして……是非とも個人的な依頼をお伺いしたいものですね。シュヴァルツ閣下?」


 妖艶に科を作ってみるリリエッタに思わず渋い顔をしてしまう。ええ、そーですよ! こう言う性的魅力を正面から叩きつけてくる女って本能的に苦手。強く拒否すればすぐ泣き真似なんぞやらかすからホント鬱陶しい。


 「そんな大したものじゃない。人……いや技能者を探している。魔術師、どちらかと言えば能力より知識と経験に方に特化した魔法術式顧問が欲しい。」

 「それならラギールの店が? いえ、性魔術……そういうことですか。」


 リリエッタ嬢頭いいなぁ……全部説明する必要が省けてしまった。いくらラギールの店でもそっち系は専門外、ゲームの中でもヴァイス先輩が性魔術を駆使しヒロインといちゃこら――ゲフンゲフンというシーンがあるが相手を精神的に屈服させる点において絶対に専門家がいた筈なんだよね。ヴァイス先輩精力絶倫だけどそういう点では知識からっきしなのは知ってたし。ちゃんとこっちがフォローしないとゲーム通りに事が運ばないという事態になりかねん。頬に人差し指をあてて思案している、これも女を魅せる娼婦と言う職業柄か絵になるんだよなぁ――リリエッタ嬢。彼女が頬から指を離し軽く左右に振る。


 「心当たりはあります。只、条件がありますわ。」

 「身請け代位は出せという事かな?」  頬杖をついて定石通りと考える。


 まぁその対象が娼婦だった場合そうなるよな。それについては覚悟しているし、一応機密費や個人のポケットマネーもあるし……と見ると彼女の方が呆れていた。どうやら考えが顔に出ていたらしい。


 「それ以前の問題ですわ! 身請けするのなら娼妓を堕とす位の事はしていただかないと此方の面子に関わると言う事です。」

 「ちょ! ちょっとまってくれ!!」    どうしてそっちの方向になる!?

 「あら、貴女の伯父上、オルファン元帥はそうやって情報網を作った事もあるそうですよ。元帥閣下の甥御がそういった手妻のひとつやふたつ持っていても可笑しくないでしょう? 勿論その娼妓には裏の事情も話さねばなりませんからね。」


 ハマッタ……ドツボにハマッタ。さてどうしようか? と笑みを無理矢理作ってみるが彼女からはひきつった笑みにしか見えていないだろうな。ホント、カロリーネの首かっくん攻撃十回で済めばいいんだが。



◆◇◆◇◆





 リリエッタ嬢と一緒に隠し扉を潜ると見事なまでに迎賓室だ。その前に小部屋があったが明らかに護衛や監視ないし諜報を目的とした部屋なんだろうなぁ。あのままハニートラップなんぞ仕掛けられて堪るか! しかしまぁ……なんというか
 桃金色の薄絹で飾られた白亜の壁、細やかな細工が施された調度、香料香木どころか催淫剤まで焚くであろう白金と髄玉がちりばめられた香炉。天蓋付きの御姫様ベッド
 目が眩みそうだ。設備の機能性は兎も角、元世界のラブホなんざ目じゃねーな。どれだけ金がかかっているのか前をしずしず歩く支配人(リリエッタ)に聞きたいところだが自重する。ドアを開けて廊下に出ようとするとその支配人が止まった。はて? と思い横に身体ずらすと同時に彼女が反対方向に体をずらしオレ達を止めた相手が現れる。
 薄い金髪に10歳前後の小柄な体、紺と白のコケティッシュなミニドレスが眩しい。まぁ時代的な娼館なんだし娼婦としての行儀作法見習い【禿】(かむろ)に相当する女の子がいても可笑しくは無いだろう? だたその女の子には猫耳と小さな蝙蝠の翼、それに細長い尻尾が付いている。

 下位睡魔族(スゥーティ)

 魔族と言ってもこのタイプは余程教条的な宗教国家でもないかぎり存在するだけで罪とかはない。それでも睡魔族が街中にいれば要らぬ不興を買うのは必然だ。だから己に必要な養分【精気】を集める為にこういった場所に集まる様になる。
 彼女は精一杯オレに向かって背伸びをし背中の小さな翼をパタパタ動かす。可愛いらしい唇は窄められオレに向かって突き出されている。要するにキスのお強請りと言う訳。舐めちゃいけない、これだけで精気吸収になるから相手が加減を知らないと体中の精気をごっそり持っていかれベッドに倒れこむことになる。そうなれば……隣でリリエッタ嬢がニコニコしているのを睨む。
 ええい! そう簡単にハニトラに引っかかって堪るか!! 横目している彼女が見ている方向をチラ見すると今お強請りの子と同系列の小さな頭が壁の横からひょこひょこ耳を動かしている。……気になる子に告白する女の子とそれを応援する同級生といったところか。
 男としては嬉しい限りだが支配人の策に嵌っているようで面白くないわなぁ。顔を近づけて期待させ右手で鼻を摘む。目を瞑ってお強請りしてた子がびっくりして目と口をあけると左手で八重歯が見え隠れする其の口にむかってポケットの木の実を放り込んでやった。
 勿論只の木の実じゃない。性魔術儀式によって魔術付与された精力剤だ。馬鹿のようにお高い代物だが此処に来る最悪の想定(ベッド・イン)の対策として用意しておいた。何故最悪かは簡単、効き目が強烈で最低一日、娼館から出ていけなくなる程下半身が狂うからと言う意味だ。
 ただ、この子の様な精気を糧とする種族だと効能がまるで異なる。本来人間が食ってもひたすら苦い味しかならないが、この子たちの味覚からすれば粉砂糖とクリームを山のように使ったバースデーケーキを独り占め位の満腹感と幸福感になるらしい。その証拠にモグモグしてた子が見る見るうちに顔を蕩けさせ。


 「〜〜〜〜〜〜〜!♪ 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!♪」

 「わっ! コラ、ひっつくな、口紅つけるな!! 髪汚すな!!!」


 ええい、体中にキスの雨を降らすなこの幼女!!! 実際物理的には飛べない筈の大きさしかない蝙蝠の翼を盛んに動かして飛び回り、払っても払っても大喜びでひっついてはキスしまくる。と……その唇が止まった。前のリリエッタ嬢も何とも言えない笑みを浮かべ片手でフレミングを一つずつ作りその先端を奥に向ける。――そこには先ほどの応援団(ようじょ)が……でなくて般若がいた!!!

 「シャアァァァァァッッツ!!!」

 幼女とは思えぬ嫉妬心全開ともの凄い顔でキスの雨を降らせていた子に飛びかかるが彼女も素早く逃げ回る。オレとリリエッタを中心に高速旋回鬼ごっこを始める金色の頭二つ、おーぃ其のまま某昔話のタイガー印バターになっても知らないぞ? と、そんな話はこっちには無かったっけ。対するリリエッタ嬢は手慣れたモノでひょいひょいと追っかけっこを続ける幼女達の翼を摘む。元世界流に言えば耳を摘んで引っ張るという具合だ。


 「さぁて……廊下で騒いじゃダメと昨日言いましたよね? もうその軽い頭は忘れたのかしら?? じゃ、ちゃんと覚えるように地下室まで連れて行ってあげましょう……おしおき部屋へ!」

 「「ミ、み? ミ! みーみーみぃ〜〜〜〜!!!」」


 どうもスゥーティー種は翼が弱点なのか泣きながらリリエッタ嬢に引きずられていく。『今度飼い猫に勝手に餌を与えないでくださいとでも書こうかしら?』なんて嬉しそうに言っている事からこっちは置いてきぼりかよ! 騒ぎを聞きつけたのか非番の娼婦たちが自らの個室の扉を開けて覗いている。ちゃんと商売(プロ)らしくこんなときにも流し眼をくれ、肢体を見せびらかしてくる。ゲームお馴染みの顔もひとつふたつ。慌ててオレは逃げるように彼女のあとに続いた。





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(BGM 眠る世と赤き月 戦女神MEMORIAより)


 娼館を出れば空はさらにリューシオンとベルーラが天頂に上り、繁華街は満員御礼状態だ。明日未だユン=ガソルが占拠するレイムレス要塞に出撃だから皆命の洗濯に忙しいのだろう。輝く二つの月を見ると嫌でも思わざるを得ない事、このゲームにおける鍵とも言える魔導兵器【魔導巧殻】。四体存在する【彼女達】にはこの世界の月を体現した動力源と名に由来した銘を持つ。

 
青の月リューシオンから銘ぜられた帝国西領筆頭騎【リューン】

 
赤の月ベルーラから銘ぜられた帝国北領筆頭騎【ベル】


そしてこの世界にありながらこのディル=リフィーナでは観測することのできない輪の月ナフカスより銘ぜられた、

 
帝国南領筆頭騎【ナフカ】


……そして折玄の森でヴァイス先輩のパートナーとなり、そして世界を危機に陥らせることになる闇の月アルタヌーより銘ぜられた、

帝国東領筆頭騎【アル】


 確認するように声を出す。


 「運命など糞喰らえだ。」


 確かにヴァイス先輩と彼女の永き別離は最後には交わるのかもしれない。幸福への道になるのかもしれない。しかしこの世界に輪廻が、生まれ変わりがあろうとも…………

 それだけは認めない

 今を歩み、今に恋し、今に生きるのがヒトだ! 転生して解った。どれほど今のオレが危うい綱渡りの上にいるのかを。だからオレは傲慢と言われようが転生知識を駆使し、メルキア帝国をヴァイス先輩によって中興させ、アルを……あの少女を哀れな運命から救い出す。
 ナフカスと同じくこの世界で見えぬ筈……しかしその影響は着実にこの世界を蝕み続ける闇の月を睨みつける様にオレは天空を仰いだ。



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