スーパーロボット大戦α 〜Future Story〜
第十八話「守るべきものと倒すべきもの」
ルナツーでの戦いは多くの死者を出した。しかしナデシコDはその中、火星の後継者との決戦に向け最後の休養をとっていた。
ルナツードック ナデシコDブリッジ
「では、修理は半日なんですね?」
「ああ、ここのメカニック達も全員協力してくれるからな。」
「了解しました。ウリバタケさん、香織さんお願いします。」
「ええ、任せてください。」
二つのウインドウが閉じる。
「ルリちゃん、アキト達は?」
「食堂にいます。シンさんとタカヤさんは仮眠に入っています。」
「そう、やっぱりあの二人も疲れてるんだね。」
「実戦の連続、制御の難しい機体だから、疲れて当然。」
「ラピスの言うとおりです。出会ったときから二人はがんばってくれてます。今は休ませてあげましょう。」
「うん・・・私達も食堂行こう。」
今ここにいるのはユリカとルリ、ラピスの三人だけ。ジュンやミナト、ユキナは休憩に入っていた。
食堂
「ほらほら、テンカワも急ぎな!」
「は、は〜い!」
食道ではホウメイがせっせと料理を作っていた。
懐かしい光景だった。
「はいよお待ち。持って行ってくれ。」
「うす。」
完成したラーメン三つをトレイに乗せ、リョーコ達に持っていく。
「お待ちどう。」
「待ってました!」
「腹減ったぜ。」
「いや〜生き残った後の食事はおいしいねえ。」
ラーメンを前に置き、箸を割って麺をすする。
「テンカワ〜、あんたも食うかい?」
「え、いいんですか?」
「ああ、あんたも休まなくちゃいけないだろう。何にする?」
「じゃ、じゃあ火星丼を。」
「あいよ。」
ホウメイがつくり始めるなか、アキトも椅子に腰をおろす。
「懐かしいな、ホウメイさんの料理は。」
と、昔を思い出していると、
「アキト〜来たよ〜。」
「ユリカ?そっちは終わったのか??」
「もっちろん。という訳で、ラーメン三つ!」
「おいおいルリちゃんとラピスは。」
「構いません。」
「ラーメンでいい。」
あっさりと答える。
「わかった、じゃあすぐに」
「テンカワ、今日は休んでな。あたしがやるからさ。」
ホウメイが厨房から返してきた。
「それじゃお願いします。」
「あいよ!」
そうして再び料理にかかる。
「・・・やっぱり、アキトも疲れてるんだね。」
「それはまあ、連続だったからな。でもシン君とタカヤ君は大丈夫か?」
「思いっきり寝てるよ。相当疲れてたんだね。」
「彼らもちょっと前までは新兵同然だったのにな。時間が経つのは早い。」
アキトは腕を組んで顔を俯かせる。
「アキトさん、どこか悪いんですか?」
「いや、ちょっとね・・・ソロモンでのことさ。」
その言葉に食べ終わっていた三人もアキトを見る。
「・・・ハーリーのことか、アキト?」
サブの言葉にアキトは頷く。
「ああ。彼と初めて会ったときもまだ子供だと思っていたが、今は敵同士だ・・・嫌な運命だと思っていたんだ。」
「運命、か。」
サブは真剣な顔でいう。
「そいつは違うぜ、アキト。」
「?」
「それが、あいつの選んだ道なんだ。」
人生には、遅かれ早かれ別れがあるものなのだ。
それはアキトも、三郎太も、リョーコも、アカツキも、そしてユリカも、ルリも、ラピスも同じ。
出会いと別れを繰り返した末に、今ここにいる。
「この世に永遠なんてないんだよ。」
「・・・そうだな、永遠は存在しない。」
「だがテンカワ君、君は彼をどうするんだい?」
「何?」
「彼はまた君を狙うだろうね、おそらく今度は・・・復讐のために。」
ルリがアカツキを睨む。
「アカツキさん、そんな言い方は。」
「だが避けられない。彼が去り際に見せたあの眼、あれはかつてのテンカワ君と同じだったよ。
まさかあのマキビ君があんな顔をするなんてね。」
「ああ、俺もあの顔はあいつの両親が死んだときに見たぐらいだ。」
サブも辛そうな顔で言う。
「一瞬マキビ君があの頃のテンカワ君とダブって見えた。テンカワ君も、ラピス君も同じ意見じゃないかな?」
アカツキの問いにラピスは静かに頷く。
「うん、アカツキの言うとおり。あの眼は、昔のアキトの眼。」
「怒り、憎しみ、負の感情。人を狂わせる心の化け物さ、彼も・・・それになろうとしている。」
それは、味わった者にしかわからないことだった。
「アキト、おめえはどうするんだ。まだハーリーを・・・殺す気なのか?」
リョーコの言葉は、この場にいる全員の意見だろう。ユリカも真剣な目をしていた。
「わからない。どうすれば彼を止められるのか、わからないんだ。」
「マキビ君をかばってまで死んだパイロット、恐らく彼と相当親しい仲だったのかな。その想いはゼロシステムを伝わり更に増幅される。
大切なものを失う悲しみは、君と同じじゃないのかい?」
「・・・そうだ、でも俺は気付くことができた。復讐の虚しさ、そして悲しさに。」
アキトは顔を上げる。
「彼に・・・マキビ・ハリに、かつての俺と同じ過ちをさせる訳にはいかない。」
「アキトさん。」
「ルリちゃん、俺が彼を止めて見せるさ。彼は、俺達にとっても大切な仲間なんだ!」
瞳にやどる強い意志の光。
「まったく熱血してるね、テンカワ君は。」
「でも、あの馬鹿には一度きっついお灸が必要だぜ。」
アカツキとサブが笑いながらアキトの肩を叩く。
「ああ、それにルリちゃんにも頼まれたしね。」
「えっ?」
「止めてくださいってさ。」
「アキトさん。」
「君にとっても大切な弟なんだろ、ハーリー君は。」
ルリをジッと見る。
「敵というものを全て殺して、それで何が残るのか・・・あの後、ずっと考えていたんだ。」
「アキト・・・」
「ユリカはどう思う?」
「難しいことだね、討たなければ自分がやられる・・・でもそれは仕方ないと思うの。」
「そうだ、ジュンも言ってたよ。自分達は軍人だからってな。でもそれじゃあいつまでも終わらない、止まらない。」
「憎しみが憎しみを、殺意が殺意を呼ぶ。人の感情は、簡単には止められない。」
ラピスがアキトの続けて言うそれは、自分が見ていた経験だろうか。
「私達が戦わなければならない本当の敵は・・・自分自身の心なのかもしれませんね。」
ルリのその言葉は、生きる人全てに言えることなのか、まだ分からなかった。
食堂前
「・・・やっぱりすげえよ、あの人たちは。」
「ああ、普通の軍人じゃあ考えないことだしな。」
二人、シンとタカヤは来た道を引き返し、居住区に向かっていた。
アクシズ外部 レウルーラ
ここレウルーラでは、帰還したセレス達を兵士達が歓迎していた。今回は重力制御をしているみたいである。
だが、コクピットから降りてきたパイロットの顔は暗い。
「セレス、お疲れ様。」
「レミー、そっちはどうかしら?」
「こっちは核パルスがダメージを受けて今修理中よ。大体一日とちょっとかしら。」
「そう。何事も、予定通りにはいかないわね。」
「・・・何かあったの?」
セレスの悲しそうな顔に気付いたレミーが問う。
「ええ、ルカが死んだわ。」
「!?ルカが・・・そう。」
レミーは目を瞑る。
「あの子は、ハーリー君をかばって死んだわ。悔いは、なかったと思う。」
「そう、願いたいわね。」
だが、セレス達の後ろでは騒ぎが起こっていた。
「おいセレス!」
「何、ケン?」
整備班長のケンが慌ただしくこっちに来た。
「あの坊主が出てこねえんだよ、コクピットに籠ったままな。」
「ハーリー君が?」
「ああ、何とかしてくれ。」
「・・・彼も、辛いのね。」
「そうね。」
「さっさとしてくれよ。」
「わかったわ、でも一度整備班も休憩をとってなさい。ずっと働きづめだし。」
「し、しかしなあ。」
「命令よ、ケン。」
セレスにジッと見られ、ケンはため息をつく。
「わ〜た、おいお前ら、整備は後回しにして休憩とっていいぞ。総帥の命令だ!」
「わ、わかりました!」×整備士一同
そしてウイングゼロの近くにいた整備士も全員格納庫から出て行った。
「じゃあ、俺は核パルスに向かうわ。」
「ええ・・・頼むわ。」
「ああ。」
ケンもそうして出て行った。
「さて、彼はどうしようかしら。」
セレスはウイングゼロを見、格納庫へ入ってきた一人の少女を見つけた。
ウイングゼロ内
帰還した後も、マキビ・ハリは涙が止まっていなかった。ここまで泣いたのは何年ぶりだろうか。
自分をかばって死んだルカ・フォーマット、自分を好きだと言ってくれた少女、守ると約束した女。
また約束を守れなかった・・・守ることができず、助けられてしまった・・・その事実が、彼を襲っていた。
未だに両手はレバーとコンソール上にある。既に脱ぎ捨てたヘルメットが、彼の流した涙がコクピット内に落ちていく。
周りの整備士の声も届いていない。今眼に、そして耳に聞こえるのは、ルカの最期と、その声だけだった。
「(ルカ、僕は、僕は・・・)」
彼の心は痛んでいた。あの出撃時の、頬の感触をまだ覚えている。
何故死ななければならなかったのか、どうしてと。
そして、一つの答えが導き出される。
「(あいつが、テンカワアキトがいなければ。)」
湧き上がる憎しみ、殺意の感情が、彼の心を満たしていく。
「(僕が討つんだ・・・あれさえ消えれば、この痛みも・・・ルカも、報われる。)」
「次は殺す・・・殺してやる!!」
ウイングゼロの足元で、ローズとセレスが見上げていた。
「まだ、出てきませんね。」
「彼も辛いのよ・・・?」
と、コクピットが開き、ハーリーがワイヤーで下に降りてきた。
「ハリ君。」
「・・・」
ローズが声をかけるが、彼は俯き、黙ったまま出て行こうとする。
「ま、待って。」
慌ててローズがハーリーの肩をつかむと、ゆっくりとこちらに首を向ける。
だが・・・
「ひっ!?」
ハーリーの眼はつり上がり、普段では考えられない顔をしていたのだ。
「ハ、ハリ君、なの?」
「・・・誰に見えるのさ。」
口調も、冷たい。
「ハーリー君・・・どうしたのよ。」
「セレスさん、何でもありません。」
それだけ言い、彼は出て行こうとする。
「ハリ君!」
ローズはいやな予感がした、このままでは彼が彼でなくなってしまう予感がしたのだ。
「ローズさん、どいてください。」
「どきません!」
ハーリーの前に出て行き、動こうとしない。
「邪魔ですよ。」
「駄目です、今のあなたは危険です。」
「・・・うるさい!」
バシッ 乾いた音が響き、ローズが横に倒れる。
ハーリーが、ローズを叩いたのだ。
「ハーリー君、あなた!」
「・・・」
しかしハーリーは黙っている。
「ご、ごめんね・・・ハリ、君。」
ローズはゆっくり立ち上がり、目を押さえて出て行った。
ハーリーは自分の叩いた右手を見ていた。
「おいハーリー。」
と、低い声が聞こえそっちを見ると、
バキッ 拳が飛んできて彼の右頬に当たる。
「っぐ!?」
吹き飛びながらも受け身をとる。
そして殴ったのは・・・ユウイチだった。
「てめえ、今何をした!」
だが今のハーリーは冷静ではなかった。彼らしくもない、昔のように感情に任せユウイチに頭から突っ込んだ。
「げはっ!?」
腹部にもろにぶつかり、ユウイチをそのまま押し倒しマウントをとる。
「二人とも、やめなさい!」
自機を見ていたヴァルキリーチームの三人も、周りに来て何とか止めようとしている。
「ユ、ユウイチさん。」
「マキビさんやめて!」
「・・・・!!」
だがそれでも二人は止まらない。
マウントで殴っていたハーリーが、拳をつかまれ手が止まった。
そのすきにユウイチは腹筋に力をいれ頭突きをくらわす。
ハーリーは後ろに下がり、ユウイチは立ち上がった。
「一体何を!」
「お前、何でローズを叩いた!」
「!?」
ハーリーの動きが止まる。
「あいつはお前を心配してたんだぞ、それなのにお前は。」
「・・・・・・」
「ルカのことを、気にしてんのか?」
ビクッと、ハーリーが反応する。
「やっぱりな、そんなこったろうと思った。」
ユウイチは拳を解く。
「お前は、まだ戦争ってのをわかってねえ。だから・・・」
「・・・討ちます。」
ボソッと、ハーリーが言う。
「何?」
「ゼロシステムで、自分が限界になっても倒します。仇を討てるなら。」
その言葉に、全員が反応する。
「ハーリー、お前死ぬつもりか!?」
ゼロシステムを限界以上に使う・・・それは人間の肉体の限界を超えることを意味している。
だがハーリーは、そんなことも気にしていないという顔だた。
「僕が、甘いから・・・だからルカが死んだんだ。」
「ハーリー。」
「だから僕はやるんです。」
「復讐のつもりか?」
「そう、復讐してやる、テンカワアキトに!」
歯を食いしばり、憎しみに満ちた目をしながら。
「お前。」
「今更、僕の命なんて安いものなんだ!どうせ造られた命なら」
「てめえ!!」
バキッ ユウイチの右拳が今度はハーリーの左頬にめり込む。
また吹き飛ばされたハーリーは、口から流れる血を拭いながらユウイチを見る。
「ルカは無駄死になんかじゃねえ、お前を生かすということをしたんだ。」
「・・・・・・」
「お前は同時に、ルカの命を吸って今ここにいるんだ。」
その言葉に、ハーリーは目を開く。
「命を、吸う?」
「ルカはお前に生きていて欲しいと望んでいた。だからルカが死んだとき、その想いはハーリー、
お前の心の中に吸収されたんだ。」
ハーリーは黙って自分の心臓に右手を当てる。
鼓動が強く、生きているという証を表している。
「それなのに自分が死んでもだと?自分が安い命だと??」
ユウイチはハーリーに怒りの瞳を向け、胸ぐらを掴む。
「ふざけるな!お前には、まだ守るべき女がいるんじゃねえのか!!」
「・・・あっ。」
思い浮かぶその顔。
「あいつだけじゃない、俺達だってお前に生きていて欲しいと願っている。それなのにお前はローズに何をした!」
「・・・」
ハーリーは俯き自分の右手を見る。
「逃げるなハーリー!自分自身から、復讐という行為に!!」
「逃げ、る?」
「それはお前の心の弱さだ、それじゃあ何も守れないぞ!」
「心の・・・弱さ。」
ハーリーは目をつむる。
「(そうだ、僕が力を欲しがったのは、守りたかったから・・・復讐のために手に入れたんじゃない、それじゃああの人と同じだ。)」
ユウイチが気付かせてくれた。自分の愚かさ、そして未熟さに。
「(僕はあの人とは違う。力は、そんなことのためにつかうんじゃないと、いつも教えられてたじゃないか!)」
そして開く。そこに、さっきまでの感情は無かった。
「わかったならさっさと行け!・・・女は大事にしろよ、あいつは俺達以上に傷つきやすいんだぜ。」
そしてハーリーは立ち上がり、ユウイチに一礼をして格納庫から飛び出して行った。
「・・・痛!」
その姿が見えなくなったとたん、ユウイチは片膝をつく。
「大丈夫?」
レミーがユウイチを覗き込んだ。
「ああ。ったくあの野郎、何てタフなやつだ。俺のKOパンチ食らっても向かってくるなんて・・・ああ痛てて。」
レミーはそっとユウイチに手を貸す。
「あんたらしくないわね、あそこまで言うなんて。」
「うるせえ、あいつはこれからさ。これからあいつは強くなるんだ。おそらく、俺以上にな。」
そうやって不適に笑うユウイチに、セレスはため息をつく。
「しかしまあ荒療治ね、あんたも熱血好きだこと。」
「いいだろうが。ドラマみたいだろうが関係ねえ、あれは男同士の特権さ。」
「殴り合い、ですか?」
「古いですよユウイチさん。」
「同感。」
ヴァルキリーチームにまで言われ、ユウイチはうなだれた。
「・・・憎しみに、自分自身に負けるなよ、ハーリー。」
ローズの部屋
「うっ、ぐす。」
ローズは一人泣いていた。ルカが死んだことも悲しかったが、何よりハーリーに叩かれたことが一番だった。
「ふ、うう。ハリ・・・君。」
彼は変わってしまっていた、自分が知らない男に。あんな冷たい眼をする人ではなかったのに。
と、
コンコン ドアがノックされ、そして、
「あの・・・ローズ、さん?」
ハーリーの声、あの時みたいな冷たさが感じられないいつもの彼だった。
ローズは慌てて立ち上がったが、
「さっきのこと・・・ごめんなさい。僕は、狂っていました。」
「・・・」
その言葉に立ち止まった。
「僕は、ルカを守ると約束していました。そしてその時・・・告白されました。」
「!?」
「好きだって、言ってくれたんです。ローズさん以外にそんなことを言われたのは、ありませんでした。」
「・・・」
「でも僕は断りました。あなたが僕の一番だから・・・大切な、守りたい人だから。」
「(ハリ、君。)」
「僕は強くなります、今よりもっと上に、守るためにも!」
「あなたの隣に立つためにも!!」
ローズの頬に、新しい涙がつたっていた。
そして、ドアを開ける。
「ハリ君・・・」
「ローズさん・・・」
と、ローズは手を伸ばしハーリーを部屋へ引きずり込む。
「えっ?」
とっさに反応できなかったハーリーはそのまま前に倒れそうになる。
だが、ローズが彼を力一杯抱きしめた。
「ハリ君。いえ、ハリ。」
「ローズさん。」
「さんは、いらない・・・」
少しの間の後、
「ローズ。」
そしてローズは、迷わず唇を重ねた。
「・・・」
「・・・」
ローズが放し、ハーリーはいつもどおりに立った。
「血の味です。」
「あ、さっきちょっとありましたから。」
真っ赤な顔でハーリーが言う。
「ハリ、さっきの言葉。」
「うん。」
「嬉しい。」
「・・・」
「でも一つだけ、願いを聞いて。」
「願い?」
「戦うだけの、怖い人にはならないで。ハリ。」
それは、ローズが心の底から恐れていたことだった。
身体を震わしながら、また抱きついてくる。
ハーリーも、震えているローズを大切に扱うかのように抱きしめた。
そして優しくローズの髪を撫でる。
ローズも少しずつだが震えが止まり、身体を預けてきた。
「ハリ・・・さっきの言葉。」
「言葉?」
「あれって、プロポーズ?」
「えっ・・・プ、プロ」
「隣に立つって、そういう意味なんですよね。」
その言葉にハーリーは自分が何を言ったのか思い出し、湯気が出るほど赤くなる。
「あ、あの。」
「・・・」
と、突然ローズがハーリーを突き倒した。
「わっ!?」
ベッドに倒れこみ、その上にローズがマウントをとる。
「ねえ、そうなんですよね?」
「ぼ、僕は・・・」
そのまま数分が経ち、ハーリーは覚悟を決めた顔になる。
「さっきの言葉は・・・そういう意味で言いました。」
しっかりとローズの顔を見て、
「ローズの隣に立ち続けること、一生側にいることを。」
「・・・ハリ。」
ハーリーは、ローズの潤んだ瞳に魅入られたかのように動けず、ローズは再び唇を重ね、二人の身体はベッドに沈み込んだ・・・
「今回だけよ、二人とも。」
いつまでも帰ってこない二人に、セレスは呟くように言った。
「艦内風紀、堂々と破ってくれそうね。」
溜息をつく。
「ローズに遅れをとっちゃったか。」
数時間後
リビングルームで談話しているいつものメンバーだったが、ハーリーが戻ってきた。
「お、やっと来たか。」
ユウイチが見ながら言う。
「すみませんユウイチさん。ご迷惑をおかけして。」
「ふ、気づいたならいいさ。俺達も、ルカの死を無駄にしねえためにも、勝たねえとな。」
セレス達は頷く。
「はい。」
と、場に和やかな空気が流れていたのだが。
「そういえばマキビさん、ローズさんは?」
ローズがいないことにミレイは尋ねた。
「うっ、いや・・・その。」
何故かおろおろしだすハーリー。
「どうしたんですか?」
「・・・「なき」疲れちゃったみたいで、部屋で寝てます。」
何故か目を逸らしながら答える。
「そうですか、マキビさんも女性を叩くなんて最低ですよ。」
「うん、反省してます。」
と、ミレイもエリもシズも納得したように頷くが、この大人三人は違った。
「その割には、ハーリー君もなんかやつれたかしら?」
「そうね、それにちょっと眠そうね。」
「なき疲れたねえ、どういう意味かな〜?」
と、セレスとレミーが疑うような眼を、ユウイチがニヤニヤしながらハーリーを見ていた。
「な、何ですか!」
「まあちょっと来いハーリー。」
そしてハーリーといっしょに隅っこへ移動し背を丸め小声で会話を始める。
「(で、どうだったんよ?)」
「(ど、どうだったって。)」
肩に腕を回し、スケベな顔をしたユウイチが問い詰めるように聞いてきた。
「(やったんだろ、これで本当に大人の仲間入りだぜ。)」
「(な、何をですか!)」
「(ナニって、きまってるだろ。まあ安心しろ、もう十八なら法律上OKだ。俺だって初めては十七だしな。
で、どんな感じだった?詳しく話せよな。)」
この時ハーリーは思った、やはりユウイチさんはサブロウタさんにそっくりな性格だと。
以前もこういう話題で問い詰められたことがあった。
しかし、
「へえ、おもしろい話してるわねユ・ウ・イ・チ(はあと)」
「レ、レミー!?」
いつの間にかレミーが背後に立っていた。
「覚悟、できてるかしら?」
「全然!」
「私以外の女と・・・この、浮気者!!」
「だってそれは出会う前ぐはっ!?」
「うわ!?」
レミーのかかと落としが見事に脳天を直撃する。低い体勢で話していたのでちょうどよかったらしい。
ハーリーは間一髪で避けたのだが。
「ぐ・・・レミー。」
頭を押さえていたユウイチが顔を上げる。
「何よ。」
「今日は黒か、中々似合って」
「死ね!」
ドゴッ 鈍い音とともにユウイチは壁にぶつかり崩れ落ちた。何故か見慣れた光景だったが、
「(・・・自業自得ですよ、ユウイチさん。)」
デジャヴを感じながらも、ハーリーは心の中で合掌していた。
「レミー、夫婦喧嘩は別の場所でやってくれない?」
呆れた声でセレスが言う。
「ちょっとセレス、夫婦喧嘩ってなによ!」
「そのまんまの意味よ、あとユウイチを殺しちゃだめよ。まだ戦争終わってないんだから。」
「・・・悪かったわ。」
「(終わったらいいんですか!?)」
いろいろ突っ込みどころがある会話である。
「マキビさん。」
「何、ミレイ?」
茫然としているハーリーにミレイが話しかけてきた。
「あれは二人のスキンシップというものです。まあ日常の風景だと思ってください、私達はもう慣れましたし。」
「・・・嫌なスキンシップですね。」
心底そう思っているハーリーだが、エリもシズも呆れたように首を横に振っているところ、本当に見慣れているようだ。
「ハーリー君。」
「は、はい!?」
突如レミーに話しかけられた。
「何を怖がってるのかしらないけど、こいつの言うことまともにしちゃダメよ。」
「・・・わかっています、でもユウイチさんも僕のことを考えてくれてたみたいですし。」
「まあそうだけど、くだらないことだったらスルーしていいから。」
「はい、そういうことは慣れていますから。」
「よろしい。あとこいつを部屋に放り込んでおいてね。」
「わ、わかりました。」
ハーリーは壁のそばに倒れているユウイチの腕を自分の肩に回し、足を引きずりながら部屋へと向かった。
「セレス、私達も仮眠をとりましょう。しばらくは戦いはないはずだし。」
「でも、ケン達も休ませてあげないといけないわよ。」
「そうね・・・後でハーリー君にも手伝ってもらおうかしら、差し入れを作るために。」
「いいわね。それとローズはゆっくりさせてあげなさい、いいわね。」
「「「は〜い。」」」
五人はリビングルームを出て行った。
ユウイチの部屋
「と、着きましたよユウイチさん。」
「悪いなハーリー、あいつ加減しらねえから。」
ユウイチは意識を取り戻していた。
「・・・ユウイチさんって本当に似ています。」
「誰にだ?」
興味があるって顔をしている。
「ナデシコのクルーで、僕にとっても兄にあたいするような人です。」
「へえ、パイロットか?」
「はい。僕はあの人、タカスギ・サブロウタさんから戦いの技術を学びました。」
「タカスギ・・・木連のか?」
「そうです、僕の柔もあの人の伝授ですし。」
ユウイチをベッドに腰かけさせる。
「まあそこの椅子に座れや。」
「あ、はい。」
ハーリーは椅子に腰かけた。
「僕はサブロウタさんからいろいろなことを学びました。そりゃあからかわれることも多かったですけど、優しい人です。」
「でも、俺とどこが似てるんだ?」
「さっきみたいにまあ・・・下ネタとか、不純なこと。あとは、雰囲気です。」
「へえ。」
「からかってるようで、僕のことも考えてくれていたんです。ユウイチさんも、そうでしたよね。」
「お前はまだひよっこって感じだからな、感情に奔る所とかな。」
「そうですね、否定しません。」
「だが、そうやって認められるならいい。これからが伸び時さ。」
「・・・ユウイチさん、僕は」
「ナデシコと戦いたくない、か?」
考えていたことを先に言われ、ハーリーは驚きの顔を向ける。
「さっきまでのお前は、ただ狂っていただけさ。本当は戦いたくないって思ってることはわかってる。」
まるで、全て見透かされていたように言う。
「すごい、ですね。僕が思ってたことは、その通りです。」
「わかるさ、俺もタカヤやその仲間達とは戦いたくねえ。」
「・・・」
「でもな、これは戦争なんだよ。討ちたくない、でも討たねば自分がやられる。人が変わねえ限り、繰り返される歴史だ。」
「繰り返される歴史・・・」
「ああ、だからこそ俺達の時代で終わらせるんだ。全てをな。」
話が途切れ、ハーリーが口を開く。
「・・・あの、ユウイチさん。」
「ん?」
「さっき、前に付き合ってた女性がいたって。」
「・・・ああ。」
ユウイチの声が低くなる。
「失礼かもしれませんが、別れたんですか?」
「別れた、か。まあ似たようなもんだ。俺も元は地球生まれでな、タカヤのことも知ってるんだよ。」
「タカヤさんを?」
「ああ、あいつが軍に入って会わなくなったがな。そん時俺は彼女がいた、いい女だった。」
ハーリーは黙って聞いていた。
「別れって言ったろ、あいつは・・・もうこの世にいない。」
「えっ?」
「病気でな、突然さ。永遠の別れだった。」
「ユウイチさん・・・」
「そして俺は地球を離れてサイド3に来た。地球は、嫌な思いでしか残らなかったからな。」
「・・・何で。」
「?」
「何でそんなことを、笑って言えるんですか?」
そう、ユウイチは笑っていた。辛い過去を話しているのに。
「笑ってか、じゃあハーリー、お前は辛いことがあったら泣くか?」
「・・・はい。僕は昔も今も泣き虫です。」
「そうか。俺が笑うのはな、悲しんでもあいつは帰って来ない、悔やんでも仕方ないと思っているからさ。」
「悔やんでも、仕方ない?」
「人は一度失ったものを取り戻せない。もし過去に戻ったとしても、それは自分が知っているものとは別のものさ。
俺が愛したあいつも、過去にも未来にもいない、たった一人の女さ。分かるか?」
「・・・難しいです。」
「そうだな、いきなりこんな話をしてもわからねえかもしれないな。でもこれだけは言える。この世界に同じものは存在しない。
人も同じだ、例え過去に自分の知っている女がいても、それは別人なんだよ。俺達は「今」を生きてるんだからな」
「今を、生きる・・・」
「ニュータイプだろうとマシンチャイルドだろうとな、生きてるんだ、この世界で。必死にな。」
「・・・・・・」
「お前もルカの死を無駄にするなよ。あいつの想いを、受け止めるんだ。そしてローズを守ってやれ、それがルカに対する
お前のお返しになる。俺もレミーを守りぬくぜ、絶対にな。」
ハーリーの肩に手を置き、ユウイチはジッと見つめた。
「はい、僕も守ってみせます。あの人を。」
「よっしゃ、それでこそ男だ。」
「あの・・・ユウイチさん、こんなことを言うのもおかしいですが、僕を鍛えてくれませんか?」
ユウイチは目を開く。
「お前をか?」
「はい、もう時間がないかもしれませんが、お願いします。」
「・・・ローズのためか。」
「はい、僕にとって守るべきもの・・・もう失いたくないんです。復讐のためではない、ユウイチさんに気付かされました。」
「ふっ、いいぜ。アクシズが動くまであと一日とちょっとだが、その間ならやってやるよ。」
「あ、ありがとうございます。」
「よっしゃ、シミュレーターで徹底的に訓練してやる。行くぞ!」
「はい!」
二人は部屋を出、シミュレータールームに向かった。
ナデシコD 格納庫
「何だよ、俺達に話って。」
「ウリバタケさんも香織ちゃんも、どうしたんだ?」
そう、リョーコとサブは二人に呼び出され格納庫に来ていた。
「ふっふっふ、まあ聞け。お前らの機体のパワーアップができるんだからよ。」
「何!」
「マジか!」
「ええ、見てもらった方が早いですね。」
そうして香織の指さす場所には、何かのパーツが置いてある。
「これは?」
「よくぞ聞いてくれました!お前らの機体は元々ガンダムF90という機体をベースにしたという話は知ってるな。
F90は本来ミッションパックという装備をつけることで真価を発揮する。
元となったガンダムF90は、肩部、前腕部、脚部などの機体各所にハードポイントが設置されており、
運用目的ごとにフォーマット化されたミッションパックを装備することで、
主力攻撃から後方支援、遊撃戦闘、強襲など多彩な任務に対応できる。
それぞれの装備の設定はすべてコンピューターに組み込まれており、簡単な設定変更を行えば短時間での換装が可能で、
必要とあれば装備同士が干渉しない限りにおいて異なる種類のミッションパックを混載することもできるのだ。」
「本来高い機動力を生かして敵陣深くに侵攻し重要拠点をピンポイント攻撃することを目的として開発された機体なのですが、
今回は過去のデータを元にお二人に合うミッションパックを製作しました。」
「すげえじゃねえか、どこかエステにも似てるしな。」
「用意がいいっすね。」
「あ、いえ・・・私は調整を手伝っただけで、ほとんどウリバタケさんが独断で製作していたんです。」
香織はウリバタケを見ながら言う。
「ふふふ・・・こんなこともあろうかと、こんなこともあろうかと!こんなこともあろうかとってな!!今のままじゃあの六道、
それとジオンのニュータイプ達にはきついからな。月で作っていたのさ、まあアカツキには悪いがお前らのを優先させてもらったぜ。
あいつはあいつで何かトールギスに仕込んでるらしいがな。」
やはりウリバタケも気付いているらしい。自分たちの機体では相手とタイマンを張るときついことを。
「すまねえ、実はついていくのがやっとなんだ。」
「アンスリウムもサルビアも、まだ二回の戦闘だってのにバーニア部に異常な負荷がかかってたからな。
こいつらをつければ、かなり楽になるぜ。まあ時間がなくて一つずつしか作れなかったがな。」
「では詳しく説明します。まずリョーコさんにはミッションパック、クイックファイトタイプです。
これは高速白兵戦仕様でリョーコさんが得意の接近戦に特化したパックです。脚部、肩部にブースターが増設、
右腕部に三連グレネードラック、両腰には新しく開発されたグラビティナイフが二本あります。
ただしこのナイフはエンジンの出力上、長時間使用はできません。一撃必殺か、メガビームサーベルと併用して使ってください。
装甲もハイブリッドアーマーを装着してありますが、機動力は前以上です。」
「じゃあ次にサブロウタのだ、お前のはアサルトデストロイドタイプ。オールレンジに対応したタイプだ。
まず両腕部についた三連グレネードラックはリョーコと同じだが、さらに両脚部にも五連ロケット弾パックが装着されている。
全てディストーションフィールドを無効化する特殊弾頭だ。そして両肩の上、左右に伸びているのはダブルグラビティキャノン。
もちろん機動力もアップしてる。ただグラビティライフルは持てねえけどな。
ゼラニウムには劣るが、ツインガトリングレールカノンとのフル武装による攻撃はナデシコで二位の火力を誇るぜ。」
「この二体はお互いを補いあうことによって最高の力を発揮できます。お二人なら、性能を限界まで引き出せるはずです。」
香織は自信満々の声でそう言った。
「へへ、嬉しいこと言ってくれるな、なあリョーコ。」
「何か納得いかねえ部分があるが、そこまで信じてくれるなら悪い気しねえな。」
「あと、いらなくなった部分は強制排除が可能だ。弾薬がなくなったらさっさと切り離せよ。」
「「おう!」」
格納庫に、リョーコとサブの声が響いた。
フォボス 司令室
「では、予定の数はそらったのかね、ヤマサキ君?」
一人の男、火星の後継者総帥草壁が、ヤマサキの映るウインドウに話しかける。
「はい、予定数はそろいました。後は彼のデータを入力すれば完了です。」
「では我々から攻め込むことは可能か?」
「そうですね、この辺りに宇宙軍はもういませんが、あの艦が来ると思われます。」
「・・・ナデシコ、か。」
因縁の艦、それが再びやってくると思われる。
「彼女らも調子がいいようですし、妖精達への対抗手段は準備が終わっています。例の大砲も調整が終了していますので、お任せください。」
「新しい人形、我々の忌むべき因子、そして・・・「タケミカヅチ」か。恐ろしいものだ、過去の遺産はな。」
「まあご安心を。他にも奥の手がありますから。」
「では、頼むぞ。」
そうしてウインドウを切る。
「君にも、任せていいかな?」
後ろに控える男に問いかける。
「はっ、草壁閣下の意志、私もわかっております。例えナデシコが来ようとも、決着をつけて見せます。」
「うむ、期待しているぞ・・・南雲君。」
「了解であります。」
ここにもう一人、ナデシコとの因縁を持つ男、南雲義政がステージへと上がる。
フォボス内部
「確かに任されましたよ、草壁さん。」
薄笑いをしながらヤマサキは三人の少女を見る。
「君たちも頼むよ、いざというときのためにもね。」
そうして三人がコンソールに手を置き、IFSが光りだす。
と、同時に部屋中で多くのモニターが灯りだした。
「(北辰君にばれると厄介だからね、南雲君も要望通りにしたけど、どちらが勝とうと僕にはどうでもいい。)」
ウインドウが前に現れる。そこには少女達のデータウインドウと、複数の機動兵器の設計図が記されていた。
「まったく、あんたも物好きだな。」
ヤマサキの後ろから声がかかる。
「君かい、驚かせないでくれ。」
「・・・楽しそうだな。」
「もちろんさ、こんな素晴らしい実験ができるのだしね。」
そして後ろの声の主、一人の少年のデータウインドウが映し出される。そこにはTYPE−01と記されていた。
「ふふふ、あははははは・・・」
ゼラニウム内
アキトは静かに、ゼラニウムの中で機体のチェックをしていた。
彼にはもう一つの悩みがあった。
それは・・・北辰の存在。
七年前の戦い、奴を倒したはずが生きて今自分の前に現れた。以前よりさらに強くなって。
次の決戦で北辰は再び出てくる。だが今の自分で倒せるのか、分らなかった。
マドラスでの戦いがまだ脳裏によぎるのだ。あの、完膚なきまで叩き潰されたことが。
「俺は、あいつに追いつけたのか・・・?」
復讐鬼として戦っていた時は、何も感じていない。ただ敵を倒すことだけがアキトの行動だった。
だが今は違う。仲間と、ナデシコの一員として戦っている。それが自分を弱くしたんではと思うことがあるのだ。
「アキト。」
と、コクピット内に声が響く。その音源は足元からだ。
「ラピス?」
下を見るとゼラニウムの足の前にラピスがおり、こちらを見上げていた。
アキトはコクピットから出てワイヤーで下に降りた。
「どうした?」
「作戦のミーティングだって。」
「そうか、わざわざすまない。」
「コミュニケを食堂に置きっぱなし。」
「・・・そうだったな。」
そうしてラピスから渡されたコミュニケを腕に付け直す。
「俺としたことが、ボケたかな?」
笑いながら言う。
「違う、アキトは迷ってる。」
ラピスがジッと見つめて言う。
「俺が?」
「アキトを見ていればわかる。」
「・・・ああ、確かにそうかもね。でもよくわかったな?」
「リンクが繋がってなくても、私にはわかる。アキトが何に迷っているのか。」
「何に、迷ってるんだ?」
「あいつのこと、それと・・・力のこと。」
「!?」
まさに、アキトが考えていたことだった。ラピスが言うあいつとは、北辰しかない。
「アキトなら勝てる。」
ラピスは迷わずに言いきった。
「あいつに勝てるよ。」
「・・・・・・」
「それに、昔よりもアキトは強くなってる。」
「そう、見えるのか?」
コクっと頷き、ゼラニウムを見上げた。
「マドラスの時、もうサレナは限界に近かった。アキトの技量が高くなってるから。それに・・・」
「アキトは、いつも私達を守ってくれる。」
金色の瞳が、アキトを映す。
「あの時は無かったこと、でも今は違う。私にも仲間がいっぱいできた。アキトにも、いる。」
「(ラピス・・・)」
「もう一人で戦っていないから。だからアキトは周りを頼ってくれるようになった。それが、強くなった証。」
「証、か。」
「一人では限界だってある。私もそれを知ることができた。人を頼るのは、信じているから。心が、強くなった。」
ラピスがアキトにここまで言うようになったのも、周りの影響だといえる。
「だから大丈夫、アキトは負けない、私達も負けない。」
「・・・そうだな、俺にもラピスにも、心強い仲間がいるんだったな。」
「うん。」
「(お前も、強くなったな。)行こうか。」
アキトが歩いていき、その後ろにラピスがついていった。
そして数時間が過ぎ、補給も修理も完了したナデシコは、ルナツーを出た。
ナデシコD
「全システム異常なし。」
「ジャンプフィールドの形成を。」
「了解。」
ナデシコDをフィールドが覆う。
ジャンパーのユリカ、イネスも準備が出来ていた。だが今回はハッキングではなく戦闘を行うつもりである。
前回、前々回と成功してきてはいるが、敵もこちらを待ち構えている確率が高いのだ。
ジャンプ後攻撃があるかもしれなく、以前以上にハッキングの対策もしてあるだろう。
故に、今回はフォボスでなくターミナルコロニーウズメの前に跳ぶ予定だ。
「「イメージ。」」
身体に模様が浮かび上がる。
「「ジャンプ。」」
ナデシコDは再び跳ぶ。火星の後継者待つ防衛衛星フォボスへ。
次回予告
決着をつけるため、ウズメへ跳んだナデシコD。
アキトも、最後の決着をつけるために出撃する。赤き好敵手の待つ場所へ。
しかし敵は更なる手を用意していた、蘇る過去最悪の兵器。そして謎の少女達の魔の手がナデシコへ向けられる。
ルリ、ラピスは電脳世界へ身を投じ、もう一つの戦いも始まろうとしていた。
さらに無防備なナデシコを狙い、かつての敵、不知火を駆る南雲が襲いかかる。
勝利の女神は、どちらに微笑むのか・・・これが、火星の後継者との最終決戦。
スーパーロボット大戦α 〜Future Story〜
第十九話「フォボスの決戦 さらば好敵手よ」
アキト「勝負だ・・・北辰!」
ルリ「あなたは、誰?」
ヤマサキ「舞台はここで閉幕ですよ、草壁さん。」
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