スーパーロボット大戦α 〜Future Story〜
第十九話「フォボスの決戦 さらば好敵手よ」
ナデシコD ブリッジ
「ジャンプアウト、位置はターミナルコロニーウズメの前。」
「総員第一種戦闘配備。ラピス、フォボスの状況は?」
「敵部隊確認、こっちに向かってくる。数は・・・ミノフスキー粒子が散布されてるけどすごく多い。フォボスに強力なフィールドが確認できる。」
「フォボスは火星宙域の重要な拠点、だから要塞としての機能も兼ねそろえているからね。多くのフィールド発生装置が
取り付けられているんだ。」
ラピスの報告にジュンが補足する。
「攻略は容易ではなさそうですね。」
ルリはすぐさま戻ってきたユリカに言う。
「ルリちゃんの言うとおり、しかも待ち構えられていたね。ハッキングする間も与えてくれないか。」
「やはり同じ手は三度も通用しない、ということですか。私がハッキングをしても、かなりのプロテクトを用意してたんだと思います。」
「提督、デブリに突入するよ。」
「各機発進!今度こそ決着をつけます!!」
格納庫
「総員退避だ!」
「急いで!」
ウリバタケと香織の声が響き渡り格納庫からは人影がなくなる。
代わりに機動兵器の駆動音が響いた。
そしてハッチが解放され、一機ずつカタパルトへ向かう。
「お〜しアンスリウム、でるぜ!」
「サルビア、行くぞ!」
「こちらトールギス。アカツキ・ナガレ、行くよ。」
「カワシマ・シン、Hi−νガンダム、行きます!」
「ダイゼンガー、行ってくるぜ!」
五機が出撃し、ゆっくりとゼラニウムもつく。オーキスもすでに装着済みだ。
「(北辰、今度こそ決着をつけるぞ。)」
「テンカワ・アキト、ゼラニウム、出撃する!!」
飛び出し後方の巨大ブースターが火を噴く。
フォボス 司令室
「ヤマサキ君、君の感が当たったようだな。しかし何故ナデシコが来るタイミングが分かったのだ?」
「それは秘密で。それと今回はハッキングされても対策は充分にしてあります。何重の対ハッキングプログラムと、彼女達がいますから・・・」
薄気味悪い笑いを浮かべながら自信ありげに言う。
「ところで、「タケミカヅチ」はどうか?」
「間もなくチャージ完了です。ナデシコには無人兵器を向かわせ、足止めをしています。」
「うむ。」
デブリ帯
「くっ、何て残骸の量だ。」
「機体が傷だらけになっちまう。」
ゼラニウムやダイゼンガーなど、大型の機体はこのデブリでは動きがとれない。
二機はフィールドを纏い弾きながら進んでいく。
シン達は残骸の合間をぬって進む。と、バッタやカトンボなどの無人機も出てきた。
「へっ、まずは雑魚かよ。」
リョーコはバックパックの両側からメガビームサーベルを引き抜き、一つに繋げた。
「フィールドを張る前に、ぶった切る!!」
その振られる筒から出力を増したエネルギー、ロングメガビームサーベルがデブリごと敵無人兵器を薙ぎ払っていく。
そのあとに多くの爆発光が生まれる。
「ひゅう、さすがリョーコ。俺達もいくかあ。」
「了解。」
目の前に出来た空間にまた新しい無人機達が群がってくる。
「会長さん、いけるかい?」
「もちろんさ。」
サルビアの両肩上の砲身が左右に伸び、正面を向く。
トールギスのメガグラビティキャノンもまた、展開された。
「「トリプルグラビティキャノン、発射!」」
二機の持つ各砲門から放たれたグラビティブラストが瞬く間に敵を破壊する。
無人機だけでなく、目の前のデブリもほとんどが消滅した。
フォボス 司令室
「閣下、エネルギー充填完了です!」
それを聞き、草壁はマイクを手に放送をこの宙域全てに流すよう伝え、口を開く。
「諸君、我々は七年前、偉大な意志を持って立ち上がった。しかし我々は敗れ、屈辱の日々を送っていた。
だが今再び、我ら火星の後継者が立ち上がる時が来たのだ!
この宇宙に再び戦いを持ちこんだ我々は悪である。しかし腐敗した新地球連合を倒し、この宇宙に真の秩序をもたらすためにも
我々は戦わなければならない。今この新しき力、「タケミカヅチ」を持って我々は新しき世界を造るのだ!!」
この放送は、当然ナデシコや各機体にも届いていた。
ナデシコD ブリッジ
「タケミカヅチ?」
ユリカが疑問の声をあげる。
「・・・これって!?」
普段声をあげないラピスが驚きの声をだしていた。
「ラピス、どうしたのですか?」
「ルリ、フォボス上空に高エネルギー・・・ううん、膨大なエネルギーが収束されてる!」
「収束?モニターに最大望遠。」
そして映し出されるその姿は、巨大な砲筒のようなもの。
「あれ、コロニー?」
そう、ユキナの言うとおりそれはコロニーだった。しかし中が光にまみれ、少しずつ増していく。
「エネルギー反応さらに増大!」
「まさかあれは!?ミナトさん、緊急降下!ユキナ、各機にコロニーの向く方向からどくように伝えるんだ!!」
「ジュン君!?」
ユリカの言葉も遮り、彼らしくなくジュンは叫んだ。
「急いで!!」
「わ、わかったわ。」
「りょ、了解!」
普段と違うジュンの態度に何かを感じ、二人はそれぞれの役割を全うする。
「全員、何かにつかまって!!」
ミナトの言葉が飛び、ナデシコが急降下を始めた。
「おいユリカ、どうしたんだ?」
アキトがそこに通信を入れてきた。
「私じゃなくてジュン君が!」
「ジュンが?」
ウインドウが近くにつかまっているジュンに向けられる。
「いいから急いであれの向いている方向からどくんだ!撃ってくるぞ!!」
「な、何だって!?」
「急ぐんだアキト!」
その言葉が届いたのか、各機も同じように動いていく。
草壁は目の前にあるボタンに人差し指を置く。
「新たなる秩序のために!」
そのボタンを、押した・・・
そして、コロニーから凄まじい光が撃ちだされた。
光は一直線にナデシコの方へ向かう。
「フィールド全開!」
ジュンの言葉にシートベルトで固定されたラピスはナデシコにフィールドを張らせた。
モニターに光があふれ、それはナデシコを包み込む。
「きゃああああ!」
「うわああああ!」
その光は容赦なくナデシコに襲いかかる。
ブリッジも凄まじい揺れが襲い、フィールドのレベルがいつのまにかレッドゾーンへ入っていた。
ナデシコが、後退させられているのだ。
「くっ、こんのおお!」
ミナトはその中必死に艦を操作し、その光から脱出することに成功した。
しかしフィールドが持たず、左舷にある追加されたブレードがその光によって消滅してしまった。
「・・・うう、みんな無事!?」
「なんとか生きてるみたいです。」
「大丈夫・・・」
ユリカの声にブリッジクルーは声をだす。
「おいブリッジ!何だ今のは!?左舷ブレードが途中から消滅したぞ!!」
「ええっ!?」
ウリバタケのウインドウが大きく開き、その情報にユリカは目を丸くする。
「ユリカ、エンジンにかなりの負荷がかかってる。さっきのは何なの?」
ラピスも訳がわからないといった顔だ。
「はっ、アキト・・・アキト達は!?」
と、そこにアキトのウインドウが開く。
「・・・全機確認。無事だよ。」
「アキト、よかった〜。」
「しかし今のは、ジュン?」
アキトはジュンの方を向く。
「僕も本とかでしか知らないけど、あれは」
「コロニーレーザーよ。」
と、ジュンの言葉を遮りイネスがブリッジに入ってきた。
「イネスさん、レーザーって?」
「あれはコロニーを改装した巨大レーザー砲、とでもいうべきかしら。レーザーなどの高エネルギーの電磁波を弾く
ディストーションフィールドでも、あれの前ではいつまでももたないようね。その証拠が左舷ブレード、それと・・・」
イネスはラピスに尋ねる。
「ラピス、私達の後ろにあったウズメはどうかしら?」
「えっ・・・!?」
確認をしたラピスは信じられないといった顔をする。
「うそ・・・ウズメが、消滅してる。」
「!?」
ブリッジクルーは驚愕の顔をする。
「とんでもない威力ね、今さらだけどアオイ副提督の英断に感謝するわ。もしフィールドが少しでも、いえ、回避も遅ければ
エンジンの出力低下とともに、私達も消滅していたわね。ナデシコCだったら耐えられなかったわ。」
「いえ、とっさに声がでてしまって。」
「でもチャンスが来ました、恐らくあのコロニーレーザーが切り札と思われます。今が攻め時です。」
「ルリちゃんの言うとおり、全機フォボスへ。ナデシコも続いてください!」
「了解。」
ユキナが各機へ通信を送り、ナデシコも動き出した。
フォボス
コロニーレーザー「タケミカヅチ」をかわされたフォボスでは、第二射の用意がされていた。
「くっ、さすがナデシコというところだな。」
草壁もある程度は覚悟していたが、まさかこの攻撃をかわされるとは思っていなかった。
「ヤマサキ君。」
ヤマサキのウインドウが開く。
「はい、何でしょう?」
「君の切り札はどうかね?」
「まだ出番ではありませんね、ここは北辰君と南雲君に任せましょう。」
「そうか・・・」
草壁は別のウインドウを開く。
「第二射はどうか?」
「はっ、しばらく冷却したのちエネルギー充填を開始します。」
「うむ。」
???
だが、ヤマサキがいたのはおかしな部屋だった。
まるでドームのように天井がお椀型で、そこには例の三人の少女が座っており、ヘルメットのようなバイザーをつけている。
その頭部からケーブルが伸び、部屋の各所につながっていた。
「さて、もうしばらくしたら頼むよ。」
「・・・おい、本当に大丈夫なのか?」
ヤマサキの後ろ、壁にもたれかかりながら問いかける人影がある。
「安心したまえ、これらはあくまで彼女達の意識を増幅させるだけだよ。」
「あのシステムは危険なはずだが?」
「特別な君や調整された彼女達なら耐えられるよ、現にネオ・ジオンのローズクォーツやマキビ・ハリは自在に使っている。」
その言葉にピクッと反応する。
「マキビ・ハリ、あの出来損ないか。」
「おいおい、そんな言い方ないんじゃない?数少ない成功例だよ、君を含めたね。妖精たちとは別だけど。」
「ふん、奴は失敗作さ。」
「まあ、君がそう思うのはいいけど君は彼と同じ存在だよ?」
「どうでもいい。」
「まあ君は特別やばいからねえ、僕が言うのもなんだけど。」
「・・・そうしたのはお前だろうが。俺は元々そういう風に調整されていたんだろ。」
「そうだったね〜。今でも君が連れてこられた時が思い出せるよ。でも連れてくるのはマキビ君とどっちでもよかったらしいけど。」
「ふん。」
そう言うと人影はまた無口に戻った。
「君の出番はまだ先だよ。確かに戦闘能力は高いけど・・・」
「俺は出来損ないとは違う。」
「君やマキビ君がいた二つの研究所で行っていた実験はネルガルも知らないだろうけどね。
僕もおもしろいと思ったよ、まったく別のマシンチャイルドを造ることを。TYPE−01君?」
「おい、俺にも名があるぞ。」
「そうだったね、あははは。」
「・・・」
「怒らないでよ。まあ例の物が完成するまでは、我慢しててね。」
「わかったよ。」
人影はそっぽを向き、その「蒼い瞳」を三人の少女を見る。
「(俺は、あの出来損ないとは違う!)」
ナデシコD ブリッジ
タケミカヅチの攻撃を耐えきったナデシコだが、現在エンジンの調整に手間取っていた。
「ウリバタケさん、どうですか?」
「何とかいけるが、前の出力はきついな。」
「ユリカさん、左舷ブレードも使えませんからフィールドも落ちています。」
「わかりました、ありがとうございます。」
ウインドウが閉じる。
「敵部隊の増援を確認。」
「ユキナさん、全機動兵器に連絡。敵部隊を突破しタケミカヅチの撃破、及びフォボスへ取りついてください。ナデシコも前進!」
「了解。」
火星宙域
「みんな、これより敵部隊を突破しタケミカヅチ、そしてフォボスへ向かうよ。」
「わかってるっつ〜の、あれぐらいでナデシコを止められると思うなよ。」
アカツキとサブが声を掛け合い、全機が前に見える光に向かっていく。
「積尸気にステルンクーゲル、エステバリスにジンタイプ・・・どうやら有人兵器の出番みたいだな。」
シンが呟く中、アキトは敵機の中に不知火の姿を捜していた。
「(どこだ、どこにいる。)」
と、突如コクピット内にアラームが鳴り、上空を示す。
「上!?」
ミサイルが飛び込んでくる。
「ちぃ!」
巨体を反転させミサイルをかわす。
そして撃ってきた機動兵器に向き直る。
「北辰。」
赤い機動兵器、不知火が錫杖を持ち、悠然と立っていた。
「遅かりし復讐人・・・いや、今は違うか。」
通信を送ってきた北辰に、アキトはメットを外し強い意志の瞳を向ける。
「ああ、俺はもう迷わない。ナデシコを守るために、俺は戦う!」
そして、他の機体にも通信を送る。
「みんな、ここは俺がやる。先に行ってくれ。」
「アキト・・・分ったぜ、おめえの勝負だもんな。だがな、また負けたら承知しねえからな!」
リョーコのウインドウが閉じ、他のみんながアキトに声援を送り閉じていく。
だが、そこにシンのウインドウだけが残っていた。
「アキトさん、あの時の俺の言葉、覚えていますか?」
「ああ、忘れないさ。」
「じゃあ言うことはありません。信じていますよ。」
シンは右手の親指を立て、頷く。
「おう!」
そうして全機はナデシコを守るように付き添いながら敵部隊に向かっていく。
その間、不知火は動かなかった。会話が終わるのを待っていてくれたのか・・・
「話は済んだか?」
「ああ・・・勝負だ、北辰!」
「ふっ・・・決着をつけよう。」
北辰は機体に圧倒的な大きさがありながらも、不敵に、楽しそうに笑っている。
アキトもあの時とは違う、瞳が強く光っていた。
かつてシンが言ったことを忘れてはいない。今の自分はナデシコの一員であり、守るべき者達のために戦うと。
七年前とは、お互いとも違っていた。
そしてゼラニウムと不知火の間で吹き飛んできた積尸気が爆発する。
それを合図に、二機が動いた。
アキトと別れたシン達は、機動兵器や戦艦と戦闘に入っていた。
「はああああ!」
ダイゼンガーが斬艦刀・村正を振るい、カトンボや駆逐艦、リアトリスや木連の戦艦を斬り捨てていく。
フィールドを張ろうが村正、そしてタカヤの技量の前では紙切れ同然だった。
その間を他の四機、そしてナデシコDが突っ切っていく。
今の彼らの前では旧式の機動兵器では止められるはずもない。
前に立ち塞がったマジンがグラビティブラストを放とうとするが、サルビアが背部のツインガトリングレールカノンを構え、撃ちまくる。
あっという間にマジンはスクラップとなり、ステルンクーゲルやバッタなどもHi−νガンダムやトールギス、アンスリウムの前では
障害にもならなかった。しかし、
「ユリカ、未確認機動兵器が接近。」
「識別は?」
「・・・判明、不知火と六道を六機確認。」
「まさか、不知火は今アキトさんと戦っているのはずです!?」
「でも間違いない。モニターに視認可能。」
フォボス方面から向かってくるその姿は、まぎれもなく不知火の姿だった。
「ユリカさん、敵機より通信。」
「・・・繋いでください。」
「了解。」
そして映し出されたのは、
「久しぶりだな、ナデシコの諸君。」
「南雲、義政。」
そう、かつてナデシコと死闘を繰り広げた夜天光のパイロット、南雲義政だった。
「私がいることが不思議かね?」
「いえ、考えればあなたも火星の後継者の一員でしたしね。」
ルリがジッとウインドウを見る。
「そう、草壁閣下が再び立ち上がり、私も新たなる秩序、偉大なる意志の遂行のため立ち上がったのだ。」
その気迫は、あの時以上であった。
「そしてもう一つ、私は決着をつけにきたのだ。あの艦長がいないのは残念だが、私も待っていたのだ。
君たちが来るのを・・・ナデシコよ、私は帰ってきたぞ!!」
「・・・もうやめてください、こんなことをして何になるのですか?」
「ホシノ、いや今はテンカワでしたか。我々は七年前からの因縁があるのです。全てに決着をつけるためにも。」
「・・・」
「あの艦長は私と正々堂々と戦った、だが私も武人としての誇りがある。全ては新たなる秩序、新たなる世界のために!」
その瞳は狂ってなどいない、自分の誇りとともにあった。ならば自分たちも迷うことはない。
「ユリカさん。」
「うん・・・全機、攻撃開始!」
「いざ勝負、ナデシコD!!」
ナデシコと別れたアキトは身体を押し付けるGのなか、必死にゼラニウムを制御していた。
北辰も今度は全力らしく、マドラスの時とは動きが段違いだ。
これが不知火の本当の性能なのかと、アキトはかみしめていた。
ゼラニウムは右のギミックアームを伸ばし、バズーカを取り出す。
「くっ!」
放たれたバズーカの弾丸が不知火へ向かうが、
「斬。」
不知火は錫杖で斬り払いをしたのだ。恐るべき技術、機体の性能である。
弾かれた弾丸はそばのデブリに飛んでいく。
「なら!」
左のギミックアームを伸ばし、グラビティライフルを取り出す。
そのまま流れるような動作で射撃を行った。しかし、
「ふっ。」
「何!?」
錫杖を持つ右手が手首から回転し、グラビティライフルを防いでいたのだ。
あの錫杖もフィールドを纏っているためできないことはないが、常人にはできない芸当である。
そしてお返しとばかりにミサイルが脚部より放たれる。
「ちい!」
ゼラニウムはフィールドを展開しながら高速で疾走するが、何発かのミサイルはかわしきれず被弾する。
その中の一発がフィールドを抜け、オーキスの左後部に命中する。
「(ブースターに喰らったか。)強制排除!」
左の大型ブースターが外れ、爆発する。
「落ちろ!」
モニターに不知火をロックし、そのまま両サイドのウエポンコンテナから二つの大型集束ミサイルのラックが射出され六基のミサイルが不知火へ向かう。
そのまま続けてマイクロミサイルが入ったコンテナが一基飛び出し、108個のマイクロミサイルが飛んでいく。
しかし不知火は動じず、ひきつけそこで腹部のグラビティブラストを放つ。
ミサイルが誘爆し、その姿が一瞬見えなくなった。
アキトはモニターに視線を集めていたが、反応がない。
「(仕留めた・・・?まさか、これで??)」
北辰の実力はアキトが一番よく知っていた。こんなミサイルごときで倒せる男ではないことを。
「どこだ・・・」
爆炎が消えていく。と、
レーダーに反応がでる。それは、ゼラニウムの真下だった。
「!?」
「滅。」
錫杖が突きあげられる。
ゼラニウムは回避を行うが、巨体が災いし左のウエポンコンテナを貫かれてしまう。
「くっ。」
「さすが、よくぞかわした。」
そのまま右足の甲に仕込まれたビームサーベルが伸びる。
「そんなもん!」
ゼラニウムもライフルを捨て、左手で右肩から突き出されるビームサーベルをつかみ斬りはらう。
二機はスパークとともに距離を開けた。
「いけ!」
アキトが叫び、グリップを握っていた右手が引き金を引く。
メガグラビティブラストが撃ち放たれた。
しかし不知火はあざ笑うかのように肩部のノズルを使い回転しながら避ける。
その間脚部ミサイルを撃ってきた。
「くそ!」
ゼラニウムは頭部バルカンで防ぐが間に合わない。
「だめか。」
オーキスから分離し、不知火へ向かう。
ミサイルの一基がオーキスへ直撃する。が、オーキスは何とか無事のようだ。しかし下にある二本の柄は一本になってしまった。
「うおおお!!」
「ふん!」
錫杖とビームサーベルがぶつかり合う。
そしてすぐに離れる。
交差する赤と白。二つが高速で動き、互いの息の根を止めようとする。
「そう、これだ。」
「何?」
「我が望んだテンカワ・アキトの姿だ。この力こそ、我が待ち望んでいたもの。」
なおも錫杖を突き、斬りつけてくる。
「我が相手にふさわしき強者、それが貴様だ!」
頭部バルカンが撃たれるが、不知火のフィールドに弾かれていく。
不知火は錫杖を腰裏に留め、急接近から両拳でゼラニウムを殴りつける。
かつての戦いのように、アキトの機体が殴られながら後退していく。
「どうした、貴様の力はそんなものなのか?」
「!?」
北辰の目が細められ、不敵に笑う。
「そのようでは、女の前で再び死ぬだろうな。」
「・・・くっ!」
ゼラニウムは不知火の右拳を左手で受け流し、その背を蹴りつける。
「我が不知火に追いつくか、テンカワ・アキト。」
「まだだ!」
ナデシコDの方でも、熾烈な戦いが繰り広げられていた。
「ええいくそっ!一体どれだけの敵がいやがるんだ!!」
リョーコの愚痴はもっともと言える。
火星の後継者がありったけの戦力を投入しているようだ。
「何機いやがるんだよ!シンは、タカヤとサブはどうなんだ!?」
「三人とも苦戦してるよ。でも僕たちもナデシコも人のこと言えないけど、ね!」
完全にパーティーを分断されていた。
リョーコはアカツキとともにいたが、ナデシコからだいぶ離されていた。
倒しても倒しても群がってくる敵機動兵器や無人機に、苦戦しているのだ。
「ちっくしょー!」
ナデシコDのすぐ目の前で、シンが単騎で南雲と戦っている。
サブとタカヤは六機の六道とナデシコDに来る敵の相手で精一杯なのだ。
「フィン・ファンネル!」
シンが念じると共にフィン・ファンネルが自在に飛び交う。
「甘い!」
しかし南雲はそれをかわしきっているのだ。メガ粒子をかわしフィールドアタックを敢行してくる。
「くっ、あんたは一体なんなんだ!」
シンは気圧されていた、この漢の凄まじいプレッシャーに。
普通の人間では出せないような、そう・・・執念というもの。
「我らのこの想い、今度こそこの宇宙に!」
だがシンは、その感情に覚えがあった。
「あんたは・・・あんたもセレスと同じだ!」
その言葉に反応した南雲が言い返す。
「私をあの小娘といっしょにするな!」
「同じだ、あんたも結局は争いで物事を解決しようとする。自分たちだけのことを考えてな!!」
互いの得物でぶつかり合う中、シンは強く叫んだ。
「戦争を起こして、新たなる秩序とやらを人に押し付けて!」
「これは正義の戦いなのだ、腐敗した新地球連合に手を貸す貴様が言えることか!」
「それがどれだけの血を流すことか分かっていないんだ、命が失われていくのは、とても悲しいことなんだよ!!」
その言葉に、南雲はひるんだ。かつての戦いで、自分をかばって死んだ者たちが思い浮かんでいく。
しかし、彼もそれを理解していた。
「そんなことは百も承知。だからこそ私は義によって立っている。私に託して散って逝った者達のためにも、負けるわけにはいかんのだ!!」
「この・・・わからずやが!」
ナデシコDの周囲に敵が迫ってくる。
「ラピス、フィールドは?」
「現在出力75%、でもいつまでももたない。」
「サブちゃんとタカヤ君は?」
「苦戦しています。でも数はあと少しです。」
「提督、どうするの!?」
ミナトの焦りを含んだ声がユリカに聞こえる。
「二人を援護できるかい?」
「後退しながらミサイルを撃つことならできる。」
ジュンの言葉にラピスが返した。
「ユリカ。」
「それしかないね、ミナトさん。」
「了解。」
ナデシコDは一時後退を始めた。
それに追いすがろうとする敵をダイゼンガーとサルビアが排除する。
ラピスが敵機動兵器をロックした。
「フィールド解除、全ミサイル、てえ−!」
ナデシコから二十基のミサイルが敵集団へと向かう。
そして、ミサイルが突如左右に別れたのだ。そこから分散されたのは、ゼラニウムが持つマイクロミサイルに近かった。
「これが新しい拡散ミサイル・・・すごい。」
それは敵集団を逃すことなく追い、着弾する。
「ナイス援護だ!」
「サブロウタさん!」
サルビアが全武装を、ダイゼンガーが腹部を向ける。
「全武装フルオープン!」
「ファイナルブラスター!」
ミサイルとレールカノン、そしてグラビティブラストが残存していた敵達に突き刺さった。
そして爆発のあと、何も残っていなかった。
いや、六機の六道がまだ残っていた。
「へっ、やっぱ残っていたか。」
サルビアは撃ち終わったパックを排除する。
「人形なんかに負けるかよ!」
と、そこにアンスリウムとトールギスが戻って来た。
「待たせた。」
「遅れてすまない。」
「おっしゃ、行くぜ!」
四機は六道達に向かう。
「はあ!」
ダイゼンガーが村正を振るい、六機を分散させる。
と、そこにアンスリウムが一機の六道に接近する。その両手には持っているのはメガビームサーベルではない。
アンスリウムが右腕を振り上げる。六道は錫杖で防ぐ態勢になったが、
「無駄だぜ!」
その右手の柄から飛び出した、グラビティナイフが錫杖のフィールドを切り裂く。
そして左手のグラビティナイフが六道の中心に突き刺さり、六道は機能を停止した。
「さすがウリバタケ、いい仕事してるぜ。」
そして他の五機も各機との連携であっという間に倒される。
「片付いたな。」
「ああ・・・シン!?」
タカヤが見た方向にあるのは、南雲の駆る不知火に攻撃されるHi−νガンダムの姿。
「くっ!?」
「はあ!」
南雲が放つ覇気、それがシンに伝わり続ける。
「(何てプレッシャーだ、これが人の執念って奴か。)」
錫杖が幾度となく振られる。それをギリギリで受け流し、回避し続けている。
「シン!」
「タカヤか。」
Hi−νガンダムの後方にタカヤ達がついた。
「俺達もやってやるぜ!」
「シン待ってろよ、すぐに」
「来るな!!」
シンがサブロウタの言葉を遮り叫ぶ。
「!?」×4
援護に入ろうとした四機が動きを止める。
「これは俺の戦いだ、タイマンに入ってくるな!」
「お、おいシン君。それは・・・」
Hi−νガンダムは不知火を蹴り飛ばし一旦さがる。
「アカツキさん、あいつは俺と正々堂々と戦ってる。なら俺もそれに答えるしかないんですよ。」
「しかしねえ。」
「アカツキさん、行きましょう。」
「タカヤ君?」
タカヤがシンの言葉に同意したのだ。
「あいつが言うならそうさせてやりましょう。大丈夫ですよ。」
「・・・そうかい。」
「シン、分ってるな!」
「ああ!」
それだけ言い、タカヤはリョーコ達と共にナデシコを引き連れフォボスへ向かって行った。
「・・・いい仲間を持っているな。」
「俺の、最高の友さ。」
通信を聞いていた南雲は、動かずこっちを見ていたのだ。
「おそらくこれが私の最後の戦いとなる。それが君のような男が相手とはな、私は幸せかもしれん。」
「・・・」
「さあ、決着をつけようではないか。白銀の悪魔よ!」
「行くぞ!」
二機は同時に駆けた。
接近、そして互いの得物がぶつかり、ビームサーベルと錫杖が押し合う。
Hi−νガンダムが頭部バルカンを至近距離で放った。
この距離ではかわすこともできず、不知火はメインカメラに被弾したようだ。
「おのれ!」
不知火の右足の甲からビームサーベルが飛び出し、Hi−νガンダムの右腕を斬りおとした。
シンは機体を離しながら念じる。
「フィン・ファンネルなら・・・決める!」
背部のファンネル・ラックから全てのフィン・ファンネルが飛び出し、ビームを放つ。
「これしきで!」
不知火は全てのノズル、バーニアを駆使しかわしていくが、目の前にきたビームをかわした瞬間Hi−νガンダムを見失ってしまった。
「・・・何!?」
「うおお!!」
Hi−νガンダムが下から猛スピードで突っ込んでくる。
「落ちよ!」
不知火は錫杖を持った右手を回転させ投擲する。
が、シンはそれをよけようとはせず錫杖が右肩に突き刺さった。
「これで・・・終わりだー!!」
左手のバズーカを放つ。
不知火はフィールドを纏うが弾丸によって消されてしまった。
そこにバズーカを捨てたHi−νガンダムが飛び込み、不知火のコクピット部に左腕のシールドを突きさす。
それは、数瞬の出来事だった。
不知火のコクピット部からスパークが起きる。
「・・・私の負け、か。」
下半身が完全に潰され、南雲は血を吐きながら認める。
自分が敗北したことを。
「はあ、はあ、はあ。」
「噂に違わぬ強さ・・・私の出会った中で、君は最強だ。」
「・・・」
「もう二度と会えないことは悲しいな・・・さらばだ、白銀の悪魔よ。」
Hi−νガンダムが下がり、不知火は爆発し消えていった。
「あんたも、強かったぜ。南雲義政。」
シンはそう呟き、ナデシコの後を追った。
一つの決着がついたとき、この二人の戦いも終局を迎えようとしていた。
ゼラニウムと不知火が互いのフィールドで押し合っている。
「はあ!!」
「滅せよ!!」
お互い武器を使わず素手で戦っていた。
そしてゼラニウムの一撃が不知火の腹部に当たる。
「!?」
それは砲門を潰し、その影響がフィールドを失わせたようだ。
だがその隙に不知火の膝蹴りがお返しとばかりにゼラニウムの腹部に叩きこまれた。
「ぐう!?」
凄まじい衝撃がアキトを襲い、二機は離れた。
そしてゼラニウムはビームサーベルを、不知火は錫杖を手に持つ。
空気がない真空の世界のはずが、緊張に高まっていくのを二人は感じていた。
そう、次が最後だと。
「・・・七年か。」
「ああ・・・」
「貴様は我を追い、そして追いついた。」
「・・・」
二機が駆ける。
お互いの得物を振り払う。
閃光とともに駆け抜け、交差した瞬間ゼラニウムのビームサーベルが弾かれる。
だがアキトは拳にフィールドを纏わせ再び向かう。
「我も軍人、故に命令は絶対なのだ。」
その中、北辰は言葉を発していた。
「そして!」
錫杖と右拳が交差する。
残ったのは・・・
「・・・見事だ、テンカワアキトよ。」
錫杖はゼラニウムの左肩に刺さり、右拳が弱体化したフィールドを押し破りコクピット部に届いた。
「北辰、お前。」
「すまなかった・・・汝を修羅にしたこと・・・」
「!?」
北辰は口から血を流し、目を閉じながらアキトに言う。
「我が永遠の好敵手よ、最期に貴様と戦えたことを誇りに思おう。」
「なん、だと。」
「我は、先に逝っておるぞ。」
「・・・」
「さらばだ、テンカワ・アキトよ。」
不知火からスパークが大量に発生し、ゼラニウムは後方にさがる。
そして、閃光とともに不知火は消滅した。
「北辰・・・くそ!!」
アキトの叫びが、コクピット内に響いた。
フォボス
「ん?」
二つの生命反応が消えたことで、線が平行線を描いていた。
「北辰君も南雲君を討たれたのかい?さすがだねえ。」
山崎は何故か嬉しそうに笑う。
「さて、いよいよ君たちの出番だよ。」
後ろを振り向き、三人の少女たちがヘルメットをかぶる。
と、部屋に多くのウインドウが表示され、全身にナノマシンの活性化の反応が見られる。
「さ〜て、これはどうかな?」
ナデシコD
「これよりフォボス領域に入ります。」
「ラピス、みんなは?」
「全機無事。でもかなり消費してる。」
「急がないとね、ユリカ。」
「うん。ラピス、ハイパーグラビティブラストスタンバイ!」
「了解。」
ユリカの指示にラピスが答える。
「目標、タケミカヅチ。」
ナデシコが射撃準備に入る。
「発射!」
その声とともにナデシコから放たれた漆黒の閃光がタケミカヅチを襲おうとした。が、
「え!?」
当たる直前に何かに受けられた。
見ると、コロニーを包むように浮いている物があった。
それが強力なフィールドを展開しているのが見えたのだ。
「そんな・・・」
ジュンの茫然とした声が響く。
「多重、ディストーションフィールド。」
かつて戦ったことのあるクリムゾン戦艦、それに使用されていたビットの大型化したものが浮遊していたのだ。
そして六道達は、錫杖を振るいこちらに向かってきた。
「敵六道の数、十二機。」
「フィールド展開。各機に迎撃を。」
「ミナトさん、ナデシコを後退させてください。」
「分ったわ。」
そしてナデシコは後退し、タカヤ達が前に出た。
「くそ、まさかナデシコの砲撃をも防ぐなんて。」
タカヤの愚痴も束の間、六道達が襲いかかる。
「けっ、パターン読めりゃこんな相手。」
そして今までと同じように相手を崩し各個撃破をしようとした。
しかし、六道達はおかしかった。組んで行動をしていたと思ったら急に散開し、様々なパターンを使ってきたのだ。
「な、何だよこれは!?」
それはまるで人間が操ってるように動いていたのだ。
「パ、パターンが読めない。」
アカツキの焦りに似た声が響く。
フォボス ???
ヤマサキが満足そうにその光景を見ていた。
「ふっふっふ、フォーメーションを取ろうとしても無駄だよ。そうすると君たちは強いからねえ。」
そして三人の少女たちを見る。
「ゼロシステムを応用した、MD式命令システム。」
周りを見渡しながら呟く。
「戦いの意識が、MD達を動かすんだよねえ。しかもこの子たちなら、その倍以上に発揮できる。」
子供のような笑顔でヤマサキは言う。
「さあ、どうするのかな?ナデシコの諸君は??」
ナデシコD ブリッジ
ナデシコのブリッジでは、四機が押されていることに驚いていた。
「何でみんな押されてるの?」
ユリカの疑問はもっともだった。
最初は慣れない動きに戸惑っていたが、最後は動きを読み倒して相手だったのだ。
だがその中、ルリは冷静に状況を分析し、一つの仮説を出した。
「(これは・・・誰かが、命令を変更している?)」
次々と動きのパターンを変えるのは、いくらMDでも不可能だった。
とすれば、人為的に動きの命令を変更している者がいるはずである。
「(その先を見つければ。)」
ルリは決断し、ユリカに言う。
「ユリカさん、敵MDのシステムをダウンさせるためにはハッキングしかありません。これは誰かが指示しています。そこを叩きます。」
「えっ、本当に?」
「はい、恐らく誰かが指示を出しています。」
「・・・いけるの?ルリちゃん。」
その問に、ルリは頬笑みを返す。
「伊達に電子の妖精とは呼ばれていませんから。」
「そうだったね、じゃあお願い。」
「わかりました、ラピス。」
「うん、ナデシコは任せて。」
その言葉にコクリと頷き、ルリの周囲にウインドウボールが展開される。
「よろしくね、オモイカネ。」
「これより、敵システムへのハッキングを開始します。」
ルリは電脳世界へとダイブした。
「・・・どこに。」
電脳世界の中に入ったルリは、六道達の裏、いや奥の世界に入り込んでいった。
「MDの先に誰かがいる?」
それはフォボスのどこかにつながっているようだ。
「・・・」
そしてたどり着いた場所、そこにはかなりのプロテクトがかかっていた。
「これは、厄介ですね。」
ルリは呟き、プロテクト解除を実行し始めた。
だが、それは当然向こうにも気付かれていた。
「ん、これは・・・妖精の仕業かな?」
ヤマサキは自分と彼女達の仕込んだプロテクトに攻撃を受けている情報を受け取ったのだ。
紫の髪の少女が一瞬こっちを見、別のウインドウをヤマサキに送る。
「(まあいいかな、対抗システム作動っと。)」
順調にプロテクトを解除していたルリだが、突如何かの攻撃を受けた。
「きゃっ!?」
突如攻撃を受けたのだ。
「(しまった、防衛プログラム!?)」
そして、再び光弾がルリに向かう。
それは、ブリッジクルーも気付いていた。
「ルリちゃん!?」
ルリが悲鳴を上げ、身体を震わしていた。
「・・・ルリが攻撃を受けてる。信じられない。」
ラピスがその解析をし、驚いていた。
「ユリカ、私もルリの援護に行く。」
「えっ。」
「ルリが危ない。」
それだけ言い、ラピスもウインドウを展開し電脳世界へダイブしてしまった。
「・・・私達も危ないのに。」
ユリカの言葉に全員が凍りつき、必死に操作を開始した。
一方戦場では、四機が押されい危険な状態だった。
「ちょこまかしやがって!」
ダイゼンガーが村正を振るうが、かすりもしない。
「こいつら・・・なめんじゃねえー!!」
しかしその咆哮は錫杖の連続攻撃に消される。
巨体故に集中攻撃を受けているダイゼンガーに、リョーコ達も援護に行けない状態だったのだ。しかし、
「てめえら、失せろ!」
声とともにそこに割って入るようにビームが縦横無尽にかける。
そう、Hi−νガンダムのフィン・ファンネルの姿があった。
「シ、シン・・・」
全身をボロボロにされたダイゼンガーが、鈍い動きで前に降りたHi−νガンダムを見る。
「タカヤ、無事か!?」
「ああ、まだいける。だが・・・ちょっと拙いかな。」
「ここは任せな。」
「お前も右腕ねえじゃんかよ。」
「ああ。」
そうして向かってくる六道を見る。
「でもな・・・親友の危機に泣きごと言ってられるかよ!」
ビームサーベルを左手に持ち、突撃していく。
そのころ、ラピスはルリの傍までたどり着き、援護を始めた。
「ルリ、ここは私が受けるから早く。」
「ラピス・・・お願いします。」
そしてルリは自分の作業を開始し、少しづつプロテクトを解除していく。
「ルリ、急いで。」
ラピスが予想以上の攻撃に耐えながら必死に防いでいる。
「あと少しです・・・解除完了。」
そして突如光があふれ、二人は奇妙な空間に入った。
そこには、フルフェイスのヘルメットのような物をかぶった人影が三つあった。
「あなたは、誰?」
ルリはこっちを見ている人影に問いかける。
「テンカワルリ・・・電子の妖精。」
真ん中にいる一番年上らしい人影がしゃべった。
「あなたは?」
「・・・」
だが、その三人の姿が消え、部屋にはMDシステムの中枢だけが残されていた。
「あの三人は、一体何?」
ラピスが問う言葉に、ルリは返さなかった。
フォボス
「おや、どうしたんだい?」
突如作業をやめた三人にヤマサキは尋ねる。
「侵入を許したから、やめた。」
紫の髪の少女が答える。
「そうかい・・・なら、予定どおりにいこうか。」
ヤマサキは後ろに控えている少年に目配せし、部屋を出て行った。
そのころ草壁のいる司令室では、タケミカヅチのことを話していた。
「エネルギーはどうか?」
「後数分で完了します。」
草壁の後方にいる通信士が返答する。
「(今のままならナデシコは動けまい。)」
草壁はこの戦いに勝ったと思っていた。ヤマサキの思惑を知らずに・・・
戦場ではシンが斬りかかろうとしていた一体の、いや全ての六道が突如動きを止め、自爆していったのだ。
「な、何でだ?」
「・・・ルリ君がやったんじゃないかい。」
アカツキの言葉に、リョーコはナデシコへ通信をする。
「ナデシコ、何やったんだ?」
「リョーコちゃん、ルリちゃんとラピスがMDシステムを破壊してくれたんだよ。」
ユリカの言葉にリョーコは頷く。
「わかった、じゃあ残るは。」
と、五機のすぐ上を白い巨体が通って行った。
「アキト!?」
オーキスを再び装着したゼラニウムが、もてるスピードを駆使しタケミカヅチへ向かっていく。
そして、タカヤの乗るダイゼンガーも追うように駆けていく。
「タカヤ!?」
アキトはタケミカヅチのエネルギー増大に気付いていた。
コロニーを中心に光が生まれようとしている。
だが、あの巨大なコロニーを落とすには一つしか思い浮かばなかった。
グラビティブラストでは全ては破壊できない。ならば・・・
たたっ斬るしかない、と。
そのために自分だけでは力不足だった。そのために、タカヤに通信を送っておいたのだ。
「タカヤ君、行くぞ!」
「了解!」
二機は持てる力全てを剣に込め、フィールドに突撃する。
「うおおおー!!」
「貫けー!!」
メガグラビティブレード、斬艦刀・村正の剣先がフィールドにぶち当たる。
そして激しいフィールドの揺れが起こり、二機の四つある小型相転移エンジンが悲鳴を起こし始める。
「「行けーーー!!!」」
二人の気合の一声とともに、耐えていたビットが爆発しフィールドが消滅した。
そのまま二機は左右に分かれ、コロニーの外側につく。
そして互いの剣を向きあうようにし、何とコロニーを斬りながら進んでいくのだ。
二機の巨大な剣が外壁を切り裂きながら進み、二機は終点部分で交差するように振り切った。
二機が通り過ぎた後、チャージをしていたエネルギーが暴走を起こし、小規模な爆発を繰り返し、
そしてコロニー全てを巻き込んだ大爆発を起こした。
「ユリカ!」
アキトはナデシコに通信で叫んだ。
フォボス
「ば、馬鹿な・・・」
司令室で草壁は茫然としていた。MD達の自爆、そしてあのタケミカヅチを破壊されたことに。
「敵大型機動兵器二機、来ます!」
その通信の通り、ゼラニウムとダイゼンガーが剣を振り上げ迫っていた。
無人機の足止めも効果なく、二機はフルパワーの剣でフィールドを切り裂く。
「後方にナデシコ」
その通信士が言う前に、ナデシコから、ゼラニウムから発射されていた大量のミサイルが、フォボスに突き刺さっていた。
その爆発が司令室まで襲い、草壁以外の兵士は爆風にやられてしまった。
「くっ。」
顔にくる熱気を振り払うように腕を振るったが、自分以外の兵士全ては息絶えていた。
「・・・我らの、負けか。」
奇しくも生き残っていたモニターに、ナデシコと他の機動兵器の姿が見える。
「ナデシコ、因縁もここまでくるとな。」
「ええ、本当にそのとおりです。」
と、後ろから声が聞こえてきた。
「ヤ、ヤマサキ・・・」
そこには、薄笑いを浮かべたヤマサキが立っていた。
「ナデシコ、またしても邪魔をされましたね。」
「戯言はいい。なぜMDを自爆させたのだ?」
「・・・ふふふ、あははははは。」
ヤマサキは顔を手で覆い、笑い始めたのだ。
「何がおかしい!」
草壁は激昂し、ヤマサキを睨みつける。
「いえ、ただ電子の妖精に侵入を許してしまったので、正体を知られたくなかったんですよ。」
「何・・・?」
「もっとも、あなたに言うことはもう何もありませんがね。」
「どういう」
パンッ 一発の乾いた音が司令室に響く。
草壁は己の血に染まる胸を見、ヤマサキの後ろにいた銃を持つ少年を見た。
「な、何故だ・・・」
「舞台はここで閉幕ですよ、草壁さん。」
ヤマサキはにっこり笑い、クルリと踵を返す。
「さようならです、閣下。」
草壁の最期に見た光景は、ドアから出て行く二人の後姿、そして赤い炎だった。
「ではさっさと「揺り籠」に行こうか。」
そして、五人の姿が消えた。
ナデシコは、炎に爆発が起こるフォボスを見ながら通信を送り続けていたが、返信はなかった。
「スキャン完了。ユリカ、やっぱり生命反応なし。」
「そう・・・わかったよ、ラピス。」
爆発を繰り返すフォボスを見ながら、ユリカは各機体に告げる。
「全機、生存者の救出を第一にお願いします。その後、ナデシコはルナツーへ帰還します。」
つらそうな顔でユリカは告げた。
こうして火星の後継者との長い戦いは終止符を打った。
だが、ナデシコクルーはまだ安心をしていない。
まだ彼らを待ち受ける最強の敵、ネオ・ジオンとの戦いが残っているのだから・・・
次回予告
ついに火星の後継者との戦いに終止符を打ったナデシコ。
しかしそのダメージは大きく、クルーは疲れていた。
ルナツーへ戻ったナデシコは、ネオ・ジオンとの決戦に全てをかける決意をする。
その中、必勝の策を持つ者達がナデシコへ訪れた。
だがその時軍、地球圏へ向けてセレス・ダイクンの演説が飛び込んでくる。
そして、アクシズの進路は地球へと向けられた。
スーパーロボット大戦α 〜Future Story〜
第二十話「決戦前夜」
セレス「この宿命に決着をつけるわ。」
シン「アムロ・レイは、何を思って戦っていたんだろうな。」
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