無限航路−InfiniteSpace−
星海の飛蹟
作者:出之
第七話
惑星「ラッツィオ」。
艦は手酷くやられたが、人的損害は皆無だった。
艦そのものも、基部に達する程の損害は与えられていない。
幸いにも、という表現は当たらないだろう。
もう一撃で確実に沈んでいた。
巡航艦で護衛艦を、軽ーく一撫でしてやった、というところだろうが。
“ぐる”なんじゃねえの、あいつら。
顔を真っ赤にしてトーロが息巻く。
いい処無し、一方的に叩かれ砲撃屋のプライド真っ二つ。
私怨含みの恨み言とはいえ頷ける部分もないではない。
例えば軍の活動が低調である説明にはなる。
とはいえ、中央から来た軍人がその争乱相手にあっさり籠絡される図も描き難い。
「パーチ」店内。
珍しく女将と、ウェイトレスの女の子二人で仕切っている。
あれ。ティータ。ティータじゃね。
すみません、失礼ですが……。
「俺だよおれ、トーロだよ、トーロ・アダ!」
「え……トーロ。トーロ?!やだうそ」
「ホントだって!」
どうやら目出度くも旧友と再会を果たしたらしい。広い星海、どこに縁が転がっているやら判らない。二人、それなりに盛り上がっている。
ふう。
眺めて、ユーリは一つ息をついた。
報復は、予測していた。
なのにあんな、完璧な奇襲を喰らっちゃダメじゃないか。
「まあ地の利、戦力、総て上の相手だったからなあ……」
背もたれを鳴らしてそり返る。
「そうだね」
トスカも強く責めない。
「上には上が居るんだよ。それを知るのは悪くない」
「艦を沈めるところでした」
いや実質、既に沈んでいた。
今度はカウンターに突っ伏す。
指でのの字を書きながら。
「お目こぼし……ていうのもヘン、ですよね」
警告も何も、沈めてしまえば世話はない。
「何かの事情、かもね」
事情ですか。
何だろ。
まだ材料が足りないけど。
役者は揃った、感じかな。
行ってみるかい。軍人サンとこへ
どちらでも、という響きのトスカの問い。
そうですね。
首を傾げながらユーリも、内心は決まっていた。
「え、あの野郎のとこに行くのかよ」
「あ、あの、軍の基地に行かれるんですか」
え?。
話出たティータに視線が集まる。
「すみません、兄が……戦域軍に勤務しているんですけど、最近、全く連絡が取れなくて……基地に問い合わせても全然何も……」
さき程までの晴れやかな顔が一転、悲哀に塗りつぶされた。
そうだったのか、とトーロ。
「おい、いいだろユーリ」
「ああいいけど、ゲートをくぐれるかは」
「そのぐらい巧くやれよ!」
「ど、努力はするよ」
えらい剣幕のトーロだった。
「だとよ、ティータ」
「あ、ありがとうございます、艦長」
濡れた瞳でユーリを見る彼女。
あれ、俺じゃねえの。肩を落とすトーロ。
と。
「えーと。彼女を預かりますが。宜しいのでしょうか」
女将はひらひらと手を振る。
「兄貴が心配だってんだろ。もちろんだよ。気にしないで行っといで」
「すみません、お世話掛けます!」
殊勝に頭を垂れるティータ。
準備もあることだろうし、出航時に合流することにし一度分かれた。
この星に来た本来の目的地に向かう。
「ザ・パーチ」とは別途、人材バンク、斡旋を営む「ギルド」。
その情報を元に訪ねてみたのだが……。
指揮官たるもの、その実績を以て才能を示して戴かねば。
顔を洗って出直してきな!ガキが。
何というか、散々でした。ぷしゅー。
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