−ピグマリオ−
ジャック&ベティの大冒険!
作者:出之
1.
これは、神から与えられた罰なのか。
或いは、呪いか。
一歩歩を進める毎に、足元に激痛が走る。
その感覚も直ぐに麻痺した。
逡巡は、いとも易く死を招き寄せる。
それが判るから。
小刻みに震えつつ。
互いにしっかりと抱き合いながら二人は無言で前に進む。
風が、雪の小片が。
裸身の二人をねぶり、確実にその体力を削ぎ落としていく。
ねえ。
しばらくして、青女が口を開く。
こっちで、いいのかしら。
男は力強く頷く。
「人里の“匂い”がする。この方向で違いない」
彼女の目に、一瞬、感情の揺らめきが表れ。
消える。
今は言い争う時じゃない。
私には、もちろんそんなもの、判らない。
もう、いい。
今はこの男に。
例え、最後に、力の限り罵るとしても。
「見ろ」
不意に男が指差す。
「兆しだ」
兆し。
?。
男が駆け出した。
その足がひび割れ、血飛沫く。
もう、凍傷で両足とも切り落としてもおかしくない時点。
「狂った……」
彼女は一言、呟く。
彼方で、男が何かを振り回しながら叫ぶ。
「見ろ、これを」
こちらに向け、声を放る。
「待て、今行く」
男は何かを抱え、駆け戻って来た。
いや。
「あなた……そのかっこう」
男は、兵士か、闘士か。
何か、そうした物の扮装を身に纏っていた。
皮鎧に、防寒の毛皮。
足元も固めてある。
手にしているのも、同種の装束だった。
「お前も、着ろ、早く」
嫌も応も無かった。
彼女は夢中でそれを身に纏った。
表面は雪に塗れている。
だが、不思議と凍り付いてはいなかった。
勿論、冷たい。冷水を浴びるような辛さだ。
しかし、身に纏えば直ぐに、体温を得、体を温め始める。
判らないが、まるで。
彼、彼女と同時にこの雪原に放り出され。
こうして、見付けられるのを待っていたかの様だ。
でなければ。
こうして風雪に晒されていたなら。芯まで冷たく凍て付いているはずではないのか。
彼に連れられ、その“現場”を見る。
「ほら」
それは一種、ふしぎな光景だった。
雪原の、所々が丸く抉られ、地がその姿を覗かせている。
そこに例の、衣装があった。
そこかしこに。
まるで、このあちこちに兵や闘士が立ち。
その姿だけがかき消えてしまったかのような、そんな光景が広がっている。
「ここで」
呟くように問う。
「……何があったのかしら」
傍らで男は頭をかき。
「判らんが」
天を仰ぐ。
「これは、救いだ」
彼女を見、続ける。
「呪いだけでは無かった、いや」
男は、ゆっくりと、今は余裕をすら持って辺りを眺め。
「これは、試練なのかもしれん」
ぷっ。
「なに。こんなときに駄洒落?」
男も軽く笑い。
「何でもいいさ」
軽く手を挙げる。
「急ごう。日が落ちる前に」
押して頂けると作者の励みになりますm(__)m