くるりくるりと、歯車は回る。

青年の想いと妖精達の想いが絡み合い、物語は加速する。

青年が願わずとも、蒼き妖精との邂逅は近づく。

そして二人が再会する時、物語は新たなるステージへと移る。

再会の日は、近い――――。



灼眼のシャナ
〜闇と焔の二重奏(デュエット)〜
外典 遠き日のオモイデ
                                                                                      著・神威
第三章  再会は桜舞う木の下で


あの日、アカツキに俺の決意を話してから一月。

季節は春に移り変わり、桜の花も咲き誇る程になっていた。

俺は相変わらず残党狩りに勤しんでいる。

と言っても、前回の出撃により其の残党はほんの一握りを残すのみになっていた。

恐らく三百も居ないだろう。

エリナやプロスの進めもあって、俺は少しの休暇をとることにした。

確かに残党狩りを続けて注意力散漫になって失敗したら元も子もない。

休暇は必要ないと突っぱねていたのだが、ラピスからの頼みもあってしぶしぶ了承した。

本音なら今すぐにでもあいつ等の首を刎ねてやりたい。

しかしラピスの『お願い』を断るわけにもいかず、結局は一週間の休みをとることにした。

実は最初は二日程度で良いと言っていた。

が、考えを改めた。

この機会を使って、ラピスに色々な事を見せてやりたいと思ったからだ。

残党狩りが終わっても、俺の命がそう長く続くとは限らない。

ラピスと共に生きる決意をしたと言え、ナノマシンに蝕まれ続けるこの体は当の昔に限界に来ているのだ。

今はイネス―アイちゃん―のおかげでどうにかなってるが、この先もそうとは限らない。

だから個人的には、短期決戦でいきたかったのだが・・・・・・・・。

ただ其れだとラピスに構う事が出来ない。

結局俺は二者択一でラピスに構う事にしたのだが。

とはいえ、俺の格好が格好なだけに目立つような場所には行けない。

遊園地などもってのほかだ。

町に出ることも難しいのだから、当然といえよう。

「〜♪」

隣を歩くラピスがご機嫌に鼻歌などを歌っている。

俺の手を握りながら満面の笑みを浮かべているので、其の隣に居る俺も犯罪者に見られないから助かりものだ。

今、俺達は近場の公園を散歩気分で歩いている。

目指すは桜の大樹。
周囲からかなり奇異の目で見られているのだが、そんな事は関係ない。

今の俺に関係あるのは、ラピスが楽しめてるかどうかだ。

ラピスも不満はないようで相も変わらずニコニコ顔だ。

其れを見た俺は微かに笑みを浮かべる。

バイザー越しにしか其の笑みを見れないのが残念だ。

ふと、アイちゃんに今度一度顔を出してくれと言われたのを思い出した。

休暇のうちに訪ねておこう。

そんな事を考えながら桜並木を歩いていく。

休暇も三日が過ぎた今日は、アカツキの提案で花見をする事になっていた。

今は場所取りをしているであろうプロスの所に行く途中である。

ラピスも花見は初めてなので、とても楽しみにしていたようだ。

先程の笑みには其れも含まれていたのだろう。

ある程度歩くと一本の大樹―勿論桜の木だ―の前にでる。

この公園の目玉と言うか、そんな場所だ。

「おや、来ましたか・・・・」

そんな事を言いながら、プロスさんは軽く会釈してきた。

俺もラピスに促してから会釈をして、席に―と言ってもビニールシートにだが―座る。

ラピスは当然と言わんばかりに俺の膝の上へと。

いつもの事なので特に注意する事も無かった。

「プロス、アカツキはどうした?」

提案者が居ない事を疑問に思い、聞いてみる。

「何でもお客様を連れて来る為、少々遅れるとの事でしたが・・・・・・」

ハンカチで汗を拭きながら言う。

「で、月臣は?」

武の師である月臣もいないことに気がついた。

「念のために、と会長の護衛に」

其処で俺は思案する。

ネルガル会長であるアカツキが、直接迎えに行く程の人物とは誰なのか?

また護衛が必要だと言う事もふまえ、其の人物はかなりVIPの可能性がある。

其処まで考えて、考えても仕方ないと思い、結局其処で考えるのをやめた。

プロスと話し込んでいると、向こうの方からアカツキらしき人物が歩いてくるのが見えた。

俺はアカツキを迎えるため、ラピスをおろしてアカツキの方へと歩く。

「やぁ、おまたせ」

軽く手を上げて挨拶してくる。

「それにしても、結構時間がかかったな。一体誰を迎えに行っていたんだ?」

やはり誰を迎えに行ったのか気になるので聞いてみる。

「それは会ってからのお楽しみさ」

アカツキはそう言って後ろに居た人物を、前に出るよう促した。

そして其の人物を見た時、俺の時は止まった――――。

「ル、リちゃん・・・・」

俺の目の前には、何時か見た時と変わらない少女の姿があった。

「はい、アキトさん」

其の少女、ルリちゃんは俺を見て柔らかな笑みを浮かべてそう言う。

「どうして此処に?」

内心の動揺を、これ以上見せない為に勤めて冷静に言う。

「アカツキさんに、一緒に来たら面白いものが見れると聞いたので来ました。何かと思ったら、こういう事だったんですね」

やはり笑みを崩さずに言う。

其れを聞いた俺はアカツキをそれだけで人を殺せるのでは? と言いたくなる程強く睨みつける。

勿論他の人には解らない様に。

かなり冷や汗を流しているが、そんな事知ったことか。

先にも言ったが、今の俺なら視線だけで人を殺せそうだ。

「まぁまぁ、それより早速はじめましょう」

その場はプロスが治めて終わった。

しかし、と俺は思う。

アカツキも余計な事をしてくれた。

あいつに本音で当たったのは拙かったか? と、今更ながらに後悔する。

尤も後悔したところで遅いのだがな。

アカツキに向けていた恨みがましい視線を戻し、再びルリちゃんの方に向く。

「久しぶり、だね」

「かれこれ一ヶ月ぶりですね」

俺の言葉にそう軽く答える。

一度は、否、何度も彼女を拒んだ。

それなのに、俺はルリちゃんの姿を見るととても愛しく感じてしまう。

無論、家族としてだぞ?

アカツキ達はもう始めているようだ。

ラピスがむくれながら此方を―正確にはルリちゃんを―睨んでいる。

俺はルリちゃんを抱きしめたい気持ちを堪えながら、次の言葉を発する。

「―――行こうか」

「はい」

薄く頬を染めたルリちゃんの手を、俺は自然に掴んでいた。

二人して手を繋ぎながら歩く。

俺達の間に、穏やかな時が流れた。

「む〜っ」

皆の所に来た俺達を迎えたのは、不機嫌そうなラピスだった。

「いや、ラピス。むーって・・・・」

感情が育ってないと思ったのは俺の勘違いだったらしい。

涙目の上目で見上げる其の姿を見て、誰が感情が育ってないと言えよう。

何気に萌えてしまったのは秘密だ。

「む〜っ」

そしてそれには、流石の俺も耐え切れなかった。

「ほらほら、泣くんじゃない」

苦笑しながらルリちゃんと繋いでいた手を放し、ラピスの頭を撫ぜる。

猫のように目を細め、微笑む。

愛嬌のある其の姿に、苦笑が微笑へと変わる。

「むー」

――――今度はルリちゃんから不満の声が上がった。

「あはははははっ!」

其れを見たアカツキが腹を抱えて笑う。

ごろごろと転げまわる其の姿は、とても会長職についている人間のものとは思えない。

大体転げまわる必要は無いと思う。

と、言うかいい加減笑うのを止めろ(怒)

僅かながらに殺気を滲ませる。

傍に居たエリナ、月臣、プロス、ゴートの四人はさり気なく距離をとっている。

が、今はそんな事を気にしている暇は無い。

先ずは、アカツキを潰す。

トントン

アカツキの肩を軽く叩く。

「―――ん?」

笑うのを一旦止め、此方を向く。

「覚悟は良いか? このヤロウ」

素敵な笑顔と共に言ってやる。

「・・・・・・(汗)」

滝のように冷や汗を流しているが、知った事か。

ドゴォ!

バキッ!

メキャ。

実に生々しい音が聞こえたが、気にしないでくれ。

皆を見ると、ラピスとルリちゃんを除いた四人はこれまた滝のように汗を流している。

「さ、続けようか」

俺がそう言うと、皆は一斉に頷いた。

ピクピクと痙攣しているアカツキをほっといて、俺達は花見を再開した。






一時間が経過した。

以下、現在の状況説明。

アカツキ:回復するも、自棄酒で酔った勢いのセクハラ発言により殲滅。
     現在はただの肉塊とかしている。

エリナ:酒の飲みすぎにより性格変化。
    現在は俺の膝の上でごろごろと猫化中。

プロス:比較的まともな飲み方をして、現在は我関せずを決め込んでいるようだ。
    其の手にはお猪口があるが・・・・、しかも目が据わっているような・・・・・・・。
    気にしないように(爆)

ゴート:酒の勢いにより延々と愚痴のような物を言っている。
    それも、大樹に向かって(核爆)

ラピス:未成年の為飲酒はせず、今はオレンジジュースを飲んでいる。
    勿論座っているのは俺の膝の上。
    エリナの頭が隣にあるが、気にして無い模様。

ルリちゃん:だんだんと目が据わって来て、俺に向かって延々と説教をしている。 
       その内容はどうして帰ってきてくれない等。
       其の手に持っているオレンジ色の缶はジュースだと信じたい。



結果。

まともなのは、体内のナノマシンがアルコールを瞬時に分解してしまう為、幾ら飲んでも酔うことの無い俺とラピスのみ。

地獄絵図のような雰囲気を醸し出している為、現在俺達は更なる奇異の目で見られている。

恥ずかしい事この上ない。

だが、復讐を始めて以来はじめて、こんなのも良いかな? 等と思ってしまう俺だった。

だからだろうか?

この時俺は気がつかなかった。

何時の間にか自分が微笑んでいた事に。

ましてや、自分の復讐心といった物がこの時、ごっそりと抜け落ちていた等という事には。

                                                                                      続く


















次回予告

青年を慕う女性は、遂にそれを見つける。

其れを知った青年は、嬉しさのあまり涙する。

其れを知った蒼の妖精は己が事のように感激する。

そして、其れを知った桃の妖精は恐怖する。

―――では、青年が愛した女性はどうだろう?

青年は、これを機に女性に会いに行く。

そして青年は無くした物を再び手にすることになる。

だが、其の代償は決して小さな物ではなかった。

次回
外典 遠き日のオモイデ

第四章  取り戻した物と其の代償                           乞うご期待






















後書き

現在多忙の為、今回の後書きは次に回させて頂きます。

ご了承下さい。
                                                                           三月七日・執筆完了 神威




感想

最近気付いたのですが、私は感想を書くのがヘタクソなのではないかと思っています。

まあ、当然ですね、文章力が欠如した貴方の感想なんか、誰も見たくないはず です。

いえ、そういった意味ではなく、これが面白い! と素直にいえないというか、あーだこーだ言う割に感想の趣旨が伝えられていないというか。

そういうのを、理解力が無いと言うのでしょう。まあ、貴方の感想は駄目駄目な事は前から知っていましたが…

それを言われると辛い(汗)

でも駄目だろうと何だろうと感想をの書かない訳には行かないでしょう!?

その通りであります。

それでは行きます、今回は完全に私の回ですね♪だって、感動の再 会なんですから♪

…でも、ラピスの方が出番多いよ。

瞬間的にでも出れば私の作品です! 私の出演料は高いんですよ。

ははは…無茶言うな〜、でも今回はインパクトでもアカツキが一番って言う気もするけどね。

…そうですね、取り合えず暗殺リス トにでも入れておきましょうか。

怖っ!

それにしても神威さん、大丈夫なんでしょうか…

…さあ? 最近はゆとり教育が問題になっているくらいだし、無茶なテストは無いと思うけど。

まあ通った後 に赤い道が出来ると言われるほどレッドロードを驀進していた貴方の様なことは無いと思いますが…

ぐは!

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