新たなる鎧を纏い青年は行く。
全ての過去を、清算する為に。
さぁ終演は近い――――。
灼眼のシャナ
〜闇と焔の二重奏(デュエット)〜
外典 遠き日のオモイデ
第五章 ボクはキミにサヨナラを言う
著・神威
新たな機体・『クロノス』に慣れる為、シュミレーションにこもって早二日。
既に完璧に乗りこなすまでに至った俺は、最終決戦に向け、着々と準備を進めていた。
俺の機体が変わったのにあわせ、ユーチャリスの方にも改造を施し、ある程度の機能向上を図っている。
ラピスにも十分、色々な事を見せられたと思う。
勿論、だからと言って此れで終わらせる気は無い。
奴等と戦い、そして勝利し、新たな未来に向かって歩む。
俺は希望を持っている。
ラピスと共に歩む未来を見ている。
だから俺は負けない。
負ける訳には、いかない。
「アキト、出撃準備整ったよ」
ラピスの言葉に、思考を中断し、そして号令する。
「―――ユーチャリス、発進」
ゴォォォッ!
俺の号令の元、ユーチャリスは発進した。
奴等の居場所は既に把握している。
今回の作戦ではボソンジャンプを使用せずに目的地に向かう。
ボソンジャンプにとって、イメージとはまさに命。
『ほぼ』完璧に自分が『跳びたい』場所をイメージングしなければ、それはたちまちランダムジャンプとなる。
移動手段としてこれ以上のものは無いが、リスクが高い。
今回は万全をきっして望まなければならないので、リスクが高くなるのは好ましくない。
此れが何時もの掃討戦ならば問題ないのだがな・・・・。
今回は生憎と最終決戦だ。
此れを勝てば俺の復讐は終わり。
負ければ今までの事全てが無駄に。
今までの戦いもそうだったが、今回のは比が違う。
お互いの存亡をかけた戦いなのだ。
其れはあちらさんも承知済みだろう。
そんな事を思考しているうちに、目的地に到着。
『接近!』
『目標を視認で確認!!』
等のウィンドウが回る。
ユーチャリスに搭載されているAIの『オモイカネ´』通称ダッシュの仕業だ。
ブリッジをラピスに任せ、格納庫へ急ぐ。
使うのは最初で最後になるであろう、クロノスのもとへ。
サレナに指示を出してハッチオープン。
そのままコックピットに乗り込む。
「さぁ、行こうか―――」
ユーチャリスから発進し、戦場に躍り出る。
ハンドカノンを連射しながら敵を掃討する。
ズガガガガッッ!
数が多い為、面白いように当たっていく。
だが、やはりその大半をつぎ込んでいるのか数が減る様子は無い。
人海戦術か?
まぁいい。
敵は全て殲滅するのみ。
『グラビティブラスト、チャージ』
ラピスも本格的に攻撃を開始するようだ。
『チャージ完了。グラビティーブラスト、発射』
密集地をピンポイントで狙う。
改装されたユーチャリスは、従来のナデシコシリーズのデータを元に武装強化を図ってある。
武装の数はそんなに増えなかったが、グラビティブラストの威力は約1.5倍になった。
四連装だったのも六連装に強化された。
後は強化型バッタの搭載数が二百五十から四百まで増えたぐらいだろう。
それでも以前と比べれば段違いに戦力は上がった。
クロノスにグラビティブラストの強化。
そして強化型バッタの増加。
此れだけでも十分だ。
ズガァァァァァァァ
ンッッ!!
グラビティブラストが着弾したようだ。
そんな中、俺もクロノスを巧みに操りながら数を減らす。
銃弾が雨あられと降り注ぐ。
カウンタースペル
「術式展開・因果応報陣」
クロノスに新たに搭載された機関が作動する。
クロノスに向かっていた弾丸は全て停止する。
何かに阻まれたかのように、否、時間そのものが止まってしまったかのように。
遺跡の解析が進み、同じく『鍵』の解析が進んだ今、僅かながらに遺跡の恩恵を受けれるようになった。
その結果がこれだ。
遺跡の『時間を操る力』を利用し、時空歪曲場を展開。
その時空歪曲場に触れたものの時間をとめてしまうという、とんでもない物だ。
ただし、システム上の関係で一分間が最高であり、また一日に三回のみと、使用回数に制限がある。
此れが無かったら正真正銘の化け物、向かうところ敵無し状態である。
だが、生憎とこいつの真価はそれでは無い。
其の真価とは、時空歪曲場の広域展開による時間逆行により、攻撃者に対して其れを反射する事にある。
ズガガガガッッ!
今の状態が其れだ。
クロノスに向かって来た銃弾は時空歪曲場によって停止すると同時に反射される。
弾丸の全ては元の場所に飛んで行く。
勿論意図的に弾丸の向きを変えてあるので、攻撃可能だ。
向きを変えた弾丸は敵に牙を剥く。
ズガガガガッッ!
ズガガガガッッ!
ズガガガガッッ!
まさしく『因果応報』。
驚愕が、そして恐怖が伝染する。
それによって敵は動きを止める。
其れを好機と見、更に攻撃を加える。
ラピスが操る強化型バッタも戦果を上げている。
『死ね! 悪魔がぁッ!!』
後継者の一員が怒声を上げながら攻撃してくる。
何時通信が繋がったか知らないが、此方にも聞こえて来た。
しかし、俺も死ぬ訳には行かない。
「―――あの子と生きると決めたんだ! はいそうですかと、死ぬ訳にはいかんッ!!」
「此処で散るべくはお前達だ!」
意地と意地とのぶつかり合い。
機体を後ろに回りこませ、刀を使って一閃。
胴を境に真っ二つにする。
「そして、万分の一でも火星の民の苦しみを知れッ!!」
こくめいせん
「我流抜刀術・奥義『哭冥閃』」
闇が集い、そして踊る。
闇を纏った白銀の刃は、闇其の物を刃として飛ばす。
この技は闘氣術の応用で、闘氣そのものを刃に纏い、其れを飛ばす。
闘氣には『念』を込める事ができる。
希望、悪意等の念を。
そしてこの技にも、闘氣に『念』を込めてある。
そう、全てを奪われた者の憎悪の念を。
それにより闘氣自体が闇となる。
其れを放つ故に哭冥。
殺意を纏う故に、其れは必滅の刃となる。
斬ッ!
射線上に居る者全てを切り刻んでいく。
何処までも濃い闇を纏わせて撃ったのだ。
そう簡単に消える事は無い。
「オォォオオォォォォォッッッ!!」
刀を二刀流にし、目に付く物全てを斬り付けて行く。
どれ位の時間が経っただろうか?
この宙域で動けるものは、クロノスとユーチャリスを除いてなくなっていた。
周りに漂うのは戦艦や機動兵器だった物の名残だけ。
「はぁはぁはぁ・・・・・・」
連続して襲ってくるGに耐えるのは、しんどい物がある。
自然と息が荒くなる。
それでも、俺には達成感があった。
「―――勝った」
そう、俺達は勝ったのだ。
あの忌まわしい集団に。
これで全ての復讐は終わった。
復讐劇の幕は閉じたのだ。
「ラピス、戻るぞ」
こうして、俺の復讐は終わった――――。
『アキト、ボソン反応。ナデシコ級の戦艦が来るよ』
目線で如何するの? と聞いてくる。
「少し様子を見よう。ジャンプの準備だけはしておいてくれ」
復讐が終わった事で余裕が出来たのだろう。
自然とそんな台詞が出て来た。
虹色のボソンの光が収まると、ラピスの報告通りナデシコ級戦艦『ナデシコC』の姿が現れた。
『アキトさんッ!』
直ぐに通信が入った。
「やぁ、ルリちゃん」
穏やかな口調で彼女を迎える。
何処で知ったのかは知らないが、戦闘が終了しているのを知っていたらしく、エステが出て来る気配は無い。
『全部、終わったんですよね?』
「あぁ、全部終わったよ」
確認してくるルリちゃんに、素直に答えた。
俺の解答を聞くと、彼女の顔は笑顔になった。
『じゃぁ、約束―――』
「約束は、守れない」
彼女の台詞を遮って告げる。
『―――え?』
予想外だったらしく、呆然としている。
「俺の手は血に濡れているから、君とは居られない」
「―――とは言わない。それは後継者に殺された火星の民や、俺が殺した無関係な人に対する侮辱だ」
「だから俺は、俺の為に一生を棒にふったラピスと共に居ようと思う。ホントはルリちゃんとも居られると良いんだけど、其れだと色々な所から狙われやすい
し・・・・・」
俺が其処まで言うと、ルリちゃんが割って入った。
『だったら、アキトさんが護って下さい!』
彼女の其の言葉に、首を横に振る。
『どうして―――?』
「自信が無いんだよ。二人を護ってやる自信が。完璧に護ってやる自身が―――。俺は、二度失った」
「―――あの日、火星では両親を。そして今度はユリカを。三度目は、耐えられない」
「自分勝手だってのは、自覚している。でも、もう大切な人は喪いたくないんだ。だからと言って、もう会わないとは言わないよ? 何時でも会いに来るとい
い」
「それと、ルリちゃんの護衛は月臣に頼んであるから」
詳しい事はアカツキに聞いてくれ―――。
そう言って強制的に通信を閉じると、ラピスにジャンプの指示を出す。
クロノスをフィールド内にいれ、ジャンプする。
彼女を悲しませた事を悔やみながら―――。
続く
次回予告
ひとつの物語は終幕を迎え、そして新たな物語が始まる。
復讐鬼だった青年はもう居ない。
そして何故か始まる壮大な鬼ごっこ。
舞台は宇宙。
さぁ、最後の幕が上がる―――――。
次回
外典 遠き日のオモイデ
最終章 別れの日は唐突に 乞うご期待。
後書いてみる?
皆さんお久しぶりです。
約一ヶ月ぶりに更新しましたが、いかがでしたか?
タイトルとはかけ離れた感じのする今回ですが、其れは大目に見てやって下さい(汗)
では、拍手に関する返答を。
4/2 22時
初めて灼眼のシャナの小説を見たのですがとても面白いですね。次が楽しみです。
>どうもです。気に入っていただけたようで幸いです。これからも頑張りますので、応援宜しくお願いしますね?
4/9 21時
続きが気になります
>読み応えのある作品作りに励みます。これからもご贔屓に。
新人作家の増える中、其れと同時に良い作家さんが増えて来たにも関わらず私に拍手を送って下さった皆様。
本当に有難う御座います。
これからも誠心誠意頑張っていきますので、宜しくお願い致します。
また、宝具に関するアイディアを下さった黒い鳩さん、雪夜さん、本当に有難う御座いました。
御二方の考えて下さった宝具は、必ず利用させて頂きます。
それでは、次回にまた。
四
月十二日・執筆完了 神威
感想
神威さんも外典最終章に向けて動き出しましたね〜♪ シャナ本編がまた見られる日も近いですよ♪
フ
フフ…
うお! 不気味な笑い!? 一体何事!?
既に私がシャナ本編に出演する事が
決定事項になっていますから、シャナを叩き潰し今度こそアキトさんを我が物に!
うわっ…(汗) ってそういえば、シルフェニア内ってルリ派の作家さんが多いにもかかわらずアキトとルリの恋人を成立させているのって無いような…(汗)
そうなんです! 不思議とは思いま
せんか!? 私がこれだけアピールしているのに!
アレはアピールだったのか!? うわ…
何
が言いたいんですか!?
いや、別に…それより、感想がまだだったね。火星の後継者との決着がついたみたいだね。しかし、今回の兵器は強力だね。
そうですね、貴方の好きなジンキエ
クステンドに出てくるリバウンドに近いものがありますね。
うお! いつの間にそのことを…(汗)
別に隠してないでしょう?
ははははは(汗) まあね…でまあ、これからラピスと暮らす様子で…で、次回は追いかけっこ…予想できるねある程度…
もう、アキトさん照れ屋なんですから、通い妻が欲しいんですか? でも、家庭に入るのは女の幸せなのに…
さて、いったいどうなりますか次回を待てい!! といったかんじですね。
な
んですかそれは…
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神
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