火星の後継者の壊滅から半年が経った。
俺はアカツキに宣言した通り、ラピスと共に暮らしている。
現在の住居には餞別、と言うか報酬として受け取った『ユーチャリス』を使っている。
最近では宇宙での生活も中々捨てたもんじゃ無いな、と思う様になって来た。
ユーチャリスを住居にしたのには理由がある。
当たり前だが地球では俺は犯罪者として報道され、指名手配されている。
そして常に命を狙われる立場にある。
其の中でも地球は最も危険な場所だ。
敵の本拠地みたいな場所だ。
そんな所にラピスと住む事は出来ない。
俺だけが狙われるのならまだしも、身内を人質にとるのは目に見えている。
そんな理由があって、中々手の出せない宇宙に住む事にしたのだ。
ナデシコ時代のこともあってか、この宇宙で生活する事には大分なれた。
慣れてみると此方での生活も中々快適な物だ。
しかし、此処で一つの誤算があった。
それは、ルリちゃんの行動力を甘く見ていたことだった―――――。
灼眼のシャナ
〜闇と焔の二重奏(デュエット)〜
外典 遠き日のオモイデ
最終章 別れの日は唐突に
著・神威
俺が別れを告げた後のルリちゃんは、それはもう凄まじかった。
手始めに最初の二ヶ月で、俺の罪状を全て消してしまった。
俺の行動原理がユリカの救出にあった事や、後継者の行った人体実験の数々。
それらのデータを全てを、ありとあらゆるメディアにばら撒いたのだ。
効果は絶大だった。
つい最近、足りなくなった生活用品などを買いに変装しながら買い物に行った時には、俺の事が映画になっているのを知った。
汗ジトになりながらも、少し気になったので見てみた。
かなり精密に再現されているようで、中には本物を使っている場面もあった。
良く此処まで再現できた物だ、と感心していたら、スタッフロールの情報提供のところにアカツキの名前が見えた。
その時俺は悟ったね。
あぁ、こいつが元手か?
勿論アカツキは丁重にボコっておいた。
いまや雑誌を見ても俺の事で持ちきりらしい。
しかし俺が罪無き人を殺したのも、また事実。
其れについての反応をうかがっていた所、またもルリちゃんが動き出した。
俺の罪が消えてから更に二ヶ月経つと、軍からの反応が変わった。
何でも上層部の人間が一新したらしい。
今までの腐った連中は全て消え、軍も統合されたようだ。
其のトップにはコウイチロウさんがなった。
其れに加え、指名手配も撤去されていた。
此方は軍改善の一ヶ月前からなっていたらしい。
何時の間にか軍からちょっかいが出なくなっていたので、どうしたのかと思っていた矢先の出来事だった。
そして、其の事が発表された一週間後。
遂に、あの子が現れた。
『さぁ、アキトさん! 迎えに来ましたよ!!』
ナデシコCに乗り、いかにも無理やり連れて来たっぽいのを何人か連れ、さらにはA時代のクルー全てを連れて彼女はやって来た。
『貴方の罪はもうありません! 早く私の所に
戻って来て下さい!!』
耳を疑った。
何時もは私達の所に、と言うのが私の所に、に変わっていたからだ。
隣ではミナトさんが『ルリちゃんも素直になったわね〜』と言っていたが、丁重に無視した。
『それとも戻って来れない理由でもあるのですか!? はっ、まさかラピスの毒牙に・・・・・。ラピス、許しませんっ!!』
一人で妄想爆裂中(爆)
「ルリ・・・・。アキトは私の物。誰にも渡さな
い」
いや、ラピス・・・・?(汗)
それはちょっと・・・・・・(滝汗)
そんなやり取りが続いて早二ヶ月。
現在地球ではこの追いかけっこが既に娯楽と化しているらしい(爆)
ルリちゃんが俺を捕まえるか、俺が逃げ切るかで賭けになってもいるようだ。
此れについて、俺が殺した関係の無い人達の親族は、『これ位の苦労はしてくれ』と爽やかな笑みで言ってくれたそうだ。
何か俺がやった事についてはこれで赦されている(?)らしい。
良かったのか悪かったのか、判断のつかない所だ。
しかも、このやり取りは最近テレビにもなっているらしい。
この間アカツキが嬉々として教えてくれた。
そして今日。
ユーチャリスの後ろには何時もの如くナデシコCが居る。
そして更に後ろには、ネルガルマークのついた如何にもテレビ局っぽい船が
ついて来ている。
ナデシコの中には局員もいるようだ。
ルリちゃんの後ろにちらちらと知らない人物がカメラを持って映っている。
そして何故か俺の後ろにも居たりする。
ってか、何時の間に入った!?
ユーチャリス備え付けのテレビをちらっと見てみる。
『さぁ、本日もはじまりました。ナデシコVSユーチャリス〜どきどき鬼ごっこ、勝利の栄冠はどちらに!?〜のお時間です!!』
ナレーターがそう言って後ろに居る観客から歓声が沸きあがる。
『それではナデシコの木村さ〜ん』
そう言うと画像が移り変わり、ナデシコの中が写される。
『はい、此方はナデシコに居る木村です。では先ず艦長のホシノさんに意気込みを聞きたいと思います』
そのままルリちゃんにマイクを向ける。
『ホシノさん、今回の意気込みを』
『今日こそは捕まえて見ます! アキトさん、待ってて下さいね〜v』
・・・・・だんだんとルリちゃんが変わってくる姿をみて、ホロリと涙がこぼれた。
『どうも有難う御座いました。では、ユーチャリスにいる斉藤さんに交代します。斉藤さ〜ん』
そして画面はユーチャリスに変わる。
『は〜い、ユーチャリスの斉藤で〜っす! では早速艦長さんに意気込みを聞いてみたいと思います』
そう言って俺にマイクを向けてくる。
『では意気込みを』
「いや、先ずいつ此処に入ったのか聞きたいのだが・・・・・・」
汗ジトになりながら聞く。
『さぁ意気込みを』
軽くスルーされた。
「何故こんな事になったかは知らんが、とりあえず捕まらない程度に逃げるさ」
『有難う御座いました! 此方からは以上です』
再びスタジオへ。
結局俺は逃げ切る事が出来た。
そしてこの番組は受けたらしく、レギュラー化が決定したらしい。
更に一年が経った。
相変わらず追いかけてくるルリちゃんから逃げ切り、ラピスをイネスに預けて一人で休みを取っていた時の事だった。
ラピスが居ないこの時を見計らったかのように、ルリちゃんはやって来た。
後ろには何時もの如くテレビ局の船がある。
ピッ
『ふっふっふっふっふ。今日ラピスが居ない事は知っています。大人しく捕まって下さい!!』
何時ものようにアナウンスが流れ、ルリちゃんがびしぃといった感じに指を突きつける。
今日は俺が一人で休んで居たこともあってか、この船に局員の姿は無い。
何時ものように逃げ出し、何時ものように逃げ切れるはずだった。
―――そう、イネスとラピスがあっちに居なければ。
どんな奴も、一目見れば逃げ出しそうな感じでニヤリと笑いながら、二人は居た。
『イネスさんもラピスも既に此方に引き込んであるんですからv』
爽やかな笑みと共にそう言われた俺は、目の前が真っ暗になったような気がした。
ヤバイヤバイヤバイ。
ニゲロニゲロニゲロ。
俺の本能が告げる。
そして其れを忠実に実行しようと、ダッシュが動き出す。
『ランダムジャンプ、スタート』
此れには幾つかの原因があった。
一つ、アキトが考えていた事が、兎に角逃げる事だったこと。
一つ、アキトのイメージングがあやふやだった事。
そして最大の原因は、ダッシュがマスター(アキト)を渡したくないと思ったことである。
「・・・・って、ランダム!?」
俺が気付いた時には手遅れだった。
ユーチャリスはそのままジャンプした。
その後この世界にユーチャリスが姿を見せるのは、実に十年後になるのだが、其れを知るものはまだ誰も居ない――――。
同時に、アキトの女難は此処から加速したのだった。
これにて終劇
後書き
ども、お久しぶりです。
これにて外伝は終了です。
まぁ微妙かもしれませんが此れで許してくだせぇ。
私の技量では此れがいっぱいいっぱいです。
さて、次回からはまた本編に戻りますので、皆様お楽しみに。
では拍手に関する返答を。
4/13 13時
とても面白かったです。次を楽しみにしています
>有難う御座います。次回も頑張りますので、応援お願いします!!
20時
早くシャナ本編が読みたいですね。次回楽しみにしてますよ!
>次回からは本編になります。楽しみにしていてくださいね?
4/14 15時
シャナがアキトにメロメロなのがいいです! 本編早くでないかな〜
>て言うかもうアキトラブです。本編は次回からになりますので、楽しみにしていて下さい。
4/16 15時
続きが楽しみです
>頑張りますので、これからもご贔屓に。
感想、拍手を下さった皆様に多大な感謝をしつつ後書きとします。
では、また次回にお会いしましょう。
四
月二十三日・執筆完了 神威
感想
面白かったです♪ でもまぁ確かに、今までのシリアスが見事に吹き飛んでしまいましたね…(汗)
あ
んな終わり方…
え?
あ
んな終わり方認められるわけが無いでしょう!!
一体なにが気に入らないんだい? 今回はイメージが変わった気はするけど、面白かったと思うけど?
私、
あそこまで思いっきり逃げられたのは初めてです!!
いや、ネタだし…それに、平行世界であって…
何
かいいましたか!?
いえ…何も…
照れ屋さん、なのは分りますが、あ
んなにお膳立てを整えてあげたというのに、何故据え膳に手を出せないのですか!!?
据え膳っすか!? いわゆる地雷女じゃ…(汗)
死
にますか?
結構です! と、それより次回から本編再会だね。待っていた人も多いんじゃないかな?
まあアキトさんの強さを一目みたい
というみんなの気持ちも分かりますが…照れ屋のアキトさんに据え膳を食べていただく方が大事です!
はうあ…
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神
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