「・・・・・・痛っ・・」

全身を包む痛みに思わず眉をしかめる。

俺は・・・何をしている?・・・・・目覚めたばかりだからか頭が働かない。

ゆっくりと目を開くとそこには・・・、果てまで抜ける青い空と見知らぬ荒野が広がっていた。

「・・どこだここは?」

何故俺はこんなところに?

いや・・・そもそも何故俺は生きている!?

頭が冴えてくるにつれ、気を失う前のことを思い出す。

俺はアイツに刺されて、目の前が真っ暗になって、それから・・・・ではここは天国か・・・いや、俺が行くとしたら地獄か・・・・・とてもそうは思えないが・・・・

立ち上がると自分の姿に目をやる。

服装は気を失う前の物のままだが・・・

「傷がない!?・・血の跡も・・・」

刺された腹に手を当てて見るが傷どころが服に穴すら開いていない、まるで刺された事が嘘だったかのように。

「これはどういうことだ?」

一瞬俺にコードが宿ったのかと思ったが、それだと服まで直らない、誰かのギアスの力ということも考えられるが・・・

・・・まずは情報を得るべきだな、このまま考えても埒が明かない。携帯は・・・圏外か・・・人に聞こうにも見渡す限り荒野で・・・

「おう兄ちゃん。良い服着てんじゃねえか」

誰もいないかと思ったら後ろから声が掛けられた。

「・・・・・・?」

声を掛けてきたのは、三人組の男だった。
ノッポとチビとデブ、東洋系の顔つきではあるがその格好は鎧のようなものを付けており、また腰には剣を提げている。
軍人か?・・・それにしてはみすぼらしいが・・・

「この辺りじゃ見かけねぇ顔つきだな、西の方のやつか?・・まぁどこでもいい」

『シャキン』

ノッポの男がそう言って剣を向けてきた。

「身包み置いてってもらおうか」

盗賊か・・・格好からしていかにもと言ったところだが・・・いかにも過ぎないか?

「この時代、お前らのような盗賊がいるとはな」
「はぁ?・・今の時代俺らみたいなのばっかりだろうが」
「そうなんだな、大陸中のいるんだな」

チビとデブがそんなことを言う。

こんな奴らばかりだと・・・俺のせいか?・・・いや、俺は確かに悪逆と呼ばれる政略を行ったがそれで被害を被ったのは王族や貴族などの上流階級の者達、庶民が盗賊におちぶれなければならないような事はしていない、むしろ下の者達からすれば良くなった事の方が多いはずだ。

・・・まぁそれも含め、こいつらに聞けばいいことだ。

「そんな事はどうでもいいんだよ、とっとと言う通りにしな」
「大人しく渡した方が身の為だぜ」
「その方が服が汚れないんだな」

俺は今にも自分たちで服を剥ぎ取ろうかと近づいてくる盗賊達の目を真っ直ぐ見る。

「お前達三人、俺の・・ぐぅっ」

ギアスを発動させようとして力を込めるといきなり激しい頭痛に襲われた。

何だこの頭痛は!?・・・・

「何だこいつ、いきなり苦しみだしたぜ」
「病気かもしれないないんだな」
「へっ、俺達には関係ねぇ、お前等服を剥ぎ取っちまいな」
「「へい、アニキ」」

痛みに頭を抱える俺にチビとデブが服を剥ぎ取ろうと手を伸ばして来た、そのとき。

「待てぃ!」

凛とした声が響いた。

「「っ!」」
「だ、誰だっ!」

盗賊達が手を止め、声のした方を向く。

「たった一人を相手に三人掛かりで襲いかかるなどと・・・・その所行、言語道断!」
『ザシュン』
「ぐふっ!」

さらに声が響いた次の瞬間。
既に三人のうちの一人は膝を折り、その場に崩れ落ちていた。

「な・・・・・っ! 何だコイツ! ぐはぁっ!」

潰れたような無様な叫びを上げて、チビが吹っ飛んだ。

それが、女が振り抜いた槍によるものだと気付いたのは・・・・槍の構えが変わっているのに気付いてから、槍の動きなどまるで見えなかった。

「なんだなんだ。所詮は弱者をいたぶることしか出来ん三下か?」
「くっ・・・おい、お前等! 逃げるぞっ!」
「へ、へえ・・・」
「だ、だな・・・」
「逃がすものか!」

そう言って女は盗賊達を追いかけて行った。

どうやら助けられたようだな。
もう頭痛は消えたが・・あの痛みは何だったんだ?

「大丈夫ですかー?」
「・・・ん?」

次に掛けられたのは、おっとりと間延びした、女の声だった。
何故かその女は頭に人形を乗せている。

「傷は・・・これと言って無いようですね」

もう一人、彼女よりもしっかりした感じの眼鏡を掛けた女がいた。

「ああ・・・大丈夫だ・・」
「そうですか ならいいですけどー」

あの盗賊達も助けてくれた女もこの二人も、格好が中華連邦の物に似ている、ならここは中華連邦か?・・・

「やれやれ。すまん、逃げられた」

先ほど盗賊達を追いかけて行った女が戻ってきた。

「お帰りなさい。・・・・盗賊さんたち、馬でも使ってたんですか〜?」
「うむ。同じ二本足なら負ける気はせんが、倍の数で挑まれてはな」
「まあ、追い払えただけでも十分ですよー」
「それにしても災難でしたね。この辺りは盗賊は比較的少ない地域なんですが・・・」

比較的か・・あの盗賊が言ったように他にも大勢いるということか・・・・解らない事だらけだが、まずは。

「先ほどは危ないところを助けてくれてありがとう」

俺は槍使いの女に近づき礼を言う。
偶然かもしれないがさっきの頭痛はギアスを発動させようして起こった、ギアスを使えなければ俺は盗賊を追い払うことが出来なかっただろう。

「う、うむ、なに、私は当然の事をしたまでだ」

礼を言ったのに女は何故か顔を背ける

「星ちゃん顔が赤いですよー」
「こ、これは盗賊を追いかけて走ったからだ!・・・ゴホン、そんなことよりも」

女は改めてこちらを向く。

「おぬし、何故こんなところで一人でいる。その格好を見るに、どこかの貴族か豪族、それもかなりの名家の者のように見えるが・・・何者だ?」

先程から疑問に思っていた事の一つだが、この者たちは俺の顔を知らない、今や俺の顔を知らないのは全く情報の入らないような辺境の地の者でもなければありえないはずだが。

「・・・その質問に答える前に、先に聞きたいのだが、・・・ここはどこだ?」
「?・・・ここは陳留に属する土地ですが」
「陳留・・・それがこの国の名か?」
「いえ、国の名前は漢ですが、それもわからないのですか?」
「・・ああ、・・・正直俺自身も今の状況が把握出来ていない」

漢?知らない国名だ・・・いや、確か中華連邦の昔の名称が漢だったはずだが・・・、それは2000年以上前のこと。

「ここが漢ということもわからぬか、・・風、稟、やはり」
「そうですね、・・大陸の者とは違う顔つき、王族が着ていてもおかしくない程の豪華な服装、そしてこの地に一人でいた」
「可能性は高いですね〜」

三人はそう言ってうなずきあう。

「お兄さんは天の御遣いですかー?」
「天の御使い?」

人形を乗せた女がそんなことを言ってきた。

「そうですよー 黒天を切り裂いて、天より飛来する一筋の流星。その流星は天の御遣いを乗せ、乱世を鎮静す。・・・・管輅という占い師の占いですよー」

・・・流星乗って来る天の御遣い?・・管輅の占い?・・何の事だ?

「黒天ではないが、流れ星がこの地に落ちるのを見て、私達はここにきたのだ」
「そして盗賊の襲われていたあなたを見つけたいうわけです」

ふざけている・・・というわけでは無さそうだが・・・。

「俺は」
「!・・どうやら陳留の刺史殿が来たようだ」

俺の言葉を槍の女がさえぎる

「・・・刺史?」
「ほら。あれに曹の旗が」

眼鏡の女の指差した方向を見れば、地平線の向こうからもうもうと砂煙がのぼってるのが確認でき、しばらくすると、騎馬隊と、その上に翻る大きな旗が見えてきた。

「どうしましょうかー」
「彼が本当に天の御遣いかどうかはわからないが、このまま見捨てては気になって夜も眠れぬな」
「何とか見逃してくれればいいのですが、相手はあの曹操殿、簡単にはいかないでしょうね」

曹操?・・・

「よくわからないが、あの一団にこの辺りを統治する者がいるということか」
「ええ、とりあえずは私達が話ますので、貴方は・・・・そういえばまだ名前を聞いていませんでしたね。私は戯志才と名乗っておリます」
「私は趙雲」
「風は程立ですー」

戯志才に趙雲、程立、それに曹操か・・・どれも中華連邦の昔の物語、三国志に出てくる人物の名前だな。
そして国名が漢、・・・嘘でないとしたら・・・

「俺の名はルルーシュ、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアだ」

俺は2000年以上前にタイムスリップしてきたことになるな。

・・・・・だが、戯志才も趙雲も程立も男だったはず・・・何故女なんだ?



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