セブンズゼロ
サイコ・クローバー

セブンズゼロ
天才機械工学者、佐川源次郎が生み出した最強人間兵器、またの名を改造人間。どのスペックを取るにもISを遥かに上回る性能を持ち、またこれまでの機械兵器と違い、大碁は特殊機能「サイコ・クローバー」を搭載されているが、その機能は実際のところどういった威力を発するのかは謎に包まれている。


登場人物

黒羽大碁=セブンズゼロ(クロバ・ダイゴ)
本名は織斑総一という養子で五年前、誘拐事件当初に死亡。その場を佐川博士によって改造人間セブンズゼロへと生まれ変わった。研究所脱出時に何らかの衝撃で記憶を失っており、僅かな覚えしか残されていない。感情は表に出すことはあまり無いが、温和な青年であったのだが、白騎士事件で両親を失ったことでISを激しく憎んでいるが、メルーだけには唯一心の領域を許している。亡国企業ファントムタクトに宣戦布告を言い渡す。

メルー
佐川博士の同僚荒波幸一が開発したセブンズゼロ護衛のエスパーの少女。大碁よりは劣るものの念力や透視能力、テレパシーなどといった力を操る。しかし、甘えん坊で時に子供じみた性格ゆえに一時の幼さも見せる。「うりゅ」という口癖で無邪気な態度を見せている。また大碁に思いを寄せている。ちなみにキリスト教信者で、自称天使で純白の髪が特徴。

荒波龍次
佐川源次郎の元同僚であり、大碁の保護者に当たる工学者。機械にはうるさく、大碁とメルー以外には興味を示さない。変わり者。
NO1
ハガネの天使



半年前のこと。
「大碁・・・・・・・!黒羽大碁!!私が時間を稼ぐ、その内にここから逃げろ!」
「・・・・・・!?」
純白の如くアーマーを纏う青年は白衣の老人によって研究所施設の裏口へと連れてこられたが。彼等の背後をとある人影が捉えたのだ。
「ぬぅ・・・・!もう気づかれたか!?」
「佐川源次郎!我が配下に下れ。さすれば命は奪わん」
「ふざけるな!貴様等亡国機業に黒羽大碁を悪用させはしない」
「悪用ではない。我々が創造する強大な力が納める理想国家で働いてもらうのだよ?」
「力が支配する愚かな世界のために私のゼロを渡せはしない!ゼロは、セブンズゼロはこの女尊男卑という歪み社会を正すために生み出した戦士だ」
「フンッくだらん・・・・・・・・女でも男でも力のある者が頂点に立つ。それほど素晴らしい世界を何故拒む?貴殿の技術を提供してくださればISなど遥かに凌ぐロボット兵ができ、この世界を粛清できるものを・・・・・・・・・・」
IS通称イフィニット・ストラトスという女性にしか扱うことができないパワードスーツ兵器で、現状では最強の称号を持つ大量破壊兵器。
「させぬ!例えこの身が砕けようとも、セブンズゼロだけは・・・・・・・・・・!」
「・・・・・・・・・・・」
ゼロ通称セブンズゼロと呼ばれる隣の青年は老人と、そして亡国機業と名乗る組織の一人、その双方を見つめていた。
「ゼロ!逃げなさい・・・・・・・ここは私が引き付ける。お前は何としても生き延びておくれ?」
すると老人は片手に握る装置を機動。研究所は爆発、そこに保管された技術書、設計図、全てが灰となった。
「逃げろ・・・・・・!」
「博士!」
青年は叫びながらも、負傷した頭部の傷を押さえつけ、もがき苦しんでいた。この事件は翌日記事に取り上げられたが、原因不明として扱われ未だ真相は明かされていない。

日本首都東京、そこには町並み一通りを見渡せる高い丘に一人、青年の姿が見えた。彼は孤独な瞳で夕暮れを見つめながら風にその黒髪を揺らしていた。
「・・・・・・黒羽大碁、それが俺の名前・・・・・・・あのとき、崩れ去る研究所であの老人が俺を逃がした。そして、創造する世界のため俺を欲しがるあの影の男とは一体?」
だが、しばらくするうちに頭痛を感じたため回想を速中断した。あれからの記憶は全く覚えていない。いや、自分が何故このような姿になったのかという生い立ちや、この姿になる前の前世、そして自分は一体何者なのか、それら全てが思い出せない。ただ、あのときの脱出の記憶と老人との記憶が未だに残っている。そして、自分の名前。
「うぅ・・・・ダメだ。思いだせん・・・・・」
呟く彼はこれからどうすればいいのか、宛先も目的も無い彼にはこの世界では迷い子のような存在になっていた。これから先同行どうそれば良いのやら・・・・・・・・・・・・?
「おい、貴様・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・?」
背後から数人の気配を感じた。振り向けば案の定、複数の黒尽くめの人間達が彼を取り囲んでいたのだ。
「お前達は・・・・・・・・?」
大碁は険しい表情で彼等に問う。
「小僧、貴様セブンズゼロだな?我々は亡国機業の者だ」
「亡国機業・・・・・・・・・?」
亡国機業、この用語には何となくだが聞き覚えがある。すると男達は彼に警戒の視線で見つめると共に懐からそれぞれ拳銃を取り出し、その銃口を大碁へ突きつけた。
「我々と共に本部へご投稿願おう?」
「・・・・・・・・何だと?」
「言う通りにしてくれればこちらとて強引な扱いはしない」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
しばしの間沈黙が続いたが、この場で先に口を開けたのは大碁だった。
「お前達は、俺を・・・・・・俺の正体を知っているのか?」
すると、男の一人が静かに頷いた。それを目に大碁も頷き返す。彼は亡国機業と名乗る男達に連れられ、亡国機業本部の無人島へ連れて行かれた。アジトは地下施設になっており、構造はより複雑になっている。
「ここだ、入れ・・・・・・・・」
「ここは?」
大碁はその施設最奥部のとあるドアへ連れて来られた。巨大な扉には金銀の飾りで彩られ、見事な作りであった。
「・・・・・・・・亡国機業極東指令グロリアス様の司令室だ」
そこには王族の席に腰掛ける赤い軍服とアーマーをはめ込んだ大男、亡国機業極東支部を取り仕切る指令グロリアスだ。
「グロリアス?」
大碁は不安な手つきでその扉を開けた。それと同時に男達は一斉に大碁へ銃口を突きつけた、下手な真似をしたら発砲する。とくに彼等の上司たるグロリアスの前では一瞬たりとも目を話さないでいるのだ。大碁はその気迫だけは確かに受け取った。
「・・・・・・・・よくぞ来たな。歓迎しよう」
「教えろ!俺は一体何者なんだ?」
「貴様!グロリアス閣下のご前であるぞ!?」
唐突な質問に男達の中にいた一人の女が怒鳴り上げたが。大碁は何事にも感じなかった。
「よい、お前達は例のカプセルをこの若造に見せつけてやれ・・・・・・・・・」
グロリアスの命にて男達は第五を取り囲むのをやめ、隣の部屋から直径五メートル弱の高さを持った試験管のカプセルを大悟の目の前に運んできた。カプセルの中には・・・・人?
「人・・・・・?少女だと!?」
そう、試験管の中身には液体に包まれ眠りにつく赤い髪を棚引かせる少女の姿である。年は自分と近い。
「そう、この娘はお前と同じように生み出された戦闘人間だ・・・・・・・・・・・・」
するとグロリアスは目を頷かせると部下の男が拳銃を取り出し、そのカプセルへ向け発砲。少女は打ち砕かれた試験管のカプセルから流し出され、眠りから覚めたかのようにゆっくりと意識を取り戻した。だが、それもつかの間部下の男が彼女のその赤い髪を強引に掴み上げた。その痛みに呻き叫びながら少女はもがく。
「オラ!とっとと立て!!」
「う、うりゅぅ・・・・・!?」
「化け物め!とっとと歩け!!」
複数の男に囲まれ強引に身体を引っ掴まれる少女。明らかに乱暴と見える。大碁はその光景を見ることは耐え難く感じ。
「おい、止めろよ。嫌がっているじゃないか・・・・・・・?」
すると、邪魔をする大碁へ向け男達が殺意の睨みを向け、乱暴される少女は泣き顔で彼を見つめた。
「貴様には関係ない。そこで黙ってみていろ!」
ガシッ・・・・・・
「・・・・・・・・?」
だが、見ていられるわけもない。大碁は少女の髪を引っ張る男の腕を力強く掴みかかった。
「何だ・・・・?邪魔するつもりか?」
「止めろといっているんだ。耳が遠いのか?」
「なに・・・・・?」
その男は激怒し、拳を少女から大碁へと向け、大いに放った。だが大碁はその拳を当たると知っていて顔面で受け止めたのだ。
「ぐ、うぅ!」
しかし、痛み出したのは男の拳。大碁の顔面は金属のように硬く、冷たい感触を感じさせた。やはりかと、周囲の男達は大碁の正体に納得をした。
「おもしろい・・・・・・・その小娘が欲しくば、この者達を撃破し、ここから逃げ出すことだ。どうだ、やってみるか?」
グロリアスは残忍な笑みを浮かべ、その挑戦を大碁へ言い渡した。無論大碁も強く頷いて見せたのである。
「フフッ・・・・・・・では、始め!」
その叫びと共にグロリアスはホログラムと化しこの場から消え去った。そう、元々この基地にグロリアス本体は存在しない。ただ、極東支部の何処かに彼の実態が潜んでいるだけ。
「では、試させてもらおう・・・・・・・・セブンズゼロの実力とやらを!」
先ほどとはいえない身のこなしを取る男達は一斉に大碁のもとへ飛び掛る。しかし、大碁は全く動じない。そして・・・・・・・・・
「装着・・・・・・!」
無意識に頭の中からその言葉が浮かび上がった。次の刹那、大碁の身体から蒼と白で彩られたフルスキン、全身装甲のアーマーが瞬着され、先ほどの衣類を纏った彼とは別人の黒羽大碁が映った。
「倒す・・・・・・!」
ヘルメットのフェイスマスクが覆い、瞬く間に飛び掛る敵を両腕の拳で一網打尽に蹴散らした。彼らにとって予想外の展開である。
「こ、これがセブンズゼロの力だというのか!?」
「だが、まだ「サイコ・クローバー」は起動させていないようだぞ?」
「その子は何処からさらって来た?」
男達皆がゼブンズ零の大碁を恐れ、怖気づいているが、大碁は男達と戦うよりもその少女の成り行きを聞きだした。
「この小娘は遺伝子科学者、荒波光一から奪取したエスパーだ」
「エスパー・・・・・・?」
「貴様のバディーとして生み出したが、どうやらその意味もなくなったようだな!?」
「・・・・・・!」
男達は纏う衣類を引き裂き彼等の人間だった原型は脆く崩れ去り、男達は化け物の姿へと化し、ふたたび大碁へ襲い掛かる。
「・・・・・・・・!!」
しかし、大悟と彼等の性能では既に雲泥の差が感じられる。彼の両腕が光を発し、旅困れる瞬時、化け物となった男達は粉々に引き裂かれた。いつの間にか大碁の両手には二刀の剣を握り締めていた。
「ぬ、ぬぅ・・・・!セブンズゼロがこれほどの性能を持っていたとは!?」
最後に生き残ったのは女。この化け物こと怪人はその恐るべき潜在能力を誇る大碁に恐怖した。
「これ以上犠牲を出したくはない・・・・・・・・・その子をこちらへ引き渡せ」
これ以上の犠牲は出さない。血を流させはしない。例え敵だとしても、しかしそんな大碁の優しさをあざ笑うかのように怪人は反発した。
「ハッハッハ!バカめ、改造された我々怪人にとってそのような情けなどシャクに障る!」
「死に急ぐことはない・・・・・・・・・その身体では限界が近づいている頃だろ?」
大碁は今一度怪人を見つめた。体全体から黒い液が傷口から垂れ流れ、吐血さえも起こしている。それでも怪人は苦しみながらも万遍無い笑みを保っていたのだ。
「おもしろい・・・・・・!これは愉快だ!死の直面に出会う戦いは・・・・・・・・・・例え死んだにせよ我々の変わりはいくらでもいる。我等はショッカーによって選ばれし者、この差別世界と人間を滅ぼし、我等だけの楽園を築き上げる!貴様は精々戦い疲れ、そして朽ち果てるがいい!!」
すると女怪人は遠ざかるあの少女を巨大な手で鷲掴み、人質に取ったのだ。
「うぅ!?」
少女は声にも出せないのか、鳴き声を上げ必死な目が大碁に助けを求めている。
「その子は関係ないだろ!」
「何を言うか?これで貴様と私の差は五分と五分になったわけだ!さぁ、条件が互角になったところで再会しようではないか!?」
「・・・・・・許さん!」
大碁は人質までも手にして戦いを続けたい怪人に怒りを示し、両肩のアーマーに着用されたブースターを噴かし、両手に双剣で怪人目掛け一気に突っ込む。だが、怪人は少女を楯に斬りかかる大碁の目の前へ向けだした。
「・・・・・・・・!?」
少女の怯える瞳を目に大碁の構える動きが一瞬鈍った。それを隙に怪人のアッパーが彼の腹部を直撃する。
「ぐはぁ・・・・・・!」
弾き飛ばされた大碁は体勢を立て直し再び突っ込もうとするが、やはり何処をどう見ても少女を楯に用いて大碁の人情をもてあそぶ。
「卑怯な・・・・・・・!」
腹部を抱える大碁に対し怪人はあざ笑う。
「卑怯だ?先ほども行ったように互角にあわせただけよ」
「そこまでして勝ちたいのか・・・・・・!?」
「勝利だけが我々の生きがい、戦って勝つことしか存在意義を認めない」
「・・・・・虐めるな」
「・・・・・・・?」
その声は少女から発せられた。怪人の手に捕らわれている少女は幼い瞳で怪人を睨みはじめる。
「ゼロを・・・・・・・・虐めるなぁ!」
その突如、少女から強大な波動を感じ取り、その波動が高い威力の念力となり自分を戒める巨大な怪人の腕を押しつぶした。
「があぁ!」
腕から逃れ、地へと落ちる少女を大碁がスライングして受け止めると同時に怪人の腹部へ向け双剣の一刀で貫いた。
「な、何だとぉ・・・・・・!?」
「勝負ついたな?」
「き、貴様・・・・・・・・・これで勝ったと思うな・・・・・・・・私たち選ばれし者の理想を描く同士全ては貴様の敵となり・・・・・・・」
しかし、怪人がその台詞を言い終える内に彼の体は爆発を起こした。怪人となった女は粉々に消滅し、大碁は頬が血塗られた少女を見つめた。
「おい、目を覚ませ!」
「う、うりゅ?」
かすむ視界が徐々に回復し、彼女はアーマーを解除した元の大碁を視線に入れた。
「・・・・・ぜ、ゼロ?」
「ゼロ・・・・・?」
「ゼロ!ゼロだよね?」
すると、少女は勢いに乗り彼へと思いっきり抱きついてきた。驚き赤くなる大碁の事を気にも掛けず無邪気な笑顔を浮かべている。
「とにかく、ここを離れよう」
無人と化した施設を抜け出し浜辺まで抜け出した。大碁はこの辺りで少女についていろいろと尋ねた。
「君、名前は?」
「うりゅ?」
無邪気な口癖、別に気には止めていないが何となく癒される。そんな彼女は口元からなれない発音で。
「メルー・・・・・・・・」
「・・・・・俺は黒羽大碁、この姿でいるときはそう呼んでくれ?」
「黒・・・・羽・・・大・・・・碁ぉ・・・・?」
言い馴れなれていないため言いづらいのだろうか?それに一々フルネームで呼ばれるのも面倒だと。
「大碁でいい。そのほうが言いやすいだろ?」
「大・・・碁・・・・・大碁!」
「そうだ、大碁だ」
子供のような彼女を見、ふと大碁は笑みを浮かべた。彼女と行動を共にするのなら寂しくはないし一人よりはマシだろう。
「だが、これからどうするか?俺一人ならまだしも、いつあの化け物が襲ってきたら・・・・・・・・・ん?」
ふとメルーの首元に付けられた首輪に目が行った。首輪の周りには小さな文字が記されている。ふと除いてみれば、それはとある住所だった。
「住所・・・・・・・・?そこへいけば何かわかるのか?」
とりあえず俺はその目的地へ行くため彼女の手を引いた。彼女は俺に手を握り締められてご機嫌な様子である。いや、彼女が俺の手を握り締めていると言ったほうがいい。その光景は親と手をつないで喜び満ちている子供のようだった。
しかし、見るからに彼女は全裸も同然、大碁は誰もいないショッカーのアジトへ戻り、そこで何か着る衣類を調達し、あと首輪の住所を調べるための地図等を探した。
改めて施設内を捜索した結果、彼が倒した怪人の男達のように欲に溺れ、騙されて改造された人間たちの脱ぎ捨てた衣類がロッカーに納められていた。恐らく人間へ偽るために着用しているのだろう。ロッカーの中には黒いスーツもあれば女性用のスーツも、また最近の若者のファッションも少なからず混ざっていた。幼さが残る可愛らしいメルーにはスーツなどは似合わないだろう。なら最近の女の子が着るオシャレな服が似合う。大悟はこれといってファッションには興味がないものの、人が着る服だったら選ぶ目がある。
「これなら・・・・・・・・似合うかな?」
大碁が手に取った衣類は女の子らしい春向けのワンピースに茶系のショートブーツ、後は・・・・・・・・・下着も取ってこないと。それにせよ、これほどの大量の衣類が保管されているという事は、多くの人間がここへ訪れ、あるいは誘拐されて改造人間にされてしまったのだろう。ある者は力に溺れ、またある者は悲しみに付け込まれ、結局改造されると同時に人格までもが変わってしまったのだろう。悲しいことだ・・・・・・・・・
「・・・・・・さて、次は」
次は地図だ。記憶が定かではない俺には外の世界を歩き回るのは迷子としか言いようがない。何かマップの書物はないものか・・・・・・・・・・と、その場を離れ、各施設を除いていると。
「・・・・・・・・・?」
基地内を探しているうちに背後から物音が聞こえた。そればかりではない、自分以外の足音が歩み寄ってくる。基地内にいるのは今のところ自分以外誰もいない。え?自分以外、だとすれば・・・・・・・・・・・
「誰だ!?」
と、怒鳴りを上げて振り返れば彼の背後にはしゃがみこみ、頭を抱えるメルーの姿が見えたのだ。恐らく、気になって後をつけてきたのだと思う。
「メルー?」
「うりゅう・・・・・・メルーもついてく・・・・・」
「・・・・・・・・・」
溜息混じりに大碁は彼女の懐きに困ったが、じきに表情を変えてフッと笑った。
「いいよ。でも、はぐれちゃダメだよ?」
「うりゅ!」
と、強く頷くとメルーは彼の腕にしがみ付いて離れることは無かった。離れないよう彼女も心がけている。大悟はそんな彼女を見、どこからか懐かしさを感じた。
「ここは・・・・・・?」
次に立ち寄った部屋は書物などが収められた保管室である。見ればデジタルでホログラムされた地球儀やPCの数々、そして無線類。ここは通信室なのか?
「地図を探すぞ?メルー手伝ってくれ」
「うりゅ!」
と、返答して彼女は本棚へ突っ込んだ。
「おいおい、その「うりゅ」っていうのは口癖か?こういうときは「はい」っていうものだぞ?」
「うりゅ?」
苦笑いで大碁が言い放ったが、メルーには「うりゅ」以外の返事は耳にしたことが無い。
「まぁ、いいや。えぇと・・・・・・・・・」
大悟は探せれる至る場所に手を伸ばした。しかし、分厚い本は全て英文。読めるはずも無いし、地図ではない。また、地図は地図でもこの基地内部の設計図しか見つからない。
「無いなぁ・・・・・・コンピューターに載っているのか?」
PCへ歩み寄ると大悟は以外にも慣れた手つきでキーボードを打ち始めたが、PCに含まれた内容は全く意味が不明で、地図らしきデーターは未だ見つけられない。
「うぅん・・・・・・・」
「うりゅ?」
トントンとメルーが大悟の方を突っついてくる。構って欲しいのなら後にしてもらいたいが・・・・・・・・・
「どうした?今忙しいんだ。悪いけど後に・・・・・・」
「大碁・・・・!これ?」
「ん?」
すると、メルーの掌には何やら黒い円状の物質が乗せられていた。見るからに何かの機械だろうけど、見たことが無い機器だ。
「これは・・・・・・・ん?」
すると、物質の中央にボタンが見えた。このボタン以外その他のスイッチは見受けられない。一様押してみるか?大碁はふとした好奇心からこの物質のボタンを親指で押すことに。
「・・・・・こ、これは!?」
すると、物質の円状から突如ホログラムが展開し、地図と思われる立体映像が映し出されたのだ。この映像からして基地内部の構造ではない。日本列島?
「地図なのか!?」
タッチパネルのように円状に指をタッチしながら地図を移動、そして現在地をしらべることができた。それにカラー映像のため見やすく住所なども細かく記されていた。これはメルーのお手柄だ。
「メルー!よくやった」
大碁はメルーの赤い髪を撫でてやり、褒めてやった。メルーは彼に頭を撫でてもらうときが一番嬉しそうな顔をしていた。
「さて、目的地が判明したことだから早速行ってみるか?」
「うりゅ!」
その後、無人島から船で脱出し、約一時間で無事陸へ上がることが出来た。持ってきた地図を手に大碁はメルーの手を握り都会の街中をさ迷い歩いていた。
「地図によれば・・・・・・・・もう一キロか。メルー、疲れたかい?」
「大・・・・・丈夫」
と、メルー。彼女はあの口癖以外にも言葉にすることが出来るじゃないか?少し言いづらそうだが。
「メルー、人間の言葉は大丈夫か?」
と、からかうように大碁が問い詰めた。
「う、うん・・・・・・・でも、少し苦手・・・・・・・」
「そう、少しずつでもいいから練習しないとな?」
「うりゅ!そう・・・・・だね」
「やっぱりそれは口癖か?まぁ、可愛いけど」
微笑みながらも二人は首輪の住所のもとへたどり着くことが出来た。そこは白くレトロなデザインを施した屋敷であった。
「随分古ぼけた屋敷だな?ここがこの子と関係があるのか?」
どうも信用しにくい。しかし、何度も首輪を見て地図も見た。ここで間違いないはずだ。
大碁はインターホンを押し、屋敷にいる誰かを呼び出した。
(どなたですかな?)
すると、老人の声が返答した。するとその声に反応し、メルーが。
「おじいちゃん!」
と、叫んだのだ。彼女の声を聞き老人も急に反応を変える。
(め、メルーか!?少し待っていてくれ!)
そういい残すとわずか十秒弱で白衣姿の老人が外からと出してきた。
「メルーか?心配したんだぞ?」
「うりゅ・・・・・ごめんなさい」
「まぁ、無事で何よりだ・・・・・・・ん?ところでメルー、この方は?」
「あのね!この人ゼロなんだよ!?」
と、大碁の代わりにメルーが割り込んでそう興奮した。それと同時に老人も興奮する。
「なっ・・・・・・では、セブンズゼロ?君はひょっとして黒羽大碁君かね!?」
「は、はい・・・・・・」
「そうか、君も心配していたんだぞ?あれから源次郎博士が行方不明になって・・・・・・・・・・・しかし、よく生きていてくれた。さぁ、二人とも中へ入りたまえ!」
「あ、あのぅ・・・・・・・あなたの名前は?」
先ほどから気に掛かる、自分の正体を知り、メルーの保護者であるこの老人が。
「おお、申し送れたか。わしは君を生んだ源次郎博士の同僚、荒波龍次という者じゃ。散らかっているが入りなさい?」
と、優しげな声で大碁を迎え入れた。彼の自宅は屋敷そのものがラボになっており、そこで遺伝子工学に基づいた研究を行っていた、勿論メルーも龍次が遺伝子操作で生み出した娘のような存在。そんな彼は大学時代に機械工学の研究を続けている佐川源次郎と知り合い、良き友人となったらしい。
「・・・・・・・そうか、君も行方は知らないのか?それどころか大半の記憶を失っていると?」
「はい・・・・・・・博士は、私の正体をご存知ですか?知っていたら話してください!」
すがるかのような勢いで大碁は龍次へ頼み込んだ。しかし、龍次は歪んだ表情で返答を返した。
「申し訳ないが、私は源次郎博士から「革命をもたらす最高兵器を生み出す」としか聞かされておらず、それ以外の詳しい情報は・・・・・・・・・」
「そうですか・・・・・・・」
「大碁・・・・・・・」
メルーはそんな手掛かりを知ることができなかった大碁に悲しげな表情を取った。
「いや、大丈夫だよ・・・・・・・・」
「役に立てなくてすまない。しかし、源次郎博士は君に大切な役割を託したそうだ」
「役割を・・・・・・・・・?」
「そう、私は源次郎博士が過去に研究し、開発を進めていた機械戦闘兵について調べているのだよ」
「機械戦闘兵・・・・・・・・?」
「そう、この世界を正そうと思うからこそ君のような戦士が生み出された。君のほかにも幾人か存在すると思う」
「俺の・・・・・・他に?」



今回で気づいたこと、それは俺の正体は人工的に作られた機械仕掛けの兵隊であり、この歪んだ世界を正すための役割を背負われているそうだ。
そして、俺の正体を知る亡国機業とは一体・・・・・・・・?




あとがき
初作品となります。中学生の頃思い描いたヒーローキャラです。
あと文章に関してはあまり上手とはいえないのでよろしくお願いします。



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