フィーン…


不可解な音と共に、アキトの前で不思議な光が乱舞する。

あまりの眩しさに一瞬目を閉じる。

しばらくして光が収まった頃、恐る恐る目を見開くと。

そこには、雪の様に白い肌をした少女が倒れていた…


呆然とその光景を見ていたアキトだが、我に返ると緊張の面持ちで

少女を抱き起こしながら声をかけてみる…


「おいあんた!

 大丈夫か!?

 おい!!」




「…ア…キ……ト………」



ポツリポツリと雨が降り始める中…少女の呟きだけが、アキトの耳に不思議と綺麗に響いた……





機動戦艦ナデシコ
〜光と闇に祝福を〜





第二話 「『闇の慟哭』みたいな」(中編)




AD2195/09/29 PM5:42 ユートピアコロニーホーリアストリート


「上手くいきましたね〜」

「…何がだ?」

「フクベ提督ですよ。賭けに乗ってくれたじゃないですか」


紅玉がニコニコしながら俺を見ている…

現在ジープをホテルに置き、徒歩で次の目的地に向かっている所だ。

ちなみににアメジストも連れて来ている。

紅玉に『こんな小さな子を置いて行くのか』と言われて、そのまま押し切られた…

二人分の感覚を知覚するのは大変なんだが…


「…あれは上手くいった訳じゃない。

 それに、まだ一つ目だ…」

「ふーんそうなんですか。で…次は何処に行くんです?」

「…ホーリアストリートにはユートピアコロニー市長フェンドリック・ハウマンの邸宅がある」

「へ〜良く知ってますねー。昔ここに住んでたんですか?」

「ああ…」


俺が紅玉に答えると、紅玉は急に表情を変え…


「あっ、初めてです!」

「…なにがだ?」

「ジョーさんが自分の事を話してくれたのは、初めてなんです!」

「…そうか」


どやら、俺はこの女に少し気を許しているらしい…

この後も他愛ない会話をしながら歩き、やがて市長の邸宅前まで行き着いた。

邸宅を囲う壁を横に見ながら門の前まで回る。

しかし、門の前には先客がいた。


「どーして、会えない等と言うんですの!」

『………』

「アポイントは取ってある筈なんだが」

『………』

「私達だって、暇じゃないんですから!」

「それは、お前の都合だろ……」


俺達は、門の前で怒鳴っている二人(怒鳴っているのは一人だけという気もするが…)に近づき、


「無駄だ、やめておけ…」

「なんですって、如何いう事です!?」


少女が振り返った、漆黒の髪が舞う…

そして、少女は


「変態!」

「……」


……仕方ないのかも知れないが、いきなり言われるとは思わなかった…


「一寸待ってください! ジョーさんは見た目は黒いですけど、心も黒いん です!

 だから、だから…

 この人は私が治療します!」


こいつはこれでフォローをしているつもりらしい。

だが彼女の迷言のせいで、俺は周りの人からかわいそうな人を見る目で見られる……

少女が同情の目で見ている。

頼むからやめてくれ…


「で、そのかわいそうな変態が如何したんです?」


どうやら、俺は少女の中で変態に決定したらしい。

こういうのは、否定しても事態が悪化するだけだと言う事はよ〜〜く知っている…

恋愛事なら否定しようがしまいが同じだが…まあ、今回はその手の事でないだけましだろう。

俺はその名称をあえて否定せずに会話を続けた…


「今は市長の祈りの時間だ。6時までは市長は誰にも会わない…」

「なっ、どうしてそんな事が分かるんです!?」

「ユートピアコロニー市民なら誰でも知っている事だ…」


そう、フェンドリック・ハウマンは新興宗教にどっぷりはまっている。ユートピアコロニー市民でそれを知らない者は殆ど居ない。

何でも2193年ごろに月の巫女と呼ばれる女に命を救われたらしい…


「そうなのですか…

 あれ…

 貴方、何処かで会った事ありませんか?」

「…ん、知らんな」


少女は不思議そうな顔をして俺を見つめた…


「似てる…

 でも、別人ですわよね…」

「……」

「あの、テンカワ・アキトと言う…」

『お入りください…中でお待ち頂くように市長が申しております』


インターホンから声がして、少女の父親らしき男は屋敷に向かっていく


「お前も来なさい…」

「すみませんでした、ぶしつけな事を言って…」


少女は、頭をペコリと下げて屋敷に駆け込んでいった…

あの少女、テンカワ・アキトを知っている?

もしかしてあの子は…


「あのー、この後どうするんです?」

「…もうここに用は無い」

「え〜、どーしてですか〜?」


そう聞いてくる紅玉を無視し、俺はホテルへと歩き出した…






AD2195/09/29 PM7:35 ユートピアコロニーレインボータウン


ここはレストランこうずき、今日も夕食を食べに来る客達でごった返している。

そんな中、今日はアキトだけが2階の自分の部屋に居た……

アキトは気絶している少女を警察に届ける事が出来ず、結局こうずきに連れて来た。

せめて、この子が元気になってから届けようと思ったのだ…


「ウ…ん……」


少女には玉のような汗が浮かんでいる。

アキトはその一つ一つを丁寧にタオルで拭っていく…

アキトはそれを、ずっと繰り返していた。

暫くして、少女が目蓋を少しずつ開いていく…

だが、まだ何処か夢見る様子で…


「ア…キ……ト……」


と言って手を伸ばす…

アキトはその手を掴もうとするが、


「チガウ…アキトジャナイ……」


少女のその声に、動きを止めた…


「ダレ?」


そう呼ばれるまでアキトは凍り付いていたが、


「俺はテンカワ・アキト。ここで、つっても分かんないか…

 レストランこうずきで住み込みのバイトをしてるんだ」


「私ハラピス…ラピス・ラズリ、

 私ハアキトノ目、アキトノ耳、アキトノ手、アキトノ足、アキトノ…、 アキトノ……、アキトノ………


少女の言葉にアキトは再び凍りつくのだった……






AD2195/09/30 AM1:17  崑崙コロニーメインストリートの路地 裏


「くそ! 私の研究はあと少しで完成だと言うのに…」


ラネリーは酔っ払いながらふらふらと歩き回る…

路地裏に漂うすえた匂いも酔っ払っているラネリーには気にならない。

ウイスキーの瓶を口につけ、ひたすらがぶ飲みする…


「研究成果ももう少しで得られる所だったのだ…

 こんな事で諦められるか!

 それに…ふむ…」


ラネリーが懐から取り出したのは、黒い硬質な布の切れ端と、奇妙な文様の浮き出たプレート、そしてカルテだった…


「これさえあれば…」


突然背後に気配が生まれる…

言葉を言い終わらないうちに声をかけられたラネリーは驚き硬直した。


「それを、渡してもらおう」

「な!?」


いつの間にかラネリーの後ろに小柄な男が立っていた…


「それを渡せば貴様の研究をさせてやってもいい」

「な…何を言っているんだお前は!」

「研究…したくないのか?

 どの道貴様はもう、崑崙大学総合病院では研究をさせて貰えないのだろう?」

「クッ…!」

「どうだ、貴様の能力を必要とされているお方がいるのだ。

 学者冥利に尽きるだろう?」


その言葉にラネリーは表情を変える…心なしか酔いも醒めたようだ。


「本当なのか? 本当に研究を続けられるのか?」

「ああ、俺は嘘はつかんよ」


まだ男の事は信用出来なかったが、

この時すでにラネリーの心は決まっていた…






AD2195/09/30 AM7:45  ユートピアコロニーレインボータウン


「はいラピスちゃん、たくさん食べてね」

「…モグモグ、んっ」

「あ、おかわりね……はい!」


サチコは本当に嬉しそうにラピスにご飯をよそう…

ラピスはまたモグモグと食べ始める。

暫くサチコはその姿を眺めていたが…


「御馳走サマ」

「お粗末さまです」


ラピスが食べ終わったので片付けを始めた。

そのまま流し台の方へ向かう…が


          …クィッ…


動こうとすると服の裾がつかまれた。

どうしたのかと振り返ってみると…


「片付ケ手伝ウ」


薄桃色の髪、雪のように白い肌、金色の目、ラピスはすこぶる付きにかわいい…

そんな少女に裾を掴まれるという事態に、サチコの何かが切れた…


「キャー可愛いー!! ラピスちゃん可愛い!!」


ラピスを抱きすくめ、そのまま持ち上げてグルグルまわす。何だか上下逆のジャイアントスイングみたいになっていた……

その大声につられてアキトとトウジが顔を出す。


「何やってんだか…」

「あのー、サチコお嬢さん…

 何だかラピスちゃん、白目向いてるみたいなんスけど…」

「え…キャー! 大丈夫? ラピスちゃん!?」

「……」


ラピスは暫く動けそうに無かった…






AD2195/09/30 AM8:45 オリンポス山山麓


「すご〜い。ジョーさん、ヘリコプターなんて運転出来たんですね」

「…いや、単にIFS仕様だからだ」

「それでも凄いですよー」

「そろそろネルガルの研究所につく頃だ。降りる準備をしておけ」


紅玉はシートベルトを着けた。

俺やアメジストは着けっぱなしなので関係無い。

固定された紅玉がふと思いついた様に聞いてきた…


「そういえば、結局昨日は市長さんの所に行きませんでしたね。どうしてですか?」

「…必要無いからだ」

「いや、だから、どうして必要なくなったんですか?」

「…市長は有能な男だ、奴がもし木星の事を掴んでいたのならもう動いているだろう。だが実際は礼拝なんぞを行っている…

 つまり、火星には情報すら届いていないと言う事だ…」

「でも、その木星トカゲとかって本当に来るんですか?」


紅玉は疑っていると言うより、俺の口から直接聞きたいようだ…

もうここまで巻き込んだのだから木星トカゲの事を少し話してもいいだろう。


「俺も、絶対どうなると言い切る事は出来ない、しかし、10月1日午後6時30分火星軌道上に奴らは現れる…

 奴らは高度な無人兵器による<火星住民殲滅作戦>を行う。

 無数に現れる無人兵器の前には、火星の人々も一ヶ月と持たないだろう…」


紅玉は少しの間、怯えた表情になる…

しかし、無理やり笑顔を取り繕いながら…


「もう、ジョーさんたらじょーだんは名前だけにして下さいよ」

「…信じないのならそれもいい」

「……嘘……

 …嘘ですよ…

 私だって知ってます、ジョーさんがいつも真面目だって事くらい…

 でも、そんなのが来たらジョーさんの治療が遅れてしまいます」

「……」

「私は、ジョーさんを治療するためにここに居るんです。本当はジョーさん絶対安静なんですよ、

 昨日確認した限りではもう左手は上がらなくなっています。足も歩くのが精一杯のはずです…

 内臓もかなり弱っています。もう、硬い物は喉を通らないでしょう…

 このまま無茶を続ければ…

 三ヶ月どころか二ヶ月で死んでしまいます。

 それに、それも生きていられる期間であって、動き回れる期間ではありません…

 体が動くのはもう長くて一週間です。

 本当に10月2日以後なら治療を受けてくれるんですよね!?

 私ジョーさんが死ぬなんてやですよ…

 でも…

 いえこれは最後…

 ってあははー♪」


最後は何か誤魔化している様だったが、お陰で詳しい事が分かった。

俺が出来る事はもう火星市民を助ける事のみと考えた方がいい…

ユリカ、ルリちゃん、ラピスすまない……

結局俺は中途半端なままだったのかも知れないな・・・


「…着陸する」


ヘリの正面に見えるネルガル研究所が徐々に大きくなっていく…

IFSによりためらい無く降下するヘリ。そして、ヘリポートでは出迎えの男が来ていた…





AD2195/09/30 PM1:20 ユートピアコロニー火星駐留軍基地


火星駐留軍――正式名称は連合軍第一艦隊となっている。しかし、誰もその名で呼んだりはしない…

何故なら、本来フクベ提督が持っていた地球の艦隊の一部だけが左遷されて来たものだからだ…

フクベ提督は元々1000隻を超える第一艦隊の司令だったが、地球の軍上層部との折が合わず、左遷の憂き目に遭った。

そのさい火星駐留軍に転向する者が後を絶たず、軍は名義だけでも第一艦隊として取り繕う事によりそれらの転向者を止めようとした。

結果、民間人があまり知らないうちに火星駐留軍は連合宇宙軍第一艦隊と言う事になっていたのだ。

その火星駐留軍・レーダー室…


「偵察艦トラユリ、消息を絶ちました!」

「なに? 何が起こったの!?」

「不明です。ただ、偵察艦の通信では“チューリップの化け物”とだけ…」


最初は真剣に聞いていたムネタケだったが、途中で顔色が変わる。


「何?チューリップが襲ってきたとでも言うの!?

 あんた達、もうちょっとまともな事は言えないの?

 報告する私の身にもなってちょうだい!!」


「しかし……」

「しかしもかかしもへったくれも無いの!

 私の事を笑いものにするつもり!?」


「はあ、すみません。」

「分かったら、ちゃんとした偵察艦の消息を立った理由を考えときなさい!!」

「……」


通信士は絶句して二の句を告げなかった…






AD2195/09/30 PM2:51 ネルガル研究所


ネルガル研究所の一室…広々としたソファーに座り、俺はネルガル研究所の所長と向かい合っている。

紅玉とアメジストは後ろに立っている。紅玉も先程の事があってか無口になっている様だ…

俺は昨日作っておいたファイルを読み上げる。

ネルガルシークレットサービスで働いていた俺にとって、ネルガルの偽の命令書を作る事等容易(たやす)い…

重要度Aを超える命令書にはアカツキのサインが入る事になっているが、

俺は筆跡鑑定を誤魔化せるレベルでそれを真似る事が出来る…

なにせ殆どの命令をアカツキから直接受けていた俺だ、あいつの字は嫌というほど知っている。

後は『アカツキからの極秘命令を持ってきた』と言うだけで良い。

あれでもアカツキは名前を伏せているので、部長クラス以上の役員にしか分からないのだ…

結果、役員に取り次がれる事となる。


「……以上が、ネルガル本社からの極秘命令だ」


この研究所の所長に向かいソファーにもたれ掛かった俺が不遜な表情で言う。


「そんな事が出来るわけ無いでしょう!」

「…何故だ?」

「私達には最優先でしなければならない事があります!

 マスドライバー施設を貸すのは良いでしょう…

 戦闘機もお貸しします。

 しかし、大型輸送船の建造なんかしている暇は無いんです!」

「せっかくドック施設が有るんだ、使わなければ勿体無いだろう。それに…」


後ろで控えているアメジストが抱えていたいくつかの図面を差し出す…


「これらの事をお前達の手柄にしてもいい…」

その図面を見ていた所長は一気に顔色を変え、

「これは、NERGAL−ND−001の完成図面!

 しかもこんなに細かく……

 それにこっちは、エステバリスの設計図…

 それぞれのフレームの欠陥までフォローしてある……

 どこでこんなものを!?」

「…そんな事は、どうでも良いだろう?」


どこで、と言われてもな…

あの図面は、セイヤさんのデ−タディスクに入っていた情報をプリントアウトしただけなのだ。

セイヤさんのディスクを最初に見たとき、本当にびっくりした、

中に入っていたのは、全てのナデシコ級戦艦及びエステバリスの設計図だったからだ。

最初、セイヤさんは俺が過去に来る事が分かっていたのかもしれないとも思った。

しかし、最後にこう書いてあった…


『こいつは、どんな時代に行ってもそれなりに役に立つはずだ』


と…

セイヤさんの心理は分からずじまいだが、設計図は役に立つ…


「分かった、命令に従おう」

「…ああ、それでは施設の使用に際してはこのアメジストに従う様に」

「その少女にか? 君は残らんのか?」

「…現場でなければ出来ない事も有るからな」

「分かった…それにしても輸送船に相転移エンジンを使うなど…」

「…では行く」


俺は立ち上がり部屋を出ていった…






AD2195/09/30 PM3:24 ユートピアコロニーレインボータウン


「へ〜。変わった事も有るもんだな…」

「そうだろ…」


学校の帰り道、アキトはシゲルにラピスの事を話しながら歩いていた…


「そういえばさー、ここの近くで遺跡が発掘されたって言ってただろ」

「ああ」


アキトは ユートピアコロニーの南の方で一週間前位に発見された、変わった形の岩の 事だろうと当たりをつけた。

最もあれは自然の悪戯だろうという事で、次の日には殆ど話題にのぼる事も無かったのだが…


「あれって、遺跡なのか?」

「アキト…お前、ロマンが無いな。良いか、あの岩はな…宇宙人の存在を示している人面岩に匹敵する大発見なんだぞ!

 そもそも、お前はロマンというものをだな…」

「分かった! 分かったから…

 それで、その遺跡がどうしたんだ?」

「明日行ってくる」

「はあ…?」

「だから、明日遺跡の調査に行くと言ってるんだ!」

「学校はどーすんだ?」

「休む!」


こう言い出した時のシゲルに何を言っても無駄だ。

適当に流すに限る、そうアキトは判断し…


「がんばれよ!

 じゃ、今日はこれで!」


ダッシュで去っていくのだった…






AD2195/09/30 PM5:50 ユートピアコロニーホーリアストリート


ラピスがアキトに拾われてから約1日…その日の午後。

十分体力が回復してきたと考え、ラピスは一人で出かけようとしたのだが…

サチコに見つかってしまい、付いて来られてしまった。

サチコがあっちこっちとラピスを連れまわすので、肝心のアキト捜索が進んでいない…

リンクで連絡…という事も考えたのだが、これは何故か失敗した。

こちらに来てからラピスは何度もリンクを開こうとしたが、何故かリンクが不安定で上手くいかないのだ。

しかし、この近くにアキトがいる事だけは何となく分かっていた。

現在はデパートの試着室、サチコに無理やり連れてこられたのだが…


「ラピスちゃーん! 次はこの服着てみてくれる?」

「ワカッタ…」


さっきから、ラピスは着せ替え人形と化していた。

現在は黄色いワンピースなのだが、次はリボンつきの帽子が付いたセーラー服…

この調子で一時間ほど服を変えている…


「コレデイイ…?」

「きゃーラピスちゃん可愛いー!!」


その度にサチコに抱きつかれていた…






AD2195/10/01 AM8:30 ユートピアコロニーホーリアストリート


「ジョーさん、ジョーさん! 起きて下さい! ジョーさん!」

「…ん、どうした?」


紅玉が俺を揺り起こす。彼女は何やら切羽詰った表情をしていた…

まさか、もう木星トカゲが現れたのか?

俺は直ぐにベッドから起き上がり、辺りをうかがった…


「お客さんです…」

「…客?」

「はい、もう部屋の中に入ってきちゃってますけど…」

「アキト…」

「…ラピス?」


俺がその言葉を言い切らないうちにラピスは俺の胸に飛び込んできた…

俺もラピスを優しく抱きしめる。

それと同時にリンクがつながる…


(ワタシハアキトノ目アキトノ耳アキトノ手アキトノ足…

 ワタシハアキトノ一部アキトト共ニイル為二私ハイル

 …モウ二度トハナレナイ……)


…相変わらずだが、自我は前よりも一人立ちしつつあるようだ。

抱きしめていた手を離し、ラピスの目線の高さにあわせてしゃがみこみバイザーを取る。

そしてラピスに微笑みながら…


「ラピス、お帰り…」

「タダイマアキト…」


ラピスが照れているような感情が伝わってくる。

しかし、ラピスが自分から俺を探しに来てくれるとは…

本来ならば俺が探さなければならないというのに…


「ジョーさん、本名はアキトって言うんですね。

 それに、そんな表情も出来るなんて…

 前はものすごいプレイボーイだったんじゃないですか?」


紅玉は俺に向かってとんでもない事を言っている。

しかしそれも、もう一人の訪問者が現れるまでだった…



     コンコン…


『ラピスちゃん、ここですか?』


外で誰かが扉を叩きながら話しかけてくる…

紅玉が扉を開けると…


「ラピスちゃーん!」


といいながら女性が突進してきた…


「サチコ…」


ラピスがぽつりと呟く。サチコ…ん…ああ!

レストランこうずきのサチコお嬢さんか!?


「ちょっとあなた!ラピスちゃんがいくら可愛いからって誘拐なんて犯罪よ!」





…いきなり犯罪者にされてしまった……


「えぇ〜そうなんですか?」


信じるなよ…


「とにかく、ラピスちゃんは返してもらいますからね!」


………

ひどい言われようだが、ここは考え所だ。

俺が犯罪者なのは事実だし、これからの事にラピスを巻き込みたくは無い。

そう考えていると…

スッとラピスが俺の前に出て、ピトッとすがり付く。


「ラピスの場所はココ、アキトのイル場所…」


ラピスの感情が表に出ている…

今のラピスには驚かされる事ばかりだ。

その言葉にサチコお嬢さんが戸惑い、

俺の方を見た。

そして呟く…






「もしかして…

 アキトちゃん?」






呆然としたような空気の中、俺は何も言えなくなってしまった…






なかがき2

申し訳ありませんお許しをー(泣)

書いても書いても時間が進まずとうとうこんな事に…

いつになったら終わるんだとお思いの人もいるでしょうが、

一応後編を今週中に出す予定は変わっておりませんのでご安心を…

謝るのはまあこれ位に致しまして、

Chocaholicさん、レイジさん、タイコさん感想どうもありがとうございます。

あなた方のおかげでこのドタバタ物語もどうにか止まらず執筆(?)できます。

これからもなんとか飽きられないようがんばります、

それでは、これにて。



押していただけると嬉しいです♪

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