あるいは…
私達がやってきた事は無駄だったのかもと思う事もあります。
でも、そんなことを考えていて生き残れる状況ではないです。
戦いの中で、生き残る事。
それは、あまり意味のあることではないのかもしれません…
でも、生きていなければ平和を唱える事も出来ないでしょう。
今を生きる、私はその事を実感しています。
そう、前よりもずっと…
機動戦艦ナデシコ
〜光と闇に祝福を〜
第十三話 「『時々』聞く言葉」前編
ステーションヒルコ…
元々は木星へ向けての中継点になるよう、アステロイドベルト上に建設される予定だったステーションコロニーである。
だが、連合宇宙軍は元々一枚岩ではなかった為、ヨーロッパ諸国のごり押しにより別のステーションを建造、
計画中止となったヒルコは破棄される寸前アメリカに接収される事となる。
アメリカは連合各国に秘密でヒルコを火星衛星軌道上にデブリに見せかけて設置、核を配備する。
火星の連合宇宙軍すら知らない間に配備されたそのコロニーは第一次火星会戦で使用される事も無く放置される事となる。
「…というのが、私の知る限りのステーションヒルコの情報ですな。もっとも、
私の閲覧権限ではトップシークレットクラスは少々判りかねますので、
想像で補っている部分もあります。あまりアテにはしないでください」
「いえ、火星到着までに私が調べていた情報ともほぼ一致します」
プロスがステーションヒルコに関する情報を淡々と述べているが、実質的には全てを語っているのかどうかは分からない。
彼にもネルガルの利益を考える者としての立場もあるだろうし、ルーミィのような部外者がいる場でそうそう全てをもらしはすまい。
だが、それでもほぼ必要な情報が一致していた事にルーミィはひそかに安堵もしていた。
現状、1000人の避難民とナデシコクルーの250人を地球まで食べさせていく事は難しい。
かなりの制限を設ければぎりぎり持つだろう、というような食糧事情である。
空気はある程度何とかなるが、何らかの理由で輸送船の空気清浄機能が低下していた場合、かなり苦しい事になるだろう。
一番いい手は前回と同じボソンジャンプによる帰還だが、それを行う事ができるのは、アキトとアイちゃん、ユリカの三人だけ。
アキトはボソンジャンプをよく知っているし、手術を終えたばかりだが、目が覚めれば無理にでもやろうとするかもしれない…
だが、かなりの重傷を負った事を考えれば、今は安静にさせるべきだろう。
もう一人の資質者であるユリカはと言うと、何も知らないのだ…いきなりやれと言われても混乱するだけだろう。
最後のアイちゃんは…どういう経緯と事情があるのか判らない為、頼るにはいささか不安もあった。
その為、ルーミィはステーションヒルコへ立ち寄る事を提案したのだ。
このステーションヒルコについては特に調べたというものではなく、実際にはコウイチロウから聞かされた話だ。
ユリカが知らないのも無理は無い…本来、連合宇宙軍・アジア方面軍には秘密にされていた事だったのだ。
しかし、コウイチロウはムネタケ・ヨシサダから手を回し、その手の情報を掴んでいた。
もっとも、その頃は連合宇宙軍自体が弱体化して、アジア方面軍以外の軍は10分の一程度にまで縮小していたのだが…
どちらにしろ、使用された事は一度も無い。
月独立派に打ち込んだ核はこのステーションからの物ではないし、その後は核兵器など一度も使用されなかったのだから…
ナデシコは隕石に偽装しているそのステーションの軌道計算を行っている。
実質的に、凄まじい速度で火星の静止衛星軌道上を周回しているので、捉えるのはそのポイントで待てばいいという事になる。
もっとも、木星トカゲに見つからなければの話だが…
現在の所、まだ木星トカゲに動きは無い、ナデシコとしては早めに動いてしまいたい所であった。
「現在高度22000km静止衛星軌道にのります」
「ステーションヒルコとの接触時刻まであと37秒33」
「時間あんまり無いですね…
じゃあミナトさん、相対速度あわせちゃってください」
「は〜い、ちょちょいのちょいっと。こんな感じかな?」
そうやって、徐々に加減速を繰り返してナデシコは隕石へと接近していった。
輸送船は一応追いついてきているものの、微調整は間に合わず接近にはもう少し時間がかかりそうであった。
「ステーションって言うくらいだからどこかに入り口があると思うんだけど…」
「そうはいってもねぇ〜。ルリルリ、判る?」
「はい、現在全方向スキャンを開始しています。内部構造の完全把握には時間がかかると思いますが、入り口の見当は付いています」
「へ〜さすがルリルリ♪」
「(///)…では、データ送ります」
「はいはい♪ ふ〜ん。意外に簡単に入れそうだけど、少し壁を突き破るしかないかも。艦長どうします?」
「そうですね、ルーミィさんプロスさん。入り口の解除コードに関して何か知っていますか?」
「いえ、私はそこにある事を知っていただけですから」
「私も詳しい事は判りかねます」
「じゃあ、仕方ありませんね、ディストーションフィールド最大出力! ミナトさんお願いします!」
「オッケ♪ ナデシコアタックいっちゃうわよ!」
ナデシコは入り口と思しき場所に向かってディストーションフィールドを張りながら突撃をかける。
ややあって巨大な衝撃と轟音を伴い、壁を突き崩してナデシコは中に進入した。
静止軌道に上がった事で相転移エンジンも回ってきている為、そうそうディストーションフィールドが破られる事もない。
だが、激しい揺れと音は伴っている。既に真空に近いこの空間でぶつかり合ったとしても音などしない筈だが、直接接触する場合は別だ。
ディストーションフィールドに破片などがあたった場合、ディストーションフィールドを支えているナデシコにも振動は伝わった。
「結構ゆれますね…」
「大丈夫、大丈夫! この程度じゃナデシコには傷一つつきません!」
「何言ってやがる! 既にぼろぼろじゃねえか! 震動一つで壊れかねないぜ!?」
「心臓の悪い人が震動に巻き込まれて言った言葉、はぁしんど…ククク」
「まあまあ。確かにそうだけど、破片とか入って来てないみたいだし、気にしなくてもいいんじゃない」
「ディストーションフィールド出力安定。問題ありません」
「じゃあそのままナデシコをドック内に入れてください。その後はエステバリス隊による内部調査を行います。
リョーコさん、ヒカルさん、イズミさんお願いします」
「おう! まかしとけ」
「今回はテンカワ君いないからね〜、頑張らなきゃ」
「ばっか、おめぇ関係ねえよ!」
「ふ〜んそうなんだ〜、でもぉほっぺ紅くなってるよリョーコ♪」
「ふむ、紅くなってる」
「手前ら! バカな事言ってないで、とっとと行くぞ!!」
「「は〜い」」
三人は言い争いと言うべきか、いつものレクリエーションをしながら格納庫の方に向かっていく。
それを、ブリッジクルーは苦笑とともに見ていたが、ふと思い出したようにユリカはフクベに聞く。
「そういえば、提督は先ほどの話ご存知でしたか?」
「うむ、知っておったよ。もっとも火星を逃げ出した後にだが…」
「ではなぜ、さきほどは教えてくださらなかったのですか?」
「私が言うべきではないと思ったからだ。それに…私はステーションに立ち寄る事は反対だからな」
「はえ? でもでも、今のままじゃナデシコかなり危険ですし、どこかで修理してあげないと」
「それはそうだが、あのステーションは衛星軌道上にある。敵の機動艦隊の巡回経路にも近い」
「う〜ん、でも今のうちにやっておかないと、トカゲさんたちと接触した時に対応できなくなっちゃいます」
「否定はせんよ、だから先ほどは口を出さなかったのだ」
「なるほど〜判りました提督! 私達にど〜んと任せちゃってください!
絶対っていうと言いすぎかもしれませんけど、みんな頑張っていますからきっとうまくいくと思うんです」
「確かに、この艦のクルーは優秀だからな」
「はい!」
フクベの言葉を聴き、ユリカは嬉しそうに答える、
彼女にとって“自分らしくいられる場所”であるナデシコのクルーは家族も同然という意識があった、その為だろう。
そんな事をしている間にも着々と準備は進み、エステバリス隊が発進する事となった。
もっとも、先の戦闘で重傷を負って意識の戻らないアキトや、打撲・裂傷が多く現在病室に括りつけられているヤマダは動く事ができず、
必然的に三人娘の出番となる。
そして、IFSを日常的に使う火星の出身者でエステの搭乗経験もある、ルチル・フレサンジュにもエステで出てもらう事になった。
もちろんプロスは反対したが、ユリカの説得に渋々ながら了承した。
ルチルが乗るのは砲戦フレームである。
とはいえ、通常武装である180mmカノンなどは取り外し、バックパック部分に人を乗せられるコンテナを積んでいる。
平たく言えば輸送用だ。
乗っているのはゴートと警備に携わっている船員が3名、整備班員が2名、そして、なぜか付いてきているリトリア・リリウムの7名だ。
人員を多く割けば効率はいいが、ナデシコの防衛力が損なわれる為、あまり多くは割けない。
もっとも、全てのエステを出した時点でナデシコの近接防御能力は皆無、ともいえるが…
ステーションヒルコはかなり広い。それに元々は採掘用の資源コロニーであるため、内部は複雑に絡み合う通路が存在していた…
その中を、手探りの状況で調べて回っている。
現状、三人娘のエステが先行し、かなり遅れて砲戦フレームに乗ったルチル・フレサンジュが続く…という構成になっている。
後背からの伏兵を無視するわけにはいかないが、ナデシコのセンサーを騙しながら、更にエステを騙しきるのは難しいだろうと判断し、
三人娘が先行して危険を調べてルチルの進行ルートを確保するという手法が取られていた。
しかし、内部は暗いだけの無機質な通路であり、そこを警戒しながらただ進んで行くと言う作業は神経を使う、
下手に気を抜いて不意打ちをされるような愚を冒すわけにも行かず、イライラばかりが募っていく。
現にリョーコはそのイライラを隠そうともせず、渋い顔をしている。
『ったくよ、敵でも出てくりゃ活躍の場もあんだろうけど…これじゃあな』
『ひがまないひがまない、敵が出てこなければその方がいいんだしさ』
『まあ、そうだけどよ〜』
『バッタなんかなら潜伏可能、気を抜いていると死ぬわよ』
『わーってるよ』
お互いに軽口を交わしつつ通路を進む。とりあえず最初の目標は中央部のコントロールルームだ。
やはり、内部事情を知らない事には何も出来ない、現状ではどんな物資がここに蓄積されているか判らないのだ。
それから暫く進み、何事も無くコントロールルームに近い場所へとたどり着いた一行は、
三人娘に外の警備を任せ内部に突入する為のブリーフィングをしている。
その場に、灰色の髪の少女リトリアが割り込んできた。
「レディ、失礼ですが危険すぎます。
コントロールルームの制御を行うためにはセキュリティを突破しなければならない。終わってから来てくだされば安心です」
「私をレディって言ってくださる事は嬉しいですけど、心配要りませんよ。私も伊達に宗教をしているわけじゃありませんし」
「しかし…」
ゴートは困ってしまっていた。今リトリアが言った事は意味深ではあるが、彼女の姿を見れば体格的にも格闘は難しいだろう。
それに、宗教家が銃を持っているとも思えない。これが宗教を信仰している下部の一般人ならテロを行う事もあるが、
最高指導者が直接手を下す事はない。仮にも彼女は聖蓮教の最高指導者七人の巫女、いや彼女が入ってからは八人か…
まあ兎に角、そんな彼女はテロなどしないだろう。
絶対とは言い切れないが、それでもそういう事が出来たとしても兵士としての能力はまた別だ。
コンピューター関係の技能を持っている人間は殆ど整備班に集約される事もあり、
修理のためにナデシコから動かせないので仕方なくつれてきたのだが…
まさか、何か特殊な技能でも持っているのだろうか…ゴートがそう考え込んでいると、
ルチルが、体に張り付くようなボディスーツを身にまとい、金髪を揺らしながら砲戦フレームを降りてきた。
そして、フードを跳ね上げ灰色の髪と眼を露出させた少女リトリアに少し目をやると、
ニコリともせず、ゴートに向き直り、
「彼女の護衛は私がやるわ、それなら問題ないでしょう?」
「うっ、うむ…しかし、砲戦フレームはどうするつもりだ?」
「スバルさん達に任せておけば大丈夫でしょう? 三人いるんだもの」
『おうよ、安心していってきな』
『でも、あんまり遅くならないでね〜』
『砲戦フレームの護衛は、ほうせんは…ようせんわ…苦しい…』
「…まあ、いいだろう。では突入する」
現在の位置からコントロールルームへ向かうには、目の前にある扉を開く必要があるが、
電子キーでロックされているので先ずそこから何とかしなければいけない。
そのため、端末を持っているリトリアが電子キーにコードをつないで小型のキーボードを操作する。
データはナデシコに送られ、それをオモイカネが解析、ロックを解除する。
リトリアが、それを確認して手を挙げた。
徐々にコントロールルームへと続く廊下の扉が開く…しかし、予想通りというか、エステの入る大きさではない。
そこで、警備用の罠を生身で突破しなければいけなくなる。
人口重力が切れていない事から判るとおり、電源が生きているらしいため、
少なくとも対人トラップは生きている可能性が高い…
ゴートは最初に廊下に飛び込み、監視カメラと対人レーザー装置の位置を把握する。
と、同時にレーザーが光を放つ。その瞬間、半ば本能的に身を伏せたものの、その一筋がゴートの肩を撫ぜ上げる…
だが、それによって位置を把握したゴートと警備人員の3人はレーザーを破壊する為に銃を乱射した。
それから何度か鉛玉と殺人光の交換をし、ゴートの射撃は幾つかレーザーを破壊する事に成功したのだが、
ソレの仕掛けられた数は多く、銃の乱射も相まって非常に危うい状態になっていた。
「くそ! 流石に数が多い…一度下がるぞ」
「「「はっ!」」」
「どいて!」
「何!?」
ゴートの脇を抜けて、一陣の風が走り抜けた、その後に連続するカシャーンという、落下物が地面に衝突する音。
下を見れば、対人レーザーの銃口が全て落下している。
ざっと見て十以上はあるその銃口に、ゴートは半ば唖然として、その風――ルチル・フレサン
ジュを見る。
「さすが、火星ネルガルSSのトップエージェントだっただけはある。その武器はワイヤーカッターか?」
「さすが、と言われるほどでもないわ…この強化タングステンワイヤーの強度はダイヤモンドにほぼ匹敵するもの、
標的に引っ掛ける事さえできれば確実に仕留められる。それだけよ。
さっ、行きましょう。あまり時間も無いんでしょう?」
「うむ、そうだな…」
ゴートはどこか不満そうではあったものの、気を取り直し先に進む。
確かに、その装備はナデシコ艦内にあったものだ。ウリバタケの強化案を入れた極細の強化タングステンワイヤー…
量産できれば、エステバリスの筋肉駆動系の軽量化が見込める、というものだ。
しかし、量産にはコストがかかり過ぎ、お蔵入りとなっていた代物でもある。
そのワイヤーの先端に重石となる小型のブレードを取り付けたのが現在ルチルの使っている斬糸だ。
ただ、ワイヤーというものは使う為に凄まじい修練を必要とする。そもそも、銃のように使い勝手のいい代物ではないのだ。
それを使いこなしてしまうルチルという女性は、ある種の“得体の知れなさ”があった。
…もっとも、その点ではリトリアも同じなのだから、ナデシコ自体にそういったワケアリが多いという事なのかもしれない。
そうやって、幾つかの対人トラップを無効化しながらコントロールルームへと向かう。
罠は何パターンかあったものの、問題なく突破しコントロールルームまでやってきた。
「さっ、これで扉は開いたよ。後はコントロールルームの制御だけだね。
普通に起動しているならパスワードとか、必要ないと思うけど…」
「それは何とも言えんな…兎も角、リトリア卿、ご協力感謝する」
「ううん、別に構わないよ。困った時はお互い様だもんね?」
ゴートは整備班を向かわせ内部の確認を行う。
どうやら、一部老朽化で止まっている部分はあるものの、問題なく動いているようだった。
食料品は長期保存のきくパックものや乾燥食品くらいしか使えそうに無かったが、それでもそこそこの量が残っていた。
水はかなりの量が残されており、ナデシコや輸送船では積みきれないだろう…
その他にも補給物資をかなり残しており、このステーションがどれだけ重要視されていたのかが伺える。
その割りにセキュリティが甘いのは、そもそも存在自体を隠していた為だろう。
ゴートはそれだけ確認すると、セキュリティの解除をリトリアに依頼し、一度砲戦フレームまで戻っていった。
整備班と警備班はそれぞれの場所へと向かい、実数的な在庫の確認を行う。
その場に残ったのは、リトリアとルチルのみとなった。
カタカタとキーボードを叩く音が響く…
リトリアは、一心不乱にコントロールルームの操作を行っていた。
そんな彼女に唐突に声がかけられる。
「リトリア・リリウムだったわね…貴女は何者?」
「ひゃ!? ちょっと! びっくりするじゃないですか! キーボード操作を誤ったらどうしてくれるんです!?」
「ふふふ…上手いわね、話を逸らすの…でも、言わせて貰えばセキュリティは既に解除されてるんじゃないかしら?」
背後から声をかけたルチルは意味深に微笑み話を促す、
リトリアも一瞬で表情を戻した、ある種の緩みがあったその顔は今は真剣そのものとなっている。
「どうしてそんな事が判るんですか?」
「貴女、キーボードを操作しながら別操作でホシノ・ルリにセキュリティの解除依頼したでしょう?
セキュリティなんて彼女にかかれば物の数じゃないわよね?
そして、それでも貴女は手を休めていない…
何かを探しているの?」
「それはまあ、食料とか、物資とかいいものが無いかな〜って」
「嘘つきね…そんなのは、さっきの段階でわかっていたじゃない。セキュリティの解除が終わった今、ここには用が無いはずよ」
「はぁ…鋭いですね。推理作家になって見ますか?」
「あいにく文才が無くて」
「それは残念です。面白いのが見れると思ったんですけど」
「そう、でも今はそれより」
「はい…仕方ないですね。
一つ言っておきますが、それを聞いても言いふらさないでくださいよ。
もっとも、言いふらしても困るのはむしろあなただと思いますが…」
「それは…いったいどういう意味かしら?」
「結論から言うと、今探しているのは木星トカゲとの通信記録です…」
「通信? オメガがやっていた通信の記録でもあるのかしら?」
「いえ、そういったものではないです。
通信データは残らないんです。
彼らの通信は普通の方法ではないですから…
でも、通信をする時は色々痕跡が残るのは間違いないので…
私としても、今のうちに情報を掴んでおかないと…っと、まあ、その辺は置いておくとして。
これを知れば少しは意味があると思いますよ」
「そういえば、そうね。何者かは知らないけど、木星トカゲは意思の疎通が可能なのよね。
どういう手段かは知らないけど…
でも、ならどうしてその事を皆に伏せておくの? いえ、私がそれを話してはいけないわけは?」
「簡単な理屈です。戦争の相手は意思疎通が出来ない方が都合がいい人たちもいるんですよ。
ネルガルも企業ですから。当然事実を伏せにかかってきますよ?
下手をすれば、その事を話した事によって拘束されるかもしれません」
「なるほど、敵は悪、我々は正義ってワケね?
確かに、あのナデシコって民間人中心だものね、下手をすれば士気に関わるって言うわけね」
「それだけじゃありません。地球上層部にとっても同じ事です。相手が敵である事を疑わせない為に情報統制をしいています」
「そんな事まで判るの? 随分詳しいのね巫女さんって」
「別に巫女の力で知ったとかいうつもりはありませんが、情報源は漏らせませんよ」
「力ずくでも?」
そういうと同時に、ルチルの姿が掻き消え、一瞬で彼女の背後に現れる。
これがアキトなら反応出来たかもしれないが、リトリアにはとても反応できる速度では無かった…
ルチルは背後から腕を捻り上げていく、リトリアの腕は嫌な軋みの音をあげ始めた…
リトリアは痛みのために息がつまり、ちょっとしたショック状態を引き起こしている。
「どう? 死にたくなかったら、貴女の正体と目的をはきなさい…言わなければ腕をへし折るわよ」
「いた! ルチルさん痛い!!」
「痛くて当然でしょ? 折れればもっと痛くなるわよ。さあ、答えなさい!!」
「…っ!!」
リトリアは痛みで涙目になりながらも、歯を食いしばっている。
それを見て、ルチルは更に力をこめて腕を捻り上げた。
「ギギギィ…」
「なかなか粘るわね…でも、次は折るわよ?」
「ッ……!」
既に捻りあげられた腕の痛みはかなりの物だったろう…意識が朦朧としていてもおかしくない。
しかし、それでもリトリアはルチルを睨み返した。
ルチルは、リトリアがどれくらい真剣にそれを行っているのかを知った、
だが、目的を聞き出さねばこの先の不安要素になるのも事実。
ルチルは意を決して、捻り上げた腕に力をこめた。
「やめないか! ルチル・フレサンジュ!!」
今にも腕を折ろうとしていたルチルを止めたのはゴートの抑止の声だった。
ルチルはゴートを一度睨みすえてから、ルチルの手を離す。
「なぜこんな事になった? ルチル・フレサンジュ。
場合によっては、減俸だけではすまなくなるぞ!」
「…」
「待ってください」
「リトリア卿…もうお加減はいいのですか?」
「はい、腕は少し痺れてますけど。問題ないです」
「それならいいのですが…」
「それと、ルチルさんの事は不問にして下さい」
「何故です、レディ。貴女は被害者ですよ?」
「それは違います。彼女は私が秘密を持っている事が許せなかっただけです。
事実、ネルガルに話していないこともありますし…」
「…それは流石に聞き捨てなりませんな…」
「でも、ゴートさんならわかってますよね?」
「まあ、確かに…貴女は会長のお客人でもありますし…
それに、聖蓮教と諍いを起こしてまで聞くことではないで
すな」
「そういう事です。ルチルさん、ですから今の事は無かった事にしましょう…」
「ルチル…」
「わかったわ。確かに軽率だった…今回の所は引いておくわ」
「ルチル!」
「まあまあ、ゴートさん。私は構いませんから」
「そうですか…では、積み込み作業に入りますので。人員が動きます。
我々はそろそろナデシコに戻る事にしましょう」
「判りました」
ひと悶着あったものの、その後は何事も無くリトリアたちはナデシコに帰り着き、物資補給の段階になったのだが。
実際問題としてエステで運ぶしかない為、三人娘とルチルは休む間もなく再度突入する事となった…
なかがき
随分と久しぶりになるな〜この作品も。
かれこれ三ヶ月以上たっているかな…(汗)
言い訳になるけど、他のSSとか書いていたから、三ヶ月以上あいたという訳でもないんだけど…
でも、このSSは三ヶ月ぶり…憶えている人が居るか不安です(滝汗)
確かに絶望的ですね。
よくもまあ私のSSをこんなに長い間ほっぽらかしに出来たものです!
もう一度懲らしめてやる必要があるみたいですね…
いや…それは…(汗)
色々理由があって…
他のSSは書いているよううがあるのにですか?
見苦しい言い訳ですね。
うぅぅ…
せめて後編はさっさとあげてもらいます。
ていうか、いい加減地球帰還後の話に移行してください。
だらだらやってればいいって物じゃないんですよ!
はい…その通りです。
WEB拍手ありがとう御座います。
作品に対する拍手はとても嬉しく思っております。
お返事などをきっちりとこなせないのは申し訳ないです。
もう暫くしたら、またきちんとお返事できる事と思いますので、次回か次々回くらいからお返事を復帰したいと思います。
もう暫くお許しください。
押していただけると嬉しいです♪
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