海賊二人が驚く中、平然としたままアティは微笑んでいる…

アティはどうやら相手の性格を読み切っていたらしい、ユリカに通じるものがあるな…

軍隊の指揮なども出来るだろう…


「やれやれ…こちらの考えまでお見通しとは…」

「気に入ったぜあんたのその肝っ玉! なあ先生達よよけりゃ客分として俺らの船にこねえか?」

「え?」

「船ですって!?」

「おうよ! 今は壊れちゃいるが直せねえ訳じゃねえ、食い物も水もしばらくの分なら蓄えがあるし、修理を手伝うんなら礼として近くの港に乗せてってやる ぜ、どうよ?」

「わかりました、その提案乗りましょう」

「!?」

「おーっし、そうと決まったんなら船で待ってる連中にも紹介しねえとな…さあ、ついてきな」


アティがどんどん話を進める中、俺はこの先の事も考えていないというのに、なし崩し的に巻き込まれ始めているのを感じていた…




Summon Night 3
the Milky Way




第二章 「暢気な異邦人」後編


私達は今、海岸線を東に向かって歩いています。

金髪さんと召喚士さんに先導されて歩いているのですが、太陽の照り返しで気温が高くなってきています。

元々南国育ちの私はそうでもないけど、ベルフラウちゃんは少し熱いみたい…

そんな時アキトさんが気付いて水を飲ませてあげていました。

よく気がつ付く人ですね…もしかして、意外と先生とか向いてるんじゃないかしら…

そうして、暫く歩いていると金髪さんが話しかけてきました…


「そういや自己紹介まだだったな…」

「ああ、そういえば」


金髪さんで覚えてしまっていました…(汗)

でもそういうのはよくありませんよね…

私は金髪さんの方に向き直り、お話を聞きます。


「俺はカイルだ、海賊一家の元締めをやっている、腕っ節の強さにはちょっとした自信があったんだが…

 わはははっ! あっちの兄さんにとっては赤子のてを捻るようなもんだったみたいだな…」

「…いや、あの人は別格ですよ…気にしても仕方ありません」

「で、こっちがヤード、見たとおり召喚士だ」

「どうぞ、よろしく」

「ちょいと訳ありで俺たちの客になってる。まっあんたらと同じってこったな」

「ならお前はその男にも負けたのか?」

「キツイね〜…別にそういう訳じゃないんだが、その辺はおいおいと、な?」

「好きにしろ」


アキトさんがカイルさんのお話に茶々を入れています。

うん、仲良くなれそうですね♪



それから、また暫く歩いていると、ベルフラウちゃんが私を手招きしています。

私はカイルさん達に断って近くの茂みに行きました…


「ねえ、ちょっとこっち来なさいよ」

「なぁに?」

「貴女ねえ…本当にいいんですの?」


私が近くによっていくとベルフラウちゃんは腕を組んでむぅ〜と言った感じに頬を膨らませていました…

ベルフラウちゃんがそういう事をすると余計可愛いんですけどね♪

私は、出来るだけ真剣に応えようと思い、しゃがんでベルフラウちゃんの目をみました。


「駄目かな?」

「当たり前でしょ!? 相手は海賊ですのよ…」

「う〜ん…でも悪い人達には見えないよ?」

「はぁ〜それは、貴女がお人好しだからですわ…」


うぅ…ベルフラウちゃんに呆れられちゃった(汗)

でも、これ以上良い方法は見つからないと思うんだけどな…

その時、茂みを掻き分けアキトさんが現れました、


「貴方聞いてましたの!?」

「ん? 俺は呼びに来ただけだが?」

「そうですの…では、貴方にも一応聞いておきますわ、海賊と仲間になる事についてです…どう思いますの?」


アキトさんは一瞬何の事かという顔をしましたが、その後納得いった風にうなずいて、ベルフラウちゃんに応えました。


「怖いか?」

「そっ、そんな事ありませんわ!」

「大丈夫だ、お前は守られている、アティにも…まあ俺も…な」

「まあって何ですの! 大体そんな変態みたいな服を着た人に守られたって嬉しくありません!」

「変態…ぷっ…ククク! ハハハ!!」

「一体なんですの!?」

「いや、この世界でもこの服は変態なのか?」

「はっ、もしかして本当に変態ですの!?」

「いや、この服のセンスは以前別の奴に同じ事をいわれたことがあってな…」

「…」

「その当時はこれが無ければ、まともに感覚がつかめない状態だったからな…」

「感覚がつかめない?」

「五感が殆ど無くなっていたからな…」

「そんな!? では今も…」

「いや、今は別に必要ない…この世界に呼ばれてから何故か五感が回復している…この服装をしているのは単に他に着るものが無いからだ」

「…あのね!」


完全にアキトさんのペースに巻き込まれているベルフラウちゃん…

なんていうか、仲の良い兄弟みたいな感じに見えてきます…

でも、アキトさん五感が不自由な人だったんですか…それであの戦闘力…

どんな訓練の仕方をしたらあんな風になれるのか、見当もつきません…


「まあ、気にしても仕方ないと思うがな…」

「どういう事ですの?」

「あの男達についていかなければ、現状この島で暮らし続ける事になるがいいのか?」

「うっ…なんでここが島だって分かりますの?」

「今まで歩き回ってみた所、この島自体は三日もあれば一周してしまえる広さしかない…ちょっと上から見てみればわかる…」

「上からって…」


ニヤリと口元を歪めるアキトさん…

これ以上説明する気は無いと言う事でしょうか?

ベルフラウちゃんもそのことに気付いたのでしょう…急に真っ赤になって怒り出し…


「私は貴方の事もまだ信用してませんのよ! そんな事いわれる筋合いはありません!」

「まあまあ、ベルフラウちゃん、あの海賊もアキトさんも信用できる人達ですよ」

「はぁ…っ、知りませんわよ私は…大体ね…」


今度は私がたしなめられてしまいました(泣)





















海賊達は道すがら色々な事を話してくれた…

この島が異常な島だと言う事については、正直この世界自体初めてだから俺には判りかねるが…


それから、アティに召喚術について少し聞いた…

何でも、異なる四つの世界から生物や物、エネルギーを呼び出して利用する体系だった魔法らしい。

召喚術は基本的に召喚士でなければ行えないが、例外として契約を交わした際に使ったサモナイト石と呼ばれる石を持っているものは召喚が可能だそうだ…

四つの世界とは”機界「ロレイラル」”、”鬼妖界「シルターン」”、”霊界「サプレス」”、”幻獣界「メイトルパ」”の四つ…

それぞれ、界の表す属性に基づき、

機界「ロレイラル」からは、機械、ロボット等を…

鬼妖界「シルターン」からは、鬼、妖怪、巫女さん(?)等を…

霊界「サプレス」からは、幽霊、天使、悪魔等を…

幻獣界「メイトルパ」からは、獣人、妖精等を…

それぞれ召喚する事が出来るらしい…

だが、これらの四系統(機、鬼、霊、獣)とは違うもう一つの系統…

無と呼ばれる系統があるらしい…

この系統はどこから召喚されるのか、一体どんな系統なのか不明であり、現在も召喚士達により研究中との事らしい…

そして、恐らく俺を呼び出した召喚系はこれに属すると言う事の様だ…

だとすれば、無の召喚系は地球に繋がっていると言う事だろうか…


そうした事を教えてもらっている間に、遠くの気配がざわめくのを感じる所まできた…

海賊船か…ん…待てよ…この気配は…戦闘…


「ほれ、アレだあそこに見えるのが俺等の船…っ!?」

「カイルさん様子が変です!」


カイルが視界に納まり始めた自らの船を指そうとするが、カイルにも見えたのだろう…

戦闘をしている所為で、海賊船の周辺は騒がしくなっている…

あそこにいるのが、召喚獣という奴だな…あれは…半漁人?

となれば…幻獣界「メイトルパ」の住人という訳か…












ウコケケクエェッ!!

「こらーっ! よってたかって近付くなぁ!!」


船に取り付いてくる魚人を金髪にテンガロンハット、カウボーイファッションに身を包んだ少女が蹴り飛ばす。

もっとも、少女の体重が軽い所為で蹴り落とすまで何回も蹴る必要があった…

既に少女は疲れ始めている…上りきられるのも時間の問題に思えた…


「気楽なお留守番のつもりがまさかこんな物騒なお客がくるなんて…世の中やっぱ、甘くないわね!」

グゲェェェッ!


半漁人を切り飛ばしながら紫のコートにキツネの毛を使った紫のマフラーという、凄まじいファッションセンスの男が愚痴る…

しかし、彼は愚痴りながらも的確に半漁人の数を減らしていた…

もっとも、海から上がってくる半漁人の数の方が多かったが…


「あーん、もぉアニキィ、さっさと帰ってきてよぉ!?」


精神的に参ってきた少女は自分の兄に愚痴を飛ばすのだった…











数百メートルほど先の戦闘はどうやら、海賊側不利らしい…

人数が少ない所為だろう…

この時代の海賊なら数十人規模でなければ船を動かせないと思っていたが、十数人程度しか船員がいないようだ…

数で押されているという感じだな…

半漁人も一体どのくらいいるというんだ?

流石に海中の気配までは読み切れんしな…


「はぐれ召喚獣!?」

(この島、やっぱり普通じゃない…!?)


この島に出没している召還獣は”はぐれ”とよばれる召喚士との契約が無いものらしい…

本来は召喚士によってのみ召喚される召喚獣なのだから、召喚士と一緒に現れないのは異常な事態だということだ…

ヤードはその事に驚いている様だが…アティはどうも、何か違う部分で胡散臭さを感じているのだろう…表情がそう物語っていた…



「ちくしょうが…ふざけやがって!!」

「カイルさん! 一人じゃ無茶だ!」


カイルが一人で半魚人の群れに突っ込もうとしているのをヤードが止めている…

このままでは、船が壊されてしまうな…


「フゥ…」


流石にそれではわざわざ海賊の客分になった意味が無いというものだ…

俺は、そう考え一歩踏み出そうとするが、俺の前を行く影があった…

赤い髪を揺らすその影をベルフラウが呼び止める。


「ちょっとどうするつもりよ!?」

「うん…見過ごせないよね!?」

「どうして!? あの人達は…」

「仲間だよ?」

「「!」」


あまりにも明け透けなアティの物言いにカイルやヤードすら硬直する…

俺はまあ、そういうのではないかと思っていたが…

ここまでお人よしだとはな…


「ケンカして、仲直りして、これからもっと仲良くなるんだよ。だから、助けるんです!」


それは、もしかしたらアティなりの覚悟の表れだったのかも知れない…

純粋すぎる、この娘は…

まだ二十歳にすらなっていないだろうに…

信念の為になら死ぬ事も厭わないと言う訳だ…

その信念がみんな仲良くと言う所が、らしいと言えばらしいが…

俺はその言葉を聞きつつも、前に歩き出しアティの耳元でささやく…


「半魚人はどうするんだ?」

「ははは…(汗) 出来るだけ傷つけないであげて下さい」

「了解」


それを合図に俺は、正面から突撃した…












「俺たちも追いかけるぞ!」

「ちょっと待ってください!」

「何だ!? 先生!? 俺は船を救わなくちゃなんねぇ、急いでるんだ!」


私はアキトさんに続いて突っ込もうとしたカイルさんに呼びかけました、

カイルさんは私を睨みつけています、当然ですね(汗)

でも、私は言わなければ成りません、その為にアキトさんは一人で行ったのでしょうから…


「それはアキトさんに任せましょう、アキトさんの強さは貴方が一番知っているでしょう?」

「それはそうだが…」

「私達は海面から上がってくるサハギン達の足止めを行います、そうすればアキトさんが戦いやすくなる筈ですから」

「なるほど、確かにそうですね…敵の増援がいつ来るのか分からない状況では戦い辛いでしょうし…」


ヤードさんは賛同してくれましたが、カイルさんはまだ納得いかないようでした…

でも、しぶしぶ協力してくれる気になったみたいです。


「わかった…しゃーねー、客人たちに従うぜ」

「ありがとうございます」

「いそぎましょう、第二陣が上がってきているみたいですよ」


私達はサハギン達の上陸する浜辺の方に急ぎました…








「さて、ああはいったものの…実際傷つけずってわけにもな…」


そう言いながら半魚人数人(?)を纏めて吹き飛ばす…

徹しの技は極めると、衝撃を貫通させる事ができる…

密集していれば吹き飛ばすのは容易だ…


「あっ、あんた何者!?」


船の上からテンガロンハットをかぶったカウボーイ風というか多分西部劇のガンマン風というべきなのだろう…

金髪の少女が恐る恐る俺に聞く…

海の上でカウボーイも無いもんだろうと思うがその辺は異世界…俺の知る常識は通用しないのだろう…

とはいえ、銃を持っていないのは何事だ?


「気にするな、一応味方だ」

「一応って何よ! 一応って!」

「所でその格好、お前は銃を使うのか?」

「うっ…今は無いのよ! 仕方ないでしょ!」

「何がどう仕方ないのか知らんが…」

グヒィィィィィ!!


そう言いつつも、半魚人の掃討は続いている…

そろそろ半数ぐらいは終わったか…

その時、船内から半魚人を切り落としながら、ファッションセンスでは俺のこの服に匹敵しそうな男が現れた…

男は黒髪を長く伸ばし、後ろで軽く縛って上に向けてアップさせてある…マゲに近いといえなくも無い…

首周りには暗い紫色の動物の毛のマフラー

極めつけは服が全て紫一色という所だ…

赤系のアクセントが幾つか付いてはいるが…


「ひゅ〜強いわね〜貴方」

「まあな…」

「ところで、私の名前はスカーレルって言うんだけど…貴方のお名前は?」

「テンカワ・アキトだ」

「テンカワ・アキト…アキトね憶えておくわ、所で家の元締めはなにやってるか知らない?」

「海岸線で半魚人共の相手をしているはずだ」

「ふーん、なる程…その作戦は貴方の考え?」

「半分はな」

「もう半分は?」

「アティ次第だ」

「アティ?」

「俺の知り合いさ」

「なるほど、貴方達は頭も切れるみたいね」

「ねえ、スカーレル! 一体何の事いってんの!?」

「あんたやカイルは作戦練るのに向いてないっていってんのよ!」


俺は、半魚人共が気絶したのを確認すると、適当に手足を縛り上げ、転がしておいた…


「あら、見掛けに似合わず随分優しいのね?」

「まあな、知り合いがその辺に煩い奴でな」

「そう…そういう事にしといてあげる」


半魚人の気配がなくなった事を確認してから俺は、海面に向かっていこうとしたが、船上の二人に呼び止められた…


「ちょっと待ってよ! アニキのところに行くんでしょ? 連れて行ってよ!」

「ちょっと、ソノラ落ち着きなさい! あんたじゃ足手まといになりかねないわよ」

「だいじょ〜ぶ、スカーレルなんかと違って、アキト強いもんね〜♪」


そういって、ソノラと呼ばれた少女は俺の背後に隠れスカーレルに向かって舌を出す…

スカーレルも流石に怒った様だ…しかし、先ほどは見えなかったが首を切られた後がある…

縫い合わせてあるが、首が切り離されたのではないかと思われるほどの縫い後だ…

俺の視線に気付いたのだろう…スカーレルは…


「あはは…なあに? 私に惚れちゃった?」

「俺に同性愛の趣味は無い」

「あら、それは残念」


おホモ系の人なのか?

ポーズだけだと思っていたのだが…(汗)

俺の背後に隠れていたソノラは噴出して笑っていたがふと思いついたのか、俺に向いてニッコリとわらう。

そして、海岸へと後ろ歩きしながら、俺に自己紹介を始めた…


「あたしはソノラ! 得意は銃撃だよ! ちょっと今は銃が無いけどね(汗)」

「ああ」

「じゃあアキト、これからよろしくね♪」


何というか、海賊にしてはアットホームな一家だな…

だから、カイルみたいなのでも元締めをやれるんだろうが…
















私達は必死で足止めをしていました…

でも、サハギンの数はかなりのもので、何度倒しても向かってきます…

ヤードさんが召喚術で回復をしてくれなかったら、私達はとっくに力尽きていたでしょう…


「おいおい、これじゃきりが無いぜ…」

「ちょっと、無謀でしたかね…しかし、これでもアキトさんの相手している数より少ない筈なんですが…」


カイルさんは海面から上がってくるサハギンを殴り倒し、海岸線に積み上げていますし、

ヤードさんは、海面に向かってランダムヒットという、物を落とす召喚術で対抗していますが正直あんまり効いてません(汗)

でも、私…サハギン達が何故こんなにこの船を襲うのか分かりません…


「何故!? どうして、私達を襲うんですか!?」


サハギンたちはひたすら攻撃を加えてきます。

私達は海岸線で防いでいる物の、限界は近いかもしれません…


「いい加減にやめてください! 私達に悪い事があるなら先ずその事を教えてください!」


サハギン達は会話が出来る筈なんです。

なのに私達に奇声をあげて襲いかかるばかりなんて…


「どうしてなんです! 応えて!」


それでも、サハギン達は反応すらしてくれません…

私にはどうする事もできない…

そんな事は…

守れないなんていうことは…

させません!

それが例え何者でも!


「どうしても…あきらめてくれないんですね…」

ウコケケクエェッ!!


私はまた天に向かって手を突き出していました…

周囲に段々緑の光が満ちていきます…

夕方…日も落ちようとするその時…

この場所だけは、昼よりも明るい碧の光が満ちていきました…

私は…何も無い筈の天空から羽飾りでできた鍔をもつその大剣を…

装飾用としか見えないその剣を…手につかんでいたのです…


「!?」

グヒィィィィィ!?

「な、なんなのよ? この光は…」

「化け物が、おびえて逃げていく…」

「すげえ…」


私は殆ど無意識でした…

気付いた時にはサハギン達は全て海中に逃げ帰っていました…

私は一体…













「ぐっ…」

「どうしたのアキト?」

「大丈夫…じゃないわよね…何だか顔色が悪いわよ?」

「…いや、大丈夫だ…」


俺の体内から、力が抜けていく…

どういう事だ…所詮異世界に来てから手に入れただけの五感…失われるのは仕方ないのかも知れないが…

これは…俺から力が流れている…力の先は…アティ…

そういう事か…今の俺はアティの持っている何かから力を受けている…

そして、アティがそれを使えば俺に巨給される力が途絶える…いや、俺の方からそれに移るが正しいか…

分かりやすい仕掛けだ…

分かってしまえばどうと言う事はない…俺は五感の無かったころに培ってきた気配の探り方を優先した周囲の認識方に切り替える事にした…


「すまない、俺はもう大丈夫だ…それより急がねば何か起こるぞ!」

「うん!」

「そうね、ただ事じゃない感じ」


そして、俺達は…いや、俺以外の二人は昼のように明るい碧の光を眼にすることとなる…









私が剣を意識から外すと剣は霞のように消えていきました…

一体この剣は…?

そういえば何か…私は海に落ちた時…何かの声を聞いたような…

ううん、アキトさんを召喚した時は、声をきいて召喚したんですよね…

どういうことなんでしょう?


「バカな…」

「?」

「どうして貴女がその剣を使いこなしているんです!?」

ヤードさんは何か驚いているというより、危機感を募らせているといった感じで私に詰め寄ります。

私は、それを聞いてヤードさんにはこの剣と因縁がある事は間違い無さそうとおもいました。

だから、問い返してみたのですが…

「この剣の事知っているんですか?」


先にカイルさんが反応したみたいですね…(汗)


「おいおい、客人…じゃ、もしかして!?」

「間違いありませんこの人が使った剣は私が持ち出した二本の剣のうちの一つ…「碧の賢帝」(シャルトス)と呼ばれていた物です」


碧の…賢帝…

私が呆けていると、ベルフラウちゃんが丁度近付いてきた所だったらしく、カイルさん達に詰め寄ります。


「どういう事よ? ちゃんと分かるよう説明なさいな!?」

「つまりだ、お嬢ちゃん…俺等が船を襲ったのはそいつをぶんどる為だったって事よ」

「!?」

「まさか、こんな事態になっていたとは…」

「詳しい話、聞かせてはもらえませんか?」

「…」


ヤードさんが私を問い詰めようとしてるみたいだけど…

私、正直詳しい事知らないし…(汗)

このまま尋問されちゃうのかしら?

そう私が思い始めた頃、船の方からアキトさんが二人の人と一緒にやってきました。


「おっと、俺を無視して話を進めてもらうのは困るな」

「込み入った話の前に客人にお礼が先よ」

「うん、そうよね!」


三人はみな、私をかばう様に言ってくれています。

初対面でも優しくしてくれるって良いですね…

でも、アキトさんいつのまにそんなに仲良くなったんでしょう?














あの後、海賊船(修復中)に案内してもらい、傷の治療なんかも受けて、

今度は料理を振舞ってもらう事になりました…


「助けられちまったな、あんたに…」


カイルさんは改まって私にそう言います…

でも、本当に凄かったのはアキトさんですけどね…

見ていませんでしたけど、30近いサハギンを捕まえて海に放したみたいですから…

出来るだけ傷つけないで欲しいって約束守ってくれたんですね♪

でも、そんな事を口にしていても仕方ありません、私は思ったとおりにあいづちをうっておきます。


「気にしないで下さい、私がそうしたかっただけですから」


でも、カイルさんはそれで済ますつもりは無かったらしく、神妙な面持ちで私達に向かいました。

そして…


「海賊カイル一家の元締めである俺があらためて、ここに宣言しよう、あんた達を俺たちの船の客人として歓迎するぜ!!」

「「おーっ!」」

「よろしく頼むぜ先生よ?」

「ええ、こちらこそよろしくお願いします」


本当に気のいい海賊っているんですね…

ちょっと感心しちゃいました…

私、これからも頑張れるかな…














こうして、私達はカイル一家の客人として迎えられる事になりました…

腕っ節自慢の海賊カイルさん…

その妹で元気一杯のソノラさん…

ちょっとおどけた感じのスカーレルさんに…

私達と同じ客分である召喚士のヤードさん…

私達を襲った彼等を本当に信じてもいいのか、不安が無いって言ったら嘘になるけど、でも…

貴重な食料を振舞って心から歓迎してくれた…

その笑顔に嘘はないって、私は思ったから…

信じたいって思います。

















夜…ベルフラウちゃんの寝室を尋ねました…

ベルフラウちゃん…初めてのことばかりだったけど、大丈夫かな?

でも、何か言いたそうな事があった気がします。


「はぁ…」


ベルフラウちゃんは私の顔を見るなりため息をつきました…

大丈夫かしら? 今日は色々あったから…


「どうかしたの? 気分が悪いとか?」

「貴女の図太さに呆れているんですの!」

「まったく、自分からすすんで海賊の仲間になるだなんて非常識すぎますわ!」

「やっぱり納得できない? ベルフラウちゃん」

「当たり前でしょう!? だって、もともと連中が船を襲ってこなければ…私がこんな不自由をすることなんてなかったんですもの!」

「うん…」

「でも、まあ…非常事態のことですし…判断を責めるつもりはありませんわ…スカーレルでしたっけ彼の話はそこそこ楽しめましたし」

「そっか…」

「ふぁ〜っ」


いいたいことを言ったせいでしょうかベルフラウちゃんは眠くなったみたいです。

私は彼女にベッドを促し、顔を近づけて言います。


「ほら、そろそろ眠りなさいね 久しぶりのベッドなんだから」

「でも…」

「心配しないで…いざとなったら先生がついてるから」

「そ、そうね…貴女には使用人としてその義務があるものね…信用してあげるから精々尽くしなさい…いいわね?」

「うん、そうしてくれると嬉しいな」


安心して…なにがあっても私は約束を守るからね…

私にとってそれは、絶対の誓いですから…



その日はベルフラウちゃんを寝かしつけてから私も自分の部屋へと戻って行きました…

この後長い間ここで暮らす事になるとは思いもよらなかったのです。




あとがき

うっわ〜きりぎり…出来たの五時っす(汗)

これからHPの飾りつけ…間に合うか…?






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