「ミスミさま!? 一体それはどういうことですか!?」

「おお、忘れておったわ、一応初めてなんじゃから控えねばな…ではアキト、またの」

「…」


え〜っと…いったいどういうことなんでしょう!?

アキトさんは私が召喚した筈ですし…鬼妖界に知り合いがいるわけありませんね…

もしかして、ナンパというものでしょうか?


「おい、先生! 先生!!」

「なんですか? カイルさん?」

「…いや…なんでもない…」

「そうですか、用の無い時は呼ばないで下さいね」

「…はい」


カイルさんなんだか冷汗かいていた気もしますが…

気のせいですよね?


「キュウマよ、良く見るが良い、その者等は人間じゃ」

「人間!? ならば、尚の事…」

「やめよと言うておるのが分からぬというのか!?」

「…っ」

「おそらく、はぐれて間もないのじゃろう、なら…掟を知らぬのも無理もあるまい」

「は…」

「失礼ですが、貴女は?」

「ミスミじゃ、里の衆からは鬼姫と呼ばれておる」


鬼の、お姫様…

綺麗な方です…落ち着いてるし、気品が漂っている…


「兎も角、わらわの一存だけでどうこう決められる問題ではなさそうじゃ…

 ここはひとつ他の護人達の意見も聞くべきであろう…のう、キュウマよ?」

「心得ました…

 こちらへ…貴方達を、他の護人達と引き合わせます」


こうして、私達は島の人達との最初の接触を果たしたのでした…



Summon Night 3
the Milky Way




第三章 「変わり者の島」後編



それから私達は風雷の郷を迂回し、

島の中央部にある、ひときわ高い山の麓…見晴らしの良い高台までやってきました。

緑に覆われたそこは、とても景観がよく、頬を撫でる風の気持ちよいとても過ごしやすそうな場所です。

そこでは、川が流れ、綺麗な泉が出来上がっています。

そのに泉の脇にポツリと一つ石造りの舞台のような物がそびえています。

景観の中違和感が無いほど調和したそこに、私達は案内されました。

内部はテラスの様に泉のほうに張り出した形で作られています。

何かの場を形作るように椅子や机が置かれていますが、

そこは、神聖な場を思わせるほど、生活感の無い場所でした…


「ここは…?」


私はキュウマさんに聞きます。

他の護人達と合わせてくれるとの事でしたが、どんな方がいるのでしょう?

私の疑問にキュウマさんが答えてくれます。


「集いの泉です。

 ここで護人達は話し合います。」

「そうなんですか、では皆さんここへ?」


こんどはキュウマさんは何も応えず、テラスへと歩いていきます。


「皆様、おそろいでしょうか!?」


キュウマさんがそういうと、参方からそれぞれ一人づつ歩いて入ってくるところでした…

アキトさんも何か不思議そうな顔をしています。

見た感じ動く鎧の人を見ているみたいですが…

中身が入っていないように見える事を不思議に思っているみたいです。

酷く小声なので分かり辛いですが、ヤードさんと話しているのが途切れ途切れに聞こえます。


「…」


一人目の人が椅子に座りました。

眼鏡をかけた知的美人です。 少しくすんだ感じの金髪で、紫色の目、透き通るような白い肌をした完璧なスタイルの美人です。

背も適度に高く、女性としては羨ましい限りです。

ですが、そこかしこに機械的な部分が露出している所を見ると。機械と生身が融合した機界の人類<融機人(ベイガー)>ですね…

文献なんかでは出てきますが見るのは初めてです。


「…」


二人目の人が机の前に立ちます。椅子に座れないのでしょう。

彼は…あんな大きな女性がいるとも思えませんし…

兎も角、彼は鎧だけで、本来肌の露出する部分はがらんどう…

正確には露出部分からはほのかな光が見えていますが…

感じからすると、彼は鎧そのものではなく、霊体が鎧を動かしているという事でしょうか?

体が無いことを除けば、赤いマントをしている大柄な騎士といった感じです。


「…」


三人目の人はいわゆる獣人です。

逆立った黒髪をバンダナで纏め、南国の戦士のような装束に身を包んでいます。

白い体毛に黒いストライプのラインが入っていて、シマウマの獣人かな? とも思ったのですけど…

猫科の目や爪が隠された手なんかを見るとトラみたいですね…

ホワイトタイガーの獣人さんでしょうか?


この人達が残りの護人…

みんな強そうですね…護人だけあって、戦闘能力の高い方が選ばれたのでしょう。

そして、四つ目の席にキュウマさんが座り、皆一様に静まり返りました。

私は何だか睨みつけられている気がして、少し落ち着きませんでしたが、仲良くしないといけません。

その為にも誤解があるなら解かないと…

そうこうしているうちに、護人達が、順を追って口を開きます。


「機界集落ラトリクスの護人、アルティラ」


最初は融機人の女性が名乗りをしています。

彼女は終始無表情で、感情を何も見せていません、固い人なのかな…


「鬼妖界・風雷の郷の護人キュウマ」


次はキュウマさんの番です。

彼も、私達に向ける目はあまり友好的なものではありません。


「さぷれす・冥界ノ騎士ふぁるぜん…」


発声器官が備わっていない所為でしょうか、鎧の人はこもって反響した様な、判別しづらい声で話します。

感情はやはり、読み取れないです。


「幻獣界・ユクレス村の護人、ヤッファ」


白黒のストライプ色の獣人さんは、めんどくさそうに告げました…

彼は、私達に興味が無いみたいです。


「四者の名の下、ここに会合の場を設けます」

「先ずは、貴方達がこの島に来た理由から教えてください」


アルティラさんが会合の始まりを告げると、キュウマさんが私達の事情を聞いてきました。

私達は、剣のことの交えず事情を話しました。

出来る限り詳しく話したつもりですけど、伝わったかしら…

四人の護人から、疑わしいという視線が向けられているのを感じます。


「なるほどね…つまり、貴方達は遭難してこの島に流れ着いた…」

「しかし、そんな偶然があるものでしょうか?」

「疑われて当然ですが事実なんです」


アルティラさんも、キュウマさんもう疑わしいという顔を崩していません…

私達は出来るだけ分かってもらおうとしますが、あまり効果はありません…

そんな中、ファルゼンさんが、大きな鎧を震わせ、何かを言おうとしています。


「ヨバレタノデハ…ナイノカ…」

「え?」

「いや、こっちの話だ気にしなくていい」

「…」


ファルゼンさんが何を言いたかったのかは分かりませんが、彼らの中では重要な事らしく、護人達はその後沈黙してしまいました。

耐え切れなくなったカイルさんが、妥協案を出します。


「ともかく、俺らは船の修理が終わればすぐに出て行く。そのために必要な物だけ、貸しちゃあもらえねえか?」

「悪いけれど、協力はできないわ」

「どうして!?」

「あんたたちがリィンバウムの人間だからさ…」

「!?」

「機界ロレイラル、鬼妖界シルターン、霊界サプレス、幻獣界メイトルパ、

 この島に住む生き物はそうした異世界からきたものばかりよ。

 この意味が、わかる?」


少しおかしいとは思っていました、確かにここにははぐれの召喚獣が多すぎます。

しかも島の護人が四人とも人間ではないというのは…


「この世界に召喚されそのまま還される事の無かった、はぐれ者達の島…この島は、召喚術の実験場だったのですよ」

「俺達はな召喚術の実験台として喚ばれてきたんだよ、そして…島ごと捨てられた」

「そん、な…っ」

「くくくっ、おかしくて泣けてきそうだろ?」

「それじゃ、貴方達はずっと…」

「ショウカンシハ…ミナシニタエタ…カエルスベハモウナイ」


そんな…

じゃあ、ここは…ここにいる人達は…みんな召喚術の犠牲者だって言うんですか!?

だったら、人間を恨んでいて当然かもしれません…

でも、それは本当は何か違う気がします…

まだ何が違うのかは分かりませんが…


「だから、私達は人間を信用しない、関りたくもない」

「お互いに干渉しない、それが、妥協できる限界です…」

「悪く思うなよ」

「…」

「本当にそうなのか?」


全員の視線がアキトさんに集まります。

今までの話全てを聞いて、カイルさん達は諦めようと言いはじめていた時の事です。

みんな一様に驚きアキトさんに視線が向きます。

そして、キュウマさん以外の護人の人達は何か固まってしまったように、動きを止めます。

アキトさんの格好が変だったから戸惑ったのでしょうか?


「一体何を根拠にそんな事をいうの?」

「こう言ってはなんだが、異世界、それも小さな島だ…この島がそれほど住みやすいとも思えんが…

 いつ召喚されたのかは知らんが、一年や二年ではあるまい?」

「それは…」

「召喚され、異世界に帰る事もできない、その地で生きていくというのは当然の事だが、

 お前達自体異世界の存在の筈だ、集落に分かれているとはいえ何も一つの島の中にいる必要は無いはず…

 更に言えば、何故護人なのだ? それぞれの未来に関わる事態に部族の長ではなく防衛部隊の長が立つ意味は?

 そして、敵対を語るにしてはお前達の目は無関心に過ぎる。

 お前達は俺達に明かしたくない事があってそこから他人を遠ざけようとしているだけじゃないのか?」


アキトさんの言葉に、護人の人達は動揺しているようでしたが、

キュウマさんから告げられる言葉の意味は変わりませんでした…


「…お引き取りください」

「ああ、俺は別に構わんよ」


アキトさんも言ったきり、きびすを返します。

カイルさん達も…


「まいったな…」

「うん…ちょっと、キツイね」

「…っ」

「さあ、ひきあげよう」


でも、私は嫌です!

こんな、こんな表面上のやり取りだけで、全てを決めてしまうなんて…

私達は交渉に来ました…でも、お友達になるにはそれだけじゃ駄目なんです。

私達は人間、彼らは召喚獣…でも、そういう事ではないんです。

みんなは個人個人で違うのだから…そう、種族と種族で語るのではなく、友人として分かり合うために…


「すみません…悪いんだけど、先に帰ってくれますか?」

「え!?」

「今のお話だけじゃあどうしても、納得できないんですよね、だから私…」

「あ、おいっ!?」

「行ってきます!」


そういって、私は飛び出しました…











俺は少し考えたい事があった…

この世界…何かおかしい…それは魔法的なこと、あるいは召喚術のことではない。

この世界は、世界のありようが歪んでいるとでも言うのだろうか…

いや、その逆だ…この世界は調和に過ぎている。

言語はどうやら自動翻訳らしいと言う事は分かるが…

先程は言っていなかったが、そもそも、機界、幻獣界、鬼妖界、霊界これらの四つの世界は何故皆人型の存在がいる?

いや、それは良しとしても、それぞれ異なった力を持っているのは何故だ?

そもそも、五つもの異界の存在が同様の世界で生きていけるというのは、まるでそうなるように作られた世界であるかのような…

この世界そのものに意思でも存在しているような…


「いや、まさかな…」


どの道まだ判断材料が少なすぎる…

今いえることは、この世界は普通の世界ではないのだと言う事、それだけだ…

カイルたちと離れてしまったな…少し待つべきか…ん?

視線を感じる…これは…幽霊騎士のものだな…ひとつ誘いに乗ってやるか…

それに、俺は何れ山野の暮らしをしなければいけないのだ、散策をするというのも悪くは無い…

俺は道を外れ、少し南の方へと向かう…

それから暫く歩いて、少し広めの草原へと出る…

別に目的地が合った訳でもない…ただ、何となく立ち寄っただけだ…

そして、俺は後ろを振り向き…


「ファルゼンと言ったか…日が沈むまでは出てこれないのか? 泉では大丈夫だったようだが?」

「ヨク…オボエテイタナ…ケハイ…ヲ、ヨムノカ…?」

「まあな、幽霊だろうと気配が無くなる訳じゃない、むしろ機界とか言う所の奴の方が俺は苦手かもな」

「ソウ…ナノカ…?」

「戦闘ならお前達のほうがやり辛いかも知れんが…気を読めなければ、空気の流れを読まねばならんからな」

「セントウ…ノ、コトバカリナノ…ダナ」

「お前達が協力してくれない限りはそうなるな」

「フ…フ…シンプルナヤツダ…」

「そうか? これでもかなりひねくれているつもりだが…」


ファルゼンは俺に向かって歩み寄る…

殺気は感じない…闘気も無い…むしろ穏やかな気を放ちながら近付いてくる。

そして俺の一速の間合いまで近付いてきた…

俺は相手の対応から俺に興味があるらしいことは察するのだが、ミスミといい俺に何があるというのか?


「オマエハ、ナニモノダ?」

「俺は…そうだな…亡霊と言う事になるか」

「ワタシト、オナジダトイウツモリカ?」

「いや、違う…お前は肉体が無いが、俺には生きる目的が無い」

「…ホンキデ…イッテ、イルノ…カ」

「そんな事を聞いてどうする?」

「ソウダナ、スマナイ…タダ…オマエハ、シリアイ…ニ、ニテイタダケダ…」

「ミスミも似たようなことを言っていたが…本当に変わり者が多いなこの島は…」

「ソウカ…ソウダロウナ…フツウデハ…イラレナイ…」

「何にしろ、俺は知り合いとやらに間違えられても、何もしてやれん…忘れる事だな」

「…ハヤク…フネニ、モドルトイイ…」

「そうだな…」


ファルゼンは最後に何か失望したような感じを受けたが、この際気にしても仕方あるまい…

アティが何かやろうとしていた様だから、俺は帰って待つとしよう。












皆さんは表面上のことしか話していませんでした…

これでは、誤解を解くとかそういう事の前に終わってしまいます。

でも、四人の護人の方達はそれぞれ別方向へ帰っていきます。

私は少し迷いましたが、面識のあるキュウマさんに話しかける事にしました…

郷への道を急ぐキュウマさんに追いつくのは骨が折れましたが、

どうにか体力の限界までに追いつく事に成功しました。

忍びだからって何時も普通じゃない道を通っている訳でもないようで安心しました。


「待ってくださいキュウマさん」

「貴女は…」


私が声をかけると、キュウマさんは振り向いて渋い顔をします。

あれでお話が終わりだと思っていたみたいですね…

ですが、私それほど諦めの良いほうじゃありません。


「もう一度お話をさせてください」

「警告した筈です、我々は人間を憎んでいると。

 それに、話す事など!」


キュウマさんは私に怒鳴りつけてきました、

今にも装束からクナイを取り出しそうなほど怒っています。

でも、結局それも誰だからとかそういうのではないんですよね、

人だからとかそうじゃないからとかで全てを決める…それは悲しいです。

だから、私は止まりません!


「話す事ならいっぱいあります! 例えば私の名前がアティだっていうこととか」

「な…」

「私だけじゃありません、他のみんなが、どんな名前で、どんな性格をしているとか…そいいう色んな事、私達まだなんにも話してないんですよ?」

「そんなこと知ってどうするのです!?」

「でも、知らなくちゃ相手のこと好きになれないですよね?」

「!?」

「さっきのは、ただお互いの事情を説明しあっただけです。

 それぞれの都合を一方的に理解させようとしあっただけです。

 話をするのって、そういうことだけじゃないって思うんです」

「…」

「私、キュウマさん達の事、もっと知りたいんです。

 私達の事も、たくさん知ってもらいたいです。

 貴方達と仲良くなりたいから…」


今の私にいえる全てをキュウマさんにぶつけました、キュウマさんはそれを聞いて真剣な表情になりました。

そして、私の反応を探るように言葉をかけます。


「貴女の言っている事はとてつもなく甘い自分勝手な考えです。ですが…少なくとも偽りを口にしてはいないようですね…」

「それじゃ…」

「もう一度だけ、話をする機会をかんがえてみましょう、ここまで追ってきた貴女のその誠意に免じて…」

「ありがとうございます。キュウマさん!

 私、他のみんなに知らせてきますね」

「ふふ…あのような瞳の光をまた、見ることが出来ようとは…」


駆け出す私に、不思議と満足そうなキュウマさんの声が響きました…














私は急いで船へと戻り、カイルさんに報告をしました。

船長室で聞くカイルさんは感心することしきりです。


「まさか本当に一人で話をつけてきちまうとはな…」

「そういうわけですからみんなにも、この事伝えてもらえませんか?

 ベルフラウちゃんには私から説明しますから」

「ああ、わかったぜ」


私はそれだけ言うと、直ぐに部屋を退出しました。

アキトさんにも言わないといけませんね、でも来てくれるでしょうか?

二人とも結構頑固そうですし…


「はあ…」


少しため息が出てしまう私でした。












そんな訳で先ずベルフラウちゃんのところにやってきたんですが…

お部屋ちょっと入りづらいですね…

そう思っていると、私の背後に突然気配が現れました…


「その様子だと上手くいったみたいだな」

「あっ! はい!」

「そうか、なら俺の出番は無さそうだな」

「え? ちょっと待ってください! アキトさん!」


アキトさんはそのままスタスタ歩いていってしまいました…

もう、強引なんですから…

でも、これで手間が省けたんですし、説得は後に回しましょう…

そんな訳でベルフラウちゃんの部屋をノックし、中へと入ります。


「入りますよ?」

「どうぞ」

「あのね、ちょっとお話があるんだけど…」


私は事の顛末をベルフラウちゃんに伝える事にしました。

納得してもらうには結局一番ですしね…

そして、話し終える頃にはベルフラウちゃんも納得顔になりひとつうなずくと、


「なるほどね…」

「この島では私達人間の方が異分子だったみたいなの…

 召喚獣達が襲ってきたのも、当然だったのかも知れないね」

「…」

「ビー…」


ベルフラウちゃんは複雑そうな顔をしています。

本当に仲良くなれるのか心配なんですね…


「でも、大丈夫! 話し合っていけば、きっと分かり合えます! キュウマさんも協力してくれるって言ってましたし。私はそう信じます…」


そう言って、私が自分を勇気付ける意味もこめた決意を語っている時、突然爆発音が鳴り響きました…


ドドーン!!


「ビー!」

「!?」

「今の爆発って…」

「集落のある方角!?」


突然の事でしたが、私は急いで爆発のあった集落に向かう事にしたのです。









島の北西、幻獣界の者達の集落「ユクレス村」現在そこには十数名の帝国兵が村に襲い掛かるという事態が起こっていた…

どうやら、帝国兵もこの島に流れ着いていたらしい…

最初は兵士達が集落の境界に知らずに入り込んだのだが、再三の警告にも従わず、村の住人に攻撃を加え始めたのだ…

帝国兵達は戦力的に優位に立っていることを確信していたが、敵の数が多いことが分かると火器すら使い村の焼き討ちを始めた…

顔に紋章をつけたリーダーはまるで狂気に取り付かれたが如く、獣人達を借り出していく…

金髪の大柄な体躯と、正気なのか疑いたくなるような独特の雰囲気を身にまとい、リーダーが獣人の一人を切り伏せた…


「なんだってんだァ? この島は…化け物だらけじゃねえかよッ!?」

「ウゥゥゥ…」

「イヒヒヒッ!? 死ね! 死ねッ!! 死んじまえェッ!!!」


獣人達は帝国兵の前に次々倒れていく…

その姿はどちらが化け物なのか疑いたくなるような光景だった…

そこに、獣人の一人が走りこんできた。

逆立った黒髪とバンダナをした、白と黒のストライプの獣人である…

その象徴的な姿は、ユクレス村の護人ヤッファのものであった。


「いいかげんにしときな」

「…んだあァ?」

「いくら、俺が面倒くさがりだっていってもよぉ…これだけされちゃあ流石に黙っちゃいられねぇぜッ!!」

「へぇ…? おもしれえじゃねぇか…親玉はあいつだ! 集中攻撃でブッ潰してやれッ!!」

「「「「「はっ!!」」」」」


帝国兵十数人対ヤッファ一人の戦いの幕が気って落とされた…


















私達は急いで島を回り込み、獣人の集落ユクレス村までやってきました…

キュウマさんの協力もありかなり早く到着する事ができました。

アキトさんはくるつもりが無かったみたいですが、私が引っ張ってきました。

でも、正直その光景は私もみたくないものでした…


「あれは…帝国軍の人たち!?」

「奴らもこの島に流れ着いていたのかよ」

「あれが、現実です」

「キュウマさん…」


そこでみたものは、ユクレス村を蹂躙する帝国兵達の姿でした…

正直信じたくありません、こんなことを平気でできる人たちがいるなんて…

しかも、それが私の元いた組織である帝国軍だなんて…

ベルフラウちゃんはこんなことをする軍に入る為に勉強している訳じゃないはずです!


「人間にとって、我等は化け物でしかない…出会えばあのように争うしかないのです」

「そんな…」

「アlティ殿、貴女はどちらに味方しますか?」

「わかりません、決められないですよそんなの…でも…っ!」


そう、でも! 私達が争う必要は無い筈なんです!

あの帝国兵の人達も、やり方さえ間違わなければ分かってくれる。

そう信じたいんです。

でも、今は!


「やめてください!」

「!?」

「んだァ、テメエは? 人間の癖に、化け物に味方する気かよ!?」

「そうじゃない! 悲しすぎるから! 分かり合えないなんて…

 戦うしか、お互いを認識する方法が無いなんて、悲しすぎる…

 だから、私は貴方を止めます」

「うるせえんだよ!! 正義面しやがって!! 構う事はねぇ! まとめて叩き潰 せ!!」


私達が飛び出した時も、キュウマさんはヤッファさんを気遣っています。

ヤッファさんは自分で何とかしたかったみたいですが、傷が思いのほか深く、立っているのがやっとのようです…

何故この人達はそこまでする必要があったのでしょう…

化け物って…そんなに、彼等が怖いのでしょうか?

私には分かりません、ただ今は目の前にいる人達を傷つけて欲しくない…そう、思いました…


「ヤッファ殿ここは任せて、貴方はその傷の手当を」

「く…っ」

「こいつ等の相手はアキト殿とアティ殿と自分が引き受けます!」

「…すまねぇ」

「森に引き込みましょう…出来るだけ集落から引き離すんです!!」

「分かりました!」


キュウマさんは巧みに帝国兵を誘導し、森の中に戦場を移しました…

でも、十数名からなる軍人を相手にするのは…まして殺さずに何とかするなんて、正直難しいです…

そう思いつつ前に出ようとしたその時、


「お前はもう良い、覚悟は見せてもらった、後は俺に任せろ」

「どういう事です?」


アキトさんは揺らめくような殺気と共に前に出ます…

私は思わず後じさりしそうになりました…


「実は俺は軍人は嫌いでな、みているだけで虫唾が走る…」

「あの〜殺さないであげてくださいね」

「安心しろ、死んだ方がマシな目にあわせてやる…」


ええ〜!!? まずいですよー!! アキトさんが本気出したらとめられないじゃないですか!!

うう〜抜剣覚醒でもしないと渡り合えそうに無いです〜(泣)

でも、それほど心配する必要なありませんでした、どういう手法なのか分かりませんけど、

アキトさんが数人を十メートル以上投げ飛ばして見せると帝国軍も一人また一人と逃げ出し、

一気に半数以下になってしまいました…


「総員! 退却しろッ!!」

「骨の無いヤツラだ…」

「あはは…でも、そのアキトさん…ありがとうございます」

「次からは自分でしろ」

「はい…すいません」


やっぱり、アキトさんは知っていたんですね…

私が先頭に立ってしようとしていた事を…

両者の和解のためにも憎まれ役が必要かも知れない…

それをやるなら私の仕事…

今はアキトさんに押し付けてしまう形になってしまいましたが…

嫌がられても、同じ時を過ごす仲間としてお互いを知り合えるようになれば良いのに…


「アティさん、顔色が悪いようですが…」

「ごめんなさい…少し…疲れちゃったみたい…うん、それだけ…」


キュウマさんが私を気遣ってくれています。

今は、この人達と少しだけ分かり合えた事を喜ぶべき、ですよね。


「確かに、見届けました。貴女の言葉がその場限りの嘘ではない事を」

「キュウマさん…」

「アティ殿自分は、貴方達を信じます。

 この島の新しい仲間として、貴方達を迎えましょう」


この時初めて私達は島の人達に受け入れられるきっかけを得ました…

仲良くなれるかはまだこれからですけど…

それでも、一歩前進したんだと、そう思います。









長い…とても長い一日がようやく終わりを告げました…

はぐれ者達の島…

護人達は、この島の事を皮肉をこめて、そう呼んでいました…

拒絶された者達が暮らす閉ざされたせかいなのだ、と…

ある意味、それは私達も同じなのかも知れません…

でも…

きっと、分かり合えると私は信じています。

出会った事の全てを拒絶することは、簡単でらくかもしれないけれど…

だって、それだけじゃ寂しいから…

そのために、私達は言葉で心を通わせることが出来るのだから…






あとがき


ううぅ…

また伸びた(汗)

話が進まん…(爆)

それは兎も角、雪夜さんすいません、リクはいま少しお待ちを。

下絵で失敗やり直しです(泣)

やっぱり、一画面に数人一気に入れようとしたのは失敗だった…


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