「よくもッ!? よくも、よくもッ!! まとめ
てェ、ぶち殺してッ!!」
「テメエがな!」
「ぐひゃァっ!?」
「これ以上の狼藉は絶対に許しません!!」
「みんな…」
その時周りの岩陰からみんなが飛び出したのを見ました。
私は何が起こったのか把握できなかったけど、カイル一家と忍者の人が助けに来てくれたのは分った。
私はその間に先生に肩を貸して少しでも離れようと進みだした。
でも、私たちはこの時、もう一つの戦いが別の場所で起こっていたことを知りませんでした…
Summon Night 3
the Milky Way
第五章 「一歩目の勇気」第九節
ハサハは駆けていた、召喚者であるアキトの身に何かが起こる、そういう予感がした。
なぜ、と聞かれればそう感じたからとしか答えられない、
ハサハの魔力で出来た宝玉に陰りが差したという事はつまりアキトの身に何かが起こったと言う事だ。
そう、ハサハには感じられる、もちろん、ハサハは理屈でそう考えていたわけではない。
直感的にそう思った、そして、アキトがどこにいるのかも見当をつけていた。
だから……
彼女は行動を起こした、召喚者の消滅は世界への帰還を不可能にするからと言う考えがハサハの中にあったとは思えない。
つまりは、それは純粋にアキトを心配しての行動だった。
しかし、森の中を全力で疾走するにはハサハのとっている姿はあまり適した物とはいえなかった。
和服も両手に持っている宝玉も……
狐の姿に戻るべきだっただろうかとも思う、しかし、それをすれば長い間人の姿には戻れない……
迷いは足運びを崩し、そういう時に限って自然は牙をむく。
ほんの少しの注意不足でハサハは木の根に足を取られた。
あっという間に、地面へと投げ出される。
「あっ!?」
直ぐに起き上がろうとして、足を捻挫している事に気付く。
アキトの身に何かが起こっていると言うのに、こんな状況では狐に戻ってもこれではさして早くたどり着けないだろう…
「おにいちゃん……」
召喚者としての彼はあまり良い主とは言えない、彼女の事をきちんと見ているとは言えないかもしれない。
しかし、人一倍優しい彼がいくら悪ぶって見せていても漏れ出しているものはあった。
闇の中に身を置き続けるには燃料がいる、それは憎しみであり、また妄執と呼べる何か。
アキトは自分では気付いていないが、燃料が尽きた事によって、闇の鎧がはげて来ているのであった。
ハサハはその事を敏感に感じ取り、彼のやさしさを知った。
だから、もっと近くにいたいと思っている……
人の心に触れ、人をもっと理解する為に。
やさしい人間の心を持つために。
「……んっ」
ハサハは挫いた足を引きずってアキトの居ると思われる方へと歩き出した。
森の中を捻挫をしたまま歩くのは辛い、一歩一歩足がずきりと痛んだ。
しかし、何もしないでいる事は出来ない、少しでも早くアキトの元へ……
「グハ!?」
【人間の分際で魔王などと名乗っているからどの程度できるかと思ったが、その程度か……】
アキトは崩れ落ちていた……
人の身で、大きさだけみてもエステバリスよりも大きなその巨獣に対抗できるわけも無かった。
良く持ちこたえたほうだと考えるほうが自然であった。
体中擦り傷だらけになりながら、地面に叩きつけられたアキトはかろうじて生きている。
もちろん、それはアキトがアイギスの攻撃を避けた証。
もし当たっていれば確実にミンチになっていただろう。
しかし、それでも絶体絶命のピンチであることは変わらない……
それに、アキトは意識が朦朧としつつあった。
このままでも、アキトは危険な状態だと言って良い、
しかし、アイギスはアキトという存在を甘く見ていなかった。
【お前は魔王と言うのはおこがましいが……人の身で我を傷つけた事は賞賛に値する】
そう、アイギスの体には何箇所か血が滲んでいた……
アキトの<浸空>によってつけられた傷だ。
アキトの攻撃は全く無駄と言う訳でもなかったのだ。
【我はお前を敵とみなそう】
満身創痍のアキトに、ドシン…ドシン…という音を立てながらアイギスが近づいてくる。
5mを超える高さ、全長は10m近い……
その姿はまるで、ちょっとした屋敷が歩いているような錯覚を思わせるほどに巨大であった。
【我は敵には全力を尽くす……我が全力の一撃受けてみよ!】
アキトは意識もはっきりしておらず既に攻撃を避けるすべはない…
ハウリングヴォイス
既に死に体といっていいアキトに対し、アイギスは巨大なその体躯を沈め必殺の破壊の咆哮の体勢に入る。
げっかほうこう
月下咆哮……召喚できる数少ない召喚者からはそう呼ばれる破壊の震動波……
原子まで還元される超震動の前にはアキトの体などチリ一つ残りはしないだろう。
この時点でアキトに生き残るすべは残されていなかった……
「……ぁ」
ハサハは自分に伝わる振動で、目を覚ます。
そして、同時に自分が気を失っていた事に気付いた……
肌のぬくもりが伝わって来る不思議な状況に戸惑いつつも、ハサハは徐々に覚醒していった。
気付くと同時に視界が開けてくる、そこで自分は背負われていると始めて気付いた。
「よう、うさぎの嬢ちゃん。大丈夫か?」
「……ハサハ、キツネだもん……」
「狐? ああすまねぇ、あんまり立派な耳してるもんでな」
背負っているのがヤッファだと気付きはしたが、その無礼な物言いにハサハは頬を膨らます。
だが、同時に分かっている事もあった、ヤッファはハサハを背負ったままアキトのいる場所を目指していてくれると……
「おじさん……」
「ん? なんだ嬢ちゃん」
「……ありがと」
「…………気にすんな。
……後、せめてお兄ちゃんにしてくれ(汗)」
「……おにいちゃんは、おにいちゃんだけだもん」
ヤッファは少し憮然とした顔をするが、それでも速度を落とすことなく駆け続けた……
ハサハを背負っている事を感じさせないほどの速さで。
森の中は彼の庭のようなもの、迷うはずなどないのだ。
元々この辺りは彼の護人としての……
つまりは獣人界メイトルパの民の守護領域なのだから。
<竜骨の断層>
崖状になった渓谷の中段あたりで、ビジュを取り囲んだのは、海賊カイル一家と護人キュウマだった。
ビジュは既に怒りに我を忘れており、取り囲まれた状況にも係らず引こうともせず攻撃を繰り返す。
「くそッ! 死ねッ! 死ねぇぇぇッ!!!」
ナイフの投擲や召喚獣を使った攻撃を得意とするビジュは元々接近戦に弱い。
この状況で長く抵抗できない事は衆目に明らかであった。
「オラオラぁ! さっさと倒されな!」
「てめぇ! ぜってぇ殺す!」
中でも取り付いて離れないカイルにビジュは苦戦を強いられている。
じりじりと下がって行くビジュには後が無かった。
ふかん
アズリアとギャレオは崖の上から冷静に戦闘を俯瞰している。
このままではビジュが倒される事は確実だ、
しかし、ギャレオはアズリアの命令を無視したビジュを許すつもりは無かった。
積極的に口には出さないが自分の失態は自分で償えば良いと思っている。
だが、アズリアは姿勢を正し、一度頷いてから一つの命令を下した。
「総員、ビジュを援護!」
「隊長!?」
ギャレオはそのアズリアの命令を不審に思い問い返す。
しかし、アズリアは表情を変えず凛としたままギャレオに言い返す。
その言葉の中にあるのは彼女の迷いであったのかもしれない。
もっとも、ギャレオにそれを確認するすべはなかったが。
「不心得者であろうと、見殺しにするわけにもいくまい……
行け、ギャレオ! あいつには、この手で懲罰を与えなくては気が済まぬからな
海賊どもを蹴散らしあの愚か者めを私の前につれて来い!」
「任務、了解!」
副隊長のギャレオを中心に、アズリア貴下の兵士達は彼女の命令の元、崖を一斉に下り始める。
兵士達は怒涛の勢いで崖を駆け下っていく。
アズリアの命令が下った事により、アティ達のベルフラウ救出戦は乱戦の様相を呈してきた。
森の中を疾駆するヤッファは気配が近づいているのを感じていた。
強烈な気配、森を揺るがすような、近づけば消し飛ばされかねないほどの巨大な……
「やはり出てやがったか……」
「なに? ……おおきい……ううん、こわい……」
背中に居るハサハに震えが走っているのが分る……
ヤッファはハサハを落ち着かせようとしたが、自分の手も震えているのが分った。
この森には牙王アイギスが住み着いている、彼は孤高の存在であり。
誰とも会いたがらない、彼にとって見ればメイトルパの住人達でさえいわばアリの様な存在。
唯一彼を使役した召喚士はもういない。
今はただ彼は自らの縄張りの中で静かに眠るのみだった……
そかし、それを邪魔した存在、帝国軍の兵士達を彼は許すさないだろう事は予測できた。
ヤッファとしても出来れば係りなくなかった存在、最強クラスの召喚獣……
故にベルフラウの救出だけを行いさっさと退却したかったがそういうわけにも行かない。
アキトによる足止めは功を奏していると考えても良い、しかし、その事によってアキトが失われては意味がない。
「チクショウっ! 格好つけやがってッ!」
ヤッファはハサハをその場に下ろし、一人で気配のするほうに向かおうとした。
しかし、その時、突然に森が明るくなった。
それはまるで太陽のように網膜を焼く輝き。
ゴオオァアァァアァ!!!
輝きが終わる頃、爆音と爆風が遅れてやってきた。
ヤッファは投げ出され、そのまま転がされる。
そして、投げ出されたその場にうずくまり周囲を見渡した……
ハサハの生存を確認して安心したのもつかの間、景色の変容に唖然としてしまう。
その場に残されたのは、ただ削られたクレーターのような穴のみ……
「くそッ、なんて威力だ……やっこさんこれじゃチリものこらねぇ……」
そう、目の前から数十メートルにわたり抉り取られたような穴が開いていた。
中には何も見つからない、土砂が徐々に穴に向かって流れ込んでいく……
ヤッファはハサハが穴に落ちないよう庇おうとするが、彼女の視線に気付いてはっとする。
「なっ、なんだ? 一体……?」
クレーターの手前には確かに森の主がいた……
そう、牙王アイギスと言う名の巨獣が……
しかし、ハサハが注視しているのも、ヤッファが驚いているのも、そちらの事ではない。
むしろ、残っていたのがアイギスだけなら、ヤッファはすぐさま逃げ出していた事だろう。
その方がハサハとヤッファの生存率が高いからだ。
しかし、目の前には奇異な光景が展開されていた。
それは、アイギスの目と鼻の先、ほんの少し上に浮かんでいた。
淡い光と共に、まるで糸の切れた操り人形の如く力尽きたまま……
「アキト…なのか?」
そう、力尽きたように体中の筋肉を弛緩させだらんとした状態のまま、空に浮かび上がっているのは確かにテンカワ・アキトであった。
しかし、本人の意識が介在していない事も間違いあるまい。
その証拠に、彼自身の関節は全く動いていない。
ただ、光の中で揺れているのみである。
「ちがう……おにいちゃんだけど……おにいちゃんじゃない…………」
ハサハのこの呟きは実に的を射たものであったが、だからと言って何ができるものでもない。
彼らは、この場にいる事で、その異様な戦いを目撃する事となる。
その戦いは既に人の介在できる物ではなかった。
獣人や妖怪である、ヤッファやハサハも例外ではない。
雷光や疾風、爆裂が怒涛の如く介在する、そのような中では既に彼らすらカテゴリーを外してしまう。
先ず、アイギスはアキトに向かい連射気味に月下咆哮を吐き出す。
その事により、周囲数十メートルのクレーターが現れるが、弛緩したアキトを包む光の幕に届かない。
それに対し、アキトを包む光は一瞬膨張したかと思うと、天から雷を落とし、また地面から岩の槍を飛び出させる。
もちろん、それにやられるようなアイギスではなかったが、それでも驚き一度は引き下がった。
しかし、その事実に愕然とするとまた跳びかかっていった。
一度などアイギスがアキトに爪を叩きつけそうになったが、
アキトの周囲にあるあらゆる植物からツタが伸びあがり、アイギスの体をがんじがらめにした。
そう、あのアイギスを前に気絶して身動きの取れないはずのアキトは押していた……
「何だってんだ……アキトの奴……牙王アイギス相手にまともに戦ってやがる?」
「ううん、ちがう……あれは、そとのちから……おにいちゃんはただ、でぐちになってるだけ」
「……じゃあまさか、アキトの奴その力に体を乗っ取られてるってのか?」
「(コクリ)」
そう、揺らめくようにただあるだけのアキトがアイギスを圧するなどありうる話ではない。
気絶している状態にあるのは間違いないだろう、しかし、その何かはアキトを操りアイギスを追い詰めていく。
【明らかに人の力ではない……全てを圧するこの力は、まさか……ありえない……】
追い詰めれられているアイギスは、むしろ追い詰められた事実よりその力が何であるかに驚愕しているようだった。
追いかけてくる竜巻を月下咆哮で相殺し、横っ飛びに避ける。
一瞬の後、その場には直径10mを超える巨大な落石が叩きつけられる。
こんなものに直撃されればアイギスとてただではすまない。
【流石は……よな、我の力を上回るとは……だが、唯ではやられぬ……】
アイギスが飛び込んだ先も、地面が次々と陥没してアイギスの足を取ろうとする、
アイギスは必死でバランスを取りながら、飛来する無数の氷の柱を回避する、
しかし数が多い上に足場の悪さも手伝い何割かは体で受けてしまった。
体中傷だらけとなっても立ち上がるアイギス。
しかし、この状況では長くは持ちそうに無い……
【我に捨て身を決意させた事、後悔するなよ……】
それでも、彼は王であった。
体を血だらけにしながらも、完全と立ち上がりアキト……いや、アキトに取り憑いている何かに向かい言い放つ。
もちろん、その間にも間断なく攻撃は繰り出されてきたが、彼は凌ぎ続けていた。
そして、攻撃が途切れた瞬間を見計らい飛び上がる。
それは重力すら感じさせない跳躍であった。
アキトの直上まで飛び上がったアイギスは先ほど温存していた最後の咆哮を放ちながら降下していく……
咆哮はアキトに届く前に光によって拡散するが、それを気にせず、アイギスは直上から落下する。
【喰らえ、我が名を冠する、牙の一撃!】
そのまま、アキトにガブリと噛み付き、地面に自分ごと叩きつける。
衝撃で自分の体も傷だらけにしつつもアイギスはアキトに牙を突き立てる。
しかし、光の幕は以外にも強固に牙を阻み、致命的な傷をつけられない。
更に、アキトを包む光の幕はだんだんとアイギスの牙を押し返し、最後には両顎を開ききらせて脱出した。
アイギスは口元からも血を滴らせつつどうにか踏みとどまる。
流石に満身創痍と言ってよかった。
【ここまでとはな……肉体も人ではないというのか……我にも最早打つ手無し、ならば……】
アイギスはもう一度立ち上がり体勢を整える。
幸い、先ほどの攻撃は無駄ではなかったのか攻撃はやんでいる。
しかし、放っておけば回復されてしまう恐れがある。
アイギスは月下咆哮の体勢に入った。
アイギスとて既に声帯にダメージを負っているのだ、これでだめなら死ぬしかない、そう覚悟はしていた。
故にゆっくりと時間をかけて溜めを作る、これを放てば二度と月下咆哮は打てなくなるだろう……
しかし、それでも止まる事はできなかった。
【さあ、我が最後の一撃受けてみよ!】
牙王が引く事など出来るはずもない、アイギスは命を燃やし尽くしてもアキトを倒しこの先に進もうとするだろう。
しかし、このままでは勝ち目がないことも既にわかりきった事であった。
帝国軍の兵士が大量に投入された事によって、私達は脱出経路の確保に追われる事になりました。
でも、逃げるにも丁度邪魔になる位置に屈強な人が立って居ます。
あれは、副官のギャレオとか言う人ですね。
でも、ここで負けるわけには行きません。
だって、私達は捕まる訳にはいかないんですから。
「ここは通さん!」
「絶対通ります! ベルフラウちゃんを好きにはさせない!」
正面にいるギャレオという軍人は剣術でも私と互角、パワーは明らかに私より上。
見た目から体格がいい軍人さんですが、すばやい連撃もこなす器用さも持っています。
流石は実力主義のアズリアの副官ですね。
長期戦に持ち込めば私にも勝ち目はありそうですが、そんな事をしていれば完全に囲まれてしまう。
そんな事になれば私達に勝ち目はないです。
「なかなかやるな!?」
「貴方こそ! ですが、ここは退いてもらいます!」
「させるか! お前達はここで捕らえる!」
右へ攻めれば右へ左へ攻め込めば左へ、縦横無尽に繰り出した筈の私の攻撃はほぼ全て剣で受け止められました。
スピードの違いで多少は掠めた攻撃もありますが、軽傷になったかどうかも怪しい程度です。
しかし、この場は剣術の腕だけを競っているわけではありません。
私たちには時間が無いんです。
囲まれるまでに何とかしなければいけない。
そこで、私は勝負に出ることにしました。
ギィィィン!!
そう、ギャレオの剣を真正面から受け止めて私は力比べに持ち込んだんです。
正直既に包囲網は縮まっていましたから、一瞬で何とかしないといけない、そう考えた末の行動だった事は間違いないです。
でも、この行動が予想外の結果を招く事になったという事は後になってはじめてわかりました。
「ぬうぅぅん!」
「くぅぅ……ッ」
このままじゃあ押し負ける……当然の結果です。
力比べで男の人と競うなんて普通は愚の骨頂。
しかし、私には切り札がありました。
それは……
私は一瞬で光に包まれ、髪の色や体の色が全て白に塗りこめられていきます。
抜剣覚醒、そういう能力だとヤードさんが調べてくれました。
この状態の私はパワーもスピードも数倍に増幅されています。
つまり巨漢のギャレオさんを力で圧倒する事が出来たわけです。
「やあぁぁぁっ!!」
「ぐはぁ!?」
ギャレオさんを弾き飛ばし、みんなを誘導しつつ最後尾について撤退を支援します。
今の状態の私なら、兵士10人に一度にかかってこられても、全く寄せつけずに闘う事が出来ます。
召喚術も普通では出来ない上級の召喚も可能です。
でも、そこまでしなくても問題なさそうな感じです。
十分時間を稼げたらしく、みんながベルフラウちゃんを伴って撤退していきます。
全員が引き上げた事を確認して、私も引き上げる事にしました。
でも、その場を遊軍を指揮して回り込もうとしていたアズリアに見咎められてしまいました。
「その剣……そうか、貴様が!?」
この私の姿、いえ、私の剣を見て、彼女は驚愕し、そして怒りの表情で見つめます。
そして、苛立ちと共に、私にたたきつけるようにいいました。
「どこまでも、私の邪魔をするというのか貴様は……ッ!」
それは、まるで裏切られたというような表情、私が敵になったと考えての懊悩でしょうか?
アズリアの考えは多分間違っていない、立場を考えれば私は敵なのかもしれない。
でも、私はアズリアの敵になったつもりはない。
だって、皆は帝国に対して敵対しているわけじゃないもの。
たまたま、手にしたこの剣の事でこじれるのも嫌だけど……
でもこの剣はあの子を……ベルフラウちゃんを、私の初めての生徒を守るためにつかんだ力。
なぜかは分からないけど、争いの原因になるのは違うと思った。
「聞いて、アズリア! そうじゃないの!」
「総員、撤退せよ!」
私はアズリアに呼びかける。
でも、アズリアは私の言葉を聞いてはくれなかった……
「アズリア…」
「二度と気安く私の名を呼ぶな!!」
「…ッ!」
「帝国軍の威信にかけて、その剣は必ず取り返してみせる!!」
それは、アズリアの決意の表れ、彼女がこうなった時は絶対に意見を曲げない。
私は……アズリアと敵対するしかないのだろうか……ううん、そんな事……
何か方法があるはず、きっと、アズリアに分かってもらえるように。
でも、それは今じゃない。
今はただ、ベルフラウちゃんが無事に帰れる事を祝おう……
同刻、アキトに対し最後の攻撃を加えせめて一矢報いようとするアイギスと、光に包まれたアキトという状態が崩れ始めていた。
アキトを取り囲んでいた光は<竜骨の断層>へとむけて収束して行き、アキトからどんどん抜け落ちていった。
アイギスはそれを見て最初は不可思議に思う物の、好機であると判断し、気を集中し始める。
別の所にエネルギーが流出している。
それは、アイギス、そしてハサハにもはっきりと分った。
流れていく先は<竜骨の断層>らしいという事まではっきりと分る。
アイギスは高めきったその力を月下咆哮として解き放った。
周囲を巻き込みながら、震動波が光の支えを失い地面に崩れ落ちたアキトに迫る。
ハサハは迷った、あの前に飛び出せば多分死んでしまう。
でも、このままではアキトは確実に死ぬ。
その思いに身震いし、彼女は一歩を踏み出した。
「だめーーーーーっ!!!!」
ハサハはヤッファを振り切り、アキトと震動波の間に飛び込んでいく。
それは、無謀としか言いようのない行為、一瞬で蒸発しても不思議ではなかった。
ドッゴーォォォーーン!!!
ヤッファはあまりの事に一瞬目をつぶってしまった。
そして、おそらく消し炭しか残らないそう思ってしまうほどの衝撃。
しかし、うっすらと目を開けたヤッファの目に飛び込んできた光景は予想とは大きく違った物だった。
「うぅぅぅっッ……うぅぅぁぁぁァァ!!!」
なんと、それは拮抗していた。
彼女が持つ特殊な防御、イズナ眼。
本来なら、幻術と実体攻撃の減殺能力にしか過ぎないそれを最大発動して、
その眼力だけで振動波と相対する。
言葉にすれば簡単だが、彼女は目の毛細血管を破裂させるほど神経を集中する事でようやく拮抗させているのだ。
長くは持たない……
それでも、実体攻撃や防御しか持たないヤッファには何もできる事は無かった。
ハサハは全力を出しながら、徐々に振動波をそらし始める。
目から血の涙が流れ始める。
それでも怯むことなく、ただひたすらに振動波をそらし続けた。
そして、振動波をとうとうほんの数メートルそらす事に成功した。
ハサハの真横を振動波が凄い勢いで通り過ぎる。
「おにいちゃ……」
ハサハはその言葉とともに地面に崩れ落ちた。
いや、むしろそこまで良く持ったといえるだろう。
気絶したにもかかわらず、その顔は満足そうであった。
牙王アイギスはそれを見て、その場に崩れ落ちる。
【ククク……まさか、まさかな……仙狐がいようとは……我の完敗だ……】
アイギスは声帯を損傷し、体中傷だらけで、既に行動できる力を残していない。
話は直接頭に語りかける形のいわゆるテレパシーのような物だから問題ないが。
それすらも、億劫であるらしかった。
「ははは……勝っちまいやがった、あいつら、あの牙王アイギスに……」
だが、安心できるわけでもない。
メイトルパで最強クラスの巨獣牙王アイギス……
その牙を退けるという事に対しヤッファは少し複雑な気持ちにはなったが、
それでも、二人が助かった事は、素直に嬉しいと思った。
まだ仲間になったと言い切れない存在である彼らだが、生き方は尊敬できる、そう感じているのだ。
ヤッファは、倒れ伏しているアキトとハサハを左右の肩に担ぎ、来た道を引き返すのだった……
なかがき
うーあー、まだ終わらない……(汗)
戦闘は終了したけど、終了後イベントと夜会話があるから辛いです。
でも、夜会話いれないとファリエル出せないし〜(泣)
これからはファリエルも活躍してもらいたいからねー
後、アキトの戦いを期待していた方申し訳ない。
実はこのイベント、後半に響かせるための伏線なんで、別の方に闘っていただきました(爆)
でも、なんだかハサハポイント稼ぎまくり(汗)
このままではハサハエンドへまっしぐらか!?(爆)
でもなぜか使いやすいんだよ〜(汗)
そもそも出てこないはずの場所だから役割ないしね。
この先もハサハが出番とりまくりな予感(汗)
WEB拍手ありがとう御座います♪
今回も残念ながら、きちんと残しておりませんが、12月中ごろかなりの数のWEB拍手を頂きました。
感謝しております。
私もがんばらんとな(汗)
次こそはきちんと返信をせねば……
押して頂けると作者の励みになりますm(__)m
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