「俺なんか元テロリストだからな、心配される価値もないさ」
「そんな!」
「そう、でも心配してしまうのがここの流儀という事だ。
だから、俺がファリエルを心配するのも構わないだろう?」
「あッ……」
その間もゆっくりとファリエルの頭をなで続けている。
正直、かなりクサイが、この際仕方ないと割り切ってしまおう。
おれ自身、既にたくさんの人に迷惑をかけた、今更罪がどうの、罰がどうの言っても締まらない。
もっとも……北辰だけはこの手で、その執念まで失った訳ではないが……。
Summon Night 3
the Milky Way
第十章 「迷走する思い」第四節
アキトさんがファリエルとの話から真実に近づきつつある頃。
私たちもまた、この島の中で見え隠れする遺跡と剣の関係について独自に調査をしていました。
それは私の持つ碧の賢帝シャルトス、
その中にある何者かの意思が最近頻繁に語りかけてくるようになったためでもあります。
元々、剣を廃棄しようとしていたカイル海賊団にとってもそれは他人事ではなく、一も二も無く協力してくれています。
「でも封印された力って、いったいなんなんでしょう?
この島を作り上げた召還士の魔力だってアルディラは言ってたけど……、確かめておかなきゃ」
「なるほど、それで私たちだけで調査をするというわけですか」
「下手に話を持ち出せば、絶対止められるってわかっていますしね。
それに、私はこの目で見ているから……。遺跡をめぐって、護人同士が本気で殺しあおうとした場面を」
「!?」
「あんな光景は、二度と見たくないから」
正直島民である彼らに黙って行く事に対して後ろめたさが無いと言えば嘘になります。
それに、私が近づく事で遺跡が活性化するという話も聞いたことがあります。
だけど、何にしても一度しっかり調査してみない事には原因も、そして何が起こっているのかも分かりません。
「それだけの秘密が、この遺跡に眠っているってことか」
「でも、本当にいいの? そんな所に、勝手にあたしたちだけで入ったりして」
「下手しちゃえば、アタシら全員、重罪人ってことになるかもよ?」
「確かにそうなるかもしれません。でも、最近思うんです。
私たちここの所ずっと受身じゃありませんか?
何か起こるたびに場当たり的な対処をするばかり」
「受身ねぇ、確かに言われてみればそうだけれども」
「それは、私たちが結局原因を知らずにその場で起こったことだけを対処しているからだと思うんです」
「それじゃ、先生はその原因があの遺跡にあると見てるんだね?」
「そういう事、私の持つ剣、それにアキトさん、これらは遺跡と関係しているし、
結界や、里の気候なんかにも関係してる、遺跡はこの島の状態を作り出す鍵になっている事は間違いないと思うの」
前々から、島を見て回って違和感を持っていました。
でもそれはアキトさんがいたから余計に意識した事でもあります。
最初の頃アキトさんがしきりに違和感を訴えていた事を思い出します。
その頃は異世界から来た故のものだと思っていましたが、もしかしたらこの島そのものに何か……。
そう、何者かの意思が介在しているかのような、いえ、剣の意思の事を思えばしているのは確実。
「先生……」
「何も知らないまま誰かを傷つけてしまうくらいなら、全て知った上で自分自身が傷つく方がずっといい!
だって切ないじゃないですか、苦しんでる人の理由も分からない、でも私のせいかもしれないなんて」
「そういう奴だよな、お前は。自分より、他人の涙が気になって仕方がねえ……そうだろ?」
「カイル……」
「アタシらの目的は、元々あの剣を処分しちゃうことでしょ?」
「目的を果たすためにも、私たちは喜んで貴方に力を貸しますよ」
「そもそも、客人をほっぽっとく訳にはいかないじゃん?」
「ただ、言いたい事はわかるけれど。アキトやハサハはどうしますの?」
「ビビッ」
ベルフラウが私に確認するように、見つめてきます。
碧眼の瞳はウソは許さないと、目で言ってるのがわかります。
私は、何故この時皆に話したのか、それを語る必要がある、そういう事でしょう。
「アキトさんは、全容をほぼ知ってるんじゃないかと思う。
けれども、彼を遺跡に近づける訳にはいかないんです。
私も危険ですけど、アキトさんの危険度は私の比じゃありません」
「どういう事?」
「以前言っていた事ですけど、彼は肉体ごとこの世界に呼ばれた訳じゃないんです。
呼ばれたのは魂だけ、肉体はこの世界で作り出されたもの。
そう、剣、いえ遺跡の力によって」
「え?」
「ちょ、待てよ。それじゃ……」
カイルはそれを聞いて察したのでしょう。
そう、アキトさんは遺跡からの力の供給がなくなるとどうなってしまうか分からない。
元の世界に返ることが出来るならまだいい、最悪消滅してしまうかもしれない。
遺跡がなんであれ、接触する事がどれだけ危険か考えるまでもない事なんです。
「私たちが行く事はアキトさんのことですから、何らかの手段でつかむでしょう。
ですから、あまり時間はありません。アキトさんが来るまでに終わらせたいんです」
「なるほど、そういうことならいいよね? ベルちゃん」
「もう、子ども扱いしないでくださる? 私は構いませんわ」
「じゃ、決まりだな」
「ありがとう、みんな。それじゃ……。行こう、遺跡へ!」
「「おう!!」」
こうして、一路島の中央部にある遺跡へと向かう事を決めた私たち。
とはいえ、結局歩く訳なのでそれなりに時間もかかります。
道中私たちは遺跡に関する知識をまとめにかかっていました。
その場で使える時間はあまり多くないだろう事はわかっていましたから。
「だけど、先生の剣がまさかこの島の遺跡の鍵になっちゃうとはねー」
「剣に封じられていた強大な魔力もその為のものだったんでしょうね……。
あるいは、あの嵐が私たちをこの島に導いたのも……」
「封印を解くために遺跡が呼び寄せたって事かしら?」
「ありえない話ではないでしょうね……」
「そんな……、ありえませんわ……」
「でも、そう考えれば確かに、私に語りかけてくる剣の声も説明がつきます」
スカーレルやヤードさん達の考察が深い方向に行きます。
何も関係なくこの島に流れ着いたと考えて、更にこの剣がこの島に関係があったのが偶然とした場合。
うん、ありえませんね。
嵐を起こし、持ち主を呼び寄せたと考えた方がまだ自然です。
でも、だとすると皆を巻き込んだのは私? いえ、流石にカイル一家と帝国軍は元からですが。
少なくともベルフラウがここに来るはめになったのは私のせいという事ですよね……。
後できちんと謝っておかないといけません。
そんな事を考え整理すると、やはり偶然とは思えないんです。
「何にしても、あんまり楽しい話じゃねぇな、ったくよ……」
「不愉快ついでって言ったらなんなんだけど。もう片割れの剣はどうなったのかしら?」
「あー!? そう言えばすっかり忘れちゃってた……」
「ソノラ……、貴方ね……」
「ビビッ!」
ソノラの発言にベルフラウが眉をひそめています。
ですが、仕方ないと言えば仕方ない事かもしれません。
嵐で船が沈んで以来、一度として見かけた事が無いのですから。
ただ……それだけで済ますには少し気になる事もあるのは事実。
「帝国軍があの様子じゃ、連中が持ってるって事はなさそうだな……」
「あのまま……海の底に沈んじゃったのかな?」
「そうだとしても、探し出して確実に処分するに越した事はありません」
「となると、やっぱりこの島から船を出す算段をするのが先決ってことになるわね」
もう一本の封印の剣……本当に島の外なのでしょうか?
私が流れ着くように誘導されたように、誰かと契約して島に流れ着いている可能性はないでしょうか?
アキトさんの世界の人間だという、確かホクシン、彼の宿敵。
ですけど、アキトさんの世界の人間だとするなら、この世界に来た方法は?
もしかして……同じようにもう一本の剣から……。
だとするなら、既に剣の使い手も存在しているかもしれない……。
そこまで考えが及んだ時、ちょうど遺跡の場所までやってきていました。
やはり、建造物としてもかなりの大きさ。
この小さな島には少しばかり不釣合いにも見えます。
「こいつが喚起の門か……」
「確か、ジルコーダってアリの化け物が出てきたのはこの門のせいだったわよね?」
「ゲンジさんも……、いえ、この島で暮らしているほとんど全ての生き物は、
この門をくぐり、リィンバウムへとやってきたんですね……」
「今でもこの門から化け物が出てくるかも知れないんでしょ!?」
「ええ……、先を急いだ方がいいですわね」
引き返すんだ……
今の君では……
まだ……
僕と同じ……
とり……っ!
「先生?」
私の心に直接響いた声、でもこの声は今までの剣の声とは違う感じです。
だとすれば、剣には少なくとも2つ以上の意思が介在しているという事。
そう考え手いた私ですが、ベルフラウに覗き込まれている事に気付きました。
「皆さん、お願いがあります」
「なんだ先生? 畏まって?」
「恐らく中に入れば確実に何か出てくると思います」
「え?」
「どういう意味だい、先生?」
「剣に反応して召喚を行う施設ですし、それに全く何もせずに通れるような所でもないです」
「ま、それもそうだろうけどよ」
「でも、アタシたちがついて行くのってそのためでしょ?」
「はい、気にしないでください。私たちもこの島の事を知りたいのです」
「……皆ありがとう」
スカーレルやヤードさんは元よりそのつもりだったと笑いかけてくれました。
他のみんなも決意は固いようです。
巻き込んでしまってるのに……でもありがとう。
そうして、門の真下までやってきた私たちでしたが、やはり閉ざされている様子です。
「こりゃまた随分と大層なモンだな」
「随分ボロボロになっちゃってるけど……、やっぱこれ……」
「戦争の跡よ……、ほら、その草むらを見てご覧なさい……」
「あっ……、こ……これって……っ」
「人の、骨……」
「島の中心部だけあって、相当激しい戦いがあったのでしょうね……」
「こりゃ、亡霊が出て来るかもね」
「ま、亡霊の相手はこの間もしたけどな、海賊の亡霊だったけどよ」
敷地をぐるりと見回しても、入り口は他にありそうにありません。
恐らく、そういう作りにしているのは召喚された召喚獣をうかつに外に出さないためでしょう。
最も、今はジルコーダ(蟻)のように門の外に召喚されていることもあるようなので制御出来ていないのでしょうけど。
「よう、それで。こっから先のことはどうするんだ?」
「遺跡の中に入れば、知りたい情報を引き出す事が出切る筈なんですが……」
その点はアルディラから調査済みです。
少し悪いとは思いましたが、クノンの件とアキトさんの件で色々ありましたし、少し強引に行かせて頂きました。
この門そのものが魔法による索引、というか一種の説明書になっているそうです。
ただし、使えるのは基本的に剣の所持者のみのようですが……。
「でも入り口の扉はきっちり閉まったまんまだよ」
「多分こうすればきっと」
門に少し剣を召喚するための光を出して当てます。
光だけなので、恐らくアキトさんに影響は無いと思いますが、それでも気付かれた可能性はありますね。
ここからは時間をかけるわけにはいきません。
「扉が、剣の光に反応していますわ……」
「反応したのは、そっちだけじゃあなかったみたいよ?」
「ビビッ!?」
扉が開き始めると同時に、周囲の屍達が動き出しました。
埋葬してあったものもいるようなんですが、それらも含めおおよそ五十体前後。
ほんの一瞬でもこの反応、執着があるのか、憎いのか。
私に分かるのはただ、彼らが剣を狙っているという事だけ。
ウォォォォォ……
「ほほっ、骨が動き出してるっ!?」
「剣の力に反応するってのはただのフカシじゃなかたみてえだな」
「ごめん、みんな。多分こうなるって分かってたけど……」
「それぐらい、こちらも承知の上ですよ」
「アタシたちはこういう時のためについてきたんだから」
「邪魔者はまとめてぶっちめてやるぜ!」
皆は亡霊に物怖じせず攻撃をかけていきます。
カイルさんは突撃し、ストラで強化された拳を振るいます。
ストラは回復などの効果があるだけに、亡霊なんかにもしっかりと攻撃が当たるみたいです。
亡霊のタイプは3タイプ、体の無いゴーストタイプと骨だけのスケルトンタイプ、肉体を持ったゾンビタイプ。
もっとも、ゾンビは破損が激しいのか動きが悪いですが。
当然厄介なのが肉体を持たないゴーストタイプ、彼らには剣や矢はほとんど効きません。
ですが……。
「来なさい! シシコマッ!!」
赤い顔の鬼、後ろには何故か唐草模様のマントをつけて、その下の事はまるでわかりません。
まるで体が無い様ににも見えるのですが、ベルフラウが召喚したのはそういう生き物のようです。
小さな体に金色の髪をなびかせ、ベルフラウは精一杯胸を張ります。
召喚術において、召喚獣には一応召喚主に逆らわないような術が施されます、しかしそれも絶対ではない。
なので、召喚をする時は常に気を張っていなくてはなりません。
「シシコマ! 獅子激親!!」
シシコマの口から何か煙のようなものが噴出し、それを食らった霊たちは力を弱め消えていきます。
かなり広範囲に広がったらしく、4体ほど巻き込みました。
このように、召喚術なら大抵霊にも効く事が分かっています。
私も負けていられませんね。
「現れよ! フレイムナイトッ!」
私が呼んだのは腕に特殊な火炎発射装置のあるロレイラルの機械兵士。
その腕から発射される協力な火炎は普通の攻撃が効かない相手にも当たります。
ですから当然、
「ジップトーストッ!!」
フレイムナイトの腕から発射された火炎は周囲に拡散し、10体近い亡霊達を巻き込みます。
特に、ゾンビタイプは燃えやすいのか一気に崩れていきました。
「流石ねセンセ! じゃ、アタシも一つやってみようかしら?」
言いながら、スカーレルは札のようなものを数枚取り出しゾンビについた火に近づけます。
そして、懐から取り出した短剣に器用につきさしていきました。
あっと言う間に準備を整えたスカーレル、両手に持った6本の短剣にはそれぞれ火のついた札があります。
まさか……。
「そーれ! 燃え広がんなさい!」
6本の短剣はそれぞれ別の場所に突き刺さりました。
1本がゾンビに刺さったものの他ははずれてしまいました。
しかしその次の瞬間、短剣が刺さった所が爆発。
巻き込んだ亡霊達の数は十数体くらいになりそうでした。
「ちょーっと、面白い札を仕入れたからね?」
「先に言ってください!!」
巻き込まれて怪我をした人はいないようですが、流石に驚いて皆の動きが止まってます。
それを見逃す亡霊達ではありません、ベルフラウの背後から襲い掛かるスケルトンがいます。
私は声をあげて走って行こうとしましたが、次の瞬間そのスケルトンは吹き飛ばされていました。
「ソノラ……、ありがとう」
「へへーん、銃が効く相手なら私の出番だよ♪」
ソノラの銃による攻撃だったようです。
その後も、ソノラは次々と銃を撃って他のメンバーをサポートしています。
普段突撃していくタイプというイメージがあるのですが、銃の使いどころはしっかりしている様ですね。
でも、銃撃で亡霊達の注意がソノラのほうに向いてしまいました。
ソノラは応戦していますが手数が足りない様子。
「オニビッ!」
「ビビィッ!!」
ですが、体勢を立て直したベルフラウが弓で、オニビが口から炎を吐いて応戦します。
そうして攻撃を集中するために集まってきた亡霊達に向かって。
上空から双剣がつきささりました。
「氷魔コバルディア! 魔氷葬刃です!!」
突き刺さった双剣から氷の刃が無数に放たれ周囲にいた亡霊達を巻き込みます。
貫かれ凍りついた亡霊達は砕け散って胡散霧消し、そこには何も残りませんでした。
こうして大部分を失った事で元より統制が取れていたとはいえない亡霊達は各個撃破されて消えてきました。
アアアァァァアああああっ!!!! アァァああああッ!!!
「やったのか……?」
「彼らを形作っていた魔力は霧散しました。
しかし、魔力が再び満ちれば、亡霊たちはまたあの様な姿でさ迷うのでしょうね……」
ヤードさんは苦々しくそうつぶやきます。
そうですね、こんな事……。
「こんな事、絶対に放って置いていいものではありません。
彼らを縛り付けている力の源を断ち切らないと!」
「先生……」
「ああ、そうだとも先生ならきっとそれを叶えられるさ!」
「急ごうよ!」
こうして私たちは、遺跡内部へと向かう事になったのです。
勇み足であった事はその時の私も既に思っていた事でした。
ですが、事態を動かすためという使命感でその思いを押さえ込んでいたんです。
けれど……私は……。
遺跡内部にある広間<識得の間>この島を作り出した召喚師たちはその部屋をそう名づけている。
どこかクリスタルめいたつやのある壁や床で覆われたかなりの広さの空間。
高低差があるとはいえ、内部でかなり暴れまわっても崩れそうには見えない。
地を這う蔦やひび割れを起こしていた外部とは違い、艶を持ってすらいる。
とても何十年も放置されていたとは思えない。
そんな広間に突入してきたのは白いローブと赤いワンピースを着た赤毛の女性アティ。
金髪碧眼の筋肉質な野性味のある男、カイル。
同じく金髪碧眼で巨大なカウボーイハットを背負った少女、ソノラ。
黒髪を変わった感じに結い上げ、紫の口紅を引いた特殊な感じの男、スカーレル。
銀髪、そして黒いローブの理知的な瞳をした男、ヤード。
最後にベレー帽をかぶった小さな金髪少女、ベルフラウとその守護獣オニビ。
6人と1匹は突入した勢いで周囲を見回すと、とりあえず敵がいないか確認している。
そして、一息ついた後もう一度きちんと広間の確認を始めた。
「これが……、この島の中枢……」
「なんだか……見てるだけですのに、息苦しいですわ……」
そう、この広間には所狭しと光が流れている。
それは、何かの力が流れているのが普通に分かるほどだ。
床、天井、壁それら一面なんらかの文様が浮かび光がその中を走っている。
「サピレスの魔方陣とシルターンの呪符、それにメイトルパの呪法紋の組み合わせ。
異なるそれらの力をロレイラルの技術で統合制御しているというのか……」
「で、そのココロは?」
迂遠な説明を始めたヤードにスカーレルが要約を求める。
それを聞いてはっとなったヤードはコホンと一つ咳をいれ、再度語りだす。
それは、本当ならありえないような話だった。
「とてつもない魔力を引き出せるという事です。
しかも、目的に応じて魔力の質を変換する事さえも……」
「それって、まるで伝説の……?」
「その力、至源より生じあまねく世界に向けて通ずるものなり。
彼の者の声、すなわち四界の声なり。
彼の者の力、すなわち四界の力なり。
四界の力をたずさえ、悠久に楽園の守護者となるべき者……」
「契約者(リンカー)、エルゴの王……」
「ちょっと待ってよ! それって昔話の中の話なんじゃあ……」
リィンバウムが4つの異世界よりの侵略を受けていた時代。
それら4世界の守護者達の加護を受け、全ての召喚術を使いこなす者が現れた。
契約者(リンカー)と呼ばれたその英雄は最終的に異世界との境界に結界を施し侵略を防ぐ事に成功した。
そしてその無限とも思える力と万能の召喚特性を持ってエルゴの王と称えられる。
それは、同時に世界を統一した王でもある。
今ある、大陸中央の「聖王国」、北方の「旧王国」、西方の「帝国」らといった大国は彼の子孫を名乗り今もそれを誇っている。
そう、それはリィンバウムに住まう者にとって最も有名な御伽噺であり、同時に歴史の原点でもあった。
「そのとおりよ、でも真実か否かは誰にも分からないわ。
でも、現実に剣の力……遺跡の力でセンセは全ての世界から召喚獣を呼ぶ事が出来る」
「リィンバウムを救った伝説の英雄エルゴの王、それと同じような力がこの剣に?」
「断定は出来ません。実際にこの装置を起動させてみない事には……」
「心配すんな! いざって時は俺らがついてるんだからよ!」
「はい、それじゃ……やってみますね!」
あまりにも強大な何かを思わせる遺跡にアティは何か予感めいた恐ろしさを感じていたが、
仲間達の励ましにより、決意を新たにする。
そして、アティは虚空から剣を取り出した……。
光が<識得の間>を満たす。
そして、アティの意識は……何か強大な力とも意思とも呼べる何かと繋がった……。
あとがき
夏の間に1話と思っていたら秋でした……。
遅くなって申し訳ない(汗)
今回の話は少しばかり手間取ったのも事実でして。
アティ初のピンチという事になりますかね。
今までと違い精神的な話ですし、それにこれは同時にアキトもピンチだったりするのでw
次回上手くまとめられるか不安ですが頑張りますね。
押して頂けると作者の励みになりますm(__)m
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