異世界召喚物・戦略ファンタジー
王 国 戦 旗
作者 黒い鳩


第七話 【街道の町アードック


キャウルからの乳しぼりを順を追って皆で試していたらメルカパが一番上手い事がわかった。
結果的に乳絞り係はメルカパになったので、
5匹に増えたキャウルから一週間のうちに50杯分以上の乳を搾る事ができた。
そうして、オレとリディとアルテの3人がアードックの町にキャウルの乳を売りに行く事となった。
女性を中心に川で取ってもらっている砂金もある程度取れたのでそちらの換金も狙っている。
巡回している商人とどれくらい値段が違うのかも確認するつもりでいた。
ダンさんと行ったほうがいいという話も出たが、村の諍いを鎮められる人間が一人は必要だった。
メルカパも誘ったが、キャウルの世話を休む訳にはいかないとの事で任せてある。
今までの西の森探索で既に近隣の食べられる物は取り尽くした感があったため、そちらはお休みである。
だが、今の貯蔵量では人口が増えた村の生活を1ヶ月支えるのは厳しい。
つまり、キャウル次第という事になるだろう。
責任は重大だった。

「でもリディお姉さんが付いてきてくれるとは意外だったのです」
「そうかな?」
「はい、メルカパと一緒に残るものだと思っていたのですよ」
「えっ……」

小柄な赤毛の少女リディはアホ毛をピンとたてて、見た目幼女のアルテの言葉に反応している。
因みに、馬車を運転しているのもリディなので、アルテはその横に座り、俺は台車の上である。
幌のない馬車なので、雨等が降るとこの上から毛布をかけたりするタイプだ。
結果運転している人間はずぶ濡れとなる。
馬はこの世界でも普通にいるようである意味安心だった。
チョ○ボに引かせているお話もよく見かけるが、あれは揺れそうだ。

「べっ、別に私とメルカパさんは付き合ってる訳じゃないよ?」
「あやしーのです。本当の事をゲロするのですよ!」
「えっ、そその……別に時々お話する程度の仲だし。
 子供達の遊び相手になってくれてるから助かってるけど……」
「へーえ」
「ほーお」
「もう、達也さんまで!」

真っ赤になっているリディが楽しくて、俺もつい参加していた。
ともあれ、これでリディがメルカパに気があるのは間違いないだろう。
メルカパ、オタクのカリスマと呼ばれた男……。
見た目は、体格のいい眼鏡デブというか120kgオーバーの巨漢。
最近は運動もしていたので少しは減ってるかもしれないが。
後、食料不足の村でよく生きていけたなとも思う。
だが、それはそれとして俺の友人だ。
俺なんかより人づきあいの上手いメルカパの事だ、子供達とも直ぐに仲よくなったのだろう。
日本での偏見は、この世界においてはあまり意味がない事もあり直ぐに馴染んだ。
皆が知らない知識を上手く使って、子供達の好きおじさん(本人泣)になっているという。
まあ、この場ではあまり関係の無い事だが。

「でもキャウルの乳って高級品だって言う話は知ってましたけど、
 どれくらいで売れるんでしょうね?」
「相場は調べておいた方がいいのですよ。色々な店を回って売値を確認しておくべきなのです」
「だな、その値段によって何割で売るか決めよう」
「何割? どういう違いがあるの?」
「元々、このミルクは保存が効く高級品という事だから、半値以下で下ろす必要はないと思う。
 でも、もし一定額以上の高値なら、多少割合を上げても卸せる。十分利益があるからね」
「一杯100ダール以下という事はないと思うのです」

ダールは色々検証した結果1ダール100円くらいか、もう少し価値があるかもしれない。
つまり売値は1杯1万円以上となる。
凄い値だが、薬としての意味合いも強いらしく、滋養強壮になるとか。
1杯そのまま使われる事はまれで、テキーラ等を飲む時の御猪口サイズのグラスで飲む。
それ1杯で10ダールくらいだそうだから実際の売値は300ダールくらいと予想される。
半値なら150ダール、良心的な店ならもう少し良い値で買ってくれるかもしれない。
毎週今の量を下ろし続けて値下がりしないか心配ではあるが、
砂金の売上と、食べ物の貯蔵量、今始めている2毛作の豆が収穫出来る時期を考えれば、
足元さえ見られなければ、今村にいる人達をなんとか養っていけるだろう。

「しかし、カトナの村に来てから他の町に出るのは初めてだな」
「そう言えばそうなのです。
 もうママのお乳が恋しくなったのでちゅか?」
「ママね……、そう言えば長い事会ってないな」
「さっと流さないでほしいのですッ!!」

ママというか母は父と共に考古学の研究をしている。
父が考古学教授をしていて、母は元そのゼミ生、今は助教授にまで登って来ていたようだ。
色々な土地へ行く彼らにとって俺という子供は邪魔な存在だっただろう。
愛が無かったとは言わない、だが、研究の方が彼らにとって重要だった事は否めない。
だからか、俺は留守を任される事が多く、いや、小さい頃は隣に住んでいた静の家に預けられた。
結果的に静とその両親とは仲良くなったが、両親に対しては複雑な思いがある。
前に直接会ったのは2年、いや3年近く前だったか。
死んでいない事は定期的に振り込まれるお金で分かるし、時々だが電話で話しもしている。
だが、それ以上の繋がりはなくお金をくれる他人というようなイメージすらあった。
お陰で困った事に、最近元の世界に帰る事が少し億劫になりつつある自分を感じる。
静はこの世界にいる可能性が高いし、清四郎もそうだろう。
メルカパはいる、友達が他にいないではないが、後会いたいのは静の両親くらいだ。

いや、無駄な事を考えるのは止そう。
今は村を助ける事が第一、第二にアルテの事、並行して俺自身の安全、この3つが重要だ。
そう考えを切り替えた矢先、俺の視界にアイコンが表示される。
視界の1km圏内に人か妖精かモンスターが入った合図。
俺は急いでそのアイコンを表示させる。
あれは……。

+++++
名前:リフティ・オルテーラ・ウィシネルド
種族:エルフ
職業:狩人
強者度:12
生命力:??/??
精神力:??/??
筋力 :20
防御力:12
器用度:38
素早さ:??
魔力 :29
抵抗力:16
耐久性:8
<<術・技>>
弓射術:熟練度:3
精霊魔法:熟練度:1
<<装備>>
エルフの弓:射撃力8:筋力補正4:攻撃力12+3(15)狩人補正
森の狩人服:固さ4:防御力補正2:守備力6
?????
<<物品>>
矢筒(矢14本)
財布(244D)
???
???
++++++
 

「あの時の殺人エルフッ!?」
「何!?」
「もしかして、リフティです?」
「ああ。彼女が接近している」
「流石たつにーさんなのです!
 リフティ、もう隠れてる意味はないですよ。出て来て来るのです!」
「多分まだ聞こえないんじゃないかな……」

大見え切ったアルテに対し殺人エルフはシーンと静まり返っていた。
まあ当然だろう、まだ1km先の森の中、声まで聞こえるとは思えない。
無音ならばともかく、森の中では虫や動物、鳥なんかも鳴いている。
煩いとまでは言わないが、かなりの大声でもちょっと厳しい気もする。
エルフ的に人間よりは耳がいいとは思うが。

もっとも、徐々に接近してきているのは事実だ。
彼女が持っていたのは洋弓、なので射程はさほど長くない、200mか300m。
有効射程に至っては100m前後ではないだろうか。
そこまで接近しない事には何も出来ないと言う事だ。
アイコンが赤くなってから1秒ないし2秒後には矢が到達していたもんな……。

「あう、もういいのです?」
「うん、300mくらいまで接近したんじゃないかと」
「メートル? 異界語です?」
「最初に見つけてから距離が3分の1くらいになったと考えていいよ」
「分かったのです。リフティ、耳が遠くなかったら出てくるのです!」
「……何故わかったのですか、姫殿下」

森の際から、リフティと呼ばれた長身のエルフが現れる。
深い緑の髪を長くのばし、張りのいい肌を覆っている。
服も森林迷彩なのか緑色の短衣(チェニック)でその上から皮鎧を部分的につけている。
そして、その巨乳っぷりがこの世界に来て初めて見た御本尊だと感じさせる。
この世界で初めて見た女性の裸、100mも先だったがはっきり覚えている。
何せ夜のオカズに使用させていただいた事もあるのだ、当然だろう。
因みに、メルカパやアルテに見つからないようにするため、野外プレイに勤しんだ事は言うまでも無い。

そんなこんなで、訳をある程度知っている俺やアルテは兎も角、
馬車を運転していたリディは驚いて馬を止めた。
基本、エルフに会うような事はまずないというのがカトナ村の実情らしく、驚いて声も出ないようだ。

「何の用なのです?」
「もちろん、これ以上国から離れないようにして頂くためです」
「……それは貴方も旧エルフ派閥に入ったという事でいいのですね?」
「お好きに考えてくださって結構です」
「……そう」

アルテは少し顔をゆがめる、俺とリディは立って見ている事しか出来ない。
あくまで会話であるし、どちらも失言したわけでもない。
そして、今までと違うのは話し合いの余地があると言う事だろう。

「なら、アルテの言う事は一つなのです。戻るつもりはないのですよ」
「そうですか……。ですが、私もはいそうですかという訳には行きません」
「ならリフティ、貴方も一緒に行くのです」
「……国境警備の私がですか?」
「そうです。貴方が何を思って旧エルフ派閥に行ったのか、理由は大よそ分かるのです。
 貴方の両親の事でしょう?」
「それは……」
「村にいる間、追手がかからなかったのも手を回してくれたのですよね?」
「……」
「そして、村から離れた時派閥の説得をする自信がないから出てきたという事なのです?」
「やはり姫殿下には敵いませんね……。その通りです」
「堅い貴方の事ですから……。近衛達にはまだバレていないですよね?」
「はい、近衛兵は基本、日常生活には関与しませんから、影武者でもそうは分からないでしょう」
「まあ、あれも一種の魔物ですからバレればバレたで構わないですが、長期であればあるほど楽です。
 貴方達には手伝ってもらった恩もあります。
 だからもう一度聞きます。一緒に来ませんか?」
「私は両親を裏切る事はできません……。
 だから、殿下、せめて村から出ないで頂きたい」

リディは前提条件が分からず目を白黒させているが、
俺はアルテとリフティというエルフの事情は粗方わかった。
いや、むしろアルテは意図的に俺に伝えているフシがある。
つまり、リフティというエルフの両親が旧エルフ派閥と呼ばれるエルフ政権復古主義者で、
リフティはその両親に言われアルテを監視している。
国境警備である彼女は国から少し離れた場所にアルテがいても監視そのものは問題なかった。
しかし、アルテが国境からも離れようとしている現状、監視が不可能になる可能性がある。
だから交渉、駄目なら拘束するつもりで出てきたという事だろう。

「少し待ってもらえないだろうか?」
「お前は……あの時矢を回避し続けた男……」
「渡辺達也(わたなべたつや)という、以後お見知りおきを」
「ワタナベか、妙な名前だな」
「ああ、すまん。俺のファーストネームは達也だ、渡辺はファミリーネームのほう」
「逆? この辺りの出身じゃないのか?」
「まあな、それで一つ提案があるんだが聞いてもらえないだろうか?」
「提案?」
「何、難しい話しじゃない。
 アルテは町で買い物を済ませた後この村に戻す。
 だから、ここで待っているなり、一緒に付いてくるなりしてくれ。
 こちらもあまり時間がある訳じゃない、どちらにしろ町に早く行きたいんだ」
「それはそちらの都合だろう!」

食いついてきたようだな。
このエルフ、交渉慣れしているようには見えない。
アルテの言う事にはアルテ以外のエルフは皆100歳を越えているらしいが、思考が若い。
そう言う場に出た事がないと言う事だろうか?
どちらにせよ、それは付け込む隙があると言う事だ。

「だがまさか、姫殿下を傷つけるなんて事を君が出来るとも思えないが?」
「それはッ!」
「だいたい、脅せるような立場でもないだろう」
「何が……」
「アルテをこの村に逃がした時点で君は派閥を裏切っている。違うか?」
「……」
「俺としては一緒に付いてきてくれると助かるんだが、どうだろう?」
「くっ……時間をくれ。1刻ほどでいい……」
「分かった交渉成立という事で」
「……姫殿下がいなければ貴様の命は無かったぞ」
「それは怖いな、これから姫殿下から離れないようにしないと」
「ッ!!」

怒り心頭と言った感じの顔のまま、森の中を飛ぶように駆けて行った。
恐らく上司に休暇なり申請しにいったのだろう。
かなり無茶をする事になるだろうから下手をすると辞めさせられるんじゃないだろうか?
まあ、俺には関係無い事だが。

「流石たつにーさん、鬼なのです!」
「まあ、アルテの言葉で半分落ちてたからな。ひと押し入れただけだが」
「……それであのエルフの人、一体何者なの?」
「アルテの事を姫殿下とか勘違いして追いかけている幼女愛好家なのです」
「はっ、はぁ……」
「そっちの方がひでぇ!?」

アルテが妖精の国から来た事は大よそリディも知っていたので、知り合いだろうとは思ったようだ。
だが姫殿下なんて言われているのが気になったのだろう。
確かに彼女は姫様には違いないのだが、権威はなくとも王族だものな。

「まあ、彼女はアルテをあてがっておけば問題ないでしょう」
「たつにーさんひどいのです!? アルテを幼女愛好家の前に放置するのですか!?」
「愛に発展したら教えてくれ」
「ガーン!?」
「まあ多分、後ろをついて回るだけだと思うが」
「それはそれで精神的に来るものがあるのです」
「もう、達也さんもあまりアルテちゃんを苛めちゃだめよ?」
「あー、いや……」
「うるうる、たつにーさん……」
「分かった、分かった。出来るだけの事はするよ」
「それでこそたつにーさんなのです!」

いいように使われている気もしなくはないが……。
兎に角、其れから暫くしてエルフの美女リフティを加えた俺達は村を離れて行った。
まあ、幼女と小さい子だけだったのでこちらとしては歓迎なんだが、
やっぱり俺はかなり睨まれてる、うん、これは嫌われたな。
せいぜいあの体を目に焼き付けて今後のオカズにしようかと思っていたらアルテに怒られた。
因みにリフティは帽子で耳を隠しただけの変装だが、それで十分らしかった。

翌日、いつの間にか運転を変わっていたらしいリフティがアードックの町に着いた事を告げる。
アードックの町周辺まで来て思ったのは、城郭都市(じょうかくとし)を始めてみたというものだ。
城塞都市(じょうさいとし)とも言うがまあその辺はどっちでもいい。
土嚢を積んだり石壁を作ったりして町の周りを囲んでしまっているのが特徴だろう。

「門番がいるな、そう言えば通行手形とか必要あるのか?」

そう言う根本的な部分を忘れていた事に愕然とする。
だが、むしろ3人ともよく分からないと言った顔をする。
はて、この世界では通行に税をかけたりしないのだろうか?
為政者としては割と簡単に税を取れる訳だから、楽な手法なはずなんだが。

「通行に対する税金なのですか……」
「そんな事されたら町に来られなくなっちゃうよ」
「お前は馬鹿か?」

うん、ひどいねリフティさん。
まあ概念がなければそんなものかもしれないが。

「一つとして街道整備のための資金、一つとして街道の野盗やモンスターの排除。
 どちらも金がいる事だからね。取っている国もあるはずだよ」
「なるほど、そう言う考え方もありますね」
「それに、不審人物の出入りを制限すると言う意味もある。
 手形を発行する際身元の照会をするからね」
「確かに面白い制度なのです。考えてみればアルテもたつにーさんもリフティも不審人物なのです」
「まあそう言う事……」

そう言う概念がないというのは怖いな。
まあ、妖精の国とドランブルグ領以外ではどうか知らないが。
どちらにしろ防諜概念は薄いとみていいだろう。
積み荷や、武器の持ち込みをさせないためのチェックは受けるが、
それ以上の事はなく無事に町の中に入り込めた。
因みに、俺は槍、リフティは弓矢を門番に預けている。
町を出る時に返してくれるはずだ。
魔法の発動器がスルーされているのは問題という気もするが、こちらとしてはありがたい。
だが、管理する側にはなりたくないなこうもザルだと何が起こってもおかしくない。

問題はこの後どうするかだな、もちろん砂金とキャウルの乳を売るのは絶対だ。
しかし、その後、アルテとの約束を果たし旅に出るか、リフティに言った通り村に戻るか。
だが、今回の事で村もいくらか余裕が出来るはずだ。
リフティには嘘を言って申し訳ないが、元から嫌われているし問題ないか。
そんな感じで先ず、アードックの町の繁華街を散策する事にした。
50杯分のキャウルの乳は多少重いが台車を借りて押す方向で回る事にした。
しかし、流石にドランブルグ領北部の流通拠点だというだけありかなりの規模の店が軒を連ねている。
まあ、日本の町と比べると凝った店構えの所は少ないが、それなりに商人達が集まっているのは分かる。
ただ、思ったほどには人がいなかった。
もちろん村と比べれば雲泥の差だが、この町には何万人という人が住んでいるはずだ。
なのに、繁華街にはまばらな人通りしかなかった。

「……人が少ない?」
「たつにーさん、どうかしたのですか?」
「ああ、何だか町の規模の割に繁華街が賑わっていないと思ってな」
「ああ、それは当然なのですよ。何も税金が高いのはカトナの村だけではないと言う事なのです」
「なるほど……」

つまり商品にも税をかけていると言う事か。
農民からは作物をアレだけ取り上げていたんだ、商人からも遠慮はしないかもしれない。
しかし、そうなると買い取り料金を下方修正する必要があるかもしれないな。
ただでさえようやく余裕があるかどうかというレベルだ。
あまりに低い買い取り料金になるなら、売りに出す町を変更する必要があるかもしれない。
聞けば隣のルクセツァイス領は税が2割近く安いらしい。
ただ、距離的に遠い上に、流石に勝手に領土を出るのは重罪らしい。
まあ、現状の管理体制なら移り住むのは不可能じゃないと思うが、行き来するのは流石に不味いだろう。
となると、ここで満足のいく値をつけてもらうしかない。

「取りあえず、扱っていそうな店を片っ端から見て回ろう」
「れっつごーなのですよ!」
「私はどうすれば……」
「一緒にくればいいじゃない?」

そんな感じで両手に花というか3人も侍らせて歩いている(台車を押して)変な集団が出来ていた。
リフティ、リディ、アルテは3人ともそれぞれ特徴は違うが美人の範疇にはいるだろう。
リフティはもう見て直ぐに分かる、ぼっきゅぼんのグラビアアイドル風美人。
リディは小柄ながら元気がよく快活そうな美人というよりは可愛い感じだ。
アルテは将来が楽しみなような、一部の人には激ウケなくりくりっとした目の幼女。
それぞれ別の魅力を持っている。
まあ、夜のおかずなら断然リフティなんだが。
そんな事を考えていると、アルテに向こうずねをけり上げられる。
とっともあれ、目立つ事この上ないのは事実だった。

「結構いい値で売られてるね?」
「そうでもないのですよ」
「そうなのアルテちゃん?」
「はいなのです。値段が高いと言う事は税金が高いと言う事なのです。
 実質の利益がどのくらいなのかまだ読めないのですよ」
「そうなんだ……」

アルテとリディがそうして話しているのを聞きながら、俺はリフティを見る。
残念ながら焼き付けるためじゃない。
不安そうな表情をしていると感じたからだ。
理由の四分の一くらいは俺のせいでもあるしな。

「どうかしたのか?」
「何も……」

取りつく島も無いとはこの事だろう。
俺の方を向く事すらなく、淡々と答えた。
それだけ何か別の事に集中しているならいい、しかし、呆けていると言うのが近い気がした。

「キャッ!?」
「へっ、なかなかいい女じゃねえか?」
「俺はそっちの女がいいね、やっぱ巨乳じゃないとな」
「ちみっこいのも、いいもんだぜぇ?
 何にしろ、そこのショボイのよりは俺達のほうがいいだろぉ?
 お嬢ちゃんたちもよぉ?」
「放しなさいよ!!」
「何をするのです!?」

明らかにチンピラくさいのが3人、
人は沢山いるのでアイコンをいちいち確認しなかったのが裏目に出ていた。
3人共ステータスを見る限り武器といってもナイフくらいのものだが、問題は俺達の武器だ。
リディは最初から持っていない、アルテは今動きを封じられている。
リフティは何か持っているかもしれないが……魔法の発動器なのかどうか分からない。
それに、街中で攻撃魔法なんて使ったら捕まるのは俺達になる可能性が高い。
素手であいつらをなんとかしないといけない。
強者度はモヒカン4、スキンヘッド3、筋肉質5という程度、大きな差はないが……。
アルテとリディが人質に取られているようなものだ、上手く行くかどうか……。

「貴方がた如きチンピラで私達をどうにか出来るとでも?」
「姉ちゃんいい度胸だなぁ?」

リフティは強者度12だったな、こいつらなんかは敵じゃないのかもしれない。
しかし、下手に動いてナイフを出されても困る。
どうすべきか。
そんな事を考えているうちにも筋肉質がいかぶったのか、ナイフを取り出そうとしていた。
まずいな……。

「全く、最近の若者はなってないなー」
「ッ!?」

一言で言えばおっさん、少しだらしない格好と無精ひげが特徴のおっさんだ。
だが、だらしなくはだけているのは着流し、袴を穿かない和服のように見える。
浴衣等に代表されるそれは、しかし足元間で隠れる感じの服装だ。
だが、右側の肩を出し、もう片方も袖は通さず肩で引っかけるようにしている。
帯で止めてなければ中身が丸見えになってもおかしくない。
おっさんの中身なんぞ見たくもないが。
ただ、筋肉はしっかりついているようで、そして右腕ではアルテを人質にしていたモヒカンをつかんでいる。
その腕は妙に白く、ひじから上と下でまるで別人の手、いや白い部分は人のものに見えない。
そして掴まれたモヒカンはそのまま崩れ落ちた。

「ひょろいね、最近の子供は。しっかり肉を食べないと虚弱になるよ?」
「てっ、てめぇ一体何をした!?」
「何ってちょっと肩をつかんだだけだよ。この腕で、ね?」

そう言って今度は筋肉質の男の腕をつかむ。
既に筋肉質の男は警戒して離れようとしていたが、
おっさんは絶妙のタイミングと特殊な動きであっという間に間合いをつめた。
そして、その白い腕に触れた瞬間、筋肉質の男は崩れ落ちる。
一体何をしたんだと思い俺はおっさんのステータスを覘いた。

+++++
名前:ガーラリア・エストレン・モルンカイト
種族:人間
職業:???
強者度:22
生命力:??/??
精神力:??/??
筋力 :??
防御力:??
器用度:??
素早さ:??
魔力 :??
抵抗力:??
耐久性:??
<<術・技>>
????
????
<<装備>>
着流し:固さ2:防御力補正?:守備力?
????
<<物品>>
????
????
????
++++++

明らかに今までで会った中で最強じゃないか。
流石にこれだけ強者度に差があると何も分からないが……。
って、モルンカイトだと?
このトランブルク領の領主がモルンカイト侯爵だったはず。
なら彼はその縁者か……。
とか考えているうちに、スキンヘッドもおっさんの手によって倒れた。
あの右腕、明らかに魔法か何かの効果を持っていると言う事だろう。

「どうかしたかい少年?」

一瞬俺がステータスを覘いている事に気付かれたかと思ったが流石にそう言う事はないだろう。
魔法か何かというわけではないはずだから。
兎も角、俺は笑顔を取りつくろい話しかける。

「いえ、お助けいただきありがとうございます」
「いやいや、お礼なら美少女達とお茶で手を打とう♪」
「たつにーさん、このおっさんの目、なんか怖いのです」
「そんな事ないさ、おっさんは紳士だよー?」
「姫殿下に手をだすならば私が相手になるぞ!」
「おっさんはどっちかっていうと小さい子がいいのよねぇ?」
「ひっ、近づかないでください!?」

なんだろう、この緊張感のなさは。
兎に角、おっさんの視線はアルテとリディに固定されているっぽいな。
警戒はされていないようだし、この際少し情報を引き出すのもいいかもしれない……。





あとがき
変更したとき気づいていませんでしたorz
申し訳ない。



押していただけると嬉しいです♪

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