俺の名は天谷佳克(あまやよしかつ)、GXの世界へとやってきた転生者という奴だ。

とはいっても、殆ど着の身着のままというか、

デッキがタッグフォース等で最初に支給されるバニラの出来そこないレベルのデッキしかないという有様なので、

俺ツエーはできてないが。

それでも、どうにか試験を合格、お約束的な感じにレッド寮に入寮することが決まった。

因みに、まだ十代と直接話した事はない。

後、見た目も中肉中背とくに特徴もなく、髪型も特に逆立ったりしていない。

転生者的な特徴どころか、いつでも空気化OKな容姿でしかない。

レッド寮に入ったついでにちょっとイメチェンしてみるのもいいかもしれないな……。



「へぇ、ここがレッド寮……」



原作でもボロいボロいと言われていたが、やはり凄まじくボロい。

寮というだけあって、部屋数は一応2階建て両面部屋という事で20ほどある。

20×4人部屋ということで最大80人まで入れる計算かな?

大きさだけはかなりのものだ、もっとも5つ並んでいる部屋も窓の積み具合から狭さが窺われる。

きっちり部屋数を図った訳じゃないが、ただまあ、社長……よっぽど遊戯に負けたのが悔しかったと見える。

オシリスレッド、ラーイエロー、オベリスクブルー、それぞれ三幻神をモチーフにしている。

オシリスの天空竜は遊戯が使っていたカードだ。

ラーやオベリスクも最終的には遊戯のカードとなったが、ラーはマリクの、オベリスクは社長のイメージがやはり強い。

つまりは、社長の嫌がらせという事に……。


因みに、俺は一応勝ったが、無理に勝たなくても合格する事は可能であるらしい。

デスコアラのリバース効果すら知らなかった隼人が入学出来たのだ当然と言えば当然である。

しかし、俺は57番だった、これは筆記の出来具合からの順番らしいから、

その上で勝利してラーイエローになれなかったとすると、案外イエローは厳しいのかもしれない。


最も、後で聞いた噂だが、レアカードを持っているという事も審査の対象になったという事もありうるらしい。

つまり、俺のデッキをみてラーイエローには相応しくないと判断されたという事かも知れない。

まあ、それも仕方ない、俺自身このデッキで勝ち続けられると思っている訳じゃない。

いずれ、パックを買ってきちんとしたテーマを作らないとな。



「ともあれ、部屋に荷物を置いてこない事にはな……」



レッド寮に今回入寮したのは30人くらいらしい、レッドに入寮と知った時点で辞めた者もいると聞く。

受験生の数が130人前後だったことから、イエローに同数入ったとしても70人は落ちたか辞めたという事のようだ。

いや、女性は強制的にブルー女子寮入りするそうだから、何人か合格が出ている可能性もある。

ともあれ、2年生と3年生を含め100人ちょっとがレッド寮で生活してる事になる。

入学30人なのに2年3年の合計が最大50人なのは、途中で辞めたりイエロー入りする人が多いからだそうだ。

まあ、俺もイエロー入りは狙っているので人の事は言えないが。

俺の部屋と指定された場所、そこには当然残り3人がいる訳で……。



「俺は鳥縞ゲンっちゃー、よろしうな!」

「ヨシカツです。よろしく……」



髪の毛がズバッとなびくように逆立ち、前髪が鼻を通り越すまで伸びている男。

うん、サイボーグ002とか花形君とか八神庵とかまあ、後ろ二人は前髪だけだけどw

兎も角、早そうな男だ。



「亀村亀太郎だ……おらは……ベッドの下がいいべ……」

「どうぞ……俺、上の段でいいですから……」



のっそりと動いたのは、亀というより象とでもいったほうがいい大男。

北斗の拳の山のフドウとか近いかもしれない……。

表情は分かりにくいが、何というかレッドにいるのが不思議なほど威厳があるようにみえる。

俺は、彼に二段ベッドの下を譲り、上の段に荷物を下ろす。

と言っても、デッキと着替えくらいだが。

それ以外が持ち込めるほどこの部屋は広くない。



「裏飯墓男……よろしく……」

「ああ……よっ、よろしく……」



隣の二段ベッドの下側からのそりと首だけ出して挨拶してきたのは、

前髪で顔がほとんど隠れている幽鬼じみた白い肌の男。

雰囲気がドロドロしすぎていて俺は思わず首をすくめてしまった。


というか、何っ!?

こいつら俺なんかより数段濃い個性を持ってるんだけど……。

本当にモブなのかよ!?

いやまあ、モブは失礼かもしれないが……。

そういえば、遊戯王の世界観って割と変わった口調のキャラ多かった気がするけど。

こういうキャラはざらにいるということか。


歓迎会まで時間があまりないので、俺は挨拶もそこそこに急いで売店に向かう。

まず最初にデッキの強化をしておかないと、いつどこでやる事になるのか分からない。

俺達には携帯を兼ねた特殊な機械を渡されている、そこに毎月お金がDPとして支給される事になっている。

DPはこの島、デュエルアカデミア本島でしか使えない通貨で、基本的に売店や幾つかの店舗で使用できる。

オシリスレッドの寮生は毎月500DP、1パック150DPだから3パックで終わりだ。

とはいえ、公式(デュエルディスクを使っての)戦をして勝利すれば相手の強さに応じたDPがもらえる。

負けてもわずかながら貰う事が出来るらしい。

足りない分はデュエルで稼げということだろう。



「おばちゃん、ごめん今日売ってもらえる!?」

「ああいいけど……えらく騒がしいね……別に歓迎会の後でもいいんじゃないかい?

 もうあまり時間がないよ?」

「いや、俺は出来るだけ早く欲しいんだ、俺金無くてさ今まで満足のいくデッキ作れた事ないんだよ。

 それで、入学してDP支給されたから急いできたんだよ」

「うーん、じゃあちょっとだけだよ? 何がほしいんだい?」

「戦士系のパックを3つ出来るだけ新しいので、俺のDPじゃそれが限界かな」

「わかったよ、ほら、この中から選んでね」

「これと、これと、これ! 支払いはこれでいいんだよね?」

「ああ、ピピッと。

 そうだねぇ、これだけじゃまだ不安じゃないの?」

「まあ……それは仕方ないかな、徐々にやっていくよ」

「うーんそうだ!

 流石に店のカードはやれないけどね、このカードも持って行きなさいな。

 なんか、パック買った子が捨てて行ってね、かわいそうだから使っておやりよ」

「へぇ、このカードをですか?」

「ああ、なんか別々の子だけどね」



渡されたのは二枚のカード、マジックカードとトラップカードだ。

これは、組み合わせて使えばかなり面白い事が出来るだろう。

もっとも、引きがよくないと出来ないが。



「歓迎会で食いっぱぐれたら嫌だろ、急ぎなよ」

「はい、ありがとうございました!」



俺は走って戻りながらパックを開く、一つのパックに入っているカードは5枚。

合計15枚の購入ということになる。

ものすごく種類の多い戦士系のカード群の中からなのでいいものかどうかはまだ分からないが。

サポートカードも、下級モンスターも使い勝手のいいものが多い。

もっとも、パックは戦士系というだけでどの時期の物かはきっちりとは分からない。

ただ、パックの表紙にかかれているのは”カオスソルジャー -開闢の使者-”。

そういえば、まだ禁止になっていないんだっけな……。


前世の頃、俺が主軸としていたデッキは

ダークモンスター主体のスターダスト/バスターデッキや剣闘獣、ライトロード、真・六部衆デッキ等。

エクシーズデッキも一応作ったことがある、が、どっちかというとそういったデッキの補助だった。

正直今のカードとは性能が違いすぎる。

LP4000なんて1ターンキル出来ないほうが珍しいくらいの強力デッキばかりだ。

特に、スターライトドラゴン/バスターは出してしまえば墓地から除外するカードや

墓地のモンスター効果を無効にするカード以外にはほぼ無敵という強力カードだ。

更に1ターンに一度とはいえ、相手のマジック、トラップ、モンスター効果を無効にして破壊するおまけ付き。

普通に殴り倒されれば終わりだが、攻撃力も3000なので、そうそう戦闘破壊もできない。

よく、出てしまえば勝利は確定とまで言われる凄まじいカードだ。

その分召喚条件は厳しめだが、

ダークモンスターと絡めれば最初のターンが終わった相手ターンのドローフェイズで出す事も出来る。

罠カードで召喚するため、その辺は少し面倒ではあるが……。

そもそもシンクロがない以上、そんな便利なデッキ等夢のまた夢。

融合のサポートカードがようやく充実し始めてきた所だ、確か沼地の魔神王はもう出ているはず。

とはいえ、サイバーデッキやヒーローデッキ以外でそこまで融合を使うデッキはまだ出ていないだろうけど。



「お、なかなかいいカードがあるな」



15枚のうち、2枚が異次元の女戦士だった。

攻撃力は1500だがその効果は強力で、闘った相手を自分と一緒に除外する事が出来る。

このカードがあれば、強力なモンスターを排除する事も割合簡単にできる。

他にも、翻弄するエルフの剣士、ギルフォード・ザ・ライトニング、鉄の騎士 ギア・フリードが一枚づつ。

ランドスターの戦士、カルボナーラ戦士等のハズレもあったが、そこそこの収穫だ。

というか、カルボナーラ戦士って融合モンスターなんだけど、融合も融合素材もないって……一体どうしろと(汗

まあ、マグネッツ1号とマグネッツ2号なんか欲しくないけど……。

って、そういえばこの時期ってまだ突然変異は禁止カードじゃないんだっけ。

だとすると、コントロール奪取系と突然変異があればコンボも不可能じゃないか。


マジックも装備カードが2枚、連合軍も1枚あった、トラップカードはどう使えと?というのもあったが。

とりあえずはこれでデッキが強化できる。

今のデッキはバニラビートと言えば聞こえはいいが、別にバニラをサポートするカードがある訳でもない。

この際バニラじゃなくなっても何の問題もない。

というかバニラビートは正統なる血統にしろ、ジャスティブレイクにしろ、GXの終わりごろからだ。

伝説のレアカードとかで存在しているかもしれないが、売店では売ってないだろう。

せいぜい凡骨の意地くらいしかない現状で今から作る意味はない。



「まっ、こんな感じかな」



デッキを組みかえてどうにかちょっと戦士族デッキという感じのデッキになった。

ちょっとなのは、投入しているモンスターカード22枚のうち10枚しか戦士族がないからだ。

コンボはちょっと厳しいかもしれん。



「って、げ!? もう時間じゃ!?」



俺は、デッキを組んでいる間にもう歓迎会の時間になっているのに気付き、急いで寮に戻る事にした。

戻った俺が最初に目にしたのは歓迎会で出されたメザシがなぜか十代の口の中に放り込まれる所だった。



「あ、ヨシカツ君ようやくきたのかにゃ? もう食べ始めてるにゃ……にゃ!?」

「待ってくれ、俺の!!」

「ごくん、もう食っちまった」

「ガーン!?」



思わず口に出してしまうほどショックだった。

俺も、レッド寮の飯の貧素さは知っている、メザシだからなんて甘い事を言っていると食いっぱぐれる。

俺は思わず、十代の所からタクアンを強奪する。



「これで手をうっておいてやる!」

「って、俺のタクアン!?」

「俺のメザシを食うからだ!」

「オマエが歓迎会に間に合わないのが悪いんだろ!」

「やるか!?」

「いいぜ、やってやる!」



いつの間にか、俺は十代に喧嘩を売っていた。

もちろん、やるのはリアルファイトじゃない、デュエルだ。

今のデッキでどこまでやれるかは分からないが、それでも闘ってみたいと言う思いも元からあった。

十代は夜になれば万丈目と戦うだろう、その前にやると言うのも悪くない。



「っと、その前に」

「ああ!」



俺達は残っていたご飯を掻き込む。

食べ物の恨みはらさで置くべきか!

といいつつ、俺と十代はごはんをお変わり3杯して腹いっぱいになるまで食べた。

いや、飯くらいきちんと食っとかないとな。



「じゃあやるか!」

「ああ!」

「ちょっと待つにゃ、するのはいいけどせめて寮の外でやるにゃ」

「分かった、ついてこい!」

「おお!」



レッド寮の担当大徳寺先生が俺達を追い出す。

まあ、分からなくもないけどな、とはいえ、娯楽の少ないレッド寮だ、皆表まで付いてきた。

そして、デュエルフィールドを囲んで見守っている。



「アニキー頑張って!」

「ああ! やってやるぜ!」

「頑張るっちゃー、ヨシカツ!」

「おお! 応援してくれるのかゲン!」

「当たり前ちゃー! 同室の好って奴っちゃよ!」



早速、同室の仲間が応援してくれると言うのはうれしい話だ。

まあ、向こうのほうは弟分の翔が応援しているみたいだからさほど変わらないが。



「さて、準備はいいか?」

「ああ、楽しいデュエルにしようぜ!」

「そうだな!」



デュエルを始める頃には喧嘩というのを半ば忘れている十代に俺も楽しげに返す。

いや、十代デュエルするのが本当に楽しそうだから、俺も楽しくなってくる。



「じゃあ、行くぜ! 俺のターン!」



十代がカードを引く、じゃんけんとかなしでいきなり先攻後攻が決まるのがちょっと変わってるなーと思うが、

まあ、それもデュエルディスクが判断しているらしいからな。



「俺は、エレメンタルヒーロー・フェザーマンを守備表示で召喚!」

『カァッ!』

E・HEROフェザーマン:通常モンスター/星3/風属性/戦士族/攻1000/守1000

「カードを一枚伏せてターンエンド」




十代のデッキはアニメで散々見たからよく知っている。

おそらく伏せカードはヒーロー・シグナルかヒーローバリア、変わった所で攻撃の無力化というところだろう。

十代は基本的にモンスター破壊型のトラップは張らない。



「俺のターンドロー!」



手札を見る、モンスターの数は2枚、しかし、割といいカードがそろっている。

ギルフォード・ザ・ライトニング:効果モンスター/星8/光属性/戦士族/攻2800/守1400

荒野の女戦士:効果モンスター/星4/地属性/戦士族/攻1100/守1200

荒野の女戦士は攻撃力が少し危なっかしいが、効果が強いからいいな。

装備魔法も引いたが、とりあえずは様子見だな、このままいっちょやってみるか。



「俺は手札から荒野の女戦士を召喚!」

荒野の女戦士:効果モンスター/星4/地属性/戦士族/攻1100/守1200


「バトル! 荒野の女戦士でフェザーマンに攻撃! ウィルダネススラッシュ!」



フェザーマンが濃い悲鳴を上げながら消えて行く。

攻撃力1000にしては濃いキャラだよな……。



「トラップカード発動! ヒーローシグナル!

 自分フィールド上のモンスターが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時に発動、

 自分の手札またはデッキから「E・HERO」という名のついたレベル4以下のモンスター1体を特殊召喚する。

 俺はデッキからエレメンタルヒーロー・バーストレディを守備表示で特殊召喚するぜ!」

E・HEROバーストレディ:通常モンスター/星3/炎属性/戦士族/攻1200/守 800

『ハァ!』



予想通りか、だとしても俺の手札にはトラップマジックを破壊できるカードはなかったから仕方ないよな。

だが、次のターンで仕掛けられるとまずい、仕込みはしておかないとな。



「俺はカードを二枚伏せてターンエンド」

「俺のターンドロー! へへっ、楽しいなヨシカツ、お前今の伏せカード読んでただろ?

 その上で乗っかってきたってことは、俺が出す次の手も読んでるってことだよな?」

「さあな」



確かにある意味では読んでいる、この状況で十代がアレを呼ばない訳が無い。

お互いに口元が緩む中、十代が次の状況に移った。



「俺は手札から死者蘇生を発動! 墓地のフェザーマンを特殊召喚!

 これで、フィールドにフェザーマンとバーストレディが揃った!

 そして、マジックカード融合を発動!」



やはりそう来たか、フレイムウイングマンは序盤の十代にとってはフェイバリットカードといっていい。

通常モンスターを打倒しつつ効果ダメージも与えるから決着スピードが速いのだ。

気持ちはわからなくもないな。



「フェザーマンとバーストレディを墓地に送り、

 行くぜ! マイフェイバリットカード! エレメンタルヒーロー・フレイム・ウィングマンを融合召喚だ!」

E・HEROフレイム・ウィングマン:効果モンスター/星6/風属性/戦士族/攻2100/守1200



おお、間近で見るとフレイムウイングマン迫力あるなー。

緑と赤のストライプはちょっと派手すぎな気がしなくもないけど、まあ、後のヒーローはみんなそんな感じだしな。

っと、そんな事考えてる場合じゃないか。



「フレイムウイングマンで荒野の女戦士に攻撃! フレイム・シュート!」



フレイムウイングマンは空中に飛び上がり、荒野の女戦士に向けて竜の頭みたいな右腕を叩きつけようと迫ってくる。

竜の口には炎の弾丸が溜めこまれている、発射されれば荒野の女戦士はひとたまりもないだろう。

俺のデッキに破壊系のカードが多ければ破壊して逆転と行く所だが、今はそこまでは難しい。

だが、攻撃を防ぐ手段はある。



「トラップカード発動! 和睦の使者!

 このカードを発動したターン、相手モンスターから受ける全ての戦闘ダメージは0になる。

 そしてこのターン自分のモンスターは戦闘では破壊されない!」

「へへっ、そうこなくちゃ! そう簡単に決着がついちゃ面白くないよな!

 さっきのは融合召喚だから、まだ通常召喚が残っている、俺はクレイマンを守備表示で召喚!」

E・HEROクレイマン:通常モンスター/星4/地属性/戦士族/攻 800/守2000


「そして永続魔法悪夢の蜃気楼を発動! 更にカードを1枚伏せてターンエンド!」




うわっ、出やがった。

2枚消費で4枚カードをドロー出来る恐怖のドローソース。

まあ、融合デッキはカード消費が激しいからな、現にもう十代の手札はゼロだ。



「俺のターンドロー!」



俺が引いたカードは、モンスターカード、翻弄するエルフの剣士。

攻撃力は低めだが、こいつもまたなかなか使える効果を持っている。



「スタンバイフェイズ、悪夢の蜃気楼の効果発動!

 このカードは相手のスタンバイフェイズに、自分の手札が4枚になるようにカードをドローする。

 そして、自分のスタンバイフェイズ時に、

 その効果でドローした枚数分だけカードを手札からランダムに捨てるって事になってるんだが……。

 チェーンして即効魔法発動! 非常食!

 このカード以外の自分フィールド上に存在する魔法・罠カードを任意の枚数墓地へ送って発動!

 墓地へ送ったカード1枚につき、1000ライフポイント回復する。

 俺は悪夢の蜃気楼を墓地に送り、1000ライフポイント回復!」

十代LP4000→LP5000


「これで、悪夢の蜃気楼のデメリット効果は発動しない!」

「流石っすアニキ! こんなコンボがあったなんて!」



ドローソース云々よりも、悪夢の蜃気楼と非常食が同時に手札に来てる確率の低さのほうが気になるが、

まあ十代の事だし気にしたら負けだろうな……。

ともあれ、悪夢の蜃気楼が禁止カードになっていない以上やはり禁止リストは、2004年9月のものだろう。

まあ今の所、俺は禁止制限に引っ掛かる様なカードを持っていないから関係ないが。



「俺は翻弄するエルフの剣士を召喚!」

翻弄するエルフの剣士:効果モンスター/星4/地属性/戦士族/攻1400/守1200


「そして、装備魔法カード稲妻の剣を装備! 攻撃力が800ポイントアップ!」

翻弄するエルフの剣士 攻1400→攻2200


「いくぞ! 翻弄するエルフの剣士でフレイムウイングマンを攻撃!『精・剣・斬!』」
 
『ほうあ!』

エルフの剣士 攻2200→フレイムウイングマン 攻2100


「くっ。フレイムウイングマンが……」

十代LP5000→4900


「効果は強力だけど、攻撃力はそれほどでもないからな」

「へっ、言ってくれるぜ」

「クレイマンは防御力2000……とても無理だな、荒野の女戦士を守備表示に変更。

 カードを一枚伏せてターンエンド」



手札は後2枚、ギルフォード・ザ・ライトニングとマジックカードが1枚、ギルフォードを出すには最低2体、出来れば3体の生贄が欲しい。

出してしまえば、十代の融合モンスターでもそうそう攻撃力では遅れはとらないだろう。

それに、効果のこともあるから多少強いモンスターがいても関係ない。

あくまで3体の生贄が用意できればだが。

そして、もう一枚はマジックカードだ、速効魔法ではないので伏せる意味はない。

というわけで、不安ではあるが今回は伏せカードを追加しなかった。

フィールドは、攻撃力2200のエルフの剣士、守備力1200の荒野の女剣士、装備魔法が一つ伏せカードが一つという所。

さて、十代はどう出るのか?



「俺のターンドロー!

 これで5枚っとへぇ、これだけあれば何でもできそうだな。いくぜヨシカツ!」

「来い!」

「俺はマジックカード融合回収を発動!

 自分の墓地に存在する「融合」魔法カード1枚と、融合に使用した融合素材モンスター1体を手札に加える。

 俺は融合とフェザーマンを手札に戻す。

 そして、そのまま融合を発動! 手札のスパークマンとフィールドのクレイマンを墓地に送り、

 現れろ! エレメンタルヒーロー・サンダー・ジャイアント!」

E・HEROサンダー・ジャイアント:効果モンスター/星6/光属性/戦士族/攻2400/守1500


「サンダージャイアントの効果発動!

 手札を1枚捨て、表側表示で存在する元々の攻撃力がこのカードの攻撃力よりも低いモンスターを1体破壊する!

 翻弄するエルフの剣士は1900以上の攻撃力を持つモンスターには戦闘破壊されないんだっけ?

 厄介なカードは先に排除させてもらうぜ!

 俺は手札からエレメンタルヒーロー・ネクロダークマンを捨て翻弄するエルフの剣士を破壊する!

 行け! ベイパースパーク!」

『ゴォォォン!!』

『グワァー!?』



へぇ、サンダージャイアントの効果はOCGのものなのか、いやそうとも言い切れないか……。

確か、最初はコストなしだったけど、アニメ後半ではコスト有りになってたからな、多分整合性かなにかもあるだろうし。

どっちにしろそうなるってことか。

しかし……、今捨てたカードは……となると十代の次の手は当然……。



「俺は墓地のネクロダークマンの効果を発動! 

 レベル5以上の「E・HERO」と名のついたモンスター1体を生贄なしで特殊召喚する!

 現れろ! エレメンタルヒーロー・エッジマン!」

E・HEROエッジマン:効果モンスター/星7/地属性/戦士族/攻2600/守1800



特殊召喚って、やっぱりその辺はアニメ効果かい!

おいおいおいおい、大盤振る舞いだな……、万丈目や明日香相手にもこんなに派手に出していなかったろうに。

もう3体目の上級ヒーローじゃないか。

対する俺の場はもうギア・フリードのみ。

このままじゃ、何も出来ないまま終わるかもしれん。



「バトル! エッジマンで荒野の女戦士に攻撃! パワー・エッジ・アタック!」

『ヘェァ!』

「ぐッ!」


エッジマンのモンスター効果は守備表示のモンスターの防御力より攻撃力が上回っていればその差だけダメージを与える。

普通は守備表示のモンスターを倒してもダメージにはならないんだが、強力なモンスターには時折ついてるんだよな。

エッジマンの攻撃力は2600、荒野の女戦士の守備力は1200、つまり1400のダメージ……。

佳克LP4000→LP2600



「だが、荒野の女戦士が墓地に送られた事により、効果発動!

 攻撃力1500以下の戦士族・地属性モンスターをデッキから攻撃表示で特殊召喚する!

 俺はエルフの剣士を特殊召喚!」

エルフの剣士:通常モンスター/星4/地属性/戦士族/攻1400/守1200


「ならサンダージャイアントでエルフの剣士に攻撃! ボルティック・サンダー!」

「クッ!?」

佳克LP2600→LP1600



畜生、リクルーターでもしのぎきれないかよ!

ってまあ、荒野の女戦士が3詰みならまた少し違うんだろうが……。



「へへっ、伏せカードで何かしてくると思ったが、違ったのか?」

「ああ、まだお楽しみって奴さ」

「へへっ、そうこなくちゃな! 俺はフェザーマンを守備表示で召喚!」

E・HEROフェザーマン:通常モンスター/星3/風属性/戦士族/攻1000/守1000


「カードを一枚伏せてターンエンド!」



全く……ひでぇ引きだ……。

俺が与えたダメージは100なのにもう三分の一くらいしかライフが残ってない。

だが、このまま終わるのは割に合わない。

それに、十代と同レベルのカイザーやエドだってプロにいるんだ。

デッキが並だからって何もできずに終わるなんて出来るはずが無い。

それにあの突進、死なないくらいなら発動せず置いておけばいいのに、何か予感でもあったのかね?

こっちとしてはありがたいがね……。



「俺のターンドロー! 来た来た来た! 行くぜ十代!」

「来い! ヨシカツ!」

「俺は手札から、マジックカード魂の解放を発動する!

 両方の墓地から合計五枚までカードを選んで除外する事が出来る!

 俺は、俺の墓地から荒野の女戦士、翻弄するエルフの剣士、エルフの剣士、

 十代の墓地からネクロダークマン、バーストレディの計5枚を除外!」

「くっ、融合素材モンスターを回収させない気か!」

「それもあるがな!」



おばちゃんからもらったマジックカード確かに使わせてもらった。

そして、トラップカードのほうも、当然使わせてもらう。

互いにニヤリと言う感じの笑いを浮かべる。

楽しい、流石十代だ、そして俺もかなり面白いコンボを成功させている。

この状況ならまだ逆転が可能だろう。

なにせ、おばちゃんにもらったもう一枚のカードがまだ仕掛けてあるのだから。



「トラップカード発動!

 異次元からの帰還! ライフを半分払い発動、除外されている自分のモンスターを可能な限り特殊召喚する!」

荒野の女戦士:効果モンスター/星4/地属性/戦士族/攻1100/守1200

翻弄するエルフの剣士:星4:効果モンスター/地属性/戦士族/攻1400/守1200

エルフの剣士:通常モンスター/星4/地属性/戦士族/攻1400/守1200



佳克LP1600→LP800



こちらはもしかしたらおばちゃんが気を利かせてくれたのかもしれないと思う。

除外を使うデッキなら絶対入れておきたいカードだからだ。

まあ、確かにライフ半分はかなり不利になってからでないと怖くて使えないけどな。

でも、使えなくてもレア度という意味でも十分意味のあるカードだから捨てるバカがいるとは思えない。

まあ、そんな事はともかく。



「すげぇな、でもまだ終わりじゃないだろ? これで終わりだったら俺には勝てないぜ」

「ああ、エルフの剣士、翻弄するエルフの剣士、荒野の女戦士の3体を生贄に」

「3体!? そんなに生贄を必要とするカードといえば……」

「いでよ! ギルフォード・ザ・ライトニング!!」

ギルフォード・ザ・ライトニング:効果モンスター/星8/光属性/戦士族/攻2800/守1400


「3体の生贄を使って召喚された時、ギルフォード・ザ・ライトニングの効果が発動する!

 相手フィールド上に存在するモンスターを全て破壊する!!

 全てを焼き払え! ライトニング・サンダー!!」



ギルフォード・ザ・ライトニング召喚と同時に周囲に強力な稲光が発生し相手フィールドを薙ぎ払う。

サンダージャイアントとエッジマン、フェザーマンは破壊され消えて行く。

後気になるのは……伏せカードのみ。

気後れしても始まらない、次の十代のターンが来れば恐らくもう勝てないだろう。



「さて、行くぜ!

 俺はギルフォード・ザ・ライトニングでダイレクトアタック!」

「アニキ危なーい!!?」


ギルフォード・ザ・ライトニングが、雷を纏った剣を構え十代へと向かっていく。

だが、十代はまだ表情を崩していない。

そして、十代に雷の剣が振り下ろされる直前、十代の手のひらが翻る。



「悪いな! そう言う訳にはいかない、トラップカード発動!! 和睦の使者!」

「チェーン発動! 王宮のお触れ! フィールド上にあるこのカード以外のトラップカードの効果を無効化する!」

「なっ!?」

「行けー! ライトニング・クラッシュ・ソード!」

「くぉぉぉ!?」

十代LP4900→2100


流石の十代も驚いているようだ、俺としても一度でも決める事が出来たのはうれしい。

俺でも通用するっていう事だからな。

とはいえ、もう手札がない、伏せカードもない、場にはギルフォード・ザ・ライトニングだけ。

モブデュエリスト相手ならともかく、十代相手じゃ……。



「ターンエンド!」

「俺のターン! いや、本当に熱いデュエルだったぜ、こんなに全力を出せたのは初めてだぜ!

 いくぜ、ドロー!」



フィールドはガラ空き、手札ももうない。

そして、相手フィールドには上級モンスターとくれば、十代の引きそうなカードには心当たりがある。

恐らくは……。



「俺が引いたカードはエレメンタルヒーロー・バブルマン!

 バブルマンは手札が1枚だけの時、特殊召喚する事が出来る!」

E・HEROバブルマン:効果モンスター/星4/水属性/戦士族/攻 800/守1200


「そして、召喚、特殊召喚、反転召喚に成功した時、自分フィールドに他のカードが無い時、

 カードを2枚ドローする!」



やはり始まったか、バブルマンコンボ。

十代の鬼引きは、ここが一番怖いんだよな……。

ああ、脳内で十代の勝利BGMが流れ始めたぜ……。



「俺は手札からマジックカード戦士の生還を発動! 墓地のエッジマンを手札に戻す!

 そして、更にマジックカード発動! バブルシャッフル!

 自分フィールドのバブルマンと、相手フィールドのモンスター一体を守備表示にする!

 俺が選ぶのはギルフォード・ザ・ライトニング!」

「くっ……」



守備表示にされたフィルフォード・ザ・ライトニングは座り込む。

これで1400の守備力しかないモンスターにすぎなくなった。



「バブルシャッフルの効果はまだ続くぜ!

 守備表示になったバブルマンを生贄にエレメンタルヒーローを特殊召喚できる!

 俺が特殊召喚するのはエレメンタルヒーロー・エッジマン!」

E・HEROエッジマン:効果モンスター/星7/地属性/戦士族/攻2600/守1800


『ホウァ!』

「エッジマンでフィルフォード・ザ・ライトニングに攻撃! パワー・エッジ・アタック!」 



守備表示のギルフォード・ザ・ライトニングにエッジマンが攻撃をしかける。

攻撃力2600のエッジマンにとって、守備力1400しかないギルフォードは紙のようなものだった。

破壊されて消えるギルフォード、しかしエッジマンの突進はそれだけで終わらない。



「そして、エッジマンの効果!

 守備表示モンスターの守備力を攻撃力が越えていれば、その差の分だけダメージを与える!」

「うわーッ!!?」

佳克LP800→LP0



まいった、この世界に来てから俺も少しばかり引きがよくなっているとはいっても、

やはり十代の鬼引きと比べれば全然大したことが無い。

しかし、それでも少しはダメージが与えられることが分かった、これはこの先のはげみになるな。



「ガッチャ! 楽しいデュエルだったぜ!」



そしてこの笑顔である。

これはもう、笑うしかないな。



「俺も楽しかったよ、またやろうな」

「ああ、いつだって相手してやるぜ! だけど、そのデッキまだまだ改良の余地があるんじゃないか?」

「まあな、戦士族にしようと思ってたけど金が……」

「なんだ、それならヒーローに入れられなかった戦士族が何枚かあるから、使ってくれていいぜ!」

「いいのか?」

「ああ、俺はヒーローデッキ一本で行くって決めてるからな!」



全く、勝てる気がしない。

せめて完全なデッキを組めるようになるまでは再戦はお預けかな……。

周りから集まってくる、レッド寮のみんなにもみくちゃにされながら、そう思った。



しかし、それはそれとして今回のデュエル、オシリスレッドでは大好評だったらしい。

何せ、あれだけ派手なデュエルはあまり見ないだろうから当然だろう。

上級モンスターを何度も召喚した十代、俺は俺でそれを破壊しまくった。

ダメージ差は大きいので実力の差は雲泥かもしれないが、それでも派手でテクニックが見受けられるものだった。

おかげで、俺はその後色々とカンパをもらい。

なんとか、戦士族デッキと呼べるようなものを組むことが出来た。

良かったと言うべきかなんというか……。









あとがき。

無駄にキャラを作って使わない典型なんですがw

妙に濃いモブを作ってみたんですよねw

先になったらほとんど出てこないんですがwww



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