あれから一週間ほどたち、明日がとうとうノース校との親善デュエルとなっていた。
十代はそのためのデッキ構築に余念がない、というか、俺も翔もそれに付き合わされる事が多い。
20戦ほどデュエルして、勝利の回数は一回のみ。
その一回にしたところで、十代がデッキにあえてヒーローを入れていない時、他のモンスターの性能評価をしている時だ。
調整デュエルでもまともに勝てないとは……泣けてくる。
デッキ調整がほぼ終わった頃、俺はまたぶらりと島を歩いてみようと動き出していた。
何せこの島、いろいろ変わったものがある、娯楽が少ないという点もあるので、丁度いい暇つぶしになりそうだ。
TVゲーム等でもあればいいのだが、レッド寮は3人部屋だったり4人部屋だったりで、持ち込み制限が厳しい。
手荷物以上の物は持ち込めないのだ、PSPやDSに相当するゲームはこの世界にもあるようなのだが、
部屋が狭く、物音が隣に響きやすいので、ボタン連打しただけでわかってしまう。
隠して持ち込むというのはほとんど不可能なようだ。
「げっ、こっちは女子寮か……」
学校の裏にある運動施設の外側は回り込んで女子寮のほうに出てしまうようだ。
こっちにはあまり近づきたくない、女子が嫌いな訳ではないが、団体の女子は怖い。
過去色々言われた事があるだけに女性が集まっている場所には近づきたくない。
この中では、キモイとかは言われないと思うが……(単に単語として浸透していないだけ)。
いわゆる二枚目、この世界においてはカイザーやダークネスことジョイン吹雪、後はエドやヨハンなら別だろうが……。
十代のように前向きさが受けるそこそこの顔の男でも、明日香には気に入られても取り巻きには嫌われてるしな。
しかし、俺は振り向こうとした時、視界に映った光景に一瞬目を奪われた。
何の事はないデュエル、対戦しているのは神楽坂と……赤毛の女。
神楽坂はカイザーのものマネをしているようだ、サイバードラゴンなんてよくあったな。
まあ、サイバ流のほうで配布しているらしいので、道場の門を叩けば手に入るのかもしれないが。
流石にサイバーエンドは入手できなかったのだろうかツインドラゴンをだしている。
丁度決着がついた所だ、神楽坂のライフはゼロ、まあそれは珍しい事じゃない。
しかし、相手のライフなんだあれ? 8000って……基本値の倍じゃないか!
赤毛の女はふっと笑うと倒れた神楽坂を放置して帰って行った。
「おい! 神楽坂! どうしたんだ!?」
「まさか……カイザーでも敵わないとは……」
「いや、お前の場合カイザーやるのは無理だろうカード的に」
「……それはそうなんだが」
「しかし、サイバードラゴンなんていつの間に」
「道場で一級になればくれるぞ?」
「へぇ……それは凄いな」
道場で一級というのがどの程度かは分からないが、柔道とかと同じなら上に段持ちもいるんだろう。
というより道場って何を教えてるんだ?
ただまあ、サイバードラゴンは魅力的だな、パワーはあるし、召喚条件が甘いし、融合素材としても一級品だ。
俺も時間があったらやってみるかなサイバ流。
「しかし、相手ライフが8000って……凄い事になってたな」
「俺だけじゃないさ、2年の綾小路先輩や、大山、それに中等部の頃に万丈目とその取り巻き達もやられている。
凄いライフ差でな。全くなんなんだあのデッキは……」
「へぇ、それは……」
神楽坂がどんなデッキなのか判別できなかったという事は、
特殊タイプかもしくは特徴をころころ変えるフィフティフィフティのようなデッキか。
ただ間違いないのは回復を使う事だろう。
となると一番に思い浮かぶのは三沢のデッキだったりw
だがまあ、ピケルやクランを使うタイプには見えなかった。
見た目の印象ではあるが、彼女は可愛いのが好きなタイプではないように思える。
だいたい、そんな人が狩りとやらをするとも思えないしな。
ともあれ、原作にないキャラだけに全く把握できない。
「触らぬ神に祟りなしだな」
ということで、大きく迂回して寮に帰った。
寮の部屋でイリーニャの手紙に対して返事を書く、地方大会で準優勝したらしい。
実はどれくらいすごいのかよくわからないが取りあえずおめでとうというような書き出しで返事を書いた。
ただ、イリーニャの参加した地方大会は特に年齢制限のあるものではなかったらしいので、かなり凄いのかもしれない。
パックをいくつか買ったのでまた入れ替え作業に入る、もうカードだけなら200枚くらい手に入れた。
ダブりも多いがw
最近装備魔法カードがよく当たるようになった、その中でもひときわ目を引くのは神剣フェニックスブレード。
攻撃力300アップというのは今一の増幅力だが、もう一つの効果が強い。
この際だからと稲妻の剣と入れ替える事にした。
後、不意打ち又差も入手、強力なのだが地属性のシナジーがないため、手札に来にくそうだ。
だが、使い勝手の良さは一級品なので、異次元の女戦士を一体デッキから外して入れ替えた。
「ふう、今日はこの辺にしておくか……」
この世界に来てから俺はデッキ構築は欠かしたことがない。
なにせ、この世界のデュエル脳っぷりは半端じゃないからいざという時カードを持っていないと危険だ。
例えば、銃を持っている敵に対してもカードで対抗した社長のような例もある(極端すぎるが)。
そうでなくても闇の住人や精霊、ヤクザものでもデュエルをすることでリアルファイトを避けられるんだから重要だ。
今のデッキでプロになるのは難しいだろうが、それでも出来るだけ強いデッキにしたいとは思っている。
そうそう、妹が手紙をくれるようになった、おそらくイリーニャに影響されたんだろう。
妹は小学校を卒業してすぐアカデミアに行くとか言っている。
それでも3年目だが、どうにもなつかれすぎてるな……理由がさっぱりなのが不気味だ。
とはいえ、好かれているのは純粋にうれしいのだが。
ともあれ翌日、十代とサンダーとなった万条目の対決の日。
俺は部屋の仲間である、裏飯と女性の神秘(胸)について語り合っていて親善デュエルまであまり時間がないことに気づく。
裏飯は今日は参加しないつもりらしいが、俺は十代の友人のつもりなので急いで向かわねばと走っていた。
その時……何度か会っていたが言葉を交わしたこともなかった相手。
燃えるような赤毛をポニーテールにした2年主席が俺の前に立ちふさがった。
俺は、急いで回避を試み、迂回するが、そちらには見たことのない女性が立っている。
しかも団体様だ……こいつは……。
「つれないな、天谷佳克(あまやよしかつ)」
「ッ!!」
おいおい、今や誰もまともに呼ばなくなった俺のフルネームを呼ぶとは。
姫神穂村だったか、俺のことを知って呼び止めたってことか。
しかも俺の苦手な女子の団体さんできてくれるとはな……。
「姫神先輩でしたね、何か御用ですか?
俺は友人の親善デュエルを見に行かないと行けないんで忙しいんですが」
「へぇ、それは残念だね。見に行くのは無理そう」
「どういう意味ですか?」
「決まってるでしょう? アタシの獲物になったから」
「獲物?」
「知ってる?
アカデミアに入れる女子の数は男子の三分の一から四分の一。
理由は女子のほうがデュエルの実力が低いからだそうね」
「へぇ、でもそれは単にデュエルを志す者が少ないというだけのことでは?」
最初はこいつ単に因縁を吹っかけてきただけかと思ったが、何かそれなりの理由があるようだ。
まあ、胸は大きいんだ、話は聞いてやろう。
えっ、関係ないって?
「違うわ、初代キングが男だったから、女性デュエリストと聞いて君は誰か思い浮かぶ?」
「そうだな、孔雀舞(くじゃくまい)あたりが有名じゃないか?」
というか、彼女以外はアニメでも出番が多かったのはアメリカの眼鏡っ子くらいだ。
そういえば、中華な女デュエリストと戦っていた気もするな。
うろ覚えだが。
「そうだね、でも彼女ですら実際のところ公式大会で3位以内にも入賞していない。何がいいたいかわかる?」
「実績か……」
「そのとおり、女性のデュエリストなんて大会に花を添えるのが精々、そういう認識が今の常識なのよ。
それを覆すには、実績がいる。それも誰も達成できないような、ね?」
「なるほど、それで……今までも」
「分かればいい、つまり、君には盛大に負けてもらう。一年では2番目に強いと噂の天谷佳克君」
「嫌だって言っても通してくれそうにないですね……」
どっちかといえば、2番は三沢だろうな、通常戦績では俺のほうが負け越してるし。
公式では一度破ってるから俺のほうが順位が高いように思われることもあるが。
ピケクラデッキを組んでからは強いというか、粘り強い(汗)
「彼女らには壁役以外頼んでいないわ、どうする?」
「分かりました、受けましょう」
「そうこなくちゃね」
「「デュエル!」」
佳克:LP4000 穂村:LP4000
「アタシのターン、ドロー!」
どうやら今回はディスクの判定に従ったらしい。
とはいえ、俺は相手のデッキがまったく読めない事が困っている。
モンスターを召喚すればある程度の方向性は見える。
どう出る?
「アタシは、ビックバンガールを守備表示で召喚!」
ビッグバンガール:効果モンスター/星4/炎属性/炎族/攻1300/守1500
ビックバンガールだと!?
なるほどキュアバーンか、ライフ差が大きくなるはずだ。
だが、キーカードであるビックバンガールを守れなければ成立しないデッキでもある。
付け込む隙があるとすればそこか。
「さらにカードを3枚伏せてターンエンド!」
おそらくあの3枚はビックバンガールを守るカードと回復カードだろう。
かなり頑強に守ってきたな……。
だが、それだけ、あのデッキはロック型ということだ。
俺は、トラップやマジックを破壊するカードは少ない。
しかし、ビックバンガールなら破壊する方法もなくはない。
「俺のターンドロー!」
俺の手札にはモンスターが3枚。
切り込み隊長:効果モンスター/星3/地属性/戦士族/攻1200/守 400
ならず者傭兵部隊:効果モンスター/星4/地属性/戦士族/攻1000/守1000
鉄の騎士ギア・フリード:効果モンスター/星4/地属性/戦士族/攻1800/守1600
そして、早速、神剣−フェニックスブレードが来てくれた。
しかし、今回はロックバーンになりそうなので、どれくらい役に立ってくれるかは疑問ではある。
残る2枚は増援とゴブリンのやりくり上手。
悪くはない手札だ。
「俺は切り込み隊長を召喚!」
切り込み隊長:効果モンスター/星3/地属性/戦士族/攻1200/守 400
「切り込み隊長の効果発動!
このカードが召喚に成功した時、レベル4以下のモンスターを特殊召喚できる。
俺が特殊召喚するのは、ならず者傭兵部隊!」
ならず者傭兵部隊:効果モンスター/星4/地属性/戦士族/攻1000/守1000
「なっ!?」
「ならず者傭兵部隊の効果発動! 自らを生贄にモンスター一体を破壊する! 死山血河!」
「速攻魔法発動! 我が身を盾に!
ライフを1500払い発動! モンスターを破壊する効果を無効にし、そのカードを破壊する!」
穂村:LP4000→LP2500
「いきなりそんなカードで守るか!?」
「ふふっ、ビックバンガールには変えられないからね」
確かに、キュアバーンならそういう使い方もありか。
1500くらいすぐに回復できそうだな。
しかし、そうなってくると破壊が難しい。
拘束解除でも手札に来ればどうにかなるんだが……。
仕方ないな。
「神剣フェニックスブレードを切り込み隊長に装備! 攻撃力が300アップ」
切り込み隊長:攻撃1200→攻撃1500
「カードを1枚伏せてターンエンド」
次のターンのドローにかけるしかないな。
ビックバンガールの破壊が今は最優先となる。
そうでなければ、俺も神楽坂のように……。
「これの怖さは知っているようだね、だけどきっちり食らってもらうわ!
エンドフェイズにチェーンして永続トラップ神の恵みを発動!」
「やはりか!」
永続効果なら毎ターン回復できる、そして、バーン効果も……。
ピケクラデッキとこのあたりよく似ているがこちらのほうがいろいろな意味で安定する。
やはり、先ほど破壊できなかったのが悔やまれる。
「アタシのターンドロー!
神の恵みの効果発動! ドローする度に500ポイントライフを回復する!」
穂村:LP2500→LP3000
「そして、ライフが回復したことにより、ビックバンガールの効果発動!
自分のライフが回復する度に500ポイントのダメージを相手に与える!」
「くっ!」
佳克:LP4000→LP3500
「そして、手札からマジックカード手札抹殺の効果発動!」
「なに!?」
「お互いは手札を全て捨て、捨てた枚数だけデッキからドローできる!」
何、もしかしてこいつのデッキ……。
くっ、ギアフリードと増援が!?
ギアフリードは2枚あるけど、増援はやはり惜しい。
だがそれよりも問題は……。
「手札をドローした事により、神の恵みの効果が再び発動! ライフを500回復!」
穂村:LP3000→LP3500
「そして、ライフ回復が発生した事によりビックバンガールの効果も発動する!」
「ッ!」
佳克:LP3500→LP3000
「ライフが逆転したようね、どうする?」
「俺はいつもラストに逆転するタイプなのさ」
「ふっ、強がりを、だがまだ終わらないわよ。
マジックカード強欲な壷! デッキから2枚ドロー!
そして、神の恵みとビックバンガールの効果も発動する!」
穂村:LP3500→LP4000
「やってくれるな……」
佳克:LP3000→LP2500
「この様なもの、まだまだ序の口だ! カードを1枚伏せてターンエンド!」
「俺のターンドロー!」
手札は3枚あるが、前の手札は捨てたのでまるっきり違うものになっている。
ただ、面白いカードが来たのは事実か。
もっとも対処療法レベルだが。
「切り込み隊長を生贄に、魔道ギガサイバーを召喚する」
魔道ギガサイバー:効果モンスター/星6/闇属性/戦士族/攻2200/守1200
「そして、神剣−フェニックスブレードの効果発動!
戦士族モンスター2体を除外する事で、このカードを墓地から手札に戻す!」
「そして、魔道ギガサイバーで攻撃! ギガンティック・クラッシャー!!」
「永続トラップ発動! グラヴィティ・バインド−超重力の網−! レベル4以上のモンスターは攻撃宣言できない!」
「くそっ」
「焦りが出ているよ。そろそろ終わりってところかしら?」
「……」
確かにやりにくい敵ではある、しかし、バーンデッキにも欠点はある。
今はそれにかけるしかない……。
「俺はカードを1枚伏せてターンエンド」
「ふふっ、あきらめた? アタシのターンドロー!
神の恵みの効果」
「チェーンして永続罠発動! 王宮のお触れ!
このカードが発動している限りこのカード以外のトラップカードの効果は全て無効になる!」
「何っ!?」
「これでそのコンボは使えなくなったな」
「フンッ面白いじゃない、少しは抵抗してくれないとね」
トラップを全て無効化した、これで暫くはバーン効果に悩まされずにすむだろう。
俺のデッキにこのカードが入っていたのは幸いだ。
バーン系の効果もかなり減殺してくれるだろうからな。
「ならば、手札から天使の施しを発動! カードを3枚ドローし2枚墓地に捨てる。
更に、モンスターを伏せ、カードを1枚伏せてターンエンド」
思いのほか上手くいった、前のターン俺はダメージを受けていない。
これは大きいだろう。
だがそれだけでは逆転に至っていない。
俺のターンでせめて、ビックバンガールだけは何とかしないとな。
「俺のターン、ドロー!」
俺が引いたのは、突進か……。
現状では使い道はないな。
「俺は異次元の女戦士を召喚!」
異次元の女戦士:効果モンスター/星4/光属性/戦士族/攻1500/守1600
「異次元の女戦士でビックバンガールに攻撃! 次・元・斬!」
「フンッ」
「戦闘では破壊できないが、異次元の女戦士の効果発動!
自らと、そして戦闘した相手モンスターを除外することが出来る! 異次元への飛翔!!」
「ビックバンガール……」
異次元の女戦士がビックバンガールを捕まえて上空へ消えていく。
これでバーン効果は完全に失われたはずだ。
もっとも、このリバース効果モンスターが不気味だが。
「魔道ギガサイバーで伏せカードに攻撃!」
「速攻魔法収縮! 魔道ギガサイバーの攻撃力をエンドフェイズまで半分にする!」
魔道ギガサイバー:攻撃2200→1100
「リバースするのは、燃え盛るヒータ!」
燃え盛るヒータ:効果モンスター/星4/炎属性/魔法使い族/攻 800/守1500
「速攻魔法発動! 突進! ギガサイバーの攻撃力をエンドフェイズまで700アップ!」
魔道ギガサイバー:攻撃1100→1800
「何!?」
「行け! ギガンティック・クラッシャー!!」
ギガサイバーのどでかいパンチでヒータは破壊され墓地にいく。
トラップが使えず、モンスターもいない。
この状況は彼女にとってもかなり不利になるだろう。
「ターンエンド」
「アタシのターン! ドロー!
……まいったね、アタシは憑依装着ヒータを守備表示で召喚する」
憑依装着−ヒータ:効果モンスター/星4/炎属性/魔法使い族/攻1850/守1500
「ターンエンド」
引きが悪い?
姫神の手札は残り1枚、フィールド上のトラップは封じている。
しかし、2年の主席はこの程度でどうにかなる相手なのか?
「俺のターン、ドロー!」
俺が引いたのは、不意打ち又差……いけるか?
1ターンキルとまではいかないが……かなりのダメージにはなるだろう。
不気味ではあるが、決められるうちに決めておく事にする。
「俺は、不意打ち又佐を召喚!」
不意打ち又佐:効果モンスター/星3/闇属性/戦士族/攻1300/守 800
「更に、不意打ち又佐に手札に戻した神剣フェニックスブレードを装備!」
不意打ち又佐:攻撃1300→攻撃1600
「バトル! 不意打ち又佐で憑依装着ヒータを攻撃! 奇襲・一の太刀!」
「むっ!」
攻撃表示なら負けていただろうが、憑依装着ヒータも守備力は1500、攻撃力をあげた又佐の前には沈むしかない。
しかし、ヒータ系……最近霊使いのデッキと当たる事が多いな。
まさかこいつも精霊を……まさかな……。
「更に、不意打ち又佐の特殊効果、1ターンに2度攻撃できる!
不意打ち又佐でダイレクトアタック! 殺法・終の太刀!」
「くぅ!!」
穂村:LP4000→LP2400
「そして、魔導ギガサイバーの攻撃! ギガンティック・クラッシャー!」
「アタシをここまで追い込むなんて……」
穂村:LP2400→LP200
「1ターンでここまでやれるデュエリストと闘ったのは初めてよ」
「なんならサレンダーでもするか?」
「まさか、次のターンでアタシが勝つわよ」
「……ターンエンド」
何だ?
一瞬彼女今までの苛烈さが消えて楽しそうに見えたが。
直ぐに元に戻る、何かあるとでも言うのだろうか?
だが何だろう、プレッシャーが一段と大きくなったような。
「アタシのターン! ドロー!!
手札からマジックカード死者蘇生を発動!
墓地にいる炎を支配する者を特殊召喚する!」
炎を支配する者:効果モンスター/星4/炎属性/炎族/攻1500/守1600
「天使の施しで墓地に送っていたのか……」
「そう、そして炎を支配する者(フレイムルーラー)は生贄にする時1体で2体分の生贄とする事が出来る!」
来る?
姫神のフィニッシャー、恐らくは炎属性のレベル7以上……。
この時期そんなモンスターは少なかったはずだが……。
「炎を支配する者を生贄に、出でよ! ヘルフレイムエンペラー!!」
ヘルフレイムエンペラー:効果モンスター/星9/炎属性/炎族/攻2700/守1600
「レベル9だと……」
「フフッ、少しは驚いたようね。だけど、本当に驚くのはこれからよ!
ヘルフレイムエンペラーの効果発動! エンペラー・コンテンプテュアス(睥睨する皇帝)!
墓地にある炎属性モンスターを5体まで除外し、その数と同じだけトラップマジックゾーンのカードを破壊できる!」
それはつまり、氷帝メビウスの効果の強化版のようなものか。
墓地の炎族モンスターに左右されるとはいえ、最大5枚まで破壊出来るのは大きい。
しかも、攻撃力2700となると……。
俺のフィールドに対抗手段はない。
「墓地にある、燃え盛るヒータ、憑依装着ヒータ、炎を支配する者の3体を除外し発動!
相手フィールドのフェニックスブレードを除く2枚のカードと、
自分の場の永続トラップ・グラビティバインド超重力の網を破壊!」
「くそっ!」
まあ、破壊されたのは王宮のお触れとそれを使ったせいで発動できなくなったやりくりゴブリンだが。
どちらにしろ、戦闘においては役に立たなかったとはいえ、相手側の神の恵みが復活するのが痛い。
せっかく残りライフ200まで削ったのが台無しになるからな……。
「だが次のターンが来れば……」
「次のターン?
そんなものはないわ。
前のターンで決め切れなかったのがお前の敗因だね」
「どういうことだ!?」
「アタシがお触れを破壊したのはトラップを使用可能にするためよ。
でももう一枚も破壊したのは、そのトラップでアタシのトラップの発動を邪魔される可能性があったから」
「トラップ……だと!?」
「伏せたままのカードがキーカードって言うのも困りものだけどね。
トラップ発動! 火霊術−紅(かれいじゅつ−くれない)!
自分フィールド上に存在する炎属性モンスター1体を生け贄に捧げ、
生け贄に捧げたモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える!
当然、アタシが捧げるのはヘルフレイムエンペラー! 攻撃力は2700!
一撃で丸焼け・だろ?」
「まっ、まさかー!?」
佳克:LP2500→LP0
ヘルフレイムエンペラーが自爆したように炎を増幅し。
俺に向かって突っ込んでくる、モンスターも手札にもそれを防ぐ術はない。
バーン効果は怖いとは思っていたが、まさか……こういう手段を使ってくるなんて……。
「ふぅ……思ったよりも追い詰められてしまったわ。今後は気をつけないとね。
じゃあ、用件は済んだから好きにしな」
「……」
俺は思わず立ちすくんでしまった、彼女のもう興味はなくなったという目が余計に俺を萎縮させる。
分かっていた、カイザーにも十代にも勝てない時点で俺は一流ではなく二流のラインにいると。
しかし、それでも一年では十代に次いで三沢と2位を争う程度には強いと思っていた。
それに2年はアニメに出なかった程度だから大した事ないという認識もあった。
だが、いざという時バーン効果に対抗できるカードがなければこんなものなのだ。
俺は……この世界で本気で悔しいという気持ちを始めて持つにいたっていた。
勝つためのデッキ構築、しかし、それまでとは違うテーマを無視したものでも取り込んでやる。
そうでもしなければ、運や独自デッキを使う相手には勝てない。
「絶対、勝てるようになってやる! 姫神にも、十代やカイザーにだって!!」
ほかに誰も聞いていないようなところでいっても仕方ない事でもある。
しかし、それは俺の決意でもあった。
あとがき
修正なので仕方がないのですが、やっぱ新しく見てくれてる人とかあんまりいなさそう(汗
続編まで急がねばなりませんね・・・・・・。
押していただけると嬉しいです♪
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