レッド寮にサンダーが転がり込んできて一週間ほどたった。

いや、俺にとってはあの2年主席に破れてからというべきか……。

俺は表面上今までと変わらないように皆に接している。

サンダーをいじるのは楽しい、というか彼コートの袖で口を拭くのは何とかならんか。

レッド寮には確かにティッシュやナプキンは常備してないが、ティッシュくらい自前で何とかなるだろうに。

真ッ黒なコートなのであまり汚れは目立たないが、袖口てかってるって……。


だがやはり、あの敗北は厳しかった。

姫神穂村……俺に土をつけた女、十代やカイザーなら仕方ないと諦めもついた。

実際デッキが戦士族としても中途半端なレベルでしかない事は自覚していたしな。

だが、彼女のデッキがどれくらいのデッキなのかはともかく。

バーン効果一発であそこまで逆転されてしまう現状はまずいと感じる。

今はまだ破壊輪全盛の時代、サンダーや三沢だってデッキに組み込んでいる。

つまり、割と簡単に使われて負ける可能性が高いという事でもある。

そう言う意味でもだが、やはり悔しいという思いが強かった。


せめてあのカードがあれば、というカードは無数にある。

何と言っても、俺はまだ出ていないカードを沢山知っている、そのうち数枚でもあれば逆転等たやすかった。

何が言いたいのかと言えば、まだ俺は未来のカードに甘えを持っているという事だ。

だが現実にない以上、今あるカードの中で結果を出さなければならない。

俺の知るテーマデッキを組むにしてもパーツが圧倒的に足りずまだ出来る物はほとんどないのだから。


だが、一つだけ手段を思いついてもいた。

神楽坂だ、あいつは幾つものテーマデッキを組み上げている。

例えば、アンティークギアゴーレムをあいつはなぜか持っていた。

かなりの金持ちなのか、伝説級のカードのはずなんだが……。

俺も今やそこそこDPはため込んでいる、といっても3000程度だが、パックにして20くらいなら購入可能だ。

何か、特殊な入手法でもあるのなら、教えてもらおうと思いイエロー寮へと向かった。



「あっ、三沢、神楽坂を見なかったか?」

「神楽坂か、そう言えば最近は姫神女史のデッキを組むとか言っていた気がするな」

「う”……」

「んっ、そう言えばヨシカツも敗れたんだったな。ならばバーンデッキ対策といったところか?」

「それもあるんだがな……」

「へぇ、珍しいなヨシカツが悩みなんて、カイザーや十代に負けても凹まなかったようだが」



三沢も相変わらずだな、分析というか俺が誰と闘ったのかおおよそ把握しているようだ。

しかし、凹んだかどうかまでわかってるのかね?

そんな事を考え、ふと、三沢が思ったよりも憔悴しているように見えるのに気付く。



「まあな、そう言えば。最近変わった事はないか?」

「変わった事?」

「ああ、変なものが見えたり、聞こえたりとか……」

「……何故それを?」

「いや、なんというか……」



三沢の背後にピケクラが……。

そして2人は三沢のジャケットの裾を持って威嚇気味に俺を見ている。



「そうなんだ、最近どうにも体が重いような気がしたり。

 幻聴も聞こえてくる気がするんだ……」

「それってさ、子供の声なんじゃね?」

「ああ……なんだかひどく幼い声なんだが……」

『幼いなんて失礼しちゃうの〜』

『そうよ、私達立派なレディなんだから!!』

「うっ、今も何か幻聴が!?」



三沢は取り乱している、どうやら中途半端に覚醒しつつあるらしい。

完全に覚醒すればピケクラの姿も見えるようになるんだろうが、

今は声と、引っ張られている感覚だけがあるようだな。

こりゃ三沢、暫く不眠症になるんじゃないか?



「あー、それはデュエルの精霊じゃないか?」

「精霊? 噂では聞いた事があるが……」

「アカデミアには専用の研究機関があるくらいだ、いてもおかしくないとは思わないか?」

「そうかもしれないな……カードからエネルギーを抽出する研究もされていると聞く」

「あー、モーメント理論だっけ、流石に研究を始めたばっかりって話らしいけどな」



確かに、ニュースでそう言うのがやっていたのは事実だ。

モーメントのキーとして5つのドラゴンカードが配置されたり、

モーメントを車体に埋め込んだD−ホイールがデュエルをする事を前提としたバイクだったり。

未来で実体化した巨大な遊戯王のモンスターが兵器になっていたり。

そういう理屈を考え併せると、モーメントのエネルギーの出所もカードの精霊だとしても不思議ではない。

精霊研究の一つの結果としてモーメント理論が生まれたというのもあながち間違いではないだろう。



「ともあれ、あまり気にしない事だ。精霊ならお前に悪い事をしようなんて考えてないさ」

『当然なの〜』

『いっ、いちおうカードは大事にしてくれてるみたいだし、使われてあげなくもないわ』

「そうかもな、ははは……お前にそう言ってもらえると何だか安心するよ」

「俺にはそっちのケはないぞ」

「俺にもない!」

『私はありなの〜』

『そう? 神楽坂のほうがマシじゃないの?』

『難しい所なの〜』



ええい、この腐女子どもめ黙れ!

と言いたいが変人扱いされそうなので口には出さない。

ピケクラのほうも、俺と直接話そうとは考えていないようだ。

それでも、一応は三沢を諭した事については感謝しているのか、

8割がた訳のわからない状態の三沢を引っ張って部屋に戻って行った。



「さて、俺は神楽坂を探すか」



俺は強くなりたい、こう言っては何だが神楽坂やクロノス教諭が使っての戦績は微妙だったが、

きちんと条件さえ整えればアンティークギアはかなり強力なデッキだ。

なんといってもアンティークギアゴーレムは2体生贄がいる分重くはあるが、

攻撃力3000という高い攻撃力、守備モンスターに対する貫通ダメージ効果、

そしてこれが一番大事なんだが、攻撃する時相手のトラップマジックを発動させない効果がある。

ん……?

あれ?

アニメでは神楽坂が確かジェットロイドの手札からトラップカードを発動できる効果でやられてたな?

えーっと、あれ?

手札うんぬん以前に、発動できない特殊効果があるはずなのに……。

えーっと、つまり……アンティークギアゴーレムの攻撃時にトラップマジックを発動できない効果は、

アニメにおいては存在していない効果だという事か?

それって、アンティークギアデッキの性能が3割以上減るんじゃね……?

下手したら半分くらいになりそうな……。



「だとすると、アンティークギアを入れるくらいなら普通の除去ガジェにしたほうがマシか……」



珍しい、OCGになって強化の裁定が入るカードなんて……。

サイバードラゴンと違って効果を間違ってつけたわけでもないだろうにな。

因みに、サイバードラゴンはアニメの通常召喚を生贄なしで出来るという効果くらいのつもりだったが、

特殊召喚と書いてしまったせいで、更に通常召喚も出来てしまう鬼効果になったそうだ。

まあ、あくまでこちらのほうは噂だが。



「仕方ない、帰るとするか……」



帰り道もひたすら、自分のデッキ強化案ばかり考える。

未来のデッキならばいくつでも考える事が出来るが、当然今やるにはパーツが足りな過ぎる。

こうなると、サイバ流に入門してサイバードラゴンをもらうのが一番という気がする。

融合進化系がなくとも、サイバードラゴンがあるだけで、かなりのデッキ強化が可能だ。

サイバードラゴンの効果はOCGの効果のようなので2体の召喚が可能だろうからだ。

この際ツインドラゴンをもらえるまで頑張って、融合と合わせて、

ゾンパイアの融合モンスターである異星の最終戦士と2つのフィニッシャーで……。

そうか、異星の最終戦士がいたな……あれなら普通に揃える事が出来るはず。

何よりアレがいれば、バーンモンスターも出す事が出来なくなる。

攻撃力がちょっと頼りないが、その辺は何とでもなるだろう。

だが、フィニッシャーはいいが、やはりそれ以前にロックされてしまうとつらい。

何か無いだろうか……?



「んっ、ここは……」



橋の下の岸壁……、俺はなぜまたここに来てしまったのだろう?

あの女、研究者とか言っていたが……。

無意識にあいつの事が気になっていたのだろうか?

そんな事を考えながら俺が少し呆然としていた時、岸壁の影から現れたのは……。

件の眼鏡少女、ハイネックのノースリーブから出た肩が妙にまぶしい。



「やっぱり来たのね……」

「近いうちに会いましょうっていうのはこう言う事か?」

「そうね、そうなるかしら……?」



相変わらず表情を変えない奴だ。

それに何を考えているのか分からない、不気味さというのでもないが威圧感がある。

少女は一冊の本を取り出し、読み始める。

俺の事はまるで目に入っていないかのようだ。



「お前は研究者だと言ったな?」

「ええ……」

「なら強力なカードを……いや、忘れてくれ。

 関係ない奴に頼もうとするなんて俺も焼きが回ったな……。

 パックを買いあさる事にするよ」

「……そうね、それが一番でしょう」

「すまなかったな」



俺は、そう言ってまた坂道を登り橋へと向かう事にしようとした。

彼女は恐らく俺の事など気にしていないだろう、そもそも俺自身何がしたかったのか分からない。

それに、一応ではあるが、方針は決まったじゃないか……。

しかし、予想とは違い呼びとめる声があった。



「待って」

「え?」

「貴方に一つ聞きたい」

「なんだ?」

「精霊のカードは確かにある意味強力なカードだけど、

 はっきり言って、呪いのカードと変わらない、何故なら一度デッキに入れたらなかなか出て行ってはくれないわ。

 例えば、そのカードが闇属性の悪魔族だったとして、

 メインデッキが風属性の鳥獣族デッキに変更されただとしても出て行ってはくれない。

 サポートカードと共にデッキを圧迫する事になるわ」

「……あーそうなんだ」

「そう、精霊の力を取り込んだデュエリストは確かに強くなるけど、反面デッキを選べない弱さがある。

 三沢大地だったかしら、彼ももうピケルとクランの関係カードをメインデッキから出す事は出来ないわよ」

「なるほど」



精霊を使ったディスティニードローにはそれなりのリスクは負ってもらうということか。

遊戯にはクリボー、十代にはハネクリボー、遊星の場合はスターダストドラゴンだろうか。

それぞれ、デッキから外す事は出来なくなっているという事か、

まあ遊星の場合単体でも十分強いカードだからあまり意識する必要もないだろうが……。

まあ、盗まれたり(遊星)、心変わりをしてしまったり(サンダー)すると外す事も出来るようだが。



「それでも、精霊の力とその引きは欲しい?」

「そうだな……当然だ、この世界のカードはまだまだコンボ能力が不足している。

 よほどの引きがなければ完全にデッキを安定させる事はできないだろう」

「後になって強力なデッキが組めるようになれば圧迫する結果になるわよ」

「それに相応しいだけの引きは手に入るんだろう?」

「……そうね」



全く俺は何を言っているんだ、精霊のカードが欲しいか……。

確かにそうだがそんな事を話して手に入るほど甘くは……。



「なら、私とデュエルしなさい」

「……どういう意味だ」

「私の事は知っているはず。

 私は地霊使いアウス、精霊について研究をしている精霊とでも言えばいいかしら?」

「そうか、やはり……」

「もしも貴方が私とのデュエルに勝利したなら、

 私の持つ地の属性のカード群と共に貴方の力となる事を誓いましょう」



それは……願ってもない申し出だ。

例え敗れても傷つくのは俺のプライドのみ、リスクはまるでない。

だが同時に、これだけではいけない気がした。



「ならば俺は、俺のデュエリスト生命をかけよう」

「なるほど、相応の対価です」

「なら始めるとしようか」

「ええ」

「「デュエル!」」


佳克:LP4000   アウス:LP4000



「俺のターン、ドロー!」



俺のデッキはあれからかなりいじっている。

だが、これという安定した結果を出せるほどには変えられなかった。

それでも、この勝負負ける訳にはいかない。

手札を見て、ふうとこぼす。

事故等があれば本当に終わってしまうからだ。

モンスターは、

鉄の騎士ギア・フリード:効果モンスター/星4/地属性/戦士族/攻1800/守1600

荒野の女戦士:効果モンスター/星4/地属性/戦士族/攻1100/守1200

の2枚、後は全てマジックカードだ。

とはいえ、伏せやすいものもある。



「俺は荒野の女戦士を守備表示で召喚!」

荒野の女戦士:効果モンスター/星4/地属性/戦士族/攻1100/守1200


「カードを2枚伏せてターンエンド」

「私のターン、ドロー。

 マジックカード大嵐を発動。フィールド上のトラップ・マジックをすべて破壊します」

「なっ!?」

「危機意識が薄いです」



確かに否定できない、大嵐等のある意味全体を除去するカードはこの世界に来てから受けた事がない。

あえなく伏せていたエネミーコントローラーとサイクロンを破壊された。



「更に、マジックカード強奪を発動」

「なっ」

「荒野の女戦士は私のフィールドに特殊召喚されます」

荒野の女戦士:効果モンスター/星4/地属性/戦士族/攻1100/守1200


「そして、私は私を召喚」

地霊使いアウス:効果モンスター/星3/地属性/魔法使い族/攻 500/守1500


「私と荒野の女戦士を墓地に送り、更なる私を召喚します」

憑依装着−アウス:効果モンスター/星4/地属性/魔法使い族/攻1850/守1500


「バトル、私でダイレクトアタック、地霊操牙」

『キシャー!!』

「ごォォォ!?」

佳克:LP4000→LP2150



アウスが使っているのは蝙蝠の羽根が生え、額から角がつき出た爬虫類っぽいモンスター。

頑張れば竜のようにも見えなくはないが、蝙蝠にも見えなくはないし……。

なのだが、憑依装着の場合かなり強い。しかも、痛みが現実に感じられるのは精霊との戦いのお約束なんだろうな。

というか、計算されている? 俺のデュエルが……。



「手札から天使の施しを発動。3枚ドローし、2枚墓地に捨てる。

 そして、カードを一枚伏せてターンエンド」

「俺のターン、ドロー!」



完全にしてやられた、しかし、こんなことでめげている訳にはいかない。

確かにダメージは大きかったし、フィールドはがら空きだが、ここで負ける程度なら俺もそれまで。

逆転の一手くらい幾つかある。



「俺は、鉄の騎士ギアフリードを召喚!」

鉄の騎士ギア・フリード:効果モンスター/星4/地属性/戦士族/攻1800/守1600


「トラップ発動、落とし穴。攻撃力1000以上のモンスターが召喚された時、そのモンスターを破壊する」

「なっ!?」



2ターン続けてメタを張られたってのか?

くそ……。

俺自身、確かに破壊カードをあまり意識していなかった事は否定できない。

使われないのは、手に入りにくいからという理由に過ぎないのに。



「俺は手札を2枚伏せてターンエンド」

「また2枚伏せるのですか?」

「ああ!」

「私のターン、ドロー

 手札からハリケーンを発動、フィールドのトラップ・マジックカードを全て手札に戻す」

「チェーン発動! 和睦の使者! 更にチェーンして非常食を発動する!」

佳克:LP2150→LP3150


「俺はこのターン戦闘によるダメージを受けない!」

「なるほど、ですが手札は……」

「……わかっている」

「私はカードを一枚伏せターンエンド」



しかしまあ、大嵐にハリケーンとはな。

きっちりとメタを張って来ている。

俺にこの程度は超えて見せろという意味か、それとも単にもうデュエルは辞めろという事なのか。

どちらにしろ、次のドローで全てが決まる。

俺もそれなりにいろいろギミックを積んできたが、今までの俺の引きを考えると少し気持ちが鈍る。

だが、どうせこれに負けたらもうデュエルはやめるのだ。

なら気にしても仕方ないな……。



「俺のターン! ドロー!!

 俺の引いたカードは、エレメンタルヒーロー・バブルマン!」

「え?」

「悪いが、シナジー度返しでいろいろなギミックを盛り込んでいる。

 特にバブルマンはさほどレア度が高いわけでもないのに2枚のドローギミックがおいしいからな!」



まあ、アニメ効果故の特典であって、OCGなら絶対積まないが。

アニメの場合はフィールドに他のカードがなければ2枚ドローだが、

OCGなら手札もゼロじゃないとドロー出来ないという差がある。

そして、この世界においてはアニメ効果であるゆえに、バブルマンはどのデッキに入れてもある程度活躍できる。



「手札がこれ一枚の時、バブルマンは特殊召喚できる! 俺はバブルマンを守備表示で特殊召喚!」

E・HEROバブルマン:効果モンスター/星4/水属性/戦士族/攻 800/守1200


「そして、召喚、反転召喚、特殊召喚した時、フィールド上に他のカードがなければカードを2枚ドローできる!」



はっは、やっぱりバブルマンすげぇ、手札が2枚増えたという事もだが、

ピンチの状況から脱するには特殊召喚して生贄に出来るという効果も欠かせないな。



「更に! バブルマンを生贄に、人造人間−サイコ・ショッカーを召喚!」

人造人間−サイコ・ショッカー:効果モンスター/星6/闇属性/機械族/攻2400/守1500



流石に精霊は宿っていないと思うが、サイバ流台頭前は機械族で一番の隆盛を誇っていたモンスターだ。

トラップを発動させない効果にこの攻撃力、正直サイバードラゴンを除けばGX世代でも不動の地位を持っていたと言っていい。

因みに生贄を必要とせず、後から更にモンスターを追加召喚できるサイバードラゴンが規格外なだけである。

そう、俺はDPを荒稼ぎしまくり色々なパックを買いあさり使えそうなカードは片っ端からデッキ投入していた。



「節操のないデッキですが、面白い」

「何とでも言え! サイコ・ショッカーで憑依装着アウスに攻撃! サイバーエナジー・ショック!!」

「くっ!」

アウス:LP4000→LP3450



憑依装着アウスが破壊されて消え、フィールド上にいた彼女がまたデュエリストの位置に戻る。

忙しい事だが、それはそれで仕方ない話だろうな。

それよりも、この状態を維持するためにはマジックの対策が不可欠だろう、



「カードを一枚伏せてターンエンド」

「私のターン、ドロー。マジックカード強欲な壷を発動デッキから2枚ドロー」



手札増強に出た、つまりは、このターンでサイコショッカーを破壊してしまうつもりか。

だが、トラップでの破壊は不可能、マジックでの破壊はさすがに少ないと思いたい……しかし、ありうるな。

かなり運任せになってきているようだ。



「マジック発動、地割れ、相手フィールド上で一番攻撃力の低いモンスターを破壊する。

 相手フィールドにはサイコショッカーのみ、よってサイコショッカーを破壊」

「くっ!」


「手札から電動刃虫(チェーンソー・インセクト)を召喚」

電動刃虫:効果モンスター/星4/地属性/昆虫族/攻2400/守 0


「更に、墓地の地属性モンスター、地霊使いアウスを除外し、ギガンテスを特殊召喚」

ギガンテス:効果モンスター/星4/地属性/岩石族/攻1900/守1300



微妙に電動刃虫はまだ発売していなかったりするが、来年には出るんだからよしとするしかないか。

しかし、これを2発とも食らったら負けだ。

それは阻止せねば……。



「ギガンテスでダイレクトアタック、ギガントハンマー」

「トラップ発動! リビングデッドの呼び声!! サイコショッカーを復活させる!」

「なるほど、なら攻撃をキャンセルし、電動刃虫でサイコショッカーを攻撃、シザースプラッシュ」

「迎撃しろサイコショッカー! サイバーエナジーショック!」



互いの攻撃力が互角で同時に破壊されるサイコショッカーと電動刃虫は同時に墓地に行く。

サイコショッカーが破壊されたことで有効となったリビングデッドの呼び声も破壊されて墓地にいった。



「電動刃虫の効果で相手は一枚ドロー」

「む」



俺はカードを見る、収縮か。

悪くはないな、このタイミングだとどうだか分からんが。



「ターンエンド」



バトルフェイズは終了したが、また俺の場はがら空きとなってしまった。

対する相手フィールドは、攻撃力1900のギガンテス、そして伏せカード1枚。

アウスも俺も手札はゼロだから、かなり不利だといえる。



「俺のターン! ドロー!」



戦士の生還、これなら何とかできるかもしれない。

俺のデッキいつまでシナジーが続くのか分からない以上、あまり長期戦にはしないほうがいい。

決められるならここで決める!



「速攻魔法収縮を発動! ギガンテスの攻撃力を半分にする!」

ギガンテス:攻撃1900→攻撃950



「更に、手札から戦士の生還を発動!

 バブブルマンを手札に戻す。そして、手札にバブルマンしか存在しないため特殊召喚できる!」

E・HEROバブルマン:効果モンスター/星4/水属性/戦士族/攻 800/守1200


「バブルマンの特殊召喚が成功したことにより、

 俺のフィールドに他のカードが存在しないため、デッキから2枚ドローする!」

「つきはまだありますか」

「力作なんでね! シナジーがあるのかは分からないが、個々の能力は高いものを選んでいる!

 そして、死者蘇生を発動! サイコショッカー復活!」」

人造人間−サイコ・ショッカー:効果モンスター/星6/闇属性/機械族/攻2400/守1500


「これでまた、そっちのトラップは使用不能になった。

 バトル! サイコショッカーでギガンテスを攻撃! サイバーエナジー・ショック!」

「くっ」

アウス:LP3450→LP2000


「更に、ギガンテスが破壊された事により、フィールド上のトラップマジックが全滅する」



サイコショッカーによってギガンテスが消え、墓地に行ったことで効果が発動している。

ようは大嵐のようなものだが、タイミングが戦闘破壊の後なので下手をすると自分が損をすることになりかねない。

そしてアウスがふてていたカードも墓地に落ちる。

あれは、万能地雷グレイモヤ……破壊系のカードをかなりデッキに入れているようだな。



「そして、バブルマンでダイレクトアタック! バブル・シュート!」

「くぅ!」

アウス:LP2000→LP1200


「ターンエンド」



俺の手札に残っているのはマジック一枚、この場では使えない。

だが、もしもの時には役に立ってくれると信じている。

この状況からの再逆転が出来るかという問題のほうが先にたつが。



「私のターン、ドロー。

 マジックカード貪欲な壷を発動、憑依装着アウス、電動刃虫、ギガンテス、そして、

 天使の施しで墓地に送った本気ギレパンダ、逆ギレパンダをデッキに戻し、2枚ドロー」



貪欲な壷か、この世界に来て始めてみた気がする。

しかし、まだ手札は2枚、まさか2枚ともモンスター破壊カードって事はないと思うが。



「私はマジックカード、地割れを発動。バブルマンを破壊する。

 そして、死者蘇生を発動、バブルマンを蘇生する」

「なっ!?」

「バブルマンの効果発動、デッキから2枚ドロー。

 マジックカード、デビルズサンクチュアリを発動、メタルデビルトークンを特殊召喚する」

メタルデビルトークン:トークン・効果モンスター/星1/闇属性/悪魔族/攻 0/守 0


「そして、2体の生贄を使い、アンティーク・ギア・ゴーレムを召喚るる」

古代の機械巨人:効果モンスター/星8/地属性/機械族/攻3000/守3000


「げっ!?」



いくらマジック・トラップに耐性がないとはいえ、攻撃力3000は脅威だ。

どっちみち、トラップなんて張っていないし……。

更には、こちらのほうは今、ネイキッドなどのように強力だけど事故の元になるカードを排除している。

あれに勝つにはカードが2枚以上必要だ、コンボでしとめなければ勝てない。



「アンティーク・ギア・ゴーレムでサイコショッカーに攻撃、アルティメットパウンド」

「くそっ!」

佳克:LP3150→LP2550



600ポイントのダメージ自体はそれほど大きなものじゃないが。

サイコショッカーが墓地に戻ってしまったのは痛い。



「ターンエンド」

「俺のターン、ドロー!」



このままでは不味い、勝ち目のない状態のまま、守備表示でしのぐのも辛いとは……。

守備力貫通、敵に回すと厄介な効果だな。

俺の引いたカードは強欲な壷。



「マジックカード強欲な壷を発動! デッキから2枚ドロー」



2枚のカードは……どちらも荒野の女戦士。

なめとんのか!!

このタイミングでは死ねといっているようなもんだ……。

だが、まだ諦めるわけには行かない。



「俺は、荒野の女戦士を守備表示で召喚」

荒野の女戦士:効果モンスター/星4/地属性/戦士族/攻1100/守1200


「ターンエンド」



くそっ、これで次のターンを持たせられるのか?

アンティークギアゴーレムだけでもかなり痛いというのに、

もう一枚で何をしてくるのか分からない……。



「私のターン、ドロー。

 私の引いたカードは私、そのまま召喚」

憑依装着−アウス:効果モンスター/星4/地属性/魔法使い族/攻1850/守1500


「何!?」

「バトル、アンティークギアゴーレムで荒野の女戦士を攻撃、アルティメットパウンド」

「ごぉぉぉぉ!?」

佳克:LP2550→LP750



攻撃力3000で守備力1200を攻撃したのでその差1800をもらってしまった。

正直もう後がない……。

荒野の女戦士をもう一体出そうにも手元ので最後だし、そもそも次の攻撃、攻撃表示では紺屋の女戦士ごとお陀仏だ。



「墓地に行った荒野の女戦士の効果発動! デッキから異次元の戦士を攻撃表示で特殊召喚する!」

異次元の戦士:効果モンスター/星4/地属性/戦士族/攻1200/守1000


「私は異次元の戦士に攻撃、地霊操牙」

「くぉ!!」

佳克:LP750→LP100



おいおい、除外されるのなんて屁でもないってか……。

確かに残りライフ100だもんな。

だが、アニメじゃここからが……って、効果効果。



「異次元の戦士の効果発動! このモンスターはバトルフェイズ後、バトルを行ったモンスターと共に除外される」

「ターンエンド」



ふう……どうにか生き残ったか。

しかし、これが正真正銘ラストドローになるだろうな。

相手フィールドにはアンティークギアゴーレム、こちらは手札に荒野の女戦士一枚。

よほどの奇跡が起きなければ逆転しないだろう。



「俺のターン! ドロー!!」



俺の手元に来たのは……、



「俺は、荒野の女戦士を召喚!」

荒野の女戦士:効果モンスター/星4/地属性/戦士族/攻1100/守1200


「そして、速攻魔法エネミー・コントローラーを発動する!

 その2番目の効果!

 荒野の女戦士を生贄に、1ターンのみアンティーク・ギア・ゴーレムのコントロールを得る!」

古代の機械巨人:効果モンスター/星8/地属性/機械族/攻3000/守3000


「バトル! アンティーク・ギア・ゴーレムでダイレクトアタック! アルティメット・パウンド!!」

「キャーーー!!」

アウス:LP1200→LP0



やった……、これで俺も……もうちょっとましなデッキが組める!

ディティニードローに関してはまあ、よく分からないが。

最後のツキならさほど悪くはないと証明されたしな。



「おめでとう、適当に組んだデッキだけど、それなりに強かったみたいね」

「へ? 適当に?」

「ええ、種族ごちゃごちゃだったでしょ、サポートカードもあまりなかったし」

「ぐっ」

「カードは貴方にあげるからきちんとしたデッキをくみ上げて私を使ってね」

「がっ、頑張ります……」



適当に組み上げたデッキ相手にこれだけ苦戦する俺って……。

なんというか、悲しくなってきた……。

とそういえば……。



「アウス、お前は人に見えるのか?」

「ええ、その気になればね」

「それは凄いが……」

「レッド寮内では実体化しないようにするわよ?」

「頼みます」



なんだろう、そこはかとなく立場が俺のほうが下みたいな……。

ははは……まさかね?







あとがき

精霊ってやっぱりGX主人公には必須ですやねw

ネタなので役に立つのかわかりませんが(汗



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