第二話 キモイと言われて


どうも、キュモールでーす。

まあ原作のキュモールとは精神的に別人ですが。

それだけに、普段からV字の胸空き鎧はしんどい……。

これ、割れ目はへそまで届いてるんだよね……。

ほかの部分は全身タイツみたいな感じだし。

そうそう、物語に出てくるボンボンの王子様に時々こういうのがいるかも。

早くこういう格好はやめたいんだけども……。

今は迂闊に髪の毛を切るわけにも、服を変えるわけにもいかない。


帝都からほぼ直進でデイドン砦までやってきたキュモール隊21名はとりあえず昼食休憩を取る事にした。

正直、俺としては領地に急ぐべきという気もするが、そういえばモンスターが突進してくるんだったな。

とりあえず食事を済ませた俺は、そういえば食事作法とか大丈夫だったかなと思いつつ砦の上に登った。

モンスター達はまだ来ていないようだ。

だが、そういえば突撃してくるタイミングにユーリ達が間に合わないという事はないだろうか?

だって、キュモール隊のせいで冒険王に泊まれなかったユーリ一行は今日おそらく冒険王に泊まるだろうからだ。

正直怖いが、俺が関わってうまくいく可能性は低い。

できれば、きちんとカロルに会って欲しいところだが……。

多分会わなくてもリタとは合うはずだし、リタとエステルがいれば、一応いけるはず……。

そんなことを考えていると、横に背の高いロングヘアな白髪の男が佇んでいるのを見つけた。

男は線が細いが、洗練された動きで隙がない。



「あんたは……」

「人の営み、飽く無き生きる事への執着……。

 どうして……人はそうまでして生きる……」



こいつは……デューク……ラスボスじゃねーか!?

中二病全開の言い回しと、力也ボイス! ハクオロさんとか切嗣とかの声ですな。

さっき言った容姿と合わせると間違いない。

そういえば出会うイベントがあった気がする……ユーリとだけど……。



「独占された技術を奪い合い……大切なものを傷つけてまでして……」


「真理とか答えとか、長く生きる程に考えるようだね」

「ッ!?」

「だけど、生きていく。より長くより快適に、それは何も人に限った事じゃないよ」

「何が言いたい?」



これは、俺が常に思っている事。

正解がある事が錯覚であるということ。

ルールとしては覚えやすいが、正解だったものが後の世では不正解になることは珍しいことじゃない。

それは自然や星等に関することも同じ。



「どんな生き物でもより長く、より快適に生きようと考えている。

 例えば、今君が言った事もまた自分が納得できないことを納得できるようになりたいと考えたからだ。

 ならば、納得することは即ち君にとっての快適、君もまたいま快適に生きようとしているという事だ」

「それは……確かに、それも真理かもしれない。

 ならば、快適であるために君は何をしてもいいというのか?」

「その通りだ、しかし、快適であるということは安心出来るという事。

 自分の周りが争いにまみれていれば快適に過ごせるのは余程イカレたやつくらいだろう」

「快適であるために平和や調和が必要だということか」

「そうなるな」



利益を望む人間、ラゴウのような存在であっても自分の平安だけは必要だ。

それに、敵やコマに対してはどうでも良くても家族に死が訪れればやはり泣くだろう。

逆に言えば彼に必要な平和は自分と自分の家族だけだったという事になる。



「だが、中には他者が苦しむ様を見て喜ぶ者もいる」

「否定はしないがね、比較しなければ幸せを実感しづらいのも事実。

 だから他者よりもより快適でありたい、その思いが歪んだ結果だろう」

「それは傲慢ではないのか?」

「他者をけ落とし、自然を破壊し、自らも滅ぼすか。

 傲慢この上ないね、だけどね、自然と人が呼ぶのは人が快適に暮らせる自然の事だよ」

「どういう意味だ?」



さすがの彼も俺の問答がおかしな方向に行っている事に気づいたようだ。

俺は、21世紀の知識を持っている。そして、その中で分かったこと。

つまり、自然を維持するというのはそもそも維持したいものがいてこそなのだと。

自然を大切にというお題目は、人類が生きるために必要だからだと。

そもそも、酸素は元々窒素呼吸の生物達には毒だった。

酸素による環境汚染の結果植物のような生物が多く生まれたのだ。

環境汚染とは、その時代の生物にとっては悪だが次の世代の生物にとってもそうかと言われればノーとなる。

前時代の生物を一掃して、自分たちが広がっていけるからだ。



「自然こそ人の傲慢の象徴だと言ってるんだよ。

 この快適に暮らせる世界を維持しようという考え、それは人類共通の概念だ。

 だからこそ、自然を大事にしなければと思う、そうでなければ人は生きていけないからね。

 もっとも、それは人に限った事ではないが」

「馬鹿な! 自然は維持しなければならない!!」

「ならば問う、過去自然は常にこの状態だったのか?」

「それは……」

「どんな世界でも生物は生まれ、そして環境汚染を行って消え次の生物がその環境に適応する。

 人類が嫌いというなら、放置しておけばいい、そうすればそのうち滅びるさ」

「お前は何者だ?」

「ただの人類さ」

「……」



デュークが黙り込んだのを確認し、俺は砦の中に入っていく。

彼は大戦時、友人であった始祖の隷長(エンテレケイア)・エルシフルを帝国に殺された恨みで動いている。

始祖の隷長というのは、エネルギー生命体のようなものでかなりの年月を生きることができる。

同時に魔導器(ブラスティア)のコアもまた始祖の隷長等のエネルギー生命体から作られている。

つまり彼らは人に利用され消えていく定め、それに対してもデュークは失望と怒りを持っているだろう。

ただ、それまた人間らしい感情なのだということに気が付けば少しはわかってくれるかもしれない。

即ち、星喰みを退治のために人を滅ぼそうとする考えすらも人の感情に過ぎないと。



「全く、理想主義者だよな……」



人類が汚れている事に怒りを感じ行動しているのはアレクセイもデュークも同じだ。

アレクセイは内部から現在の帝国やギルドを潰し理想の国家を作りあげようとし、

デュークは人類に失望し、外部から見守るのみであまり関わらなくなった。

恐らくアレクセイがフレンを取り立てたのは過去の自分を見ているようだったからかもしれない。

始祖の隷長(エンテレケイア)や星喰みが存在しない普通の世界ならそこまで複雑な話にならなかっただろう。

単なる革命家と世捨て人で終わっただろうからだ。

だがこの世界で理想主義者の暴走は命取りになる……。

俺に出来ることは多くない、っていうかぶっちゃけユーリに任せるのが一番だろう。

彼の成長を妨げず、しかし、自分も生き残るにはいろいろ面倒そうではあるが……。



ともあれ、俺とキュモール隊21名はそのまま砦を抜けた。

モンスターが出る事は知っているが、さっさと通り抜けないとユーリ達が追いつくからな。

次に行くべきは……港の街 カプワ・ノールか、念の為に先にリタに接触しておくか……。

リタに接触する事で、ユーリが勘違いしていることを先に伝える事ができる。

それと、今後もリゾマータの公式の件で接触しユーリらの行動を加速させることができる。

だが、そうすると領地経営に手を出すのが遅くなるし、

ユーリらとの接触回数が増えればアレクセイに気付かれる危険性が増す。


一長一短だな……。

だがまあ……ヴェスペリア屈指の人気キャラであるリタ・モルディオに接触してみたいという思いもある。

彼女のツンデレっぷりとOPでのくるくる回って魔法陣を描く動作が可愛く凛々しい点、生脚度も高い。

そういった点からヴェスペリア内ではダントツ人気だ、女性人気はユーリが一番だが総合では間違いないだろう。

ただ問題は、既にシャイコス遺跡にいるのかまだ学術閉鎖都市 アスピオにいるのか分からない点だ。


後、問題があるとすれば、キュモール隊がきちんと付いてくるか、またリタを怒らせないか。

やはり別行動にすべきか。



「キュモール隊は先行して、港の街 カプワ・ノールへ向かってくれ。

 資金は、馬車の中のものを使っても構わん、ただし1割以上減っていたら……」

「はっ、はい! ですがキュモール様」

「なんだ?」

「お一人で大丈夫なのですか?」

「このキュモール様が、たかがモンスター如きに遅れを取るとでも?」

「いいえ、ですがその学術都市ハルルへ訪問される理由は……」

「個人的なことだ、どうしても聞きたいのか?」

「いえ……では行きます! 隊れーつ!」

「「「「「「「「「応!!」」」」」」」」」



その後、俺は花の街 ハルルを素通りし、馬があるのでそのまま学術都市アスピオへ向かう事にした。

恐らく、ユーリ達はハルルで数日時間を取られるはずだからその間に済ませることを済ませておこう。

その後は脇目も振らず港の街 カプワ・ノールへ急げば接触しないで済むはずだ……。

この時俺は、もうひとりの事をすっかり忘れていた……。

そう、ユーリではなく、エステルが旅に出た理由の方を……。



学術都市アスピオはイリキア大陸でも北端に近い場所にあり、山岳部を掘り進んだような形をしている。

正直設定までは知らないが、構造的に見て元々はここで発掘でもしていたのではないか思われる。

俺は、真正面からアスピオの入り口で門番に話しかけていた。



「お仕事ご苦労様」

「は!」

「馬を預けるよ」

「分かりました!」

「それでは、入るね」

「お待ちください!

 騎士殿であることはわかりますがアスピオへは許可のある者しか入れない決まりになっております!」

「貴様! この私がアレキサンダー・フォン・キュモールと知っての狼藉か!!」



俺はマントを翻し自らの胸を突き出すようなポーズを取る。

あんまりやりたくはないが、キュモールの奇行とその服装はかなり広まっているはず……。

本物か偽物かくらいは大体分かってくれると信じたい。

一応、隊長の徽章もつけているが、改造されているので意味ないしね……。



「キュモール……もしや、キュモール家の!?」

「ふん、分かったら通してもらおうか」

「りょっ、了解いたしました!」



結局指令書や、知り合いがあるわけでもないので、かなり強引に通る事にした。

そりゃま、貴族を通さなかったとなればそれなりに問題になる。

多分行けるだろうと思っていたが、何とかなって良かった。

それなりに整備され、空調等も整っているようだが、やはりアスピオは洞窟臭い感じの作りだ。

わざわざ岩山の中に住まなくてもと思うが、なんの利便性あってなのかはイマイチ判然としない。


因みに、キュモールがキュモールと呼ばれている意味は恐らく爵位を敬称略みたいにしてるんだろう。

だって、アレキサンダー・フォン・キュモールということは、名前はアレキサンダーという事になるのだ。

日本語のように、名前が後に来ている訳ではない。

その証拠に、他の人は皆そうだアレクセイ・ディノイアはアレクセイ。

ユーリ・ローウェルはユーリ、エステリーゼ・シデス・ヒュラッセインはエステリーゼ。

皆頭に名前が来ている、ということはキュモールはファミリーネーム(苗字)ということになる。

こんなところでも仲間はずれって……。



「さて、確か……彼女の家は、って!?」



門から直接繋がる広場から、右側(西)に向かい家並みを見ていると、下へと続く螺旋の道が見えた。

これがリタの家に向かう道だろうと当たりをつけて進んでいたところ。

家の前に金髪の騎士と栗毛に近い金髪の女性騎士がいた。

金髪はこれぞ主人公といった感じの甘いマスクの二枚目。

女性騎士は左側の髪を少しだけ編み、右目の下に泣きぼくろがある。

この2人は間違いない、フレンとソディアのコンビだな……。


ゲーム内容と同じ事をしているなら、リタに誘いをかけて断られている最中だろう。

とすると……マズイな……。

見つからないように……と思ったこともありました。



「誰だッ!!」



交渉をしているのだろう、こちらに注意が向いていないフレンの代わりにソディアが俺を見つけた。

もちろん、普通上の方から見下ろしている俺は、道から顔の一部が見えているかもしれないという程度。

音だってしないように気をつけていたし、キュモールの鎧はアレだから擦れて音がなったりはしない。

気配を察する能力でもなければ、後ろを向いていた彼女が俺に気づくはずはない。

しかし、見つかったものは仕方ない。



「誰だとは、ご挨拶ですね」

「貴様は!!」



来たのがキュモールだと知って余計に警戒するソディアを俺はあえて無視し、

振り返ったばかりのフレンに声をかける。



「フレン、部下の躾くらいきっちりとしておけ」

「はっ、申し訳ありませんキュモール隊長」



この時点においてはフレンはまだ小隊長に過ぎない。

腹の中でどう思っていても、隊長であるキュモールには逆らわないだろう。

ソディアはそれでも睨みつけてくるが、フレンに無理やり頭を下げさせられる。


やはり真面目だな、フレンは。

いや、キュモールに下手につっかかって部下に被害が及ばないように気をつけているだけか。

まあ、彼らにとって俺はまさに騎士団の腐敗の象徴でもあるし、当然だが。

となれば、俺もまたあまり自分を出すのは控えないといけない。

フレンはまだいいが、ソディアに下手なことを知られると、ユーリの変わりに刺されかねない。

ソディアはフレンの正義は信じているが、フレンの身に危険を及ぼす可能性の高い事は正義だろうと攻撃してくる。

流石にユーリのように嫉妬で刺される事はないと思うが。



「所でキュモール隊長、ここへはどの様な御用で」

「そのようなこと、この場にいる時点でわかるだろう。

 これだから下民あがりは……」

「貴様!!」

「控えろッ! ソディア!」

「はっ、はい……」



実際、ユーリにしろフレンにしろ下町出身者が騎士になれている。

おそらくはアレクセイが後々のために、貴族の力を弱めておきたかったからなのだろうが。

それでも、帝都では雇用が正常な状態にあるということになるな。

それはともかく、丁度いい。このままリタに会わせてもらおう。



「お前たちも丁度追い出されていた所のようじゃないか。

 こちらの要件を優先する、暫く離れていろ」

「……分かりました」

「……」

「ソディア、行こう」

「はい、フレン様」



あんまり目立つ行為はしたくなかったんだが。

とりあえず、フレンに嫌われている間は無茶苦茶をしなければソディアに刺されないだろう。

とにかく、あのヤンデレだけは警戒しないとな。

そうじゃないなら、フレンともう少し仲良くなるのも手なんだが。

まあ、フレンが警戒してそうそう信じてはくれないだろうけど。


ともあれ、ようやくリタ・モルディオの家までやってくることができた。

まあ、キュモールだから好かれる事もないんだろうけどね……。

それでも、彼女に信用されないまでも何かあった時に役に立つという程度には理解してもらいたい。

それも一度では難しいだろうが。


とりあえず俺は扉の前に立つと、ノックをしてみる。

暫くノックを続けると、中から声がした。



『何よ、うるさいわね! 開いてるから適当に入ってくればいいでしょ!

 でも同行の件ならお断りだからね!

 ハルルの結界魔導器(シルトブラスティア)くらい、魔導士だったら誰でも直せるわよ!!』

「こちらは別件だ」

『へぇ、面白いわね。でもつまらない用件だったら叩き出すから』



俺は、許可を得てリタの家に入る。

リタは二階にいたようで、ゴソゴソ音がしている。

頭は出しているがローブに体は完全に隠れていてサービス度は低めだな。

アスピオ内ではやはりこの格好なのか、仕方ない。

俺は入口でそのまま待つことにした。



「しかし、今日は千客万来ね〜って、アンタ、なんて格好してるのよ!!

 変態じゃないの!? キモっ!」



うぐ!?

そりゃー、確かにこの格好もセンスもひどいと思うけどさ。

ここまで真正面からはっきり言われると……。

泣けてくるわ……。



「これにはいろいろ理由があるから許してくれ」

「ぷっ、どんな理由があったらそんな格好しなくちゃいけないのよ」

「この格好じゃないと部下がいうことを聞いてくれなくて」

「なにそれ、私を笑い殺す気!? プププ、アハハハ!!!」



そこまで言わなくても……流石、容赦ないなー。

彼女の初めての友達、エステルが来るまでは人に気を遣うなんてしなかったんだろうけど。

まぁ逆に、掴みはオッケーとでも思うしかないな。

警戒心は流石に低下したようだから。



「それで、どんな用件なの?」

「用件ね、結構深い話になるから信じてくれとは言わないよ。

 だけど、心の隅にでも留めておいて欲しい」

「へぇ」



リタが興味を示してくれたのはありがたい。

まあ、そうでなかったとしても次の言葉でなんとかするつもりだったが。



「君が研究しているのはリゾマータの公式だよね?」

「なっ!?」

「リゾマータの公式を研究するなら、もう数日したらやってくるエステルを研究するといい」

「何が言いたいのよ」

「彼女は、魔導器(ブラスティア)なしで回復魔法を使ってみせた」

「それ本当!?」



流石に食い付きがいい。

なら、もう一つくらい情報を流しておくのもいいだろう。



「ええ、後は始祖の隷長なんかも研究するといいんじゃないかな」

「なんでよ?」

「エアル溜まりって知ってる?」

「聞いたことはあるけど……」

「彼らはそこからエアルを吸収することでエネルギーを得ている」

「そんなこと、どうしてわかるのよ?」

「闘技場都市 ノードポリカにはベリウスという始祖の隷長がいる。

 話すこともできるから、聞いてみたらどうだい?」

「なるほど……まあいいわ、嘘かどうかはエステルって子に会えばわかる事よね。

 それで、アンタはその情報の見返りに何が欲しい訳?」

「別に、リゾマータの公式を出来るだけ早く完成させて欲しいだけだよ」

「ますます、胡散臭いわね」

「それならそれでいい、どうせ確かめるだろう?

 ならこっちの用件は終わったよ、それじゃあね」



俺は、さっさとおさらばする事にした。

正直、印象をよくするのは難しいし、一応言うべきことは言ったからだ。

これで少しくらいは研究の速度があがるかもしれない。

ほんの少しの差が成功失敗を分ける可能性すらあるからな。

特に、バタフライ効果でユーリ達の行動スピードが遅くなったときに重要だ。

だが、俺は生き残るためにバタフライ効果に遠慮する気にはなれない。

場合によっては精霊についても話してもいい。

もっとも現状では胡散臭いどころの話ではなくなるので遠慮したが。



「待ちなさいよ」

「なんだ?」

「アンタの言うことが間違ってたら文句を言いに行きたいから。居場所を教えなさい」

「俺はヘリオードの執政官に任命されてね。これから向かう所だ」

「アンタの名前は?」

「アレキサンダー・フォン・キュモール」

「名前までキモイのね。キモール、覚えたわ」

「いや、キュモールだけどね」

「そんなのどっちだっていいでしょ」

「……そうだな、それじゃ」

「ええ、アンタの言ったことが当たらない事を祈ってるわ」



当たらない事をね、俺に言われたのが嫌なのか、自分の理論の先を言われたのが嫌なのか。

単に俺がキモイ格好だから嫌なのか、何とも言えないが考えるのはよそう。

キモイのはわかってるけど、やっぱり傷ついたし……。

さっさと、馬に乗ってカプア・ノールに行こう……orz



俺は、ハルルには寄らずにそのままカプア・ノールに向かう。

途中出会ったモンスターは、貴族の金の力で購入した割と強力な武器でなぎ払い経験値稼ぎをしながら進む。

フレンは多分、1日か2日アスピオで留まっているはずだ。

盗掘の件でシャイコス遺跡に行くだろうし、ちみっこ学者ことウィチルを連れて行かないといけない。

ということは、多分ユーリ達はまだハルルにいるはず、正直鉢合わせはゴメンだ。
 
そりゃ、エステルもリタも可愛い子だが厄介事が多い、あんまり味方するとアレクセイに消されるしな。

今回の件も実はすれすれかもしれない、門番らが変な報告を上げてなければいいのだが。



エフミドの丘まで突っ走り、海を見て一息。

晴れた日に見る海はやはりいい、俺の知る海と比べてもマリンブルーが深くて綺麗だ。

さて、ここからが問題だラゴウとは多分敵対関係にはないはずだが、やっている事に対しては苛立っている。

というか、原作のラゴウとキュモールは民衆の敵そのものだったな。


出来れば何とかしてやりたい、そして俺には部下が20人もいる。

実際ラゴウを止める事は不可能じゃない。

だが……それをした時のリスクが大きすぎる、

ラゴウの背後には紅の絆傭兵団(ブラッドアライアンス)という傭兵団がある、彼らを敵に回すだけの力はない。

それに、ユーリ達がパティと会うイベントがなくなる、まあいなくても問題ないかもだが。

だけど、皇帝候補のヨーデルを俺が助けてしまうといろいろ問題が大きくなる。

確実にアレクセイが俺を危険視するだろうし、評議会と騎士団の軋轢に巻き込まれる。

つまり評議会に睨まれながらアレクセイ率いる騎士団にも居所がなくなるダブルパンチ。

ヨーデルには申し訳ないが、ユーリが来るまで待ってもらうしかないか……。

騎士を何人か残してユーリのサポートをさせたい気もするが、まあ全員貴族だから無理だろうな……。



「考えても仕方あるまい、それよりもヘリオードに急ぐか」



俺は、そうつぶやくとカプア・ノールに向かう。

部下は宿屋できちんと待っていてくれた。

ただ飲み食いや色等で結構使ったらしく持ち出し資金の1割を超えて使っていた。

まあ、現地に行けばそこそこあるだろうから気にしなくてもいいかもしれないが。

ただ、ヘリオードはヘリオードで開発途中の町だからさほど期待しないほうがいいだろうが。


今、一番の問題はラゴウとキュモールの関係が裏帳簿に書かれていた事から予想される通りかどうかだ。

アレクセイが気に食わないキュモールだから充分ありうるとは思うが……。

多少は貢いでおく必要もあるかもしれない。



「キュモール隊長!」

「おお、ラパンか」



キュモール隊副隊長ラパン、まあ原作では名前なんて出ていないモブだが、とりあえずまとめ役である。

俺がいない間のキュモール隊の統括をしてくれている。

まあ当然ながら貴族で、更に上に弱く下に強い典型的な木っ端役人タイプだ。

それでもキュモール隊の中ではマシな方なので、そのまま使っている。

何とか、本当に実力のある部隊が欲しい所だが、今のところは無理だろうな……。



「ラドウ殿との面会は可能か?」

「一応伝えておきましたが、傭兵達がきちんと話を通したかどうか」



全く、天候をずっとジメジメした雨の状態に留め置くだけでもうっとおしいのに。

領民をいじめて、権威を自慢して……こんなんじゃ、評議会でも鼻摘みものだろう。

ラゴウも権威が強いのは家系によるところが大きいから、彼自身の手柄はない。

だが選民思想の権化のような人物だから当然と居座り、そして好き放題権力を使っている。

高い税金で傭兵を雇い、民をおもちゃにする絵に描いたような悪役。

俺も、キュモールの立場である以上同じものだと思うと、むかついてくる。



「わかった、なら向かうぞ。全員ついてこい」

「了解しました! キュモール隊整列!!」

「「「「「「ハッ!!」」」」」」



紅の絆傭兵団の傭兵だらけのラゴウの屋敷だ、数を揃えて威圧しなければ取次ぎも難しいだろう。

その時、いろいろやっていたのは事実だがまさか根本的間違いがあるとは思っていなかった。

そう、重要なポイントを見落としていた事に気づいたのは全てが終わった後だった。

小賢しく立ち回ろうともキュモールは所詮キュモールなのだということを……。










あとがき

とりあえず、キュモールにいろいろ動いてもらいました。

まぁ、知識に頼りっきりなところもありますが、いろいろ出来たかな?

ただ、裏設定など知らないことがまだ多く矛盾もあるかもしれません。

できればお教えいただければ幸いです。



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