テイルズ・オブ・キュモテリア 第四話 海凶の爪(リヴァイアサンのつめ)


紅の絆傭兵団と相乗りなのは気に入らないが、

すぐに襲ってくるような事もないようなので無視する事に決める。

持ち込んだ資金の現状を確認したいという点もあった。

目減りしていくのが目に見えているものだから領地経営をするためにも使いきらないよう注意が必要だ。



「ラパン今残っているのはこれだけなのか?」

「はっ、はい! 宿泊関連で思いの外使ってしまい……」



嘘つけ! 目減りした額はどう見ても20万ガルドくらい。

温泉郷 ユウマンジュを除けばせいぜい水と黄砂の街 マンタイクの一泊400ガルドが最高だ。

それを基準にしても20名が一人一部屋使って1万6千で3日ほど泊まったとしても2万4千ガルド。

もっと言えば、一部屋は1パーティまでなので普通はもっと安い。

つまり、豪遊していたのだろう、俺の目が届かないのをいいことに。

やっぱ、キュモール隊だよな……。

資金として持ってきた100万ガルドの2割も削ってくれやがって。



「今回だけは大目にみるが、指定額の倍は使ってくれたということだな?」

「もっ、申し訳ありません。キュモール様!」

「ふん、節約せよとまでは言わないが。豪遊していられる余裕はないぞ」

「は! 以後綱紀粛正に努めます!!」



返事だけはいいが、恐らく改める気なんぞないだろうな。

むしろ、以前のキュモールは率先して豪遊していたんだろうから。

お前が言うなという心情も理解できなくもない。

といっても、今後ずっとこんな調子では困る。

金を儲けるシステムを作ってもこいつらが食い潰す可能性は高い。

31人全員揃うと更にひどくなるかもしれない……。

なんとかしないとな……。



「キュモール隊長!!!」

「どうした!?」


突然、隊の一人が部屋に駆け込んでくる。

明らかに息も荒く、動転しているのがわかる。

俺は近くにあった水差しからコップへ水を入れると差し出し。



「これでも飲んで落ち着いて話せ。どうしたんだ?」

「んぐ、ゴクッ、ゴクッ……ぷはぁ!

 あっ、ありがとうございます。

 実は! 甲板の上にモンスターが!! 既に紅の絆傭兵団が迎撃にあたっていますが……」

「芳しくないと、使えない奴らね。

 全員集めなさい! キュモール隊出るよ!!」

「はっ!!」



オカマ言葉にしたほうが効果があるのは泣けるが、この際そんな事を言ってもいられない。

甲板の上で見たのはホークとアクアテスアサシン。

俺の記憶が正しければ幽霊船アーセルム号にいたモンスターだ。

どちらも十レベル台、数は30前後、紅の絆傭兵団が苦戦している所を見るとレベルが高いのかもしれない。

アーセルム号が近くに来ているのか?



「キュモール隊突撃!」

「「うぁぁぁ!!」」



突撃したことで、いきなり負傷者がでたりしている。

敵の攻撃に自分から突っ込んだ馬鹿がいるようだ。

まー元よりキュモール隊は弱い。

ただし、貴族の部隊を舐めてもらっては困る。

現在80万ガルドしか残っていないのには別の理由もある。

それは、装備だ。

資金力に物を言わせていいものをそろえさせた。

贅沢品買ってる暇があるなら武具を揃えるべきというわけだ。

ミスリルソードやダマスカスソードを装備し、防具もミスリルプレートやレアプレートを装備している。

はっきり言って、負傷してもかすり傷以上にならないし、一撃で屠ることができる。

戦闘経験の不足から命中率は低いものの、除々に押していく事となった。



「よーし! 勝鬨をあげろー!!」

「「「おおおお!!!」」」



勝った俺たちを見る紅の絆傭兵団の目は冷たいが、船員等は感謝の意を表明してくれた。

最終的に、幽霊船のほうは近づいて来なかったようだ、ありがたい。

やっぱり俺のイベントなんてこんなものか……。

と、そう思った時。



「おーなんと、いい武器をもっておるのじゃ! でも使い手はへっぽこじゃのー」

「……」

「んー? なにか言いたいことがあるのじゃ?

 うちが聞いてあげないこともないのじゃ!」

「何でここにいるの?」

「なんとなくなのじゃ!」



にぱっと笑って両手を広げ、小さな金髪おさげの女の子が笑う。

海賊帽子に海賊風のコートをつけた少女。

うん、パティですねわかります。

何でこのタイミングでここに?

むしろこれからカプワノールに向かうならわかるが……。

と、そんな事を考えていると。



「キュモール様に対し無礼だぞ!!」



部下の一人が暴発したようだ。

紅の絆傭兵団に対しては何も言わないのに、幼女には強気。

流石はキュモール隊だが、こんなところでユーリの反感を買うのはゴメンだ。



「子供にいちいち目くじら立てるんじゃないわよ。

 ほら、さっさと引き上げるよ」

「はっ、はい!」

「むぅ〜つまらないのじゃ」



俺は大きな身振りで隊に指示を出す。

パティと話してみたいと言う思いはあるが、現状それは難しいだろう。

ともあれ、メインキャラの一人に会えたのは少しうれしかった。

ただキュモールとしてはそうそう仲良くも出来ない子でもある。

彼女にはしっかりとユーリについて行ってもらわねば。











ともあれ、カプワ・ノールからカプワ・トリムまでの船の旅は特に何事も無く終わった。

少し驚いたことがあるとすれば、パティがまたいつの間にかいなくなっていたことくらいか。

まー神出鬼没なキャラのことを考えても仕方ない。

トリム港で一泊泊まり、亡き都市 カルボクラムを迂回し、新興都市 ヘリオードへ。

そういえば、本来はカルボクラムでユーリ達の邪魔をするんだが、

その時へっぽこルブラン小隊も一緒にいたはずだな……。

急いできたせいで置いてけぼりにしてしまったか?

まー、ある意味仕方ない、花の街 ハルルで差をつけないといけなかったからな。

多分小隊だけでも追いついてユーリ達の邪魔をしてくれるだろう。

ギャグ要員だし、その辺はあまり心配してない。


そんなことを考えながら数日、ヘリオードへとやってきた。

新興都市 ヘリオードは新興というかそもそも、開発中って感じだ。

都市の半分もまだ出来てはいない。

しかも、出来ている部分もまだ完成度は低い。

上部分と下部分に分かれていて、一般人を呼び込んでは下で働かせている。

そして、ポイントが溜まったら貴族にすると嘘をついてやる気を出させているのだ。

もちろん、原作のキュモールにその気はないし、またその権限もない。


キュモールは基本的に階級こそ高いが、法衣貴族なのだろうと思われる。

理由は単純で、新規に都市を与えられて管理するということは、領地を持っていないということだからだ。

普通、領地持ちが加増したとしても直接管理、それも国から預かった騎士を連れてと言うことはありえない。

部下を送り、私兵を使って管理するだろう。

つまりは、キュモールは現執政官、つまり代官にすぎないということだ。


幸いにして、貴族にする発言そのものもキュモールの発言なので、撤回は可能だろう。

代案は必要だろうが。


だが、一番の問題は……。



「OH! マイロード! 長くウエイトしてマシタ!」

「イエガー、久しぶり」



そう、海凶の爪(リヴァイアサンのつめ)首領イエガー。

こいつこそ、アレクセイがキュモールを監視するために送り込んだスパイ。

まーキュモールの監視だけが仕事ではないだろうが、この際それは置いておく。

どちらにしろ、イエガーだけでも厄介だが、ここにはゴーシュとドロワットや雑魚も多数来ている。

正面から戦えば数の差でなんとかなるかもしれないが、質に於いては負け確定だしな。

特に、イエガーとゴーシュ、ドロワットの3人に敵う人材はキュモール隊にはいない。

無論俺もかなりレベルは上がったはずだが、難易度は高いだろう。



「街の進捗率はどう?」

「ノウ、プロブレム! ナイト達もヴェリーカインドに進めてマスネー」

「そう、だったらそちらの仕事は?」

「ソーリー、マンパワーが足りマセーン」

「人出の用意は考えておく。きっちりやってるなら今は急がなくていい」

「いいのですカー? ナイトマスターアレクセイはワンムーンくらいでゴーよ?」

「その辺は考えがあるから。後で執務室に来なさい」

「YESマイロード!」


去っていくイエガーを見てふうと一息。

一応街の進捗も聞いたが、こいつらにとっちゃ関係ない話だろうしな。

そしてもう一つの事は当然ながら、武醒魔導器(ボーディブラスティア)収集を含む武装や街の拠点化。

こっちは恐らく、イエガーが本気になればあっという間にできるだろう。

それをしないのは、アレクセイにあまり肩入れしないように言われているんだろうな。

当然、供給される武醒魔導器(ボーディブラスティア)もあまり使い勝手のいいものは少ないはずだ。

ただ、原作ではキュモールがダングレストへの攻撃をかけるのを誘導してやらせていたフシもあった。

それだけ、アレクセイにとってギルド連合というのは厄介だったのだろう。


「何枚舌を持ってるかわからないな」



俺は、早速執務室に行く。

騎士団の建物は流石にそこそこ大きく、団長の執務室も悪く無い。

だが、俺は早速座り込みため息をつく。


「ここが正念場だな……」


キュモールである俺が生き残れるかどうかの瀬戸際だ。

ヘリオードを改善するための手をうつためにひと月くらいは早く来たはずだが。

そして、きっちりとは分からないが、2ヶ月以内にはユーリ一行もアレクセイ一行もこちらに来る。

更に、アレクセイがこちらに来た時にコゴール砂漠への出向命令が出るはずだ。

つまりは、俺に残された時間は2ヶ月弱ということになる。

当面の問題はつまりイエガーの目をくらませながら、どれくらい街を正常化するかということに尽きる。

イエガーはアレクセイにつながってるから、イエガーに俺の変心を感づかれるのは不味い。

最低でも、アレクセイがここに来る時はまだ馬鹿だと思ってくれていないと殺されかねない。


だがこのままにしておくのは、問題外だ。

何せ、ここをこのままにしておくと、例えコゴール砂漠で多少挽回しても良くて牢獄行きだからだ。

殺される可能性も否定できない。


「俺そんなに頭良くないってのに……。

 やっぱ軍師がいるな……、誰かいたっけか?」


映画版にガリスタ・ルオドーとか言うのがいたが……。

アビスのジェイドっぽい見た目と小物ボスにしか見えない行動で軍師失格だし、もう死んでるし。

どうしようもない、まーパラレルだって言われてたのでいたのかどうか微妙だが。

やっぱいないよな……そもそもこの世界、力技が全てみたいな所あるしな……。


そもそもイエガー自身本当はユーリ達の味方になりたかったと思われる。

実際何度か助けているし、ゴーシュとドロアットにもそういう事をさせたくなかっただろう。

彼は2つの問題があってアレクセイについている。

一つは心臓がアレクセイ作のヘルメス式魔導器であるため、生死がアレクセイに握られていること。

もう一つは、ゴーシュとドロアットのように守りたい存在がいること。

アレクセイの人脈を持ってすれば隠れるのは難しいし、騎士団でも派遣されれば守るべき者の命はない。

主に後者の理由でアレクセイに従っているのがイエガーの現状だ。


「つまりはまあ、イエガーの守るべきものを守ってやれれば味方してくれるかもしれないが……っ!」


半ば無音で扉が開く、そこには先程から頭を悩ませていた原因であるイエガーがいた。

不味い……聞かれたか? いや、聞かれただろうがどのあたりまで?

一部でも不味い……殺されるかもしれん……。


「どうされたのですマイロード! ミーの話題をトークされていたようなので、INしましたが?」

「勝手に入らないでほしいな」

「デスが、この方が互いにスピィディーなのでは?」

「っ」


イエガーは武器こそ出していないが、俺に対して威圧をかけてきている。

俺は半ばションベンを漏らしそうになったが、どうにか踏ん張る。

どうせ、戦闘においては全くかなわない事はわかっている。


「なあに、最近考えが変わってね」

「ホワイ?」

「色々な情報を手に入れて、思うことがあったってことさ」

「それで、マイロードは一体どうシンキングしたのです?」

「このままじゃ僕はどうあがいても死ぬと言う結論になった。

 正直、もう騎士団長とかどうでもいいから生き残りたい」

「ファッッ!?」


もうやけくそである。

だってあの話を少しでも聞いてたなら俺の考えが今までと違う事は気づいてるだろうし。

今更隠すより、こいつの良心に訴えるほうが助かる率は少しでも高いと言う打算はあったが、

そんな甘いやつかどうかは微妙なところだ。

命を天秤にかける真似はしたくないが、大失態のリカバリーなんてもう思いつかない。


「アレクセイに変わって騎士団長になるっていうのが僕の夢だったんだが。

 そもそも、アレクセイは僕を泳がせていた事に最近気づいてね。

 いろいろ調べたのさ、すると僕はこのままだと馬鹿やらかしてアレクセイに粛清されるという結論になった。

 だけどそれで終わりじゃ無い、僕が道化師をやめたからってあいつは放置してくれないでしょ?」

「さあ? アイ・ドント・ノウデスネー」

「さっきの話を聞いてたんだろ?」

「フウ……マイロード、ナウの話はライフをダウンさせマース」


目つきが更に鋭くなってきた……やばい!!

もう、マジ殺すって目だ……。

泣いて謝りたいが、震える手をどうにかこらえ言い放つ。


「僕には君に命を預ける事しか出来ないさ」

「ッ!」


ビュンと風音が鳴った、俺の胸がざっくり切り裂かれる。

俺は……死ぬのか?

熱い……やはり、イエガーはそんな甘い奴じゃなかったか……。

駄目だな、下手な……策士気取りなんて通用しない……。

意識が……ん?


「死んでない?」

「マイロードはミーの大事なお客様ネ。デスするわけがないのデス」

「しかし……」


確かに、死んではいないが……浅く血は出ている。

この辺モンスターを相手にして少しはなれたつもりだったが……。

恐らくはイエガーの気迫に飲まれたんだろう。

殺気と血によって死んだと思い込まされたのだ。

だが、俺は死んでない……合格したのか?


「ゴーシュ、ドロワット出てきなさい」

「ハイ!」

「お側に」

「実はマイロード、いいスピリトがゲットされまして。一緒にドリンクしませんか?」

「それはいいな」


ゴーシュとドロワットは俺の執務机からささっと書類をどかせると、琥珀色の酒をグラスに注いだ。

見た目からするにウイスキーのようなものか?

うろ覚えだがスピリトっていうのは蒸留酒を指した気がする。

俺とイエガーはグラスに注がれた琥珀色の液体を飲み干す。


「ふう、かなり度の高い酒だな……」

「はい、実は私酔ってしまいました」

「なるほど酔った時のしゃべり方のほうが聴きやすいとはね」

「まー酔っぱらいの戯れ言なので聞いたことはすぐ忘れますが」

「それはそれは」


これはつまり、イエガーはアレクセイにこれからの会話を報告しないということだろう。

しかし、やはりというか普通に喋れるようだった……。


ともあれ、俺は腹芸に付き合えるレベルの会話ができるのかは難しいが。

まずは条件を良くしておかないとな。

わざわざ手札を切って見せてくれたのだから。


「だけど、この子達が報告をしたら酔っぱらいの醜態が晒されるよ?」

「それは大変ですね、もしや投獄ですかな?」

「そうだな、投獄するか」

「いっ、イエガーさま!?」

「ドロワット! 黙りなさい!」

「ゴーシュ!?」

「いいから!」

「う・・・うん」


ゴーシュには分かったのだろう。

2人を俺につけるという隠語であることが。

2人を呼び出した時点でそのつもりだったのは間違いない。

流石に俺が気づかないほど馬鹿なら放置された上でアレクセイに報告されたかもしれないが……。


「安心して酔っぱらえるなこれで、おかわりいいか?」

「はい、それでは私も」


さて、本番という事になる。

イエガーはかなり踏み込んできている、多分俺のような存在でも気にはなっているんだろう。

元ネタを知ったらあっさり殺しかねないが、それを教える気はない。

だから、一応は今のところ安泰かもしれない。

ただ、この後の会話次第ではその安全も吹っ飛ぶ可能性はある。

冷や汗はまだ引いてくれそうにない。


「さて、話すべき事があるとすれば、私は始祖の隷長(エンテレケイア)の一体と対面したことだろうな」

「ほう、始祖の隷長(エンテレケイア)とですか、しかし、特別そういう機会があったとは思えませんが?」

「そうだな、普通の始祖の隷長(エンテレケイア)ならな」

「普通ではないと言いますと?」

「大戦にも参加していなかった、肉体を持たない始祖の隷長(エンテレケイア)がいた」

「まさか!?」


流石に驚いただろう、本当はいないものな。

だが、この場合はちょうどいい、悪魔の証明で回避できるからだ。

知られることのない存在がいたかいなかったか、証明できるやつはいない。

だが、信じさせるのは難しくない。


「存在の証明は置くとしようじゃないか、これから言うことを聞けば判ることだ」

「そうですね」

「その存在は通りかかった瞬間、私に前後それぞれ10年くらいの知識をおいて行った。

 その中で、過去の出来事は証明するのは容易い。

 先ず、イエガー、君の恋人の話をするか?」

「……いいでしょう」

「名前はキャナリ、10年前貴族と平民を分け隔てなく採用した特殊な小隊の隊長だった。

 君はそこの隊員で恋人、もう一つ言うなら副長は今の第一騎士団長シュバーン。

 当時の名前はダミュロン・アトマイス、アトマイス家の次期当主のはずだった男だ。

 そして、彼女は最後ダミュロンを守ろうとして死んだ」

「……ッ!!」

「キサマ! イエガー様になんてことを!!」

「殺す!」

「やめなさい!」

「「!!?」」


俺はまた首筋に剣をつきつけられていた。

というか、既に体から血が滴っている。

あと少しイエガーが止めるのが遅ければ死んでいたかもしれない。

ちょっとちびったぞ……(汗)

だがここで弱気な顔は見せられない、震えが完全に止まった訳じゃないが、次の言葉を発する。


「彼女らも戦地で助けた孤児、そして、今はカプワノールに救児院を作り寄付している?

 違うかな?」

「いいや、よく調べたというべきですかね?

 だが、それだけでは過去と未来がわかると言い切れない。

 今のマイロードには分かっているのではないですか?」

「例えば人魔戦争は人類が勝ったというよりは、人類講和派の始祖の隷長エルシフルが勝ったとか。

 大戦時に死んだアレクセイの友人ヘルメスが作ったヘルメス式魔導器が君の心臓の代わりとしてるとか。

 エルシフルはその力を恐れた人によって暗殺されたとか。

 デューク・バレンタイはそのことに失望して皇帝の証・宙の戒典(デイン・ノモス)を持ち去ったとか。

 アレクセイもまた、失望して人類を管理する存在になろうとしたとか。

 君が実はアレクセイのコマだとか、これくらいでいいかい?」


俺は知る限り、イエガーに関係ありそうな過去の出来事を伝えてみた。

正直オレの切り札はこの知識だけだ。

戦闘力はおそらく、本来のキュモールよりは少しマシかもしれないが、所詮雑魚である。

レベル差でそこまで強くはなれないだろうな……。


「ふぅ、背筋が寒くなりますねー、いいでしょう。当面信じておきます」 

「よろしく頼む」

「それで、私を救うとは何なのです?」

「そろそろアレクセイを見限りたいんじゃないかと思ってね?」

「ほう……それは未来のほうの知識ですか?」

「否定はしない、この世界を動かす鍵はユーリ・ローウェルとその仲間達だ。

 そして、君はこの先何度か彼らを救うことになる」

「そして、それが知られてアレクセイに殺されるとかですか?」

「その通り、というか捨て駒にされるが正しいかな」

「なるほど」


ありそうだとは思っているんだろう。

実際この頃は既にアレクセイから心が離れ始めていたはず。


「見返りに求めるものは何ですか?」

「もちろん、これから好き勝手動きたいが、アレクセイに報告されると不味い。

 そのためには、君を抱き込む必要があったからね」

「……」


無言でグラスを置くイエガー。

何度か継ぎ足していた酒がもう残っていない。


「ハッ、マイ・メモリーが飛んでいる!?

 最近、メモリーが怪しいのです、とりあえず報告は昨日シンキングしていたものにしましょう!

 ゴーシュ、ドロワットあなた達はギルティが晴れるまでそこにいなさい。

 マイ・ロードを守ってくださいね」

「「了解しました!」」



そう言うと、イエガーは執務室から出て行った、言われたとおりゴーシュとドロワットは部屋に残る。

とりあえず、警戒はされているかもしれないが、殺されずに済んでよかった……。

2人がいる間はため息すらつけないが、イエガーがいなくなって少し気が楽になっているのは事実かもしれない。









あとがき

イエガーをこんな簡単に仲間に出来るのかと言われると疑問なのですが。

実際、これ以上手がなかったというのも事実でして……。

なにせ、イエガーほどフットワークのいいキャラはいませんしね。

主人公にとっては、命綱になりうるキャラであると思って無茶させました(汗)



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