テイルズ・オブ・キュモテリア 第五話 新興都市ヘリオード


イヤッフー、今日もハイテンション!

皆のアイドル! キュモールよぉん?

今日は皆に私の大事な所見せてア・ゲ・ル!

おえぇぇぇ……orz


とまあ、酷い1コマはさておき。

イエガーの当面の協力をとりつけゴーシュとドロワットを貸してもらった俺は次に取り掛かる事にするのだった。

いやま、キュモール隊30名は皆貴族だからコマとして使いづらいということもあるんだけど。

特に見張りとか地味な仕事をさせると傲慢さばかりが目につく。

かといって、他の仕事を頼もうにも彼らは自分で何かをするということが苦手だ。

中には指揮能力の高いのとかもいるんだけど、戦闘能力はからっきしのが多い。

装備でごまかしてはいるが、この街の防衛がせいぜいだろう。


「といっても2ヶ月で出来る内政なんて知れてるけどね……」

「あまり独り言を言うな」

「キモいだけじゃなくて馬鹿なの〜?」

「……」


ゴーシュとドロワットは表向き俺の秘書となった。

実際は俺への監視兼護衛といったところだろう。

もしも俺が変なことをするなら殺される可能性もある。

逆に要求を満たしている間は護衛してくれるだろう。


ともあれ、内政で最初にすべきなのは貴族詐欺のところだ。

しかし、やる気を奪うのも不味い。

だからその中間を上手くしなければならない。


「やはりこれでいくか。出かけるぞ、2人とも外では大人しくしておいてくれよ」

「はい」

「それくらいわかってるって!」


多少不安はあるが、まーもともとキュモールの奇行は認知されてきたのだ、今更ではあるか。

先ずは騎士宿舎にある広間に騎士たちを集めて朝礼の真似事をする。

まー30人と言っても俺はもともと人の上に立つ人間ではないから、緊張はするんだが。


「キュモール隊の諸君、実はアレクセイ騎士団長から手紙が来ていた。

 内容はこうだ、貴族の任命権のないものが、貴族にすると約束したらしい。

 それをしたものへ罰を与え、市民に真実を伝えよ。

 だそうだ、せっかく下民共が上手く働いていたのに現場を知らない奴はこれだから!」


俺は怒ってみせた、回りは皆キュモール隊だから別に強引にやってもいいんだが、あんまりかけ離れると離反が出る。

それで密告でもされたらどうしようもないしな。

鬱憤はアレクセイに向けてもらったほうが有り難い。


「それで……、どうなさるのですか?」


副隊長ラパンが代表して聞いてくる。

まあ、当然だろう俺がはっちゃけて困るのはこいつだし、逆にはっちゃけなさすぎても困るのはこいつだ。

最悪下克上を狙っている可能性が高い。

だがま、今回は代案で満足してもらおう。


「なに難しいことじゃないよ。貴族がダメならそれに近い恩恵を約束すればいい」

「といいますと?」

「それはもちろん……名士だ」

「名士?」

「それについては、お前たちもでついてくれば判ることだよ」


そうして俺はキュモール隊を伴い、広場に集まっている市民達の前に出る。

原因がキュモールである以上、これこそ俺がなんとかしなければならないことのトップだろう。

ざっと見て千人程もいる市民達の前で語るのは厳しいが言わねばならない。

何せ、俺がそう言ったのが原因なのだから。


「皆の者、街作りご苦労である。大工でもないそなたらが努力して作ってくれている街は形になりつつある!」

「「おおおお!!!」」


皆凄い勢いで返事をくれる、野意気込みはかなりのものだ。

そりゃ貴族になれると言われればこうもなるか。

それだけに、申し訳ないがこの際泥は回りにひっかぶってもらおう。

特にアレクセイにはな。


「だが、残念な知らせを届けねばならない」

「??」

「なんだ?」

「え、もしかして?」

「騎士団長アレクセイ閣下に申請していた貴君らの貴族への昇格ははねつけられた」

「なっ!?」

「馬鹿な!!」

「何のために殆ど賃金もなく働いたと思ってるんだ!!」

「金を出せ!!」

「俺たちを貴族にしろ!!」


予想通りのブーイング。

まあ、俺のせいじゃないが、やはり突き刺さるものがあるな……。

だが、このままにしておくことは出来ない。

だから。


「そこで、先ず今までの働きに応じて金を払う。ゴーシュ、ドロワット。頼んだぞ」

「へいへ〜い」

「了解」


とりあえず日当及び、働きぶり(イエガーが届けてくれた資料にあった)に応じて払いを済ませる。

怒っていても金を叩きつけてくる人間は少数だった。

まあ、いても無理矢理ねじ込んでいたのでご愁傷様だ。


「だが、貴族にこそ出来ないが。この町の名士にすることは出来る」

「なんだ?」

「どうせ、名目だけなんだろうが!!」

「バカにしてんのか!?」

「馬鹿に等していない! 貴族と同じにしてやるといっているんだ!」

「「「「!?!?」」」」

「確かに名士は格では貴族に劣るだろう、この街でしか通用しないからな。

 だが、貴君らが欲しがっていたものは貴族の名誉と権力と年金じゃないのか?

 名誉はこの公園にでかでかとした石碑を立てて讃えよう。

 権力はこの街の運営に参加することで、あげられる。

 年金は石碑に名前が刻まれた者に出し続ける事を誓う!

 これで、貴族とほぼ等価となった! 何故なら貴族でも下っ端は年金もらっても生活に困る程度だからだ。

 貴君らはこの街にいる限り、生活は保証され、名誉ある存在でいられる。

 どうだ? 不満はあるか?」


シーンと静まり返る皆、こんなので元の世界の人間は騙されなかった。

しかし、こいつらを騙すことはできるだろう。

なぜかといえば、キュモールの貴族にしてやる宣言に騙された連中だからだ。

ありえないよな……。


「「「「おおお!!!」」」」


ほーら、単純。

まあ、実際名士くらいなら執政官の裁量範囲内だろう。

ラゴウと比べりゃ可愛いもんだしな。

これで、当面嘘をついてどうこう言われる必要はなくなった。

正直これでかなりユーリの印象を悪くしてたからな、必須だった。




執務室に戻り、書類を片付けながら申請の書類等も幾つか作っていた。

俺は2種類の専門家をヘリオードに呼ぶ事に決めていた。

即ち、大工と魔導士だ。

いや、今いる中に大工がいないわけじゃない、いなければこんな立派な町の形になってないだろう。

だが、不足しているのも事実だ。

安上がりにするために一般人を炊きつけて参加させてたのだから(払う気無かったのだろうし)。


それに、この町の真ん中にあるヘルメス式魔道器は流石にそのままにして置けない。

何度も爆発するようなもの撤去したいのはやまやまなんだが……。

今はもう魔導器(ブラスティア)のない生活なんて考えられないだろうからな。

だましだましやってくれるような、要領のいい奴が来るといいんだが……。

まー別にチートしなくても、成果というほどのものがなくてもいい、マイナスじゃなければ。


「資金不足か……」


彼らの賃金を支払ったお陰で、少し資金不足になっていた。

だがまあ、問題のあるほどじゃない、キュモール隊の贅沢を削れば捻出できる。

綱紀粛正だとかいって、やってしまおう。

最悪、逃げ帰ってくれても一向にかまわない。

浪費したのは向こうのほうだしな。





それから暫く、無難に町を収めながら、町の計画の簡略化や大工への指示、そして書類仕事にあけくれた。

執政官なので、騎士というよりは文官みたいな扱いだ。

そうして1ヶ月ほど続けたある日、町に魔道士(魔導技師)が到着したという話があった。

早速、執務室に呼ぶことにする。


「来たわよ〜」

「え?」

「何よ、呼んだあんたでしょ?」

「魔道士は呼んだけど、確かに呼んだけど! 何でリタが!?」


そう、来た魔道士はなぜかリタ・モルディオだった。

今頃ユーリたちと旅の途中のはずなのに……一体何が!?

不味い……何がってユーリのパーティに彼女がいないってことは……。

イベント複数スルーしてしまうことになりかねない!

破滅エンドへ真っ逆さまじゃないか!!


「おーい、キモール! おーい」

「はっ!? アンタ! 何でエステリーゼ様らと一緒にいないの!?」

「あー、そういうことね。一緒にいたわよ」

「え?」

「カプワトリムまではね。ただ、ゴタゴタし始めた所にアンタが技師の招集してるって聞いてさ」

「なるほど……」



トリム港まで既にユーリたちが来てるのか。

まー、亡き都市カルボクラムの間だけ抜けた程度なら大きな差はないか。

ただ、アレクセイがここに来る日も近いってことになるな。

早めにやるべきことをやっておこう。


「ならちょっと見て欲しいものがあるんだけど」

「それって、あの街の真ん中にある変な魔導器(ブラスティア)よね?」

「ええ、騎士団が作ったっていう魔導器だけどね。

 壊れやすいみたいで、出力を上げられない訳」

「騎士団で? コアは?」

「アレクセイ閣下が自分で作ったって噂」

「そんなことまだ誰も出来てないわよ! コアよ……どうやって作るていうのよ!」

「さあ? だが普通のコアじゃないよ」

「それは……」


俺は出せるだけの情報を彼女に与える。

もちろん聖核(アパティア)については今教えない方がいい。

何故知っていると言う話でもあるし、何よりまだフェローを知らない彼女では理解できないだろう。


「とりあえず、調整を頼む。ついでに研究してもいいが、壊さないでくれよ」

「分かってるわよ!」


そう言ってぷりぷり怒りながらリタは出て行った。

今彼女がアレに触れるのは悪いことじゃない。

ヘルメス式、有り体に言えば彼女の父親の研究に触れるいい機会だからだ。

危険のない今の状態なら、かなりの事を知る事が出来るだろう。


「予定外だけど、そこそこうまく行ったってことか?」

「独り言しゃべって気持ち悪〜い!」

「不気味」


そう言えばゴーシュとドロワットがいたんだっけ。

迂闊に独り言をしゃべることも出来ないな(汗


まあともあれ、イエガーが味方なら次の手をうつことは出来る。

だが、手駒が足りない。

アレクセイに認識されない手駒が必要だ。

イエガーは実質監視されていると考えてもいい。

ただ、ユーリたちに味方したことが直ぐにバレたわけでもないところを見ると心臓そのものに仕掛けはないようだ。

アレクセイが何時でも止められるようにしている事以外は。

もしあったら、俺との密会もバレてるだろうしな。

冷や汗モノではあるが……。



それから数日、基本的にリタが暴れる以外は平穏に済んだ。

奇妙で無駄が多いとヘルメス式を断言する所を見るにまだあまり深い所までは判っていないようだ。

俺も、無駄に過ごした訳ではないが手駒を増やすには至らなかった。

正直、ヴェスペリアの世界ではあまり強力なキャラが多くないというのも本当のところだろう。

敵味方のメインキャラを除けば紅の絆傭兵団(ブラッドアライアンス)か魔狩りの剣(マガリのツルギ)くらい。

絆傭兵団(ブラッドアライアンス)は問題外つーかユーリ達に殺されるし。

魔狩りの剣(マガリのツルギ)ははっきり言って敵対勢力に近い。

こちらは始祖の隷長(エンテレケイア)の精霊化を狙っているんだから、殺そうとする彼らとは折り合いがつかない。


天を射る矢(アルトスク)を引き込めれば一番いいが、

ベリウスやドン・ホワイトホースの暗殺を止めればイエガーがアレクセイに殺されるだろう。

だが……手駒があれば……くそ!


あと残るは幸福の市場(ギルド・ド・マルシェ)か。

……それしか手はないな。

上手くいくかは賭けになるが、リターンはでかい。

やってみるか。


「ゴーシュ、ドロワット頼みがある」

「何ですか?」

「キモールの言うこと一応聞くように言われてるけどさ。

 エロい事しようとしたら殺すよ!」

「いやいや、お前たちにコンタクトをとってほしいギルドがあるんだよ」

「ギルドですか?」

「できればギルドマスターを呼んでくれれば一番いいが、難しければそれに近い立場の奴でもいい」

「どのギルドです?」


今まで俺をからかっていたドロワットだが、真剣だと思ったのだろう聞いてくる。

信用されているという程でもないんだろうが、一ヶ月近くいれば真剣かどうかくらいは判るってことか。


「幸福の市場(ギルド・ド・マルシェ)だ」

「えぇぇ〜?」

「それは難しい」

「どういうことだ?」

「忘れてない? 私たちは闇ギルドだよ? それも密売がメインの」

「私達とは悪い意味で商売敵」

「あ〜」


正面からの商売敵ならまだ健闘をたたえ合うという感じにもなるが……。

確かに、海凶の爪(リヴァイアサンのつめ)は悪い意味でのライバルだった……。

となると、俺自身か部下に接触させるしかないが……駄目だ。まともな部下がいねぇ……。

仕方ない、スカウトできるチャンスがある時まで待とう。

まだ直ぐに暗殺騒ぎが起こるわけじゃない。

猶予はあまりないが、一度だけ確実なチャンスがある。

それまでは、兎に角、部下の統制をしつつ緩やかにこの町を統治するしかない……。


「あ、良いところにいたわキモール!」

「あ〜」

「あ〜じゃないわよ! あの魔導器のコア明らかにおかしいわ!

 エアル消費量が比較にならないほど多いもの、暴走の原因はアレね。

 通常のコアに変えれば消費は抑えられるし、暴走もしなくなるはずよ!」


勢い込んで現れたのはリタ・モルディオ嬢。

個人的に迫ってきてくれるのは嬉しくもあるが、そういう意味じゃないのはわかってるからニヤケることもできない。

ようやく、ヘルメス式をあらかた調べ終わったようだ、後はどうするかだな。


「それは嬉しい発見だね、でも、代わりのコアなんて持ってないよ」

「た〜い丈夫! このアタシがコアを譲ってあげるわ!」

「え?」

「感謝しなさいよ! この間見つけたコアだけどあの魔導器を動かすには十分なはずよ!

 その代わり、あのコアちょ〜だい!」

「はぁ〜そういうことね」

「い〜でしょ?」

「こっちも、まともになるなら別にいいよ」

「交渉完了ね! じゃ、早速付け替えてくるわ!」


流石魔導器オタク、他のことには目もくれないな。

恐らくあのヘルメス式のサンプルが欲しいんだろう。

まーこっちとしても助かるから、彼女の理解が進むのは……。











それからまた一週間ほど、とうとうやってきた。

アレクセイ率いる騎士団本隊が。

覚えている限り、メインの部隊はシュヴァーン隊。

というかシュヴァーン隊は人数が多いようだった、明らかに100名超えてる。

アレクセイ本隊が200名ほどいるので合計300名越えの部隊だ。

まぁ、そもそも軍隊としちゃそれでも小さすぎるくらいだが。

この世界何故か一般兵がいないからな……。

ただ、ヘラクレスというカブトムシ型超大型戦車を引き連れているので凄く目立つ。

明らかに戦争想定してますって言う感じだ。


出迎えに出たキュモール隊が30人なので凄く下っ端臭い。

まー、そんなこと考えても仕方ない。

そもそも、こんなのでも兵がいるだけ俺はマシなほうだしな。


「出迎えご苦労キュモール隊長」

「はは、アレクセイ閣下もご機嫌麗しゅう」


少し大仰に、目は半ばやぶにらみでテメエがその地位に要られるのももう少しだけだという感じに睨みつける。

もちろん、本音は関わりたくないが、流石に騎士団員として出迎えないわけにもいかないし。

それに別人になってると感づかれるわけにもいかなかった。

アレクセイの手のひらで踊っているように見せないといけない。

芝居なんて得意でもないが、精一杯やるしかなかった。


「しかし、これは又大仰な、まるで戦争に行くような装備ではありませんか」

「場合によってはそれもありうる、こちらからは仕掛けるつもりはないが」


この言葉、明らかにキュモールを煽っているな。

今キュモールは手柄が喉から手が出るほど欲しいというのが本来だ。

そんな状況で煽られたら、唇を噛んで誤魔化すしかないだろう。


「……」

「ふ、どうした?」

「い……いえ、その私も……」

「君には執政官という仕事があるだろう、頑張り給え」

「クッ!」


ニヤリと言う顔をして、更に煽り肩をぽんと叩いてから通り過ぎていくアレクセイ。

正直小芝居が過ぎたんじゃないだろうかと俺は戦々恐々していた……。

とりあえず、それでも追求はなかったようなので見えなくなったのを確認してからふぅ吐息を着く。

そして、執務室まで急ぐことにした。

どうせ見られるはずだから俺は予め本来の資料は別の部屋に移し、キュモールらしい部屋にしてある。


「お待ち下さい! アレクセイ閣下!」

「どうした、仕事ぶりを確認したいというのは上司として当然だろう?」

「そっ、それはそうなのですが!」


この部屋には、武器の調達状況(嘘)やら奴隷のような労働条件の資料(嘘)をバレにくい所に隠している。

それでも一発で見つけてしまうだろうと思って、そう隠したのだ。

きっと見つけてくれたと信じている、そうすれば疑われることもないだろうから。


「所でキュモール隊長、聞きたいのだが」

「なっ、なんでしょうか?」

「君は最近頭が良くなったかい?」

「と言いますと?」

「いや、なんでもないんだ。さて、私も色々仕事がある失礼させてもらうよ」

「はっ、はあ……」


去っていくアレクセイを見送りながら、冷や汗をかく。

今の言葉の意味が隠したものを見つけられなかったのか、それとも俺の計画が露見したのか測りかねていた。

恐らく9割前者だろう、後者ならば俺は泳がされる意味がないからだ。

だが一抹の不安がどうしても拭いきれなかった……。



「ん? あ……っ、あっー!!!」

「頭にウジでも湧いたんでやがりますか?」

「薬持ってる」

「その薬毒薬じゃないよな?」

「……」


ゴーシュが視線をそらすのを見て俺は冷や汗をかいた……。

彼女らは一応アレクセイの前に出ないようにということで、離れていてもらったのだ。

考え事をしている間に戻ってきたようだ……一応町の外まで出ていてもらったはずだが……。

近くにいたら隠れていても気配で察せられるだろうしな。


「それで何を呻いていたんです?」

「失敗した……。アレクセイに対して慇懃に対応すべきじゃなかった……」

「?」

「普段と違ったということ?」

「恐らくそう思われただろうな」

「折角イエガー様がごまかしてくれてたのに!」

「死ね」

「待った! 待った! まあ確かにそうだが、それなら逆に安心だ」

「どういうこと?」

「一応、計画書の方も見てあるようだから、成長したと見てくれるだろう」

「ほんとかな〜?」

「多分大丈夫、キュモールが馬鹿なことはアレクセイの中では規定事項。

 少し賢くなった程度で警戒対象になるほどではない」

「ゴーシュの言うとおりだな」

「呼び捨てにしないで」

「了解」


安心できるほどではないが、アレクセイのキュモールの評価が一気に変わるとも思えない。

少し警戒レベルを上げられた可能性は否定出来ないが。

まあ今の問題は、彼らが暫く居座る事だろう。

アレクセイ達はどうやら、ここから動かずギルドの巣窟ダングレストと交渉をするつもりのようだ。

アレクセイ本人がどう思っているのかは分からないが、彼らの擁するヨーデル殿下の意向だろう。

彼の性格ならダングレストを刺激したくないはずだしな。


だが同時に、この状況は手駒を増やすチャンスでもある。

何せ、現状コマと言っていいのは、戦闘能力は上等な装備込みで並騎士よりは少しマシレベルの俺。

そして、表に出せないゴーシュとドロワット。

アレクセイの監視が厳しくてほとんど行動の自由がないイエガー(それだけに完全に信頼もできない)。

副隊長ラパン以下30名のキュモール隊(戦闘力装備込みで並騎士レベル)。

といっても、ゴーシュとドロワットはあくまで護衛以上ではない。

参考意見くらいはくれるだろうし、お使いもしてくれるかもしれないが、そのレベルだろう。

イエガーはそれなりに出入りはあるが、コマとして使うのは難しい。

キュモール隊は……大義名分があって正面戦闘で強者相手じゃない時くらいか役に立つのは。

見張りすらまともにやらないし、巡回させようものなら問題を必ず起こすからな。

見どころのあるやつがいないわけじゃないが優遇するとそいつが袋叩きにあう。

ありていに言って使いものにならない部隊だ。


「今は騎士団本隊が来ている関係上、問題はあまり起こらないだろう。

 起こす可能性があるのはキュモール隊くらいだろうからな。

 だから、あいつらがいる間は身を隠しておいてくれ」

「護衛はいいってこと?」

「監視もある」

「わかるが、お前たちが見つかると色々面倒なのはわかるだろ。

 主にアレクセイやその関係者にお前たちのことがバレるとイエガーにしわ寄せが来る」

「それは……」

「なあに、一ヶ月程度だろう。それに次はコゴール砂漠だ。下調べをしておいてくれると助かる」

「下調べといっても……」

「フェローってなんなん?」

「まあ実際、重要なのはそっちじゃないからな。

 フェローやベリウスを守る必要はない、だがまーもう一つの件は急ぎだが……。

 イエガーはまだ命令を受けてないだろうが、あっちの件はお前たちにはどうしようもないだろ?」

「それは……」

「イエガー様に逆らう等という事はありえません」

「そういうことだ。だから先行頼む」

「……了解」

「しょーがないな〜」


しぶしぶではあったが、2人はアレクセイがいる間この町を離れる事を承諾した。

まー、本音としては俺自身としても護衛として残ってくれているほうがいいんだが……。

なんにせよ、時間のあるうちに色々回っておかないとこの先陰謀が表に出た時困る事になる。


さて、柄じゃないが頑張りますか……。







あとがき

とりあえずヘリオードの内政(?)ぽいことをしてみましたw

まー実のところ、ヘリオードをどうにかできるほどの時間はないのでさらっとですがw

この先、展開が早くなるための仕込みが後2話程度続く予定です。

はっきり言って、キュモールは裏方のまま終わる可能性が高いですがw



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