心と絆
修をグリラスワームから庇ったタイラント。
『裏切り者めが…!』
憎悪を宿した視線がタイラントに突き刺さる。
しかしタイラント本人は何も感じていないかのようにこう言った。
「勘違いするな、コオロギ野郎」
「こ、コオロギだと!?貴様、誰に向かって口を聞いている」
平然とタメ口で喋るタイラントにグリラスは怒る。
「俺がお前に従う訳無いだろ」
『人間如きが思い上がるな!』
さらにグリラスの怒りは膨れ上がる。
「俺がお前に一時的とはいえ仕えていたのは、グライズと決着をつける為だけだ」
「!?、どういうことなんだ明!!」
タイラントが口走った内容に修は慌てて質問する。
「聞いての通りだ」
「おい、お二方。お取り込み中にすまないが、まず最初にやっちゃった方が良いのがいるんじゃないのか?」
ディロードがいきなり会話に割り込む。
「……そうだな。こんな虫に仕えるのもいい加減ウンザリしていたところだ」
「そうと決まったら…!」
≪FINAL KAMEN RIDE…FA・FA・FA・FAIZ≫
ファイナルカメンライドカードでディロードは”Dファイズ・ブラスターフォーム”となる。
『ディガイドだけでなくお前も!?』
「俺は数では劣るが、質の方はディガイドのを遥かに勝ってるんだよ!」
≪ATTACK RIDE…BLOODY CANNON≫
カード装填によってDブラスターファイズの背中の装備が変形して”ブラッディキャノン”に変形する。そして、そこから砲撃を行う。
――ズババババババッ!――
『グッ!!』
ブラッディキャノンから放たれるエネルギー弾はグリラスに着実的なダメージを与えて行った。
「しぶといコオロギだ。とっとと逝ったらどうだ?」
とタイラントが呟くと。
『ふざけるなぁぁぁぁぁ!!』
怒った奴はダメージも構うこともなくタイラントに駆けて行き、
――ドゥシィーーン!――
見事な体当たりを食らわせた。
「クッ…!!」
流石に怒りのこもった全力体当たりはタイラントにダメージを与えたようだ。
それを見たディロードは一言呟いた。
「……余計なこと言うから……」
と言ったとか…。
『覚えていろ貴様ら!!次に会う時が死ぬ時と思え!』
グリラスはそう言うと、クロックアップで逃げていく。
「……タイラント。いや、星野 明。聞きたいことがある」
ディロードは敵が逃げたのをよく確認し、タイラントに話し掛ける。
「お前等に語ることなどない。…クロックアップ」
≪CLOCK UP≫
全くの聞く耳持たずで、タイラントもクロックアップで去ってしまった。
「…明…」
いなくなったタイラント……明を案じて、修は少しの間其処に突っ立て居ただけだった。
世界の救済者、ディロード。九つの世界を巡り、その心は何を映す?
タイラントが去った後、一行と修は小屋の中に居た。
一旦は一か所に集まり、次に戦いに備えて。という考えからであった。
「明…」
ここに来て数十分もの間、修はこうして項垂れている。
廻・信彦・流姫もどう声をかければ良いか分からず仕舞いだ。
「………君は一体、どうして?………」
四人…というか三人はこんな気まずい空気の中を一日過ごしていた。
***
翌日。修は帰っていき、三人は敵が攻めてくるのを虎視眈々と待っていた。
流姫は昨日の気まずい空気に一番耐えかねていたので、テレビを見て気分を紛らわせていた。
『え?、臨時特報です』
テレビの映像がいきなり変更された。
その瞬間にテレビを流し目程度にしか見ていなかった廻と信彦はテレビに視線を集中させる。
『有名政治家である、蜜菜木(みつなぎ)氏が今日 ―― の広場にて演説会を行うと言う発表がありました。蜜菜木氏は地元住人との理解とコミュミケーションを深める為の交流を兼ねていると発言していて、余りに突然な行動に』
そこで流姫はテレビの電源を切った。
「…どう思う?」
「こんなワーム、いやネイティブが暗躍する中でのうのうと演説する人がいるとは思えない」
「行ってみるか。その演説会に」
異論は上がること無く、三人は直ぐに家を出て演説会場になる広場に向かった。
***
「え?、皆さん。今日は突然な催しに赴いていただき、誠に感謝いたします」
広場で一番人目に触れそうなところで台に乗って演説する四十歳前後の男、蜜菜木が長々しい挨拶をしていた。
「一件変わったところはなさそうだな」
「まあ、このまま何事もなく終わってくれればいいけど」
廻と流姫はそう言いながら演説を聞き流していた。
信彦にいたってはここに来てから一言も喋らずに周囲に軽い警戒を払っている。
「にしても皆さん、こんな言葉をご存知でしょうか?」
蜜菜木がいきなり話題を変えた。
「弱肉強食。まあ、大抵の人が知っているであろう言葉で、弱者と言う犠牲のもとに強者が栄えると言うものです」
先程の演説とは全くと言って良いほどに関係のない話。
廻達はそれを聞いて自然と雰囲気が戦っているものになっていく。
「この中には私の言っていることがお分かりにならない方もいるでしょう。
簡潔に述べさせていただくと、貴方方人類は我々ネイティブによって滅ぶと言うことです」
そう言うと蜜菜木は笑いを浮かべながらグリラスワームに変貌する。
「キャアァァァァ!!」
「化け物オォォォ!!」
グリラスを見て恐れ慄き逃げ惑う人々。
三人は有無言わせない素早さで変身プロセスを行う。
「「「変身ッ!」」」
≪KAMEN RIDE…DEROAD≫
≪KAMEN RIDE…DI‐GUIDE≫
「俺は月の寵児!仮面ライダーSHADOW!RX!!」
『む、来たな魔王共!』
グリラスはどこからともなく、二体のカッシスワーム・クリペウスの他にウカワーム、セパルチュラワーム、タランテスワームを呼び出した。
「待て!ネイティブ共!!」
――ブオォォォォォォォォンッ!――
そこにグライズが愛用バイクたるグライズエクステンダーに乗って現れる。
『現れたか、グライズ。だが、いくら戦おうとも貴様らに勝機は無し!』
「随分偉そうな口を開けてくれるな。コオロギ」
『その声は!?』
――ブウゥゥゥゥゥゥゥンッ!――
タイラントが彼の専用マシンたる”タイラントエクステンダー”に跨って現れた。
「明…!」
「勘違いするなグライズ。俺は俺の成すべきけじめをつけているだけだ」
「隙ありィ!!」
会話途中でセパルチュラワームがタイラントに突っ込んで行く。
「愚劣な」
タイラントはそう吐き捨てると、セパルチュラワームを蹴り飛ばす。
≪CHARGE≫
「ライダーパンチ」
≪RIDER PUNCH≫
後ろ脚に当たるゼクターレバーによって両腕へ送り込まれたタキオン粒子は波動となり、タイラントがセパルチュラを殴ると、アンカージャッキによって強化された腕力によってセパルチュラは吹っ飛ばされた状態で爆散する。
『おのれ、タイラント…!!』
「悔しいなら俺を倒すことだ。俺は誰の力も必要としない、強者には」
「そいつはちょいと違うんじゃないか?」
タイラントの言葉に割り込んできたディロード。
「お前はきっと修と戦っていた時、自分の中で弱いと思えるものを見つけてしまった。他人の協力無しに敵を倒せないかもしれないと言う…不安感をな」
「お前には関係無い。第一、一人でも決して負けることがないのが強者。それを求めるのは当然のことだろ」
タイラントの考えにディロードはこう言う。
「だが、一人では何もできないのは誰しもが同じこと。だからこそ人は友や仲間を求め、求められた仲間も…それぞれの想いを持って、一緒に強くなっていく。明、お前が弱いと思っていたものは強いものでもあったんだ。人間に宿る絆は決して断ち切れない…!」
ディロードの言葉はライダー達の心に届いていく。
『おい貴様!随分長々と語っていたが…何者だ?』
「長いと言っても胡散臭い演説よりはマシだ。俺は…最強最悪の仮面ライダーだ!くたばった後も覚えてろ!!」
そう決め台詞を言った途端、ライドセイバーから幾枚ものカードが現れ、キャッチする。
「さて、行くぜ。…修、明」
「あぁ…」
「フンッ…!」
ディロードの呼びかけに二人はそれぞれの反応を返す。
「アタシ達もいくわよ!」
「そうだな」
ディガイドもSHADOWに呼びかけると、SHADOWの身体は淡い光に包まれて変化していく。
光の治まったとき、SHADOWの身体はダークバイオレットを基調色とし、俊敏性と身軽さに長けていそうな外観となる。
「俺は誓いの王子!!RX、ソニックライダー!」
RX・バイオライダーと同じ名乗りポーズを取るソニックライダーはタランテスワームと対峙する。
「それじゃアタシはこいつとやるわ。女同士、思いっきりね!」
といってディガイドはウカワームの方向に身体を向ける。
「明、行くぞ!」
「俺に指図をするな」
グライズとタイラントは二体のカッシスワーム・クリぺウスに向かう。
「俺とお前の一騎打ちだな」
『魔王め…!』
最終的に残ったグリラスとディロードはお互いに殺気を放ちながら構えた。
さあ、ここで五人のライダーの戦いを一戦ずつ見ることにする。
最初にソニックライダーとタランテスとの戦いだ。
『お兄ちゃんなんかに僕は倒せないよ♪』
タランテスはそう言ってクロックアップして即効にソニックライダーの背後に回り込んだ瞬間。
「どうかな?」
ソニックライダーは喋ると同時にタランテスに回し蹴りを決めた。
『僕たちと同じスピードで動けるんだね…』
そうソニックライダーはパワーは他の二形態には劣るが、スピードこそはクロックアップに匹敵するものがあるのだ。
「行くぞ!ワイルハルバード!!」
叫ぶと同時にソニックライダーの手中に薙刀型の武器、ワイルハルバードが現れる。
ソニックライダーは一気に近づくと武器の左右両端にある鋭い刃でタランテスを切り刻む。
『ウワアァァァァァァ!!』
最期の声と共に爆炎が巻き起こる。
次はディガイドだ。
『我々に仇名すものは排除する』
「排除されるのはそっちでしょ」
ディガイドが言い終わった瞬間にウカワームはクロックアップで攻撃しようとするが、
≪ATTACK RIDE…EXTRA BLAST≫
ディガイドは銃口から無数のエネルギー弾を発射。
ウカワームを最初こそはそれを平然と避けるが、
エネルギー弾は避けられた瞬時に進む方向を変えてウカワームに向かっていく。
『何!?』
いくら避けようども、エネルギー弾は決してウカワームを逃がすまいと追ってくる。
そして、とうとう避けきれずにエネルギー弾が直撃し、クロックアップから出ざるを得なくなる。
「フフ…アタシが撃った弾は標的に当たるまで決して止まらない」
ディガイドエクストラブラストの能力を簡単に説明すると、ディガイドはトランスドライバーにカードを装填。
「ついでにこいつね…変身」
≪KAMEN RIDE…IXA≫
イクサのバーストモードに変身すると、更にカード装填。
≪FORM RIDE…IXA RISING≫
アーマーがパージされ、白かった部分は青に変わり、黒かったスーツ部分は白に変色したライジングイクサにフォームを変える。
『姿を変えようと!』
ウカワームは再びクロックアップに入るが、
「待ちなさい!」
と命令口調で言ったDライジングイクサの銃撃で再度クロックアップから引きづり出された。
『く、クロックアップを見きっただと!?』
驚くウカワームを尻目にDライジングイクサは止めを刺すべく、
≪FINAL ATTACKRIDE…I・I・I・IXA≫
すると、イクサライザーの銃口の前方に奇怪な紋章が浮かび、Dライジングイクサはそれに銃口を向けて引き金を引く。
――ズザァァァァァァン!!――
強大なエネルギー波、ファイナルライジングブラストによってウカワームは消滅する。
一方、グライズとタイラントは。
「一気に決めるぞ」
「面白い、その提案受けてやる」
どうやら指図ではなく提案と言う形でグライズの言うことを聞いたタイラント。
二人はゼクターレバーを作動させる。
≪≪CHARGE≫≫
「「ライダァーキィーック!!」」
≪≪RIDER KICK≫≫
まったく同じ動きで同時にライダーキックをそれぞれの敵へと叩きこんだ。
一度は耐えられたようだが、
「「これで終わりじゃない!!」」
息ぴったりに言うと、二人は空中で反転して再度ライダーキックをお見舞いし、また空中反転というプロセスを何度も行い、二体のカッシスワームを撃破する。
そして最後はディロード対グリラスワーム。
『人間如きに負けるかぁ!』
「負けるんだよお前は、今日ここでな」
そう言われたグリラスはクロックアップする。無論ディロードも対抗するべく、
≪ATTACK RIDE…SPEED≫
ディロードスピードを使った。
『貴様もか…』
「言っただろ、お前は今日ここで負ける」
≪ATTACK RIDE…EXTRA SLASH≫
ライドセイバーの刃をグリラス目掛けて振り下ろす。
だが、
――ガシッ!――
『こんな攻撃で敗れる私ではない』
刃を掴んで攻撃を防いだグリラスは拳を思い切りディロードに叩きこんだ。
「グッ…!!」
痛みに思わずディロードは片膝をつく、それと同時に通常速度に戻った。
『ここで負けるのは貴様だったな』
グリラスは拳にエネルギー集中させた。
『ハアァ!!』
拳はディロード一直線。
――グゥワシッ!!――
「間に合った」
グライズがグリラスの腕を掴んで攻撃を止めていた。
「助かるぜ」
『クッ!まだ抗うか!!』
攻撃を中断させられたことに立腹のグリラスはグライズを突き放して距離を取る。
だが、ディロードはそれと好機にカード装填。
≪FINAL FORMRIDE…G・G・G・GRAIZ≫
「堪えろよ」
「は?…ドオォ!?」
ディロードがグライズに触った瞬間にグライズはアンカージャッキを模した”グライズアンカージャッキ”となる。
そしてグライズアンカージャッキはディロードの右腕と左脚に装備される。
≪FINAL ATTACKRIDE…G・G・G・GRAIZ≫
その直後にディロードはジャンプすると、グリラスめがけてパンチを飛ばした。
「「ライダァーパァーンチ!」」
二人分の声が重なって聞こえてきた。一発目が命中すると、ディロードはまたジャンプしてキックの態勢に入る。
「「ライダァァァーーキィィィーーック!!」」
『グガアァァァァ!!』
ライダーパンチとライダーキックを連続して繰り出す”ディロードジェネシス”が炸裂する。
グリラスワームは背景にできるほどの爆炎を生み出した。
それを見届けたディロードはグライズを元の姿に戻した。
その時、グライズが目にしたのは、タイラントがバイクに乗ってその場を去ろうとしているところだった。
「明!!」
「…止めるな、グライズ」
「何故だ?何故なんだ!?」
「俺とお前は…あくまで一度は敵になった者同士。易々とくっ付いたり離れたりはない」
「だが俺は俺はお前と…」
タイラントは必死に言葉を出すグライズにこう言った。
「くどいぞグライズ。…争う運命と言う物は、どちらか一方がそれを受け入れた時、決して変えられないものとなる」
「明…それでも俺は、運命を変えてみせる!」
「また会おう。……修」
といってタイラントはバイクのエンジンを吹かせて駆けていく。
***
小屋の中。
「この世界も、もう大丈夫そうだな」
そう言った廻の手には”お互いに向き合うグライズとタイラント、修と明”の写真だった。
「これからも二人は……」
信彦は暗い表情でそう言うが、
「大丈夫。…そういったのはあんたでしょ、信彦!」
「そうだったね」
「それでは行くぜ。次なる世界へとな!」
その宣言と同時に次元の壁が家ごと三人を通過した。
***
その頃。
一行の向かうべき世界では…。
「ウオォォォォォォォォアァァァァァァァァ!!!!」
一人のライダーが獣の如き咆哮を天に轟かせていた。
次回、仮面ライダーディロード
「大学生かぁ」
「アギト…!?」
「仮面ライダー?」
「化け物なんだから荒々らしく戦ってやる!」
”完全なる不完全”
全てを救い、全てを砕け!
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