銀の蝗
「闘え、グライズ」
「明…」
戦いを迫られた修。しかし彼はタイラントとの戦いを拒む。
「来ないなら先手は貰うぞ」
タイラントはそう言うと、拳を修めがけて飛ばした。
だが、修はそれを難なくかわし、さらなる攻撃もなんとかかわし続ける。
「止めてくれ明!」
「問答無用」
例えどれほどの言葉を伝えようとも、今のタイラントを止める術はない。
(…闘うしかないのか…)
修はグライズゼクターを呼び出すとライダーベルトにセットした。
≪HENSHIN≫
≪CAST OFF≫
≪CHANGE LOCUST≫
「ほう、ようやく闘う気になったか」
変身し、一気にライダーフォームとなるグライズに益々闘志を燃やすタイラント。
「明、俺はお前とは戦いたくない」
「…下らんことをほざくなグライズよ。どれほど足掻いたとしても変わらん。俺とお前は闘い合う…運命だ」
グライズの言葉にまったく聞く耳持たぬタイラント。
タイラントゼクターの後ろ脚に当たるゼクターレバーを作動させる。
≪CHARGE≫
「ライダーキック」
≪RIDER KICK≫
それと同時に両脚に波動へ変換されたタキオン粒子が送られ、二つのアンカージャッキで威力を増したライダーキックをグライズに食らわせようとする。
「!!」
グライズもこれに対抗する為に、グライズゼクターの後ろ脚・ゼクターレバーを作動。
≪CHARGE≫
「ライダーキック!」
≪RIDER KICK≫
左脚のアンカージャッキで強化されたライダーキックを発動させる。
――ズガアァァァン!!――
ライダーキック同士がぶつかり、周囲には激しい火花が飛んだ。
「グッ!!」
「フッ!!」
グライズはダメージを負ったためか着地に失敗したが、タイラントは特筆する傷を負わなかったので見事に着地する。
「グライズ。まだ俺と闘うこと躊躇うなら、人間どもがどうなっても知らんぞ…」
「!!、明、何をするつもりだ?」
「関係無い人間共を巻き込みたくないなら今度から躊躇うことなく俺と闘うことだな…、クロックアップ」
≪CLOCK UP≫
そう言い残したタイラントはクロックアップして去っていく。
「俺は、如何したら良いんだ…」
***
「ライダーが襲ってきた?」
「うん、なんとか追い払ったけど」
「………」
流姫は先程現れたライダー、タイラントのことを話していた。
「…そいつ、もしかしたら…」
「廻、何かわかったの?」
信彦はそう聞いた。
「修に一度確認を取ってみるか」
「もう一度行くってことか」
「それじゃ、アタシも一緒に行くわ」
ということで三人は廃工場に赴くこととなった。
***
そして、
「何!?タイラントがか!!?」
「いきなりデカイ声を出すな」
話を聞いて大声を出す修に廻が注意する。
「それで、あのライダー…タイラントのこと、知ってるんだね」
「……タイラントこそが、俺の親友たる星野 明だ」
「やっぱりか」
想像していたせいか、廻は大しては驚く様子を見せない。
「悪趣味だな」
「「「え?」」」
突拍子も無く放たれた廻の言葉に皆が注目する。
「大方敵はタイラントを洗脳でもして操っているじゃないかと思うとな」
「俺も明が敵に回ったのはそれが原因としか思えない。だが、俺は明とは戦いたくない…」
「……」
顔を俯かせ、途方に暮れる修の姿に信彦はかつてBLACKとして戦っていた頃の光太郎はシャドームーンと化した自分のこと想ってこのような苦悩を抱いていたのではないかと心から思った。
あの時の自分たちの轍を踏ませまいと考えた信彦は気休めかもしれないがせめてもの言葉を送ろうと考え付く。
「きっと大丈夫。明を助ける方法はある」
「信彦君……そうだな、ここでへこたれていても事態は進展しない。前を向いて歩かなければいけないんだ。多くの人の為にも、明の為にも」
信彦のささやかな言葉に元気を取り戻した修はやる気を出して立ち上がった。
「はい、元気の出たところで皆。英気を養うためにちょっとそこらを散歩しましょうよ」
そこで流姫は他の皆にリラックスして貰おうと、この案を提案する。
「悪くないかもな」
「良いんじゃないか」
「そうだね」
男三人は快く承諾した。
***
「タイラント、お前の出した命令はグライズの息の根を止めよというものだった筈。なのに何故お前は奴を生かしたままここに帰還した?理由を述べてもらいたいものだな」
高圧的に問いただす初老の声はタイラントに僅かにプレッシャーを与えていた。
「…私は奴の心に迷いを生み出したのです」
「どのようにしてだ?」
「私と奴はかつての親友。その親友との闘いを強要されればいかなる相手にとて、心に隙が生じます」
キビキビとした口調で説明する。
「…まあ、良かろう。今回の件は不問にしてやる」
「ありがとうございます」
「ただし、次にはきちんとした成果を出してもらうぞ」
「…はい…」
≪CLOCK UP≫
クロックアップに入ってそこからいなくなるタイラント。
「……潮時か」
ほんの微かにクロックアップ前にタイラントの言葉を聞き逃す”者”は居なかった。
***
散歩中の四人。歩き始めて軽く三十分は経過している。
途中で自販機飲み物を買って飲んだり、公園に行ったり、何気ない話をしたりと普通の人間となんら変わらないものであった。
『魔王ディロード!』
「「「「!!?」」」」
いきなり聞こえてきた声。
『お前にはワームの…いや、ネイティブ繁栄のため、グライズ共々ここで死んでもらう』
「偉そうな口叩くんじゃねよ!姿を現したらどうだ?それとも、姿すらもさらせられない臆病者なのか?」
どう聞いても挑発しているとしか思えない言葉。
『良いだろう』
そう言った者は近くの木陰から姿を現す。
その容姿は地球に住むコオロギと似通うり点がある”グリラスワーム”だった。
「そうはさせない!」
そこに修が廻とグリラスの間に立って見せた。
修はグライズゼクターを呼び出してキャッチする。
「変―――」
「甘いぞ」
――ズゴッ!――
「ゴフ!!」
クロックアップに入ったグリラスによって腹に拳を入れられた修はそのばに座り込んでしまう。
『纏めて相手をして不利な戦況は作る気はない。一人ずつ潰していく』
それを聞いた三人はツールスタンバイ、変身ポーズを行う。
「「「変身!」」」
≪KAMEN RIDE…DEROAD≫
≪KAMEN RIDE…DI‐GUIDE≫
「俺は月の寵児!!仮面ライダーSHADOW!!RX!!」
各々はグリラスに攻撃しようとするが、そこへ大量のサナギ体ネイティブが現れる。
『言ったはずだ。不利な戦況は作るはないと』
そんなことを言ったグリラスだが、ディロードはそれもお構いなしにカードを装填する。
≪KAMEN RIDE…KAGAYAKI≫
火炎の渦に包まれ、雷が落ちるとD輝鬼の姿があった。
「面倒だ、一気に行く」
≪ATTACK RIDE…WAKEMI≫
三人に分身。
≪ATTACK RIDE…ONGEKIBOU BAKUEN≫
≪ATTACK RIDE…ONGEKIKAN BAKUHU≫
≪ATTACK RIDE…ONNGEKIGEN BAKURAI≫
それぞれのD輝鬼はアタックライドで音撃武器を装備。
その状態で三体とも同じカードを使った。
≪ATTACK RIDE…SHUNSOKU≫
クロックアップと同速度で動く”瞬速”で三体は手を休めずにカードを装填。
≪FINAL ATTACKRIDE…KA・KA・KA・KAGAYAKI≫
三体はそれぞれが持っている音撃武器と対応した必殺音撃を叩き込む。
「炎神焼華の型!!」
「風神乱舞!!」
「雷神迅電!!」
♪??♪??♪??
演奏を終えるとネイティブ達は一斉に爆発していった。
『やるな、だがグライズは頂くぞ』
グリラスはディロードがサナギ達を相手にしている間に修に止めを刺そうとする。
――ギィーーンッ!!――
鳴ったのは肉体を潰す気味の悪い音ではなく、鈍い金属音だった。
≪CLOCK OVER≫
そして何故かクロックオーバーの音声が聞こえてきた。
『……やはり、裏切るのか』
グリラスは憎悪の宿った眼で邪魔をした者を睨んでいた。
『タイラント!!』
「………」
大音量でその名を呼ばれたタイラントだが、口を閉ざして沈黙のままだった。
次回、仮面ライダーディロード
「俺がお前に従うわけ無いだろ」
『人間如きが思いあがるな』
「人の心に宿る絆は決して断ち切れない…!」
「俺は誓いの王子!!」
”心と絆”
全てを救い、全てを砕け!
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