継承される力
魔界城内部。
その下層に設けられた牢獄の階。
「………」
「………」
「………」
信彦、流姫、和雄の三人は牢の中に入れられていた。
おまけに変身ツールを取り上げられたので変身することさえままならない。
唯一、ツールを必要とせずポーズによる変身を行う信彦の手には手錠がかけられてしまっている。
こんな状況ゆえに三人はダンまりだった。
そこへ、向かいの牢屋から。
「諦めてはなりませぬ」
透き通るように美しい声が聞こえてきた。
「誰?」
信彦はそう口に出す。
声の主は、足に枷をつけられていて自由を奪われてはいたが、鉄格子の寸前くにまでは近づくことはできた。それによって身体全体が視認することができ、一同は驚くことになる。
「アタシそっくり!?」
「似てる…!?」
「まるで双子だ」
その人物は流姫と全く同じ顔をした女性だった。
違いと言えば、先程の声。
その他に瞳の色が銀色であることだった。
「……もしかして、貴女がお妃さまの美子さん?」
「…私のことを知ってるんですか?」
「私達は交さんに貴女を救出することに関して、協力する立場にあるんです」
流姫が美子のことを口に出していったことで美子は疑問の言葉を出すも、和雄が返答をよこした。
「そうですか。我々と大した関わりの無い貴方方にまでご迷惑をかけてしまうとは…妃として顔が立ちませんね、これでは」
三人に迷惑をかけたと思って美子は暗い声で言った。
其の時だった。
――ボガアァァァァァン!!――
「な、なんですか!?」
いきなり聞こえてきた音に美子は取り乱す。
「これって…」
「うん」
「来ましたね」
反対に三人の顔には希望があった。
***
『キイィィィィィ!!』
――ズババババ!ズババババ!!――
魔界城のすぐ近くではディロードライバーをつけた”Dキバ・飛翔態”が羽ばたきながら口から光弾を連発していた。
さらに、飛翔態がもう一度叫ぶとベルトにはカードが自動的に装填される。
≪FINAL ATTACKRIDE…KI・KI・KI・KIVA≫
飛翔態の頭に備え付けられた三つの巨大魔皇石が光、飛翔態の口からは黄金の光線”ブラッディストライク”が発せられ、城壁に大損傷を与えた。
これによって城内にいたレジェンドルガ達は奇襲に面食らう状態となっていた。
飛翔態はそのまま、魔界城から少し離れた場所で身を下ろし、ディロードへと戻った。
「よくやった仮面バカ」
「殴られたいか」
戻るや否や即座に嫌味を言ってきた交にディロードは拳を握る。
「さて、私も行かねばな。…シャインキバット!」
(無視か…?)
交の元へ白銀のキバット族が颯爽と現れる。
『フッ…、行くぜ』
クールな口調で言ったシャインキバットは交の手にかみついてアクティブフォースを流し込む。
それによって彼の手から頬にまで伸びるようにしてステンドガラス状の血管が浮かび上がり、腰にはベルトが現れる。
「変身」
『キバって行こうぜ!』
交が変身を終えるのを合図にしたかのように、近くで待機していたファンガイア兵の軍勢が一気に現れた。
世界の救済者、ディロード。九つの世界を巡り、その心は何を映す?
魔界城は大混乱であった。
Dキバ・飛翔態の攻撃によって予定を早めて、拉致した者達を儀式の間に連れて行ったのだ。しかし、
この城の主たるアークの力を復活させるために多くの若者の生命エネルギーをアークの棺へと捧げる儀式を行い、後は美子や流姫ら四人というタイミングでファンガイアの軍勢が攻め入って来たのだ。
そして、ディロードとシャインが儀式の間の固く閉ざされた扉を蹴とばした。
ディロードは一番に部屋の中に入り、こう叫んだ。
「俺の仲間は返してもらう!」
「廻!」
「やっぱり!」
「来てくれたんですね!」
「あの御方が…」
四人はディロードの登場に歓喜する。
さらに、
「美子!!」
シャインも大きな声を出して部屋の中に駆け入る。
「交!」
美子は自分の愛する人が助けに来てくれたことに喜びの涙を流す。
「全く、勝手な真似しやがって」
一方ディロードは三人に説教をしていた。
そして、奪い返した変身ツールを渡し、信彦にかけられていた手錠を壊した。
「お前らは雑魚四体を相手にしろ。勝手な真似した罰だ」
「「「はい…」」」
反論できないので、三人は素直に従った。
≪KAMEN RIDE…DI‐GUIDE≫
「「「変身ッ!」」」
そして、ライダーへと姿を変える。
「あ、和雄。お前に良いもんをやる」
「え、何ですか?」
G4が聞くと、ディロードはカードを取り出して装填。
≪ATTACK RIDE…GIGANT≫
音声が鳴ると、G4の真上から低空・短距離用の四連装対地ミサイルランチャーが出現した。
「これって…!」
G4には見覚えのあるものだった。
何せ元も世界で幾度か使ったことのある武器だったのだから。
「うまく役立てよ。…交、お前の嫁さんをとっとと避難させろ」
「いわれずともわかっているわ」
シャインは美子をお姫様だっこで抱えると、直ぐ様に走っていった。
「それじゃ、俺は雑魚共の殲滅と行くか」
『行かせん!魔王はここで始末する!』
レジェンドルガ達はディロードを部屋から出すまいと取り囲む。
「中途半端な雑魚は引っ込んでろ…。変身」
≪FINAL KAMENRIDE…KU・KU・KU・KUUGA≫
その電子音を耳にした途端にディガイドは…。
「まさか…あれを使うの?」
ディロードのアーマーには金色のラインが走り、刺々しい黒い生体装甲に覆われ、最後には”凄まじき戦士”や”究極の闇”という意味のリント文字の基となった仮面に四本角、赤い複眼。
数あるFKRの中でも最強と謳われる”Dクウガ・アルティメットフォーム”。
アルティメットは手を四体のレジェンドルガ達に向けて掲げた。
その瞬間に、
『ギャアァァァァァァ!!』
『アァァァァアァァァ!!』
『グアァァァァァァァ!!』
『オアァァァァァァァ!!』
ディガイド達が倒すはずだったマミー、メデューサ、ガーゴイル、マンドレイクの四体はアルティメットの”超自然発火能力”によって塵となるまで燃え尽きた。
その光景にディガイドは目を逸らし、SHADOW RXとG4はただただ唖然としてアルティメットフォームの強大な力を見せつけられるだけだった。
「……やはり雑魚か。いや、雑魚以下か」
いつもとは違った冷たい雰囲気を放っている。
塵となった者を足で踏みつけたことにすら気づいていないかに様に、アルティメットは悠然と部屋を出ようとする。
「そうはいかんぞ!仮面ラ〜イダディロード!」
次元の壁が出現してドクトルGが現れた。
そして、手から大量のエネルギーを棺に送り込む。
すると、棺からは全長3m20pの黒い巨体。バフォメットを意匠にした黄色い眼のある仮面。厳重に封印が施されている胸の鎖。ベルトには逆さづりになっていることでドクロのように見えるアークキバットがぶら下がっている。
『我…再び覇道を刻む』
蘇ったレジェンドルガの王、仮面ライダーアークは低い声でそう言った。
「貴様らの使命はこの世界をもって全うされる。だが、そうはいかない。われらが大ショッカーのために「うざい」ゴアァァァ!!?」
台詞の途中でチョップを入れられたドクトルG。
「お前ら、このオッサンは任せた。俺達はアークをやる。…交、聞こえたな」
「当然に決まっているだろう」
美子の避難を終えてタイミング良く戻って来たシャインは答えた。
『…我を滅した”光の鎧”…。見ているだけでも気分が悪くなる』
「ならば、早急に貴様を討つとしよう」
「散ってもらうぞ」
アークの言葉にシャインはいつも通りの口調で返し、アルティメットから戻ったディロードも冷酷な一言を発する。そして、アークやディロード、シャインは別の場所に移動した。
そして、ドクトルGとディガイド達は。
「ディロードと戦えないのは残念だが、貴様らだけでも始末させてもらおう!」
そう宣言すると、ドクトルGは”カニレーザー”という本性を現す。
『決着をつけてやる。仮面ラ〜イダ共!』
「あんたなんかに負けるわけ無いでしょ!」
「今度こそきちっとやらないとな」
「廻さんからの力…役立てて見せる!」
『カァァバラァァァァ!』
≪KAMEN RIDE…GAOH≫
「行ってらっしゃいな」
ディガイドは素早く引き金を引いて、仮面ライダーガオウを召喚する。
「食い足りないな、こんなんじゃ」
「だったら、そこに食いでがいのありそうなのが居るわよ」
「…まあ良い。腹の足しにはなるか」
ガオウは一気にカニレーザーとの距離を縮め、ガオウガッシャー・ソードモードを振り回す。
慌ててカニレーザーは避けるがそこにSHADOWがライトグラスでの体当たり技”カオスクラッシャー”を食らわせた。
『グォォォ!!』
「良しっ!」
「和雄!準備して居てね!」
「はい!」
ディガイドが呼びかけたG4はギガントを肩に背負っていつでも発射できる状態にしていた。
≪ATTACK RIDE…CROSS ATTACK≫
ガオウガッシャーの刃は本体から離れ、ガオウが本体振るのに連動して刃も薙ぎ払うような動きをしてカニレーザーを吹っ飛ばした。
「今よ!」
『!!?』
カニレーザーは気づいた、ディガイドとSHADOWはあくまで自分を特定のポイントに誘い出すために威嚇攻撃していたことを。
そして、気づいたときにはもう遅かった。視界にはギガントのミサイルを発射したG4の姿があった。
――ズバァァァァァァァァン!!――
『………どうやら…私の負らしい。だが、仮面ラ〜イダァ…お前たちは何れ滅びる。…我等が、偉大なる組織、大ショッカーによって。……さらばだ、仮面ラ〜イダァアアア!!』
その言葉を最期にカニレーザー=ドクトルGは散って逝った。
***
「王家の誇りにかけて、貴様を討つ!」
魔界城の王の間。
アークと二人のライダーの激突前にシャインの口にした言葉だった。
『フ…、戯言を…』
アークは自らの身長にも並ぶほどの巨大な三叉槍を手にしている。
「戯言ね……そいつはどうかな?」
『何…?』
「確かにこいつは俺から言わせれば、無駄なまでにプライド高くて傲慢でムカつく奴だが」
「貴様後で覚えてい「こいつには、一つだけでも何かを守りたいと言う心がある」……」
ディロードの言葉にシャインは口を閉じた。
「その想いは決して切れないものとなる。絆や希望となってな。いいか、何度だって言うぞ。希望や絆は決して断ち切れない!」
『貴様は…?』
「最強最悪の仮面ライダーだ。くたばっても覚えてろ!」
お決まりの決め台詞を吐いたと同時にシャインに関連するライダーカードが力を取り戻して現れる。
『…これ以上話していても時間の無駄遣いだ…』
アークはそういうとアークトライデントで王の間の天井を破壊した。
4、5m程の大穴をあけると、其処からは満月が見えた。さらにアークキバットにウェイクアップ・フエッスルを吹かせた。
『ウェイク・アップゥ!!』
♪〜〜♪〜〜
『我が一族に!最後の力を!』
アークが月に向かって叫ぶと同時に、フエッスルの力で胸の鎖(カテナ)が解かれ、封印されていたブラックホールが上空にある月や周囲にあるもの全てを飲みこもうとしている。
二人はそれに危険を感じて、一旦城外へと退避した。
「月が、落ちる!?」
シャインがそう言ったのも無理はない。
何せ、普段は美しく輝いている月には邪悪な眼が取りついているだけでなく、アークのブラックホールによる”ウルティマデッドエンド”によって本当に地上数百メートルにまで引き寄せられていたのだ。
月の眼は月から離れて、アークの胸にあるブラックホールを埋めるようにアークに取りついた。
月の眼の取り込んだことで”レジェンドアーク”として身体はさらに大きくなった上、蔦状の物体が巨大な翼と巨大な腕となり、胸の中心には巨大な一つ眼が不気味な眼光を研ぎ澄ましている。
そして、ベルトのアークキバットもこの影響で仮面が外れてしまいメカキバットとしての姿を現してこう合図する。
『ゴー・トゥー・ヘル!』
地獄に逝け。
その合図と共にレジェンドアークは二人のライダーを巨大な腕で殴りかかろうとする。
しかし、
≪FINAL FORMRIDE…SH・SH・SH・SHINE≫
「堪えろ」
「何?…ウオォ!貴様!?」
『力が…力が漲る!』
シャインはディロードの行動に困惑したが、シャインキバットは寧ろ溢れてくる未知なる力に興奮しているようだった。
シャインの鎧は背中のマントが大きく逞しい翼となり鎧全体を包んでいき、そのなかでシャインが劇的な変化を遂げた。
そして、翼が開いたとき…。
『キイイイィィィィィィィ!!』
まるで魔界城に先制攻撃した飛翔態を白銀にしたかのように威厳と美しさに満ちた姿。
仮面ライダーシャインのFFR…”シャインバット”。
「どうだい気分は?」
『…悪くない。それどころか清々しいまでに魔皇力が身体全体駆け巡って良い感じだぞ』
『俺も同意見だぜ』
シャインバットとシャインキバットが返答する。
「ならば行くぜ、全力全開でな」
ディロードはシャインバットの背中に乗り、シャインバットは白銀の翼で大空を飛翔する。
『なんだ?あの姿は!?』
流石にシャインの姿が変化したことに驚きを隠せないレジェンドアーク。
だがその間にもシャインバットとディロードは距離を縮めていく。
アークはそれを阻止する為に火球のようなエネルギーを放つが、シャインバットの華麗な動きによって全てがかわされた。
シャインバットは避け終わると、お返しとでも言うように口から光弾を放ってアークに当てた。
それに怯んだところへ体当たりをお見舞いする。
「良し。キバって行くぜ!」
ディロードはキバットバット三世の決め台詞を口にしてカードを装填する。
≪FINAL ATTACKRIDE…SH・SH・SH・SHINE≫
シャインバットの頭に移動した幾つかの巨大魔皇石は妖しく輝き、シャインバットの口からはブラッディストライクをも越えた白銀の光線”ディロードメロディ”が発せられた。
『ゴォオオオオオオオオオオ!!』
痛々しい叫び声を上げて、レジェンドアークは地上へと落下する。
シャインバットとディロードはそれに合わせるかのように地上へと降下する。その際にシャインバットはシャインへと戻った。
アークは虫の息ではあったが、死んではいなかった。
ディロードとシャインはお互いの顔を見合せると、頷き合い、アークに向かって走りかけていく。
アークはそうはさせまいと、残り少ないエネルギーを攻撃エネルギーに転換して二人に発射するが、二人はそんなものお構いもせず走るだけ。
アークとの距離が2m辺りになると、ジャンプしてダブルパンチを喰らわせた。
――バギイイイィィィィィン!!――
アークはそれによって吹っ飛ばされ、倒れ伏したと思われたが、少しして起き上がって来た。
『………光の鎧を継ぐ者、魔王よ。何故お前等は戦う?』
身構える二人にこんな質問を投げかけてくるアーク。
「俺には…帰るべき世界が消えてしまった。だから、俺を…いや、俺達の一番安心できる世界を、俺達を一番安心させてくれる世界を探す。…それだけのことだ」
ディロードはそう答えた。
『…光の鎧を継ぐ者よ。貴様は?』
「……私はただ美子と私の世界を守れればよいと思っていた。でも、それは違う。王たるものは…いや、全ての者には自分が守りたいと思うもの以外も守らなければならない時がある。…私は、そう信じている」
混じりっけのない本心を語ったシャイン。
『………我等レジェンドルガが、力では劣る貴様らファンガイアに、古の戦いで敗れたか。死した時より疑問だった。だが、どうやら我はそれを見つけられたようだ』
そう言うまにもアークの身体は粒子となって消えていく。
『…あぁ、我ら一族には。…貴殿等にあるものが、決して断ち切ることも砕けることもないものが、我々にはなかったようだ』
「…アーク…」
胸のところまで消えているアークにディロードは思わず心配するような声を出してしまう。
『…古き一族は去ろう。貴殿等の一族に、希望と絆を願い託してな』
とうとう仮面の部分にまで消えかかっている。
そして、アークがもうこれ以上語ることはないと悟り、シャインは彼に向って頷いた。
それに応えてアークも頷くと、その姿は夜空に似合う綺麗な星屑となって散って行った。
「………」
「………」
二人の戦士はその星屑の光輝きが目に映らなくなるまで夜空を見上げていた。
***
翌日。
とうとう、交と美子の婚礼の儀となった。
本来ならもう少し先という予定だったらしいが、美子が”これからも艱難辛苦を共に味わい、越えていく仲です。散って逝った偉大な王の魂を汚さぬためにも、今日を…困難を越えていくこと思い出す日にもしたいのです”という意見によって、レジェンドルガとの最終決戦の翌日に婚礼の儀は行われることになったのだ。
無論、その式にはこの一件を解決に導いてくれた四人も呼ばれていた。
「それでは、指輪の交換を」
神父の指示によって、二人は指にはめている指輪を外して互いの指にはめなおした。
「誓いの口付を」
出席者たちの見守る中、交はウエディングベールに包まれた美子の唇に自分のそれをそっと重ねた。
その瞬間に出席者たちは歓喜の表情と声を一斉に張り上げた。
「おめでとう!」
「おめでとうございます!」
「おめでとう♪」
「おめでとう」
『めでたいぜぇ!』
上から信彦に和雄に流姫、さらには廻とシャインキバット。
ちなみに四人は流石に状況が状況なのできちんと正装していた。
交と美子は唇を離し、深く抱き合った。
その時だった。
「王よ」
突然交に話しかける男。
その風貌からすると執事ととるべきだろうか。
「…なんだ?」
結婚したことで交の雰囲気は柔らかなものになっていた。
「貴方様に見せたいものがございます」
そういうと執事は指を鳴らした。
すると、交の目の前に台座に突き刺さった一本の剣が突如現れる。
「こ、この剣は!?」
「お引きください。今の貴方様なら引き抜けます。真の王である貴方なら」
不思議と交はその言葉に疑問の念を抱かなかった。
そして、いつの間にかその場全ての者の視線は交と剣に向けられていた。
交は力の限りとでも言うように剣を抜こうとした。だがいつまで経っても剣は抜けない。
その場の者達もダメかと思った時。美子がそっと自分の手と交の手を重ねた。
「大丈夫。私たちならば、いえ私達全員の想いがあれば」
その言葉に交や出席者たちは再び希望を見出した。
そして、二人は渾身の力で剣に力を入れた。
――ガシャアァァァァァン!!――
「お見事です」
台座から抜き放たれた剣。
ザンバットブレードの輝きはこの場に居る者の心を絡め取ってしまうそうなほどに綺麗だった。
「…正直なところ、私は王が結婚なされても、王家に伝わるこの秘剣を渡すことは渋っていました」
「…どうしてだ?」
「私は廻殿達が来る前の貴方様の振舞いに真の王たる風格を見出すことはできませんでした。しかし、仲間を思いやる心。守る為の意思を知っていただいた。貴方様を今一度見て決心しました」
執事の説明に交はこう問う。
「まさか、それをお前に命じたのは…」
「お察しのとおり、先王様にございます」
「……そうか、父上は…私に本当の王になってほしかったのだな…」
死んだ父の思惑を理解した交は、ザンバットブレードを掲げてこう宣言する。
「我、ここに真の王となりて、全ての者に光り輝きを!」
その宣言に廻達を含め出席者たちは心から交に尊敬の念を抱いた。
其の時、ライドセイバーから写真が飛び出し、廻はうまくキャッチした。
その写真には交と美子。そして、ブレながらも写っていたアークと先代キングの姿だった。
***
「そうか、お前たちはもう行ってしまうのか。…廻」
「ようやく名前で呼んだな、交」
「また御縁があれば、いつの日か」
「えぇ、また会いましょう♪」
「交さん、美子さん。…さようなら」
「頑張って王様!」
別れを済ませると、次元の壁は四人を優しく包み込んだ。
残った交と美子は、
「「貴殿等と我等を繋ぐ、絆と希望を…!」」
こうして、世界の救済者・仮面ライダーディロードの使命は終わった。
新たに踏み入れる世界は…。
***
そして此処にも九つの世界を巡りし仮面ライダーとその仲間達がいた。
その仮面ライダーは背景ロールに描かれた絵を見て仲間の女はこう言い、そのライダーたる男はこう言った。
「私の…世界?」
「いよいよ、元の世界に戻るときが来たようだな…」
女の名は”光夏海”。
男の名は”門矢士”…又の名を世界の破壊者、仮面ライダーディケイド。
次回、仮面ライダーディロード
「あれ?今回変化なし?」
「…どうも妙だな…」
「久しぶりだね。ディロード、ディガイド」
「この世界にディケイドが!?」
「お前の力、ボクが試させてもらうよ。…変身」
”ネガ・影に生きる者”
全てを救い、全てを砕け!
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