ネガ・影に生きる者
夢と言うものには様々なものがある。皆さんも経験が御有りだろう。
楽しい夢、怖ろしい夢、悲しい夢、不思議な夢。このほかにも夢は人の数だけ存在する。
だが、時に眠っているときに見るのは夢だけではない”過去の記憶”もまた然りなのだ。
「おい、流姫!しっかりしろ!!」
血まみれで倒れるディガイドを必死に抱き起こす廻。
その周囲には全仮面ライダー、そして。
キバ・エンペラーフォーム。
電王・ライナーフォーム。
カブト・ハイパーフォーム。
装甲響鬼。
ブレイド・キングフォーム。
ファイズ・ブラスターフォーム。
龍騎サバイブ。
アギト・シャイニングフォーム。
クウガ・アルティメットフォーム。
九人の最強フォームのライダー達。
廻はディガイドを優しく寝かせると、ディロードライバーを装着。
「破壊してやる…。全てを破壊してやるゥウウウ!!」
≪KAMEN RIDE…DEROAD≫
***
「………ん?…あれ、アタシは…?」
気がついたディガイドは目を覚ました直後にとんでもない光景を目の当たりにした。
幾重にも及ぶ死屍累々。
血によって染まり果てた大地。
死体が放つ独特の異臭。
そんな生き地獄とも思える凄惨な戦場地で一人だけ立っていた。
周りに九人の最強形態のライダーの死体に囲まれ、その九人のFKRとそれ以外に全ライダーのカードを手にしていたディロードの姿だった。アーマーには夥しい量の血液がこびりついていて、見る者全ての戦意を喪失させそうなほどの殺気があった。
「破壊した……俺は…俺は…!」
「……廻……」
世界の救済者、ディロード。幾つもの世界を巡り、その心は何を映す?
「……………ッ!!」
九つ目の世界を出て、もう新しい世界についていた時、一行は安らかな眠りについていた。
しかし、廻だけは…。
(もう、四年も前のことだと言うのに…。俺の罪は、幾ら救っても消えんのか…)
まだ他の者達が眠る中、廻は一人思っていた。
***
「あれ?今回変化なし!?」
小屋を出て和雄の第一声がこれだった。
そう、流姫の服装は普段通りで全く変化がなかったのだ。
それを知った廻の眼は鋭かった。
「…妙だな…」
「え?どういうことだい、廻?」
「九つの世界を巡る旅は終わった。…しかし、それならば自動的に次元の壁が現れると言うのは不自然だ。もう俺達を必要とする場所はない筈…」
使命を背負う以前の廻達は自分の意思で気ままに次元戦士の力で次元の壁を使って世界を越えてきた。
使命が終わった今となっては自らの意思が働かなければ次元の壁は現れない。廻か流姫が変身してライドプレートの力で次元の壁を呼び出さなければならないのだから。
「となると、私達の使命たる旅はまだ続くと言うことですか?」
「その通りだ」
「「「!!!??」」」
三人はいきなり背後からの声に驚いた。だが一人だけ平然としている者がいた。
「鳴滝か」
「久しぶりだな。ディロード、ディガイド」
鳴滝
次元に干渉する力を持った眼鏡と帽子を身につけた謎の男。
現在は”世界の破壊者”と言われるディケイドを敵視している。
「何しにきた?今頃になって」
「なに、君達に忠告をと思ってね」
「だ、誰なんですか?」
「鳴滝さん」
「あの人が…。僕も実際に見るのは初めてだ」
現れた鳴滝に和雄は質問し、流姫はそれに答え、信彦は感想を漏らす。
「忠告だと…?」
「そう、世界の救済者たる君達にね」
「ならば、さっさと言え」
「変わらんな君は…。まあ良い、この世界には今ディケイドがいる」
「この世界にディケイドが!?」
廻は大声を出して驚く。
「君達と奴は交わるべきではない。いや、この…ネガの世界も君達には相応しくない」
「ネガ……そうか、ここは影の世界であったか」
「君はもう昔の君じゃない。ディロード、君を必要とする世界はほかにある」
そういって鳴滝は消えて行った。
「……必要だと?どの世界が俺を必要としているなんざ関係無い。俺は俺の行きたい場所に行くだけだな」
「…廻…」
決意に満ちた雰囲気で廻はそう言った。
***
その後、適当に四人で街中を探索した。
そんな中で、廻を除く一行は心を痛めていた。
「あの……廻さん」
「なんだ?」
「今さ、滅茶苦茶見られてるよ、僕ら」
「その仮面、外して」
そう町の住人から痛い視線を浴びていたのだ。
そりゃそうだ。住人の大半が怪人と言えども仮面にスーツという、いかにも怪しさ全開の格好をしていれば目も引くだろう。
皆、ヒソヒソと話しているので余計に居たたまれない。
「やだよ、メンどい」
「「「えぇぇ〜…」」」
拒否した廻に三人はこれでもかと言うくらいにウンザリした声を揃える。
「ねえ君達」
と、その時に聞こえてきた声。
「誰?」
一行が振り返って見ると、そこにはボーイッシュな服装をした女性が居た。
「ライダーだね?」
「だったら、どうする?」
廻は女の問いにそう答える。
「なら、戦ってよ。他の連中からそう命じられてるしさ」
「他の?」
流姫は女の言葉に困惑する。
「良いだろう、だが、ここでは目立つ。場所を変えるぞ」
「オッケー♪」
***
町の郊外。
廻は既にベルトを装着している。
女もバックルが赤く染まったベルトを装着した。
装着した途端にピッチの低いメロディが流れ始まる。
「お前の力、ボクが試してあげるよ。…変身」
女は”ライダーパス”をバックルにかざす。
≪NEGA FORM≫
電王・ソードフォームと瓜二つの形をしたトライバル柄の刺青のような模様のある紫色のオーラアーマー。仮面ライダーネガ電王である。
「…ほ〜、ネガ電王か。ならば、俺も…変身」
≪KAMEN RIDE…DEROAD≫
対抗して廻も変身する。
尚、流姫・信彦・和雄の三人はここにいない。廻自身が街でもう少しディケイドを探してくれと頼んだから。
「それじゃ、キバるぜ。変身ッ!」
≪KAMEN RIDE…SHINE≫
シャインへと変身すると、さらにカード装填。
≪ATTACK RIDE…ZANBAT BLADE≫
ザンバットブレードを呼び出して構える。
「へ〜、それが九つの世界で手に入れた力か…でも、オレは負けない」
いつの間にか一人称が変化している。
ネガ電王はベルトのサイド部にセットされている四つのパーツを組みたててソードモードとした。
「ハアァァァァァ!!」
「ゼァァァァァァ!!」
――バギンッ!!――
金属が折れる音。
無論折れたのは、ソードモードの刃だった。
ハッと気づいたネガ電王はすぐさま別モードに組み立てようとするが、その隙を逃すディロードではない。カードを装填して、剣を構えた。
≪FINAL ATTACKRIDE…SH・SH・SH・SHINE≫
ザンバットブレードの刀身は青く輝いて行き、Dシャインは剣を振って、魔皇力の刃をネガ電王へと飛ばした。
「ダハァァァ!」
ザンバットブレードの必殺技”ザンバット光斬”を受けたネガ電王は変身を強制解除されてしまう。
「つ、強すぎる…!」
自分たちとは次元の、正しく化け物級の強さに女は自分がどれほどの者を”試す”だなんて命知らずなことを口走ったのかを再認識する。
ディロードは変身を解除して女に近づく。
「教えてもらうぞ。お前に命令を出したのは誰だ?そして、試すと言う意味は?」
「う、うるさい!」
女はやけになって廻の仮面を横薙ぎに叩いた。
「ッ!!」
――カタン…!――
それによって常に身につけていた仮面が取れて地面に落ちてしまった。
「「あ…」」
二人は同時に声を出した。
女の視線は廻の顔に釘付けだった。
(………カッコイイ///)
「どうした?顔が赤くなってるぞ」
指摘された女はこれでもかと言うくらいに慌てた。
そう、仮面のせいで色々と台無しだが。廻は美形という言葉ですら余るほど、顔立ちが整っていたのだ。最も、仮面をつけていることから、本人にとってはどうでも良いことなのだろうが。
「あの!あなたのお名前は?」
「え?…砕谷 廻」
女の不意打ち的な行動に廻は少し戸惑いながらも答えた。
どうやら、女は廻に惚れてしまったようだ。
結果として、廻はいともたやすく情報を聞き出すことができた。
「ダークキバ…それに他のダークライダーもか…。ところでお前良いのか?裏切るような真似してよ」
「ボクはほかの連中とは違って化け物じゃない。人間だから、どのみち何時かは殺される。だったらと思ってね」
「何?人間?」
聞くところによるとその女、時峰劉子はネガの世界における貴重な人間の生き残りで、偶然見つけたライダーパスによってネガ電王となり、今までは殺されずにすんでいたらしい。
「そうか、だったらこの世界から出て別の世界に行ってみないか?」
「はい?」
「情報を聞かせてくれた礼だ。とりあえず、ダークキバがどこにいるか教えろ」
「……たぶん今頃、ディケイドに宝を渡そうとしている筈だけど…」
「そいつはますます好都合だ」
こうして廻は劉子を連れてダークキバ。そしてディケイドの元に向かった。
次回、仮面ライダーディロード
「ようやく最高の宝が我々の手に戻った」
「この銃が俺の宝…?」
「通りすがりの…」
「最強最悪の…」
「「仮面ライダーだ。覚えておけ…!」」
"破壊者と救済者”
全てを救い、全てを砕け!
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