Eの娘はヴィヴィオ/姉【ギンガ】
「………またか」
ゼロはこの一言の後に眠りから覚めた。
その身体にはヴィヴィオがしがみついている。
いつもは天井や壁を寝床にするゼロだが、ヴィヴィオがゼロとリインフォースと一緒に寝たいと言い出し、リインフォースもそれを了承したことで、仕方なくゼロも三人一緒に同じベッドで寝ていたのだ。
「……ふぁ〜、おはようございます」
「ん〜…おはよう。パパ、ママ」
遅れてリインフォースとヴィヴィオも起きた。
「…ああ、おはよう」
こうして今日一日が始まる。
*****
訓練場。
ギンガと、十年前からなのは達のデバイス整備を手掛けているマリエル・アテンザがしばしの間機動六課に出向・滞在することとなり、紹介が済むと早速朝練が始まった。
しかし、なのはの提案によってスバルとギンガは一対一の模擬戦をすることになり、スバルはあと一歩のところでギンガに負けてしまったということをゼロは模擬戦終了後にやってきた聞いた。
ギンガはゼロに良いところを見せることができず、少し悔しげだったけど。
だが、そんな気持ちはちっぽけと思えるくらいにギンガの心が大きく動く出来事が、この後起こる。
「それじゃあ、ここまで。全員ジャケットを解除してね」
「「「「「はい…」」」」」
フォワード陣対前線隊長陣。
そんなハードな模擬戦にフォワード側で組み込まれたギンガ。
四人の仲間がいりとはいえ、向こう四人の強力魔導師、そんな人達を相手にしたこともあって息絶え絶え状態だった。
朝練終了をなのはから言い渡され、五人はクールダウンをしていた。
「やはり、良いな。必死になって進化しようとする人間の姿と言うのは」
「ここのところよく此処の訓練場に来ますねゼロ」
そんな五人をゼロとリインフォースは観察していた。
「魔人は人間では一生到達しきれない領域に身を置くからな。故に強くなろうとする努力など物好きしかやらぬ。しかし、人間は魔人に比べて遥かに脆い生命だ。だからこそ短い一生の中において進化の可能性を求め続ける。おまけに危機的状況に追い込めばそのスピードは跳ね上がる。見ていて実に好ましいと思わないか?」
ゼロが最近訓練場で前線メンバーの模擬戦などを観戦していた理由。
「まあ、間違ってはいないと思いますね」
リインフォースが当り障りの無い返事をすると、
「ママー!パパー!」
「ヴィヴィオー!」
「言っておくが、こんな何もないところで転ぶなんてギャグ的……転んだ」
ヴィヴィオがゼロとリインフォース呼びながら走って来ると、ヴィヴィオは転んだ。
それを見てほかの連中も「あ…」と口から漏らした。
「あ、大変!」
リインフォースがヴィヴィオを起こしに行こうとすると、ゼロが制した。
「問題ない。地面は柔らかい、転び方もそこそこ…怪我はしていないはずだ」
「でも…」
「…ヴィヴィオ、大丈夫だよな?」
ヴィヴィオは顔を上げるも、眼には涙が…。
「怪我してないな。とりあえず自分の足で立って、自分の足でここまでこい」
「パパ…!」
「私は此処にいるぞ。…私の娘なら、来れるよな?自分の力で?」
優しめに論ずるゼロだが、ヴィヴィオは完全に泣いている。
「来るんだ」
「ゼロ、ダメですよ。ヴィヴィオはまだ小さいんですから」
ゼロはあくまでヴィヴィオには自力で来させようとするが、リインフォースは我慢しきれずにヴィヴィオを抱き起こしに行ってしまう。
「ママ…」
「気を付けてくださいね。ヴィヴィオにもし何かあったら、私もゼロも心配しちゃいますから」
「…ごめんなさい」
ヴィヴィオは素直に謝った。
「おいおい、リインフォース。無闇に甘やかすな、それでも母親か?」
「ゼロがきつ過ぎるんですよ。父親だからってやり過ぎなんです」
「…ヴィヴィオ、今度は絶対に頑張れるよな?」
「…うん」
傍から見れば、幸せな一般家庭に見えて仕方ない。
しかしここに色々と混乱している方が…。
「ゼロさんがパパで、リインフォースさんがママ?それにあのお子さんの歳を考えると…二人は、二人は…とっくの昔にあんなことやこんなことを…!?」
「ギン姉!戻ってきてェー!」
ギンガは桃色妄想に取り憑かれていた。
*****
「ヴィヴィオ、髪の毛可愛いね」
「パパとママに貰ったリボンと髪飾りなの♪」
「アイナさんがしてくれたんだよね」
「良い感じだよヴィヴィオ」
キャロが指摘した髪飾りと青いリボン。
髪飾りはゼロ、リボンはリインフォースが用意したものだ。
髪飾りの形はゼロが普段から身につけている魔界電池と同じ形だった。
「成程、保護児童なのね」
「道理で…(私ったら…)」
マリエルはヴィヴィオのことを普通に納得したものの、ギンガはあらぬ妄想をした後と言うこともあって、少し自分自身に恥を感じたのは言うまでもない話だ。
「僕がフェイトさんに助けられた時と同じような感じです」
「ゼロさんとリインフォースさんが両親ってことになってるんです」
シャーリーとエリオがさらに説明した。
食堂の席に座ると、ヴィヴィオはオムライスを口の中に頬張る。
「ちゃんと良く噛んでくださいね?」
「うん♪」
なんだかリインフォースも母親と言うものが板につきつつある。
「しっかしまあ、子供ってのは泣いたり笑ったりの感情の切り替えが早いわね」
「スバルの小っちゃいころも、あんなだったわよね?」
「え…?そ、そうかな?」
そう言われるとスバルは薄らと顔を赤くする。
「リインちゃんも」
「え〜?リインは最初っから割と大人でしたー!」
「嘘をつけ」
「体は兎も角、中身は赤ん坊だったじゃねえか」
リインは身内にすらそう言われる始末、なんだか仕方ないと思える気がするから不思議だ。
「ん〜、はやてちゃん。違いますよね?」
「フフ、どうやったかな?」
悪戯めいた微笑みをしながらはやては答えをはぐらかす。
「おや?ヴィヴィオ、ピーマン残してるぞ」
「苦いの嫌ーい!」
「え?案外美味しいですよ」
「それにヴィヴィオ。私は喰うことのできるモノはトンデモなく限られているから、貴様達のようにどんな食糧も喰えてエネルギーにできる奴らが羨ましいんだぞ」
ゼロもなんだか父親が板についてきている。
しかも『欲望』喰らいの魔人である自分の状況までもを利用している。
「うーん…わかった、食べる」
「良く言いましたね、ヴィヴィオ」
ゼロの説得に応じてピーマンを文字通り苦い顔で食べたヴィヴィオに、リインフォースは優しく頭をなでてやった。
ヴィヴィオは嬉しそうに笑った。
*****
一方、ナンバーズ。
そこでは長女・ウーノが自分の指を何度も何度も動かしていた。
まるで機械を組み立て終えた後に行うテストのように。
「ウーノお姉様〜!御素敵です〜!」
「新しい身体、どう?」
「良いに決まってるでしょ。貴女たちの動作データが活きてるもの」
この場にはウーノの他にクアットロとディエチがいた。
「妹たちも皆順調です〜♪No.7・セッテ。No.8・オットー。No.12・ディードも、基本ベースとIS動作までは完成です」
「9番ノーヴェと11番ウェンディの固有武装も、無事完成」
「2番ドゥーエ、5番チンクは既に任務中。…良いペースね」
そんで、セインとトーレは…。
「この屑鉄も、予定生産量は余裕でクリアだってさ。これ、ガジェット・ドローンって名前なんだっけ?」
「管理局の連中が、そう名付けたそうだ。以来ドクターやウーノもそう呼ぶようになったと聞いた」
「うわー、いい加減」
セインはスカリエッティの敵当さにあきれる。
「名称など、どうでもいいからな。我々の名も、只の数字だ」
「あたしは結構好きだけどな。自分の名前とか、能力名とか」
「…下らん」
そして、スカリエッティとヘルは…。
「祭りの日は近い。君達も楽しみだろう?」
「たっぷりと遊べるよ?」
両サイドには無数のガジェットのある通路。
「あー、武装も完成したし、ドカンと一発暴れてみたいっすね〜」
そういったのはNo.11のウェンディ。
「君達は最前衛用の能力だ。存分に暴れられるぞ」
「今まで我慢してきた分、派手にね♪」
「だって。楽しみだね、ノーヴェ」
「別に。あたしは、確かめたいことがあるだけだし。あたし達の王様がどんな奴か?そいつは本当に、あたし達の上に立つのに相応しい奴なのかどうか?」
ノーヴェの意見に、スカリエッティとヘルは皮肉気に笑う。
「まあ、良く分かんないけど。それすぐわかるんっすよね?」
ウェンディの言葉に二人は大量のレリックが収められた台の前に立つ。
「そうとも。準備は整いつつある。一つ大きな花火を、撃ちあげようじゃないか!」
スカリエッティが狂気満ちた笑いをし出した。
「フフフ♪ゼロ様、待っていて下さいね?もう直ぐ会いに行きますからね?」
少年のような口調から打って変って、妖艶な女口調になるヘル。
「フハハハハハハ!間違いなく、素晴らしく楽しい一時になる!アッハハハハハ!ウッハハハハハハ!」
「ボクもだよ!フフフフフ♪」
【VANITY】
『アッハハハハハハハハハ!!』
ヘルはガイアドライバーのバックルにメモリを挿入すると、奴の身体は銀色に身を染めた悪魔の如き怪人、バニティー・ドーパントに変貌する。
時空管理局地上本部
後悔陳述会まで
あと7日。
刻々と迫る運命の時は、また一歩一歩と近づいて行く…。
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次回、仮面ライダーイーヴィル。
VとSの計画/前【ぜんぺん】
「この『欲望』はもう、私の手中にある…」
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