二人のN/各【それぞれ】
スカリエッティのアジト内部。
「烈風一迅!斬り裂け、ヴィンデルシャフト!」
シャッハはカートリッジをロードしてガジェットをヴィンデルシャフトの斬撃で破壊。
「ハアァァァァァ!!」
フェイトもザンバーフォームになったバルディッシュの巨大な魔力刃による力技でガジェットを粉砕。
【NAIL・MAXIMUM DRIVE】
「ネイルダウンフォース!!」
ネイルも必殺技を決めて複数のガジェットを粉砕。
三人はその場にいるガジェットを全て破壊して、お互いの顔を見合うと、向かいの通路から
本局所属の査察官、ヴェロッサ・アコースの偵察向きレアスキル。無限の猟犬”ウンエントリヒ・ヤークト”が現れる。
「別動隊、通路確認。危険物の順次封印を行います」
「了解」
他のルートを進んでいた隊員達の報告を聞いてフェイトは返事をする。
「各突入ルートは、アコース査察官の指示通りに」
「はい!」
通信はそこで一旦途切れた。
「ありがとうございます。シスターシャッハ。お二人の調査のお蔭で、迷わず進めます」
「探査はロッサの専門です。このこ達が頑張ってくれました」
シャッハは猟犬を見ながらそう言った。
「良し。このまま突っ切って、スカリエッティのところに赴こう」
ネイルが仕切り台詞を言って、二人は返事をした。
そうして三人はスカリエッティのアジトの奥深く、ラボと呼ばれる領域に足を踏み入れる。
そこには数多くの人間がカプセルの中に入れられていた。
しかも、入れられている人たちは女性なうえに裸なので、男であるネイルは目のやり場に困ったが…。
「これは…人体実験の素体?」
「だと思います。人の命を弄び、ただの実験材料として扱う。あの男がしてきたのは、こういう研究なんです」
フェイトは険しい顔でそう言った。
「一秒でも早く、止めなくてはなりませんね」
「それ以前に、我には肩身の狭い空間だ…」
シャッハは兎も角、ネイルの言葉には少々緊張感が欠けている気がする。
其の時、ラボにて地震のようなものが起こって真上にあった未起動のガジェットが落ちてくるのを悟り、ネイルとフェイトは急いでジャンプで離れたが、シャッハはセインが床下から出てきて足を掴まれてしまう。
「シスター!!」
さらに、そのタイミングで二つのブーメランブレードが飛んできてフェイトとネイルは各自の武器でそれを弾く。シャッハもガジェットが落ちてくる前にヴィンデルシャフトの打撃で床を粉砕し、自ら地下に降りることで危険を回避する。
(おい!大丈夫か?)
(シスター?)
(ディアンさん、フェイト執務官。こちらは無事です、大丈夫。戦闘機人を一機、捕捉しました。この子を確保次第、直ぐにそちらに合流します)
念話を終えるとフェイトはそれに了解する。
そして前方にいるトーレとセッテに視線を向ける。
「フェイトお嬢様。こちらにいらしたのは、帰還ですか?それとも反逆ですか?」
「どっちも違う。犯罪者の逮捕。それだけだ」
「ヘルの居場所を吐いてもらう」
*****
ミッドチルダ、地上本部前。
ゼストとアギトはレジアスとの再会を果たすべく地上本部に向かっていた。
しかし、そこにはシグナムとリインが待ち構えていた。
「局の騎士か?」
「本局機動六課、シグナム二尉です。前所属は首都防衛隊。貴方の後輩と言うことになります」
「そうか」
「中央本部でも、壊しに行かれるのですか?」
シグナムは短刀直入に聞いた。
「旧い友人に、レジアスに会いに行くだけだ」
「それは復讐のため?」
シグナムはゼストの過去をある程度は知っていた。
「言葉では語れるものではない。道を開けてもらおう」
「言葉にして貰わねば、譲れる道も譲れません」
二人の騎士は互いのアームドデバイスを構える。
そしてレバンティンの刀身にカートリッジのロードと同時に炎が巻き起こると、アギトは驚く。
「アギト。どうかしたか?」
「な、なんでもねえ!…ぐだぐだ語るなんてな、騎士のやるこっちゃねえんだよ!」
融合したことで、ゼストの髪やバリアジャケットは金色、瞳の色は赤に変化する。
「騎士とか、そうでないとか、お話しないで意地を張っちゃうから戦いになっちゃうですよ!」
リインとシグナムも融合し、シグナムの騎士甲冑や髪は紫、瞳は青に変化する。
『うるせー!バッテンチビ!剣聖アギト、大義と友人ゼストがために、この手の炎で押して参る!』
『祝福の風、リインフォース・ツヴァイ。管理局の一員として、貴方方を止めさせてもらいます!』
「行きます…!」
「…ッ!」
*****
再びスカリエッティのアジト。
「ハアァァァァ!!」
「オォォォォォォ!!」
フェイトとネイルはトーレとセッテの二人を相手に互角の勝負をしていた。
フェイトがセッテに攻撃すると、セッテはシールドを張って防御。
「IS・スローターアームズ」
先程から投げ続けたブーメランブレードはセッテの操作によってフェイトの身に降りかかる。無論フェイトがそれを振り払うと、今度はトーレがインパルスブレードでフェイトに襲いかかる。
【NATURAL】
【TORNADO】
すかさずネイルがナチュラルメモリのトルネードを起動させて、攻撃を相殺させる。
「ありがとうござい「よそ見するな。くたばりたいのか?」
礼を言う前にネイルは辛辣な台詞を投げかける。
原作での二対一だった場合、かなりきつい戦況だったかもしれないが、今この場で繰り広げられているのは二対二。負担もかなり軽くなっている。
(AMFが重い。早くこの二人を倒して先に進まなきゃいけない。…ソニックもライオットもまだ使えない。あれを使ったら、もう後がなくなってディアンさんの足手纏いに…。なによりスカリエッティに辿り着けなくなったら最悪だし。対応できても、ほかの皆の救援や援護に回れなくなる)
フェイトはこの戦況を冷静に分析する。
其の時、スカリエッティがモニターを開いた。
「や〜。御機嫌よう。フェイト・テスタロッサ執務官に、仮面ライダーネイル」
「スカリエッティ!」
「どの面下げて登場してきた!?」
当然、フェイトとネイルの雰囲気は険悪極まる。
「まあ、そう言うな、…我々の楽しい祭りの序章は、いまやクライマックスだ」
「なにが楽しい祭りだ!ミッドの地上を混乱させている、重犯罪者が!!」
いままでディアンは聞いたことの無いフェイトのドスの効いた大声に多少驚く。
「重犯罪?人造魔導師や戦闘機人計画の事かい?それとも私がその根幹を設計し、君の母君プレシア・テスタロッサが完成させたプロジェクトFのことかい?」
「全部だ」
「いつの世でも革新的な人間は退けられるものだね」
「そんな傲慢で、人の命や運命を弄んで…」
「貴重な材料を無差別に破壊したり、必要もなく殺したりはしてはいないさ。尊い実験材料に変えてやったのだよ。価値の無い、無駄な命を」
その言葉を耳にして、
【FIRE】
「このォォォォォォ!!」
「外道がァァァァァ!!」
二人は雷と炎を武器に宿した。
「来る!」
「はい!」
トーレとセッテが身構えると、スカリエッティが指を鳴らした。
床には魔法陣に似た赤いテンプレートが出現し、そこから赤い光線が二人を狙う。
当然それを避けるフェイトとネイルだが、途中フェイトが足とバルディッシュを赤い光線に絡め取られてしまう。
「テスタロッサ!!」
ネイルがそれを斬り裂こうとすると、
「ライドインパルス!」
「スローターアームズ!」
IS攻撃によってそれを阻まれる。
「普段は温厚かつ冷静でも、怒りと憎しみには、すぐに我を見失う」
モニターではなく、直にフェイトとネイルの前に現れたスカリエッティ。
その右手にはグローブ型のデバイスが装着されており、スカリエッティが右手を拳にすると、赤い光線はバルディッシュの魔力刃を締め付けて砕いた。
フェイトがそれに驚いている間にスカリエッティがエネルギー弾をフェイトに向けて発射した。
「させるか!リベンジャー!!」
ネイルの叫びに呼応して、外に待機させていたリベンジャーが自立走行で走って来ると、ネイルはネルギー弾の前に躍り出てネイルクローで弾く。
その隙をついてトーレ・セッテは攻撃しようとするも、リベンジャーが二人に体当たりしようと走り回り、攻撃は空ぶってしまう。
「なんどよそ見すりゃ気が済む?」
「す、すいまってイタタタタタ!!」
ネイルはフェイトの頭に両拳を置いてグリグリする。
そんな光景に戦闘機人二人は唖然とするも、スカリエッティだけはシリアスムードを保って、二人をまとめて拘束する。
「君のその性格は、正に母親譲りだよ。フェイト・テスタロッサ」
*****
「レバンティン!」
【SCHLANGEN FORM】
シグナムは一旦レバンティンを鞘に納めてカートリッジをロードさせる。
『炎熱加速!』
シグナムとリインは同じ動きをしてシュランゲフォルムとなったレバンティンを解き放つ。
「『飛竜一閃!!』」
ゼストも槍型デバイスにカートリッジをロードさせる。
『炎熱消去!衝撃加速!』
双方の攻撃がぶつかり合うと、魔力を纏っていた筈の連結刃は勢いを失ってしまう。
当然シグナムとリインはそれに驚いた。
ゼストは其の気に乗じて、攻撃を行い、シグナムもそれを防ぐ。
しかしながら、ゼストの重い一撃はレバンティンの刃に食い込んでおり、ゼストが掛け声とともにさらに力を入れると、レバンティンの刀身は砕け散る。
シグナムは翼を失った鳥のように落下していくが、地面への激突寸前に魔法陣を発生させてクッションにした。
「しまった…」
『ロストはしてません。追いかけるです!』
思ったよりダメージの少ないシグナムとリイン。
しかし、こっちは…。
「旦那…」
ゼストの身体にはもう余裕と言うものが残されているのかどうかが怪しいかった。
アギトが心配するのも頷ける。
「すまんなアギト。ユニゾンしてくれても、もうお前の炎を殆ど使ってやれん」
「構わねーよ。旦那を守る方法は、まだまだあるんだ」
申し訳なさそうにするゼストにアギトはそう明るくふるまう。
「…シグナムと言ったな?あれは良い騎士だな。あの剣戦に炎熱能力。お前の言っていた理想のロードに丁度適合するな」
「な、なんだよそれ?」
アギトは全身で嫌な予感を感じた。
「あの太刀筋は紛れもなく、真性のベルカの騎士。お前と同じ、どこかで保存されて、眠ってでもいたか…」
「違うよ!なんでそんな奴が管理局にいるんだよ!?」
アギトの叫びを無視するかのようにゼストは話を進める。
「魔力光の色まで、お前と適合する。だとするなら、あるいは…」
「止めてくれよ!敵だぞあいつは!頼むよ、あたしのことなんて考えないでさ、自分の為に全力で頑張ってよ…」
いつもは明るく強気なアギトが、ゼストのため、涙までもを流して必死に止めようとする。
*****
地上本部の一室。
そこにはレジアス中将と副官オーリス。さらには”二人”の管理局員の男女が居た。
「オーリス。お前はもう下がれ」
「それは、貴方もですよ、貴方にはもう、指揮権限はありません。ここにいる意味はない筈です」
「…わしは、ここにおらねばならんのだよ」
レジアスとオーリスがで議論していると、突如大きな地響きと音が聞こえた。
「手荒い来訪ですまんな。レジアス」
「…構わんよ、ゼスト」
レジアスを庇うようにした体勢とったオーリスだが、父親から発せられた名前に眼を見開く。
「ゼスト…さん?」
オーリスの記憶では、ゼストは八年前に故人となっていた。
スカリエッティと関わりの薄い彼女がゼストのことについて知らなくても仕方ない。
「オーリスはお前の副官か?」
「頭がキレるぶん、我儘でな。子供のころから変わらん」
ゼストは懐に手をいれ、
「聞きたいことは。一つだけだ」
二枚の古い写真をレジアスの机の上に…。
その内の一枚には八年前にゼストが隊長を務めていた部隊員の姿があった。
なかにはギンガとスバルの母親であるクイント・ナカジマとルーテシアの母親であるメガーヌ・アルピーノの姿もあった。
「八年前。俺と、俺の部下たちを殺させたのは…お前の指示で間違いないな?」
ゼストの問いに、レジアスは沈黙する。
「共に語り合った、俺とお前の正義は、今はどうなっている?」
そして、もう一枚の写真には…若かりし頃のゼストとレジアスの写真があった。
「お前に問いたかった。俺はいい、お前の正義の為になら殉ずる覚悟があった。だが、俺の部下たちは、何のために死んで行った?どうして、こんなことになってしまった?俺達が守りたかった世界は、俺達が欲しかった力は、俺とお前が夢見た正義は、いつのまにこんな姿になってしまった…」
ゼストは悲しげな表情でそう説いた。
その瞬間、
【SHADOW】
『お涙頂戴の、昔話は済んだかい?』
「「「!!?」」」
突然聞こえてきた、見知らぬ声にゼスト・レジアス・オーリスは驚愕する。
「退いて!!」
――バンッ!!――
銃声が鳴る寸前にその場にいた女性局員がレジアスの身体を押しのけ、代わりに銃弾を肩に喰らってしまった。
『ありゃ?ご到着が遅いかと思ったら…ドゥーエさん。クアットロさんからも尊敬された貴女が裏切るとはね〜』
天井からは真っ黒なマントを全身に纏ったかのようなシャドウ・ドーパントが現れる。
撃たれた女性の姿は青いボディスーツに長い金髪の美女、ドゥーエの姿に戻ってしまう。
「あら人聞きの悪い。私はこの方に脅されていたのよ?」
ドゥーエは部屋の隅で子羊のように震える男性局員を指さす。
「いえいえ!僕がそんな恐れ多いことするわけ無いじゃないですか!」
男性局員は弱弱しい態度で否定する。
『…まあ良い。もし仮に万が一貴女が失敗したら、用済み連中は俺が始末をつけるように言われてますからね』
シャドウがそう言うと、シグナムとアギトが部屋の中に入って来た。
「旦那!!」
「アギト…!」
『仕事増やすなよ…なッ!』
――バンッ!!――
「ンギャッ!!」
――バタン…!――
シャドウの銃弾を目玉に喰らい、男性局員は少し吹っ飛ばされて倒れた。
『さ〜て、邪魔なの死んだし。後は用済み者消して、裏切り者の確保だな』
「…誰が、何だって?」
シャドウの言葉の直後、撃たれたはずの男性局員が声を発し、皆はそれに驚く。
すると、局員の服装は淡い光と共に青いスーツとなり、
何食わぬ顔で起き上がって来た。
しかも無傷で。
『て、テメー何者だ?』
「我が輩の名は脳噛ネウロ。『謎』を喰って生きる、魔界の生物だ」
男性局員の正体は魔界777ッ能力によって潜入していたネウロだったのだ。
ネウロの自己紹介にシグナムは…。
「魔界…。まかさ貴様、無限と同じ魔人!?」
「あぁ。ゼロから大体の事情は聞かせてもらった。唯一無二の親友の為、貴様らに力を貸してやる。ありがたく思え」
偉そうに傲岸不遜な振舞いをするネウロ。
『ふん、偉そうに!テメーみたなヒョロヒョロ雑魚は俺に殺されてろ!』
シャドウは己の肉体に劇的変化を起こし、超人的な腕力を振ってネウロを殴り殺そうとする。
――ガシッ!――
「ど、ドーパントの一撃を素手で…」
レジアスはネウロがシャドウの拳を指一本で止めたことに驚く。
「我が輩を殺す?雑魚なダニがほざくな。ゴミめ!」
ネウロはシャドウの腕を掴むと、
――ボキッ!バギッ!――
『グアァァァァァァァアアア!!』
シャドウの腕の骨を折った。
さらにネウロはシャドウを部屋の外に蹴とばした。
「さて、本格的な拷問タイムだ♪」
『ひ、ヒイィーーー!助け――ズバッ!――…アガアァァァァァ!俺の腕が!!』
ネウロによって片腕を前腕部ごと叩っ切られたシャドウは必死になって腕を抑える。
「魔界777ッ能力…激痛の翼
我が輩お気に入りの能力で、貴様には想像絶する地獄を味わってもらおう」
『ふ、ふざけるな!そんな虚仮威(こけおど)しで!!』
――バシッ!――
「この能力には大して特別な能力は無い。だが我が輩の最もしたいことを察して動いてくれる。一枚目の翼が敵の能力を無力化し、二枚目の翼が体内に入り込んで…」
――メリメリメリメリメリメリ…!!――
言葉通り、イビルトーチャラーはネウロの思惑のままに動いた。
「体内で思い切り羽ばたくのだ」
――グチャグチャグチャグチャ!!――
『ぎあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!』
「安心しろ。急所は外してある。その周囲にある肉や粗末な内臓を丹念にミンチにするだけだ」
さらにイビルトーチャラーはシャドウの身体を床に叩きつけ、肋骨を何本か折った。
『ぐおおおおお…!!』
「フムフム、DRの時に比べておる本数は調整できたな」
「痛い…痛すぎる…!」
「おや、拷問はまだ第一段階だぞ」
逃げようと身体を引きずるシャドウにネウロはそう言い放つ。
(い、今の内に得意になっていろ化物め!俺は逃げているんじゃない、誘い込んでいるんだ!)
シャドウは建物の構造上、袋小路になっている場所にまで行ってネウロを誘い込むと、
「喰らえ化物」
――ドカァァァーーーーーン!!――
壁内部に仕掛けられていた爆薬が炸裂し、辺り一面は火の海になる。
(ククク!例えどんな防御を張ろうと、これ程の爆発を受けて平気なわけ無い。今の内に逃げる)
シャドウは爆発寸前に骨格や筋肉を防御に適したものに変化させて爆発に耐えていた。
だが彼は致命的なミスを犯した。
(…ん?おかしいな?いつまで経っても体が前に進まん…)
――メキメキメキメキ…!――
身体に嫌な音が走るのを聞いて、振り向くと…。
「一億度の業火にも耐え、核兵器の爆撃でも死なない我が輩に、この程度の策で殺せると思ったか?」
イビルトーチャラーの翼でシャドウの身体を縛る…無傷なネウロの姿。
「それでは拷問を…続けようか?…貴様にとっておきのプレゼントがあるぞ」
ネウロから何処からともなく花火を数本持ち出し、それをシャドウの肛門にぶっ刺した。
『!!?///』
予想だにつかない場所にとんでもないものを突っ込まれ、シャドウは驚愕と羞恥、二つの感情を同時に味わう。
――パチッ!――
『〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!!』
次の瞬間、ネウロは魔力を使って花火の火薬を着火させ…。
色んな意味きつ過ぎるネウロの拷問。
シャドウはケツをおさえて忙しなく転がりまわる。
「さて、我が輩への命知らずの暴行への罪の裁きは、この辺にしておくか」
(や、やっと終わった)
シャドウは心の底から安心する。
だがそれも大きな間違い。
「…では引き続いて…我が親友を愚弄され、傷つけられたこの怒りを貴様の身体で晴らすとしよう」
『も、もう勘弁――ズバッ!――がああああああああ!!』
ネウロはもう一本の腕を斬り落とした。
「お〜痛い痛い。勢いあまって残った腕も切ってしまった」
シャドウはまるで最後の希望に縋るかのように、斬られた腕と切断面をくっつけようとするも、
――グシャアーーー!!――
「…おっと、気づかなかった。…ダニの腕は小さすぎて目立たんな」
ネウロは靴で腕を潰した。
――ベキッ!――
さらには拳を顔面にいれ、
――ボギッ!――
今度は腹に蹴りを入れた。それによってシャドウはクラッシャーで閉じられた口を開いて嘔吐してしまう。
「こらこら。折角綺麗な床を汚してはいかんだろう。吐いた本人が吐いた口の舌で舐めとらなくてはなぁ?」
ネウロはシャドウの頭を掴むと、無理矢理に床と顔をくっつかせてボロ雑巾のように扱うと…。
――ブヂュッ!!――
『あああああああああああああああ!!!!』
指を小型ドリルのように変化させ、シャドウの眼を潰した。
――ジョキンッ!――
『〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!!』
今後は舌をねじ切った。
悶え苦しむシャドウの姿に、ネウロは腹を抱えて笑っている。
「フハハハハ♪スッキリした〜…もう用済みだ。死ね」
――ザシュッ!!――
悲鳴と嫌な音が止むと、シグナム達は恐る恐る部屋の外を覗きこんだ。
「「「「「「ッ!!?」」」」」」
そこには腹黒いドS笑顔のネウロと、見るに堪えない無残な死体になっていたシャドウ。
オーリスは余りの光景を見て気分を害し、その場に座り込んでしまったほどである。
「…貴様ら」
ネウロの呼びかけに、皆はビクっとした。
「我が輩がこれから言うことを、黙って聞き入れてもらうぞ」
*****
スカリエッティのアジト。
「以前、トーレが伝えたかい。君と私は、親子のようなものだと」
スカリエッティは二人の刺々しい視線にも介すること無く、モニターを開いた。
「君の母親。プレシア・テスタロッサは実に優秀な魔導師だった。私が原案のクローニング技術を、見事に完成させてくれた。だが肝心の君は、彼女にとっては失敗作だった。蘇らせたかった実の娘アリシアとは、似ても似つかない、単なる粗悪な模造品」
スカリエッティはそのことに軽く笑い。
「それゆえに、まともな名前すら貰えず、プロジェクトの名前をそのまま与えられた。記憶転写クローン技術。プロジェクトFの最初の一葉…フェイト・テスタロッサ」
スカリエッティの話が一段落つくと、
「ライオット!」
【RIOT BLADE】
カートリッジを二発ロードし、バルディッシュは変形して刀サイズの魔力刃を展開する。
フェイトはそれを振るい、自分たちを拘束する赤い光線を振り払った。
「それが君の切り札か?…成程、このAMF状況下では消耗が激しそうだ。だが、使ってしまって良いのかい?ここにいる私を倒したとしても、ゆりかごも私の作品たちも止まらんのだよ。プロジェクトFは、上手く使えば便利なものでね。私のコピーは、既に十二人の戦闘機人全員の胎内に仕込んである。どれか一つでも生き残れば、直ぐに復活し、一月もすれば私と同じ記憶を持って甦る」
「馬鹿げてる」
「正気の沙汰ではない」
「旧暦の時代。アルハザード時代の統治者にとっては、常識の技術さ。つまり君達はここにいる私だけでなく、各地に散った戦闘機人たち、全員を倒さなければ、私とこの事件も止められないのだよ!」
スカリエッティは再び赤い光線を出現させ、フェイトとネイルを締め付ける。
「絶望したかい?きっと私はよく似ているんだよ。
私は自ら作り出した生体兵器たち、君は自分で見つけて自分に反抗することのできない子供たち。それを思うように造り上げ、自分の目的の為に使っている」
「黙れ!」
フェイトは怒りの表情で魔法陣を展開して、プラズマランサーを射出。
しかし、
「面白いものを見せてあげるよ」
スカリエッティはシールドを展開してプラズマランサーを弾くと、前髪を掻きわけて額に刻まれた生体コネクタを見せた。
そして、白いガイアメモリを懐から取り出す。
【DESIRE】
起動したデザイアメモリを生体コネクタに押し当てると、スカリエッティの身体は”欲望の記憶”を宿したデザイア・ドーパントに変貌する。
『フェイト・テスタロッサ、先程の言葉に間違いがあるとでも?
君もあの子たちに自分に逆らわないように教えて、戦わせているだろ。私がそうだし。君の母親も同じさ。周りの全ての人間は自分のための道具に過ぎない。そのくせ君達は、自分に向けられる愛情が薄れるのには臆病だ。実の母親がそうだったように、君もいずれあぁなるよ。間違いを犯すことに怯え、薄い絆に縋って震え、そんな人生など無意味とは思わないかね?』
「違う!!」
「「「『!!?』」」」
突然、ネイルが大声でスカリエッティの論理を否定する。
「確かに、人間は弱くて脆い。なにかに縋らなきゃ生きていけない。無からは何もつくれない、そんな儚い存在だ。しかし、魂に刻まれたモノだけは違う!恐怖も悲しみも、喜びも嬉しさも、全てが人間を人間としての心を成り立たせ、絆を成り立たせる。何かが間違いだと言うなら、後悔した後に正せばいい!愛情が薄れているというならこちらから愛してあげれば良い!…無意味な人生などありはしない!!」
「ディアンさん…」
フェイトはネイルの言葉に聞き入る。
「なにより、フェイトはエリオやキャロに理想を押し付けている訳ではない。
己の教えてあげられることを教え、明るい未来へと導くことにある。貴様のようなゲスと一緒にするな!それに親子の絆というものは決して道具なんてものじゃ形容しきれない。なにせ、我にライダーの力を託し、フェイトのことを想い続けた者こそが、フェイトの掛け替え無き母君、プレシア・テスタロッサだ!」
ネイルの叫びが終わると、今度はエリオとキャロがモニターで自分自身のフェイトに対する想いを確かに伝え、フェイトに戦う意思をもう一度与える。
すると、フェイトの身体は黄金の光に包まれる。
『GET SET』
「オーバードライブ。真・ソニックフォーム」
【SONIC DRIVE】
「(ごめんね、ありがとうね。エリオ、キャロ。…そしてディアンさん)
フェイトは腕や脚の装甲とマントを捨て去り、身体には最低限のバリアジャケットのみが残された、フェイトの最速フォーム、真・ソニックフォームとなる。
「疑うことなんて、無いんだよね」
【RIOT ZANBER】
バルディッシュは魔力の帯で繋がった二本の剣となる。
「私が弱いから、迷ったり悩んだりを、きっとずっと繰り返す。だけど…いいんだ。…それも全部、私なんだ…!」
「行くぞ、相棒…!」
*****
同時刻、ウーノは…。
「…魔力値の、拡大?」
気づいた時にはもう遅い、緑色の粒子が待っていたかと思えば、それはバインドとなってウーノの身体を縛る。
「探しましたよ。お嬢さん。スカリエッティのもう一つの頭脳。戦闘機人・十二体の指揮官。No.1ウーノ」
ウーノにバインドをかけたのは、ヴェロッサ・アコースだった。
「君の頭の中、ちょいと査察をさせてもらうよ」
*****
一方、シャッハとセインも。
「…ウーノ姉…。ヤベぇ!IS・ディープダイバー!」
セインはウーノの危機的状況を察知してISを発動、壁の中に潜っていく。
「ヴィンデルシャフト!」
ヴィンデルシャフトは主人の意に応え、カートリッジをロードする。
そして、セインが壁を抜け終える直前にシャッハがその場にたどり着いていた。
「こいつも、移動系…!?」
「烈風一迅!」
*****
再び、フェイトとネイル。
「装甲が薄い。当たれば落ちる」
フェイトは凄まじき速さでセッテのブーメランブレードを破壊すると、スカリエッティの出現させた赤い光線をネイルと共に斬り裂いて行き、トーレのインパルスブレードと衝突する。
そして一度距離を取ると、
「ライドインパルス!」
トーレのISが発動し、金と紫の閃光がぶつかり合う。
一撃ごとに双方にはダメージが蓄積していく、
そして最後の一撃のため、フェイトは二分化したバルディッシュを一つにして巨剣とする。
「ウオオオォォォォォォォ!!」
「ハアァッ!!」
トーレはバルディッシュの刃を受け止めるも、インパルスブレードは耐えきること叶わず砕け、トーレは吹っ飛ばされて気絶する。
だが、勝利を目前にしたその瞬間…。
『隙ありだ』
デザイアが特大級のエネルギー弾をフェイトめがけて射出した。
「相棒ッ!!」
ネイルは武器と己を盾にするかのようにフェイトの眼前に躍り出た。
「でぃ、ディアンさん!ダメです!!」
フェイトが叫んでもネイルは動かない。
そのまま攻撃が直撃するかと思われたとき、
――ズバァーーーーー!!――
「「ッ!?」」
突如、何者かが発した巨大な稲妻によってエネルギー弾は相殺される。
【NATURAL・MAXIMUM DRIVE】
「決めるぞ相棒!!」
「はいッ!」
「「オオオォォォォォォォォォ!!!!」」
二大攻撃に対してデザイアはそれを直に両手で受け止める。
『フハハハ。素晴らしい、やはり素晴らしい。あぁ、この力、欲しかったなぁ!…だが、私を捕える代償に、ネイルは兎も角、君はここで足止めだ。私がゆりかごに託した願いは、止まらんよ!」
狂気満ちたデザイアの言葉に耳を貸さず、二人は一旦距離を取って、再びスカリエッティにバルディッシュの大スイングと飛び回し蹴りを決めて、吹っ飛ばした。
吹っ飛ばされたデザイアはダメージ故にか、自動的にメモリが排出されて人間の姿に戻り、デザイアメモリはネイルが拾った。
「広域次元犯罪者。ジェイル・スカリエッティ。貴方を、逮捕します」
フェイトがそう言っている間、ネイルはラボ内部を右往左往していた。
まるで誰かを探すように。
「ディアンさん、どうかしました?」
「…さっきの雷撃。見覚えが…」
それを聞いて、先程ネイルを救った雷撃のことを思い返すと、フェイトはトンデモなく身近な人物を思い出す。
「フェイト」
二人にとって忘れる事の出来ない、聞き覚えのある声。
「………プレシア」
「………母さん」
そこにはプレシア・テスタロッサが居た。
「久しぶり。…強くなったわね、フェイト。流石は、私の娘だわ」
プレシアは優しい母親としての頬笑みを見せる。
「母さん…!」
フェイトは涙を流しながらプレシアに近づこうとする、
「フェイト…元気でね」
「え…?」
あまりに突然な言葉。
「私にはまだやるべきことがある。それまでは、待っていて頂戴」
「そんな、母さん!一緒に居てよ!」
「我儘を言っちゃいけないわ。それに約束する。成すべきことを果たしたら、私はあなたにきっと会いに行く。だから、その時まで待っていて欲しいの」
プレシアの約束を信じることにしたのか、フェイトは顔を俯かせ、黙って頷いた。
「いい子ね。…ディアン、フェイトのことお願いね?」
「当然だ。フェイトは我の相棒だ」
ネイルの言葉を聞き、プレシアは満足そうな表情で、雷光と共に消え去った。
次回、ゆりかご編!
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次回、仮面ライダーイーヴィル
Eの想い・Nとの友情/舟【ゆりかご】
「この『欲望』はもう、私の手中にある…」
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