E達の休息/癒【おんせん】
機動六課のお別れ二次会。
ゼロが帰って来たという吉報を受け、隊員達は喜び。
成人局員達はアルコールを飲みまくった結果、我を忘れた酔っ払い状態になってしまい、普段の態度とは比べ物にならない有様になっちゃったわけで…。
それを見た前線メンバー(人間)は、
「…お酒は控えよう…」
と、反面教師に一つの重要なことを教わった。
ちなみにディアンはフェイトに酒を酌して貰い、フェイトと一緒に甘くてイイ感じのムードになっちゃったりしてたが…。
二次会が終幕に近づき、はやての言葉で二次会は面白おかしく終わった。
しかし、
「良しっ!三次会へ行こう!」
ゼロの自由気ままというか、ハッキリ言えば我ままによって前線メンバーは引っ掻き回されるのであった。だけどそれは、魔導師達だけではなかった…。
*****
三日後…。
地球・海鳴市。
「にしても意外ですね」
「なにがだ?」
「だって、ゼロさんは『欲望』にしか興味無いなら、温泉とか行かなくても…」
なのはがそう言うとゼロは、
「そんなことは無いぞ。私も観光旅行は好きでな。魔界でもネウロと連れだって行ったものだ」
「例えば、どんな?」
「魔界地獄谷温泉はまさしくこの世の地獄絵図。死体と腐臭とマグマで溢れた絶景スポットだ。湯船に浮かぶ白骨が偽物なのが発覚して、客足が少々遠のいたがな」
「やっぱり、ろくなのありませんね」
魔界トークに突っ込む気にすらなれないなのはだった。
そんなこんなで温泉宿にたどり着くと、
「………遅いな」
「誰か待っとるん?」
「あぁ…。お、来た!」
ゼロが指さした方向には、
脳噛ネウロと…。
「あれ?あの人って確か…名探偵の桂木弥子!?」
はやての叫びに皆は驚く。
「御まねきに頂いてありがとうございます」
と、弥子は丁寧にお辞儀する。
弥子はその直後…。
――ガシッ!――
そのあとことは、余りに華麗な動きだったがために覚えていない。
覚えているのは、
アイアンクロー。
ネックハンディングツリー。
キャメルクラッチ。
アルゼンチンバックブレイカー。
とどめは何故か、ベアーハッグ。
古めかしい技ばっか。
「ゴホッ!ゴホッ!ね、ネウロ!いきなり何すんの!?」
「な〜に、ちょっとした退屈しのぎだ」
古い格闘技技を連続して暇つぶしに使うネウロ。
(やっぱこいつもドSだ〜!)
皆はそう思った。
数分後、
「え!?皆さんネウロ以外の魔人が此処にいるって言うんですか!」
「本当やで。今そこのお土産やにおるけど」
「…ん?そういえば、八神部隊長の声と弥子さんの声ってかなり似てません?」
スバルがそう言うと、
「そうだな。声だけじゃなく…」
「悲しい体型も一緒だがな」
「「そこ!ドラム缶見ながら会話するな!!」」
いつの間にかネウロと一緒になって悪口を叩くゼロ。
簡単にいえば二人をドラム缶=ズン胴・貧乳と言いたいのだ。
しかしながら弥子とはやては体型や声だけでなく、童眼や小柄と言う点に関しても似通った点があった…。
その後、魔人二人による姑息までに地味な嫌がらせは続いたわけで、
そんで、本当に宿に着くと…。
「お父さん、お母さん、お兄ちゃん、お姉ちゃん。久し振り!」
高町家の面々の士郎、桃子、恭也、美由紀。
なのはから連絡を受けてさきに宿に来ていたのだ。
「お帰り、なのは」
父親の高町士郎は年齢を感じさせない爽やかな笑顔だ。
「え?でもここ実家じゃないよ?」
「何言っているんだ。家族揃えば、そこが帰る場所だ」
「そうよなのは」
「兎に角、今は思いっきり楽しも!」
家族団欒とはこのことである。
その光景を弥子は羨ましげに見ていた。
「どうかしたんですか?」
ティアナは不安げに聞いてみる。
「ちょっと…家族ってやっぱり良いなって…」
弥子は三年前、父親を殺された悲しい過去を持つ。
だがその事件こそが、ネウロと彼女の出会いを繋げた一件とも言えるが。
「あ、すずかちゃんやアリサちゃんも来おったで」
はやてが指さす方向には、なのはらと小学・中学時代の学友。
月村すずかとアリサ・バニングスがいた。
「お久しぶり、皆」
「元気してた?」
「勿論元気だよ」
「そっちはどう?」
旧友同士での会話。これもなかなか趣がある。
「…お、漸く来たな」
「ごめん。遅くなっちゃった」
月村忍。
すずかの姉で、恭也にとっても掛け替えの無い女性である。
「全く、心配したぞ忍」
「ごめんごめん」
「大丈夫だよ。おにいちゃんは心配病なんだから〜」
「…そうだな」
なのはの笑顔をみて恭也は心が現れるのを感じた。
「ここにもシスコンがいたな」
「なんだと?誰だ君は?」
「私の名は無限ゼロ」
その後恭也のシスコンプライドを傷つけるっつーか、単に喧嘩の売り言葉をまんまと買ってしまった恭也は、素手のゼロに向かって木刀で襲い掛かるも、あっさりと負けた。おまけにサディスティックな方法でじわじわと…。
「フッ。私に勝ちたいなら、まずシスコンを卒業しろ」
「なんだと!掛け替えのない妹を可愛がる事のどこが悪い!?」
「恭ちゃーん!私も妹!!」
「お前は黙ってろメガネバカ!!」
「なんだとー!眼鏡は重要な萌え要素の一つでしょうが!」
「うるせー!俺たちゃどうせ温泉編限りのゲストなんだから萌え売っても仕方ねーんだよ!」
とんでもないこと言い出すシスコン馬鹿はほっとこう。
そんな時、
「ね〜ね〜、一緒に遊ぼうよ可愛いお嬢さん」
「色々とやろうよ?」
「や、ヤダ!離してよ!」
ヴィヴィオがべたなチンピラに絡まれている。
――ズドーーーン!!――
「人の愛娘に何してんだァー!!」
「グボおおおおおお!!」
ゼロはチンピラ1に飛び蹴りを使った。
チンピラ1は倒れた。
「な、なんだテメー!?」
「私か?私はこいつの父親だ」
「ふ、ふざけんじゃねー!」
確かにゼロの外観年齢は二十代前半。
ヴィヴィオの肉体年齢も十代終わり頃。
初見で親子と見抜くのは困難だろう。
チンピラはサイバイバルナイフを片手にするも、あっさりとゼロに弾かれ、拳一発で地面に顔を密着させる。
「た、助けてくってガアぁぁぁぁ!!」
「おっといかん。汚物を踏んでしまった」
なんて言ってるけど、確実に面白そうだからわざとチンピラの手を強めに踏んだネウロ。
さらにチンピラを抱える。
「さ〜てクソ野郎。分不相応という言葉を知らない貴様に、ちょっとした躾をしてやろう。というか、色々とやろうよって…何する気だったんだゴラァー!」
「ぎゃあああああああ!!」
ゼロがチンピラに浣腸するのと同時にネウロが腹にパンチを決める。
それを3〜5回くらい繰り返すと、チンピラは虫の息。
「ゼロ。今がチャンスだ」
「良し。決めるぞ」
ゼロはチンピラを抱えてジャンプする。
「野郎必殺!イビル…ボンバー!!」
――ズバアァーーーーーン!!!!――
必殺技炸裂!
ゼロが空中で虫の息なチンピラの足を開かせ、自由落下してくるところをネウロが股間に一撃必殺のパンチを喰らわせる。正しく野郎必殺である。
それを見ていた女性陣はゼロの親バカぶりに唖然。
男性陣は股間をおさえて「き、禁忌の技だ…!」なんて口走っていた。
ドSコンビ、ここにあり。
ついでに言わせてもらうと、過剰とはいえ親バカという共通点故に士郎とゼロが仲良くなったのは別の話である。
*****
温泉旅館。
ゼロ・リインフォース・ヴィヴィオの三人が宿泊する部屋では、
「わー、面白ーい!」
始めてみる畳部屋にヴィヴィオは興味津津だ。
「…のんびりしてる暇は無いぞ。夕食バイキングに遅れると酷い目にあうからな」
「どういう意味ですか?」
「着けばわかる」
旅館の食堂。
ゼロの進言でリインフォースとヴィヴィオは逸早くそこにやってきて自分の胃袋に相談した量の料理を持って食事を開始した。
そして、全てが彼女一人に喰らい尽くされた。
「おーーいーーしーーーっ!!なんかもう…もう…その…この…。ああ、もう褒めてる時間すらもったいないの!!」
「ああ…どうしてこんなことに…。私の自慢のバイキングが…。料理人としての誇りを満載した無敵艦隊が、開始30分で壊滅…」
母親・遥の超絶的なまでに毒性のあるクソ不味い料理の影響を受け、鉄の如き頑丈さと宇宙の如き許容量を併せ持った胃袋を持つ。そんな弥子の食欲は六課メンバーでも大食に入るスバルとエリオでさえ到底及ばないものがあった。
料理人のおじさんはプライドを粉砕された絶望感に顔を真っ青にしている。
遅れてやって来た他のメンバーはただただ弥子の喰いっぷりを唖然とした表情で見ているしかなかった。
「ほら、言った通りだろ?」
「「………」」
ゼロはネウロからこのことを事前に知らされたので、相棒と娘にバイキングを満喫させたが、肝心の二人は開いた口が塞がらない。
「バイキングサイコー!!」
喰い終わった弥子は身体を海老ゾリにして料理の美味さを表現するも、唖然としてる皆の姿を見てしまい…。
「すいません!すいません!皆さんがいるってわかってたのに、つい食欲の波が…」
頭を下げまくる弥子。
「全くズン胴・貧乳のくせして喰い意地だけは張ってるな」
グサ!
「なんでこんなに喰ってて身長も乳房もでかくならないのやら?」
グサ!グサ!
「色んな意味で無駄だな」
「燃費が悪すぎる」
グサ!グサ!グサ!
ドSコンビの心無い事実を突き付けられ、弥子は精神に多大なダメージを負った。
部屋の隅っ子で体育座りする弥子の背中には悲しげな雰囲気があった。
それを見た一同はやりきれない気持ちになったのだった。
*****
食堂を出た一行は宿の温泉に向かった(ゼロとネウロを除いて)。
女湯。
「いや〜、にしても羨ましいな。皆さん美人だしスタイル良いし」
弥子は羨望を眼差しを向ける…はやて以外に。
しかしながら、六課の前線メンバーは其の気になればアイドルや女優になれるであろう容姿とスタイルの持主なので、羨ましがるなと言う方が無理だろう。
「それに引き換え私は……はー」
弥子は自分の貧相な体型にマジで泣きたくなった。
「自分を卑下することはないで弥子ちゃん。わたしだって何時もこんな感じや」
「はやてさん…でも、貴女のほうが私より胸大きいですよね」
「ギクッ…」
そう。周りからは貧乳だのチビ狸だのと言われるが、はやても十分に可愛い美人と言える顔立ちで、胸も弥子よりは多少はある。ただ単周りの女性たちの方が男を魅了するナイスな胸を御持ちな方ばかりなので、目立たないだけだが…。
「か、桂木。そう気を落とすな。胸だけで人生は決まらん」
シグナムは論ずるも、彼女が貧乳に論ずること自体アウトだった。
弥子はシグナムの”おっぱい魔人”とまで言われる豊満な美巨乳を見て…。
「うわぁーーーーん!!」
泣いた。本気で…。
*****
山奥の源泉。
「行け、負けるな!」
「徹底的に攻めろ…!」
ゼロとネウロは魔界魚を闘わせて遊んでいた。
――ボガンツ!――
其の時、魔界魚同士のバトルの影響でリングに見立てていた岩が崩れ…魔界魚は下流に降りていく。
「まあ良いか」
「このくらいはな」
無責任、ここに極まれり。
*****
夜中となり、皆はそれぞれの部屋に戻った。
「…ねえ、パパ」
「どうかしたか?」
「なんで天井に張り付いてるの?」
「私はお前が来る以前は何時もこうだったが」
「良く言いますね。人のことさんざん抱き枕にしておいて」
ヴィヴィオの疑問にゼロが答えるとリインフォースがそういった。
しかし、抱き枕にされた時はかなり嬉しかった、最初だけは…。
でも一時間もすると少しずつゼロの腕に力が入って行き、朝になると背骨がイカレるんじゃないかと思うくらいな状況になっていたりしたが。
そんな修学旅行気分な会話も思って、三人が眠りにつく。
*****
翌朝。
『おお、素晴らしい!喰いきれない程の量の『欲望』がある…。これが探し求めていた『究極の欲望』か…!!』
「良かったねパパ!!」
「今までの苦労が報われますね!!」
『いただきますッ!!』
言わなくてもわかるだろうが、これはあくまでゼロの願望が具現化した夢だ。
「ああ…私は幸せ者だ…」
寝言の最中、涎を垂らすゼロ。
その涎が下にいる二人にかかろうとしたとき。
――パチッ――
「ゼロ…起きてください」
「なんか、音がするよ」
「………フッ。『欲望』と『謎』が出来上がったようだな」
絶妙なタイミングで目を覚ました二人は上半身を起こした。
それによって涎は布団にかかって、布団を融解させていたが…。
*****
「キャアァーーー!!」
絹を裂くような女の悲鳴。
ある部屋で、人が頭から血を流して死んでいるのだから無理もない。
従業員の連絡で、警察署から刑事がやってきた。
その二人の刑事は、
「石垣さんに等々力さん!」
三年前から弥子と親交のある刑事。
ダメ刑事の石垣筍と真面目刑事の等々力志津香。
「あ、探偵。またお前らか」
「先輩。少なくとも貴方より遥かに役立つ人にそれは無いんじゃないですか?」
(こんのガキがァーーー!!)
弥子を邪険にした石垣に等々力が偉そうな口を利かれ、石垣は内心で激怒する。
「事件の状況は…。
被害者は東守男。とある中小企業の経営者を職業としていたようです。死因は部屋の窓ガラスを突き破って飛んで来たモノに後頭部を激しく損傷させられた模様です」
「え?凶器の詳細は分からないんですか?」
「ええ。部屋中を探しまわったんだけど、どこにもそれらしきものは見当たりませんでした。おまけに部屋には鍵が掛かっていた上に、被害者の部屋の外はとても人がこっそり出入り出来るような環境じゃないんです」
好青年の仮面をかぶったネウロが尋ねると、等々力は事細かに答えた。
「ほう、そうですか。…では先生。現場調査と行きましょうか」
「うん」
ネウロは弥子と一緒に部屋の中に入っていく。
そんなネウロの好青年ぶりをみた方々は、
「なにあれ?昨日とは全く態度が違うんだが…」
「見事に猫かぶっとるな〜」
「でも、弥子ちゃんのお腹をつねってる…」
「なんでわざわざ…」
ディアン、はやて、なのは、フェイトは各々の意見を言った。
「ま…こういう頭脳労働はネウロの仕事だ。我々は犯人が判明するまで待っているとしよう(その時こそが、私とネウロの食事の時間でもある)」
ゼロの食糧たる『欲望』
ネウロの食糧たる『謎』
悪意によって生まれる二つの食糧。
それを間近にした二人の魔人の頭には”喰らう”ということしか無かった。
次回、仮面ライダーイーヴィル
犯人はI/謎【ネウロ】
「この『謎』はもう、我が輩の舌の上だ…」
次回更新は『謎』解きやトリックの工夫やアイディア関係で多少遅くなる場合がありますが、ご了承ください。
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