唇にLを/嘘【うそつき】


鳴海探偵事務所。
失神していた二人のライダーが目を覚ますと、ゼロは問答無用にライアーに関する情報を聞き出そうとしたが、ダメージのせいでとても喋れる状態ではなく、リインフォースが治癒魔法で回復させてから探偵事務所で話すこととなった。

「なるほど、成程。そういうことだったのか」
「あぁそうだよってイテテテ!」


仮面ライダーW・左翔太郎(ひだり しょうたろう)
鳴海探偵事務所所属の探偵。ハードボイルドを志すモノの、未だに仕事に温情を持ちだしがちな半熟=ハーフボイルドな優しい男。
彼はまだ身体が痛むのか、辛そうな顔をしている。
最初はゼロに対して反発的な態度を取っていたが、ゼロが雑誌で硬貨を紙っぺらのようにして見せたことで実力差をハッキリさせた。


仮面ライダーアクセル・照井竜(てるい りゅう)
風都署の超常犯罪捜査課の課長。階級は警視。
一年前の八月に家族を皆殺しにされ、それ以降は”シュラウド”を名乗る謎の女から授かったアクセルの力で”Wのメモリの持主”に復讐を果たさんとしている。性格は素で翔太郎以上にハードボイルド。
彼も翔太郎と同じような方法で黙らせてしまった。


「にしても、興味深いな君達のベルトとメモリは。それに魔法が実在するなんて…!」


仮面ライダーW・フィリップ
知識欲旺盛極まる翔太郎の相棒。精神世界に”地球(ほし)の本棚”と呼称される巨大なデータベースたる能力を持つ。一度興味が湧いたことは検索し尽くさないと気がすまないという悪癖がある。


「…それで、ライアーに頼み込んでまでジミーとやらに合格を頼んでいたんですね?」
「…なんの楽しみもない、殺風景な私の人生に光をくれたのが…ジミー君だった」

リインフォースが聞くと、ゆきほはジミーのファンになった経緯を話す。

「…初めて、私に笑顔を返してくれた男の子だったの…。だから、なんとか彼を喜ばせてあげたかった」
「それで、あのドーパントに不正合格を頼んだ…」


鳴海亜樹子。
鳴海探偵事務所初代所長の鳴海壮吉・仮面ライダースカルの娘。
探偵事務所二代目所長を勤めているが、外見が外見なだけによく中学生と間違えられる。大阪出身。


「ある日突然、誘いを受けて…私…。間違ったことしたのかな?」
「世間一般で言えば間違いだ。それにジミー中田は貴様の玩具ではなく、一人の人間であろう?」

ゼロの言葉を聞いて、ゆきほは泣き崩れた。





*****

探偵事務所の地下ガレージ。
そこには、リインフォースと照井とフィリップがいた。

「最初の戦いで俺はライアーに二つの嘘を刺されたわけだ」

――そんな剣じゃ、傷つけられないぜ――
――私のメモリが、バラバラに!――

「攻撃はあたらず、メモリは偽物だった」
「戦闘力はさほどでもないが、厄介な能力を持った敵だ。その上、屈折した愉快犯でもある」
「…でも、見つけるしかありませんよ」





*****

井坂内科医院。

「あ〜!君の肉体は完璧だな。無限の可能性に満ちている…!」

Wのメモリの持主…井坂深紅郎。
表向きには内科の開業医だが、裏世界においてはドーパント専門のドクターである。

そしていま彼の診察を受けているのは、風都にガイアメモリを流通させている黒幕的組織・ミュージアムの幹部こと園咲冴子の変身したタブー・ドーパント。

『そう。でも複雑な心境…。女としての私には、興味が無いなんて…』
「変身前の風体はどうでもいい!私は、ドーパントの肉体専門のドクターだからね…!」

井坂はスッカリとタブーに魅入られている。

「おぉ!見事な爪だ。これなら、恐怖の帝王にも勝てるかもしれないね?」

恐怖の帝王とはミュージアムの創始者にして園咲家の家長たる園咲琉兵衛が変身したテラー・ドーパントのことである。

「そうしたら…君がミュージアムのトップだ」
『ッ!?』
「少々、本音を見抜き過ぎたかな?」

タブーは心の内に隠していたソレを容易く見抜かれて驚く。

「冴子君。…君の力になりたい。…また、身体を診せに来なさい」





*****

数日後、フーティックアイドルの収録日がやってきた。

そんな日に、ジミーは愛用の白いギターを砂浜に突き立てた。

「…さよなら。…僕の青春…」

そう呟いて立ち去ろうとすると、

「それ、カッコ良いつもりか?…ジミー」
「随分古めかしいな」

ゼロと翔太郎が現れて、翔太郎はギターを引き抜く。

「わ…わああああああああ!!」

二人を見た瞬間、ジミーは怯えるように逃げ去ろうとする。
当然二人は追いかけるのだが、

「来ないで!僕のことなんか放っといてくれ!」
「何が悲しくて男三人で砂浜で追いかけっこしてんだ俺達!?しかも、この白いギター・・・鳥が飛んで、恥ずかしい…恥ずかし過ぎる!」
「じゃあこうすればいい」

――ビョンッ!…ドガッ!――

「フゲッ!!」

ゼロはライダージャンプのように跳躍すると、ライダーキックのように華麗な飛び蹴りをジミーにお見舞いする。

「…どうして、僕がここにいると?」

蹴られた腰をさすりながらジミーが尋ねた。

「お前…形から入るタイプだろ?そう言う奴はな…挫折したら小波海岸だ」
(…そういえば魔界でも、挫折を味わった者は硫酸の海に身を投げ入れていたな)

翔太郎の言葉にゼロは脳内で魔界トークを披露していた。

「俺も昔此処に来た。…ほれ、今日が最後の挑戦だろ?」

翔太郎はギターを渡す。

「それならもう要りません。…僕はもう、音楽止めますから…」
「…なんでだ?」
「ファンに裏切られたからです!天才とか、新しいとか、持ち上げるだけ持ち上げといて…。でも、合格自体が彼女のインチキだった。なにもかも嘘ばっかりだ!」

ジミーの心のシャウトを曝け出す。

「ジミー…一番の嘘つきは彼女でもドーパントでもない。…お前だ。お前は自分に嘘を付いている。…お前は自分が弱いと知った癖に、ゆきほさんのせいにして眼を背けてるだけだ」

一理ある翔太郎の話にジミーは視線を泳がせる。

「なあジミー。下手糞なくせにお前がここまでやってこられたのは何故だ?」

ジミーは思い出していく。
ゆきほが如何に自分を支えてくれたか。如何に自分のことに真摯になってくれたか。

「僕…どうすれば?」
「自分で決めろ。…男の仕事の八割は決断。あとはおまけみたいなもんだ。俺の人生の師匠の教えだ」

「道理で。貴様の半熟脳髄で、出てくる台詞ではないからな」
「うるせぇ!」





*****

『メモリがわかっているのに、こんなに手こずるとは珍しい』
「やっぱね〜。今一キーワードが抽象的なんだよね」
「具体的なキーワードならありますよ」

地球(ほし)の本棚の力を持ってしても、っていうかキーワード故にライアーの正体に辿り着けないところでリインフォースがある物を持ってこう言った。

「キーワードは、和紙」

キーワード入力によって、情報は一冊の本に絞り込まれた。

『ビンゴだ!リインフォース』
「ライアーは大慌てで逃げ去ったものの、大変な落し物をしてしまったようですからね」

リインフォースはライアーの落とした和紙を懐から出した。

(それにしても、私以外にこんな能力を扱う人間がいるなんて…)

「確かにこいつなら和紙を使うだろう。ストリートでいつでも若者に眼をつけられる。本の題名は”詩人”。ライアーの正体は、路上ポエム作家・沢田さちおだ」





*****

連絡を受けてストリートに向かった二人だが、

「あぁ…最近来ないんだよ。さちおさん」

サンタちゃんの言うとおり、沢田は一枚の和紙を何時もの席に残しているだけだった。

「クソッ!逃げられた!」
「チッ!」





*****

「クソ−!一足違いだよ!ホント頭にクルー!」
「全くだ。人を虚仮にし続けやがって。…なにが”ハートがフルフルだ”…!?」
「それッ、ライアーが言っていたのかい?」
「間違いありませよね?」

照井の言葉にフィリップとリインフォースが反応した。

「あぁ。最初に戦った時には」
「…若菜さんがよくラジオで使うフレーズだ」
「私も、ヴィヴィオからその言葉を何度もラジオで聞いたと…」





*****

園咲家。

紅茶と茶菓子で、優雅な昼時をおくっている若菜と冴子。

(井坂…深紅郎。誰にも見せたことの無い私の心を何故…?あの人は今までの男たちとは、まるで違う…)

井坂のことで物思いにふける冴子。

「お姉さま〜?」

若菜は茶化すかのように冴子に話しかけるも、携帯の着メロが鳴った。

「ちょっと失礼」

若菜に電話をかけてきたのは…。

「もしもしフィリップ君?御久し振り。突然どうしたの?…あ、そうだ。テレビ見たわよ。意外と端正な顔立ちしてるのね貴方」
「あの、実は…若菜さんに折り入ってお願いがあります」





*****

「電波塔の道化師様も、当分休養だ。…にしても、あの仮面ライダーのせいで、飛び切りの涙をコレクションできなかった…」

沢田は車の中で、そう呟いていた。
すると車のラジオから、ラジオ番組のDJを勤める若菜の声が。

『園咲若菜のヒーリング・プリンセース!今日は風都のミステリーツアースペシャル。なんと私、ある夢を叶えてくれるという電波塔の道化師さんとお会いできることになったんです!もうハートもフルフルです♪』

「うんうん…ってなんだとー!?」





*****

風都ラジオ局。
そこには若菜のファンでごった返していた。

「皆、聞いた?若菜姫が電波塔の道化師と会うって話」

ファンの一人と思われる少年が、ほかのファンにそう言っていると、沢田がコソコソと現れる。

「何処のどいつだ?俺の名を語って若菜姫と会おうって言うのは…」
「あ!若菜姫だ!」

そう言ってる間に、少年の言葉にファン達は車に乗り込もうとしている若菜に精いっぱい応援の言葉を贈る。

若菜は黒服の二人組に車の中に乗せられてもなお、ファン達に手を振っている。

「下がってください」
「もう出発しますので」

【LIAR】

沢田はメモリを起動させて、手の生体コネクタに挿入してライアー・ドーパントになる。

そうして若菜を乗せた車を尾行して、若菜が車から降りるとコッソリと後をつけた。

すると若菜はとある舞台会場に足を運んでいた。

すると舞台袖から…。

「ハロー!若菜姫!電波塔の道化師だよん!」
『なんだあのアホみたいな恰好は?』

ライアーの言うとおり、
その自称電波塔の道化師は、どうみてもアホじゃないかと言いたくなるような格好だ。
ピエロ云々も敵わないくらいの間抜け極まる服装とメイクだ。
しかも歩く度にギャグ漫画みたいな足音までする始末。

「叶えたい、夢は、なにかな?教えてよ〜!」

自称電波塔の道化師に、若菜は少し口元を笑わせる。

「ポエムも書いてあげるよ!…いまいち、街の皆には、評判悪いんだけどね」
『こ、この野郎…!』

自分のことをバカにされ、ライアーは腹を煮えくりかえらせる。

「詩集も出てるんだ。全ッ然売れなかったけどね」
『いい加減にしろ!あんなもんでもな、一生懸命書いたんだよ!若菜姫、聞いてくれ。俺が、俺が本物の……うわ!』

偽物に対して苛立ちを隠しきれずにライアーは直に反論に向かうが、その時彼にスポットライトが浴びせられた。

「ハッ!よく来たな…嘘つき野郎」

自称電波塔の道化師は、被り物を脱いで首を回すと、被り物をライアーに投げつけた。

メイクをふき取ると…そこには翔太郎の素顔があった。

そして、もう一つのスポットライトが照らす先には、黒服と学生服を着た上にグラサンと眼鏡をかけて変装していたゼロ・照井・亜樹子。

『貴様ら、まさか罠を?』
「その通り。お前がうっかり園咲若菜のリスナーである証拠を残したお蔭だ、ライアー・ドーパント。…いや、沢田さちお!」
「嘘つきも意外に騙されやすいってことかな」

『そんな罠に、若菜姫が協力を?…若菜姫!貴様ァ…!』

ライアーは怒って若菜に襲いかかろうとするも、若菜は足を引っかけた後に蹴りを喰らわせる。

「本物の若菜姫に、こんな危ない橋を渡らせるわけ無いでしょ」
『き、貴様は?』
「彼女の協力は、ラジオだけだよ」

変身魔法で若菜になり済ましていたヴィヴィオだった。

「え?あの子誰?」
「私の娘だ」
「えぇー!私聞いてない!というより、ゼロさんってあんなに大きな娘さんのいるような歳だったの!?」

亜樹子はゼロに娘がいることに驚く。

「御蔭で、フィリップが女装役をやらずにすんだよ」
「ちょっと、だったら若菜姫役は私が…」

翔太郎にそう意見する亜樹子だが、

「それは俺が却下する」
「ど、どうして?」

照井が却下してきた。

「所長では無理だ」
「りゅ…竜君…」

亜樹子はその場に崩れかかり、

「あの娘(こ)がいなかったら、
女の子がフィリップ君。フィリップ君が女の子で私は男の子。男の子はフィリップ君なのに私は男の子…」

メッチャしょ気ている亜樹子の姿に、

「く…ククク」

ゼロが後ろ姿でも分かるような笑いを浮かべていた。

『クソー!貴様ら許さん!』
「許せねえのはこっちのほうだ!…少しは騙される方の気持も知りやがれ。行くぜ、無限、照井」
「応よ」
「今度こそきっちりカタをつける」

三人はドライバーを装着してメモリを構える。

【CYCLONE】
【JOKER】

【ACCEL】

【MAGICAL】
【LEADER】

「「変身ッ!」」
「「変身ッ!」
「変ッ…身ッ!」

【ACCEL】
【CYCLONE/JOKER】
【MAGICAL/LEADER】

瘴気・旋風・紅熱の吹き荒ぶ中、三人は仮面ライダーイーヴィル・W・アクセルに変身する。

「ヴィヴィオ、貴様も手伝え」
「うん、パパ」

ゼロの指示で、ヴィヴィオも漆黒の騎士甲冑を身に纏う。

「『さあ、お前の罪を数えろ!』」
「『さあ、貴様の欲望を出しだせ…!』」





*****

フーティックアイドルの収録現場。

「さあ、どうした?話題のジミー中田が姿を見せないぞ。ハリー達は困惑しております」

司会がそう述べている間にも観客達からは、ジミーへの不満の声がでている。

観客席に居たゆきほは、

(私…なんで来ちゃったんだろう…?)

そんな自問自答に答えなど出るわけもなく、帰ろうとしたときに他の観客達の騒ぎ始めた。

「現れましたジミー中田!」

ジミーは急いできたためか、荒息をついていた。

「ジミー中田です。…愛を籠めて、歌います。僕を信じてくれた…たった一人の為に…」

ジミーの視線は間違いなくゆきほに向かっていた。





*****

一方ビルの屋上で戦いを繰り広げる。四人とライアー。

多勢に無勢の言葉通り、ライアーは苦戦必至だが、ライニードルを大量発射する。
しかし、ヴィヴィオが虹色のシールドを展開して殆どを防いだ。

アクセルとヴィヴィオがライアーに突撃している間に、Wとイーヴィルはメモリチェンジする。

【METAL】
【CYCLONE/METAL】

【TRICK】
【TRICK/LEADER】

二人はサイクロンメタルとトリックロードにハーフチェンジ。

【SPIDER】

Wはメタルシャフトにギジメモリによって稼働するメモリガジェットの一つ・スパイダーショックを合体させる。

Wがその状態でメタルシャフトを振ると、鋼のワイヤーを風に乗せてライアーの口に巻きつけ、ライニードルを封じる。おまけにイーヴィルは片手を伸ばしてライアーの頭を掴んでいる。スンゴイ力で…。

『イデデデデデデ!!』
「フフフ…♪」

最早最大の能力を封じられたライアーに、四人は一斉に攻撃を開始する。

「どうだ?ジミーの怒りの分も、叩きつけてやる!」

もう一度四人が同時に攻撃を叩きこむと、

『こうなったら…無敵の必殺技!!』

ライアーの発言にW・アクセル・ヴィヴィオは身構える。

『嘘だよ〜ん』

ライアーがライスピークスからエネルギー光弾を乱射してWに命中させるも、残りは全てイーヴィルに素手で弾かれてしまう。


「全く。…世話が焼ける」

アクセルはバイクフォームに変形して落下していくWを背中に乗せた。
さらにはその状態でビルの外壁が角度90°であるにも関わらず、グングンと直進していく。

「助けられたついでだ。このまま決めるぜ、照井」

【TRIGGER】
【CYCLONE/TRIGGER】

Wはサイクロントリガーにハーフチェンジ。

ライアーは当然、撃ち落とそうとするも…。

「よそ見していていいのか?」
「私達のこと…忘れてる?」

この二人が居た為にライアーはWとアクセルに攻撃できずじまい。

悠々とW&アクセルは壁を登り終えると同時に、その勢いで上空に舞い、Wがトリガーマグナムより拡散効果によって広範囲射撃が可能な風の弾を連射してライアーにダメージを与える。

【JOKER】
【CYCLONE/JOKER】

そして基本フォーム・サイクロンジョーカーにハーフチェンジ。

「そろそろ潮時か」

【EVIL/LEADER・MAXIMUM DRIVE】
【JOKER・MAXIMUM DRIVE】

イーヴィルは本体含めて五体に分身すると、分身四体は順番にライアーを四連続で蹴り上げて、本体は左右で分離してチョップの姿勢で突っ込んでくる。

Wもアクセルの車輪の回転を利用して空高く跳躍すると、

「『ジョーカーエクストリーム!!』」
「『リーダーアサルトシリンダー!!』」

二人の連続キックを喰らったライアーは大きくふっとばされてメモリブレイクされてしまう。

地上に降りた四人が見たのは、今まで自分の策略によって大勢の若者の理想を挫折させて流させて得た涙を収集してきた沢田が、最後に自らの涙を和紙にコレクションする、自業自得な場面だった。

ゼロは変身を解いて沢田に近づいた。

「お、おい。何する気だ?」
「丁度良い。貴様らに私の真の姿を拝ませてやる」

するとゼロは魔人態になる。
それに対して、当然Wとアクセルは凄まじく驚く。

『…『欲望』が敗北感によって挫けた時、高密度の精神エネルギーが宿主から放出される、これこそが、魔界からやってきた私にとって何物にも代え難い食糧なのだ。…では、いただきますッ!』

――ガブッ!――





*****

フーティックアイドル収録現場。

「正直に言って酷いの一言だよ。工事現場の音の方が、遥かに心地良い。…人生最悪の、歌だZッ!!」
「私も今まで良いと思っていた理由が分からない」

審査員達はジミーの歌に酷評を下すも…。

「でも…ハートは感じたよ」
「同感。そこは、イケてた!」
「気持ちのある若者を、我々は見捨てない。また会おう、ジミー」

意外な評価を付けたしたのだ.

「ん〜、残念。しかしね、ハリーにも伝わってきましたよ。ジミーの熱い気持ちが。今回はね、逃してしまいましたが、また次回ね、トンデモないスティックを引っさげてやってくることを、ハリーは期待満々で待っております…」

疎らな拍手の中、ジミーはたった一人のファンの姿を客席にないかを見渡すも、見つけることができず、セットの裏に入って行った。

「ジミー君!」

たった一人のファン…ゆきほは客席ではなく、舞台裏にいた。

「今日、初めて気づいたわ。これって…ラブソングだったのね」
「…遅いよ。…ファンのくせに」

CDデビューは叶わなかったが、何か別のものが始まりそうだ。





*****

報告書
ジミーはゆきほさんと同じ工場で、一緒に働き始めたらしい。
歌を続けているのかどうかは、まだ聞いていないが…。取り合えず奴は笑顔だ。

にしても、無限の正体が魔界から『欲望』なんて食糧のために現れた魔人だったなんて…今でも信じ切れない。フィリップは興味深い検索対象ができて喜んでいたが。…少なくともアイツだけはどんな事があっても敵に回したくない。



報告書を書き終えたタイミングで、事務所のドアを叩くものが居た。

「見てみて!」
「「CDデビュー!」」

入って来たのは翔太郎に情報提供をしている風都イレギュラーズと呼称されている連中の一人、エリザベスとクイーンという二人組の女子高生。

翔太郎がジミー…ひいてはイーヴィルと出会うきっかけとなった依頼をしてきたのも彼女たちだ。

「番組関係者が口利きしてくれたのよ〜ん♪」

エリザベスが軽い口調でそういってると、

「あれ?…どうしたも亜樹子ちゃん?」

静かに毛筆で紙に字を書き入れる亜樹子。

――女の子だもん――

こんな字が書かれている理由は、ゼロが魔界777能力の夢幻の盛装<イビルコスチューム>という姿を変える能力を使い、イブニングドレスを着た巨乳美女の姿に変身して見せたことで、色んな意味で自信を喪失しかけたからであるのだが…。

「でもさぁ、気に入らないのはこれだよね」

クイーンが雑誌のある一面を開くと、そこには…。

――幻の超デュオ 仮面シンガーは誰だ!?――

とデッかい写真が載っており、クイーンとエリザベスのCDデビューに関する記事は下部の目立ちにくいところに載っている。

「なんで翔ちゃん達のほうがメインなの?」
「あー、そうだなー…」

答えを見つけられない翔太郎にフィリップは、

「翔太郎!今魔界に関する検策してみたけど、マシな情報が見つからなかった。だけど代わりに演歌というものを検策中なんだ…!」

覆面をつけたフィリップ、その手にはもう一つの覆面。どうやらまた仮面シンガーをやってくれということらしい。

「え?あ…。歌はもういいんだよ!俺は探偵一筋だ!」
「「「…センス無いくせに」」」
「………」

女性陣の三人にそう言われ、フィリップに至っては無言。

「あ…」

自分の胸に何かが突き刺さるような思いをした翔太郎だった。



そんな探偵事務所を魔界虫を通して見ていたゼロは…。



「フフフ♪見ていて退屈しない連中だ」
「それは良いんですけど…もういい「ダメ。今日一日は二人ともそのカッコ」

リインフォースは猫耳メイドさんの格好。尻尾もちゃんとついてる。
御霊はボディラインがキレイに浮き出る露出度が高い灰色のチャイナ服姿。

「可愛い♪」

ヴィヴィオは二人を羨むような目をしているから余計に脱ぐのを躊躇う。
まあ、実際かなり似合っているのだが。

結局のところ、ドS魔人のせいで二人は丸一日コスプレをさせられちゃったのでした。



次回、仮面ライダーイーヴィル

Pの遊戯/呪【にんぎょう】

「この『欲望』はもう、私の手中にある…」

これで決まりだ!

押して頂けると作者の励みになりますm(__)m


<<前話 目次 次話>>

作家さんへの感想は掲示板のほうへ♪

作品を投稿する感想掲示板トップページに戻る

Copyright(c)2004 SILUFENIA All rights reserved.