Yの悲劇/絆【あにいもうと】
「「ビッカー!チャージブレイク!」」
WCJXはプリズムソードをイエスタデイに振り下ろそうとするも、イエスタデイはメモリを排出して人間の姿に戻ったのだ。
流石にWも刃を止めざるを得ない。
Wが攻撃を中止したことを雪絵は嘲笑いながら其の場を去った。
「…何故メモリブレイクを中断した?」
ゼロ達は変身解除した状態となる。
「生身の人間に攻撃はできない。翔太郎の一番の弱点をついてきた。中々キレるよ、彼女」
「ならば、殴って気絶させればいいものを」
フィリップは冷静に冷静に説明する。
ゼロは毒舌をはいているが。
「昨日は利用するためにあるだと……!?」
翔太郎は夕焼に染まった街並みを見ながら呟いた。
*****
地下ガレージ。
「不破夕子……Who are you……簡単な偽名だ」
フィリップはホワイトボードに雪絵の偽名元を書いた。
「須藤雪絵は最初から僕達に兆戦してきていた。見破れなかったのは、こちらの油断だよ」
「……確かに悔しい。頭にきてる…!でもな、それだけじゃねーんだよ。なんかが違うんだ…」
「左よ、そんな曖昧で論理性の無い言葉では、理解したくてもできんぞ」
「わかってる!そんなことくらい……」
翔太郎・フィリップ・ゼロは今回の件に関する議題をあげていた。
「でも翔太郎君は、彼女に利用されたんだよ。彼女のせいで、なんの関係も無い人達を傷つけるところだったんだよ!」
「あぁそうだ。でもな…なんか納得できねーんだよ……」
亜樹子の言葉に半ば賛同しつつ、翔太郎はふうとくんを見た時の雪絵の切ない表情を思い出す。
「………わたしは、翔太郎さんを信じる」
「はやてちゃん、なに言ってるの!?」
「人に起こる出来事には、全てなにかしらの原因があるはずや雪絵さんにも、なにかある筈なんや」
先程まで嫉妬の対象としていた雪絵に対してなにかを感じとるはやて。
「…はやてちゃん、ちょっと手伝ってくれ。仕事はまだ残ってる」
「はいな!」
翔太郎とはやては、外へとでていった。
*****
とあるビルの屋上。
そこには雪絵とタブー・ドーパント。
『会うのは始めてね。義理の妹なのに』
「元…義理の妹だけど。ねえ、貴女が兄さんを殺したんでしょ?」
タブーは口を閉じる。
それは紛れも無い事実だから。
「兄さん結構マメね。ディガルコーポレーションの兄さんのパソコンに日記があったの、知ってた?驚いたのは書かれていた中身」
『事情は全て知ってるって訳ね』
「勘違いしないで!協力したのよ、貴女に」
『協力?』
タブーは見当違いな雪絵の言葉に首を傾げる。
「兄は愚か者よ。自分の小さなプライドの為に手にしかけていた大きな栄光を失った。私は違う、もっと凄いことができる。……仮面ライダーに園咲冴子を襲わせる。イエスタデイなんてクセの強いガイアメモリをこんな風に使いこなせる人間、他にいるかしら?」
雪絵は自慢げに語る。
『あれは脅迫状じゃなくて、売り込みだったって訳?…自身家ね。お兄様に似て。でも、そう簡単に、信用できない』
タブーは光球を生成して雪絵にぶつけようとするも、
【YESTERDAY】
ドーパントとなった雪絵はタブーに組みつく。
『諦めないわよ。必ず私の力を認めさせる……お義姉さん』
イエスタデイが手を放した瞬間、タブーはエネルギー弾を放つも、既にイエスタデイはいなかった。
『…元、お義姉さんね』
「面白いメモリの所持者に逢えましたね」
「いいですねぇ…!あの力、喰らいたい」
タブーが振り向いた先には堺と井坂がいた。
*****
翌日のこと。
雪絵は元気一杯な子供達の遊ぶ幼稚園にいた。
そこで、園長と思われる人物が雪絵にきづいた。
「雪絵ちゃん!」
呼ばれた雪絵は軽く会釈する。
「元気だった?」
「先生こそ。…ここも変わらないですねぇ。小さい頃のまんまだ」
「なんとかね。此間まで強引な地上げで、無理矢理立ち退かされそうだったんだけど、それがどうやら話が消えたみたいらしいの」
園長は喜々として語る。
目の前のその原因がいるのにも勘付かず。
「良かったですね」
雪絵は感情の籠ってない返事をした。
「あ、そうそう。ちょっと待ってて!」
園長は雪絵を待たせて屋内にはいった。
「………」
――雪絵!――
――お兄ちゃん!――
雪絵の過去が思い浮かぶ。
そして…。
*****
「お兄ちゃん、結婚おめでとう♪」
「ありがとう。お前はどうなんだ?」
「今は研究一本。イイ人もいなしね。あ、それからお金のこと、もう大丈夫だよ。大学の研究費もでるし」
バードメモリブレイクから数分、あるいは数十分後のこと、霧彦と雪絵が交わしたであろう最後の会話は、電話によるものだった。
「わかった。…あ、もしも……もしもなにかトラブルがあったら、風都の鳴海探偵事務所に行け」
「フフ♪ねえ、どういうこと?」
「暫く連絡つかなくなるけど、心配するな」
「お兄ちゃん?」
霧彦の不穏な台詞に雪絵は不安になってくる。
「…良い風だ」
――プツ――
それが雪絵が耳にした、兄の最期の言葉となった。
*****
雪絵は記憶のなかから現実にもどり、この街の風をかんじていた。
「いいか?竹蜻蛉ってのはな、こうやって軸を両手ではさんで、心のなかで”風になれ!”って祈って思いっ切り回すんだ」
「最初は出来ないかもしれへんけど、練習すれば皆できるようになる。だから失敗しても恥ずかしがらずにリトライや♪」
気付けば、いつの間にか翔太郎とはやてが子供達に竹蜻蛉の飛ばし方をレクチャーしていた。
「「せーの!」」
二人がタイミングを図り、
「「「「「「「「「「「「それぇー!」」」」」」」」」」」」
皆は一斉に竹蜻蛉を飛ばした。
「凄ーい!」
「飛んだ飛んだ!」
「やったー!」
子供達は上手い具合に飛ぶ竹蜻蛉を見て喜ぶ。
「…良い風だ」
「ホンマ、優しい風」
翔太郎とはやても、この街の風を感じ取っていた。
「よう」
「どうも」
そんでもって、雪絵に挨拶。
「ここは、あんた達兄妹が幼い頃過ごしたんだって?」
「…流石は探偵。少しは鼻が利くようね」
「翔太郎さんをナメたらあかんで」
はやてはしっかりと翔太郎の顔を立てる。
「………イエスタデイで不動産屋を襲ったのは…、ここを護るためだったんだな」
「そうね」
雪絵は無愛想に返事する。
「雪絵さん。貴女やっぱり、過去にこだわってるんとちゃいますか?」
「…勝手にそう思うといいわ」
はやての言葉に雪絵はそういって帰ろうとする。
「待てよ」
二人が追おうとすると、
「雪絵ちゃん」
園長がでてきてなにかを渡そうとするも、雪絵は構わずいってしまう。
「これって……」
園長が手に持つ画用紙は、かつて幼い頃に描いた”雪絵と霧彦の絵”だった。
*****
ディガルコーポレーション・社長室。
そこで冴子は、霧彦が生前つかっていた”NASCA”のメモリを手に取ってみていた。
「それ、霧彦義兄様の形見?」
「別に彼の物じゃない。ガイアメモリは、我が園咲家の物」
冴子は若菜の言葉を否定する。
「でも、お姉様が持ってるとは思わなかった。たまには昔を振り返ることがあるのね」
「…そんなんじゃないわ」
冴子はナスカメモリを懐にしまう。
若菜はそんな冴子をみて顔をほころばせる。
「いや…人間は中々、過去を捨て切れぬ者ですよ」
「昨日や一昨日がなければ、現在や未来は成り立ちませんからね」
「先生、堺君。どうされました?」
登場してきた井坂と堺に冴子は少々驚き、若菜は不愉快そうな表情である。
「少し気になることがありまして「じゃあ、私はこれで」若菜さん。身体の具合は如何ですか?」
井坂と若菜は互いに言葉をさえぎあう。
「なにかあったら、僕達が骨の髄に至る「御心配なく。今の所好調そのものです」
そう断言して、今度こそ若菜は部屋からでた。
「素直じゃありませんねぇ」
などと堺が呟いていたが。
「…気になることとは?」
「須藤雪絵ですよ」
冴子の質問に対し、井坂は期待感溢れる声である。
「彼女は聡明だね。メモリの毒素を、イエスタデイの刻印として体外に排出している」
「アンチドライバーの状態でも、メモリの毒素に侵されないのですよ」
「そんな効果が…?」
二人の説明に冴子は今一信じ難いといった表情だ。
「相手への攻撃と、自分の肉体の防御を一動に行う。ああいうやりかたがあるとは私も思い付かなかった。…彼女のような人間こそ、君の部下に必要なのでは?」
「特に、貴女の崇高な宿願を成就させるためには」
「先生…堺君…」
冴子は一種の感動を覚えていた。
「心配ならもっと完璧にしてあげよう。君の素晴らしい身体を…、もっともっと素晴らしく」
そう言われた時、冴子は微笑んだ。
*****
「ちょっと待てよ、雪絵さん」
「話だけでもええから」
「しつこいわねぇ」
雪絵は一向に心を開かない。
「俺達はまだあんたの昨日を見つけていない」
「あら、あんな依頼真に受けてたの?」
「一度依頼を受けた以上、最後まで遣り遂げるのが、探偵なんや」
「それはもう探偵じゃなくて、ただの愚か者よ」
雪絵は辛辣な言葉を投げ掛ける。
「……あんた、本当にミュージアムの片棒を担ぐつもりなのか?」
「だったらどうする?」
「確かに…あんたの兄さんもミュージアムの一員だった。だけど最後は、自分の身体も省みず、風都の若い命を守った」
翔太郎の説明に、雪絵は思わず「え?」と零す。
「奴は………本当に風都を愛していた」
「貴方と同じように?」
「ああそうだ。…俺だけじゃない……、あんたもそうだろ?」
「そうでなきゃ、自分の過去を護るようなこと、せぇへんよ」
はやてはそういいながら画用紙に描いてある絵を見せて、雪絵に渡す。
「………」
かつての思い出が蘇るのか、雪絵は切ない表情を浮かべる。
「霧彦の描いた絵だ。…良い笑顔だよな。その笑顔が守りたかったんだよな…?」
翔太郎はブランコに乗って、雪絵に語りかける。
「全く、底抜けの御人好しね、貴方達」
【YESTERDAY】
「「雪絵さん!?」」
『そんなに過去が好きなら、もう一度戻してあげるわよ。今度は二度と戻ってこられないように…!』
イエスタデイは刻印を発射するも、二人はそれを避けた。
「セーット、アーップ!」
はやてが騎士甲冑を纏うと、
「フィリップ」
【JOKER】
ダブルドライバーを装着してメモリを起動させる翔太郎。
ガレージにいるフィリップも、
【CYCLONE】
「「変身!」」
【CYCLONE/JOKER】
Wに変身してイエスタデイと肉弾戦になる。
「止めろ!やめるんだ雪絵さん!」
幾らいってもイエスタデイはきかない。
イエスタデイはWを蹴り飛ばし、逃げようとするも…。
【LUNA/JOKER】
『今度は逃がさないよ』
ルナジョーカーとなったWの右腕が伸び、イエスタデイを捕縛する。
『じゃあ、こういうのはどう?』
――ビュンビュンビュンビュン!!――
「なに…!?」
イエスタデイは刻印を街に向けて乱射した。
『ほら、ボヤボヤしてると、街の人々が刻印に侵されるわよ』
「翔太郎さん、撃ち落して!雪絵さんはわたしが」
「頼む!」
【TRIGGER】
【LUNA/TRIGGER】
ハーフチェンジによって身体伸縮能力がなくなり、イエスタデイは自由の身となる。
しかし、
「逃がすわけにはいかへんって、さっき言ったで」
『な、なにこれ!?』
はやてがイエスタデイの両脚にリングバインドを掛けた。
『ガイアメモリ無しで、こんなことができる人間がいるなんて……』
魔法を知らないためパニくるものの、イエスタデイは力づくでバインドを破壊しようとするも、中々壊れない。
「悪いけど、Wが時間稼ぎしてくれとる間、十重のバインドを組ませてもろうた。簡単には逃げられへん」
『撃ち終わった』
そしてWも刻印を全て処理し終えた。
「雪絵さん。あんた一体なんのために?」
『しつこいわよッ!』
――バリーン!!――
イエスタデイは漸くバインドを破壊し、はやてを身体を無理矢理もちあげると、Wに向けてなげつけた。
「うわッ!?」
「イタッ!」
二人はえらくこんがらがった体勢になってしまうも、直ぐに立ち上がって、イエスタデイを追おうとするが、既に彼女のは姿なかった。
*****
逃亡したイエスタデイは、教会と思われる場所にいた冴子と対面する。
「やっと素顔であえたわね、嬉しい」
「ここに来た以上は、忠誠を誓って貰うわよ。ミュージアムと、この私にね」
今この場には雪絵・冴子・井坂・堺の四人。
「勿論」
「貴女の働きによっては、イエスタデイ以上に強力なガイアメモリをプレゼントするわ」
「でも、メモリは一人に一つじゃ?」
「できるのよ。ドーパント専門医・井坂先生と、優秀な助手・堺君の手にかかれば」
「「このようにね」」
井坂は胸のコネクタ痕を見せる。
堺は両手に奇妙なメカを持っている。
「…こんなことが…」
流石の雪絵も、井坂達の常識破りな行動に驚く他ない。
「先生達にかかれば、不可能は無いわ」
「…期待には応えるわ。……よろしく」
手を差し出して握手を求める雪絵。
冴子は雪絵に数歩近づき、握手を交わす。
【YESTERDAY】
その瞬間、イエスタデイとなった雪絵は冴子の手をキツク握りしめる。
その状態でスタートクロックを作動させて、冴子の手に刻印を与えて、手を放す。
そして、変身を解いた。
「貴女、今なにを?」
「決まってるでしょ!兄さんの仇をとるのよ!」
「最初からそれが狙い?」
「そう。用心深い貴女に確実に刻印を打ち込むには、信用させて近づくしかなかった。まんまと騙されたようね、園咲冴子…!」
雪絵は本音をぶつけた。
*****
翌日。
「どうだった?」
「見つからないね」
「どこにいってもうたんや?」
翔太郎、フィリップ、はやて、亜樹子は雪絵を捜索していた。
「にしても酷いね、イエスタデイの刻印をばらまくなんて…」
「でも被害はなかった。俺達が全部撃ちおとした」
「翔太郎。須藤雪絵が撃ち落せる数だけの刻印をばらまいた。…と思ってる」
「やっぱし、あの人ミュージアムの一員になるのとはちがくて、別の目的があるんやないか?」
その時、
「やっと気がついた?」
雪絵の声に、四人は一斉に階段を一気に上って公園に。
「そう。最初から私の狙いは復讐」
「あんたやっぱり…」
雪絵は、手に持った……一点だけ血の滴が落とされたようなボロボロのスカーフを見せる。
「それは……」
「わからない?兄さんのスカーフ…。私が婚約祝いであげたもの。…面白い偶然ね。この街についた時に出迎えてくれた…。まるで私に助けを求めるように」
雪絵の声は語るにつれてどんどん悲痛な色をのせていく。
「私は許さない…絶対に許さない!兄さんを殺した貴女をね……!!」
「ど、どういうことや?」
霧彦を殺したのは冴子だとわかってる筈なのに、翔太郎に向かってこのような台詞を吐いた雪絵。ついでに使うべき字も違っている。いや、厳密にいえば間違ってはいない。
「まだ理解できんのか貴様等は」
「無限さん!」
そこへゼロとリインフォースとヴィヴィオがでてくる。
主人公とメインヒロインのくせして、随分と遅い登場だ。
「そ奴の首筋を見ろ」
「首筋……あ!」
「イエスタデイの刻印」
「あたし、聞いてない…」
四人は衝撃的な事実を目の当たりにする。
「さあ、永遠に昨日という監獄に囚われるがイイ!園咲冴子!!」
【YESTERDAY】
「これって、昨日の行動…やよね?」
「そうだ。昨日のこの時間、こいつは園咲冴子に復讐しようとして、返り討ちにあったんだ」
「その結果がこれだ」
はやてのわかりきった疑問に、ゼロとリインフォースが説明する。
ヴィヴィオはトリップクロックを作動させるイエスタデイを悲しみに満ちた眼で観る。
『何故だ?なぜイエスタデイの刻印が効かない…!?』
『そう、残念ながらね。冴子君には、通用しなかった』
『お涙頂戴の復讐劇は、彼女の記憶のなかで、永遠に繰り返される』
「井坂、堺…!」
思わぬところでウェザーとエレメンタルがでてきた。
*****
回想
「さあ、永遠に昨日という監獄に囚われるがイイ!園咲冴子!!」
【YESTERDAY】
「そんなことだろうと思った。やっぱり、兄さんと同じ……愚か者ね」
【TABOO】
冴子がタブー・ドーパントとなる。
『何故だ?なぜイエスタデイの刻印が効かない…!?』
【WEATHER】
【ELEMENTAL】
『その程度の力では、タブーのメモリに、影響は与えられない』
『無駄な努力、ご苦労様』
『先生達の治療のお蔭ですわ』
三体のドーパントはイエスタデイとは次元の違う会話をしている。
『永遠に昨日に閉じ込められるのは……貴女のほうよ。そして私はやっと過去から解放される』
タブーは刻印をエネルギー弾に乗せた。
『ッ!?』
『さようなら、雪絵さん』
『うあッ!』
エネルギー弾は命中し、刻印はイエスタデイ自身に刻まれるという皮肉な結果となった。
*****
『あれからそろそろ24時間経つ。自分自身の過去の記憶を飲み喰らったメモリ…!どんな効果があるかが楽しみだよ』
『僕も、その効力のデータを思う存分とりたい…!』
マッドナ発言をする二人のドーパント。
『園咲冴子!!』
「雪絵さん!」
イエスタデイは昨日という檻のなかで、不毛極まる争いをしている。
「許せねぇ…!」
「下がっていて」
翔太郎の怒りは噴火寸前。
フィリップは亜樹子とはやてに避難を促す。
「相棒、融合だ」
「えぇ、今回ばかりは頭にきた…!!」
「私もやるよ!」
無限一家もやる気満々。
【JOKER】
【CYCLONE】
【VANITY】
【DARKNESS】
【HOPPER】
「「変身!」」
「「変身…!」」
「変身ッ!」
【CYCLONE/JOKER】
【DARKNESS/VANITY】
【HOPPER】
二組と一人は変身を完了する。
「『さあ、お前達の罪を数えろッ!』」
「『さあ、貴様らの欲望を差し出せ…!!』」
「さあ!…決めるよ」
決め台詞を口にして、戦いが始まる。
『罪の無い人生など、スパイスの効かない料理だよ』
『何故この素晴らしさがわからないのやら?』
ウェザーとエレメンタルは三人のライダーと戦いを繰り広げる。
そこへ、
「左!そいつは俺が!!」
【ACCEL】
「変…身ッ!!」
【ACCEL】
照井がアクセルとなって現れる。
「井坂!今日こそは貴様を…!!」
アクセルはエンジンブレードを振り回すも、ウェザーの前では児戯の如く、あしらわれる。
しかしアクセルは執念深く攻撃する。
ホッパーもエレメンタルと互角の戦いをしている。
『復讐…?そうね。今はただの復讐じゃない。風都の為に貴女を倒すわ。それが兄の意志だとわかったから!』
イエスタデイのビデオテープのように決められた行動と台詞を、見て聞いたWとイーヴィルは。
「フィリップ、エクストリームだ」
『エクストリーム……』
「あの力なら、イエスタデイの刻印を消せるんだろ」
『しかし、何時も上手くいくとは……』
フィリップがシブッていると、
『できる。いや、やるんだ。そうでなければ、貴方達も”須藤霧彦”に顔が経たない筈だ』
「フン…それは言えてるな」
イーヴィルが横からそう意見する。
『わかった、やろう…!』
すると、フィリップの意思に応じてエクストリームメモリが現れて、フィリップの肉体を吸収すると、スロットの閉じたダブルドライバーに合体。
さらにはエクセリオンメモリまでが現れてイーヴィルドライバーに合体した。
【XTREME】
【XCELION】
WとイーヴィルはCJXとDVXに強化変身。
「「プリズムビッカー!」」
「「グレインノヴァ!!」」
【PRISM】
【GRAIN】
メモリをソードの柄に挿入して抜刀。
そして、シールドから鮮やかな光をイエスタデイに照射。
「検策を完了した」
「閲覧を終了した」
【PRISM・MAXIMUM DRIVE】
【GRAIN・MAXIMUM DRIVE】
「「プリズムブレイク…!!」」
「「グレインデストラクション……!!」」
Wとイーヴィルはイエスタデイに駆けて、斬撃一閃した。
すると、イエスタデイはメモリがブレイクされて人間の姿に戻る。
「雪絵さん!」
「案ずるな、刻印は消滅している」
雪絵を案じるWをイーヴィルが宥める。
「良し!亜樹子、はやてちゃん!」
「はい!」
「任せて!」
雪絵を二人に任せ、Wよイーヴィルは戦いに復帰。
『何時も何時も邪魔ばかり!!』
「貴様の相手は俺だ!!」
ウェザーはイエスタデイメモリをとりこむことができなくなり、腹を立てる。
その怒りは八つ当たり気味にもアクセルに向かった。
『君もいい加減目障りだね…!復讐などという小さなモノにこだわってると、彼女のようになるぞ』
そしてホッパーとエレメンタルは…。
「なぜこんな、他人を苦しませるようなことを…!?」
『愚問ですね…。我々はただ犯りたいから、犯るのです。己の研究と探究心のままにね…!』
「そんな理由で…!」
ホッパーは怒り心頭の心境だ。
『ならば問います。貴女は何故戦うのですか?仮面ライダーホッパー』
「それは、ただ皆を守りたいから…」
『下らないですねぇ。そんな曖昧な理由など…!正義を掲げて戦うからには、もっと明確で強固な覚悟と信念を持って貰いたいものです』
ホッパーはエレメンタルの言葉に黙り込んでしまう。
一方アクセルはウェザーに首を絞められて身体を持ち上げられてしまう。
『過去を振り向くのは嫌いでね…!』
日照による熱線の力で身体に高熱を纏うウェザー。
『そろそろ終りにしよう…!』
左手に高熱を一点集中させ、アクセルに止めをさそうとすると…。
「オラッ!」
WCJXがアクセルを助けた。
向こう側でもイーヴィルがエレメンタルに飛び蹴りを御見舞いしている。
『エクストリームにエクセリオン!その力、診せてもらいましょう!』
『我等の心往くまで!』
ウェザーとエレメンタルは様々な属性を混同させたエネルギー攻撃を行うも、Wとイーヴィルは構わず突撃して敵を殴りまくる。
Wは右拳と左拳を交互に繰り出し、イーヴィルは右足と左足を交互に繰り出して二体のドーパントを吹っ飛ばす。
「行くぞ、W…!」
「応よ!」
Wはエクストリームメモリを開閉。
イーヴィルはエクセリオンメモリの頭部を垂直にして再び折り曲げる。
【XTREME・MAXIMUM DRIVE】
【XCELION・MAXIMUM DRIVE】
「待て左、無限!井坂だけは、俺が…!!」
アクセルの声も無視して、エクスタイフーンとエクスハリケーンは激しく回転し、緑と黒の旋風と黒と白の瘴気の渦を発生させ、二人のライダーはそれに巻き込まれていき……!!
「「ダブルエクストリーム!!」」
「「トライデントエクセリオン!!」」
Wとイーヴィルの最強キックが炸裂し、そこら一面が爆炎で包まれた。
そして、それがはれると…。
「貴様…、余計な真似を!!」
「いや、逃げられた」
「というより、助けてやったというのに…ヤジを飛ばすとは不躾な」
アクセルの激昂にフィリップは冷静に応対し、ゼロはキツイ一言。
『残念ながら倒したのは蜃気楼ですよ』
「だが手応えはあった」
翔太郎がそういうと、ウェザーとエレメンタルに不調が起こる。
『回避が少し遅れてしまいましたね。エクストリームにエクセリオン、予想以上でしたね』
エレメンタルがそういうと、ウェザーと共に雷や吹雪を起こして目暗ましを行って逃げた。
「井坂ァァァア!!」
アクセルは憎しみの叫びをあげるも、片膝をついてしまう。
Wは変身を解除して雪絵のもとに。
しかし、イーヴィルは変身を解かずにイビルホイーラーに乗っていってしまった。
ホッパーも自慢の跳躍力で立ち去った。
「おい二人共!雪絵さんは?」
「大丈夫」
「気絶してるだけや」
すると、雪絵はゆっくりと目蓋を開いた。
「………兄さんの言うとおりだった。やっぱり鳴海探偵事務所を訪れて正解だった」
「…霧彦がそんなことを…」
雪絵は懐にしまっていた、霧彦が幼い頃に描いた絵を広げて出した。
「…兄さん…」
――雪絵!――
――お兄ちゃん!――
――雪絵…!――
――…兄さん…――
そして、風がピューっという音を立てて、皆の身体をを駆け抜けた時…。
「…良い風だわ」
最愛の兄と同じ言葉を呟き、雪絵はなにかショックを受けたように仰け反った。
「雪絵さん!」
「しっかりして!」
「「……!」」
四人が見守るなか、雪絵が再び目蓋を開いた時の第一声は…。
「………貴方達は?」
「え…?」
*****
報告書
須藤雪絵は記憶を失くした。イエスタデイメモリの副作用だったらしい……。
過去に囚われた彼女の復讐劇は、結局全てを白紙に戻すことにより、幕を閉じることになった。でも…彼女が記憶を取り戻し、罪を償った時…この街にも、彼女にももっと良い風が吹く。
俺はそう信じたい……。
報告書を書き終え、一服にコーヒーを飲むと…。
「ブゥーーー!!……おい亜樹子!なんだこのコーヒー!?」
「えぇー!時間はちゃんと計ったよ!」
反論する亜樹子だが、隣で飲むフィリップとはやてもかなり苦々しい表情をしている。
「その時計じゃ、正確な時間は計れないよ」
「なんで普通の時計を使わないかなぁ?」
そう、時間を計っていたのは”亜樹子の5分砂時計”なるふざけた時計で、上に吊るしてあるバケツから大量の砂が零れ落ち、下のバケツに一定量の砂が入ると、薬玉が割れるというものだ。
「時計じゃねーよ、そんなの!はやてちゃん、口直しにトビきりのを頼む!」
「翔太郎さんの為なら、幾らでも♪」
*****
マンション屋上。
「………」
――正義を掲げて戦うからには、もっと明確で強固な覚悟と信念を持って貰いたいものです――
「覚悟と信念…、か」
ヴィヴィオはエレメンタルに言われたことを引き攣っていた。
「もっと強くならなきゃな……」
「強く…成りたいの?」
「ッ!?」
行き成り背後から現れた者。
「プレシア、さん…」
「ヴィヴィオ、強く成りたいの?成りたくないの?」
唐突に現れたプレシアは、これまた唐突に質問した。
「強く、成りたいです…!」
「……良い眼をしているわ。…ついて来なさい」
*****
深夜・探偵事務所
「ほんじゃまぁ、わたしはそろそろ御暇します」
どうやら、はやてが帰るらしい。
「また来てね♪」
「今度来たら、ミッドチルダや魔法関係のこと、もっと話してくれ」
「楽しかったぜ」
それを見送る面々。
「あ、そうや。言い忘れてたことがおった」
「ん、なん――――――ッ!?」
翔太郎の口は、はやての唇で塞がれた。
はやては数秒程、翔太郎と身体を密着させ、身体を離すとこう宣言する。
「何時か絶対、わたしの恋人として振り向かせてみるから、覚悟して下さいな♪」
そして。今度こそはやては帰った。
「翔太郎、君にもとうとう……あれ、翔太郎?」
「――――――――――――」
「あぁーー!!翔太郎君がフリーズしたァー!?」
その後、翔太郎の脳髄が再起動するのに、一時間はかかったという(笑)
次回、仮面ライダーイーヴィル
Rの彼方に/雨【きょうふ】
「この『欲望』はもう、私の手中にある…」
これで決まりだ!
押して頂けると作者の励みになりますm(__)m
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